(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/348 20060101AFI20240117BHJP
F16F 9/18 20060101ALI20240117BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20240117BHJP
B62K 25/08 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
F16F9/348
F16F9/18
F16F9/32 L
B62K25/08 Z
(21)【出願番号】P 2020144023
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】514241869
【氏名又は名称】カヤバモーターサイクルサスペンション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】松原 勇太
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0093417(KR,A)
【文献】特開2004-144272(JP,A)
【文献】特表2011-528089(JP,A)
【文献】特開2007-120726(JP,A)
【文献】特開2016-023674(JP,A)
【文献】実開昭57-003147(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/348
F16F 9/18
F16F 9/32
B62K 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、前記シリンダ内に移動可能に挿入されるロッドとを有して伸縮可能な緩衝器本体と、
前記緩衝器本体内に二つの作動室を区画するとともに前記二つの作動室を連通する複数の第一ポートと複数の第二ポートとを有するバルブディスクと、
前記バルブディスクの一端側に積層されて前記第一ポートを開閉するチェックバルブと、
前記バルブディスクの他端側に積層されて前記第二ポートを開閉する環状のリーフバルブとを備え、
前記第一ポートおよび前記第二ポートは、前記バルブディスクの同一円周上に周方向で交互に並べて配置されて同数設けられており、
前記バルブディスクは、
前記一端側に前記第一ポートおよび前記第二ポートの内周側に前記チェックバルブに対向する内周部と、前記内周部の外周に連なって前記第一ポートをそれぞれ個別に取り囲む複数の包囲部とを有する弁座を具備し、
前記チェックバルブは、
前記内周部に対向する内環と、
前記内環の外周に周方向に間隔を開けて放射状に設けられて前記包囲部にそれぞれ対向して前記第一ポートをそれぞれ独立して開閉する複数の弁部とを有
し、
前記バルブディスクは、一端における周方向で隣り合う前記包囲部間であって前記第二ポートの内周側から前記包囲部間の幅に等しい幅で突出して前記弁部間に挿入されて前記チェックバルブの回転を阻止するガイド部を有する
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
シリンダと、前記シリンダ内に移動可能に挿入されるロッドとを有して伸縮可能な緩衝器本体と、
前記緩衝器本体内に二つの作動室を区画するとともに前記二つの作動室を連通する複数の第一ポートと複数の第二ポートとを有するバルブディスクと、
前記バルブディスクの一端側に前記バルブディスクから全体が離間可能に積層されて前記第一ポートを開閉するチェックバルブと、
前記チェックバルブを前記バルブディスクへ向けて付勢する弾性体と、
前記バルブディスクの他端側に積層されて前記第二ポートを開閉する環状のリーフバルブとを備え、
前記第一ポートおよび前記第二ポートは、前記バルブディスクの同一円周上に周方向で交互に並べて配置されて同数設けられており、
前記バルブディスクは、
前記一端側に前記第一ポートおよび前記第二ポートの内周側に前記チェックバルブに対向する内周部と、前記内周部の外周に連なって前記第一ポートをそれぞれ個別に取り囲む複数の包囲部とを有する弁座を具備し、
前記チェックバルブは、
前記内周部に対向する内環と、
前記内環の外周に周方向に間隔を開けて放射状に設けられて前記包囲部にそれぞれ対向して前記第一ポートをそれぞれ独立して開閉する複数の弁部とを有し、
前記バルブディスクは、一端から突出して前記弁部間に挿入されて、前記チェックバルブが前記弁座に着座した状態および前記弁座から離間した状態のいずれであっても前記チェックバルブの回転を阻止するガイド部を有する
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項3】
シリンダと、前記シリンダ内に移動可能に挿入されるロッドとを有して伸縮可能な緩衝器本体と、
前記緩衝器本体内に二つの作動室を区画するとともに前記二つの作動室を連通する複数の第一ポートと複数の第二ポートとを有するバルブディスクと、
前記バルブディスクの一端側に積層されて前記第一ポートを開閉するチェックバルブと、
前記バルブディスクの他端側に積層されて前記第二ポートを開閉する環状のリーフバルブとを備え、
前記第一ポートおよび前記第二ポートは、前記バルブディスクの同一円周上に周方向で交互に並べて配置されて同数設けられており、
前記バルブディスクは、
前記一端側に前記第一ポートおよび前記第二ポートの内周側に前記チェックバルブに対向する内周部と、前記内周部の外周に連なって前記第一ポートをそれぞれ個別に取り囲む複数の包囲部とを有する弁座を具備し、
前記チェックバルブは、
前記内周部に対向する内環と、
前記内環の外周に周方向に間隔を開けて放射状に設けられて前記包囲部にそれぞれ対向して前記第一ポートをそれぞれ独立して開閉する複数の弁部とを有し、
前記バルブディスクは、一端から突出して前記弁部間に挿入されて前記チェックバルブの回転を阻止するガイド部と、前記ガイド部の周囲に形成される溝とを有する
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項4】
前記チェックバルブは、前記内環が前記内周部に当接した状態で保持されており、前記弁部の撓みによって前記第一ポートを開放する
ことを特徴とする請求項1
又は3に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記バルブディスクは、前記包囲部の内側に前記弁部のバルブディスク側面を支持するランド部を有する
ことを特徴とする請求
項4に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記緩衝器本体は、
前記シリンダ内に移動可能に挿入されるとともに前記ロッドに連結されて、前記シリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、
前記シリンダ内に挿入される前記バルブディスクによって仕切られるリザーバとを有し、
前記圧側室と前記リザーバを前記作動室として、
前記チェックバルブは、前記バルブディスクの圧側室側に配置されて液体が前記第一ポートを前記リザーバから前記圧側室へ向かう方向へ流れる場合にのみ開弁する
