(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】硝化脱窒装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/34 20230101AFI20240117BHJP
【FI】
C02F3/34 101B
C02F3/34 101C
(21)【出願番号】P 2020154957
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】舩石 圭介
(72)【発明者】
【氏名】館野 覚俊
(72)【発明者】
【氏名】田邊 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】金本 紗季
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-114597(JP,A)
【文献】特開2001-017992(JP,A)
【文献】特開2017-192934(JP,A)
【文献】特開平08-299987(JP,A)
【文献】特開平03-262599(JP,A)
【文献】特開2008-036558(JP,A)
【文献】特開2019-018170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00- 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝化脱窒素槽と、
前記硝化脱窒素槽に汚水を供給する汚水供給ラインと、
前記硝化脱窒素槽内において前記汚水が活性汚泥により処理されている内液を、前記硝化脱窒素槽から引き出して送出する循環ポンプと、
前記内液と空気とを混合して、前記硝化脱窒素槽内に噴射する噴射部と、
前記硝化脱窒素槽から引き出された前記内液を前記噴射部を介して前記硝化脱窒素槽へと循環させる循環ラインと、
前記内液におけるアンモニア濃度を測定するアンモニアセンサと、
前記循環ポンプを制御可能な制御部であって、前記循環ポンプを第1出力で駆動させる第1制御と、前記循環ポンプを、前記第1出力よりも大きな第2出力で駆動させる第2制御とを交互に実行可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、前記アンモニアセンサの測定結果に基づいて、前記循環ポンプの前記第1出力の出力値および/または前記第2出力の出力値を変更可能であ
り、
前記制御部は、
前記第2制御開始時における前記内液のアンモニア濃度が所定範囲未満である場合、次の前記第1制御において、前記循環ポンプの前記第1出力の出力値を低下させ、
前記第2制御開始時における前記内液のアンモニア濃度が所定範囲を超過する場合、次の前記第1制御において、前記循環ポンプの前記第1出力の出力値を上昇させることを特徴とする、硝化脱窒装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記アンモニアセンサの測定結果から、前記第2制御開始から所定時間経過までのアンモニア濃度の減少速度を算出し、
前記アンモニア濃度の減少速度から、前記第2制御終了時における前記内液のアンモニア濃度の予測値を算出し、
前記予測値が所定範囲内である場合、前記循環ポンプの前記第2出力の出力値を維持し、
前記予測値が所定範囲未満である場合、前記循環ポンプの前記第2出力の出力値を低下させ、
前記予測値が所定範囲を超過する場合、前記循環ポンプの前記第2出力の出力値を上昇させることを特徴とする、請求項1に記載の硝化脱窒装置。
【請求項3】
前記汚水供給ラインに設けられる供給ポンプをさらに備え、
前記制御部は、
前記供給ポンプを制御可能であり、
前記第2制御開始時における前記内液のアンモニア濃度が設定値以下である場合、次の前記第1制御において、前記供給ポンプを第3出力で駆動させ、
前記第2制御開始時における前記内液のアンモニア濃度が設定値を超過する場合、次の前記第1制御において、前記供給ポンプを前記第3出力よりも小さな第4出力で駆動させることを特徴とする、請求項2に記載の硝化脱窒装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記アンモニアセンサの測定結果の移動平均が所定範囲を超えて上昇する場合、前記循環ポンプの前記第2出力の出力値を上昇させ、
前記アンモニアセンサの測定結果の移動平均が所定範囲を超えて下降する場合、前記循環ポンプの前記第2出力の出力値を低下させることを特徴とする、請求項1に記載の硝化脱窒装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第2制御開始時における前記内液のアンモニア濃度が所定範囲未満である場合、次の前記第2制御において、前記循環ポンプの前記第2出力の出力値を低下させ、
前記第2制御開始時における前記内液のアンモニア濃度が所定範囲を超過する場合、次の前記第2制御において、前記循環ポンプの前記第2出力の出力値を上昇させることを特徴とする、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の硝化脱窒装置。
【請求項6】
硝化脱窒素槽と、
前記硝化脱窒素槽に汚水を供給する汚水供給ラインと、
前記硝化脱窒素槽内において前記汚水が活性汚泥により処理されている内液を、前記硝化脱窒素槽から引き出して送出する循環ポンプと、
前記内液と空気とを混合して、前記硝化脱窒素槽内に噴射する噴射部と、
前記硝化脱窒素槽から引き出された前記内液を前記噴射部を介して前記硝化脱窒素槽へと循環させる循環ラインと、
前記内液におけるアンモニア濃度を測定するアンモニアセンサと、
前記循環ポンプを制御可能な制御部であって、前記循環ポンプを第1出力で駆動させる第1制御と、前記循環ポンプを、前記第1出力よりも大きな第2出力で駆動させる第2制御とを交互に実行可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、前記アンモニアセンサの測定結果に基づいて、前記循環ポンプの前記第1出力の出力値および/または前記第2出力の出力値を変更可能であり、
前記制御部は、
前記内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最小値が所定範囲未満である場合、次の前記第2制御において、前記循環ポンプの前記第2出力の出力値を低下させ、
前記内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最小値が所定範囲を超過する場合、次の前記第2制御において、前記循環ポンプの前記第2出力の出力値を上昇させ、
前記内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最大値が所定範囲未満である場合、次の前記第1制御において、前記循環ポンプの前記第1出力の出力値を低下させ、
前記内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最大値が所定範囲を超過する場合、次の前記第1制御において、前記循環ポンプの前記第1出力の出力値を上昇させることを特徴とする
、硝化脱窒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硝化脱窒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
し尿などの汚水を生物学的硝化脱窒法により処理することが知られている。このような生物学的硝化脱窒法は、硝化工程と脱窒素工程とを含む。硝化工程において、活性汚泥(微生物)が、汚水中のアンモニア性窒素を亜硝酸または硝酸性窒素まで酸化する。脱窒素工程において、活性汚泥が、亜硝酸または硝酸性窒素を窒素に還元する。
【0003】
このような硝化工程および脱窒素工程を単一槽内において同時に実施可能な硝化脱窒装置が実用化されている。
【0004】
例えば、硝化脱窒素槽と、循環ラインと、エジェクターと、酸化還元電位(ORP)計とを備える硝化脱窒装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。循環ラインは、硝化脱窒素槽の内液を、循環液として硝化脱窒素槽から引き出して硝化脱窒素槽に返送する。これによって、硝化脱窒素槽の内液は、循環ラインを介して循環される。エジェクターは、循環ラインに設けられ、循環ラインを通過する循環液と空気とを混合する。ORP計は、硝化脱窒素槽の内液のORPを測定する。
【0005】
このような硝化脱窒装置では、循環ラインを通過する循環液の流量を調整することで、エジェクターにおいて循環液に混合される空気量を調整し、ひいては、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量を調整する。
