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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】連結装置
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240117BHJP
   A01B 63/14 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01B63/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020155566
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049381
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大倉 康平
(72)【発明者】
【氏名】石川 新之助
(72)【発明者】
【氏名】越田 典志
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0198444(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0124605(US,A1)
【文献】米国特許第07054731(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0006308(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01B 63/14
A01B 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な作業車両と作業装置とを連結する連結部材と、
前記連結部材の一端に設けられ、前記作業車両に連結する連結位置が当該作業車両の縦軸に枢支される第1連結部と、
前記連結部材の他端に設けられ、前記作業装置に連結する連結位置が当該作業装置の縦軸に枢支される第2連結部と、
伸縮することによって、前記第1連結部を軸心として前記連結部材を揺動させることで前記第2連結部の連結位置を揺動方向に変更可能なアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御する制御装置と、
を備え
前記制御装置は、前記作業車両が自動運転を行うときの予め定められた走行ラインを取得し、前記作業車両が前記走行ラインに一致しているか否かに関わらず、前記アクチュエータを制御することによって、前記第2連結部の前記連結位置が前記走行ラインに一致するように、前記第2連結部の前記連結位置を変更する連結装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第2連結部の前記連結位置と前記走行ラインとの車幅方向の位置偏差が零となるように、前記アクチュエータを伸縮させることにより、前記第2連結部の前記連結位置を前記走行ラインに一致させる請求項1に記載の連結装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記作業車両の作業車両位置と、前記走行ラインとの車幅方向の位置偏差が閾値以上である場合には、前記作業車両の自動運転とは独立して、前記位置偏差を解消する方向に前記第2連結部の前記連結位置を変化させる請求項1又は2に記載の連結装置。
【請求項4】
前記走行ラインは、前記作業車両を直進させる直進部と、旋回させる旋回部とを含む請求項2又は3に記載の連結装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記作業車両の作業車両位置及び前記作業装置の装置位置を含む走行実績に基づいて前記作業車両位置の軌道である第1軌道と前記装置位置の軌道である第2軌道とを演算し、前記第2軌道が圃場内の障害物との距離が所定以上離れている場合に当該第2軌道が適正であると判断し、前記適正と判断した場合には前記第2軌道に一致するように前記作業車両の走行時の前記第2連結部の前記連結位置を変更し、且つ、前記第2軌道と圃場内の障害物との距離が所定以上離れていない場合に当該第2軌道が不適切であると判断し、前記不適切と判断した区間では前記作業車両の走行時の前記第2連結部の前記連結位置を、前記第2軌道とは異なり且つ前記障害物から離れる第3軌道に一致するように変更する請求項1に記載の連結装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1連結部の連結位置に基づいて、前記作業車両の作業車両位置を推定する請求項1~のいずれか1項に記載の連結装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第2連結部の連結位置に基づいて、前記作業装置の装置位置を推定する請求項1~のいずれか1項に記載の連結装置。
【請求項8】
全地球測位システムにより、前記第2連結部の前記連結位置を測位可能な測位装置を有する請求項1~のいずれか1項に記載の連結装置。
【請求項9】
走行車体と、
作業装置と、
