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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】熱発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
H02N11/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020109799
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022007084
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 克道
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-012934(JP,A)
【文献】再公表特許第01/092969(JP,A1)
【文献】特開2002-257961(JP,A)
【文献】特開2014-008569(JP,A)
【文献】特開2000-050661(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0192574(US,A1)
【文献】特開2020-089211(JP,A)
【文献】特開平07-176797(JP,A)
【文献】中国実用新案第210183244(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
H10N 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースに収容され吸熱面と放熱面との温度差に応じて起電力を生じる熱電変換素子と、を備え、
前記ケースは、
前記熱電変換素子の前記吸熱面と熱的に接続される第1部材と、
前記熱電変換素子の前記放熱面と熱的に接続される第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材とに挟まれて設けられ前記第1部材と前記第2部材とを断熱する樹脂製の断熱部材と、を有し、
前記熱電変換素子は、弾性を有する弾性接着材によって前記第1部材又は前記第2部材に取り付けられ、
一端が前記第1部材及び前記第2部材の一方に取り付けられ、他端に前記熱電変換素子が前記弾性接着材によって接着され、前記他端と前記第1部材及び前記第2部材の他方との間で前記熱電変換素子を支持する熱伝導部材が設けられ、
前記断熱部材の内周には、前記熱伝導部材が挿入される溝部が形成されることを特徴とする熱発電装置。
【請求項2】
前記第1部材及び前記第2部材の一方に設けられ雌ねじが形成される第1ねじ部材と、
前記第1部材及び前記第2部材の他方を挿通し前記第1ねじ部材の前記雌ねじに螺合する雄ねじが形成される第2ねじ部材と、をさらに備え、
前記第1ねじ部材と、前記第2ねじ部材が挿通する前記第1部材及び前記第2部材の他方とは、互いに接触せずに離間していることを特徴とする請求項1に記載の熱発電装置。
【請求項3】
記熱伝導部材が取り付けられる前記第1部材及び前記第2部材の一方には、前記熱伝導部材の前記一端が収容される取付穴が形成され、
前記取付穴には、前記熱伝導部材を前記第1部材及び前記第2部材の他方に向けて付勢する弾性部材が設けられ、
前記熱伝導部材は、前記弾性部材と共に前記取付穴に充填される前記弾性接着材によって前記第1部材及び前記第2部材の一方に取り付けられることを特徴とする請求項1または2に記載の熱発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱発電装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱エネルギーを電力に変換する熱発電素子を備える熱発電装置が開示されている。この熱発電装置は、固定部と、熱発電素子の入熱面および固定部に接続されている熱伝導部材と、熱発電素子の放熱面に接続されているヒートシンクなどの放熱部材と、熱発電素子などの電子部品を覆うカバーと、を備える。カバーは、固定部を介して伝導される熱を、放熱部材を介して熱発電素子の放熱面に伝導させないために、プラスチックなどの断熱材料によって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-8569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の熱発電装置では、固定部と放熱部材とがカバーによって連結され、カバーの内側では固定部に取り付けられた熱伝導部材と放熱部材とによって熱発電素子が挟持される。
【0005】
一般に、このような熱発電装置を構成する固定部、放熱部材、カバー、及び熱伝導部材といった各構成部品には、寸法誤差が生じる。また、各構成部品の材質の違いによって熱伝導率に差が生じるため、周囲の温度変化による各構成部品の寸法変化量も互いに異なる。
【0006】
このようにして設計値からの寸法のずれが各構成部品に生じることで、熱発電素子と熱伝導部材又は放熱部材との間に隙間が生じたり、反対に熱伝導部材と放熱部材によって熱発電素子を圧縮してしまったりするおそれがある。熱発電素子と熱伝導部材等との間で隙間が生じると、熱発電素子に熱が充分に伝導されず、発電効率が低下する。また、熱発電素子が圧縮されると、熱発電素子が損傷するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、熱発電装置の発電効率と耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、熱発電装置であって、ケースと、ケースに収容され吸熱面と放熱面との温度差に応じて起電力を生じる熱電変換素子と、を備え、ケースは、熱電変換素子の吸熱面と熱的に接続される第1部材と、熱電変換素子の放熱面と熱的に接続される第2部材と、第1部材と第2部材とに挟まれて設けられ第1部材と第2部材とを断熱する樹脂製の断熱部材と、を有し、熱電変換素子は、弾性を有する弾性接着材によって第1部材又は第2部材に取り付けられ、一端が第1部材及び第2部材の一方に取り付けられ、他端に熱電変換素子が弾性接着材によって接着され、他端と第1部材及び第2部材の他方との間で熱電変換素子を支持する熱伝導部材が設けられ、ケース部材の内周には、熱伝導部材が挿入される溝部が形成されることを特徴とする。