【0006】
循環ラインを通過する循環液の流量が小さくなると、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量が低下する。これによって、硝化脱窒素槽の内液において、溶存酸素濃度が比較的低い嫌気領域が広がり、脱窒素工程が優位となる。
【0007】
一方、循環ラインを通過する循環液の流量が大きくなると、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量が増加する。これによって、硝化脱窒素槽の内液において、溶存酸素濃度が比較的高い好気領域が広がり、硝化工程が優位となる。
【0008】
そして、特許文献1に記載の硝化脱窒装置では、ORP計の測定結果に基づいて、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量を増減させて、脱窒素工程が優位な第1処理と、硝化工程が優位な第2処理とを交互に実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかるに、ORPは、硝化脱窒素槽の内液の性状に影響を受ける。内液の性状として、例えば、アンモニア濃度、有機物量、溶存酸素量、液温およびpHが挙げられる。また、ORPの波形は、一様ではなく、不安定である。
【0011】
そのため、ORPを測定しても、硝化工程および/または脱窒素工程の進行の度合いを精度よく判断することは困難である。その結果、特許文献1に記載の硝化脱窒装置のように、ORP計の測定結果に基づいて第1処理と第2処理とを切り替えても、汚水の処理効率の向上を図るには限度がある。
【0012】
本発明は、効率よく汚水を処理できる硝化脱窒装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明[1]は、硝化脱窒素槽と、前記硝化脱窒素槽に汚水を供給する汚水供給ラインと、前記硝化脱窒素槽内において前記汚水が活性汚泥により処理されている内液を、前記硝化脱窒素槽から引き出して送出する循環ポンプと、前記内液と空気とを混合して、前記硝化脱窒素槽内に噴射する噴射部と、前記硝化脱窒素槽から引き出された前記内液を前記噴射部を介して前記硝化脱窒素槽へと循環させる循環ラインと、前記内液におけるアンモニア濃度を測定するアンモニアセンサと、前記循環ポンプを制御可能な制御部であって、前記循環ポンプを第1出力で駆動させる第1制御と、前記循環ポンプを、前記第1出力よりも大きな第2出力で駆動させる第2制御とを交互に実行可能な制御部と、を備え、前記制御部は、前記アンモニアセンサの測定結果に基づいて、前記循環ポンプの前記第1出力の出力値および/または前記第2出力の出力値を変更可能である、硝化脱窒装置を含む。
【0014】
このような構成によれば、第1制御において、循環ポンプは、比較的小さな第1出力で駆動する。そのため、噴射部を介して硝化脱窒素槽に供給される酸素量は、比較的少なくなる。その結果、第1制御では、硝化脱窒素槽の内液において脱窒素工程が優位となり、亜硝酸または硝酸性窒素が窒素に還元される。
【0015】
また、第2制御において、循環ポンプは、比較的大きな第2出力で駆動する。そのため、噴射部を介して硝化脱窒素槽に供給される酸素量は、比較的多くなる。その結果、第2制御では、硝化脱窒素槽の内液において硝化工程が優位となり、アンモニア性窒素が亜硝酸または硝酸性窒素に酸化される。
【0016】
アンモニアセンサは、内液におけるアンモニア濃度を測定する。アンモニア性窒素は硝化工程において消費されるため、アンモニア濃度を測定することにより、硝化工程の進行の度合いを直接的に確認することができる。
【0017】
そして、制御部は、アンモニアセンサの測定結果に基づいて、循環ポンプの第1出力の出力値および/または第2出力の出力値を変更する。つまり、制御部は、硝化工程の進行の度合いに基づいて、循環ポンプの第1出力の出力値および/または第2出力の出力値を調整できる。
【0018】
そのため、第1制御および第2制御において、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量を精度よく調整でき、硝化工程および脱窒素工程をバランスよく、効率的に実施できる。その結果、効率よく汚水を処理できる。
【0019】
本発明[2]は、前記制御部は、前記アンモニアセンサの測定結果から、前記第2制御開始から所定時間経過までのアンモニア濃度の減少速度を算出し、前記アンモニア濃度の減少速度から、前記第2制御終了時における前記内液のアンモニア濃度の予測値を算出し、前記予測値が所定範囲内である場合、前記循環ポンプの前記第2出力の出力値を維持し、前記予測値が所定範囲未満である場合、前記循環ポンプの前記第2出力の出力値を低下させ、前記予測値が所定範囲を超過する場合、前記循環ポンプの前記第2出力の出力値を上昇させる、上記[1]に記載の硝化脱窒装置を含む。
【0020】
このような構成によれば、制御部は、第2制御終了時における内液のアンモニア濃度の予測値を算出し、そのアンモニア濃度の予測値に基づいて、循環ポンプの第2出力の出力値を調整する。
【0021】
第2制御終了時のアンモニア濃度の予測値が所定範囲内である場合、第2制御において硝化工程が適度に進行しており、アンモニア性窒素が適度に消費されている。そのため、制御部は、循環ポンプの第2出力の出力値を維持する。
【0022】
また、第2制御終了時のアンモニア濃度の予測値が所定範囲未満である場合、第2制御においてアンモニア性窒素が過度に消費されており、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量が過剰である。この場合、脱窒素工程が不十分となるおそれがある。そのため、制御部は、循環ポンプの第2出力の出力値を低下させて、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量を低下させる。
【0023】
また、第2制御終了時のアンモニア濃度の予測値が所定範囲を超過する場合、第2制御においてアンモニア性窒素の消費が不十分であり、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量が不足している。そのため、制御部は循環ポンプの第2出力の出力値を上昇させて、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量を上昇させる。
【0024】
その結果、制御部は、アンモニアセンサの測定結果に基づいて、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量を適切に調整できる。これによって、硝化脱窒装置は、硝化工程および脱窒素工程をバランスよく安定して実施でき、汚水をより効率よく処理することができる。
【0025】
本発明[3]は、前記汚水供給ラインに設けられる供給ポンプをさらに備え、前記制御部は、前記供給ポンプを制御可能であり、前記第2制御開始時における前記内液のアンモニア濃度が設定値以下である場合、次の前記第1制御において、前記供給ポンプを第3出力で駆動させ、前記第2制御開始時における前記内液のアンモニア濃度が設定値を超過する場合、次の前記第1制御において、前記供給ポンプを前記第3出力よりも小さな第4出力で駆動させる、上記[2]に記載の硝化脱窒装置を含む。
【0026】
このような構成によれば、第2制御開始時における内液のアンモニア濃度が設定値以下である場合、制御部は、次の第1制御において、供給ポンプを第3出力で駆動させる。そのため、脱窒素工程が優位な第1制御の間に、汚水が、硝化脱窒素槽に供給される。その結果、汚水に含まれる有機物を脱窒素工程に有効に利用できる。
【0027】
また、第1制御において硝化脱窒素槽に供給される汚水のアンモニア濃度が比較的高いと、第2制御開始時における内液のアンモニア濃度が設定値を超過する場合がある。この場合、制御部は、次の第1制御において、供給ポンプを第3出力よりも小さな第4出力で駆動させる。これによって、次の第1制御における硝化脱窒素槽に対する汚水供給量を低下させる。その結果、硝化脱窒素槽の内液におけるアンモニア濃度が、過度に上昇することを抑制でき、硝化工程を安定して進行させることができる。
【0028】
本発明[4]は、前記アンモニアセンサの測定結果の移動平均が所定範囲を超えて上昇している場合、前記循環ポンプの前記第2出力の出力値を上昇させ、前記アンモニアセンサの測定結果の移動平均が所定範囲を超えて下降している場合、前記循環ポンプの前記第2出力の出力値を低下させる、上記[1]に記載の硝化脱窒装置を含む。
【0029】
このような構成によれば、制御部は、アンモニアセンサの測定結果の移動平均に基づいて、循環ポンプの第2出力の出力値を調整する。
【0030】