請求項1~8のいずれか1項に記載の連結装置と、を備えた作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、作業車両と作業装置とを連結する連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタ等の作業車両に作業装置を連結する連結装置として、特許文献1が知られている。特許文献1の連結装置では、トラクタ車体の後部に昇降自在に装着された連結枠と、連結枠の上部に設けられ且つ作業機側に設けた被係合部に係合する係合部とを備えている。作業装置では、係合部が被係合部を中心として揺動してすることで、作業装置を連結することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-64582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の連結装置に示したように、連結装置はトラクタの後部に作業装置を連結するために構成された装置である。作業装置は、トラクタ側の後部に設けた昇降装置によって連結装置を昇降させることにより、昇降することができるのが一般的である。ここで、昇降装置の昇降を油圧シリンダ、制御弁等はトラクタ側に設けられていて、トラクタの昇降制御によってのみ、作業装置を昇降しているのが実情であり、その他の方法によって、作業装置の昇降等、作業装置に対して位置変更などを行うことができない。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、作業車両に対する作業装置の位置を変更することができる連結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
連結装置は、走行可能な作業車両と作業装置とを連結する連結部材と、前記連結部材の一端に設けられ、前記作業車両に連結する連結位置が当該作業車両の縦軸に枢支される第1連結部と、前記連結部材の他端に設けられ、前記作業装置に連結する連結位置が当該作業装置の縦軸に枢支される第2連結部と、伸縮することによって、前記第1連結部を軸心として前記連結部材を揺動させることで前記第2連結部の連結位置を揺動方向に変更可能なアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記作業車両が自動運転を行うときの予め定められた走行ラインを取得し、前記作業車両が前記走行ラインに一致しているか否かに関わらず、前記アクチュエータを制御することによって、前記第2連結部の前記連結位置が前記走行ラインに一致するように、前記第2連結部の前記連結位置を変更する
前記制御装置は、前記第2連結部の前記連結位置と前記走行ラインとの車幅方向の位置偏差が零となるように、前記アクチュエータを伸縮させることにより、前記第2連結部の前記連結位置を前記走行ラインに一致させる。
【0007】
記制御装置は、前記作業車両の作業車両位置と、前記走行ラインとの車幅方向の位置偏差が閾値以上である場合には、前記作業車両の自動運転とは独立して、前記位置偏差を解消する方向に前記第2連結部の前記連結位置を変化させる
【0008】
前記走行ラインは、前記作業車両を直進させる直進部と、旋回させる旋回部とを含む。
前記制御装置は、前記作業車両の作業車両位置及び前記作業装置の装置位置を含む走行実績に基づいて前記作業車両位置の軌道である第1軌道と前記装置位置の軌道である第2軌道とを演算し、前記第2軌道が圃場内の障害物との距離が所定以上離れている場合に当該第2軌道が適正であると判断し、前記適正と判断した場合には前記第2軌道に一致するように前記作業車両の走行時の前記第2連結部の前記連結位置を変更し、且つ、前記第2軌道と圃場内の障害物との距離が所定以上離れていない場合に当該第2軌道が不適切であると判断し、前記不適切と判断した区間では前記作業車両の走行時の前記第2連結部の前記連結位置を、前記第2軌道とは異なり且つ前記障害物から離れる第3軌道に一致するように変更する
【0009】
記制御装置は、前記第1連結部の連結位置に基づいて、前記作業車両の作業車両位置を推定する。
前記制御装置は、前記第2連結部の連結位置に基づいて、前記作業装置の装置位置を推定する。
【0010】
連結装置は、全地球測位システムにより、前記第2連結部の前記連結位置を測位可能な測位装置を有する。
作業車両は、走行車体と、作業装置と、上記の連結装置と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業車両に対する作業装置の位置を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】トラクタ、連結装置及び作業装置の制御ブロック図である。
図2】作成画面M1の一例を示す図である。
図3】トラクタの自動運転を説明する説明図である。
図4A】連結装置の一例を示す図である。
図4B】連結装置の他の例を示す図である。
図5A】自動運転の様子を示す図である。
図5B】旋回時の自動運転の様子を示す図である。
図6】実績データの一例を示す図である。
図7】トラクタが作業装置を牽引して自動走行を行っている状態を示す図である。
図8A】走行実績の一例を示す図である。
図8B】走行実績の他の例を示す図である。
図9A】測位装置を備えた連結装置の一例を示す図である。
図9B】測位装置を備えた連結装置の他の一例を示す図である。
図10】連結装置の変形例を示す図である。
図11】トラクタ、連結装置及び作業装置の変形例における制御ブロック図である。
