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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】防水扉の圧迫機構
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20240117BHJP
   E06B 9/02 20060101ALI20240117BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B9/02 A
E04H9/14 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020099888
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021195719
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【弁理士】
【氏名又は名称】畑添 隆人
(72)【発明者】
【氏名】高井 直人
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-190150(JP,A)
【文献】特開2017-197981(JP,A)
【文献】特開2015-124526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E06B 9/02
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の上方に位置して躯体に固定される1枚のベースプレートと、
前記ベースプレートに対して当該ベースプレートの幅方向に隣接して並設された複数の圧迫手段と、を備え、
前記ベースプレートには、前記複数の圧迫手段の間に位置して固定用孔が形成されており、
前記ベースプレートは、周縁部の複数箇所において固定手段により前記躯体に固定され、かつ、前記固定用孔を利用して固定手段によって前記躯体に固定されている、
防水扉の圧迫機構。
【請求項2】
前記複数の圧迫手段は、1枚の中間プレートに当該中間プレートの幅方向に隣接して固定されており、前記中間プレートが前記ベースプレートに固定されている、
請求項1の防水扉の圧迫機構。
【請求項3】
前記中間プレートは、幅方向両側において前記ベースプレートに固定されており、
前記ベースプレートには、前記複数の圧迫手段の間に位置して、少なくとも1つの中間連結片が立ち上がり形成されており、
前記中間プレートには、前記複数の圧迫手段の間に位置して、前記少なくとも1つの中間連結片を挿通させる開口が形成され、当該開口の縁には中間受け片が立ち上がり形成されており、
前記中間プレートの前記中間受け片は、前記ベースプレートの前記中間連結片に固定されている、
請求項2に記載の防水扉の圧迫機構。
【請求項4】
前記固定手段は、アンカーボルトであり、
前記中間プレートには、前記複数の圧迫手段の間に位置し、前記ベースプレートの固定用孔に位置して、前記アンカーボルトを挿通可能な孔部が形成されている、
請求項2、3いずれか1項に記載の防水扉の圧迫機構。
【請求項5】
前記ベースプレートには、前記アンカーボルトの近傍に位置して、スペーサ挿入用開口が形成されており、
前記スペーサ挿入開口から挿入したスペーサが、前記躯体と前記ベースプレートの背面との間に位置して、前記アンカーボルトに係止可能となっている、
請求項4に記載の防水扉の圧迫機構。
【請求項6】
前記圧迫手段は螺子によって前記中間プレートに固定されており、
前記ベースプレートには、前記螺子の軸部の先端の逃げ孔が形成されている、
請求項2~5いずれか1項に記載の防水扉の圧迫機構。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水扉の圧迫機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、異常気象によるゲリラ豪雨が頻繁に発生し、都市部において、地下鉄構内やビル地階への雨水の浸水事故が発生している。非常時に建築物等の入り口等に設置して、外部の水が建物内に浸水するのを防ぎたい場合がある。また、ゲリラ豪雨時に限らず、建物開口部を防水状態で閉鎖して内部への浸水を防止したい場合がある。
【0003】
本出願人は、全閉状態のパネル(シャッターカーテン)を垂直方向に下方に圧迫する第1圧迫機構と、パネル(シャッターカーテン)を水平方向に圧迫する第2圧迫機構を備えた防水扉を提案しており、これらの圧迫機構の作動により、全閉状態のパネル(シャッターカーテン)を垂直方向及び水平方向に圧迫して防水機能を付与するようにしている(特許文献1)。
【0004】
第1圧迫機構によって、全閉状態のシャッターカーテンを安定して垂直圧迫するためには、複数の圧迫手段を開口幅方向に亘ってバランス良く配置し、パネル幅方向に亘って均等に垂直方向の力を作用させることが望ましい。したがって、開口幅が比較的狭い場合であっても、複数の圧迫手段を設けることが重要である。従来用いている複数の圧迫手段と同等の圧迫手段を1台に減らした場合には、パネルを均等に押すことができず、防水性能に影響を与えるおそれがある。一方、複数の圧迫手段に代えて1台の大型(出力が大きい)の圧迫手段(パワーシリンダ等)を採用することも検討されるが、開口部上方の有効スペース等の観点から、大型の圧迫手段を採用することは困難である。
【0005】
しかしながら、開口幅が比較的狭い場合には、以下の理由から、複数の圧迫手段を並設ことが困難である。第1圧迫機構の圧迫手段のアクチューエタ(例えば、パワーシリンダ)は、建物開口部上方の空間に位置させて、躯体に固定されるようになっている。従来は、1つの圧迫手段(1台のパワーシリンダ)に対して1枚の取付ベースを用いて躯体に固定される。躯体が鉄骨等の場合には、固定手段として溶接が用いられ、躯体がコンクリート構造物等の場合には、固定手段としてアンカーボルトが用いられる。圧迫手段を躯体に溶接する場合には、取付ベースを躯体に溶接するための取付け代(溶接スペース)が必要となるため、複数の取付ベースを幅方向に近接して躯体に溶接することは困難である。圧迫手段を躯体に突設したアンカーボルトに固定する場合には、強度の確保等の理由からアンカーボルトを幅方向に近接して突設することが困難であり、このことは、複数の取付ベースを幅方向に近接して配置することが困難であることを意味する。