ことを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗車両の車体と前輪との間に介装される緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、ロッドの先端に連結されるとともにシリンダ内に移動自在に挿入されてシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内に挿入されてシリンダ内の圧側室に隣接するリザーバを区画するバルブケースと、ピストンに設けられる伸側室と圧側室とを連通する伸側通路と圧側通路と、バルブケースに設けられる圧側室とリザーバとを連通する排出通路と吸込通路と、ピストンの伸側室側に積層された状態で内周がロッドに固定されて圧側通路を開閉するチェックバルブと、ピストンの圧側室側に積層された状態で内周がロッドに固定されて伸側通路を開閉する伸側リーフバルブと、バルブケースのリザーバ側に積層された状態で内周がバルブケースを貫通するガイドロッドに固定されて排出通路を開閉する圧側リーフバルブと、バルブケースの圧側室側に積層された状態で内周がガイドロッドに固定されるチェックバルブと、リザーバを加圧する気室とを備えて構成されるものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このように構成された緩衝器は、伸長作動時には、ピストンが伸側室を圧縮する方向へ移動して、圧縮される伸側室から液体が伸側通路を通過して圧側室へ移動する際に、液体の流れに抵抗を与える伸側リーフバルブによって伸長を妨げる減衰力を発生する。緩衝器の伸長作動時にはバルブディスク側のチェックバルブが開弁し、シリンダから退出するロッドの体積分の液体がリザーバから吸込通路を通じてシリンダ内に供給される。
【0004】
反対に、緩衝器は、収縮作動時には、ピストンが圧側室を圧縮する方向へ移動して、圧縮される圧側室から液体が圧側通路およびピストン側のチェックバルブを通過して伸側室へ移動する。緩衝器の収縮作動時にはシリンダ内へロッドが侵入して、ロッドがシリンダ内に侵入する体積分の液体がシリンダ内から排出通路および圧側リーフバルブを通じてリザーバへ排出される。よって、緩衝器は、収縮作動時には、排出通路を通過する液体の流れに抵抗を与える圧側リーフバルブによって収縮を妨げる減衰力を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、従来の緩衝器では、
図7に示すように、バルブケース100は、バルブケース本体101と、バルブケース本体101の同一円周上に周方向に交互に並ぶ排出通路を構成する複数の排出ポート102と吸込通路を構成する複数の吸込ポート103とを備えるとともに、バルブケース本体101の端部から突出して吸込ポート103を独立して取り囲む囲み部105を有する花弁型の弁座104を備えている。そして、排出ポート102の入り口は、バルブケース本体101の弁座104における囲み部105,105間に開口している。
【0007】
また、バルブケース100の弁座に離着座するチェックバルブ106は環状板で構成されているため、チェックバルブ106が花弁型の弁座104に着座した状態では、圧側室内の液体は、チェックバルブ106とバルブケース本体101と囲み部105と囲み部105とで囲まれる狭い開口Oを通過して排出ポート102の入口へと移動する。
【0008】
開口Oの流路面積は、排出ポート102の流路面積よりも狭く、ピストン速度が低い場合には問題とはならないが、ピストン速度が高速となって排出ポートを流れる流量が多くなると、開口Oがオリフィスとして機能して排出ポート102を開閉するリーフバルブによる圧力損失よりも前記開口Oにおける圧力損失が大きくなってしまう。
【0009】
よって、従来の緩衝器では、ピストン速度が高速となると、リーフバルブのピストン速度に比例する特性からオリフィスのピストン速度の二乗に比例する特性に変化して減衰力が過剰となり、車両における乗心地を悪化させてしまう問題があった。
【0010】
また、チェックバルブ106が圧側室の圧力を受けて囲み部105,105間に対向する部分が変形して疲労が促進してしまうので、これを防止しようと板厚を厚くするとチェックバルブ106が吸込ポート103を通過する作動油の流れに与える抵抗が大きくなって圧側室にて吸込不足が発生して緩衝器の伸縮方向の切り換わりで減衰力の発生に遅れが生じ、この点でも車両における乗心地を悪化させてしまう可能性がある。
【0011】
そこで、本発明は、車両における乗心地を向上できる緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の課題を解決するため、本発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に移動可能に挿入されるロッドとを有して伸縮可能な緩衝器本体と、緩衝器本体内に二つの作動室を区画するとともに二つの作動室を連通する複数の第一ポートと複数の第二ポートとを有するバルブディスクと、バルブディスクの一端側に積層されて第一ポートを開閉するチェックバルブと、バルブディスクの他端側に積層されて第二ポートを開閉する環状のリーフバルブとを備え、第一ポートおよび第二ポートは、バルブディスクの同一円周上に周方向で交互に並べて配置されて同数設けられており、バルブディスクは、一端側に第一ポートおよび第二ポートの内周側にチェックバルブに対向する内周部と、内周部の外周に連なって第一ポートをそれぞれ個別に取り囲む複数の包囲部とを有する弁座を具備し、チェックバルブは、内周部に対向する内環と、内環の外周に周方向に間隔を開けて放射状に設けられて包囲部にそれぞれ対向して第一ポートをそれぞれ独立して開閉する複数の弁部とを有し、バルブディスクは、一端における周方向で隣り合う包囲部間であって第二ポートの内周側から包囲部間の幅に等しい幅で突出して弁部間に挿入されてチェックバルブの回転を阻止するガイド部を有することを特徴とする。また、他の発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に移動可能に挿入されるロッドとを有して伸縮可能な緩衝器本体と、緩衝器本体内に二つの作動室を区画するとともに二つの作動室を連通する複数の第一ポートと複数の第二ポートとを有するバルブディスクと、バルブディスクの一端側にバルブディスクから全体が離間可能に積層されて第一ポートを開閉するチェックバルブと、チェックバルブをバルブディスクへ向けて付勢する弾性体と、バルブディスクの他端側に積層されて第二ポートを開閉する環状のリーフバルブとを備え、第一ポートおよび第二ポートは、バルブディスクの同一円周上に周方向で交互に並べて配置されて同数設けられており、バルブディスクは、一端側に第一ポートおよび第二ポートの内周側にチェックバルブに対向する内周部と、内周部の外周に連なって第一ポートをそれぞれ個別に取り囲む複数の包囲部とを有する弁座を具備し、チェックバルブは、内周部に対向する内環と、内環の外周に周方向に間隔を開けて放射状に設けられて包囲部にそれぞれ対向して第一ポートをそれぞれ独立して開閉する複数の弁部とを有し、バルブディスクは、一端から突出して弁部間に挿入されて、チェックバルブが弁座に着座した状態および弁座から離間した状態のいずれであってもチェックバルブの回転を阻止するガイド部を有することを特徴とする。さらに、別の発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に移動可能に挿入されるロッドとを有して伸縮可能な緩衝器本体と、緩衝器本体内に二つの作動室を区画するとともに二つの作動室を連通する複数の第一ポートと複数の第二ポートとを有するバルブディスクと、バルブディスクの一端側に積層されて第一ポートを開閉するチェックバルブと、バルブディスクの他端側に積層されて第二ポートを開閉する環状のリーフバルブとを備え、第一ポートおよび第二ポートは、バルブディスクの同一円周上に周方向で交互に並べて配置されて同数設けられており、バルブディスクは、一端側に第一ポートおよび第二ポートの内周側にチェックバルブに対向する内周部と、内周部の外周に連なって第一ポートをそれぞれ個別に取り囲む複数の包囲部とを有する弁座を具備し、チェックバルブは、内周部に対向する内環と、内環の外周に周方向に間隔を開けて放射状に設けられて包囲部にそれぞれ対向して第一ポートをそれぞれ独立して開閉する複数の弁部とを有し、バルブディスクは、一端から突出して弁部間に挿入されてチェックバルブの回転を阻止するガイド部と、ガイド部の周囲に形成される溝とを有することを特徴とする。
