(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】水処理部材の履歴管理方法及び履歴管理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20240117BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20240117BHJP
【FI】
C02F1/44 A
C02F1/00 V
(21)【出願番号】P 2020083772
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【氏名又は名称】河崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】矢次 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】永江 信也
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-246285(JP,A)
【文献】特開2005-335910(JP,A)
【文献】国際公開第2005/115890(WO,A1)
【文献】特開2012-183470(JP,A)
【文献】特許第4178178(JP,B1)
【文献】特開2011-212608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C02F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理機器に装着可能な複数の水処理部材を個別に識別する水処理部材識別情報を含む履歴情報を用いて管理する水処理部材の履歴管理方法であって、
前記水処理部材識別情報と、一群の水処理部材を収容する搬送用の収容部材を個別に識別する収容部材識別情報と、前記水処理機器を個別に識別する水処理機器識別情報と、を情報記録部に登録可能な情報管理装置を用いて、
前記収容部材に前記一群の水処理部材を収容する出荷処理の際に、前記一群の水処理部材の各水処理部材識別情報を前記収容部材の収容部材識別情報に関連付けて前記情報記録部に登録するとともに、前記収容部材識別情報を読み取り可能なタグを前記収容部材に付す第1ステップと、
前記収容部材に収容された前記一群の水処理部材を前記水処理機器に装着する入荷処理の際に、前記タグから読み出した前記収容部材識別情報に基づいて前記情報記録部から得られる前記水処理部材識別情報を前記水処理機器の水処理機器識別情報に関連付けて前記情報記録部に登録する第2ステップと、
を含む水処理部材の履歴管理方法。
【請求項2】
前記水処理機器は、組付けまたは取外し可能で複数の水処理部材を装着可能なフレーム部材で構成された水処理ブロックを備え、
前記情報記録部に登録された水処理機器識別情報は、前記水処理ブロックを個別に識別する水処理ブロック識別情報を含み、
前記収容部材に収容される一群の水処理部材の数は前記水処理ブロックに収容可能な水処理部材数に設定されている請求項1記載の水処理部材の履歴管理方法。
【請求項3】
前記収容部材が前記フレーム部材で構成されている請求項2記載の水処理部材の履歴管理方法。
【請求項4】
前記情報管理装置は、さらに各収容部材における各水処理部材の収容位置を示す収容部材アドレス情報と、前記水処理機器における各水処理部材の装着位置を示す水処理機器アドレス情報と、を前記情報記録部に登録可能に構成され、
前記第1ステップで、前記一群の水処理部材の各水処理部材識別情報を前記収容部材の収容部材識別情報と前記収容部材アドレス情報に関連付けて前記情報記録部に登録し、
前記第2ステップで、前記水処理部材識別情報を前記水処理機器の水処理機器識別情報と前記水処理機器アドレス情報に関連付けて前記情報記録部に登録する、請求項1または2記載の水処理部材の履歴管理方法。
【請求項5】
前記タグは、ICタグ、バーコードタグ、文字情報タグの何れかで構成される請求項1から4の何れかに記載の水処理部材の履歴管理方法。
【請求項6】
前記水処理部材識別情報は前記水処理部材の製造ロット管理情報に関連付けた固有の製造管理番号を含み、前記履歴情報は前記水処理部材識別情報に関連付けた水処理機器識別情報、使用開始時期、稼働履歴、洗浄履歴、故障履歴を含む請求項1記載の水処理部材の履歴管理方法。
【請求項7】
各水処理部材に製造ロット管理番号を刻印している請求項1から6の何れかに記載の水処理部材の履歴管理方法。
【請求項8】
前記水処理部材は膜モジュールであり、前記水処理機器は前記膜モジュールを装着する膜ユニットである請求項1から7の何れかに記載の水処理部材の履歴管理方法。
【請求項9】
水処理機器に装着可能な各水処理部材を個別に識別する水処理部材識別情報を含む履歴情報を用いて管理する水処理部材の履歴管理システムであって、
前記水処理部材識別情報と、一群の水処理部材を収容する搬送用の収容部材を個別に識別する収容部材識別情報と、前記水処理機器を個別に識別する水処理機器識別情報と、を登録可能な情報記録部と、
前記情報記録部が接続された情報管理装置と、を備え、
前記情報管理装置は、
前記収容部材に前記一群の水処理部材を収容する出荷処理の際に、前記一群の水処理部材の各水処理部材識別情報を前記収容部材の収容部材識別情報に関連付けて前記情報記録部に登録する出荷処理部と、
前記収容部材に付されるタグに、前記収容部材識別情報を書き込むタグ書込処理部と、
前記収容部材に収容された前記一群の水処理部材を前記水処理機器に装着する入荷処理の際に、前記タグから読み出した前記収容部材識別情報に基づいて前記情報記録部から読み出した前記水処理部材識別情報を前記水処理機器の水処理機器識別情報に関連付けて前記情報記録部に登録する入荷処理部と、
を含む水処理部材の履歴管理システム。
【請求項10】
前記情報管理装置は、さらに各収容部材における各水処理部材の収容位置を示す収容部材アドレス情報と、前記水処理機器における各水処理部材の装着位置を示す水処理機器アドレス情報と、を前記情報記録部に登録可能に構成され、