【0006】
また、開口部上方の躯体には左右に位置して第2圧迫機構のアクチューエタ(例えば、パワーシリンダ)が取り付けられるため、開口幅寸法が制限されているような場合には、第1圧迫機構の複数の圧迫手段アクチュエータを開口幅方向に離間させて設けることが困難である。
【文献】特開2015-151749
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、防水扉が、開口幅が狭い開口部に設置されるような場合であっても、十分な垂直方向の圧迫力を扉体に作用させて防水性能を確保可能な防水扉の圧迫機構を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が採用した技術手段は、
開口部の上方に位置して躯体に固定される1枚のベースプレートと、
前記ベースプレートに対して当該ベースプレートの幅方向に隣接して並設された複数の圧迫手段と、を備え、
前記ベースプレートには、前記複数の圧迫手段の間に位置して固定用孔が形成されており、
前記ベースプレートは、周縁部の複数箇所において固定手段により前記躯体に固定され、かつ、前記固定用孔を利用して固定手段によって前記躯体に固定されている、
防水扉の圧迫機構、である。
1つの態様では、固定手段は、固定具、すなわち螺子(ボルト、アンカーボルト、アンカーナットを含む)である。
1つの態様では、固定手段は、溶接である。
1つの態様では、圧迫手段の個数は2つであるが、これには限定されない。
【0009】
1つの態様では、前記複数の圧迫手段は、1枚の中間プレートに当該中間プレートの幅方向に隣接して固定されており、前記中間プレートが前記ベースプレートに固定されている。
【0010】
1つの態様では、前記中間プレートは、幅方向両側において前記ベースプレートに固定されており、
前記ベースプレートには、前記複数の圧迫手段の間に位置して、少なくとも1つの中間連結片が立ち上がり形成されており、
前記中間プレートには、前記複数の圧迫手段の間に位置して、前記少なくとも1つの中間連結片を挿通させる開口が形成され、当該開口の縁には中間受け片が立ち上がり形成されており、
前記中間プレートの前記中間受け片は、前記ベースプレートの前記中間連結片に固定されている。
1つの態様では、前記ベースプレートにおいて、前記中間連結片は、前記固定用孔の上下に位置して形成されている。
1つの態様では、前記ベースプレートには、幅方向両側に位置して少なくとも1つの連結片が立ち上がり形成されており、
前記中間プレートには、幅方向両側に位置して少なくとも1つの受け片が立ち上がり形成されており、
前記中間プレートの前記受け片は、前記ベースプレートの前記連結片に固定されている。
【0011】
1つの態様では、前記固定手段は、アンカーボルトであり、
前記中間プレートには、前記複数の圧迫手段の間に位置し、前記ベースプレートの固定用孔に位置して、前記アンカーボルトを挿通可能な孔部が形成されている。
【0012】
1つの態様では、前記ベースプレートには、前記アンカーボルトの近傍に位置して、スペーサ挿入用開口が形成されており、
前記スペーサ挿入開口から挿入したスペーサが、前記躯体と前記ベースプレートの背面との間に位置して、前記アンカーボルトに係止可能となっている。
躯体(例えば垂れ壁)の取付面の精度が出ていない場合に、横長方形状のベースプレートの幅方向中央部位と躯体の取付面との間にクリアランスが生じる場合があり、このような場合に、ベースプレートの背面と躯体の取付面との間にスペーサを挿入することで、ベースプレートの背面と躯体の取付面とをスペーサを介してしっかり固定することができ、圧迫手段が全閉姿勢にある扉体を垂直方向に圧迫する際に、ベースプレートにガタツキが生じないようにする。
1つの態様では、前記スペーサ挿入開口は、前記固定用孔と一体形成されている。
1つの態様では、前記スペーサ挿入開口は、前記固定用孔とは独立して当該固定用孔に隣接して形成されている。
なお、前記ベースプレートの面部の周縁部の背面と躯体との間にスペーサを挿入してもよい。
【0013】
1つの態様では、前記圧迫手段は螺子によって前記中間プレートに固定されており、
前記ベースプレートには、前記螺子の軸部の先端の逃げ孔が形成されている。
【0014】
本発明は、開口幅が狭い小開口部であっても、防水板や防水開き戸を用いることなく、防水シャッターを取り付けることを可能とするものであり、後述する実施形態では防水扉はパネルシャッターから構成されている。小開口部に防水構造を提供する手段として防水板や防水機能を備えた開き戸が知られているが、開口高が高い場合には、これらの手段を採用することは困難である。もっとも、本発明に係る防水扉は、垂直圧迫によって防水状態を形成することができるものであればパネルシャッターに限定されるものではなく、他の扉体、例えば、スラットシャッターや他のドア装置でもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、複数の圧迫手段を、共通の1枚のベースプレートに取り付けることで、複数の圧迫手段を接近させて並設することを可能とし、圧迫機構全体の幅寸法をより小さくすることができ、開口幅が狭い開口部に設置された扉装置であっても、複数の圧迫手段を採用することができ、十分な垂直方向の圧迫力を扉体に作用させて防水性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る防水パネルシャッターを室内側から見た概略正面図である。
図2】本実施形態に係る防水パネルシャッターの概略縦断面図(図1における矢視方向から見た縦断面図)であり、左側が室外側、右側が室内側である。
図3】本実施形態に係る防水パネルシャッターの概略部分横断面図であり、上側が室内側、下側が室外側である。
図4】最上位のパネルの側面図及び正面図である。
図5】本実施形態に係る第1圧迫機構(垂直圧迫機構)の正面図である。
図6】本実施形態に係る第1圧迫機構(垂直圧迫機構)の側面図である。
図7】本実施形態に係る第1圧迫機構における支持構造(ベースプレート及びブラケット)を示す正面図、及び縦断面図(図7における矢視方向から見た縦断面図)である。
図8】本実施形態に係るベースプレートの正面図、平面図、側面図、及び、縦断面図(図8における矢視方向から見た縦断面図)である。