アンモニアセンサの測定結果の移動平均が所定範囲を超えて上昇している場合、第2制御におけるアンモニア性窒素の消費が不十分であり、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量が不足している。そのため、制御部は、循環ポンプの第2出力の出力値を上昇させて、第2制御における硝化脱窒素槽に対する酸素供給量を上昇させる。
【0031】
また、アンモニアセンサの測定結果の移動平均が所定範囲を超えて下降している場合、第2制御における硝化脱窒素槽に対する酸素供給量が過剰である。そのため、制御部は、循環ポンプの第2出力の出力値を低下させて、第2制御における硝化脱窒素槽に対する酸素供給量を低下させる。
【0032】
その結果、硝化脱窒装置は、硝化工程および脱窒素工程をバランスよく安定して実施でき、汚水をより効率よく処理することができる。
【0033】
本発明[5]は、前記制御部は、前記第2制御開始時における前記内液のアンモニア濃度が所定範囲未満である場合、次の前記第1制御において、前記循環ポンプの前記第1出力の出力値を低下させ、前記第2制御開始時における前記内液のアンモニア濃度が所定範囲を超過する場合、次の前記第1制御において、前記循環ポンプの前記第1出力の出力値を上昇させる、上記[1]から[4]のいずれか一項に記載の硝化脱窒装置を含む。
【0034】
このような構成によれば、制御部は、第2制御開始時における内液のアンモニア濃度に基づいて、循環ポンプの第1出力の出力値を調整する。
【0035】
第2制御開始時における内液のアンモニア濃度が所定範囲未満である場合、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量が過剰である。そのため、制御部は、次の第1制御において、循環ポンプの第1出力の出力値を低下させて、第1制御における硝化脱窒素槽に対する酸素供給量を低下させる。
【0036】
また、第2制御開始時における内液のアンモニア濃度が所定範囲を超過する場合、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量が不足している。そのため、制御部は、次の第1制御において、循環ポンプの第1出力の出力値を上昇させて、第1制御における硝化脱窒素槽に対する酸素供給量を上昇させる。
【0037】
その結果、硝化脱窒装置は、硝化工程および脱窒素工程をバランスよく安定して実施でき、汚水をより一層効率よく処理することができる。
【0038】
本発明[6]は、前記制御部は、前記第2制御開始時における前記内液のアンモニア濃度が所定範囲未満である場合、次の前記第2制御において、前記循環ポンプの前記第2出力の出力値を低下させ、前記第2制御開始時における前記内液のアンモニア濃度が所定範囲を超過する場合、次の前記第2制御において、前記循環ポンプの前記第2出力の出力値を上昇させる、上記[1]に記載の硝化脱窒装置を含む。
【0039】
このような構成によれば、制御部は、第2制御開始時における内液のアンモニア濃度に基づいて、循環ポンプの第2出力の出力値を調整する。
【0040】
第2制御開始時における内液のアンモニア濃度が所定範囲未満である場合、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量が過剰である。そのため、制御部は、次の第2制御において、循環ポンプの第2出力の出力値を低下させて、第2制御における硝化脱窒素槽に対する酸素供給量を低下させる。
【0041】
また、第2制御開始時における内液のアンモニア濃度が所定範囲を超過する場合、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量が不足している。そのため、制御部は、次の第2制御において、循環ポンプの第2出力の出力値を上昇させて、第2制御における硝化脱窒素槽に対する酸素供給量を上昇させる。
【0042】
その結果、硝化脱窒装置は、硝化工程および脱窒素工程をバランスよく安定して実施でき、汚水をより一層効率よく処理することができる。
【0043】
本発明[7]は、前記制御部は、前記内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最小値が所定範囲未満である場合、次の前記第2制御において、前記循環ポンプの前記第2出力の出力値を低下させ、前記内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最小値が所定範囲を超過する場合、次の前記第2制御において、前記循環ポンプの前記第2出力の出力値を上昇させ、前記内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最大値が所定範囲未満である場合、次の前記第1制御において、前記循環ポンプの前記第1出力の出力値を低下させ、前記内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最大値が所定範囲を超過する場合、次の前記第1制御において、前記循環ポンプの前記第1出力の出力値を上昇させる、上記[1]に記載の硝化脱窒装置を含む。
【0044】
このような構成によれば、制御部は、内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最小値および最大値に基づいて、循環ポンプの第1出力と第2出力との出力値を調整する。
【0045】
内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最小値が所定範囲未満である場合、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量が過剰である。そのため、制御部は、次の第2制御において、循環ポンプの第2出力の出力値を低下させて、第2制御における硝化脱窒素槽に対する酸素供給量を低下させる。
【0046】
また、内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最小値が所定範囲を超過する場合、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量が不足している。そのため、制御部は、次の第2制御において、循環ポンプの第2出力の出力値を上昇させて、第2制御における硝化脱窒素槽に対する酸素供給量を上昇させる。
【0047】
さらに、内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最大値が所定範囲未満である場合、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量が過剰である。そのため、制御部は、次の第1制御において、循環ポンプの第1出力の出力値を低下させて、第1制御における硝化脱窒素槽に対する酸素供給量を低下させる。
【0048】
また、内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最大値が所定範囲を超過する場合、硝化脱窒素槽に対する酸素供給量が不足している。そのため、制御部は、次の第1制御において、循環ポンプの第1出力の出力値を上昇させて、第1制御における硝化脱窒素槽に対する酸素供給量を上昇させる。
【0049】
その結果、硝化脱窒装置は、硝化工程および脱窒素工程をバランスよく安定して実施でき、汚水をより一層効率よく処理することができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明の硝化脱窒装置では、効率よく汚水を処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は、本発明の硝化脱窒装置の一実施形態の概略構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す硝化脱窒装置による汚水の硝化脱窒方法の第1実施形態を説明するためのタイミング図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す硝化脱窒方法を説明するためのフロー図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す第1制御を説明するためのフロー図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す第2制御を説明するためのフロー図である。
【
図6】
図6は、汚水の硝化脱窒方法の第2実施形態を説明するためのタイミング図であって、アンモニア濃度の移動平均(破線)が所定範囲を超えて上昇している状態を示す。
【
図7】
図7は、汚水の硝化脱窒方法の第2実施形態を説明するためのタイミング図であって、アンモニア濃度の移動平均(破線)が所定範囲を超えて下降している状態を示す。