前記出荷処理部は、出荷処理の際に前記一群の水処理部材の各水処理部材識別情報を前記収容部材の収容部材識別情報と前記収容部材アドレス情報に関連付けて前記情報記録部に登録し、
前記入荷処理部は、入荷処理の際に前記水処理部材識別情報を前記水処理機器の水処理機器識別情報と前記水処理機器アドレス情報に関連付けて前記情報記録部に登録する
請求項9記載の水処理部材の履歴管理システム。
【請求項11】
前記水処理部材は膜モジュールであり、前記水処理機器は前記膜モジュールを装着する膜ユニットである請求項9から10の何れかに記載の水処理部材の履歴管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理部材の履歴管理方法及び履歴管理システムに関し、詳しくは、水処理機器に装着可能な複数の水処理部材を個別に識別する水処理部材識別情報を含む履歴情報を用いて管理する水処理部材の履歴管理方法及び履歴管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水処理機器には交換可能な複数の水処理部材が装着されている。各水処理部材は性能が劣化すると洗浄し、破損し或いは寿命に近づくと新しい水処理部材と交換するといった様々なメンテナンスが必要となる。
【0003】
このような水処理機器として、例えば有機性排水の浄化処理などの水処理分野では、生物処理した排水から処理水を取り出すために固液分離用の複数の膜モジュールを装着した膜ユニットがあり、膜ユニットによって取り出された処理水を高度処理するために複数の活性炭カートリッジを装着した活性炭ユニットなどがある。膜ユニットや活性炭ユニットが水処理機器となり、膜モジュールや活性炭カートリッジが水処理部材となる。
【0004】
特許文献1には、膜ユニットの例として、複数の膜エレメントを備えた膜モジュールと、前記膜モジュールを複数段に積層して収容する枠体と、前記枠体に収容された前記膜モジュールが離脱しないように前記枠体端部を閉塞する閉塞部材と、前記枠体端部が閉塞された状態で前記枠体内に上下方向の弾性変形状態で配置される弾性部材と、を備えている膜分離装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した水処理機器に装着される水処理部材を適切にメンテナンスするためには、各水処理部材に対して製造段階から使用段階までの履歴を個別に管理する必要がある。そのために水処理部材の其々に識別情報を付与して管理することが望まれている。
【0007】
しかし、個々に異なる識別情報を表記したラベルを水処理部材に貼り付け、或いは水処理部材に識別情報を刻印するような態様を採用すると、そのために煩雑な作業が必要となるばかりか、処理対象となる汚水から水処理機器を引き揚げて個別の水処理部材に付与した識別情報を目視確認し、或いはスキャナで読み取るという煩雑な確認作業も必要になる。また、水処理部材に付したラベルなどに汚れが付着すると読み取ることが困難になる場合もある。
【0008】
また、ICタグなどの電子部品を水処理部材に取り付けるような場合には、十分な防水処理を施す必要があるばかりか、十年に及ぶ水処理部材の寿命に対応した長寿命の電子部品を採用する必要があり、部品コストが嵩むという問題があった。
【0009】
さらに、水処理部材を初期に装着した水処理機器とは異なる水処理機器に装着するような場合に、個々の水処理部材の装着履歴や洗浄履歴や累積使用時間などを台帳に管理する必要があり非常に労力を要していた。
【0010】
特に多数の水処理機器を用いる大規模な水処理設備では個々の水処理部材の履歴を管理するのは非常に困難であった。
【0011】
本発明は、上述した課題に鑑み、製造から使用に到る履歴を安価で正確に且つ容易に管理できる水処理部材の履歴管理方法及び履歴管理システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明による水処理部材の履歴管理方法の第一の特徴構成は、水処理機器に装着可能な複数の水処理部材を個別に識別する水処理部材識別情報を含む履歴情報を用いて管理する水処理部材の履歴管理方法であって、前記水処理部材識別情報と、一群の水処理部材を収容する搬送用の収容部材を個別に識別する収容部材識別情報と、前記水処理機器を個別に識別する水処理機器識別情報と、を情報記録部に登録可能な情報管理装置を用いて、前記収容部材に前記一群の水処理部材を収容する出荷処理の際に、前記一群の水処理部材の各水処理部材識別情報を前記収容部材の収容部材識別情報に関連付けて前記情報記録部に登録するとともに、前記収容部材識別情報を読み取り可能なタグを前記収容部材に付す第1ステップと、前記収容部材に収容された前記一群の水処理部材を前記水処理機器に装着する入荷処理の際に、前記タグから読み出した前記収容部材識別情報に基づいて前記情報記録部から得られる前記水処理部材識別情報を前記水処理機器の水処理機器識別情報に関連付けて前記情報記録部に登録する第2ステップと、を含む点にある。
【0013】
情報管理装置に備えた情報記録部に、水処理部材識別情報、収容部材識別情報、水処理機器識別情報が登録される。工場で製造された複数の水処理部材は収容部材に収容されて出荷され、出荷された水処理部材は出荷先に設置された水処理機器に装着される。出荷処理を行なう第1ステップでは、各収容部材に収容される一群の水処理部材の水処理部材識別情報が、各収容部材の収容部材識別情報と関連付けられて情報記録部に登録される。また、各収容部材に収容部材識別情報を付したタグが付される。入荷処理を行なう第2ステップでは、各収容部材に付したタグから収容部材識別情報を読み出して、情報記録部から当該収容部材識別情報に対応する収容部材に収容された一群の水処理部材の水処理部材識別情報が把握され、各水処理部材識別情報が、各水処理部材が装着される水処理機器の水処理機器識別情報と関連付けられて情報記録部に登録される。従って、少なくとも各水処理部材は、情報記録部に登録された収容部材識別情報及び水処理部材識別情報を介して製造時から出荷段階、特定の水処理機器に収容される入荷段階までを正確に管理できるようになる。