図9】本実施形態に係るブラケット(中間プレート)の正面図、平面図、側面図、及び、縦断面図(図9における矢視方向から見た縦断面図)である。
図10】本実施形態に係るスペーサを示す図である。
図11】第1圧迫機構における支持構造(ベースプレート及びブラケット)の横断面図であって、上図は、ベースプレートと躯体の間にスペーサを設けた態様、下図は、ベースプレートと躯体の間にスペーサを設けない態様を示す。
図12】第1圧迫機構における支持構造(ベースプレート及びブラケット)の部分横断面図であって、ベースプレートとブラケットの間隔が狭い態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[A]パネルシャッターの全体構成
図1は、全閉姿勢にあるパネルシャッターを室内側から見た正面図であり、図2は、パネルシャッターを、図1において矢視方向から見た縦断面図である。図1図2に示すように、本実施形態に係るパネルシャッターは、複数枚のパネル1から構成されたシャッターカーテンと、建物開口部の幅方向両端に立設され、垂直姿勢のパネル1の幅方向両端部を案内する左右のガイド枠2と、を備えている。本実施形態に係るパネルシャッターは電動式であり、開閉機Mの駆動によって、シャッターカーテンが開口部を閉鎖する閉鎖姿勢と、開口部を開放する収納姿勢との間で開閉移動するようになっている。図2において、パネル1(シャッターカーテン)の右側が室内側、左側が室外側である。図1に示すように、本実施形態に係る建物開口部の開口幅は、開口高に対して比較的幅狭となっている。
【0018】
パネル1は、所定厚みを備え、開口幅方向に延びる正面視横長方形状の要素である。本実施形態に係るパネル1は、高さ寸法に対して幅寸法が比較的短尺となっている。開口部全閉状態において、パネルの一方の面部10が室外側に面し、他方の面部11が室内側に面するようになっている。図3に示すように、各パネル1の幅方向両端の側面部12には、支軸13が突設されており、支軸13の先端にはガイドローラ14が設けてある。各パネル1は支軸13を介してチェーンCに連結されて吊持されることでシャッターカーテンを形成する。
【0019】
図3に示すように、ガイド枠2は、離間対向する室外側見付壁20及び室内側見付壁21と、見込方向に延びる底壁22と、から断面視コ字状に形成され、開口全高に延びる長尺部材(図1参照)である。室外側見付壁20と室内側見付壁21の先端側は互いに対向するように前辺200、210が折曲形成されており、前辺200は、室外側見付壁20の先端から室内側へ向かって室外側見付壁20に対して垂直に延びており、前辺210は、室内側見付壁21の先端から室外側へ向かって室内側見付壁21に対して垂直に延びている。そして、前辺200、210の先端間の開口溝にパネル1の幅方向端部を受け入れるようになっている。
【0020】
ガイド枠2の底壁22には、高さ方向に延びる長尺部材であって、ガイドローラ14の周面に接触して案内するガイド部材23が設けてある。室外側見付壁20と室内側見付壁21の先端側の前辺200、210の外面には、それぞれ高さ方向に延びる長尺状の弾性ゴムからなる一対のフィン24が設けてあり、パネル1の昇降時及び全閉時に、パネル1の室外側の面部10、室内側の面部11に接触するようになっている。ガイド枠2の室内側見付壁21の先端側の内面には高さ方向に延びる長尺部材である水密ゴム部材25が設けてあり、ガイド枠2の室外側見付壁20の先端側の内面には高さ方向に延びる長尺部材である水平方向押圧部材41が設けてあり、各パネル1の幅方向端部は、室外側の水平方向押圧部材41と、室内側の水密ゴム部材25と、の間の開口に受け入れられる。水平方向押圧部材41については、後述する。なお、ガイド枠2の見込面の下方部位には、室内側、室外側にそれぞれ位置して光電センサー26が設けてある。
【0021】
ガイド枠2の上端は、開口部上方のパネル収納空間内まで延びており、パネル1の幅方向両端部のガイドローラ14を案内する上側延出部2´を備えている。上側延出部2´は、ガイドローラ14に室外側及び室内側の両側から接触可能に構成されている。開口部上方の収納空間には、上側延出部2´の略上端に位置してチェーンCを巻き掛けするためのスプロケットSが設けあり、開閉機MによってスプロケットSを回転させて、チェーンCを吊上げ、あるいは、繰り出すことで、パネル1を上昇、あるいは、下降させて建物開口部を開閉するようになっている。
【0022】
このように構成されたパネルシャッターにおいて、開口部全閉状態において、開閉機MによりスプロケットSをチェーン吊上げ方向に回転駆動すると、全閉状態の垂直姿勢にある各パネル1は、チェーンCの上昇にしたがって、幅方向両端部が垂直状のガイド枠2に案内されながら、上昇していき、上位のパネル1から、ガイド枠2の上側延出部2´から横方向に延びる収納レールRに順次受け渡され、収納空間で平行状に収納されていき、開口部が開放される。
【0023】
開口部全開状態において、開閉機MによりスプロケットSをチェーン繰り出し方向に回転駆動すると、平行状に収納されていたパネル1は幅方向両端部のガイドローラ14が収納レールRに案内されながら順次収納空間の奥側からスプロケットS側へ引き出され、スプロケットSを通過する時に、高さ方向に互いに上下に垂直姿勢となってガイド枠2に案内されながら降下していき、開口部が閉鎖される。
【0024】
シャッターカーテン降下時には、上下に隣接する2枚の任意のパネル1において、下側のパネル1の上端部15と上側のパネル1の下端部16とは離間した状態にあり、シャッターカーテン降下時に、最下位のパネル1の下端が着床した後に、シャッターカーテンがさらに所定距離下降を継続することで、上下に隣接する2枚の任意のパネル1において、下側のパネルの上端部15と上側のパネルの下端部16とが接触して全閉状態となる。図2に示すように、最上位のパネル1を除く各パネル1の上面部には、幅方向全体に亘って水密ゴム18が設けてあり、最下位のパネル1の下端には、幅方向全体に亘って水密ゴム19が設けてあり、後述する垂直圧迫状態では、これらの水密ゴム18、19が押圧状態となり水密性が確保される。
【0025】
[B]防水構造
本実施形態に係るパネルシャッターは、いわゆる管理用のパネルシャッターとして開口部の通常の開閉に用いられ得るが、全閉状態のパネルシャッターに対して防水機能を付与することで防水扉を構成することができる。本実施形態では、防水機能を付与する手段は、全閉状態にあるパネル1を垂直方向に下方に圧迫する第1圧迫機構3と、第1圧迫機構3によって垂直方向に圧迫されたパネル1を一体で室内側へ向かって水平方向に圧迫する第2圧迫機構4とからなる。