【
図8】
図8は、汚水の硝化脱窒方法の第2実施形態を説明するためのタイミング図であって、アンモニア濃度の移動平均(破線)が所定範囲内である状態を示す。
【
図9】
図9は、汚水の硝化脱窒方法の第3実施形態を説明するためのタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
1.硝化脱窒装置
本発明の硝化脱窒装置の一実施形態としての硝化脱窒装置1を、
図1を参照して説明する。
【0053】
硝化脱窒装置1は、供給された汚水を活性汚泥により生物学的に硝化および脱窒素して、処理水を排出する。汚水および活性汚泥については、後で説明する。
【0054】
硝化脱窒装置1は、硝化脱窒素槽2と、汚水供給ユニット3と、循環ユニット4と、アンモニアセンサ7と、処理液排出ユニット5と、制御部6とを備える。
【0055】
硝化脱窒素槽2は、活性汚泥を収容する。活性汚泥は、硝化細菌と、脱窒細菌とを少なくとも含む。活性汚泥は、好ましくは、従属栄養細菌をさらに含む。
【0056】
硝化細菌は、好気条件下で、アンモニア性窒素を亜硝酸または硝酸性窒素まで酸化する。脱窒細菌は、嫌気条件下で、亜硝酸または硝酸性窒素を窒素に還元する。従属栄養細菌は、好気条件および/または嫌気条件下で、汚水中の有機物を分解する。
【0057】
硝化脱窒素槽2は、密閉される中空形状を有する。硝化脱窒素槽2は、側壁21と、上壁22と、底壁23とを備える。
【0058】
側壁21は、角筒形状または円筒形状を有する。側壁21は、上下方向に延びる。上壁22は、側壁21の上端を閉鎖する。底壁23は、側壁21の下端を閉鎖する。底壁23の内面は、上壁22と上下方向に向かい合う。底壁23の内面は、角錐状または円錐状に凹む。
【0059】
汚水供給ユニット3は、硝化脱窒素槽2に汚水を供給する。汚水供給ユニット3は、汚水供給ライン31と、供給ポンプ32とを備える。
【0060】
汚水供給ライン31は、硝化脱窒素槽2に汚水を供給するための配管である。汚水供給ライン31の供給方向の上流端は、図示しない汚水貯留槽に接続される。汚水供給ライン31の供給方向の下流端は、側壁21の下端に接続される。汚水供給ライン31の供給方向の下流端における内部空間は、硝化脱窒素槽2の内部空間における下方部分と通じる。
【0061】
供給ポンプ32は、供給ポンプ32が駆動したときに、図示しない汚水貯留槽内の汚水を、汚水供給ライン31を通じて硝化脱窒素槽2に供給する。供給ポンプ32は、汚水供給ライン31に設けられる。供給ポンプ32は、例えば、公知の送液ポンプである。
【0062】
循環ユニット4は、硝化脱窒素槽2の内液の一部を、硝化脱窒素槽2から引き出して循環させる。硝化脱窒素槽2の内液は、硝化脱窒素槽2内において活性汚泥により処理されている汚水である。循環ユニット4は、循環ライン41と、循環ポンプ42と、噴射部の一例としてのオーバーフローシャフト43とを備える。
【0063】
循環ライン41は、硝化脱窒素槽2の内液の一部を、硝化脱窒素槽2から引き出して、オーバーフローシャフト43に供給するための配管である。循環ライン41は、硝化脱窒素槽2から引き出された内液をオーバーフローシャフト43を介して硝化脱窒素槽2へと循環させる。なお、以下では、循環ライン41を通過する内液を循環液として、硝化脱窒素槽2に収容される内液と区別する。循環ライン41は、中間部411と、上流部412と、下流部413とを有する。
【0064】
中間部411は、上下方向に延びる。上流部412は、中間部411の下端と連続する。上流部412は、中間部411の下端から水平方向に延びた後、下方に向かって屈曲する。上流部412における水平方向に延びる部分は、側壁21を貫通する。上流部412は、上流端41Aを有する。上流端41Aは、循環ライン41の循環方向の上流端であって、開放されている。上流端41Aは、側壁21に対して、中間部411と上流部412との連続部分の反対側に位置する。上流端41Aは、硝化脱窒素槽2の内部空間における下方部分に位置する。上流端41Aは、底壁23の内面と向かい合う。
【0065】
下流部413は、中間部411の上端と連続する。下流部413は、中間部411の上端から水平方向に延びる。下流部413は、下流端41Bを有する。下流端41Bは、循環ライン41の循環方向の下流端である。下流端41Bは、オーバーフローシャフト43に接続される。
【0066】
循環ポンプ42は、循環ポンプ42が駆動したときに、硝化脱窒素槽2の内液を、硝化脱窒素槽2から引き出して、循環ライン41を介してオーバーフローシャフト43に送出する。循環ポンプ42は、循環ライン41に設けられる。詳しくは、循環ポンプ42は、硝化脱窒素槽2外に位置し、中間部411と上流部412との連続部分に設けられる。循環ポンプ42は、例えば、公知の送液ポンプである。
【0067】
オーバーフローシャフト43は、循環液と空気とを混合して、硝化脱窒素槽2内に噴射する。オーバーフローシャフト43は、上壁22に支持される。オーバーフローシャフト43は、例えば、エジェクター構造を有する。オーバーフローシャフト43は、ボディ431と、ディフューザ432とを有する。
【0068】
ボディ431は、上壁22に対して底壁23の反対側に位置する。ボディ431は、円筒形状を有する。ボディ431は、上下方向に延びる。循環ライン41の下流端41Bは、ボディ431の側壁に接続される。ボディ431の内部空間は、循環ライン41の下流端41Bにおける内部空間と通じる。
【0069】
ディフューザ432は、円筒形状を有する。ディフューザ432の内径は、ボディ431の内径よりも小径である。ディフューザ432は、上下方向に延びる。ディフューザ432は、上壁22を貫通する。ディフューザ432の上端432Aは、ボディ431の下端に接続される。ディフューザ432の内部空間は、ボディ431の内部空間と通じる。ディフューザ432の下端432Bは、硝化脱窒素槽2の内部空間における上方部分に位置する。ディフューザ432の下端432Bは、循環ライン41の上流端41Aに対して、底壁23の反対側に位置する。ディフューザ432の下端432Bは、上流端41Aから上方に離れて位置する。ディフューザ432の下端432Bは、上下方向において、硝化脱窒素槽2の上壁22と、上流端41Aとの間に位置する。
【0070】
アンモニアセンサ7は、硝化脱窒素槽2の内液におけるアンモニア濃度を測定可能である。本実施形態では、アンモニアセンサ7は、循環ライン41内を通過する循環液におけるアンモニア濃度を測定する。アンモニアセンサ7は、循環ライン41の下流部413に接続される。アンモニアセンサ7として、例えば、公知のアンモニア検出器が挙げられる。アンモニアセンサ7は、制御部6と電気的に接続される。アンモニアセンサ7は、測定結果を制御部6に出力可能である。
【0071】
また、アンモニアセンサ7は、硝化脱窒素槽2の内液をサンプリングポンプで抜き出した内液のアンモニア濃度を測定してもよい。この場合、循環ライン41とは別に硝化脱窒素槽2の内液を、硝化脱窒素槽2から引き出してサンプリングタンクに送液し、アンモニアセンサ7を、サンプリングタンク、または、硝化脱窒素槽2に内液を返送するサンプリングラインに設置する。
【0072】
処理液排出ユニット5は、硝化脱窒素槽2から処理液を排出する。処理液は、硝化脱窒素槽2において生物学的硝化脱窒処理が実施され、硝化脱窒素槽2から排出される内液である。処理液排出ユニット5は、排出ライン51を有する。
【0073】
排出ライン51は、硝化脱窒素槽2から処理液を排出するための配管である。排出ライン51の排出方向の上流端は、側壁21に接続される。排出ライン51の排出方向の上流端における内部空間は、硝化脱窒素槽2の内部空間と通じる。排出ライン51の排出方向の下流端は、図示しない水槽に接続される。なお、図示しない水槽では、処理液に含まれる活性汚泥を、沈殿や膜分離、機械分離などにより固液分離する。
【0074】
制御部6は、中央処理装置(CPU)、ROMおよびRAMなどを備える。制御部6は、循環ポンプ42と、供給ポンプ32と、アンモニアセンサ7とを制御可能である。制御部6は、循環ポンプ42と、供給ポンプ32と、アンモニアセンサ7とに電気的に接続される。
【0075】
詳しくは、制御部6は、循環ポンプ42を制御することで、硝化脱窒素槽2の内液の溶存酸素濃度の調整が可能である。特に、好ましくは、制御部6は、循環ポンプ42を制御して、硝化脱窒素槽2の内液の溶存酸素濃度が比較的低い嫌気状態に調整する第1制御と、硝化脱窒素槽2の内液の溶存酸素濃度が比較的高い好気状態に調整する第2制御とを交互に実施可能である。
【0076】