図12】トラクタの側面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図12は、作業車両1に作業装置2を連結した状態を示している。
まず、作業車両の1つであるトラクタ1について説明する。
図12に示すように、トラクタ1は、走行装置7を有する走行車体3と、原動機4と、変速装置5とを備えている。走行装置7は、前輪7F及び後輪7Rを有する装置である。前輪7Fは、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。また、後輪7Rも、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。原動機4は、ディーゼルエンジン、電動モータ等である。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切換可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切換が可能である。走行車体3にはキャビン9が設けられ、当該キャビン9内には運転席10が設けられている。
【0014】
また、走行車体3の後部には、作業装置2を連結する連結装置8が設けられている。連結装置は、作業装置2と走行車体3とを連結し且つ昇降を行わないスイングドローバ、3点リンク機構等で構成されて昇降を行う昇降装置等である。連結装置8には、作業装置2が着脱可能である。作業装置2を連結装置8に連結することによって、走行車体3によって作業装置2を牽引することができる。作業装置2は、運搬するトレーラ、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、苗を植え付ける移植装置、灌水を行う灌水装置、農薬を散布する農薬散布装置、種を散布する播種散布装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置、複数の作業を行う複合装置等である。
【0015】
図1は、トラクタ1、連結装置8、作業装置2の制御ブロック図を示している。図1に示すように、トラクタ1は、操舵装置29を備えている。操舵装置29は、ハンドル(ステアリングホイール)30と、ハンドル30の回転に伴って回転する回転軸(操舵軸)31と、ハンドル30の操舵を補助する補助機構(パワーステアリング機構)32と、を有している。補助機構32は、油圧ポンプ33と、油圧ポンプ33から吐出した作動油が供給される制御弁34と、制御弁34により作動するステアリングシリンダ35とを含んでいる。制御弁34は、制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁34は、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁である。また、制御弁34は、操舵軸31の操舵によっても切換可能である。ステアリングシリンダ35は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)に接続されている。
【0016】
したがって、ハンドル30を操作すれば、当該ハンドル30に応じて制御弁34の切換位置及び開度が切り換わり、当該制御弁34の切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ35が左又は右に伸縮することによって、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。なお、上述した操舵装置29は一例であり、上述した構成に限定されない。
トラクタ1は、測位装置40を備えている。測位装置40は、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システム(測位衛星)、即ち、全地球測位システムにより、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出可能である。即ち、測位装置40は、測位衛星から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、衛星信号に基づいて、トラクタ1の位置(例えば、緯度、経度)、即ち、作業車両位置P10を検出する。測位装置40は、受信装置41と、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)42とを有している。受信装置41は、アンテナ等を有していて測位衛星から送信された衛星信号を受信する装置であり、慣性計測装置42とは別に走行車体3に取付けられている。この実施形態では、受信装置41は、走行車体3、即ち、キャビン9に取付けられている。なお、受信装置41の取付箇所は、実施形態に限定されない。
【0017】
慣性計測装置42は、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等を有している。走行車体3、例えば、運転席10の下方に設けられ、慣性計測装置42によって、走行車体3のロール角、ピッチ角、ヨー角等を検出することができる。
図1に示すように、トラクタ1は、複数の検出装置38と、複数の操作部材(操作装置)39と、制御装置(第1制御装置)60とを備えている。複数の検出装置38、測位装置40及び第1制御装置60とは、車載ネットワークN1により接続されていて、第1制御装置60は、複数の検出装置38が検出した検出情報、測位装置40が検出した作業車両位置(位置情報)を取得可能である。第1制御装置60は、複数の操作部材(操作装置)39が操作したときの操作情報を取得可能である。