【0026】
[B-1]第1圧迫機構
図1に示すように、第1圧迫機構3は、開口部上方に位置して、開口幅方向の中央に位置して設けてあり、また、図2に示すように、第1圧迫機構3は、開口部上方において、パネル1の昇降を妨げないように、パネル1の昇降経路に対して室外側に偏倚して、躯体(垂れ壁)Wに設けてある。
【0027】
図5に示すように、第1圧迫機構3は、開口幅方向に並設された2つの圧迫手段と、圧迫手段を支持し、躯体Wに取り付けられる支持構造7と、を備えている。本実施形態に係る支持構造7は、ベースプレート5と、ベースプレート5に固定されるブラケット6と、からなる(図7参照)。より具体的には、支持構造7は、2つ圧迫手段が取り付けられた1枚のブラケット(中間プレート)6と、1枚のブラケット6が固定された1枚のベースプレート5と、からなり、ベースプレート5は、開口部の上方に位置して躯体Wに固定される。ベースプレート5と躯体Wの壁面との間には、必要に応じて、適宜スペーサ8を設けてもよい。支持構造7(ベースプレート5、ブラケット6)の構成の詳細については、後述する。
【0028】
第1圧迫機構3の各圧迫手段は、アクチュエータとして例示するパワーシリンダ30と、パワーシリンダ30のピストンロッド31の先端に設けられ、全閉状態の最上位のパネル1の上端に当接して押圧する押圧部32と、を備えている。開口部全閉状態において、ピストンロッド31を下降させ、押圧部32を最上位のパネル1の上端に当接させて下方に向かって押圧することで、全閉姿勢にあるパネルを下方に向かって垂直に圧迫する。
【0029】
図4に示すように、最上位パネル1の上端部15の幅方向の所定部位には、第1圧迫機構3の2つの圧迫手段の押圧部32に対応して、2つの凹部17が形成されており、凹部17の底面には当接プレート170が設けてある。凹部17の幅寸法は、押圧部32の下面の幅よりも大きく、凹部17の底部が押圧部32の下面の当接面(図示の態様では当接プレート170)となっている。垂直圧迫時には、第1圧迫機構3の押圧部32が当接プレート170に当接して、全閉姿勢にあるシャッターカーテンを下方に押圧するようになっている。
【0030】
最上位のパネル1を除く各パネル1の上面部には、幅方向全体に亘って水密ゴム18が設けてあり(図2参照)、開口部全閉時において、上下隣接する2枚のパネル1の上側パネル1の下端と下側パネル1の上端とを水密ゴム18を介して圧接させることで、上下隣接するパネル間の防水構造が得られるようになっている。最下位のパネル1の下端には、幅方向全体に亘って水密ゴム19が設けてあり(図2参照)、開口部全閉時において、水密ゴム19が床面FLに圧接されることでシャッターカーテン下端の防水構造が得られるようになっている。すなわち、第1圧迫機構3によって、全閉状態のシャッターカーテンを上端から床面FLに向かって垂直に圧迫することで上下に隣接するパネル1間及び最下位のパネル1と床面FL間の水密状態が得られる。第1圧迫機構3の動作の詳細については、特許文献1を参照することができる。
【0031】
[B-2]第2圧迫機構
本実施形態に係る第2圧迫機構4は、アクチュエータとしてのパワーシリンダ40と、パワーシリンダ40の動作に連動して圧迫姿勢と圧迫解除姿勢をとる水平方向押圧部材41と、を備えている。第2圧迫機構4のパワーシリンダ40は、開口部上方には開口幅方向の左右端部に位置してそれぞれ設けてあり(図1参照)、水平方向押圧部材41は、左右のガイド枠2内にそれぞれ設けてある(図3参照)。第2圧迫機構4のパワーシリンダ40は、第1圧迫機構3のパワーシリンダ30と同様に、開口部上方の収納空間におけるパネル1の昇降を妨げないように、パネル1の昇降経路に対して室外側に偏倚して、方形の取付プレート40´を介して躯体(垂れ壁)Wに設けてある。図2では、パワーシリンダ40はパワーシリンダ30に隠れており、下端部位(作動ロッド412の上端部位との連結部)のみが示されている。
【0032】
図3に示すように、水平方向押圧部材41は、高さ方向に延び、全体として断面視長方形状に形成されており、ガイド枠2の室外側見付壁20の先端側の内面に位置して設けられている。ガイド枠2の室内側見付壁21の先端側の内面には高さ方向に延びる長尺部材である水密ゴム部材25が設けてあり、各パネル1の幅方向端部は、室外側の水平方向押圧部材41と、室内側の水密ゴム部材25と、の間の開口に受け入れられる。
【0033】
水平方向押圧部材41は、ガイド枠2に沿って垂直に延びる断面視コ字状で長尺状の第1部材(室外側部材)410と、ガイド枠2に沿って垂直に延びる断面視コ字状で長尺状の第2部材(室内側部材) 411と、を備えている。第1部材410と第2部材411はリンク機構によって接続されており、第2部材411は第1部材410に近づいた状態と、第1部材410から離れた状態を取るようになっている。リンク機構は、パワーシリンダ40のピストンロッド400の動作に応じて昇降する作動ロッド412に連結されている。本実施形態では、ピストンロッド400と作動ロッド412は、ピストンロッド400の下方への突出に連動して作動ロッド412が上動するようにリンク機構(図示せず)を介して連結されている。
【0034】
非水平圧迫状態では、パネル1の支軸13の先端のガイドローラ14の周面は、ガイド枠2の底部側に設けたガイド部材23に接触ないし近接している。シャッターカーテンの昇降時には、各パネル1は、室外側面部、室内側面部がそれぞれフィン24と接触しながら、ガイドローラ14の周面がガイド部材23に案内されて、高さ方向に上下動する。ガイドローラ14の室外側周面がガイド部材23に接触することによって、通常開閉時及び通常の全閉状態において、金属製の水平方向押圧部材41とパネル1の面部10の幅方向端部との接触が規制されている。
【0035】
シャッターカーテンの全閉姿勢時において、水平方向押圧部材41と水密ゴム部材25とは、これらの間にパネル1の幅方向端部を介在して対向しており、また、ガイドローラ14の室内側周面はフリー(部材によって案内されない)であり、パネル1が室内側へ移動することに応じてガイドローラ14も室内側へ移動可能となっており、水平方向押圧部材41によってパネル1の端部を室内側へ押圧することで、パネル1の室内側面部の幅方向端部が水密ゴム部材25に圧接され、シャッターカーテン幅方向両端部の高さ方向に亘る防水構造が得られる。