制御部6が硝化脱窒素槽2の内液の溶存酸素濃度が比較的低い嫌気状態に調整する第1制御を実行したときに、制御部6は、循環ポンプ42を第1出力で駆動させる。第1制御において、硝化脱窒素槽2から引き出され循環液は、比較的小さい流量でオーバーフローシャフト43に導かれる。嫌気状態に調整することで、脱窒素細菌が、硝化脱窒素槽2の内液に含まれる亜硝酸または硝酸性窒素を窒素に還元する(脱窒素工程)。
【0077】
また、制御部6が硝化脱窒素槽2の内液の溶存酸素濃度が比較的高い好気状態に調整する第2制御を実行したときに、制御部6は、循環ポンプ42を第2出力で駆動させる。循環ポンプ42の第2出力は、循環ポンプ42の第1出力よりも大きい。第2制御において、硝化脱窒素槽2から引き出され循環液は、比較的大きい流量でオーバーフローシャフト43に導かれる。好気状態に調整することで、硝化細菌が、酸素を消費して、硝化脱窒素槽2の内液に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸または硝酸性窒素に酸化する(硝化工程)。
【0078】
詳しくは後述するが、制御部6は、アンモニアセンサ7の測定結果に基づいて、循環ポンプ42の第1出力および第2出力の出力値を変更可能である。制御部6は、循環ポンプ42の第2出力の出力値の変更基準となるアンモニア濃度の所定範囲を、予め記憶している(
図2参照)。制御部6に記憶されるアンモニアの濃度の所定範囲は、第2制御終了時における硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度の許容範囲であって、硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度の上限値Xと、硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度の下限値Yとを有する。アンモニア濃度の所定範囲は、汚水の性状に応じて適宜変更される。
【0079】
また、制御部6は、供給ポンプ32の駆動状態と駆動停止状態とを切り替え可能である。詳しくは後述するが、制御部6は、供給ポンプ32の出力の出力値を変更可能である。制御部6は、供給ポンプ32の出力の出力値の変更基準となるアンモニア濃度の設定値Zを、予め記憶している(
図2参照)。アンモニア濃度の設定値Zは、第2制御開始時におけるアンモニアの濃度の上限値であって、汚水の性状に応じて適宜変更される。
【0080】
2.汚水処理方法
次に、硝化脱窒装置1を用いた汚水処理方法について説明する。
【0081】
図1に示すように、汚水処理方法では、予め、所定量の汚水が、硝化脱窒素槽2に供給されて収容される。
【0082】
汚水として、例えば、下水汚泥、し尿系汚水などが挙げられる。
【0083】
下水汚泥は、下水道により回収された汚水を処理したときに出来る汚泥であり、水洗式便所からのし尿排水、生活に伴ない発生する生活排水、雨水などを処理対象として含む。し尿系汚水は、下水とは別途回収される汚水であり、汲み取り式便所の便壺に貯留されるし尿や、し尿や生活排水などを処理する浄化槽において生じる浄化槽汚泥などを含む。
【0084】
汚水は、1種類からなってもよく、2種類以上が混合されていてもよい。汚水は、好ましくは、し尿系汚水を含む。
【0085】
汚水の総窒素量(T-N)は、例えば、92mg/L以上5000mg/L以下である。なお、T-Nは、例えば、汚水をケルダール法により前処理して、中和滴定法や総和法により測定できる。
【0086】
汚水のアンモニア性窒素濃度は、例えば、20mg/L以上3000mg/L以下である。なお、アンモニア性窒素濃度は、例えば、中和滴定法やイオン電極法により測定することができる。
【0087】
汚水の硝酸態窒素濃度は、例えば、0.0mg/L以上1.0mg/L以下である。なお、硝酸態窒素濃度は、例えば、比色法やイオンクロマトグラフ法により測定できる。
【0088】
汚水の生物学的酸素要求量(BOD)は、例えば、200mg/L以上21000mg/L以下である。なお、BODは、例えば、よう素滴定法や隔膜電極法により測定できる。
【0089】
汚水のSS濃度は、例えば、640mg/L以上35000mg/L以下である。なお、SS濃度は、例えば、ガラス繊維ろ紙法や遠心分離法により測定できる。
【0090】
次いで、
図2および
図3に示すように、制御部6は、内液を嫌気状態に調整する第1制御(S1)、および、内液を好気状態に調整する第2制御(S2)を、停止信号を受信するまで交互に実行する。なお、本実施形態では、制御部6は、第1制御を第1の設定時間維持した後、第2制御に切り替えて第2の設定時間維持する。制御部6は、第1の設定時間および第2の設定時間を予め記憶している。第1の設定時間および第2の設定時間は、汚水の性状に応じて適宜変更される。なお、本実施形態では、内液を嫌気状態に調整する第1制御後に内液を好気状態に調整する第2制御が実施されるが、第1制御と第2制御との順序は特に制限されない。制御部6は、第2制御後に第1制御を実施してもよい。
【0091】
図2では、便宜上、第1制御の開始から第2制御の終了までを1サイクルとして、第1サイクルから第5サイクルにおける、循環ポンプ42の出力、供給ポンプ32の出力およびアンモニア濃度を示す。
【0092】
図4に示すように、内液を嫌気状態に調整する第1制御において、制御部6は、まず、予め記憶している循環ポンプ42の第1出力の出力値を読み出して、循環ポンプ42を第1出力で駆動する(S1-1)。これによって、
図1に示すように、硝化脱窒素槽2の内液が、循環液として、循環ライン41の上流端41Aに吸い込まれる。そして、循環液が、循環ライン41を通過してオーバーフローシャフト43に流入する。
【0093】
そして、循環液が、循環ライン41からディフューザ432に向かってボディ431を通過するときに、ボディ431の内部に負圧を生じる。これによって、ボディ431の上端近傍の空気が、ボディ431の内部に吸引される。そして、オーバーフローシャフト43内において、循環液と空気とが混合され、ディフューザ432の下端432Bから、循環液と空気とが噴射される。
【0094】
内液を嫌気状態に調整する第1制御では、内液を好気状態に調整する第2制御と比較して、循環ポンプ42の出力が小さい。そのため、第1制御では、第2制御と比較して、循環液の循環速度が小さい。第1制御における循環液の循環速度は、例えば、33m3/h以上3000m3/h以下である。
【0095】
第1制御における循環液の循環速度が上記下限以上であれば、硝化脱窒素槽2に収容される内液を安定して攪拌できる。第1制御における循環液の循環速度が上記上限以下であれば、硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量を低減できる。
【0096】
その結果、内液を嫌気状態に調整する第1制御では、硝化脱窒素槽2の内液のうち、ディフューザ432の下端432Bの近傍領域が好気状態となる一方、それ以外の大部分が嫌気状態となる。第1制御において、硝化脱窒素槽2の内液における溶存酸素濃度は、例えば、0.5mg/L未満に維持される。
【0097】
好気状態である領域において、硝化細菌が、酸素を消費して、アンモニア性窒素を亜硝酸または硝酸性窒素まで酸化する(硝化工程)。
【0098】
また、嫌気状態である領域において、脱窒素細菌が、亜硝酸または硝酸性窒素を窒素に還元する(脱窒素工程)。なお、生成した窒素は、図示しない排気管を介して、硝化脱窒素槽2から排出される。
【0099】
そして、嫌気状態である内液は、循環ライン41の上流端41Aに吸い込まれ、循環液として循環ライン41を通過し、オーバーフローシャフト43に流入する。その後、オーバーフローシャフト43は、循環液を空気とともに硝化脱窒素槽2内に噴射する。このような循環液の循環は、循環ポンプ42の駆動が停止するまで継続される。
【0100】
また、上記のように処理された汚水は、処理水として、第1制御および第2制御の間に、オーバーフローにより、硝化脱窒素槽2から排出ライン51を介して排出される。
【0101】
処理液の溶解性全窒素量(S-T-N)は、例えば、1mg/L以上20mg/L以下である。処理液のアンモニア性窒素濃度は、例えば、0.1mg/L以上20mg/L以下である。処理液の硝酸態窒素濃度は、例えば、0.1mg/L以上20mg/L以下である。
【0102】
次いで、
図2および
図4に示すように、制御部6は、第1制御の期間中に、硝化脱窒素槽2へ汚水を供給する。詳しくは、循環ポンプ42の第1出力での駆動開始から所定時間経過後に、制御部6は、予め記憶している供給ポンプ32の出力値を読み出して、供給ポンプ32を第3出力または第4出力で駆動させる(S1-2)。なお、供給ポンプ32の第3出力および第4出力については、後で詳述する。
【0103】
その後、制御部6は、供給ポンプ32を所定時間駆動させた後、第1制御が終了する前に、供給ポンプ32の駆動を停止する(S1-3)。第1制御の期間中における汚水の供給量は、汚水の性状に応じて適宜変更されるが、硝化脱窒素槽2の容積に対して、例えば、1/100以上1/500以下である。