【0009】
この発明では、熱電変換素子は、弾性を有する弾性接着材によって第1部材又は第2部材に取り付けられるため、第1部材、第2部材、ケース部材に寸法誤差や温度変化に伴う寸法変化が生じても、弾性接着材の弾性により寸法誤差や寸法変化を吸収することができる。これにより、熱電変換素子と第1部材又は第2部材との間での隙間の発生や、第1部材と第2部材とにより熱電変換素子が圧縮されることを抑制することができる。また、この発明では、熱伝導部材が取り付けられた第1部材又は第2部材とケース部材とを組付けた状態で熱伝導部材の先端に弾性接着材を塗布することで、熱伝導部材の先端と溝部との間の空間がポケットとして機能する。このため、熱伝導部材の先端に弾性接着材が貯留され、先端からの液だれが抑制される。これにより、熱伝導部材の先端への熱電変換素子の接着状態を良好にすることができ、熱電変換素子への圧縮力及び引張力の吸収と熱電変換素子から熱伝導部材を通じた第1部材又は第2部材への熱伝導とを効果的に行うことができる。
【0010】
また、本発明は、第1部材及び第2部材の一方に設けられ雌ねじが形成される第1ねじ部材と、第1部材及び第2部材の他方を挿通し第1ねじ部の雌ねじに螺合する雄ねじが形成される第2ねじ部材と、をさらに備え、第1ねじ部材と、第2ねじ部材が挿通する第1部材及び第2部材の他方とは、互いに接触せずに離間していることを特徴とする。
【0011】
この発明では、第1ねじ部材が第1部材及び第2部材の他方と接触しないため、第1部材と第2部材との位置関係は、断熱部材によって位置決めされる。つまり、第1ねじ部材の寸法のばらつきが生じても第1ねじ部材が第1部材及び第2部材の他方に接触しないため、第1ねじ部材は、断熱部材による第1部材と第2部材との位置決めを阻害しない。これにより、第1部材と第2部材とは断熱部材によって適切に位置決めされ、第1ねじ部材が第1部材及び第2部材の他方に接触することに起因した熱電変換素子と第1部材及び第2部材の他方との間での隙間の発生が防止される。よって、熱電変換素子から第1部材及び第2部材の他方への熱伝導性が確保される。
【0014】
また、本発明は、熱伝導部材が取り付けられる第1部材及び第2部材の一方には、熱伝導部材の一端が収容される取付穴が形成され、取付穴には、熱伝導部材を第1部材及び第2部材の他方に向けて付勢する弾性部材が設けられ、熱伝導部材は、弾性部材と共に取付穴に充填される弾性接着材によって第1部材及び第2部材の一方に取り付けられることを特徴とする。
【0015】
この発明では、熱伝導部材及び熱電変換素子は、弾性接着材に加えて、弾性部材によっても弾性支持される。これにより、熱電変換素子を支持する弾性力は、弾性接着材とコイルスプリングとによる弾性力の合力となる。このように弾性部材を設けることで、熱電変換素子を支持する弾性力を調整することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、熱発電装置の発電効率と耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る熱発電装置が取り付けられる油圧シリンダの一部断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る熱発電装置が取り付けられる油圧シリンダの部分拡大断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る熱発電装置の放熱部材の平面図である。
図4】本発明の実施形態に係る熱発電装置のケース部材の平面図である。
図5】本発明の実施形態に係る熱発電装置の製造方法を説明するための断面図であり、放熱部材とケース部材とがアセンブリ化された状態を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る熱発電装置の変形例を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る熱発電装置100について説明する。
【0021】
熱発電装置100は、例えば、建設機械(油圧ショベルなど)の流体圧システムに設けられるセンサ装置101の電源として用いられる。
【0022】
まず、図1を参照して、熱発電装置100が適用されるセンサ装置101について説明する。
【0023】
以下では、センサ装置101が、ブーム,アーム,及びバケットといった駆動対象(図示省略)を駆動する流体圧システムの油圧シリンダ1(流体圧シリンダ)で生じる作動油の漏れを検出する油漏れセンサである場合を説明する。
【0024】
図1に示すように、油圧シリンダ1は、筒状のシリンダチューブ2と、シリンダチューブ2に挿入されるピストンロッド3と、ピストンロッド3の基端に設けられるピストン4と、を備える。ピストン4は、シリンダチューブ2の内周面に沿って摺動自在に設けられる。シリンダチューブ2の内部は、ピストン4によってロッド側室2aと反ロッド側室2bとに区画される。
【0025】
ピストンロッド3は、先端がシリンダチューブ2の開口端から延出している。図示しない油圧源からロッド側室2a又は反ロッド側室2bに選択的に作動油が導かれると、ピストンロッド3は、シリンダチューブ2に対して移動する。これにより、油圧シリンダ1は伸縮作動する。
【0026】
シリンダチューブ2の開口端には、ピストンロッド3が挿通するシリンダヘッド5が設けられる。シリンダヘッド5は、複数のボルト6を用いてシリンダチューブ2の開口端に締結される。
【0027】
図2に示すように、シリンダヘッド5には、ピストンロッド3の外周面とシリンダヘッド5の内周面との間の環状の隙間(以下、「環状隙間8」と称する。)を封止するロッドシール7aと、環状隙間8を封止し、ロッドシール7aと共に検出空間9を区画する検出シール7bと、ピストンロッド3を摺動自在に支持するブッシュ7cと、ピストンロッド3の外周面に付着するダストをかき出して、外部からシリンダチューブ2内へのダストの侵入を防止するダストシール7dと、が設けられる。