【0013】
このように構成された緩衝器は、チェックバルブの弁部が第二ポートの入口の流路面積を減じることがないので、緩衝器のピストン速度が高速となって、第二ポートを通過する流量が多くなっても、緩衝器の減衰特性には従来の緩衝器のようにオリフィス特性が現れず、緩衝器の減衰力は過剰とならない。また、弁部が弁座における包囲部によって正対して支持されるので、弁部が圧側室の圧力を受けて第一ポート側に向かって凹んで変形して疲労することも抑制される。また、このように構成された緩衝器によれば、ガイド部によってチェックバルブをバルブディスクに対して周方向に位置決めできるので、チェックバルブのバルブディスクに対する位置合わせが容易となって緩衝器の組付作業性を向上できる。
【0014】
また、他の発明の緩衝器では、チェックバルブがバルブディスクの弁座から全体が離間可能に積層されており、チェックバルブをバルブディスクへ向けて付勢する弾性体を備えているので、通過する液体の流れに与える抵抗を極力小さくしたいチェックバルブの実用性を向上できるとともに、チェックバルブの板圧を厚くできるので、チェックバルブの剛性を高くしての変形防止も可能となる。
【0015】
さらに、緩衝器におけるチェックバルブは、内環が内周部に当接した状態で保持されて、弁部の撓みによって第一ポートを開放するよう構成されてもよい。このように構成された緩衝器によれば、通過する液体の流れに与える抵抗を極力小さくしたいチェックバルブの実用性を向上できる。
【0018】
また、緩衝器におけるバルブディスクは、包囲部の内側に弁部のバルブディスク側面を支持するランド部を有してもよい。このように構成された緩衝器によれば、弁部の第一ポート側へ向けて凹む変形を確実に阻止できるので、チェックバルブの疲労による劣化を阻止できる。
【0019】
さらに、緩衝器における緩衝器本体は、シリンダ内に移動可能に挿入されるとともにロッドに連結されて、シリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内に挿入されるバルブディスクによって仕切られるリザーバとを有し、圧側室とリザーバを作動室として、チェックバルブがバルブディスクの圧側室側に配置されて液体が第一ポートをリザーバから圧側室へ向かう方向へ流れる場合にのみ開弁するように緩衝器を構成してもよい。このように構成された緩衝器によれば、ピストン速度が高速となっても圧側減衰力が過剰とならず、チェックバルブの弁部同士が周方向で連結されていないので従来のチェックバルブよりも撓み易く液体の流れに与える抵抗を低減でき、伸長時にシリンダ内での液体の吸込不良を抑制できる。よって、この緩衝器によれば、狙い通りの減衰力と減衰力発生応答性を実現できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の緩衝器によれば、車両における乗心地を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施の形態の緩衝器が適用されたフロントフォークの断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態の緩衝器の一部拡大断面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態の緩衝器のバルブディスクを一端側から見た斜視図である。
【
図4】本発明の一実施の形態の緩衝器のバルブディスクを他端側から見た斜視図である。
【
図5】本発明の一実施の形態の第一変形例における緩衝器の一部拡大断面図である。
【
図6】本発明の一実施の形態の第二変形例における緩衝器の一部拡大断面図である。
【
図7】従来の緩衝器のバルブディスク部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1に示すように、一実施の形態における緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるロッド2とを有して伸縮可能な緩衝器本体Aと、緩衝器本体A内に二つの作動室としての圧側室R2とリザーバRとを区画するバルブディスク3と、バルブディスク3の一端側に積層されるチェックバルブ4と、バルブディスク3
の他端側に積層されるリーフバルブ5とを備えており、図外の二輪車等の鞍乗車両の前輪を懸架するフロントフォークFに内蔵されている。
【0023】
フロントフォークFは、
図1に示すように、
図1中上端がキャップ11によって閉塞されて図外の鞍乗車両の車体側に取り付け可能な筒状の車体側チューブ10と、
図1中下端がボトムキャップ13によって閉塞されて図外の鞍乗車両の前輪側に取り付け可能な車体側チューブ10内に摺動自在に挿入される車軸側チューブ12と、車体側チューブ10と車軸側チューブ12とで形成される閉鎖空間に収容されるとともに車体側チューブ10と車軸側チューブ12との間に介装される緩衝器Dと、シリンダ1とボトムキャップ13との間に介装されて車体側チューブ10と車軸側チューブ12とを離間する方向へ付勢する懸架ばねSとを備えて構成されている。そして、フロントフォークFは、図示しない鞍乗車両の車体と前輪との間に介装され、懸架ばねSが発揮する弾発力で車体を弾性支持するとともに緩衝器Dが発生する減衰力によって車体の振動を減衰する。
【0024】
以下の説明では、緩衝器DおよびフロントフォークFが鞍乗車両に取り付けられた状態での上下を、特別な説明がない限り、緩衝器DおよびフロントフォークFの「上」「下」とする。また、緩衝器Dを内蔵したフロントフォークFが搭載される鞍乗車両とは、鞍に跨るような姿勢で乗員が乗車する形態の車両全般のことであり、自動二輪車(スクーターを含む)、三輪車等を含む。なお、本発明に係る緩衝器Dは、フロントフォークに利用される緩衝器以外に利用されてもよい。
【0025】
以下、一実施の形態の緩衝器Dと緩衝器Dが適用されたフロントフォークFの各部について詳細に説明する。
図1および
図2に示すように、フロントフォークFは、車体側チューブ10と、車体側チューブ10内に摺動自在に挿入される車軸側チューブ12とを有して構成されるテレスコピック型のフロントフォークとして構成されている。フロントフォークFは、振動が作用すると、車軸側チューブ12が車体側チューブ10に出入りして伸縮する。なお、本実施の形態では、フロントフォークFは、車体側チューブ10内に車軸側チューブ12が挿入される倒立型になっているが、車体側チューブ10が車軸側チューブ12内に挿入される正立型とされてもよい。