【0014】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記水処理機器は、組付けまたは取外し可能で複数の水処理部材を装着可能なフレーム部材で構成された水処理ブロックを備え、前記情報記録部に登録された水処理機器識別情報は、前記水処理ブロックを個別に識別する水処理ブロック識別情報を含み、前記収容部材に収容される一群の水処理部材の数は前記水処理ブロックに収容可能な水処理部材数に設定されている点にある。
【0015】
一群の水処理部材を単位として、収容部材に収容されて出荷され、水処理ブロックに装着され、複数の水処理ブロックで一つの水処理機器が構成される。従って、一群の水処理部材の各水処理部材識別情報は収容部材識別情報及び水処理ブロック識別情報を介して水処理機器識別情報と関連付けられる。
【0016】
同第三の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、前記収容部材が前記フレーム部材で構成されている点にある。
【0017】
水処理ブロックを構成するフレーム部材に一群の水処理部材が収容されて製造現場から使用現場に搬送され、その状態で水処理機器に組付けられる。従って、一群の水処理部材を出荷処理する際に別途の収容部材を準備する必要がなくなる。
【0018】
同第四の特徴構成は、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記情報管理装置は、さらに各収容部材における各水処理部材の収容位置を示す収容部材アドレス情報と、前記水処理機器における各水処理部材の装着位置を示す水処理機器アドレス情報と、を前記情報記録部に登録可能に構成され、前記第1ステップで、前記一群の水処理部材の各水処理部材識別情報を前記収容部材の収容部材識別情報と前記収容部材アドレス情報に関連付けて前記情報記録部に登録し、前記第2ステップで、前記水処理部材識別情報を前記水処理機器の水処理機器識別情報と前記水処理機器アドレス情報に関連付けて前記情報記録部に登録する点にある。
【0019】
一群の水処理部材の各水処理部材識別情報は、収容部材アドレス情報と水処理機器アドレス情報を介して個別に関連付けられるので、水処理機器の装着位置にどの水処理部材が装着されたかを個別に管理することができる。
【0020】
同第五の特徴構成は、上述した第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記タグは、ICタグ、バーコードタグ、文字情報タグの何れかで構成される点にある。
【0021】
収容部材に付されるタグを例えばRFIDのようなICタグで構成すれば無線通信によりタグに付された情報を容易く読み取ることができ、バーコードタグで構成すればバーコードリーダによりタグに付された情報を容易く読み取ることができ、文字情報タグで構成すれば、OCRなどによりタグに付された情報を容易く読み取ることができる。
【0022】
同第六の特徴構成は、上述した第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記水処理部材識別情報は前記水処理部材の製造ロット管理情報に関連付けた固有の製造管理番号を含み、前記履歴情報は前記水処理部材識別情報に関連付けた水処理機器識別情報、使用開始時期、稼働履歴、洗浄履歴、故障履歴を含む点にある。
【0023】
個々の水処理部材がどの水処理機器に装着されて、いつ使用が開始され、どのように稼働され、洗浄され、故障が生じたのかといった履歴管理に必要な情報が情報記録部に登録される。従って、個々の水処理部材の劣化の程度を適切に把握することができる。
【0024】
同第七の特徴構成は、上述した第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、各水処理部材に製造ロット管理番号を刻印している点にある。
【0025】
情報記録部に登録された水処理部材識別情報により各水処理部材の履歴が把握できるのであるが、万一水処理部材識別情報が情報記録部から消失すると、個々の水処理部材を把握することができなくなる虞がある。そのような場合でも各水処理部材に製造ロット管理番号を刻印しておけば、少なくとも製造ロット管理番号に基づいて最小限の管理が可能になる。
【0026】
同第八の特徴構成は、上述した第一から第七の何れかの特徴構成に加えて、前記水処理部材は膜モジュールであり、前記水処理機器は前記膜モジュールを装着する膜ユニットである点にある。
【0027】
水処理部材が膜モジュールであり、水処理機器が膜モジュールを装着する膜ユニットである場合に、水処理部材履歴情報を介して膜モジュールの履歴を把握することで効率的なメンテナンスが可能になる。
【0028】
本発明による水処理部材の履歴管理システムの第一の特徴構成は、水処理機器に装着可能な各水処理部材を個別に識別する水処理部材識別情報を含む履歴情報を用いて管理する水処理部材の履歴管理システムであって、前記水処理部材識別情報と、一群の水処理部材を収容する搬送用の収容部材を個別に識別する収容部材識別情報と、前記水処理機器を個別に識別する水処理機器識別情報と、を登録可能な情報記録部と、前記情報記録部が接続された情報管理装置と、を備え、前記情報管理装置は、前記収容部材に前記一群の水処理部材を収容する出荷処理の際に、前記一群の水処理部材の各水処理部材識別情報を前記収容部材の収容部材識別情報に関連付けて前記情報記録部に登録する出荷処理部と、前記収容部材に付されるタグに、前記収容部材識別情報を書き込むタグ書込処理部と、前記収容部材に収容された前記一群の水処理部材を前記水処理機器に装着する入荷処理の際に、前記タグから読み出した前記収容部材識別情報に基づいて前記情報記録部から読み出した前記水処理部材識別情報を前記水処理機器の水処理機器識別情報に関連付けて前記情報記録部に登録する入荷処理部と、を含む点にある。