【0018】
複数の検出装置38は、トラクタ1の状態を検出する装置であり、例えば、水温を検出する水温センサ38a、燃料の残量を検出する燃料センサ38b、原動機4の回転数を検出する原動機回転センサ(回転センサ)38c、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダルセンサ38d、操舵装置29の操舵角を検出する操舵角センサ38e、走行車体3の車速(速度)を検出する速度センサ38f、PTO軸の回転数を検出するPTO回転センサ(回転センサ)38g、バッテリー等の蓄電池の電圧を検出するバッテリセンサ38h等である。
【0019】
また、トラクタ1は、複数の操作部材(操作装置)39を備えている。複数の操作部材39は、走行車体3の前進又は後進を切り換えるシャトルレバー39a、原動機4の始動等を行うイグニッションスイッチ39b、PTO軸の回転数を設定するPTO変速レバー39c、変速装置5の変速段(変速レベル)を手動で切り換える変速レバー39d、車速を増減させるアクセル39e等である。
【0020】
第1制御装置60は、トラクタ1の様々な制御を行う。第1制御装置60は、例えば、アクセルペダルの操作量に応じて原動機回転数を制御したり、走行車体3の前進又は後進の切換が行われた場合に変速装置5内に設けられた前進、後進を切り換えるクラッチを制御したり、変速レバー39dによって変速段が変更された場合に変速装置5の変速段を変更する制御を行う。また、第1制御装置60は、手動運転を行う場合に操舵装置29の操舵角に応じて操舵装置29の操舵の制御を行う。
【0021】
トラクタ1は、自動運転が可能であり、当該自動運転は、予め設定された走行ラインL1に基づいて行われる。図2に示すように、自動運転の走行ラインL1は、トラクタ1に設けられた表示装置50によって表示することができる。
図2に示すように、表示装置50に対して所定の操作を行うと、走行ラインL1の作成画面M1が表示される。作成画面M1は、位置情報(緯度、経度)が割り当てられたフィールド部65を含んでいる。ここで、表示装置50に対して所定の操作を行うと、フィールド部65に、走行ラインL1としてトラクタ1を直進させる直進部L1aと、旋回部L1bとを設定することができる。
【0022】
自動運転は、第1制御装置60によって行うことができる。第1制御装置60は、自動運転を制御する自動運転制御部63を有している。
自動運転制御部63は、自動運転モードになっている場合に自動運転を開始する。図3に示すように、トラクタ1が自動運転を行っている状況下において、作業車両位置P10と走行ラインL1との偏差が閾値未満である場合、自動運転制御部63は、操舵軸(回転軸)31の回転角を維持する。作業車両位置P10と走行ラインL1との偏差が閾値以上であって、トラクタ1が走行ラインL1に対して左側に位置している場合は、自動運転制御部63は、トラクタ1の操舵方向が右方向となるように操舵軸31を回転する。作業車両位置P10と走行ラインL1との偏差が閾値以上であって、トラクタ1が走行ラインL1に対して右側に位置している場合は、自動運転制御部63は、トラクタ1の操舵方向が左方向となるように操舵軸31を回転する。なお、上述した実施形態では、作業車両位置P10と走行ラインL1との偏差に基づいて操舵装置29の操舵角を変更していたが、走行ラインL1の方位とトラクタ1(走行車体3)の進行方向(走行方向)の方位(車体方位)F1とが異なる場合、即ち、走行ラインL1に対する車体方位F1の角度θgが閾値以上である場合、自動運転制御部63は、角度θgが零となる(車体方位F1が走行ラインL1の方位に一致する)ように操舵角を設定してもよい。また、自動運転制御部63は、位置偏差によって演算された操舵角と、方位(方位偏差)によって演算された操舵角とに基づいて、自動操舵における最終の操舵角を設定してもよい。上述した実施形態における自動操舵における操舵角の設定は一例であり、限定されない。
【0023】
図4Aに示すように、連結装置8は、例えば、牽引ヒッチであって、連結部材8aと、アクチュエータ8bとを有している。連結部材8aは、トラクタ1と作業装置2とを連結する部材であって、棒状に形成された部材である。連結部材8aは、第1連結部8a1と、第2連結部8a2とを含んでいる。
第1連結部8a1は、トラクタ1に連結する部位であって、トラクタ1の後部に設けられたブラケット43に設けられた縦軸44に揺動可能に枢支される。例えば、第1連結部8a1には、垂直方向に貫通する貫通孔が形成され、貫通孔に縦軸44が挿入されることで、第1連結部8a1がトラクタ1の後部に連結される。なお、ブラケット43は、例えば、変速装置5のミッションケース、デフケース等に設けられている。
【0024】
第2連結部8a2は、作業装置2に連結する部位であって、作業装置2の前部に設けられたブラケット45に設けられた縦軸46に揺動可能に枢支される。例えば、第2連結部8a2には、垂直方向に貫通する貫通孔が形成され、貫通孔に縦軸46が挿入されることで、第2連結部8a2が作業装置2の前部に連結される。