【0028】
センサ装置101は、油圧シリンダ1のシリンダヘッド5の外周部に取り付けられ、ピストンロッド3の外周面とシリンダヘッド5の内周面との間の環状隙間8から漏れ出す作動油の圧力を検出する。センサ装置101の検出結果は、コントローラ102に無線通信によって送信される。コントローラ102は、センサ装置101の検出結果に基づいて、油圧シリンダ1における油漏れの有無を判定する。
【0029】
センサ装置101は、第1部材としてのハウジング20と第2部材としての放熱部材30との温度差によって発電する熱発電装置100と、油圧シリンダ1のロッド側室2aから環状隙間8に漏れ出した作動油の圧力を検出するセンサ部としての圧力センサ80と、それぞれ配線16,82を通じて熱発電装置100及び圧力センサ80が電気的に接続される回路基板81と、を備える。回路基板81には、熱発電装置100が発電した電力を圧力センサ80に供給する電源回路と、圧力センサ80の検出結果をコントローラ102に無線送信する通信回路と、が実装される。
【0030】
熱発電装置100は、ケース10と、ケース10に収容され吸熱面15aと放熱面15bとの温度差に応じて起電力を生じる熱電変換素子(以下、単に「熱電素子15」と称する。)と、を備える。
【0031】
ケース10は、油圧シリンダ1のシリンダヘッド5に取り付けられるハウジング20と、外周に複数のフィン31aを備えるヒートシンクとして構成される放熱部材30と、ハウジング20と放熱部材30とに挟まれて熱電素子15を囲う樹脂製の断熱部材としてのスペーサ40と、を有する。
【0032】
ハウジング20は、油圧シリンダ1のシリンダヘッド5と同様の鉄系材料(より具体的には鋼材)によって形成され、シリンダヘッド5に取り付けられる。ハウジング20には、油圧シリンダ1で発生する熱がシリンダヘッド5を通じて伝達される。
【0033】
ハウジング20には、端面に開口し熱電素子15を収容する収容凹部21と、収容凹部21に開口し圧力センサ80を収容するセンサ収容穴22と、油圧シリンダ1のシリンダヘッド5に当接するハウジング20の当接面に開口すると共にセンサ収容穴22に開口する連通路23と、が形成される。連通路23は、油圧シリンダ1のシリンダヘッド5に形成されたヘッド側通路9aを通じて検出空間9に連通する。これにより、環状隙間8を通じて検出空間9に漏れ出した作動油の圧力が、ヘッド側通路9a及び連通路23を通じてセンサ収容穴22に導かれて、当該圧力が圧力センサ80によって検知される。
【0034】
ハウジング20には、ハウジング20の熱を後述する熱電素子15の吸熱面15aに伝達する熱伝導部材としての第1熱伝導部材50が取り付けられる。第1熱伝導部材50は、ハウジング20と同様の材質(本実施形態では鋼材)で形成される円柱状の棒状部材であり、一端部が取付ボルト70によってハウジング20の底部に取り付けられる。取付ボルト70は、両端部にねじ部が形成されるスタッドボルト(全ねじボルト)であり、両端部がそれぞれ収容凹部21の底部及び第1熱伝導部材50の一方の端面に形成される雌ねじに螺合する。第1熱伝導部材50の他端部(先端部)には、熱電素子15が取り付けられる。
【0035】
放熱部材30は、熱伝導率に優れる材質、例えば、アルミニウム系や銅系の材料によって形成される。よって、放熱部材30は、ハウジング20よりも熱伝導性に優れる。
【0036】
放熱部材30は、一端が閉塞端として構成される有底円筒状に形成される。放熱部材30の外周には、円環状に形成される複数のフィン31aが軸方向に並んで設けられる。放熱部材30の底部には、放熱部材30の外側へ向けて軸方向に突出するボス部32が設けられる。
【0037】
図2及び図3に示すように、放熱部材30の底部には、回路基板81が挿通するスリット32bが形成される。回路基板81の一部は、後述するハウジング20及びスペーサ40の内側の収容空間S1からスリット32bを通じて放熱部材30の内側空間S2へと突出する。なお、図3は、図2中のA矢印方向からみた放熱部材30の平面図である。
【0038】
放熱部材30の内側空間S2は、回路基板81の一部及び後述する樹脂ねじ72のヘッドと共にモールド樹脂35によってポッティングされて封止される。このように、回路基板81は、金属製のハウジング20や放熱部材30の内側にすべてが収容されるのではなく、その一部がハウジング20の内側の収容空間S1の外部、具体的には熱発電装置100の外部に臨む(露出する)放熱部材30の内側空間S2に突出する。これにより、回路基板81に設けられる通信手段による無線通信を安定して行うことができる。なお、放熱部材30の内側空間S2は、モールド樹脂35によって封止されているが、樹脂は金属と比較して通信電波を妨害しにくいため、モールド樹脂35によって封止してもの充分に無線通信の安定化を行うことができる。なお、モールド樹脂35は必須の構成ではなく、内側空間S2はポッティングされていなくてもよい。
【0039】
放熱部材30には、後述する熱電素子15の放熱面15bの熱を放熱部材30に伝達する熱伝導部材としての第2熱伝導部材51が取り付けられる。第2熱伝導部材51は、放熱部材30と同様の材質であって第1熱伝導部材50と略同径の円柱状の棒状部材である。第2熱伝導部材51は、一端部に取付ボルト71が挿入され取付ボルト71によって放熱部材30のボス部32の先端面32aに取り付けられる。取付ボルト71は、放熱部材30の底部の挿通穴30aを挿通して、第2熱伝導部材51の一端部に設けられた雌ねじに螺合する。第2熱伝導部材51の他端部(先端部)には、熱電素子15が取り付けられる。
【0040】
このように、熱電素子15は、ハウジング20に取り付けられる第1熱伝導部材50と放熱部材30に取り付けられる第2熱伝導部材51とによって挟持される。
【0041】