【0036】
本実施形態では、ピストンロッド400を下方に突出させることで、作動ロッド412が垂直状に引き上げられ、作動ロッド412の上動に連動して、リンク機構を介して、第2部材411が第1部材410から離れるようにパネル1に向かって押し出されてパネル1の幅方向端部の室外側の面部10に当接し、パネル1の室内側の面部11が水密ゴム部材25を圧迫することで、第1圧迫機構3によって垂直方向に圧迫された全パネル1を一体で室内側に向かって圧迫して、水平圧迫状態を得る。第2圧迫機構4の構成及び動作の詳細については、特許文献1を参照することができる。
【0037】
シャッターカーテンの垂直圧迫状態において、水密ゴム18が上下隣接するパネル1間を水密状態に閉塞し、水密ゴム19が最下端のパネル1の下端と床面との間の水密状態に閉塞する。第2圧迫機構によって、垂直圧迫状態にあるシャッターカーテンがさらに水平方向に圧迫されて、水平圧迫状態となると、パネル1の室内側面部11が水密ゴム部材25に圧接されて、開口幅方向両端部を水密状態に閉塞する。このようにシャッターカーテンが圧迫状態(垂直圧迫状態兼水平圧迫状態)となると、上下のパネル間が水密状に閉塞されると共に、シャッターカーテンの三方(左右のガイド枠2内に位置するシャッターカーテンの幅方向両端部及びシャッターカーテン下端)の水密ゴム19、25によって室内側空間への浸水を防ぐ防水ラインが形成される。
【0038】
[B-3]防水扉の動作制御
図2に示すように、本実施形態に係る防止扉は、第1室外側スイッチボックスSB1、第2室外側スイッチボックスSB2、室内側スイッチボックスSB3、すなわち3つの操作スイッチ、を備えている。第1室外側スイッチボックスSB1、室内側スイッチボックスSB3は、立った姿勢で操作し易いように、床面から1500mmの高さに位置して配置されている。第2室外側スイッチボックスSB2は、想定最大水位を越える高さに位置して配置されている。
【0039】
スイッチボックスSB1~SB3は、内部に操作パネル(図示せず)を備えており、操作パネルには、複数の操作スイッチが設けてある。操作スイッチとしては、例えば、開放ボタン、閉鎖ボタン、停止ボタン、圧迫ボタン、圧迫解除ボタン、非常閉鎖ボタンが設けてある。パネルシャッターの動作(シャッターカーテンの開閉動作、圧迫動作、圧迫解除動作等)はこれらのボタンからの入力に基づいて制御される。
【0040】
第1圧迫機構3は、第1リミットスイッチ33、第2リミットスイッチ34を備えている。第1リミットスイッチ33は垂直圧迫解除状態(圧迫が完全に解除されている状態)を検知する手段であり、第2リミットスイッチ34は垂直圧迫状態検知手段である。同様に、第2圧迫機構4も、水平圧迫状態検知手段を構成するリミットスイッチを備えている。動作制御の詳細については、特許文献1を参照することができる。
【0041】
[B-4]中柱
図1図2に示すように、本実施形態では、防水扉は可動の1本の中柱9を備えている。中柱9は、防水状態にあるシャッターカーテンを室内側から支持する補強中柱であって、全閉状態にあるパネル1の室内側かつ開口幅の中央に位置して、パネル1の室内側の面部11に近接対向して設置される。
【0042】
中柱9の上端にはハンガーローラ90が設けてあり、中柱9は、開口部上方に位置して開口幅方向に延びるハンガーレールHRに沿って収納位置と設置位置との間で移動可能となっている。中柱9には操作レバー91が設けてあり、中柱9を設置位置まで移動させて、操作レバー91を回動操作することで、上側係止ロッド92、下側係止ロッド93がそれぞれ突出して天井部、床面FLに係止することで設置位置が固定されるようになっている。
【0043】
全閉状態のシャッターカーテンの室内側に位置して中柱9を配置することで、防水状態において、シャッターカーテンに作用し得る水圧に対抗するようにしている。室外側からの水圧によってシャッターカーテンが室内側に膨出状に変形した時には、シャッターカーテンの室内側面部(パネル1の室内側面部)が中柱9に当接支持されることによって、それ以上の変形が防止される。
【0044】
[C]第1圧迫機構の支持構造ないし取付構造
本実施形態に係る第1圧迫機構3は、2つの並設された圧迫手段を備え、2つの圧迫手段を共通の1枚のベースプレート5(及びブラケット6)に取り付けることで、2つの圧迫手段を可及的に近づけて躯体Wに設置するようにしている。図5に示すように、2つの圧迫手段は、左側の圧迫手段の取付プレート35の右端と右側の圧迫手段の取付プレート35の左端を近づけて並設されている。図1に示すように、躯体Wには、左右に位置して第2圧迫機構4のアクチュエータとしてのパワーシリンダ40が配置されており、第1圧迫機構3の2つの圧迫手段を開口幅方向に離間して取り付けるスペースが無い。第2圧迫機構4の左側のアクチュエータの取付プレート40´の右端と、第1圧迫機構3のベースプレート5の左端は近づけて配置されており、第2圧迫機構4の右側のアクチュエータの取付プレート40´の左端と、第1圧迫機構3のベースプレート5の右端は近づけて配置されている。以下、第1圧迫機構3の支持構造ないし取付構造について詳細に説明する。
【0045】
[C-1]ベースプレート
図8に示すように、ベースプレート5は、横長方形状の面部50を備えており、面部50の幅方向両端部位には、所定幅の周縁部50´を残すようにして、上下に位置して上側端部立ち上がり片51、下側端部立ち上がり片52が突成されており、面部50の幅方向中央部位の上下に位置して上側中央立ち上がり片53、下側中央立ち上がり片54が突成されており、面部50の幅方向中央部位において、上下の中央立ち上がり片53、54の間に位置して開口55が形成されている。本実施形態では、上側端部立ち上がり片51、下側端部立ち上がり片52、上側中央立ち上がり片53、下側中央立ち上がり片54は、面部50に溶接されている。
【0046】
上側端部立ち上がり片51、下側端部立ち上がり片52、上側中央立ち上がり片53、下側中央立ち上がり片54には、それぞれ、突出方向(立ち上がり方向)に延びる長孔510、520、530、540が形成されている。本実施形態では、上側中央立ち上がり片53、下側中央立ち上がり片54の板厚は、上側端部立ち上がり片51、下側端部立ち上がり片52の板厚よりも厚くなっており、強度を大きくしている。