図4Aに示すように、アクチュエータ8bは、第2連結部8a2の連結位置P12を変更可能である。アクチュエータ8bは、例えば、伸縮可能な油圧シリンダである。アクチュエータ(油圧シリンダ)8bの一端は、トラクタ1に設けられたブラケット47に揺動自在に枢支される。アクチュエータ(油圧シリンダ)8bの他端は、連結部材8aの中途部(第1連結部8a1と第2連結部8a2との間の中間部)に揺動自在に枢支される。したがって、アクチュエータ(油圧シリンダ)8bを伸縮することによって、第2連結部8a2の連結位置P12を変更することができる。
【0025】
図4Bに示すように、アクチュエータ(油圧シリンダ)8bは、連結部材8aと作業装置2との間に設けられていてもよい。図4Bに示すように、アクチュエータ(油圧シリンダ)8bの一端は、作業装置2に設けられたブラケット48に揺動自在に枢支される。アクチュエータ(油圧シリンダ)48の他端は、連結部材8aの中途部に揺動自在に枢支される。したがって、アクチュエータ(油圧シリンダ)8bを伸縮することによって、第1連結部8a1の連結位置P11を変更することができる。
【0026】
図1に示すように、連結装置8は、油圧シリンダ8bの伸縮を制御する制御弁55を備えている。制御弁55は、例えば、3位置切換可能な電磁弁である。制御弁55を中立位置から一方の位置(第1位置)55aにすると、油圧シリンダ8bは伸長し、制御弁55を中立位置から他方の位置(第2位置)55bにすると、油圧シリンダ8bは収縮する。
図1に示すように、連結装置8は、制御装置(第2制御装置)70を備えている。第2制御装置70は、CPU、電子・電気回路等から構成されている。第2制御装置70は、制御弁55のソレノイドに制御信号を出力することによって、制御弁55の位置を切り換えて、油圧シリンダ8bの伸縮を制御する。
【0027】
第2制御装置70は、トラクタ1側に設けられた車載ネットワークN1に接続されている。第2制御装置70は、トラクタ1側の情報、例えば、検出情報、作業車両位置(位置情報)、操作情報を取得することが可能である。なお、図1に示すように、作業装置2が制御装置(第3制御装置)2aを備えている場合、第2制御装置70は、車載ネットワークN1を介して、第3制御装置2aから送信された作業装置2の様々な情報(稼働情報)などを取得することが可能である。
【0028】
図5A及び図5Bは、自動運転の様子を示した図である。
図5A及び図5Bに示すように、第2制御装置70は、トラクタ1が自動運転を行うときの走行ラインL1に基づいて、連結位置P12を制御する。即ち、第2制御装置70は、自動走行時に連結位置P12が走行ラインL1に一致するように、当該連結位置P12を変更する。
【0029】
以下、トラクタ1の自動運転時における連結位置P12の制御について詳しく説明する。
自動運転を行うにあたって、第2制御装置70は、自動運転の開始前に走行ラインL1(直進部L1a、旋回部L1b)を、車載ネットワークN1を介して取得する。そして、第2制御装置70は、自動運転が開始されると、走行ラインL1に対する連結位置P12の位置を推定し、推定した連結位置P12が走行ラインL1に一致するように、連結位置P12を変更する。
【0030】
図5Aに示すように、自動運転では、トラクタ1の作業車両位置P10が走行ラインL1(直進部L1a)に一致していない場合、自動運転制御部63は、トラクタ1の作業車両位置P10が走行ラインL1(直進部L1a)に一致するように、トラクタ1を左側に操舵する制御を行う。ここで、トラクタ1の作業車両位置P10が走行ラインL1(直進部L1a)に一致している状況下で、第2制御装置70による制御を行わなかった場合、連結位置P12(作業装置2の位置)は、走行ラインL1に一致しないことがある。
【0031】
また、図5Bに示すように、自動運転において、トラクタ1の作業車両位置P10が走行ラインL1(旋回部L1b)に一致していない場合も、自動運転制御部63は、トラクタ1の作業車両位置P10が走行ラインL1(旋回部L1b)に一致するように、トラクタ1を左側に操舵する制御を行う。ここで、第2制御装置70による制御を行わなかった場合、連結位置P12(作業装置2の位置)が走行ラインL1に一致しない場合がある。つまり、トラクタ1の自動走行において、第2制御装置70による制御を行わなかった場合、連結位置P12(作業装置2の位置)が走行ラインL1に一致しないことがある。
【0032】
そこで、第2制御装置70は、自動運転制御部63とは独立して、連結位置P12(作業装置2の位置)と走行ラインL1との位置偏差ΔK1が零となるように(位置偏差ΔK1を解消するように)、油圧シリンダ8bを伸縮させる制御を行う。
例えば、図5Aに示すように、連結位置P12(作業装置2の位置)が走行ラインL1に対して左側にずれている場合は、第2制御装置70は、制御弁55に油圧シリンダ8bを収縮させる信号を出力することによって、連結位置P12を右側にシフトして走行ラインL1(直進部L1a)に一致させる。また、図5Bに示すように、連結位置P12(作業装置2の位置)が走行ラインL1(旋回部L1b)に対して左側にずれている場合も、第2制御装置70は、制御弁55に油圧シリンダ8bを収縮させる信号を出力することによって、連結位置P12を右側にシフトして走行ラインL1(旋回部L1b)に近づける。
【0033】