スペーサ40は、断熱性が高い樹脂材料によって形成される。スペーサ40は、その径方向の中央に中心軸に沿った貫通孔40aを有しており、熱電素子15を囲うように円筒状に形成される。スペーサ40は、ハウジング20と放熱部材30とによって挟持される。スペーサ40は、外周面がテーパ状に形成される本体部41と、ハウジング20の収容凹部21に挿入される挿入部42と、を有する。
【0042】
挿入部42は、本体部41の端部からハウジング20に向けて軸方向に突出するように形成される。挿入部42の外径は、本体部41の端部の外径(本体部41の最小外径)よりも小さく形成され、挿入部42と本体部41との外径差により形成される段差面が、ハウジング20の端面に当接する。本体部41の外周は、スペーサ40の軸方向に沿ってハウジング20から離れるにつれて、言い換えれば、ハウジング20から放熱部材30に向かうにつれて外径が大きくなるテーパ状に形成される。
【0043】
ハウジング20の収容凹部21とスペーサ40の貫通孔40aによって、熱電素子15を収容する収容空間S1が形成される。スペーサ40の内周面には、図4に示すように、回路基板81の両縁が挿入され回路基板81を支持するスリット40bが軸方向に延びて形成される。なお、図4は、図2中のA矢印方向からみたスペーサ40の平面図である。また、図4では、回路基板81を二点鎖線で模式的に示している。
【0044】
また、スペーサ40の貫通孔40aの内周面には、第1熱伝導部材50及び第2熱伝導部材51が挿入される溝部としての収容溝40cが軸方向に延びて形成される。収容溝40cは、第1熱伝導部材50及び第2熱伝導部材51の外形に合わせた略半円形断面を有する溝である。また、収容溝40c、第1熱伝導部材50、及び第2熱伝導部材51は、ハウジング20の収容凹部21の中心からずれた位置に設けられている(図2及び図4参照)。収容溝40cは、熱発電装置100及びセンサ装置101の組み立ての際に、第1熱伝導部材50と第2熱伝導部材51との周方向の位置合わせの機能を発揮する。
【0045】
図2に示すように、放熱部材30のボス部32は、ハウジング20とは反対側からスペーサ40の貫通孔40aに挿入される。これにより、スペーサ40の貫通孔40aの一方の開口が、放熱部材30によって閉塞される。言い換えれば、ハウジング20の収容凹部21とスペーサ40の貫通孔40aによって形成される収容空間S1が、放熱部材30によって閉塞される。
【0046】
ハウジング20と放熱部材30とは、スペーサ40を介して連結されるものであり、両者は直接接触しない。よって、ハウジング20と放熱部材30との間の熱伝導がスペーサ40によって抑制される。このように、スペーサ40は、ハウジング20と放熱部材30とを直接接触させないスペーサとしての機能に加えて、ハウジング20と放熱部材30との間の熱伝導を抑制する断熱部材としても機能する。さらに、スペーサ40は、熱電素子15を囲うように設けられ、熱電素子15を収容する収容空間S1をハウジング20と共に形成する。これにより、外気の影響による収容空間S1内の温度変化、具体的には、第1熱伝導部材50及び第2熱伝導部材51の温度変化がスペーサ40によって抑制される。
【0047】
また、ハウジング20と放熱部材30は、ハウジング20に設けられ先端に雌ねじが形成される第1ねじ部材としての連結部材52と、放熱部材30を挿通し連結部材52の雌ねじに螺合する雄ねじが形成される樹脂製の第2ねじ部材としての樹脂ねじ72と、によって互いに連結される。つまり、ハウジング20と連結部材52とは、スペーサ40を介して連結されると共に、連結部材52と樹脂ねじ72によって連結されている。
【0048】
連結部材52は、円柱状の部材であり、一端がハウジング20の収容凹部21の底部に取り付けられる。連結部材52は、第1熱伝導部材50と同様に、収容凹部21の底部と連結部材52との両方に螺合するスタッドボルトなどの取付ボルト73によってハウジング20に取り付けられる。連結部材52の他端は、放熱部材30のボス部32の先端面32aには接触せずに離間している。つまり、連結部材52の軸方向において、連結部材52の先端と放熱部材30との間には隙間が形成されており、連結部材52と放熱部材30とは接触しないように構成されている。詳細な図示は省略するが、本実施形態では、3つの連結部材52がハウジング20に取り付けられる。
【0049】
樹脂ねじ72は、断熱性に優れた樹脂材料によって形成される。樹脂ねじ72は、放熱部材30の底部(ボス部32)に形成される挿通孔32cを挿通して連結部材52に螺合する。挿通孔32cは、連結部材52に対応して放熱部材30の底部に3つ形成される(図3参照)樹脂ねじ72を所定の締め付け力によって締め付けることで、ハウジング20と放熱部材30とがねじ締結される。なお、樹脂ねじ72を所定の締め付け力で締め付けた状態であっても、連結部材52と放熱部材30の底部との間には隙間が存在する。
【0050】
熱電素子15は、互いに平行な一対の平面である吸熱面15a及び放熱面15bを有し、吸熱面15aと放熱面15bとの温度差によって起電力を生じるゼーベック素子である。熱電素子15は、第1接着材55によって吸熱面15aが第1熱伝導部材50の先端面に接着され、第2接着材56によって放熱面15bが第2熱伝導部材51によって接着される。このように、吸熱面15aは、第1接着材55及び第1熱伝導部材50を通じてハウジング20に熱的に接続されている。また、放熱面15bは、第2接着材56及び第2熱伝導部材51を通じて放熱部材30に熱的に接続されている。熱電素子15は、吸熱面15aで熱を吸熱して放熱面15bから熱を放熱することによって、内部に温度差が発生して起電力を生じる。つまり、熱電素子15は、第1熱伝導部材50を通じて吸熱面15aに伝達されるハウジング20の温度と、第2熱伝導部材51を通じて放熱面15bに伝達される放熱部材30の温度と、の差に応じた起電力を発生させる。熱電素子15の起電力は、配線16を通じて接続される回路基板81に供給される。
【0051】
第1接着材55は、熱伝導率に優れた熱伝導性接着材である(以下、第1接着材55を「熱伝導性接着材55」とも称する。)。熱伝導性接着材55は、弾性接着材56(第2接着材)よりも優れた熱伝導性を有することが望ましい。第1接着材55としては、例えば、シリコン系又はエポキシ系の基材に熱伝導率の高い金属又はセラミックスをフィラーとして添加して形成される接着材が利用される。