【0104】
そして、制御部6は、循環ポンプ42の第1出力での駆動時間が第1の設定時間を経過するまで、循環ポンプ42の第1出力での駆動を継続した後、第1制御を第2制御に切り替える(
図3参照)。
【0105】
図2および
図5に示すように、第2制御において、制御部6は、予め記憶している循環ポンプ42の第2出力の出力値を読み出して、循環ポンプ42を第2出力で駆動する(S2-1)。
【0106】
第2出力は、第1出力よりも大きい。そのため、第2制御では、第1制御と比較して、循環液の循環速度が大きい。第2制御における循環液の循環速度は、例えば、100m3/h以上3000m3/h以下である。
【0107】
第2制御における循環液の循環速度が上記下限以上であれば、硝化脱窒素槽2に対して、十分な酸素を供給できる。
【0108】
その結果、第2制御では、硝化脱窒素槽2の内液のうち、大部分が好気状態となる一方、それ以外の一部(下部)が嫌気状態となる。第2制御において、硝化脱窒素槽2の内液における溶存酸素濃度は、例えば、0.5mg/L以上に維持される。これによって、第2制御では、第1制御と比較して、硝化工程が優位に進行する。
【0109】
第2制御では、生育環境に適したpHや温度が維持される。第2制御における硝化脱窒素槽2の内液のpHは、例えば、5.0以上、好ましくは、6.0以上、また、例えば、9.0以下、好ましくは、8.0以下である。第2制御における硝化脱窒素槽2の内液の温度は、例えば、15℃以上38℃以下である。
【0110】
また、制御部6は、循環ポンプ42を第2出力で駆動開始させるとともに、アンモニアセンサ7に循環液のアンモニア濃度を測定させる。これによって、制御部6は、第2制御開始時における循環液のアンモニア濃度C1を取得する。そして、制御部6は、第2制御開始時における循環液のアンモニア濃度C1が、第2制御開始時におけるアンモニア濃度の設定値Z以下であるか否かを判断する(S2-2)。
【0111】
第2制御開始時における循環液のアンモニア濃度C
1が設定値Z以下である場合(S2-2のYes)、制御部6は、予め記憶している第3出力に対応する出力値を読み出す(S2-3)。そして、制御部6は、次の第1制御において、供給ポンプ32を第3出力で駆動させる(
図2の第1サイクルから第3サイクル参照)。言い換えれば、第2制御開始時における循環液のアンモニア濃度C
1が設定値Z以下である場合、制御部6は、次の第1制御において、供給ポンプ32を第3出力で駆動させる。
【0112】
第2制御開始時における循環液のアンモニア濃度C
1が設定値Zを超過する場合(S2-2のNo)、制御部6は、予め記憶している第4出力に対応する出力値を読み出す(S2-4)。そして、制御部6は、次の第1制御において、供給ポンプ32を第4出力で駆動させる(
図2の第4サイクルおよび第5サイクル参照)。言い換えれば、第2制御開始時における循環液のアンモニア濃度C
1が設定値Zを超過する場合、制御部6は、次の第1制御において、供給ポンプ32を第4出力で駆動させる。第4出力は、第3出力よりも小さい。第4出力の出力値は、第3出力の出力値に対して、例えば、70%以上90%以下である。
【0113】
次いで、制御部6は、循環ポンプ42の第2出力での駆動開始から所定時間経過時に、アンモニアセンサ7に循環液のアンモニア濃度を測定させる(S2-5)。これによって、制御部6は、第2制御開始から所定時間経過したときの循環液のアンモニア濃度C2を取得する。そして、制御部6は、第2制御開始時のアンモニア濃度C1と所定時間経過時のアンモニア濃度C2とに基づいて、第2制御開始から所定時間経過までのアンモニア濃度の減少速度を算出する(S2-6)。
【0114】
次いで、制御部6は、アンモニア濃度の減少速度と、第2の設定時間とから、第2制御終了時における汚水のアンモニア濃度の予測値Cpを算出する(S2-7)。
【0115】
次いで、制御部6は、アンモニア濃度の予測値Cpが、第2制御終了時におけるアンモニアの濃度の下限値Y未満であるか否かを判断する(S2-8)。
【0116】
アンモニア濃度の予測値C
pが第2制御終了時におけるアンモニア濃度の下限値Y未満である場合(S2-8のYes)、制御部6は、循環ポンプ42の第2出力の出力値を低下させる(S2-9、
図2の第2サイクル参照)。言い換えれば、アンモニア濃度の予測値C
pが所定範囲未満である場合、制御部6は、循環ポンプ42の第2出力の出力値を低下させる。第2出力の出力値を低下割合は、例えば、現状の循環ポンプ42の第2出力の出力値100%に対して、例えば、70%以上90%以下である。そして、制御部6は、記憶している第2出力の出力値を更新する。
【0117】
アンモニア濃度の予測値Cpが第2制御終了時におけるアンモニアの濃度の下限値Y以上である場合(S2-8のNo)、制御部6は、アンモニア濃度の予測値Cpが、第2制御終了時におけるアンモニアの濃度の上限値Xを超過するか否かを判断する(S2-10)。
【0118】
アンモニア濃度の予測値C
pが第2制御終了時におけるアンモニアの濃度の上限値Xを超過する場合(S2-10のYes)、制御部6は、循環ポンプ42の第2出力の出力値を上昇させる(S2-11、
図2の第3サイクルおよび第4サイクル参照)。言い換えれば、アンモニア濃度の予測値C
pが所定範囲を超過する場合、制御部6は、循環ポンプ42の第2出力の出力値を上昇させる。第2出力の出力値を上昇割合は、例えば、現状の循環ポンプ42の第2出力の出力値100%に対して、例えば、110%以上130%以下である。そして、制御部6は、記憶している第2出力の出力値を更新する。
【0119】
アンモニア濃度の予測値C
pが第2制御終了時におけるアンモニアの濃度の上限値X以下である場合(S2-10のNo)、制御部6は、循環ポンプ42の第2出力の出力値を維持する(
図2の第5サイクル参照)。言い換えれば、制御部6は、アンモニア濃度の予測値C
pが、第2制御終了時におけるアンモニアの濃度の下限値Y以上上限値X以下、すなわち、所定範囲内である場合、循環ポンプ42の第2出力の出力値を維持する。
【0120】
そして、制御部6は、循環ポンプ42の第2出力での駆動時間が第2の設定時間を経過するまで、循環ポンプ42の第2出力での駆動を継続した後、
図3に示すように、停止信号を受信しているか否かを判断する(S-3)。制御部6が停止信号を受信している場合(S-3のYes)、硝化脱窒装置1は、汚水の処理動作を終了する。一方、制御部6が停止信号を受信していない場合(S-3のNo)、制御部6は、再度、第1制御および第2制御を繰り返す。
【0121】
3.作用効果
硝化脱窒装置1では、第1制御において、循環ポンプ42が、比較的小さな第1出力で駆動する。そのため、オーバーフローシャフト43を介して硝化脱窒素槽2に供給される酸素量は、比較的少なくなる。その結果、第1制御では、硝化脱窒素槽2の内液において脱窒素工程が優位となり、亜硝酸または硝酸性窒素が窒素に還元される。
【0122】
また、第2制御において、循環ポンプ42は、比較的大きな第2出力で駆動する。そのため、オーバーフローシャフト43を介して硝化脱窒素槽2に供給される酸素量は、比較的多くなる。その結果、第2制御では、硝化脱窒素槽2の内液において硝化工程が優位となり、アンモニア性窒素が亜硝酸または硝酸性窒素に酸化される。
【0123】
アンモニアセンサ7は、硝化脱窒素槽2の内液におけるアンモニア濃度を測定する。アンモニア性窒素は硝化工程において消費されるため、アンモニア濃度を測定することにより、硝化工程の進行の度合いを直接的に確認することができる。
【0124】
そして、制御部6は、アンモニアセンサ7の測定結果に基づいて、循環ポンプ42の第2出力の出力値を変更する。つまり、制御部6は、硝化工程の進行の度合いに基づいて、循環ポンプ42の第2出力の出力値を調整でき、第2制御における硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量を調整できる。
【0125】
そのため、第1制御および第2制御において、硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量を精度よく調整でき、硝化工程および脱窒素工程をバランスよく、効率的に実施できる。その結果、効率よく汚水を処理できる。
【0126】
また、アンモニア濃度の絶対値は、互いに異なる複数の硝化脱窒装置1間においても直接比較することができる。そのため、複数の硝化脱窒装置1において、同じアンモニア濃度の基準値を採用することが可能であり、硝化脱窒装置1の制御が容易である。さらに、アンモニアセンサ7の測定結果を、処理水の水質評価に利用することができる。
【0127】