【0026】
つづいて、車体側チューブ10の
図2中上端には、緩衝器Dのシリンダ1を介して環状のキャップ11が装着されている。また、フロントフォークFの下端となる車軸側チューブ12の
図1中下端は、ボトムキャップ13で塞がれている。さらに、車体側チューブ10と車軸側チューブ12の重複部の間にできる筒状の隙間は、車体側チューブ10の下端に装着されて車軸側チューブ12の外周に摺接する環状のシール部材19で塞がれている。
【0027】
このようにしてフロントフォークF内は密閉空間とされており、フロントフォークFの内部に緩衝器Dが収容されている。フロントフォークF内であって緩衝器Dの外側は、液溜室R3として利用されており、気体と液体が充填されている。なお、液体は、本実施の形態では作動油とされるが、作動油以外の液体の使用も可能である。
【0028】
緩衝器Dは、本実施の形態では、車軸側チューブ12内に収容されるとともに内部に作動油が充填されるシリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるロッド2と、ロッド2に連結されてシリンダ1内に移動可能に挿入されるとともにシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン6とを備えた緩衝器本体Aと、シリンダ1内に挿入されてシリンダ1内に圧側室R2とリザーバRとを区画するバルブディスク3と、バルブディスク3に積層されるチェックバルブ4およびリーフバルブ5とを備えている。
【0029】
シリンダ1は、上端外周に螺子部1a1を備えたリザーバ筒1aと、リザーバ筒1aの下端に連結される筒状のシリンダ本体1bとで構成されており、螺子部1a1を車体側チューブ10の上端内周に螺着して車体側チューブ10に連結されている。また、リザーバ筒1aの上端開口部にはキャップ11が螺着されていてシリンダ1の上端開口部が閉塞され、シリンダ本体1bの下端内周には、内周にロッド2が挿通される筒状のロッドガイド7が装着されており、シリンダ1の下端が閉塞されている。
【0030】
シリンダ1におけるリザーバ筒1a内には、バルブディスク3が挿入されている。バルブディスク3は、シリンダ1内を圧側室R2とリザーバRとに区画している。また、シリンダ1におけるシリンダ本体1b内には、ピストン6が軸方向となる上下方向へ移動可能に挿入されている。そして、ピストン6は、シリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画している。
【0031】
ロッド2は、下端が車体側チューブ10の下端を閉塞するボトムキャップ13に連結されており、上端側がシリンダ本体1b内に挿入されている。また、ボトムキャップ13の上端であって車軸側チューブ12の内周には、外周にフランジ状の懸架ばねSの下端を支持するばね受14aを備えた筒状のオイルロックケース14が載置されている。
【0032】
また、シリンダ本体1bの外周には、懸架ばねSの上端を支持するばね受15が装着されている。ばね受15は、シリンダ本体1bの外周に嵌合する上端が最小径であって下方へ向かうほど径が拡大する筒状であって、側部に孔15aを備えている。そして、懸架ばねSは、ばね受15とオイルロックケース14におけるばね受14aとの間に介装されている。ばね受15は、シリンダ本体1bの外周に装着されるCリング16によってシリンダ本体1bに対して上方側への移動が規制されているので、シリンダ1を介して懸架ばねSから受ける力を車体側チューブ10に伝達する。よって、懸架ばねSは、車体側チューブ10を上方に車軸側チューブ12を下方へ押圧して両者を離間させる弾発力を発揮する。
【0033】
また、ロッドガイド7の上端内周には、ロッド2の外周に摺接する環状のブッシュ8が取り付けられており、ロッドガイド7の下端外周には、環状のオイルロックピース7aが装着されている。そして、車体側チューブ10と車軸側チューブ12とが接近しフロントフォークFが最収縮近傍まで収縮すると、ロッドガイド7の外周に装着されたオイルロックピース7aがオイルロックケース14内に侵入する。オイルロックピース7aの外周とオイルロックケース14の内周には、適度な隙間が設けられており、オイルロックケース14内から作動油が流出する流れに抵抗が付与される。よって、オイルロックピース7aがオイルロックケース14に侵入すると、オイルロックケース14内の圧力が上昇してフロントフォークFのそれ以上の収縮を妨げられるので、フロントフォークFの最収縮時の衝撃が緩和される。
【0034】
戻って、シリンダ1内に挿入されたロッド2の上端の外周には、ピストン6が装着されている。ピストン6は、シリンダ本体1bの内周に摺接しており、シリンダ本体1bに対して上下方向となる軸方へ移動可能であり、前述したように、シリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画している。また、ピストン6は、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側ポート6aと圧側ポート6bとを備えている。そして、ピストン6の圧側室R2側には、伸側ポート6aの出口端を開閉する伸側リーフバルブ17がロッド2の外周に固定された状態で積層され、ピストン6の伸側室R1側には、圧側ポート6bの出口端を開閉するチェックバルブ18がロッド2の外周に固定された状態で積層されている。
【0035】
伸側リーフバルブ17は、本実施の形態の緩衝器Dでは複数枚の環状板を積層して構成された積層リーフバルブとされており、内周がロッド2の外周に固定されて外周側の撓みが許容されている。また、伸側リーフバルブ17は、作動油が伸側室R1から圧側室R2へ伸側ポート6aを介して移動する際に作動油の流れに抵抗を与え、作動油が圧側室R2から伸側室R1へ向かって移動するのを阻止する。
【0036】
チェックバルブ18は、本実施の形態の緩衝器Dでは環状板で構成されており、内周がロッド2の外周に固定されて外周側の撓みが許容されている。また、チェックバルブ18は、圧側室R2から伸側室R1へ圧側ポート6bを介して移動する作動油の流れに対して略抵抗なくこれを許容し、作動油が伸側室R1から圧側室R2へ向かって移動するのを阻止する。
【0037】
つづいて、バルブディスク3は、環状であって、キャップ11に連結されるガイドロッド20の
図1中下端の外周に装着されている。このようにバルブディスク3は、ガイドロッド20によって軸方向に位置決められてシリンダ1内に収容されている。バルブディスク3は、リザーバ筒1aの内周に嵌合しており、ガイドロッド20によってシリンダ1に対して不動に固定されて、前述したように、シリンダ1内を圧側室R2とリザーバRとに区画している。
【0038】
バルブディスク3は、
図2から
図4に示すように、環状の本体部3aと、本体部3aの同一円周上に交互に並べて配置されて本体部3aの
図2中下端となる一端から
図2中上端となる他端まで貫通して設けられる4つの第一ポート3bと4つの第二ポート3cと、一端に設けられた第一ポート3bを取り囲む弁座3dとを備えている。
【0039】
弁座3dは、