【0052】
第2接着材56は、硬化した状態で弾性を有する弾性接着材56である(以下、第2接着材56を「弾性接着材56」とも称する。)。本実施形態における弾性接着材56は、例えば、硬化前が液状であって硬化することで弾性を発揮するシリコン系接着剤やゴム系接着剤である。また、弾性接着材56は、硬化前の状態が液状(ゲル状)の接着剤に限られず、例えばアクリル系両面テープのようなシート状の接着部材でもよい。弾性接着材56は、弾性を有しつつ熱伝導率に優れたものを採用することが望ましい。なお、第1接着材55も、硬化前が液状の接着剤であってもよいし、シート状(テープ状)の接着部材であってもよい。
【0053】
本実施形態における「接着材」とは、硬化前が液状の状態である接着剤に加えて、固形の接着材や、ベースとなる部材に接着剤を含侵又は塗布して形成されるシート状の接着部材なども含むものである。つまり、本実施形態における「接着材」は、液状の接着剤に限定されるものではない。
【0054】
以上のように、熱発電装置100では、油圧シリンダ1で発生する熱がハウジング20から第1熱伝導部材50、熱伝導性接着材55を通じて熱電素子15の吸熱面15aに吸熱される。熱電素子15の吸熱面15aに吸熱された熱が放熱面15bから弾性接着材56、第2熱伝導部材51、及び放熱部材30を通じて放熱されることで熱電素子15によって発電される。熱発電装置100の熱電素子15が発電した電力は、回路基板81に供給され、圧力センサ80や通信回路が駆動される。このように、センサ装置101は、センシング対象である油圧シリンダ1で発生する熱を利用して発電する熱発電装置100を備えることで、外部からの電力供給を受けずに独立して駆動することができる。よって、センサ装置101へ給電するための配線をセンサ装置101や油圧シリンダ1の周囲に取り回す必要がなく、センサ装置101の取り付けが容易となる。
【0055】
ここで、熱発電装置を構成するハウジング、放熱部材、ケース部材、第1熱伝導部材、及び第2熱伝導部材といった各構成部品には、寸法誤差が生じることがある。よって、熱発電装置を組み立てると、第1熱伝導部材と第2熱伝導部材との間隔が設計値と異なることがある。これにより、吸熱面及び放熱面に垂直な方向に熱電素子が第1熱伝導部材及び第2熱伝導部材によって圧縮されたり、その反対に第1熱伝導部材と第2熱伝導部材とに接着される熱電素子が引っ張られたりするおそれがある。また、各構成部品は材質が異なっており、特にケース部材は熱伝導率が低い樹脂材料によって形成される。各構成部品は温度変化に対する寸法変化量が互いに異なるため、温度変化に応じて第1熱伝導部材と第2熱伝導部材との間隔が変化し、熱電素子には圧縮又は引張方向の熱応力が生じる。このようにして熱電素子に圧縮力が作用すると熱電素子が損傷するおそれがあり、熱電素子に引張力が作用すると熱電素子と第1熱伝導部材又は第2熱伝導部材との間に隙間が生じて熱伝導にロスが生じるおそれがある。
【0056】
これに対し、本実施形態では、熱電素子15は、硬化した状態で弾性を有する弾性接着材56により第2熱伝導部材51に接着されるため、熱発電装置100の各構成部品に生じる寸法誤差や温度変化による寸法変化量の差を弾性接着材56の弾性で吸収することができる。言い換えれば、弾性接着材56の弾性によって、寸法誤差や熱応力に起因して生じる熱電素子15への圧縮力及び引張力を吸収することができる。したがって、熱電素子15に過度な圧縮力及び引張力が作用することを防止できるため、第1熱伝導部材50及び第2熱伝導部材51と熱電素子15との間での熱伝導のロスを低減すると共に、熱電素子15の耐久性を向上させることができる。
【0057】
次に、センサ装置101の製造方法について説明する。
【0058】
本実施形態では、放熱部材30、スペーサ40、熱電素子15、回路基板81、及び圧力センサ80をアセンブリ化し、このアセンブリをハウジング20に取り付けることでセンサ装置101が製造される。以下、具体的に説明する。
【0059】
まず、取付ボルト71によって第2熱伝導部材51を放熱部材30に取り付ける。
【0060】
次に、放熱部材30とスペーサ40とを組み立てる。具体的には、第2熱伝導部材51をスペーサ40の内周の収容溝40cに挿入しつつ放熱部材30のボス部32をスペーサ40の貫通孔40aに挿入し、放熱部材30とスペーサ40とを接着材によって接着する。
【0061】
次に、配線16,82によって回路基板81に圧力センサ80と熱電素子15とを接続する。さらに、回路基板81をスペーサ40の開口から内周面のスリット40b(図4参照)に挿入し、放熱部材30のボス部32に形成されたスリット32b(図3参照)を通過させて一部を放熱部材30の内側空間S2に突出させる。このようにして、放熱部材30を含むアセンブリが構成される。
【0062】
次に、第2熱伝導部材51の先端に弾性接着材56を塗布する。この際、例えば図5に示すように、放熱部材30の中心軸が略水平に延び、放熱部材30に取り付けられた第2熱伝導部材51が放熱部材30の中心軸よりも鉛直方向の下方に位置するような姿勢で、第2熱伝導部材51の先端に弾性接着材56が塗布される。図5は、図中下側が鉛直方向の下方を示すものであり、左右方向が水平方向を示すものである。このようにすることで、第2熱伝導部材51の先端とスペーサ40の内周の収容溝40cとで形成される空間Cが弾性接着材56を貯留するポケットとして機能するため、第2熱伝導部材51の先端から弾性接着材56が液だれすることを抑制できる。そして、このようにして第2熱伝導部材51の先端に付着された弾性接着材56に熱電素子15を押し付けて、所定時間経過させて弾性接着材56を硬化させる。これにより、熱電素子15は、第2熱伝導部材51の先端に取り付けられる。
【0063】
次に、取付ボルト70によってハウジング20の底部に第1熱伝導部材50を取り付けると共に、取付ボルト73によってハウジング20の底部に連結部材52を取り付ける。
【0064】