さて、第2制御装置70によって、連結位置P12の位置の推定は、当該連結位置P12の位置を推定するモデル(位置推定モデル)によって行う。位置推定モデルは、例えば、人工知能の深層学習によって構築された学習済みモデルである。位置推定モデルを構築するためには、自動運転を行ったときの過去の実績データを用いる。図6に示すように、位置推定モデルは、自動運転を行ったときの作業車両位置P10、操舵角、操舵方向、走行ラインL1、連結情報(連結部材8aの長さ、連結部材8aの取付位置)等の実績データを、人工知能の深層学習を行う様々なコンピュータに入力することによって構築することができる。
【0034】
位置推定モデルを構築するにあたって、予め連結位置P12を測位可能な測位装置を用意し、測位装置で測位した連結位置P12の実績位置を連結位置P12の教示データとして蓄積しておき、実績データに教示データを加えて、コンピュータにより深層学習を行うことによって位置推定モデルを構築してもよいし、教示データ(実績位置)の入力を行わずに深層学習によって連結位置P12を推定できるようにしてもよいし、学習済みモデルの構築方法については、限定されない。
【0035】
また、連結装置8は、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯端末、サーバ等の外部機器と無線によって接続する通信装置71、パーソナルコンピュータ、携帯端末、電子記憶媒体等と有線によって接続する入力インターフェース72を備えている。連結装置8は、通信装置71と外部機器とを無線通信で接続することにより位置推定モデル及び連結情報を取得する。或いは、連結装置8は、入力インターフェース72に外部機器を接続することにより位置推定モデル及び連結情報を取得する。連結装置8が位置推定モデルを取得すると、取得した位置推定モデル及び連結情報は第2制御装置70に記憶される。位置推定モデル及び連結情報は、車載ネットワークN1を介して、トラクタ1から取得してもよい。
【0036】
つまり、第2制御装置70は、上述した位置推定モデル及び連結情報を有していて、作業車両位置P10、操舵角、操舵方向、走行ラインL1及び連結情報を、位置推定モデルに適用することによって、連結位置P12を推定する。そして、第2制御装置70は、推定した連結位置P12と、自動運転時の走行ラインL1との位置偏差ΔK1が零となるように、即ち、位置偏差ΔK1が解消する方向に、油圧シリンダ8bを伸縮させる。
【0037】
なお、上述した実施形態は、作業車両位置P10と走行ラインL1との位置偏差を考慮せずに、連結位置P12を走行ラインL1に一致させる制御を行っていたが、作業車両位置P10と走行ラインL1との位置偏差が予め定められた閾値以上である場合に、位置偏差ΔK1が解消する方向に、油圧シリンダ8bを伸縮させてもよい。
また、トラクタ1の自動運転を行ったとき、第2制御装置70は、現在の作業車両位置P10、操舵角、操舵方向、走行ラインL1を取得して、取得した作業車両位置P10、操舵角、操舵方向、走行ラインL1に基づいて、学習済みモデル(位置推定モデル)の強化学習を行ってもよい。
【0038】
なお、位置推定モデルを構築するに際して、作業車両位置P10、操舵角、操舵方向、走行ラインL1及び連結情報を入力データとしているが、入力データは限定されず、例えば、少なくとも作業車両位置P10、走行ラインL1及び連結情報を入力データとし、他のパラメータは、操舵角、操舵方向以外のパラメータであってもよく、限定されない。
以上によれば、第2制御装置70によって、トラクタ1を自動運転する際に、連結位置P12(作業装置2の位置)を、トラクタ1とは独立して制御を行うことができる。
【0039】
さて、上述した実施形態では、トラクタ1の自動運転に応じて、連結位置P12を変更していたが、第2制御装置70は、トラクタ1及び作業装置2の過去の走行実績に基づいて、連結位置P12の変更をしてもよい。
第2制御装置70は、トラクタの作業車両位置P10及び作業装置2の装置位置P20を含む走行実績に基づいて、連結位置P12を制御する。図7に示すように、作業装置2の装置位置P20は、作業装置2の幅方向の両端部の位置である。作業装置2の装置位置P20の算出方法は、次の第1方法と、第2方法とで求めることができる。作業装置2の装置位置P20の算出は、第2制御装置70が演算する。
【0040】
図1及び図7に示すように、第1方法では、予め作業装置2に測位装置40と同じ構成の測位装置75を設けておき、当該測位装置75で測位した測位位置P13から幅方向へ所定距離L11だけ離れた位置を作業装置2の装置位置P20とすることができる。
第2方法では、トラクタ1に対する連結部材8aの角度θ1を検出可能な角度検出装置を設けておき、角度検出装置で検出した角度θ1と連結部材8aの長さL12とに基づいて連結位置P12を求め、連結位置P12から作業装置2の幅方向両端部までの距離(幅方向の距離X1、進行方向の距離Y1)を加減算することにより、装置位置P20を演算することができる。なお、上述した第1方法と、第2方法とでは、作業装置2の装置位置P20が少しだけなるが、どちらを採用してもよい。上述した作業装置2の装置位置P20の算出方法は、一例であり限定されない。
【0041】
図8Aは、トラクタ1を走行時において、第2制御装置70が第1方法で装置位置P20を演算し、演算した装置位置P20と作業車両位置P10を走行実績として、第2制御装置70に記憶したデータの一例を示している。図8Bは、トラクタ1を走行時において、第2制御装置70が第2方法で装置位置P20を演算し、演算した装置位置P20と作業車両位置P10を走行実績として、第2制御装置70に記憶したデータの一例を示している。