【0047】
ベースプレート5の面部50の略中央部位に形成した開口55は正面視方形状の第1部分550と、第1部分550の下端に一体形成された正面視U形状の第2部分551と、からなる。第2部分551はいわば溝部であり、溝幅は第1部分550の幅に対して小さい。開口55の第1部分550は、スペーサ8を挿入するための開口であり、第2部分551は、ベースプレート5の固定用孔である。本実施形態では、スペーサ8の挿入開口とベースプレート5の固定用孔が1つの開口55として一体形成されているが、該挿入開口と該固定用孔を別個に独立させて面部50に形成してもよい。
【0048】
ベースプレート5の面部50の幅方向両端の周縁部50´には高さ方向に亘って複数の挿通孔56が設けてある。また、ベースプレート5の面部50の下端の周縁部には、幅方向に亘って複数の挿通孔56が設けてあり、これらの挿通孔56は、ベースプレート5の固定用孔であり、躯体Wの所定位置に突設した複数本のアンカーボルトab受け入れるようになっている。
【0049】
ベースプレート5の面部50の中央の開口55の第2部分551の溝幅は挿通孔56の径と同じであり、開口55の第2部分551は、アンカーボルトabの固定用孔となっている。開口55の第1部分550は、スペーサ8を挿入するための挿入開口である。本実施形態では、開口55の第1部分550が第2部分551の直上に位置しているので、スペーサ8の挿入作業がやりやすく、また、第1部分550と第2部分551が連続しているので、スペーサ8の出し入れを容易に行うことができる。上述のように、開口55を該挿入開口に対応する開口と該固定用孔に対応する挿通孔に分離して、面部50に形成してもよい。
【0050】
ベースプレート5の面部50の所定位置(幅方向の左半部の上下左右に4箇所、幅方向の右半部の上下左右に4箇所)には、複数の円形状の開口57が形成されている。これらの開口57は、パワーシリンダ30をブラケット6に固定する固定用ボルト67b及びナット67nを逃がすためのものであり、これについては後述する。
【0051】
本実施形態に係るベースプレート5において、上下の端部立ち上がり片51、52は、高さ方向に延びる中間立ち上がり片58(上下の端部立ち上がり片51、52より低背である)によって接続され一体化されており、一体化された立ち上がり片は、さらに、平面視台形状の上片51´、下片52´を備えており、正面視略コ字形状(上下の端部立ち上がり片51、52、中間立ち上がり片58、上片51´、下片52´)となっている。上片51´、下片52´によって、上下の端部立ち上がり片51、52が補強されている。なお、中間立ち上がり片58の立ち上がり寸法を小さくしたことで、ボルト67bの締付けやナット66n´の締付けを側方から行うことを可能としている(図6参照)。
【0052】
[C-2]ブラケット(中間プレート)
図9に示すように、ブラケット6は、横長方形状の面部60を備えたプレートであり、面部60の幅方向両端部位の上下に位置して上側端部立ち上がり片61、下側端部立ち上がり片62が突成され、幅方向中央部位の上下に位置して上側中央立ち上がり片63、下側中央立ち上がり片64が突成され、幅方向中央部位には、上下の中央立ち上がり片63、64の間に位置して円形状の開口65が形成されている。中央立ち上がり片63、64は、それぞれ、面部60に形成した方形状の開口63´、64´に隣接して立ち上がり形成されている。また、下側中央立ち上がり片64の下端には水平状の補強片64´´が立ち上がり形成されている。
【0053】
上側端部立ち上がり片61、下側端部立ち上がり片62、上側中央立ち上がり片63、下側中央立ち上がり片64には、それぞれ、挿通孔610、620、630、640が形成されており、上側端部立ち上がり片61、下側端部立ち上がり片62、上側中央立ち上がり片63、下側中央立ち上がり片64には、挿通孔610、620、630、640にそれぞれ一致するように、ナット61n、62n、63n、64nが設けてある。ナット61n、62n、63n、64nには、ベースプレート5にブラケット6を固定するための固定用ボルト61b、62b、63b、64bがそれぞれ締付けられるようになっている。
【0054】
ブラケット6の面部60の所定位置には、挿通孔66が形成されており、面部60の前面には、挿通孔66に位置してナット66nが設けてある。ナット66nには、ベースプレート5の面部50とブラケット6の面部60との距離を調整し決定する位置調整用ボルト66bが締付けられるようになっている。また、図6に示すように、位置調整用ボルト66bには位置決め用のナット66n´が設けてあり、ナット66nに当接するように締付けられる。
【0055】
ブラケット6の面部60の所定位置には、挿通孔67が形成されており、面部60の背面には、挿通孔67に位置してナット67nが設けてある。より具体的には、ブラケット6の面部60の幅方向の一方の半部には、上下左右に4つの挿通孔67、ナット67nが設けられており、一方のパワーシリンダ30を取り付けるための固定用ボルト67bがナット67nに締付けられるようになっており、他方の半部には、上下左右に4つの挿通孔67、ナット67nが設けられており、他方のパワーシリンダ30を取り付けるための固定用ボルト67bがナット67nに締付けられるようになっている。
【0056】
ブラケット6の面部60の上端には、面部60の全幅に亘って水平状に延びる上面部68が設けてある。上面部68には、幅方向に間隔を存して2つの挿通孔680が形成されており、上面部68の下面には、挿通孔680に一致してナット68nが設けてある。ナット68nには、ブラケット6に対するパワーシリンダ30の高さ位置を調整する位置調整用ボルト68bが締付けられるようになっている。また、上面部68の下面と上側端部立ち上がり片61、上側中央立ち上がり片63がそれぞれ連結されることで、上側端部立ち上がり片61、上側中央立ち上がり片63の強度を大きくしている。
【0057】
[C-3]スペーサ