【0029】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記情報管理装置は、さらに各収容部材における各水処理部材の収容位置を示す収容部材アドレス情報と、前記水処理機器における各水処理部材の装着位置を示す水処理機器アドレス情報と、を前記情報記録部に登録可能に構成され、前記出荷処理部は、出荷処理の際に前記一群の水処理部材の各水処理部材識別情報を前記収容部材の収容部材識別情報と前記収容部材アドレス情報に関連付けて前記情報記録部に登録し、前記入荷処理部は、入荷処理の際に前記水処理部材識別情報を前記水処理機器の水処理機器識別情報と前記水処理機器アドレス情報に関連付けて前記情報記録部に登録する点にある。
【0030】
同第三の特徴構成は、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記水処理部材は膜モジュールであり、前記水処理機器は前記膜モジュールを装着する膜ユニットである点にある。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した通り、本発明によれば、製造から使用に到る履歴を安価で正確に且つ容易に管理できる水処理部材の履歴管理方法及び履歴管理システムを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1(a)は膜ユニットの説明図であり、
図1(b)は膜モジュールの説明図である。
【
図3】
図3(a)は吊り治具の説明図であり、図(b)は吊り治具の係合部の説明図である。
【
図4】
図4(a),
図4(b)は吊り治具の使用方法の説明図である。
【
図5】
図5は、膜モジュールの履歴管理システムの機能ブロックの説明図である。
【
図6】
図6(a),
図6(b),
図6(c)は其々収容部材に収容される一群の膜モジュールの説明図である。
【
図7】
図7は、別実施形態を示し、膜モジュールそれ自体がフレームとしての機能を備えた膜ユニットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、水処理機器の一例である膜ユニットを例に、本発明による水処理部材の履歴管理方法及び履歴管理システムを説明する。膜ユニットには、水処理部材としての膜モジュールが交換可能な態様で装着されている。
【0034】
[膜ユニットの構成]
図1(a),(b)には、膜ユニット10、及び膜ユニット10に装着される膜モジュール20の外観が例示されている。膜ユニット10は、膜モジュール20が縦に8段積層設置された膜モジュール群が、横に5列並設されるように枠体11内に収容されている。膜ユニット10を生物反応槽に浸漬設置することで、生物反応槽の被処理液を膜モジュール20で膜ろ過して処理水を取り出す装置である。
【0035】
膜モジュール20は、本体フレーム11の奥行き方向両端部に前後一対の集水ケース22を備え、一対の集水ケース22の間に配設された一対のサイドプレート23で区画される空間内に、複数の膜エレメント21が縦姿勢で水平方向に並設されて構成されている。
【0036】
膜エレメント21は、平板状のろ板の両面に濾過膜が配置されており、濾過膜を透過した処理水がろ板に形成された集水路を通じて各集水ケース22内に導かれるように構成されている。ろ板はABS樹脂等で形成され、濾過膜は基材となる不織布に多孔性樹脂が含浸されている。集水ケース22はポリプロピレン等で、集水ケース22の内部を確認し易いように、透光性を有するように形成されている。
【0037】
各集水ケース22は、内部に集水空間を有する中空状に形成され、上下の夫々の面に集水空間に連通する連結部25,26が形成されている。上部の連結部25には、直上に積層される膜モジュール20の集水ケース22に形成された下部連結部26に嵌入される連結部材30が取り付けられるように構成されている。
【0038】
集水ケース22の上面と下面には夫々左右一対の被係合部としての係合孔24が形成されている。係合孔24は、各膜モジュール20を積層配置した際に上下に隣接する膜モジュール20の係合孔24と当接するように上下にそれぞれ形成され、上下に隣接する膜モジュール20の係合孔24を当接させた状態で後述する吊り治具40の各係合部42を貫通させて係合可能に構成されている。該係合孔24の縁部は、作業員が膜モジュールを把持するための取手27として機能する。
【0039】
最下段の膜モジュール20の下方に散気用給気管12が設置され、当該散気用給気管12から給気されたエアが散気ヘッドを備えた散気部15から散気されることにより、各膜モジュール20に縦姿勢で水平方向に並設された複数の膜エレメント21間に生物処理槽内の被処理液のクロスフロー流が発生して膜面が浄化される。そして、各膜エレメント21の膜面を透過した透過水が集水管13を通じて槽外へ導出される。
【0040】
集水管13には、生物処理槽の外部に設置された処理水槽に到る透過水導出管(図示されていない)が連通され、その管路途中にポンプ装置が介装されている。散気用給気管12にはブロワやコンプレッサなどの給気源が連通されている。
【0041】
図2に示すように、左側の最上段の膜モジュール20の上部連結部25(
図1(b)参照)、及び、右側の最下段の膜モジュール20の下部連結部26(
図1(b)参照)には、夫々集水管13が接続され、左側の最上段の膜モジュール20の下部連結部26、及び、右側の最下段の膜モジュール20の上部連結部25は、封止部材で封止されている。尚、
図2では、上部連結部25及び下部連結部26の記載は省略し、透過水の通流方向を破線矢印で示している。
【0042】
なお、この例では、膜モジュール20が縦に8段積層され、横に5列並設されているが、段数及び列数は適宜設定可能であり、例えば膜モジュール20を縦に12段積層し、横に5列並設した膜ユニット10や、膜モジュール20を縦に16段積層し、横に5列並設した膜ユニット10を構成することができ、このような膜ユニット10を複数設置することにより大規模な水処理設備を構築することができる。
【0043】