図3に示すように、一端の第一ポート3bおよび第二ポート3cの内周側に設けられた円環状の内周部3d1と、内周部3d1の外周に連なって4つの第一ポート3bのそれぞれを個別に取り囲む4つの包囲部3d2とを備えている。そして、第二ポート3cは、バルブディスク3の一端側にて包囲部3d2,3d2間に開口している。
【0040】
また、バルブディスク3は、本体部3aの一端の内周部3d1の外周側であって包囲部3d2,3d2間に軸方向に突出して立ち上がる4つのガイド部3eを備えるとともに、内周部3d1の外周であって第一ポート3bに対向する部位から第一ポート3b側へ向けて延びるランド部3fとを備えている。ガイド部3eの本体部3aに対する立ち上がり部分の周囲には溝3gが設けられている。なお、バルブディスク3の他端には、
図4に示すように、第一ポート3bを避けて第二ポート3cのみを取り囲む花弁型弁座3hが設けられている。花弁型弁座3hは、バルブディスク3の他端に第一ポート3bの出口端の軸方向位置から軸方向に突出するようにして設けられている。
【0041】
このように構成されたバルブディスク3は、ガイドロッド20の先端に設けられたディスク保持部20aの取付軸20a1の外周にチェックバルブ4およびリーフバルブ5とともに装着される。ガイドロッド20は、キャップ11に連結されるロッド本体20bと、ロッド本体20bの先端に取り付けられてバルブディスク3を保持するディスク保持部20aとを備えている。ディスク保持部20aは、先端に小径な取付軸20a1を備えて、基端がロッド本体20bの先端に螺着されている。
【0042】
チェックバルブ4は、バルブディスク3の一端側の弁座3d、つまり、圧側室R2側の端部に設けられた弁座3dに積層されている。チェックバルブ4は、弁座3dの内周部3d1に対向する内環4aと、内環4aの外周に周方向に間隔を開けて放射状に設けられて包囲部3d2にそれぞれ対向して第一ポート3bをそれぞれ独立して開閉する4つの扇状の弁部4bとを備えている。チェックバルブ4は、ガイドロッド20の外周に嵌合されて内環4aが内周部3d1に着座した状態で固定され、包囲部3d2に対向する弁部4bの撓みが許容されている。そして、弁部4bは、包囲部3d2に着座すると第一ポート3bを閉塞し、第一ポート3b側となる正面側に作用するリザーバRの圧力が背面側に作用する圧側室R2の圧力よりも大きくなると撓んで包囲部3d2から離間して第一ポート3bを開放して、リザーバRから圧側室R2へ向かう作動油の流れを許容する。また、チェックバルブ4は、圧側室R2の圧力がリザーバRの圧力よりも大きい場合、弁部4bが包囲部3d2に押し付けられて第一ポート3bを閉塞して圧側室R2からリザーバRへ向かう作動油の流れを阻止する。
【0043】
なお、チェックバルブ4は、このように内環4aと、内環4aの外周にそれぞれ間隔を開けて放射状に延びる弁部4bを備えており、弁部4bが第二ポート3cを避けて包囲部3d2のみに着座するため、第二ポート3cの入口端の開口面積を一切減じることはない。
【0044】
また、弁部4bは、背面側から圧側室R2の圧力を受けると、前述のように包囲部3d2に向けて押し付けられるが、包囲部3d2の他にもランド部3fによって支持されるため第一ポート3b側へ凹むような撓みが抑制される。このように、ランド部3fの設置によって弁部4bの劣化が進むような変形が抑制されるので、チェックバルブ4の劣化を防止できる。
【0045】
なお、ランド部3fは、包囲部3d2で囲まれる内側に配置されて弁部4bのバルブディスク側面となる正面を支持して背面側から受ける圧力によって弁部4bが第一ポート3b側へ向けて凹むような撓みを抑制できればよい。したがって、ランド部3fの設置箇所は、内周部3d1に連なる第一ポート3bの内周側以外にも包囲部3d2に連なる位置に設けられてもよいし、弁座3dとは独立して設けられてもよい。また、ランド部3fの端面は、バルブディスク3の軸方向で弁座3dの内周部3d1および包囲部3d2の端面と面一となっていなくともよく、内周部3d1および包囲部3d2の端面よりもバルブディスク3の本体部3a側に配置されてもよい。
【0046】
他方、リーフバルブ5は、複数の円環状の環状板を積層して構成される積層リーフバルブとされており、バルブディスク3の他端となるリザーバR側に面する端面に設けられた花弁型弁座3hに積層されている。リーフバルブ5は、ガイドロッド20の外周に嵌合されて花弁型弁座3hに着座した状態で内周が固定され、外周側の撓みが許容されている。そして、リーフバルブ5は、花弁型弁座3hに着座すると第二ポート3cを閉塞し、第二ポート3c側となる正面側に作用する圧側室R2の圧力が背面側に作用するリザーバRの圧力よりも大きくなると外周側を撓ませる。このようにリーフバルブ5の外周が撓むと、当該外周が花弁型弁座3hから離間して第二ポート3cが開放され、リーフバルブ5は、圧側室R2からリザーバRへ向かう作動油の流れを許容するとともに作動油の流れに抵抗を与える。また、リーフバルブ5は、リザーバRの圧力が圧側室R2の圧力よりも大きい場合、花弁型弁座3hに押し付けられて第二ポート3cを閉塞してリザーバRから圧側室R2へ向かう作動油の流れを阻止する。
【0047】
なお、花弁型弁座3hは、第二ポート3cのみを取り囲んでおり、バルブディスク3の他端において第一ポート3bの入口端の軸方向位置よりも軸方向であってリザーバR側へ突出するように設けられている。よって、リーフバルブ5が花弁型弁座3hに着座した状態でもリーフバルブ5とバルブディスク3の花弁型弁座3hとの間に第一ポート3bの入口端へ臨む空隙が形成されるため、リーフバルブ5が第一ポート3bの入口端を閉塞することはない。
【0048】
このように構成されたリーフバルブ5、バルブディスク3およびチェックバルブ4は、チェックバルブ4の内環4aを支持する環状のスペーサ22およびバルブストッパ23とともに、順にガイドロッド20の取付軸20a1の外周に組み付けられて、取付軸20a1の先端となる
図2中下端に螺着されるナット21によって、ガイドロッド20に固定される。そして、チェックバルブ4およびリーフバルブ5は、バルブディスク3に積層されて、内周が固定されて状態でガイドロッド20に装着されるので、前述のように動作する。なお、スペーサ22の外径は、内環4aのみを支持できるように内環4aの外径以下とされている。また、スペーサ22の軸方向高さは、ガイド部3eとナット21とが干渉しないように、チェックバルブ4に重ねた状態でガイド部3eの端面よりもスペーサ22の端面の方が圧側室R2側に配置されるような高さに設定されている。バルブストッパ23は、弁部4bが所定量撓むと弁部4bの背面側に当接して弁部4bのそれ以上の撓みを規制して、弁部4bの最大撓み量を規定する部品である。このようにバルブストッパ23は、弁部4bの最大撓み量を規定し、弁部4bの撓みによって弁部4bが塑性変形したり破損したりしないように弁部4bを保護している。よって、バルブストッパ23の設置によりチェックバルブ4の劣化や損傷が防止される。
【0049】
また、バルブディスク3に設けられたガイド部3eは、バルブディスク3の弁座3dにチェックバルブ4を積層した際に、弁部4b,4b間に配置されて弁部4bの側面に摺接してチェックバルブ4を周方向に位置決めて、第一ポート3bを閉塞できるように弁部4bを包囲部3d2に正対させる。ガイド部3eは、少なくとも、弁部4b,4b間のいくつかに2つ以上設けられていればよく、内環4aの外周に摺接する位置に設けられるとチェックバルブ4を径方向にも位置決めできる。
