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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】電磁誘導加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20240117BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240117BHJP
   H05B 6/04 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
H05B6/12 323
H02M7/48 Z
H05B6/04 321
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020137909
(22)【出願日】2020-08-18
(65)【公開番号】P2022034220
(43)【公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】庄司 浩幸
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-319296(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0151365(US,A1)
【文献】国際公開第2018/211745(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
H02M 7/48
H05B 6/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの被加熱物を誘導加熱するために1つの環状加熱コイルを形成する複数の加熱コイ
ルと、
直流電源が出力する直流電圧を交流電圧に変換して前記複数の加熱コイルに供給するイ
ンバータ回路と、
を備えた電磁誘導加熱装置であって、
前記インバータ回路は、
前記直流電源の正電極と負電極の間に、2個のスイッチング素子の直列体である上下ア
ームを前記複数の加熱コイルと同数直列接続したものであり、
前記インバータ回路の隣接する出力端子の間には、何れも、前記加熱コイルと共振コン
デンサの直列体が接続されており、
前記複数の加熱コイルとは2つの加熱コイルであり、
前記インバータ回路は、
2個のスイッチング素子の直列体である第一の上下アームと、2個のスイッチング素子
の直列体である第二の上下アームと、の直列体を備え、
各スイッチング素子を駆動することで、ハーフブリッジ方式インバータとして動作する
ものであり、
前記第一の上下アームの出力端子間には、第一の加熱コイルと第一の共振コンデンサの
直列体が接続され、
前記第二の上下アームの出力端子間には、第二の加熱コイルと第二の共振コンデンサの
直列体が接続され、
前記スイッチング素子にはスナバ用コンデンサ兼電圧バランス用コンデンサが並列に接
続されており、
前記インバータ回路は、
前記第一、第二の上下アームの上アーム同士がオンしている期間と、
前記第一、第二の上下アームの下アーム同士がオンしている期間と、を設け、
前記第一、第二の加熱コイルに流す電流の向きを同位相に制御しながら高周波電流を供
給して、前記被加熱物を加熱することを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【請求項2】
1つの被加熱物を誘導加熱するために1つの環状加熱コイルを形成する複数の加熱コイ
ルと、
直流電源が出力する直流電圧を交流電圧に変換して前記複数の加熱コイルに供給するイ
ンバータ回路と、
を備えた電磁誘導加熱装置であって、
前記インバータ回路は、
前記直流電源の正電極と負電極の間に、2個のスイッチング素子の直列体である上下ア
ームを前記複数の加熱コイルと同数直列接続したものであり、
前記インバータ回路の隣接する出力端子の間には、何れも、前記加熱コイルと共振コン
デンサの直列体が接続されており、
前記複数の加熱コイルとは2つの加熱コイルであり、
前記インバータ回路は、
2個のスイッチング素子の直列体である第一の上下アームと、2個のスイッチング素子
の直列体である第二の上下アームと、の直列体を備え、
各スイッチング素子を駆動することで、ハーフブリッジ方式インバータとして動作する
ものであり、
前記第一の上下アームの出力端子間には、第一の加熱コイルと第一の共振コンデンサの
直列体が接続され、
前記第二の上下アームの出力端子間には、第二の加熱コイルと第二の共振コンデンサの
直列体が接続され、
前記スイッチング素子にはスナバ用コンデンサ兼電圧バランス用コンデンサが並列に接