【0042】
さて、トラクタ1に作業装置2を連結して作業を行う場合、第2制御装置70は、同一圃場の過去の走行実績を参照し、図7に示すように、作業車両位置P10と、装置位置P20との軌道J1、J2を演算する。軌道J1は、作業車両位置P10の軌道であり、軌道J2は、装置位置P20の軌道である。
第2制御装置70は、トラクタ1の走行が開始されると、第2制御装置70は、図7に示されるような装置位置P20を参照して当該装置位置20から過去の軌道J2と演算し、現在の装置位置P20と過去の軌道J2とを比較することで、現在の作業装置2及び過去の作業装置2の走行状態を監視する。
【0043】
図7に示すように、トラクタ1の走行中において、過去の走行実績である軌道J2と圃場内の障害物79との距離が所定以上離れている場合、第2制御装置70は、軌道J2は適正であると判断し、現在の装置位置P20が軌道J2に一致するように連結位置P12を変更する。一方、軌道J2と圃場内の障害物79との距離が所定以上離れていない場合、第2制御装置70は、作業装置2の軌道J2が圃場に対して不適切であると判断し、トラクタ1の走行時の連結位置P12を軌道J2とは異なるように変更する。
【0044】
例えば、図7の区間A5では、軌道J2が障害物79に近づきすぎであることから、第2制御装置70は、作業装置2が区間A5に位置しているときは、区間A5の軌道J3に示すように、油圧シリンダ8bを伸縮することで、装置位置P20が障害物79から離れるように、装置位置P20の位置を変更する。なお、障害物79とは、圃場内に位置する水処理設備(排水管、給水管、給排水樋)、圃場内に植えられた木、畔などであるが、障害物79は限定されない。また、障害物79は、自動運転の走行ラインL1を作成するときにフィールド部65に場所を指定することで走行ラインL1と共に登録してもよいし、自動運転時に障害物を検出する障害物検出センサによって検出して、当該障害物検出センサで検出した位置を登録してもよく、障害物の登録方法等については、限定されない。
【0045】
上述した実施形態では、障害物79に近づかないように、連結装置8の第2制御装置70が連結位置P12の位置を変更したが、これに限定されない。
上述した実施形態では、第2制御装置70は、測位装置40が測位した作業車両位置P10を、車載ネットワークN1等を介して取得していたが、第2制御装置70は、第1連結部8a1の連結位置P11に基づいて、トラクタ1の作業車両位置P10を推定してもよい。
【0046】
図1及び図9Aに示すように、連結装置8は、第1連結部8a1の連結位置P11を測位可能な測位装置77を備えている。測位装置77は、測位装置40と同様に、全地球測位システムにより、第1連結部8a1の位置(連結位置)P11を測位可能である。
第2制御装置70は、トラクタ1の走行中において、油圧シリンダ8bのストロークが固定されている状態(トラクタ1に対する連結部材8aの角度θ1が固定されている状態)で、測位装置77が測位した連結位置P11が変化すると、トラクタ1の位置が変化したと判断する。つまり、トラクタ1の走行中において、連結部材8aの角度θ1が固定の場合は、連結位置P11の位置変化は、トラクタ1の作業車両位置が変化したと推定することができる。
【0047】
第2制御装置70は、測位装置77が測位した連結位置P11に、当該測位装置77からトラクタ1の測位装置40までの距離(幅方向の距離X2、進行方向の距離Y2)を加減算することにより、測位装置40の位置(作業車両位置P10)を推定する。なお、トラクタ1に対する連結部材8aの角度θ1が変化した場合であっても、第2制御装置70は、角度θ1に応じて、幅方向の距離X2、進行方向の距離Y2を補正することにより、測位装置40、即ち、作業車両位置P10に相当する位置を演算(推定)することができる。
【0048】
上述したように、連結装置8がトラクタ1の作業車両位置P10を推定できる場合は、第2制御装置70は、トラクタ1から作業車両位置P10を取得しなくても、連結位置P12の変更を行うことができる。
上述した実施形態において、装置位置P20を求めるに際して、測位装置75が測位した位置を用いていたが、これに代えて、図1及び図9Bに示すように、第2連結部8a2の連結位置P12を測位可能な測位装置78により、装置位置P20を求めてもよい。
【0049】
測位装置78は、測位装置40と同様に、全地球測位システムにより、第2連結部8a2の位置(連結位置)P12を測位可能である。
第2制御装置70は、トラクタ1の走行中において、油圧シリンダ8bのストロークが固定されている状態で測位装置78が測位した連結位置P12が変化すると、作業装置2の装置位置P20が変化したと判断する。つまり、トラクタ1の走行中において、油圧シリンダ8bのストロークが固定されている状態では、連結位置P12の位置変化は、作業装置2の装置位置P20が変化したと推定することができる。
【0050】
第2制御装置70は、測位装置78が測位した連結位置P12から作業装置2の幅方向両端部までの距離(幅方向の距離X1、進行方向の距離Y1)を加減算することにより、装置位置P20を演算することができる。なお、油圧シリンダ8bのストークが変化した場合、幅方向の距離X1、進行方向の距離Y1を補正することにより、測位装置40、即ち、作業車両位置P10に相当する位置を演算(推定)することができる。