また、制御部6は、第2制御開始から所定時間経過までのアンモニア濃度の減少速度を算出し、アンモニア濃度の減少速度から、第2制御終了時における汚水のアンモニア濃度の予測値Cpを算出する。
【0128】
第2制御終了時のアンモニア濃度の予測値Cpが所定範囲内である場合、第2制御において硝化工程が適度に進行しており、アンモニア性窒素が効率よく酸化される。そのため、制御部6は、循環ポンプ42の第2出力の出力値を維持する。
【0129】
また、第2制御終了時のアンモニア濃度の予測値Cpが所定範囲未満である場合、第2制御においてアンモニア性窒素が過度に消費されており、硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量が過剰である。この場合、脱窒素工程が不十分となるおそれがある。そのため、制御部6は、循環ポンプ42の第2出力の出力値を低下させて、硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量を低下させる。
【0130】
また、第2制御終了時のアンモニア濃度の予測値Cpが所定範囲を超過する場合、第2制御においてアンモニア性窒素の消費が不十分であり、硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量が不足している。そのため、制御部6は循環ポンプ42の第2出力の出力値を上昇させて、硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量を上昇させる。
【0131】
その結果、制御部6は、アンモニアセンサ7の測定結果に基づいて、硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量を適切に調整できる。これによって、硝化脱窒装置1は、硝化工程および脱窒素工程をバランスよく安定して実施でき、汚水をより効率よく処理することができる。
【0132】
また、第2制御開始時における硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度C1が設定値Z以下である場合、制御部6は、次の第1制御において、供給ポンプを第3出力で駆動させる。そのため、脱窒素工程が優位な第1制御の間に、有機物を含む汚水が、硝化脱窒素槽2に供給される。その結果、汚水中の有機物を脱窒素工程に有効に利用できる。
【0133】
また、第1制御において硝化脱窒素槽2に供給される汚水のアンモニア濃度が比較的高いと、第2制御開始時における硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度C1が設定値Zを超過する場合がある。この場合、制御部6は、次の第1制御において、供給ポンプを第3出力よりも小さな第4出力で駆動させる。これによって、次の第1制御における硝化脱窒素槽2に対する汚水供給量を低下させる。その結果、硝化脱窒素槽2の内液におけるアンモニア濃度が、過度に上昇することを抑制でき、硝化工程を安定して進行させることができる。
【0134】
4.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0135】
第1実施形態では、制御部6は、第2制御において、アンモニア濃度の予測値Cpに基づいて、循環ポンプ42の第2出力の出力値を変更させるが、本発明はこれに限定されない。
【0136】
図6および
図7に示すように、第2実施形態では、制御部6は、第2制御において、アンモニアセンサ7の測定結果の移動平均に基づいて、循環ポンプ42の第2出力の出力値を変更する。
【0137】
第2実施形態では、制御部6は、アンモニアセンサ7の測定結果の移動平均を算出する。制御部6は、第1制御および第2制御において、アンモニアセンサ7に、循環液のアンモニア濃度を単位時間毎(例えば、毎秒)に測定させる。そして、制御部6は、第1制御の開始から第2制御の終了までを1サイクルとして、1サイクル中のアンモニア濃度の平均値を算出する。次いで、制御部6は、少なくとも2サイクルのアンモニア濃度の平均値から、アンモニア濃度の移動平均を算出する。そして、制御部6は、今回算出したアンモニア濃度の移動平均と、前回算出したアンモニア濃度の移動平均とから、アンモニア濃度の移動平均の変動量を算出する。
【0138】
図6に示すように、アンモニアセンサ7の測定結果の移動平均の変動量が所定範囲を超えて上昇する場合、第2制御におけるアンモニア性窒素の消費が不十分であり、硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量が不足している。そのため、制御部6は、循環ポンプ42の第2出力の出力値を上昇させて、第2制御における硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量を上昇させる。言い換えれば、制御部6は、アンモニアセンサ7の測定結果の移動平均が所定範囲を超えて上昇する場合、循環ポンプ42の第2出力の出力値を上昇させる。
【0139】
また、
図7に示すように、アンモニアセンサ7の測定結果の移動平均の変動量が所定範囲を超えて下降する場合、第2制御における硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量が過剰である。この場合、制御部6は、循環ポンプ42の第2出力の出力値を低下させて、第2制御における硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量を低下させる。言い換えれば、制御部6は、アンモニアセンサ7の測定結果の移動平均が所定範囲を超えて下降する場合、循環ポンプ42の第2出力の出力値を低下させる。
【0140】
また、
図8に示すように、アンモニアセンサ7の測定結果の移動平均の変動量が所定範囲内である場合、第2制御において硝化工程が適度に進行しており、アンモニア性窒素が効率よく酸化される。そのため、制御部6は、循環ポンプ42の第2出力の出力値を維持する。言い換えれば、制御部6は、アンモニアセンサ7の測定結果の移動平均の変動量が所定範囲内である場合、循環ポンプ42の第2出力の出力値を維持する。
【0141】
その結果、硝化脱窒装置1は、硝化工程および脱窒素工程をバランスよく安定して実施でき、汚水をより効率よく処理することができる。このような第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0142】
5.第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0143】
第1実施形態では、制御部6は、アンモニアセンサ7の測定結果に基づいて、第2制御において循環ポンプ42の第2出力の出力値を変更するが、本発明はこれに限定されない。
【0144】
第3実施形態では、制御部6は、アンモニアセンサ7の測定結果に基づいて、第1制御において、循環ポンプ42の第1出力の出力値を変更する。また、制御部6は、第2制御開始時における硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度を基準として、第2制御において、循環ポンプ42の第2出力の出力値を変更してもよい。
【0145】
図9に示すように、第2制御開始時における硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度C
1が、第2制御開始時におけるアンモニア濃度の許容下限値Z1未満(所定範囲未満)である場合、硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量が過剰である(
図9の第2サイクルおよび第3サイクル参照)。そのため、制御部6は、次の第1制御において、循環ポンプ42の第1出力の出力値を低下させて、第1制御における硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量を低下させる。また、制御部6は、次の第2制御において、循環ポンプ42の第2出力の出力値を低下させて、第2制御における硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量を低下させる。
【0146】
言い換えれば、第2制御開始時における硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度C1が所定範囲未満である場合、制御部6は、次の第1制御において循環ポンプ42の第1出力の出力値を低下させ、次の第2制御において循環ポンプ42の第2出力の出力値を低下させる。
【0147】
また、第2制御開始時における硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度C