次に、放熱部材30を含むアセンブリとハウジング20とを組み立てる。具体的には、まず、第1熱伝導部材50の先端に熱伝導性接着材55を付着させる。そして、第1熱伝導部材50とスペーサ40の内周の収容溝40c(図4及び図5参照)との位置を合わせるようにしてスペーサ40をハウジング20の収容凹部21に挿入する。さらに、第1熱伝導部材50の先端に付着された熱伝導性接着材55に第2熱伝導部材51の先端に取り付けられた熱電素子15を押し付けて、第1熱伝導部材50の先端に熱電素子15を接着する。また、スペーサ40をハウジング20の収容凹部21に挿入するのに伴い、圧力センサ80をハウジング20の底部のセンサ収容穴22に収容してハウジング20に取り付ける。さらに、スペーサ40とハウジング20との間にも接着材を塗布して、両者を接着材によって固定する。
【0065】
次に、放熱部材30の内側から樹脂ねじ72をボス部32の挿通孔32cに挿入し、連結部材52と螺合させ所定の締め付け力で締結する。そして、放熱部材30の内側空間S2をモールド樹脂35によって充填する。
【0066】
以上の工程により、図2に示すセンサ装置101の組み立てが完了する。
【0067】
センサ装置101の組み立ては、上記で説明した順序に限られず、可能な限りその順序は入れ換えてよい。また、各工程は、可能な限り同時に行ってもよい。なお、例えば、熱電素子15をハウジング20の第1熱伝導部材50に接着し、圧力センサ80をハウジング20に取り付けた状態で熱電素子15及び圧力センサ80を回路基板81に接続するのは、配線作業が煩雑となる。このため、センサ装置101の組み立てを効率よく行うには、上述のように予め熱電素子15、圧力センサ80、及び回路基板81を接続してアセンブリ化しておき、当該アセンブリを放熱部材30(及びスペーサ40)に取り付けるようにすることが望ましい。
【0068】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0069】
熱発電装置100では、熱電素子15が弾性接着材56により第2熱伝導部材51に接着される。このため、熱発電装置100の各構成部品の寸法誤差や熱伝導率の違いによる熱応力によって生じる熱電素子15への圧縮力及び引張力を弾性接着材56の弾性によって吸収することができる。これにより、引張力によって第1熱伝導部材50又は第2熱伝導部材51と熱電素子15との間で隙間が生じて当該隙間により熱伝導のロスが生じたり、圧縮力によって熱電素子15が損傷したりすることを抑制できる。したがって、熱発電装置100の発電効率と耐久性を向上させることができる。
【0070】
また、熱発電装置100では、熱電素子15を取り付ける第2接着材56そのものが弾性を発揮するため、接着材とは別の弾性部材を設け当該弾性部材によって熱電素子15を弾性支持するような構成と比較して、熱発電装置100の構成をコンパクトにすることができる。
【0071】
また、熱電素子15は、弾性接着材56により第2熱伝導部材51に接着されると共に、弾性接着材56よりも熱伝導性に優れる熱伝導性接着材55により第1熱伝導部材50に接着される。これにより、熱電素子15に作用する圧縮力及び引張力を弾性接着材56により吸収しつつ、ハウジング20から熱電素子15への熱伝導を良好にすることができる。したがって、熱発電装置100の発電効率と耐久性の確保をより適切に両立させることができる。
【0072】
また、ハウジング20と放熱部材30とは、ハウジング20と放熱部材30とを直接螺合してねじ締結するのではなく、ハウジング20に取り付けられた連結部材52と放熱部材30を挿通する樹脂ねじ72とによってねじ締結される。これにより、ハウジング20と放熱部材30とを相対回転させずに組み付けることができるので、ハウジング20に取り付けられた第1熱伝導部材50と放熱部材30に取り付けられた第2熱伝導部材51との位置合わせが容易となる。よって、熱発電装置100の組み立て性を向上させることができる。
【0073】
また、ハウジング20と放熱部材30とを組付けた状態において、連結部材52と放熱部材30とは接触せずに離間している。よって、ハウジング20と放熱部材30との位置関係は、スペーサ40によって位置決めされる。つまり、連結部材52の寸法のばらつきが生じても連結部材52が放熱部材30に接触しないため、連結部材52は、スペーサ40によるハウジング20と放熱部材30との位置決めを阻害しない。このため、ハウジング20と放熱部材30とがスペーサ40によって適切に位置決めされる。これにより、連結部材52と放熱部材30とが接触することに起因した熱電素子15と放熱部材30(本実施形態では第2熱伝導部材51)との間での隙間の発生を防止できる。よって、熱電素子15から放熱部材30への熱伝導性が確保され、熱発電装置100の発電効率を向上させることができる。
【0074】
また、スペーサ40の内周面には、第1熱伝導部材50及び第2熱伝導部材51が挿入される収容溝40cが形成される。これにより、第1熱伝導部材50と第2熱伝導部材51との位置合わせがより一層容易となり、熱発電装置100の組み立て性を向上させることができる。また、第2熱伝導部材51が取り付けられた放熱部材30とスペーサ40とを組付けた状態で第2熱伝導部材51の先端に弾性接着材56を塗布することで、第2熱伝導部材51の先端と収容溝40cとの間の空間Cがポケットとして機能するため、弾性接着材56を貯留して液だれを抑制できる。これにより、第2熱伝導部材51の先端への熱電素子15の接着状態を良好にすることができ、熱電素子15への圧縮力及び引張力の吸収と熱電素子15から放熱部材30への熱伝導とをより効果的に行うことができる。
【0075】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0076】
まず、図6に示す変形例について説明する。図6に示す変形例では、熱電素子15は、第1熱伝導部材50及び第2熱伝導部材51の両方に対して、熱伝導性接着材55により接着される。また、ハウジング20の底部には、第1熱伝導部材50の端部が挿入される取付穴24が形成される。
【0077】