続されており、
前記インバータ回路は、
前記第一の上下アームの上アームと前記第二の上下アームの下アームがオンしている期
間と、
前記第一の上下アームの下アームと前記第二の上下アームの上アームがオンしている期
間と、を設け、
前記第一、第二の加熱コイルに流す電流の向きを逆位相に制御しながら高周波電流を供
給して、前記被加熱物を加熱することを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【請求項3】
1つの被加熱物を誘導加熱するために1つの環状加熱コイルを形成する複数の加熱コイ
ルと、
直流電源が出力する直流電圧を交流電圧に変換して前記複数の加熱コイルに供給するイ
ンバータ回路と、
を備えた電磁誘導加熱装置であって、
前記インバータ回路は、
前記直流電源の正電極と負電極の間に、2個のスイッチング素子の直列体である上下ア
ームを前記複数の加熱コイルと同数直列接続したものであり、
前記インバータ回路の隣接する出力端子の間には、何れも、前記加熱コイルと共振コン
デンサの直列体が接続されており、
前記複数の加熱コイルとは2つの加熱コイルであり、
前記インバータ回路は、
2個のスイッチング素子の直列体である第一の上下アームと、2個のスイッチング素子
の直列体である第二の上下アームと、の直列体を備え、
各スイッチング素子を駆動することで、ハーフブリッジ方式インバータとして動作する
ものであり、
前記第一の上下アームの出力端子間には、第一の加熱コイルと第一の共振コンデンサの
直列体が接続され、
前記第二の上下アームの出力端子間には、第二の加熱コイルと第二の共振コンデンサの
直列体が接続され、
前記スイッチング素子にはスナバ用コンデンサ兼電圧バランス用コンデンサが並列に接
続されており、
前記第一、第二の加熱コイルは半円状に巻回した加熱コイルであり、
前記第一、第二の加熱コイルを組み合わせて前記環状加熱コイルを形成するように、両
加熱コイルが隣接して設置され、
前記第一の上下アームの出力端子が前記第一の加熱コイルの外周側に接続されるととも
に、前記第二の上下アームの出力端子が前記第二の加熱コイルの外周側に接続されること
を特徴とする電磁誘導加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物に対し所望の電力を供給して誘導加熱を行うインバータ方式の電磁誘導加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、火を使わずに鍋などの被加熱物を加熱するインバータ方式の電磁誘導加熱装置が広く用いられるようになってきている。電磁誘導加熱装置は、加熱コイルに高周波電流を流し、加熱コイルに近接して配置された金属製の被加熱物(鍋など)に渦電流を発生させ、被加熱物自体の電気抵抗により発熱させるものである。
【0003】
加熱コイルを2つ備えた場合に加熱できる従来例として、特許文献1に開示される電磁誘導加熱装置がある。この電磁誘導加熱装置は、直流電源に直列接続された3つ半導体スイッチ(同文献の図1、符号Q1a、Q1b、Q1c)を備え、2つの加熱コイル(同文献の図1、符号6、7)に同位相の電流を流して加熱したい場合は、Q1bを常時オン状態にし、Q1aとQ1cを交互にオンオフ(同文献の図3)して誘導加熱し、2つの加熱コイルに逆位相の電流を流して加熱したい場合は、同期してオンオフするQ1aとQ1cに対し、Q1bを排他的にオンオフ(同文献の図24)して誘導加熱するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/064932号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、各半導体スイッチの制御方法を切り替えることで、2つの加熱コイルの電流の向きを同相または逆相に設定できるが、それぞれの直列回路に同じ電圧を印加した状態では加熱コイルの電流の向きを切り替えることができないため、被加熱物に対して適切な加熱制御が難しかった。また、各半導体スイッチには、電源電圧がそのまま印加されるタイミングがあるため、各半導体スイッチの耐圧を下げることができないという問題もあった。