図3(a),(b)には上下に積層配置された膜モジュール20を吊り上げる吊り治具40が例示されている。吊り治具40は、長尺のベース部材41と、複数段に積層設置された各膜モジュール20に備えた係合孔24に対して係脱自在な複数の係合部42とを備えている。本実施形態では、ベース部材41に8個の係合部42が備えられている。膜モジュール20の膜分離装置10の本体フレーム11内での積層段数と同じ数量となっている。ベース部材41の上端には、環状部47が形成され、吊り治具40は、フック等に環状部47を係合させた状態で使用される。
【0044】
係合部42は、係合リング43と、一端に係合リング43に嵌入するリング部44が形成され他端がベース部材41に縫着されたスリング片45とを備えて構成され、係合リング43はスリング片45のベース部材41への縫着部46に固定されている。
【0045】
図4(a),(b)には、上述の吊り治具40を用いて特定段の膜モジュールを交換する手順の一部が示されている。8段に積層された膜モジュール(20a~20h)群の上から5段目に積層された膜モジュール20eを交換する場合、まず、膜モジュール群の左右両側に、最上段の膜モジュール20aから特定段の膜モジュール20eまでの各膜モジュールの係合孔24に吊り治具40の各係合部42を係合させる。
【0046】
クレーンに懸架された吊りビーム48には、膜モジュール20を四角から吊り上げできるように、4つのフック49が備えられ、夫々のフック49に吊り治具40が係合されている。
【0047】
4本の吊り治具40が係合された吊りビーム48を吊り上げることにより、最上段の膜モジュール20aから特定段の膜モジュール20eまでが、残りの膜モジュール20f,20g,20hから分離される。
【0048】
その後、膜モジュール20aから膜モジュール20eまでを基台に載置して、膜モジュール20eを新たな膜モジュールと交換した後に、吊りビーム48を吊り上げて、膜モジュール20f,20g,20hの上部に移動し、降下させることにより膜モジュール20eの交換作業が終了する。なお、吊り治具40の具体的構成は作業者が膜モジュール20に巻き付け操作する必要がある上述した態様に限らず、作業者が操作することなくロボットのような機械が自動的に膜モジュール20を引っ掛けることが可能な係止部を備えた吊り治具40を構成し、自動で交換処理できるような機械装置を用いてもよい。
【0049】
[膜モジュールの寿命管理]
生物処理槽に浸漬配置された膜ユニット10により透過水を取り出す運転状態では、ポンプを駆動して透過水を取り出す膜ろ過状態と透過水の取り出しを停止して散気のみ行ない膜面を浄化するリフレッシュ状態が所定のインタバルで繰り返される。また長時間の運転により膜モジュール20の膜詰まりの程度が高くなると、集水管13から洗浄液を供給して逆洗浄を行なうことにより膜性能を回復させる。
【0050】
膜モジュール20の寿命は略10年と非常に長いのであるが、累積運転時間が長くなるに連れてろ過性能が低下し、或いは破損する虞があり、また膜ユニット10の枠体11のどの位置に装着されているかによっても劣化の程度が異なる。例えば、枠体11の下方に装着された膜モジュール20に掛る負荷は、上方に装着された膜モジュール20に掛る負荷より大きい傾向がある。
【0051】
そのため、各膜モジュール20の製造時点から直近の使用時点までの履歴を管理することにより、各膜モジュール20の余命を把握することが重要となる。また、複数の膜ユニット10の其々で膜モジュール20の交換作業が頻発すると、メンテナンス作業が非常に煩雑となるばかりか安定した稼働が妨げられる虞もある。そのため、膜モジュール20の履歴管理方法及び履歴管理システムが構築されている。
【0052】
[膜モジュールの履歴管理システム]
図5に示すように、膜モジュールの履歴管理システム100は、複数の膜ユニット
10の其々に装着可能な各膜モジュール
20を個別に識別する膜ユニット識別情報を含む履歴情報を用いて
各膜モジュール20を個別に管理する管理サーバ120と、管理サーバ120と通信可能な複数の端末装置130を備えている。管理サーバ120と複数の端末装置130により情報管理装置110が構成されている。
【0053】
管理サーバ120には、膜モジュール識別情報を含む履歴情報、収容部材識別情報、膜ユニット識別情報などが登録されたデータベースシステムである情報記録部140が接続されている。管理サーバ120と各端末装置130はインターネットなどの通信媒体を介して接続されている。
【0054】
端末装置130は、膜ユニット10が配された各水処理施設及び膜モジュール20を製造する工場に其々設置されている。
【0055】
膜モジュール識別情報には製造ロット管理番号、製造管理番号が含まれ、製造ロット管理番号により製造工場、製造時期が管理され、製造管理番号により個々の膜モジュールが固有に識別されるとともに詳細な製造年月日が管理される。なお、情報記録部140には、製造ロット管理番号に製造工場、製造時期、製造管理番号などを関連付けた製造管理情報が格納されている。これらの情報は、膜モジュールの製造工場に設置された端末装置130から管理サーバ120に送信されて管理サーバ120を介して情報記録部140に格納される。
【0056】
膜モジュールの履歴情報には、上述した膜モジュール識別情報に加えて、膜モジュール識別情報に関連付けた膜ユニット識別情報、使用開始時期、稼働履歴、洗浄履歴、故障履歴が含まれる。膜ユニット識別情報とは膜モジュールが装着された膜ユニットを個別に識別するための識別情報である。膜モジュールの履歴情報によって、個々の膜モジュールがどの膜ユニットに装着され、いつから使用され、どの程度使用され、何回洗浄され、どのような故障が生じたのかが把握できるようになる。
【0057】
なお、稼働履歴、洗浄履歴、故障履歴には其々の発生した時期を明らかにするためにタイムスタンプが付されている。膜ユニット識別情報、使用開始時期、稼働履歴、洗浄履歴、故障履歴などの情報は水処理施設に設置された端末装置130から管理サーバ120に送信されて管理サーバ120を介して情報記録部140に格納される。
【0058】
収容部材識別情報とは工場で製造された膜モジュール20の一群を目的地の水処理施設に運搬する際に使用される収容部材50(