【0050】
このようにガイド部3eを設けると、チェックバルブ4をバルブディスク3およびガイドロッド20に組み付ける際にチェックバルブ4のバルブディスク3に対する位置合わせが容易となるので、緩衝器Dの組付作業性を向上できる。また、前述した通り、ガイド部3eの本体部3aからの立ち上がり部分の周囲には溝3gが設けられている。溝3gを設けない場合、加工上どうしても立ち上がり部分が
図2の破線で示すように湾曲面或いはテーパ面が形成されるため、弁部4bの側面をガイド部3eの側面に摺接させるように設定すると、加工誤差や組付不良によって弁部4bが湾曲面或いはテーパ面に乗り上げて弁部4bが包囲部3d2から浮き上がってしっかり密着できない場合がある。これに対して、溝3gを設けると前述の湾曲面或いはテーパ面を切除できるので、加工誤差や組付不良によってガイド部3eの設置によって弁部4bが包囲部3d2から浮き上がって第一ポート3bを漏洩なく確実に閉鎖できるようになる。
【0051】
なお、本実施の形態の第一ポート3bと第二ポート3cの設置数は、複数であれば4つに限られない。そして、各第一ポート3bに対してそれぞれ弁座3dにおける包囲部3d2が一対一で設けられる関係にあるので、第一ポート3bの設置数と包囲部3d2の設置数は同数となり、チェックバルブ4の弁部4bの設置数も第一ポート3bおよび包囲部3d2の設置数と同数だけ設ければよい。
【0052】
つづいて、ガイドロッド20の外周であってバルブディスク3よりも
図1中上方には、有底筒状のフリーピストン24が摺動自在に装着されている。フリーピストン24の底部は、環状であって内周側にガイドロッド20が挿通されている。また、フリーピストン24は、リザーバ筒1aの内周にも摺接しており、リザーバ筒1a内のリザーバRを作動油が充填される液室Lと気体が充填される気室Gとに区画している。さらに、フリーピストン24の底部とキャップ11との間にはコイルスプリングでなる加圧スプリング25が圧縮された状態で介装されていて、フリーピストン24は、加圧スプリング25および気室G内の圧力によって常に液室L側を圧縮する方向に付勢されている。
【0053】
このように、本実施の形態の緩衝器Dでは、フリーピストン24を加圧スプリング25で付勢して、液室Lに圧縮力を作用させることで、液室Lに連通されるシリンダ1内の伸側室R1および圧側室R2を加圧して、油柱剛性を高めている。作動油には気体が溶け込んでいるために作動油は弾性を示し、作動油の見掛け上の弾性係数が低くなると緩衝器Dの減衰力発生応答性が悪化するが、前述のようにシリンダ1内を加圧することで油柱剛性を高めて緩衝器Dの減衰力発生応答性を向上できる。
【0054】
なお、シリンダ1のリザーバ筒1aの側部には緩衝器D外に通じる孔1cが設けられている。孔1cは、フリーピストン24が対向している状態ではフリーピストン24によって閉塞された状態に維持されるが、液室L内の作動油量が規定量よりも多くなってフリーピストン24が孔1cよりも上方に後退すると孔1cを介して液室L内の作動油が緩衝器D外の液溜室R3へ排出され、シリンダ1内が過剰に高圧となってしまうのを防止できる。
【0055】
緩衝器Dは、以上の通り構成されており、以下にその作動について説明する。まず、フロントフォークFが伸長する場合、車体側チューブ10と車軸側チューブ12との相対的な軸方向の離間に伴って、シリンダ1に対してロッド2に連結されるピストン6が
図1中下方へ移動する。シリンダ1内の伸側室R1は、ピストン6の移動によって圧縮されて縮小し、シリンダ1内の圧側室R2は、ピストン6の移動によって拡大する。圧縮される伸側室R1内の作動油は、伸側リーフバルブ17を押し開いてピストン6の伸側ポート6aを通過して拡大される圧側室R2へ移動する。伸側リーフバルブ17が伸側ポート6aを通過する作動油の流れに抵抗を与えるので、伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力よりも高くなり、緩衝器Dは自身の伸長を妨げる伸側減衰力を発揮する。
【0056】
緩衝器Dの伸長時には、シリンダ1からロッド2が退出し、ロッド2がシリンダ1から退出する体積分の作動油がシリンダ1内の圧側室R2で不足する。このように圧側室R2で作動油が不足するために、圧側室R2の圧力がリザーバRの圧力よりも低下して、チェックバルブ4の弁部4bが撓んで第一ポート3bを開放する。よって、圧側室R2で不足する作動油は、リザーバRの液室Lから第一ポート3bを通じて圧側室R2に供給される。リザーバR内では、液室Lから作動油が圧側室R2へ移動するためにフリーピストン24が下方へ移動して液室Lを縮小させるとともに気室Gを拡大させ、ロッド2がシリンダ1から退出する体積の補償がなされる。このように、フロントフォークFの伸長時には、緩衝器Dがともに伸長して、伸側リーフバルブ17によってフロントフォークFの伸長を妨げる伸側減衰力を発生する。
【0057】
つづいて、フロントフォークFが収縮する場合、車体側チューブ10と車軸側チューブ12との相対的な軸方向の接近に伴って、シリンダ1に対してロッド2に連結されるピストン6が
図1中上方へ移動する。シリンダ1内の圧側室R2は、ピストン6の移動によって圧縮されて縮小し、シリンダ1内の伸側室R1は、ピストン6の移動によって拡大する。圧縮される圧側室R2内の作動油は、チェックバルブ18を押し開いてピストン6の圧側ポート6bを通過して拡大される伸側室R1へ移動する。チェックバルブ18は、圧側ポート6bを通過する作動油の流れに抵抗をほとんど与えないので、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力はほぼ等圧となる。
【0058】
緩衝器Dの収縮時には、シリンダ1内へロッド2が侵入し、ロッド2がシリンダ1内へ侵入する体積分の作動油がシリンダ1内で過剰となる。このようにシリンダ1内で過剰となった作動油は、リーフバルブ5を押し開いてバルブディスク3の第二ポート3cを通過してリザーバRの液室Lへ移動する。リーフバルブ5が第二ポート3cを通過する作動油の流れに抵抗を与えるので、シリンダ1内の全体の圧力を上昇させるため、緩衝器Dは自身の収縮を妨げる圧側減衰力を発揮する。リザーバR内では、作動油がシリンダ1内から液室L内へ排出されるためにフリーピストン24が上方へ後退して液室Lを拡大させるとともに気室Gを縮小させ、ロッド2がシリンダ1内へ侵入する体積の補償がなされる。また、フロントフォークFの収縮時には、シリンダ1が車軸側チューブ12内を
図1中下方へ移動し、このシリンダ1の移動に伴って液溜室R3内の作動油の油面が上昇し、液溜室R3内の作動油がばね受15の孔15aを通過する場合がある。孔15aは、作動油の通過する流れに対して絞り弁として機能する。よって、フロントフォークFの収縮時には、緩衝器Dがともに収縮して、リーフバルブ5によってフロントフォークFの収縮を妨げる圧側減衰力を発生するとともに、油面がばね受15の孔15aを通過する場合には緩衝器Dの圧側減衰力にばね受15による収縮を妨げる減衰力を付加できる。
【0059】