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題に対処することであり、各半導体スイッチの耐圧を下げつつ、被加熱物に対して所望の電力を効率良く供給できるインバータ方式の電磁誘導加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明の電磁誘導加熱装置は、1つの被加熱物を誘導加熱するために1つの環状加熱コイルを形成する複数の加熱コイルと、直流電源が出力する直流電圧を交流電圧に変換して前記複数の加熱コイルに供給するインバータ回路と、を備えた電磁誘導加熱装置であって、前記インバータ回路は、前記直流電源の正電極と負電極の間に、2個のスイッチング素子の直列体である上下アームを前記複数の加熱コイルと同数直列接続したものであり、前記インバータ回路の隣接する出力端子の間には、何れも、前記加熱コイルと共振コンデンサの直列体が接続されているものとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オン抵抗の低い低圧スイッチング素子を適用でき、加熱コイルに流れる電流の向きを制御して鍋底の加熱部位を選択しながら被加熱物対して所望の電力を効率良く供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施例の電磁誘導加熱装置の回路構成図。
図2】一実施例の直流電源の回路構成図。
図3】一実施例の加熱コイル電流が同位相時の動作波形。
図4】一実施例の加熱コイル電流が逆位相時の動作波形。
図5】一実施例の加熱コイル電流が同位相時の加熱コイルと上下アームの接続図。
図6】一実施例の加熱コイル電流が逆位相時の加熱コイルと上下アームの接続図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について、図面を用いながら説明する。なお、各図において、符号が同一のものは同一の構成要件あるいは類似の機能を備えた構成要件を示しており、適宜重複説明を省略している。
【0011】
図1は、本発明の一実施例の電磁誘導加熱装置の回路構成図である。なお、本実施例の電磁誘導加熱装置は、金属筐体の上部に耐熱ガラス製のトッププレートを設置し、トッププレートの下方に配置した加熱コイルに高周波電流を供給することで、トッププレート上面の所定位置に載置した金属製の被加熱物を誘導加熱するものであるが、以下ではこのような周知構成の説明は省略する。
【0012】
図1において、直流電源1は200Vまたは100Vの商用交流電源から供給される交流電圧を整流し直流電圧を出力する電源である。この直流電源1の正電極Pと負電極Nとの間には、パワー半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」と称する)5aと5bが直列に接続された第一の上下アーム51と、スイッチング素子5cと5dが直列に接続された第二の上下アーム52が直列に接続されている。
【0013】
スイッチング素子5a~5dのそれぞれにはダイオード6a~6dが逆方向に並列接続されており、また、スイッチング素子5a~5dのそれぞれにはコンデンサ7a~7dが並列に接続されている。このコンデンサ7a~7dは、スイッチング素子5a~5dのターンオフ時の遮断電流によって充電あるいは放電され、各スイッチング素子に印加される電圧の変化が低減することによりターンオフ損失を抑制するものである。また、スイッチング素子5a~5dのオフしているスイッチング素子に印加される電圧をバランスさせる役割がある。
【0014】
ここで、スイッチング素子5a、5bの接続点を出力端子O、スイッチング素子5b、5cの接続点を出力端子O、スイッチング素子5c、5dの接続点を出力端子Oと称することとする。
【0015】
図1に示すように、第一の上下アーム51の出力端子Oには第一の加熱コイル11の一端が接続され、第一の加熱コイル11の他端と直流電源1の正電極Pの間には第一の共振コンデンサ21aが接続され、第一の加熱コイル11の他端と出力端子Oの間には第一の共振コンデンサ21bが接続されている。
【0016】
同様に、第二の上下アーム52の出力端子Oには第二の加熱コイル12の一端が接続され、第二の加熱コイル12の他端と出力端子Oの間には第二の共振コンデンサ22aが接続され、第二の加熱コイル12の他端と直流電源1の負電極Nの間には第二の共振コンデンサ22bが接続されている。
【0017】
ここで、直流電源1は、例えば図2に示すような商用交流電源100から供給される交流電圧をダイオード101a~101dで整流し、インダクタ102aとコンデンサ103aから構成されるノーマルフィルタを介した後、昇圧用のインダクタ102bとスイッチング素子105、ダイオード106a、平滑用のコンデンサ103bからなる昇圧チョッパにより直流電圧を出力する電源である。
【0018】
本実施例の電磁誘導加熱装置では、第一の上下アーム51と第二の上下アーム52の駆動方法を変更することにより加熱コイル11、12に流れる電流の位相を同位相か逆位相かに変更し被加熱物を加熱する。なお、加熱コイル11、12に流れる電流i11、i12の向きは、図1に示す一点鎖線の矢印方向を正方向とし、以下では、加熱コイル11、12に同位相の電流を流す場合と、逆位相の電流を流す場合の制御の違いを説明する。