図6参照。)を個々に識別するための管理情報で、当該収容部材識別情報が付されたタグTが収容部材に取り付けられる。収容部材に取り付けられたタグT(
図6参照。)の情報を読み取ることにより、収容部材に収容された一群の膜モジュールを把握することができるように、情報記録部120には、同時に収容される一群の膜モジュールの個々の膜モジュール識別情報を関連付けた収容部材識別情報が記録される。
【0059】
図6(a),(b),(c)には収容部材50の複数の態様が示されている。
図6(a)には、
図1(a),(b)に示した膜ユニット10に縦方向に積層される8段の膜モジュール20の半分である4段の膜モジュール20を梱包単位である一群の膜モジュールとして、破線で示す梱包容器である収容部材50に収容して工場から水処理施設に運搬される。収容部材50には収容部材識別情報が付されたタグTが取り付けられている。
【0060】
図6(b)には、
図1(a),(b)に示した膜ユニット10に縦方向に積層される8段の膜モジュール20の半分である4段の膜モジュール20の5列を梱包単位である一群の膜モジュールとして、破線で示す梱包容器である収容部材50に収容して工場から水処理施設に運搬される。収容部50には収容部材識別情報が付されたタグTが取り付けられている。
【0061】
図6(c)には、4段の膜モジュール20の5列を1セットとして6セットを梱包単位である一群の膜モジュールとして、一纏めに梱包部材50に収容してパレットPに搭載して工場から水処理施設に運搬される。収容部材50には収容部材識別情報が付されたタグTが取り付けられている。
【0062】
工場から出荷する際に、工場に設置された端末装置130により各収容部材50を個別に識別可能な収容部材識別情報が生成され、対応する収容部材50に収容された一群の膜モジュール20の其々の膜モジュール識別情報が関連付けられてタグTに書き込まれるとともに、管理サーバ120に送信されて管理サーバ120から情報記録部140に格納される。なお、収容部材識別情報と膜モジュール識別情報が関連付けられて情報記録部140に格納されるため、タグTには収容部材識別情報のみが書き込まれる態様であってもよい。
【0063】
タグTとして、ICタグ、バーコードタグ、文字情報タグの何れかが用いられる。収容部材50に付されるタグTを例えばRFIDのようなICタグで構成すれば無線通信によりタグに付された情報を書込み及び読取りが可能となり、QRコード(登録商標)のような二次元バーコードを含むバーコードタグで構成すればバーコードリーダによりタグに付された情報を容易く読み取ることができ、文字情報タグで構成すれば、OCRなどによりタグに付された情報を容易く読み取ることができる。なお、バーコードタグや文字情報タグはプリンタにより容易に発行することができる。文字情報タグに付される文字情報としてアルファベットなどの文字、数字または記号、或いはそれらの組み合わせを採用することができる。
【0064】
膜ユニット識別情報は、個々の膜ユニット10を固有に識別する情報であり、各膜ユニット10の製造管理番号、型式、膜ユニット10が設置された水処理施設を特定する情報などで構成される。膜ユニット識別情報は、水処理施設に設置した端末装置130を介して管理サーバ120に送信されて管理サーバ120から情報記録部120に格納される。
【0065】
情報管理装置110(120,130)は、必要に応じて、出荷処理部110Aと、タグ書込処理部110Bと、入荷処理部110Cの各機能ブロックを備えている。
【0066】
出荷処理部110Aは、収容部材50に一群の膜モジュール20を収容する出荷処理の際に、一群の膜モジュール20の各膜モジュール識別情報を収容部材50の収容部材識別情報に関連付けて情報記録部140に登録する機能ブロックで、管理サーバ120と工場に設置された端末装置130とで構成される。上述したように工場出荷時に工場に設置された端末装置130からの送信情報に基づいて管理サーバ120が情報記録部140に登録する。
【0067】
タグ書込処理部110Bは、収容部材50に付されるタグTに、収容部材識別情報を書き込む機能ブロックで、管理サーバ120と工場に設置された端末装置130とで構成される。上述したように工場出荷時に工場に設置された端末装置130により収容部材識別情報及び膜モジュール識別情報がタグTに書き込まれるとともに、管理サーバ120に送信され、管理サーバ120を介して収容部材識別情報及び膜モジュール識別情報が情報記録部140に登録される。
【0068】
入荷処理部110Cは、収容部材50に収容された一群の膜モジュール20を膜ユニット10に装着する入荷処理の際に、タグTから読み出した収容部材識別情報に基づいて情報記録部140から読み出した膜モジュール識別情報を膜ユニット10の膜ユニット識別情報に関連付けて情報記録部に登録する機能ブロックで、管理サーバ120と水処理施設に設置された端末装置130とで構成される。なお、タグTに収容部材識別情報と関連付けた膜モジュール識別情報も格納されている場合には、情報記録部140から膜モジュール識別情報を読み出す必要はない。
【0069】
情報管理装置110は、さらに各収容部材50における各膜モジュール20の収容位置を示す収容部材アドレス情報と、各膜ユニット10における各膜モジュールの装着位置を示す膜ユニットアドレス情報と、を情報記録部140に登録可能に構成されている。
【0070】
出荷処理部110Aは、出荷処理の際に一群の膜モジュール20の各膜モジュール識別情報を収容部材50の収容部材識別情報と収容部材アドレス情報に関連付けて情報記録部140に登録する。
【0071】
例えば、
図6(a)に示す収容部材50では、下方から上方に向けたZ軸に沿って1,2,3,4の数値で収容部材アドレス情報が設定される。出荷処理部110Aは、収容部材50に収容される膜モジュール20の位置に基づいて、収容部材識別情報、収容部材アドレス情報、膜モジュール識別情報を関連付ける。
【0072】
例えば、