取付穴24には、取付穴24に挿入される第1熱伝導部材50の端部とハウジング20の底部とによって圧縮された状態で弾性部材としてのコイルスプリング75が収容される。コイルスプリング75は、第2熱伝導部材51(放熱部材30)に向けて第1熱伝導部材50の軸方向に沿って第1熱伝導部材50を付勢する。また、取付穴24には、弾性接着材56が充填される。弾性接着材56によって第1熱伝導部材50がハウジング20に取り付けられる。
【0078】
これにより、熱発電装置100の各構成の寸法誤差や熱応力によって生じる熱電素子15への圧縮力や引張力を取付穴24内の弾性接着材56及びコイルスプリング75の弾性によって吸収することができる。よって、このような変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0079】
また、図6に示す変形例では、第1熱伝導部材50及び熱電素子15は、弾性接着材56に加えて、コイルスプリング75によっても弾性支持されるため、熱電素子15を支持する弾性力は、弾性接着材56とコイルスプリング75とによる弾性力の合力となる。このようにコイルスプリング75を設けることで、熱電素子15を支持する弾性力を調整することができ、熱発電装置100の発電効率と耐久性とを両立しやすくなる。
【0080】
なお、取付穴24、コイルスプリング75、及び取付穴24に充填される弾性接着材56の構成は、図6に示すようなハウジング20及び第1熱伝導部材50に対して適用されるものに限られず、図示は省略するが放熱部材30及び第2熱伝導部材51に対して適用されてもよい。
【0081】
次に、その他の変形例について説明する。
【0082】
上記実施形態では、熱電素子15は、熱伝導性接着材55によって第1熱伝導部材50に接着され、弾性接着材56によって第2熱伝導部材51に接着される。これに対し、上記実施形態とは反対に、熱電素子15は、弾性接着材56によって第1熱伝導部材50又はハウジング20に接着され、熱伝導性接着材55によって第2熱伝導部材51又は放熱部材30に接着されてもよい。
【0083】
また、第1熱伝導部材50及び第2熱伝導部材51は、必須の構成ではなく、いずれか一方又は両方が設けられなくてもよい。つまり、熱電素子15は、ハウジング20及び/又は放熱部材30に対して直接取り付けられてもよい。この場合、熱電素子15は、弾性接着材56によってハウジング20又は放熱部材30に直接接触されてもよいし、ハウジング20及び放熱部材30の一方と弾性接着材56で接着される場合には、他方とは弾性接着材56以外の接着材によって直接接着されてもよい。換言すれば、熱電素子15は、ハウジング20と放熱部材30との間で直接又は間接的に挟まれるように設けられて、ハウジング20及び放熱部材30と熱交換可能に構成されていればよい。
【0084】
以上のように、熱電素子15が弾性を有する弾性接着材56によってハウジング20又は放熱部材30に取り付けられるとは、熱電素子15が弾性接着材56によってハウジング20又は放熱部材30に直接接着されることに加えて、熱電素子15が第1熱伝導部材50や第2熱伝導部材51といった他の部材に弾性接着材56によって接着され、当該他の部材を介してハウジング20又は放熱部材30に取り付けられる構成も含む意味である。つまり、熱電素子15は、ハウジング20及び放熱部材30の少なくとも一方に対して、直接的に、又は、熱伝導部材を介して間接的に、弾性接着材56により接着されていればよい。例えば、第1熱伝導部材50又は第2熱伝導部材51に弾性接着材56によって接着され第1熱伝導部材50又は第2熱伝導部材51がハウジング20又は放熱部材30に取り付けられる構成でもよい。また、熱電素子15は、弾性接着材56による接着以外の方法で第1熱伝導部材50又は第2熱伝導部材51に取り付けられ、第1熱伝導部材50又は第2熱伝導部材51が弾性接着材56によってハウジング20又は放熱部材30に取り付けられてもよい。このように、熱電素子15をハウジング20に取り付けるための構成、及び、熱電素子15を放熱部材30に取り付けるための構成、の少なくともいずれかに弾性接着材56が含まれていればよい。
【0085】
また、上記実施形態では、熱電素子15は、熱伝導性接着材55により第1熱伝導部材50に接着される。熱電素子15に対する熱伝導を良好にするには、弾性接着材56よりも熱伝導に優れる熱伝導性接着材55により第1熱伝導部材50に接着することが望ましいが、熱電素子15と第1熱伝導部材50との間の接着材はこれに限定されるものではない。また、熱電素子15と第2熱伝導部材51とを接着する弾性接着材56を熱電素子15と第1熱伝導部材50との接着に用いてもよい。また、接着材を用いずに、熱電素子15と第1熱伝導部材50とを単に接触させるのみであってもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、熱発電装置100は、油圧シリンダ1で生じる油漏れを検知するセンサ装置101に利用される。これに対し、熱発電装置100は、センサ装置101に限定されず、その他の装置に利用されるものでもよい。
【0087】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0088】
熱発電装置100は、ケース10と、ケース10に収容され吸熱面15aと放熱面15bとの温度差に応じて起電力を生じる熱電素子15と、を備え、ケース10は、熱電素子15の吸熱面15aと熱的に接続されるハウジング20と、熱電素子15の放熱面15bと熱的に接続される放熱部材30と、ハウジング20と放熱部材30とに挟まれて設けられハウジング20と放熱部材30とを断熱する樹脂製のスペーサ40と、を有し、熱電素子は、弾性を有する弾性接着材56によってハウジング20又は放熱部材30に取り付けられる。
【0089】
この構成では、熱電素子15は、弾性を有する弾性接着材56によってハウジング20又は放熱部材30に取り付けられるため、ハウジング20、放熱部材30、スペーサ40に寸法誤差や温度変化に伴う寸法変化が生じても、弾性接着材56の弾性により寸法誤差や寸法変化を吸収することができる。これにより、熱電素子15とハウジング20又は放熱部材30との間での隙間の発生や、ハウジング20と放熱部材30とにより熱電素子15が圧縮されることを抑制することができる。したがって、熱発電装置100の発電効率と耐久性が向上する。