ベースプレート5の面部50の背面と躯体Wとの間には、必要に応じて、適宜1枚ないし複数枚のスペーサ8が設けられ得る。スペーサ8は、横幅L1、縦幅L2を備え、厚さtの方形状のプレートであり、四辺のうちの1つの辺には、U形状の溝部80が形成されている。溝部80の底縁800は平面視半円形状となっている。本実施形態では1種類のスペーサ8のみが用意されており、スペーサ8の外形寸法(L1×L2)は、ベースプレート5の面部50に形成した開口55の第1部分(スペーサ8の挿入開口)550の寸法よりも小さく、開口55の第1部分550からスペーサ8を差し入れて、ベースプレート5の面部50の背面と躯体Wとの間に挿入可能となっている。溝部80の溝幅dは、アンカーボルトabの径よりも少し大きく、スペーサ8は、ベースプレート5の面部50の背面と躯体Wとの間に挿入した状態で、溝部80にアンカーボルトabを受け入れるようにして、アンカーボルトabに対して係止させて位置を固定するようになっている。なお、同じ箇所に複数枚のスペーサ8を重ねて挿入するようにしてもよく、あるいは、厚さの異なる複数種類のスペーサ8を用意して、適当な厚さのスペーサ8を選択して用いるようにしてもよい。
【0058】
[C-4]ベースプレートの躯体への取付
本実施形態では、躯体Wの面部の所定部位に位置して複数本のアンカーボルトabが設けてあり、ベースプレート5の面部50の幅方向両端の周縁部50´及び面部50の下端の周縁部に設けた挿通孔(固定用孔)56に躯体Wから突出するアンカーボルトabを挿通させて、アンカーボルトabにナットnを締め込むことで、ベースプレート5の面部50の周縁部の背面を躯体Wに取り付ける。
【0059】
開口55の第2部分551も固定用孔となっており、躯体Wの所定部位に突設したアンカーボルトabを挿通させて、アンカーボルトabにナットnを締め込むことで、ベースプレート5の面部50の略中央部位の背面を躯体Wに取り付ける。本実施形態では、第1部分550と第2部分551とからなる開口55の一部が固定用孔となっているが、スペーサ8の挿入開口とは別個に独立した固定用孔を設けてもよい。また、本実施形態では、開口55の第1部分550の下方に位置して第2部分551が形成されているが、第1部分550と第2部分551との位置関係は限定されず、例えば、第2部分551の側方に位置して第1部分550が形成されていてもよい。
【0060】
躯体Wの面部に不陸や精度誤差がある場合には、所定箇所において、躯体Wの面部とベースプレート5の面部50の背面との間にスペーサ8を挿入させてもよい。第1圧迫機構3を躯体Wに取り付けた状態で、ベースプレート5の面部50の背面と躯体Wとが密着していないと、第1圧迫機構3によるパネル1の垂直圧迫時に支持構造7にガタツキが生じるおそれがあり、このことは圧迫動作に影響を与え得る。したがって、必要に応じてスペーサ8をベースプレート5の面部50の背面と躯体Wとの間に挿入することで、ベースプレート5の面部50の背面を安定的に躯体Wに固定する。なお、同じ箇所に複数枚のスペーサ8を重ねて挿入するようにしてもよい。
【0061】
本実施形態では、アンカーボルトabの近傍領域にスペーサ8を挿入して、スペーサ8の溝部80をアンカーボルトabに係止させて位置決めするようになっている。図11上図はベースプレート5の面部50の背面と躯体Wとの間にスペーサ8を挟み込んでベースプレート5を躯体Wに固定した状態を示している。ベースプレート5の面部50の背面と躯体Wはスペーサ8を介して密着している。
【0062】
図5では、ベースプレート5を躯体Wに固定する全てのアンカーボルトabにスペーサ8を係止させた状態を示しているが、スペーサ8は、現場に応じて、必要な箇所に挿入すれば良く、複数本のアンカーボルトabの一部にのみスペーサ8を挿入してもよい。特に、本実施形態に係るベースプレート5は横長方形状であり幅方向に比較的長いので、ベースプレート5の幅方向の中央部位が躯体Wに密着しない場合もあり、例えば、ベースプレート5の面部50の中央部位と躯体Wとの間にのみスペーサ8を設ける場合もあり得る。
【0063】
ベースプレート5の面部50の側方の周縁と躯体Wとの間に挿入されたスペーサ8は、溝部80が水平方向に延びるような姿勢で、水平方向にスライドさせて溝部80内にアンカーボルトabを受け入れるようにして係止されている。ベースプレート5の面部50の下方の周縁と躯体Wとの間に挿入されたスペーサ8は、溝部80が高さ方向に延びるような姿勢で、下方から上方に向かってスライドさせて溝部80内にアンカーボルトabを受け入れるようにして係止されている。ベースプレート5の面部50の中央部位の背面と躯体Wとの間に挿入するスペーサ8は、開口55の第1部分550から挿入し、下方にスライドさせて溝部80内にアンカーボルトabを受け入れるようにして係止されている。
【0064】
本実施形態に係る第1圧迫機構3の支持構造7において、スペーサ8が挿入可能な構成となっているが、スペーサ8を設けることは任意であり、スペーサ8を用いなくても、ベースプレート5の面部50の背面と躯体Wとがしっかりと固定されていれば、スペーサ8を設けなくてもよい。図11下図はベースプレート5の面部50の背面と躯体Wとの間にスペーサ8を設けずに、面部50の背面と躯体を密着させて躯体Wに固定した状態を示している。
【0065】
本実施形態では、ベースプレート5を躯体Wに突設した複数本のアンカーボルトabを用いて躯体Wに固定するようになっているが、躯体Wが鉄骨構造の場合には、ベースプレート5を躯体Wに溶接するものでもよい。この場合、ベースプレート5の面部50の周縁を躯体Wに溶接すると共に、ベースプレート5の面部50の開口55を利用して、開口55の縁と躯体Wとを溶接することができる。ベースプレート5を躯体Wに溶接する場合には、開口55の形状や寸法は、溶接スペースを確保できるものであれば、限定されず、図8に示すように開口55を第1部分550と第2部分551から形成する必要は無い。
【0066】
[C-5]ブラケットのベースプレートへの取付
ブラケット6の面部60の寸法は、ベースプレート5の面部50の寸法よりも小さい。具体的には、ブラケット6の面部60の幅寸法は、ベースプレート5の面部50において両側の周縁部50´を除いた部位の幅寸法と略同じであり、ブラケット6を取り付けた時に、ベースプレート5の面部50の幅方向両側の挿通孔56(アンカーボルトab)が露出するようになっている。ブラケット6の面部60の高さ寸法は、ブラケット6の上端をベースプレート5の上端に略合わせた時に、ベースプレート5の面部50の下方部位に、挿通孔56(アンカーボルトab)が露出するようになっている。
【0067】