図6(b)に示す収容部材50では、下方から上方に向けたZ軸及びZ軸に直交するX軸に沿って(X,Z)で特定される数値の組み合わせで収容部アドレス情報が設定される。一番手前で上下方向に積層された膜モジュール20は下段から順番に(5,1)、(5,2)、(5,3)、(5,4)と収容部材アドレス情報が設定され、各収容部材アドレス情報に対応する膜モジュール識別情報が関連付けられる。
【0073】
例えば、
図6(c)に示す収容部材50では、下方から上方に向けたZ軸及びZ軸に直交するX軸、Y軸に沿って(X,Y,Z)で特定される数値の組み合わせで収容部アドレス情報が設定される。一番手前で上下方向に積層された膜モジュール20は下段から順番に(5,1,1)、(5,1,2)、(5,1,3)、(5,1,4)と収容部材アドレス情報が設定され、各収容部材アドレス情報に対応する膜モジュール識別情報が関連付けられる。
【0074】
入荷処理部110Cは、入荷処理の際に膜モジュール識別情報を膜ユニット10の膜ユニット識別情報と膜ユニットアドレス情報に関連付けて情報記録部140に登録する。
【0075】
例えば、
図1(a)に示す膜ユニット10では、下方から上方に向けたZ軸及びZ軸に直交するX軸に沿って(X,Z)で特定される数値の組み合わせで(1,1)から(5,8)の40個の膜ユニットアドレスが定義できる。
【0076】
入荷処理部110Cは入荷処理の際に収容部材アドレスで特定される膜モジュール識別情報を有する膜モジュール20が、何れの膜ユニット10の何れの膜ユニットアドレスに装着されたかを追跡して、収容部材アドレスから膜ユニットアドレスにアドレス変換処理することで、何れの膜ユニット10の何れの位置に何れの膜モジュール識別情報を有する膜モジュール20が装着されたかを把握して、把握した膜モジュール識別情報を膜ユニット10の膜ユニット識別情報と膜ユニットアドレス情報に関連付けて情報記録部140に登録する。
【0077】
図6(a),(b),(c)のように、収容部材50に収容される膜モジュール20の配列が膜ユニット10に装着される膜モジュール20の配列と整合性がある場合には、上述のアドレス変換処理が容易に行える。
【0078】
図1(a)に示した枠体11が分解可能で、例えば、上段側の4×5=20段の枠体と、下段側の4×5=20段の枠体とにZ方向に二分割できるような構成であれば、枠体11で収容部材50を構成することで、出荷処理及び入荷処理の際の管理が容易になる。枠体11の分割態様はこのような例に限るものではなく、例えば、Z方向に1×8=8段の枠体がX方向に5分割できるような構成であってもよい。
【0079】
つまり、膜ユニット10は、組付けまたは取外し可能で複数の膜モジュール20を装着可能な枠体であるフレーム部材で構成された複数の水処理ブロックを備え、情報記録部140に登録された各膜ユニット識別情報は、各水処理ブロックを個別に識別する水処理ブロック識別情報を含み、収容部材50に収容される一群の膜モジュール20の数は水処理ブロックに収容可能な膜モジュールの数に設定されていることが好ましい。そして、収容部材50がフレーム部材で構成されていることが好ましい。
【0080】
また、膜モジュール20を構成する集水ケース22やサイドプレート23などを、剛性を備えた素材で構成し、膜モジュール20それ自体にフレームとしての機能を持たせて別途の専用フレームを不要とするように構成することも可能である。この場合には、例えば、複数の膜モジュール20それ自体で収容部材50を兼用することも可能になる。
【0081】
図7には、そのような例として、膜モジュール20が縦に3段積層設置された膜モジュール群が、横に4列並設された膜ユニット10が示されている。各膜モジュール20は剛性を備えた素材、例えばアクリル樹脂などの硬質樹脂を用いてサイドプレート23を含むケーシングが構成され、各ケーシングから前後に延出した取付片20Aを介して上下の膜モジュール20がボルト固定され、最下段の膜モジュール20の取付片20Aを介して散気部15のフランジ部15Aにボルト固定されている。
【0082】
例えば、収容部材50に各膜モジュール20を収容する作業がロボット装置で自動化され、収容部材50に収容された各膜モジュール20を取り出して膜ユニット10に装着する作業がロボット装置で自動化される場合には、収容部材アドレスから膜ユニットアドレスに予めアドレス変換処理しておけば、各膜モジュール20をアドレス変換した膜ユニット10のアドレスに自動装着することが容易に行える。
【0083】
予めアドレス変換処理しない場合には、ロボット装置が収容部材50から取り出した膜モジュール20のアドレスと膜ユニットに装着した膜ユニットアドレスを記憶し、作業過程で或いは作業終了後にアドレス変換してもよい。
【0084】
ロボット装置の制御部が水処理施設に設置された端末装置130に組み込まれていてもよいし、ロボット装置の制御部が端末装置130と通信可能に構成され、ロボット装置の制御部により変換されたアドレスが端末装置130に送信されるように構成してもよい。
【0085】
例えば、収容部材50に各膜モジュール20を収容する作業が作業者により行われる場合には、一連の作業の終了の度に作業者がタブレットなどの携帯型のコンピュータを介して収容部材50のアドレスと膜ユニットアドレスとを関連付ける入力処理を行なってもよい。
【0086】
例えば、収容部材50から各膜モジュール20を取り出して膜ユニット10に装着する作業を映像データとして記録しておき、映像データを画像処理することで、アドレス変換処理を自動化してもよい。
【0087】
このようにして、各膜モジュールにICタグのような専用のデバイスを取り付けるような構成を採用しなくても、個々の膜モジュールの製造から使用に到る履歴を安価で正確に且つ容易に管理できるようになる。
【0088】
水処理施設で新設の膜ユニットを構築するために、工場で必要な膜モジュールを搬送部材に収容して水処理施設まで搬送して、一括して膜ユニットに装着する場合のみならず、工場で交換用の膜モジュールを搬送部材に収容して水処理施設まで搬送して、一部の膜モジュールを既設の膜ユニットの何れかの膜モジュールと交換する場合であっても本発明を適用できる。
【0089】