【0090】
また、熱発電装置100では、熱電素子15は、弾性接着材56によってハウジング20及び放熱部材30の一方に接着され、弾性接着材56よりも熱伝導性に優れた熱伝導性接着材55によってハウジング20及び放熱部材30の他方に接着される。
【0091】
この構成では、熱電素子15に作用する圧縮力及び引張力を弾性接着材56により吸収しつつ、ハウジング20及び放熱部材30の他方から熱電素子15への熱伝導を良好にすることができる。したがって、熱発電装置100の発電効率と耐久性の確保をより適切に両立させることができる。
【0092】
また、熱発電装置100は、ハウジング20及び放熱部材30の一方に設けられ雌ねじが形成される連結部材52と、ハウジング20及び放熱部材30の他方を挿通し連結部材52に螺合する雄ねじが形成される樹脂製の樹脂ねじ72と、をさらに備え、連結部材52と、樹脂ねじ72が挿通するハウジング20及び放熱部材30の他方とは、互いに接触せずに離間している。
【0093】
この構成では、連結部材52が放熱部材30と接触しないため、ハウジング20と放熱部材30との位置関係は、スペーサ40によって位置決めされる。つまり、連結部材52の寸法のばらつきが生じても連結部材52が放熱部材30に接触しないため、連結部材52は、スペーサ40によるハウジング20と放熱部材30との位置決めを阻害しない。これにより、ハウジング20と放熱部材30とはスペーサ40によって適切に位置決めされ、連結部材52が放熱部材30に接触することで熱電素子15と放熱部材30(第2熱伝導部材51)との間に隙間が生じることを防止できる。これにより、熱電素子15から放熱部材30への熱伝導性が確保され、熱発電装置100の発電効率を向上させることができる。
【0094】
また、熱発電装置100は、一端がハウジング20及び放熱部材30の一方に取り付けられ、他端に熱電素子15が弾性接着材56によって接着され、他端とハウジング20及び放熱部材30の他方との間で熱電素子15を支持する第2熱伝導部材51をさらに備え、スペーサ40の内周には、第2熱伝導部材51が挿入される収容溝40cが形成される。
【0095】
この構成では、第2熱伝導部材51が取り付けられた放熱部材30とスペーサ40とを組付けた状態で第2熱伝導部材51の先端に弾性接着材56を塗布することで、第2熱伝導部材51の先端と収容溝40cとの間の空間Cがポケットとして機能する。このため、第2熱伝導部材51の先端に弾性接着材56を貯留して先端からの液だれを抑制できる。これにより、第2熱伝導部材51の先端への熱電素子15の接着状態を良好にすることができ、熱電素子15への圧縮力及び引張力の吸収と熱電素子15から放熱部材30への熱伝導とを効果的に行うことができる。
【0096】
また、変形例に係る熱発電装置100は、一端がハウジング20及び放熱部材30の一方に取り付けられ、他端が熱電素子15を支持する第1熱伝導部材50をさらに備え、第1熱伝導部材50が取り付けられるハウジング20及び放熱部材30の一方には、第1熱伝導部材50の端部が収容される取付穴24が形成され、取付穴24には、第1熱伝導部材50をハウジング20及び放熱部材30の他方に向けて付勢するコイルスプリング75が設けられ、第1熱伝導部材50は、コイルスプリング75と共に取付穴24に充填される弾性接着材56によってハウジング20及び放熱部材30の一方に取り付けられる。
【0097】
この構成では、第1熱伝導部材50及び熱電素子15は、弾性接着材56に加えて、コイルスプリング75によっても弾性支持される。これにより、熱電素子15を支持する弾性力は、弾性接着材56とコイルスプリング75とによる弾性力の合力となる。このようにコイルスプリング75を設けることで、熱電素子15を支持する弾性力を調整することができ、熱発電装置100の発電効率と耐久性とを両立しやすくなる。
【0098】
ハウジング20と放熱部材30との温度差を電力に変換する熱電素子15を備える熱発電装置100の製造方法は、ハウジング20の熱を伝導する第1熱伝導部材50をハウジング20に取り付ける工程と、放熱部材30の熱を伝導する第2熱伝導部材51を放熱部材30に取り付ける工程と、樹脂製のスペーサ40を放熱部材30に取り付ける工程と、第2熱伝導部材51の先端に弾性接着材56を付着させ、予め回路基板81に電気的に接続される熱電素子15を弾性接着材56によって第2熱伝導部材51に取り付ける工程と、ハウジング20に取り付けられた第1熱伝導部材50の先端に熱伝導性接着材55を付着させる工程と、第2熱伝導部材51に取り付けられた熱電素子15をハウジング20に取り付けられた第1熱伝導部材50に付着される熱伝導性接着材55により第1熱伝導部材50に接着させつつ、スペーサ40をハウジング20に取り付ける工程と、を備える。
【0099】
この構成では、熱電素子15は、予め回路基板81に電気的に接続された状態で放熱部材30に組付けられてアセンブリ化され、その後当該アセンブリとハウジング20とが組付けられる。この構成によれば、熱電素子15と回路基板81とを個別にハウジング20又は放熱部材30に取り付けた状態で熱電素子15と回路基板81とを電気的に配線する場合と比較して、配線作業を容易に行うことができる。よって、熱発電装置100を容易に製造することができる。
【0100】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0101】
10…ケース、15…熱電変換素子、15a…吸熱面、15b…放熱面、20…ハウジング(第1部材)、30…放熱部材(第2部材)、40…スペーサ(断熱部材)、50…第1熱伝導部材(熱伝導部材)、51…第2熱伝導部材(熱伝導部材)、52…連結部材(第1ねじ部材)、55…第1接着材(熱伝導性接着材)、56…第2接着材(弾性接着材)、72…樹脂ねじ(第2ねじ部材)、75…コイルスプリング(弾性部材)、81…回路基板、100…熱発電装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6