ブラケット6とベースプレート5は、ベースプレート5の上側端部立ち上がり片51、下側端部立ち上がり片52、上側中央立ち上がり片53、下側中央立ち上がり片54に、ブラケット6の上側端部立ち上がり片61、下側端部立ち上がり片62、上側中央立ち上がり片63、下側中央立ち上がり片64を重ねるように当接させ、長孔510、520、530、540と、挿通孔610、620、630、640を一致させ、固定用ボルト61b、62b、63b、64bを、それぞれナット61n、62n、63n、64nに締め込むことで固定される。
【0068】
ベースプレート5にブラケット6を固定する時に、ベースプレート5の幅方向中央に設けた上側中央立ち上がり片53、下側中央立ち上がり片54、開口55は、ブラケット6の面部50の中央細幅領域60´の背面に位置するようになっており、中央細幅領域60´に形成した開口63´、開口64´に、ベースプレート5の面部50に突成した上側中央立ち上がり片53、下側中央立ち上がり片54を受け入れて、中央細幅領域60´に突成した上側中央立ち上がり片63、下側中央立ち上がり片64に当接させる。この時、中央細幅領域60´に形成した開口65は、ベースプレート5の面部50に形成した開口55の第2部分551を含む部位に一致している。
【0069】
ベースプレート5の面部50に対するブラケット6の面部60の位置、すなわち、躯体Wの面部に対するパワーシリンダ30の位置は、長孔510、520、530、540によって調整可能となっている。ブラケット6の面部60の所定位置には位置調整用ボルト66bが設けてあり、調整ボルト66bの軸部の先端がベースプレート5の面部50の前面に当接することで、ベースプレート5の面部50とブラケット6の面部60の距離が決定される。
【0070】
ブラケット6をベースプレート5に取り付ける時に、ブラケット6の面部60の開口65は、ベースプレート5の面部50の開口55の第2部分551と一致し、第2部分551を含む領域に形成されており(図7)、必要な場合に、アンカーボルトabの突出端部を受け入れて逃がすようになっている(図11図12)。
【0071】
[C-6]圧迫手段のブラケットへの取付
第1圧迫機構3の圧迫手段は、躯体Wに固定された支持構造7に対して取り付けられる。第1圧迫機構3の圧迫手段のアクチュエータとしての2台のパワーシリンダ30は、それぞれ取付プレート35に固定されており、取付プレート35を介してブラケット(中間プレート)6の面部60に固定される。取付プレート35は、正面視縦長方形状であり、四隅に位置して縦長孔350が形成されており、各縦長孔350から挿通した4本の固定用ボルト67bを、ブラケット6の面部60の挿通孔67から面部60の背面に設けたナット67nに締め込むことで、ブラケット5に固定される。
【0072】
図5に示すように、左右のパワーシリンダ30は、左側のパワーシリンダ30の取付プレート35の右端と右側のパワーシリンダ30の取付プレート35の左端を可及的に近づけてブラケット5の面部50に取り付けてあり、2枚の取付プレート35の上記右端と左端の間の領域は、高さ方向に延びる中央細幅領域60´となっており、上側中央立ち上がり片63、開口63´、下側中央立ち上がり片64、開口64´、円形状の開口65は、中央細幅領域60´に形成されている。上側中央立ち上がり片63は上面部680に固定され、下側中央立ち上がり片64は補強片64´´に固定されることで、上側中央立ち上がり片63、下側中央立ち上がり片64が強固となっている。また、ベースプレート5の幅方向中央に設けた上側中央立ち上がり片53、下側中央立ち上がり片54、開口55は、2つの圧迫手段の間に位置して形成されている。そして、左右のパワーシリンダ30の間に位置して、開口63´から突出する上側中央立ち上がり片53と上側中央立ち上がり片63が固定され、開口64´から突出する下側中央立ち上がり片54と下側中央立ち上がり片64が固定されており、ベースプレート5とブラケット6は幅方向中央部位において、左右のパワーシリンダ30の間に位置して連結されており、2つのパワーシリンダ30を安定した状態で取り付けることができる。
【0073】
ブラケット5に対するパワーシリンダ30の高さ位置は、取付プレート35に形成した縦長孔350によって調整可能である。ブラケット6の上面部68とパワーシリンダ30のブラケット上面部36は、位置調整用ボルト68bによって連結されており、位置調整用ボルト68bはブラケット6の上面部68からパワーシリンダ30のブラケット上面部36を高さ位置調整可能に吊持している。
【0074】
パワーシリンダ30を支持構造7に取り付ける時に、ベースプレート5の面部50の前面とブラケット6の面部60の背面との間隔が狭い場合がある。この時、ベースプレート5の面部50の開口57は、ブラケット6の面部60の背面の所定箇所に設けたナット67nに対応しており、ベースプレート5の面部50の開口57に固定用ボルト67bの先端部位及びナット67nを受け入れて逃がすようになっている(図12)。
【0075】
本実施形態では、1枚のベースプレート5に2つの圧迫手段が取り付けられており、特に、開口幅が狭い開口部に設置された防水パネルシャッターにおいては、典型的には、1枚のベースプレート5に2つの圧迫手段が取り付けられるが、1枚のベースプレート5に設けられる圧迫手段の数はこれには限定されない。また、大開口に設置されたパネルシャッターに対応するべく、2台のシリンダを備えた第1圧迫機構3を複数セット用意して、開口幅方向に並べて配置してもよく、例えば、このような第1圧迫機構3を2セット設置すれば、4台のパワーシリンダを用いて垂直圧迫を行うことができる。
【符号の説明】
【0076】
3 第1圧迫機構(圧迫機構)
30 パワーシリンダ(圧迫手段)
5 ベースプレート
50 面部
51 上側端部立ち上がり片
52 下側端部立ち上がり片
53 上側中央立ち上がり片(中間連結片)
54 下側中央立ち上がり片(中間連結片)
55 開口(固定用孔)
550 第1部分(スペーサ挿入用開口)
551 第2部分(固定用孔)
56 挿通孔
57 開口(逃げ孔)
6 ブラケット(中間プレート)
60 面部
61 上側端部立ち上がり片
62 下側端部立ち上がり片
63 上側中央立ち上がり片(中間受け片)
63´ 開口
64 下側中央立ち上がり片64(中間受け片)
64´ 開口
65 開口(孔部)
67b 固定用ボルト(螺子)
8 スペーサ
ab アンカーボルト


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12