【0019】
<加熱コイルに同位相の電流を流す場合>
まず、図3を用いて、加熱コイルに同位相の電流を流す制御を説明する。
【0020】
図3は、加熱コイル11、12に同位相の電流が流れている場合の動作波形である。ここに示す波形は、上から順に、(a)スイッチング素子5a~5dのゲート駆動信号vg5a~vg5d、(b)スイッチング素子5b、5dに印加される電圧v5b、v5d、加熱コイル11、12の電流i11、i12、(c)共振コンデンサ21b、22bの電圧v21b、v22b、(d)上下アーム51、52の各素子の電流i5a~i5d、i6a~i6dである。
【0021】
本実施例では、加熱コイル11、12に同位相の電流i11、i12を流す場合は、図3(a)に示すように、第一の上下アーム51と第二の上下アーム52の上アーム同士(スイッチング素子5a、5c)が同時にオンしている期間と、下アーム同士(スイッチング素子5b、5d)が同時にオンしている期間を設ける。これにより、スイッチング素子5aと5cが同時にオンしている場合は、直流電源1からスイッチング素子5a、加熱コイル11、第一の共振コンデンサ21b、スイッチング素子5c、第二の加熱コイル12と第二の共振コンデンサ22bの経路で電流が流れる。また、第一の共振コンデンサ21aからスイッチング素子5a、第一の加熱コイル11の環流経路と、第二の共振コンデンサ22aからスイッチング素子5c、第二の加熱コイル12の環流経路でコイル電流が流れる。したがって、図3(b)に示すように、加熱コイル11、12の電流i11、i12は同位相になる。スイッチング素子5a~5dはダイオード6a~6dに電流が流れている期間にターンオンさせることが出来ており、スイッチング損失の少ないソフトスイッチング動作が可能となる。
【0022】
ここで、スイッチング素子5aと5cがオンしている期間、第一の加熱コイル11と第一の共振コンデンサ21bと第二の加熱コイル12と第二の共振コンデンサ22bの直列共振負荷回路には直流電源1の電圧Vが印加される。この時、コンデンサ7bと7dの容量が同じであれば、図3(b)に示すように、スイッチング素子5bと5dには、直流電源1の電圧Vの約1/2の電圧がそれぞれ印加される。同様に、コンデンサ7aと7cの容量が同じであれば、スイッチング素子5bと5dがオンしている期間にスイッチング素子5aと5cに印加される電圧は直流電源1の電圧Vの約1/2となる。
【0023】
上記した特許文献1では、直流電源の電圧がスイッチング素子にそのまま印加されるため、スイッチング素子の耐圧を下げることは難しかったが、本実施例ではスイッチング素子5a~5dに印加される電圧は直流電源1の電圧Vの約1/2になるため、スイッチング素子の耐圧を下げることができオン抵抗の低いスイッチング素子を適用できることから低損失化に効果的である。
【0024】
<加熱コイルに逆位相の電流を流す制御>
次に、図4を用いて、加熱コイルに逆位相の電流を流す制御を説明する。
【0025】
図4は、加熱コイル11、12に逆位相の電流を流れている場合の動作波形である。なお、図4のvg5a等の意味は図3と同等である。
【0026】
本実施例では、加熱コイル11、12に逆位相の電流i11、i12を流す場合は、図4(a)に示すように、第一の上下アーム51の上アーム(スイッチング素子5a)と第二の上下アーム52の下アーム(スイッチング素子5d)を同時にオンオフし、第一の上下アーム51の下アーム(スイッチング素子5b)と第二の上下アーム52の上アーム(スイッチング素子5c)を同時にオンオフする。これにより、スイッチング素子5aと5dがオンしている場合は、直流電源1からスイッチング素子5a、第一の加熱コイル11、第一の共振コンデンサ21b、第二の共振コンデンサ22a、第二の加熱コイル12、スイッチング素子5dの経路で電流が流れる。また、第一の共振コンデンサ21aからスイッチング素子5a、第一の加熱コイル11の環流経路と、第二の共振コンデンサ22bから加熱コイル12、スイッチング素子5dの環流経路でコイル電流が流れる。したがって、図4(b)に示すように、加熱コイル11、12の電流i11、i12は逆位相になる。スイッチング素子5a~5dはダイオード6a~6dに電流が流れている期間にターンオンさせることが出来ており、スイッチング損失の少ないソフトスイッチング動作が可能となる。
【0027】