前述したように、緩衝器Dの収縮時において作動油は、シリンダ1内から第二ポート3cを通過して液室Lへ移動するが、チェックバルブ4の弁部4bが第二ポート3cの入口の流路面積を減じることがない。そのため、緩衝器Dのピストン速度が高速となって、第二ポート3cを通過する流量が多くなっても、本実施の形態の緩衝器Dの減衰特性には従来の緩衝器のようにオリフィス特性が現れず、緩衝器Dの減衰力は過剰とならない。また、弁部4bが弁座3dにおける包囲部3d2によって正対して支持されるので、弁部4bが圧側室R2の圧力を受けて第一ポート3b側に向かって凹んで変形して疲労することも抑制される。なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、さらに、包囲部3d2の内側に弁部4bの正面(バルブディスク側面)を支持するランド部3fを有しているので、弁部4bの第一ポート3b側へ向けて凹む変形を確実に阻止できるので、チェックバルブ4の疲労による劣化を阻止できる。
【0060】
以上のように緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるロッド2とを有して伸縮可能な緩衝器本体Aと、緩衝器本体A内に圧側室(作動室)R2とリザーバ(作動室)Rとを区画するとともに圧側室(作動室)R2とリザーバ(作動室)Rとを連通する複数の第一ポート3bと複数の第二ポート3cとを有するバルブディスク3と、バルブディスク3の一端側に積層されて第一ポート3bを開閉するチェックバルブ4と、バルブディスク3の他端側に積層されて第二ポート3cを開閉する環状のリーフバルブ5とを備え、第一ポート3bおよび第二ポート3cがバルブディスク3の同一円周上に周方向で交互に並べて配置されて同数設けられており、バルブディスク3が一端側に第一ポート3bおよび第二ポート3cの内周側にチェックバルブ4に対向する内周部3d1と内周部3d1の外周に連なって第一ポート3bをそれぞれ個別に取り囲む複数の包囲部3d2とを有する弁座3dを具備し、チェックバルブ4が内周部3d1に対向する内環4aと内環4aの外周に周方向に間隔を開けて放射状に設けられて包囲部3d2にそれぞれ対向して第一ポート3bをそれぞれ独立して開閉する複数の弁部4bとを備えている。
【0061】
このように構成された緩衝器Dは、チェックバルブ4の弁部4bが第二ポート3cの入口の流路面積を減じることがないので、緩衝器Dのピストン速度が高速となって、第二ポート3cを通過する流量が多くなっても、本実施の形態の緩衝器Dの減衰特性には従来の緩衝器のようにオリフィス特性が現れず、緩衝器Dの減衰力は過剰とならない。また、弁部4bが弁座3dにおける包囲部3d2によって正対して支持されるので、弁部4bが圧側室R2の圧力を受けて第一ポート3b側に向かって凹んで変形して疲労することも抑制される。
【0062】
以上より、本実施の形態の緩衝器Dによれば、ピストン速度が高速となっても減衰力が過剰とならず、チェックバルブ4の変形も抑制できるので板厚を厚く必要がなく、緩衝器Dの伸縮方向の切り換わりで減衰力の発生の応答性も犠牲にならない。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、車両における乗心地を向上できる。
【0063】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、チェックバルブ4の内環4aがガイドロッド20の外周に固定されている。つまり、チェックバルブ4は、内環4aが弁座3dの内周部3d1に当接した状態で保持されており、弁部4bの撓みによって第一ポート3bを開放するよう構成されている。このように構成された緩衝器Dによれば、各弁部4bが互いに周方向で連結されておらず独立して撓んで第一ポート3bを開放するので、従来の内周固定の環状板でなるチェックバルブに比較して第一ポート3bを通過する作動油(液体)の流れに与える抵抗を非常に小さくできる。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、通過する作動油(液体)の流れに与える抵抗を極力小さくしたいチェックバルブ4の実用性を向上できる。なお、チェックバルブ4は、本実施の形態の緩衝器Dでは、一枚の内環4aと弁部4bとを備えた板で構成されているが、複数枚の板で構成されてもよく、複数枚の板で構成される場合、弁部4bの径方向長さが板同士で異なっていてもよい。チェックバルブ4の内環4aを前述したようにナット21で締め付けてガイドロッド20の外周に固定する場合、チェックバルブ4は、内環4aの固定によってバルブディスク3に対する周方向の回転が規制されるため、ガイド部3eのバルブディスク3への設置を省略できる。
【0064】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、バルブディスク3が一端から突出して弁部4b間に挿入されてチェックバルブ4の回転を阻止するガイド部3eを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、ガイド部3eによってチェックバルブ4をバルブディスク3に対して周方向に位置決めできるので、チェックバルブ4のバルブディスク3に対する位置合わせが容易となって緩衝器Dの組付作業性を向上できる。なお、ガイド部3eは、前述したところでは、バルブディスク3に一体不可分に設けられているが、バルブディスク3の本体部3aのガイド部の設置位置に孔を設けておきガイド部を構成するピン等を圧入する等してバルブディスク3に固定してガイド部を形成してもよい。
【0065】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、バルブディスク3が包囲部3d2の内側に弁部4bの正面(バルブディスク側面)を支持するランド部3fを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、弁部4bの第一ポート3b側へ向けて凹む変形を確実に阻止できるので、チェックバルブ4の疲労による劣化を阻止できる。
【0066】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、緩衝器本体Aがシリンダ1内に移動可能に挿入されるとともにロッド2に連結されて、シリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン6と、シリンダ1内に挿入されるバルブディスク3よって仕切られるリザーバRとを備え、圧側室R2とリザーバRを作動室として、チェックバルブ4がバルブディスク3の圧側室R2側に配置されて作動油(液体)が第一ポート3bをリザーバRから圧側室R2へ向かう方向へ流れる場合にのみ開弁するように構成されている。このように構成された緩衝器Dによれば、ピストン速度が高速となっても圧側減衰力が過剰とならず、チェックバルブ4の弁部4b同士が周方向で連結されていないので従来のチェックバルブよりも撓み易く作動油(液体)の流れに与える抵抗を低減でき、伸長時にシリンダ1内での作動油(液体)の吸込不良を抑制できる。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、狙い通りの減衰力と減衰力発生応答性を実現できる。
【0067】
また、バルブディスク3をピストンとして利用して、伸側室R1と圧側室R2を作動室として、チェックバルブ4をバルブディスク3の伸側室R1側端に積層する構造を緩衝器Dの構造として採用し、作動油(液体)が第一ポート3bを圧側室R2から伸側室R1へ向かう際にチェックバルブ4が第一ポート3bを開放するようにしてもよい。この場合には、緩衝器Dの伸長時にピストン速度が高速となってもチェックバルブ4がリーフバルブ5によって発生する伸側減衰力に影響を与えず車両の乗心地を向上できる。