収容部材アドレス情報と膜ユニットアドレス情報を用いずに、単に収容部材識別情報と膜ユニット識別情報のみ用いて、膜モジュールを管理してもよく、その場合には、各膜モジュールが装着された膜ユニット単位で膜モジュールを把握できる。
【0090】
ただし、各膜モジュール20の集水ケース22の表面やサイドプレート23などに膜モジュール20の製造ロット管理番号を刻印していることが好ましい。情報記録部140に登録された膜モジュール識別情報により各膜モジュール20の履歴が把握できるのであるが、万一膜モジュール識別情報が情報記録部140から消失すると、個々の膜モジュール20の履歴などを把握することができなくなる虞がある。そのような場合でも各膜モジュール20に製造ロット管理番号を刻印しておけば、少なくとも製造ロット管理番号に基づいて最小限の管理が可能になる。
【0091】
以上、水処理機器の一例である膜ユニットを例に、水処理部材である膜モジュールの履歴管理方法及び履歴管理システムを説明したが、水処理部材は膜モジュールに限るものではなく、活性炭ユニットに装着される複数の活性炭カートリッジなどの水処理部材にも適用できる。また、水処理機器は複数であっても単数であっても何れでも本発明を適用することができる。
【0092】
即ち、本発明による水処理部材の履歴管理方法は、水処理機器に装着可能な複数の水処理部材を個別に識別する水処理部材識別情報を含む履歴情報を用いて管理する水処理部材の履歴管理方法であって、前記水処理部材識別情報と、一群の水処理部材を収容する搬送用の収容部材を個別に識別する収容部材識別情報と、前記水処理機器を個別に識別する水処理機器識別情報と、を情報記録部に登録可能な情報管理装置を用いて、前記収容部材に前記一群の水処理部材を収容する出荷処理の際に、前記一群の水処理部材の各水処理部材識別情報を前記収容部材の収容部材識別情報に関連付けて前記情報記録部に登録するとともに、前記収容部材識別情報を読み取り可能なタグを前記収容部材に付す第1ステップと、前記収容部材に収容された前記一群の水処理部材を前記水処理機器に装着する入荷処理の際に、前記タグから読み出した前記収容部材識別情報に基づいて前記情報記録部から得られる前記水処理部材識別情報を前記水処理機器の水処理機器識別情報に関連付けて前記情報記録部に登録する第2ステップと、を含む。
【0093】
そして、前記水処理機器は、組付けまたは取外し可能で複数の水処理部材を装着可能なフレーム部材で構成された複数の水処理ブロックを備え、前記情報記録部に登録された水処理機器識別情報は、各水処理ブロックを個別に識別する水処理ブロック識別情報を含み、前記収容部材に収容される一群の水処理部材の数は前記水処理ブロックに収容可能な水処理部材数に設定されていることが好ましい。
【0094】
前記収容部材が前記フレーム部材で構成されていることが好ましい。また、前記情報管理装置は、さらに各収容部材における各水処理部材の収容位置を示す収容部材アドレス情報と、前記水処理機器における各水処理部材の装着位置を示す水処理機器アドレス情報と、を前記情報記録部に登録可能に構成され、前記第1ステップで、前記一群の水処理部材の各水処理部材識別情報を前記収容部材の収容部材識別情報と前記収容部材アドレス情報に関連付けて前記情報記録部に登録し、前記第2ステップで、前記水処理部材識別情報を前記水処理機器の水処理機器識別情報と前記水処理機器アドレス情報に関連付けて前記情報記録部に登録することが好ましい。
【0095】
前記水処理部材識別情報は前記水処理部材の製造ロット管理情報に関連付けた固有の製造管理番号を含み、前記履歴情報は前記水処理部材識別情報に関連付けた水処理機器識別情報、使用開始時期、稼働履歴、洗浄履歴、故障履歴を含むことが好ましい。
【0096】
本発明による水処理部材の履歴管理システムは、水処理機器に装着可能な各水処理部材を個別に識別する水処理部材識別情報を含む履歴情報を用いて管理する水処理部材の履歴管理システムであって、前記水処理部材識別情報と、一群の水処理部材を収容する搬送用の収容部材を個別に識別する収容部材識別情報と、前記水処理機器を個別に識別する水処理機器識別情報と、を登録可能な情報記録部と、前記情報記録部が接続された情報管理装置と、を備え、前記情報管理装置は、前記収容部材に前記一群の水処理部材を収容する出荷処理の際に、前記一群の水処理部材の各水処理部材識別情報を前記収容部材の収容部材識別情報に関連付けて前記情報記録部に登録する出荷処理部と、前記収容部材に付されるタグに、前記収容部材識別情報を書き込むタグ書込処理部と、前記収容部材に収容された前記一群の水処理部材を前記水処理機器に装着する入荷処理の際に、前記タグから読み出した前記収容部材識別情報に基づいて前記情報記録部から読み出した前記水処理部材識別情報を前記水処理機器の水処理機器識別情報に関連付けて前記情報記録部に登録する入荷処理部と、を含む。
【0097】
前記情報管理装置は、さらに各収容部材における各水処理部材の収容位置を示す収容部材アドレス情報と、前記水処理機器における各水処理部材の装着位置を示す水処理機器アドレス情報と、を前記情報記録部に登録可能に構成され、前記出荷処理部は、出荷処理の際に前記一群の水処理部材の各水処理部材識別情報を前記収容部材の収容部材識別情報と前記収容部材アドレス情報に関連付けて前記情報記録部に登録し、前記入荷処理部は、入荷処理の際に前記水処理部材識別情報を前記水処理機器の水処理機器識別情報と前記水処理機器アドレス情報に関連付けて前記情報記録部に登録するように構成されていることが好ましい。
【0098】
上述した実施形態は本発明の一実施形態に過ぎず、該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、各部の具体的な構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能である。
【符号の説明】
【0099】
10:水処理機器(膜ユニット)
11:枠体
20:水処理部材(膜モジュール)
100:履歴管理システム
110:情報管理装置
110A:出荷処理部
110B:タグ書込処理部
110C:入荷処理部
120:管理サーバ(情報管理装置)
130:端末装置(情報管理装置)
140:情報記録部