ここで、スイッチング素子5aと5dがオンしている期間、第一の加熱コイル11と第一の共振コンデンサ21bと第二の共振コンデンサ22aと第二の加熱コイル12の直列共振負荷回路には直流電源1の電圧Vが印加される。この時、コンデンサ7bと7cの容量が同じであれば、図4(b)に示すように、スイッチング素子5bと5cには、直流電源1の電圧Vの約1/2の電圧がそれぞれ印加される。同様に、コンデンサ7aと7dの容量が同じであれば、スイッチング素子5bと5cがオンしている期間にスイッチング素子5aと5dに印加される電圧は直流電源1の電圧Vの約1/2となる。
【0028】
このように、本実施例は、第一の加熱コイル11と第一の共振コンデンサ21a、21bと、第二の加熱コイル12と第二の共振コンデンサ22a、22bの直列共振回路を負荷回路とするハーフブリッジ方式インバータ回路として機能する。以上で説明した制御を鍋底の加熱部位に応じて使い分けることで、電磁誘導加熱装置は、設定火力の実現に必要な所望の電力を被加熱物に供給することができる。
【0029】
<電磁誘導加熱装置における加熱コイルの具体的な配置>
図5は、図1に示した加熱コイル11、12と上下アーム51、52の接続方法を、電磁誘導加熱装置における第一、第二の加熱コイル11、12の具体的な配置とともに示した構成図である。この電磁誘導加熱装置では、1つの被加熱物(金属鍋など)を誘導加熱するための1つの環状加熱コイルを、半月の輪郭のように半円状に巻回した第一の加熱コイル11と第二の加熱コイル12を組み合わせて形成しており、この加熱コイルと各上下アームを図示するように接続している。
【0030】
本実施例では、第一の加熱コイル11を電磁誘導加熱装置の奥側に、第二の加熱コイル12を電磁誘導加熱装置の手前側に配置し、上下アーム51の出力端子Oを第一の加熱コイル11の外周部に、第一の共振コンデンサ21aと21bの接続点を第一の加熱コイル11の内周部に、上下アーム52の出力端子Oを第二の加熱コイル12の外周部に、第二の共振コンデンサ22aと22bの接続点を第二の加熱コイル12の内周部に接続している。図5のように、第一の加熱コイル11を外周から内周に向かって右巻に巻回し、第二の加熱コイル12を外周から内周に向かって左巻に巻回すると、図3のように加熱コイル11、12に同位相の電流を流して加熱する場合は、図5の一点鎖線の矢印に示すように、各加熱コイルが対向する直線部における第一の加熱コイル11の電流i11と第二の加熱コイル12の電流i12は同位相となる。そのため、2つの加熱コイルが作る磁束によって、鍋の中央部にはその磁束を打ち消す方向に大きな渦電流が流れ所望の発熱量を得ることができる。
【0031】
一方、加熱コイル11、12に図4のように逆位相の電流を流して加熱する場合は、図6の一点鎖線の矢印に示すように、各加熱コイルが対向する直線部における第一の加熱コイル11の電流i11と第二の加熱コイル12の電流i12は逆位相となる。そのため、磁束のキャンセルが生じて鍋の中央部の発熱量は抑えられ、鍋の外周部に所望の発熱量を得ることができる。
【0032】
このように、加熱コイルの電流の位相を制御することで、鍋底の発熱箇所を変更できるため、鍋の材質や大きさ等に合わせて適切な加熱制御が可能となる。
【0033】
本実施例では、加熱コイル11、12の電流が同位相の場合に、鍋底の中央部の発熱量を増やし、逆位相の場合に鍋底の外周部の発熱量を増やしたが、加熱コイル11、12の巻回方向と、上下アームおよび共振コンデンサとの接続を変更することにより、鍋底の発熱部位を変更することは容易である。
【0034】
なお、図1から図6では、半円状の加熱コイルを2つ組み合わせて形成した環状の加熱コイルを用いて、1つの被加熱物を加熱する電磁誘導加熱装置を説明したが、3つ以上の加熱コイルを組み合わせて形成した環状の加熱コイルを用いて、1つの被加熱物を加熱する電磁誘導加熱装置としても良い。例えば、n個の加熱コイルを組み合わせて環状の加熱コイルを形成する場合は、直流電源1の正電極Pと負電極Nの間にn個の上下アームを直列に接続し、各上下アームに対して図1の上下アーム51、52と同様に、2つのコンデンサ、1つの加熱コイル、2つの共振コンデンサを設ければ良い。
【符号の説明】
【0035】
1 直流電源、
2 インバータ
5a~5g、105 スイッチング素子、
6a~6g、101a~101d、106a、106b ダイオード、
7a~7g、103a、103b コンデンサ、
11 第一の加熱コイル、
12 第二の加熱コイル、
21a、21b 第一の共振コンデンサ、
22a、22b 第二の共振コンデンサ、
51 第一の上下アーム、
52 第二の上下アーム、
100 商用交流電源
102a、102b インダクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6