【0068】
なお、前述した緩衝器Dでは、チェックバルブ4がガイドロッド20に内周が固定されて弁部4bの撓みによって第一ポート3bを開放する構造を採用しているが、
図5に示した一実施の形態の第一変形例の緩衝器D1のように、チェックバルブ4の全体がバルブディスク3から離間してリフトする構造を採用できる。
【0069】
この第一変形例の緩衝器D1では、緩衝器Dの構造に対してスペーサ22およびバルブストッパ23を廃止して、代わりに、ガイド部3eの端部に当接するワッシャ26と、ワッシャ26とチェックバルブ4の内環4aとの間に介装される弾性体としてのコイルばね27とを備えている。
【0070】
ガイドロッド20の先端に螺着されるナット21は、ガイド部3eの端面に当接するワッシャ26を介してバルブディスク3およびリーフバルブ5を締め付けてバルブディスク3およびリーフバルブ5に所定の軸力を負荷させている。
【0071】
コイルばね27は、圧縮状態でチェックバルブ4とワッシャ26との間に介装されており、チェックバルブ4に所定の初期荷重を与えている。チェックバルブ4は、ガイド部3eによって周方向への回り止めがなされた状態で弁座3dに積層されており、正面側から受ける圧力による図中上方へ向けて押圧する力がコイルばね27の初期荷重を上回るとコイルばね27の弾発力と前記押圧する力がバランスするまでコイルばね27を押し縮めて全体が弁座3dから離座して第一ポート3bを開放する。よって、この場合のチェックバルブ4の開弁圧は、コイルばね27がチェックバルブ4に与える初期荷重によって設定されている。なお、ワッシャ26は、ガイド部3eに当接することでコイルばね27のガイドロッド20からの脱落を防止しているが、ナット21に一体不可分に設けられてもよい。
【0072】
ガイド部3eは、チェックバルブ4の弁部4b,4b間に配置されて弁部4bの側面と内環4aの外周に摺接してチェックバルブ4を周方向および径方向に位置決めて、チェックバルブ4が弁座3dから全体が離間しても再度弁座3dに着座した際に弁部4bが包囲部3d2に正対して第一ポート3bを確実に閉塞させる。この場合、ガイド部3eは、少なくとも、側面を内環4aの外周面および弁部4bの側面に摺接させて、チェックバルブ4を周方向および径方向に位置決めできるように弁部4b,4b間のいくつかに2つ以上設けられればよい。チェックバルブ4の全体がバルブディスク3に遠近する動作を円滑に行えるように、ガイド部3eは、弁部4b,4b間に設置されつつもバルブディスク3の周方向でなるべく等間隔になるように配置するとよい。また、本実施の形態では、コイルばね27のチェックバルブ側端が内環4aのみに当接するように小径とされ、コイルばね27の反チェックバルブ側端が大径となる円錐コイルばねとされており、ガイド部3eが3つ以上設けられていて、コイルばね27の反チェックバルブ側端がガイド部3eのガイドロッド20を向く面に当接していて、ガイド部3eによってコイルばね27をチェックバルブ4の内環4aに調芯させている。よって、コイルばね27は、チェックバルブ4の内環4aに芯ずれせずに初期荷重を作用できる。
【0073】
このように位置実施の形態の第一変形例における緩衝器では、チェックバルブ4がバルブディスク3の弁座3dから全体が離間可能に積層されており、チェックバルブ4をバルブディスク3へ向けて付勢するコイルばね(弾性体)27を備えている。このように構成された緩衝器D1は、チェックバルブ4がバルブディスク3から全体が離間して第一ポート3bを開放するので、チェックバルブ4の板厚を厚くしても開弁時の包囲部3d2と弁部4bとの間の流路面積を大きく確保でき、従来の内周固定の環状板でなるチェックバルブに比較して第一ポート3bを通過する作動油(液体)の流れに与える抵抗を非常に小さくできる。よって、本実施の形態の緩衝器D1によれば、通過する作動油(液体)の流れに与える抵抗を極力小さくしたいチェックバルブ4の実用性を向上できる。また、チェックバルブ4の板圧を厚くできるので、チェックバルブ4の剛性を高くしての変形防止も可能となる。
【0074】
また、チェックバルブ4のバルブディスク3に対する周方向の回り止めは、第一変形例の緩衝器D1のバルブディスク3にガイド部3eを設ける構成に代えて、ガイドロッド20の取付軸20a1の外形を円形以外の形状とし、チェックバルブ4の内環4aの内周形状を取付軸20a1の外形に符合する形状として、チェックバルブ4が取付軸20a1上を回り止めされた状態で軸方向に摺動するようにしてもよい。また、
図6に示した一実施の形態の第二変形例の緩衝器のように、ガイドロッド20の取付軸20a1の外周に外形が円形以外の形状の環状のスペーサ30を嵌合して、チェックバルブ4の内環4aの内周形状をスペーサ30の外形に符合する形状として、チェックバルブ4がスペーサ30上を回り止めされた状態で軸方向に摺動するようにしてもよい。この実施の形態の緩衝器D2では、取付軸20a1或いはスペーサ30を外周の形状である外形が円形以外の軸部材として利用して、チェックバルブ4の内環4aの内周形状を軸部材の外形に符合して軸部材の外周に摺接させている。なお、軸部材の外周の外形は、円以外の形状であればチェックバルブ4の周方向の回り止めを図れるが、たとえば、軸部材の外形を円の一部を切り落としてできるD形状或いは二面幅形状とすると簡単な加工によって軸部材を製造できる。このように緩衝器D2を構成してもチェックバルブ4の周方向の回転を規制できるので、チェックバルブ4が弁座3dから全体が離間しても再度弁座3dに着座した際に弁部4bが包囲部3d2に正対して第一ポート3bを確実に閉塞できる。
【0075】
また、この第二変形例の緩衝器D2の場合、バルブディスク3の本体部3aの弁座3dの内周側にスペーサ30が嵌合する環状凹部3iを設けてスペーサ30によるチェックバルブ4の内環4aの挟みこみを防止するとよい。また、バルブディスク3の弁座3dは、
図6に示すように、第二ポート3cの入口端が開口する本体部3aの端部よりも軸方向に突出させて設置されてよい。
【0076】
なお、第二変形例の緩衝器D2では、スペーサ30とナット21との間にばね受として機能するワッシャ26の代わりにコイルばね27の反バルブディスク側端の外周に嵌合するソケット31aを備えて環状のばね受31を設けて、コイルばね27の調心と径方向のずれの防止を図っている。
【0077】
なお、第一変形例の緩衝器および第二変形例における緩衝器における弾性体は、コイルばね27以外にも皿ばねやウェーブワッシャといったばね、或いはゴムであってもよい。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1・・・シリンダ、2・・・ロッド、3・・・バルブディスク、3b・・・第一ポート、3c・・・第二ポート、3d・・・弁座、3d1・・・内周部、3d2・・・包囲部、3e・・・ガイド部、3f・・・ランド部、4・・・チェックバルブ、4a・・・内環、4b・・・弁部、6・・・ピストン、27・・・コイルばね(弾性体)、30・・・スペーサ(軸部材)、A・・・緩衝器本体、D・・・緩衝器、R・・・リザーバ(作動室)、R1・・・伸側室、R2・・・圧側室(作動室)