1が、第2制御開始時におけるアンモニア濃度の許容上限値Z2を超過(所定範囲を超過)する場合、硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量が不足している(
図9の第4サイクルおよび第5サイクル参照)。そのため、制御部6は、次の第1制御において、循環ポンプ42の第1出力の出力値を上昇させて、第1制御における硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量を上昇させる。また、制御部6は、次の第2制御において、循環ポンプ42の第2出力の出力値を上昇させて、第2制御における硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量を上昇させる。
【0148】
言い換えれば、第2制御開始時における硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度C1が所定範囲を超過する場合、制御部6は、次の第1制御において循環ポンプ42の第1出力の出力値を上昇させ、次の第2制御において循環ポンプ42の第2出力の出力値を上昇させる。
【0149】
また、第2制御開始時における硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度C
1が、第2制御開始時におけるアンモニア濃度の許容下限値Z1以上許容上限値Z2以下(所定範囲内)である場合、制御部6は、次の第1制御において、循環ポンプ42の第1出力の出力値を、前回の第1制御と同じに維持する(
図9の第1サイクルおよび第2サイクル参照)。この場合、制御部6は、次の第2制御において、循環ポンプ42の第2出力の出力値を、前回の第2制御と同じに維持する。
【0150】
言い換えれば、第2制御開始時における硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度C1が所定範囲内である場合、制御部6は、次の第1制御において循環ポンプ42の第1出力の出力値を前回の第1制御と同じに維持し、次の第2制御において循環ポンプ42の第2出力の出力値を前回の第2制御と同じに維持する。
【0151】
その結果、硝化脱窒装置1は、硝化工程および脱窒素工程をバランスよく安定して実施でき、汚水をより一層効率よく処理することができる。このような第3実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0152】
また、循環ポンプ42の出力値の過剰変動を抑制するため、複数サイクル分の第2制御開始時のアンモニア濃度C1の平均値を算出して、その平均値に基づいて、循環ポンプ42の第1出力および/または第2出力の出力値を変更してもよい。
【0153】
6.第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
【0154】
第4実施形態では、制御部6は、一のサイクルにおける硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最小値および最大値を基準として、次のサイクルの循環ポンプ42の第1出力および第2出力の出力値を変更する。
【0155】
一のサイクルにおける硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最小値が、サイクルにおけるアンモニア濃度の許容下限範囲未満(所定範囲未満)である場合、硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量が過剰である。そのため、制御部6は、次の第2制御において、循環ポンプ42の第2出力の出力値を低下させて、第2制御における硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量を低下させる。言い換えれば、制御部6は、一のサイクルにおける硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最小値が所定範囲未満である場合、循環ポンプ42の第2出力の出力値を低下させる。
【0156】
また、一のサイクルにおける硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最小値が、サイクルにおけるアンモニア濃度の許容下限範囲を超過(所定範囲を超過)する場合、硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量が不足している。そのため、制御部6は、次の第2制御において、循環ポンプ42の第2出力の出力値を上昇させて、第2制御における硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量を上昇させる。言い換えれば、制御部6は、一のサイクルにおける硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最小値が所定範囲を超過する場合、循環ポンプ42の第2出力の出力値を上昇させる。
【0157】
また、一のサイクルにおける硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最小値が、サイクルにおけるアンモニア濃度の許容下限範囲内(所定範囲内)である場合、制御部6は、次の第2制御において、循環ポンプ42の第2出力の出力値を、前回の第2制御と同じに維持する。言い換えれば、制御部6は、一のサイクルにおける硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最小値が所定範囲内である場合、循環ポンプ42の第2出力の出力値を、前回の第2制御と同じに維持する。
【0158】
また、一のサイクルにおける硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最大値が、サイクルにおけるアンモニア濃度の許容上限範囲未満(所定範囲未満)である場合、硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量が過剰である。そのため、制御部6は、次の第1制御において、循環ポンプ42の第1出力の出力値を低下させて、第1制御における硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量を低下させる。言い換えれば、制御部6は、一のサイクルにおける硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最大値が所定範囲未満である場合、循環ポンプ42の第1出力の出力値を低下させる。
【0159】
また、一のサイクルにおける硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最大値が、サイクルにおけるアンモニア濃度の許容上限範囲を超過(所定範囲を超過)する場合、硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量が不足している。そのため、制御部6は、次の第1制御において、循環ポンプ42の第1出力の出力値を上昇させて、第1制御における硝化脱窒素槽2に対する酸素供給量を上昇させる。言い換えれば、制御部6は、一のサイクルにおける硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最大値が所定範囲を超過する場合、循環ポンプ42の第1出力の出力値を上昇させる。
【0160】
また、サイクルにおける硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最大値が、サイクルにおけるアンモニア濃度の許容上限範囲内(所定範囲内)である場合、制御部6は、次の第1制御において、循環ポンプ42の第1出力の出力値を、前回の第1制御と同じに維持する。言い換えれば、制御部6は、一のサイクルにおける硝化脱窒素槽2の内液のアンモニア濃度の単位時間あたりの最大値が所定範囲内である場合、循環ポンプ42の第1出力の出力値を、前回の第1制御と同じに維持する。
【0161】
その結果、硝化脱窒装置1は、硝化工程および脱窒素工程をバランスよく安定して実施でき、汚水をより一層効率よく処理することができる。このような第4実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0162】
上記した第1実施形態から第4実施形態および変形例は、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0163】
1 硝化脱窒装置
2 硝化脱窒素槽
31 汚水供給ライン
41 循環ライン
42 循環ポンプ
43 オーバーフローシャフト
6 制御部
7 アンモニアセンサ