【0051】
上述した実施形態では、連結装置8は、作業装置2の昇降を行わないスイングドローバであったが、これに代えて、作業装置2を昇降する昇降装置であってもよい。
図10に示すように、連結装置8は、リフトアーム108a、ロアリンク108b、トップリンク108c、リフトロッド108d、リフトシリンダ108eを有している。リフトアーム108aの前端部は、変速装置5を収容するケース(ミッションケース)の後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム108aは、リフトシリンダ108eの駆動によって揺動(昇降)する。リフトシリンダ108eは、油圧シリンダから構成されている。リフトシリンダ108eは、制御弁34を介して油圧ポンプと接続されている。制御弁34は、電磁弁等であって、リフトシリンダ108eを伸縮させる。
【0052】
ロアリンク108bの前端部は、変速装置5の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク108cの前端部は、ロアリンク108bよりも上方において、変速装置5の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトロッド108dは、リフトアーム108aとロアリンク108bとを連結している。ロアリンク108bの後部及びトップリンク108cの後部には、作業装置2が連結される。
【0053】
また、図10に示すように、左側のリフトロッド108dと、右側のリフトロッド108dとの少なくとも1つは、伸縮可能な油圧シリンダで構成されている。リフトシリンダ108eを伸縮しない状態で、油圧シリンダで構成された左側のリフトロッド108d又は右側のリフトロッド108dを伸縮させることにより、左側のロアリンク108bの先端と、右側のロアリンク108bの先端との相対位置を調整することができる。この実施形態では、右側のロアリンク108bが油圧シリンダで構成されている。当然の如く、左側のロアリンク108bが油圧シリンダで構成されていてもよい。
【0054】
上述した変形例では、ロアリンク108bが連結部材8aに相当し、ロアリンク108bの先端(後端)が第2連結部8a2に相当し、ロアリンク108bの基端(前端)が第1連結部8a1に相当している。説明の便宜上、左側のロアリンク108bの先端の第2連結部8a2に対応する連結位置のことを「左連結位置P12a」、右側のロアリンク108bの先端の第2連結部8a2に対応する連結位置のことを「右連結位置P12b」ということがある。
【0055】
また、リフトシリンダ108eと、油圧シリンダで構成された右側のリフトロッド108dとは、油圧シリンダ8bに相当している。
図11は、変形例におけるトラクタ1、連結装置8、作業装置2の制御ブロック図を示している。
図11に示すように、連結装置8は、リフトシリンダ108e(油圧シリンダ8b)を制御する制御弁155Aと、右側のリフトロッド108d(油圧シリンダ8b)を制御する制御弁155Bとを備えている。制御弁155A、155Bは、上述した制御弁55と同様に、例えば、3位置切換可能な電磁弁である。
【0056】
第2制御装置70は、制御弁155Aのソレノイドに制御信号を出力することで、リフトシリンダ108e(油圧シリンダ8b)を伸縮させる。例えば、リフトシリンダ108e(油圧シリンダ8b)を収縮させた場合、左側のリフトロッド108d及び右側のリフトロッド108dが上昇し、当該上昇に伴って第2連結部8a2の連結位置P12a、P12bも上方へ移動する。リフトシリンダ108e(油圧シリンダ8b)を伸長させた場合、左側のリフトロッド108d及び右側のリフトロッド108dが下降し、当該下降に伴って第2連結部8a2の連結位置P12a、P12bも下方へ移動する。
【0057】
つまり、リフトシリンダ108e(油圧シリンダ8b)を伸縮させることによって、連結位置P12a、P12bを垂直方向に移動させることで、作業装置2の昇降をすることができる。
第2制御装置70は、制御弁155Bのソレノイドに制御信号を出力することで、右側のリフトロッド108d(油圧シリンダ8b)を伸縮させる。例えば、右側のリフトロッド108d(油圧シリンダ8b)を収縮させた場合、右側のリフトロッド108dが上昇し、当該上昇に伴って右連結位置P12bも上方へ移動する。右側のリフトロッド108d(油圧シリンダ8b)を伸長させた場合、右側のリフトロッド108dが下降し、当該下降に伴って右連結位置P12bも下方へ移動する。
【0058】
つまり、右側のリフトロッド108d(油圧シリンダ8b)を伸縮によって、連結位置P12bが垂直方向に移動し、作業装置2の傾き(幅方向の傾き)、即ち、作業装置2の幅方向の姿勢を変更することができる。
さて、トラクタ1を走行させると、第2制御装置70は、作業装置2の傾きを監視する。作業装置2の傾きは、左連結位置P12aの変化によって把握することができる。例えば、第2制御装置70は、垂直方向の左連結位置P12aが垂直方向の右連結位置P12bと同じである場合、作業装置2は水平に保たれていると判断する。
【0059】
また、第2制御装置70は、左連結位置P12aが右連結位置P12bよりも上方に位置している場合、作業装置2は幅方向において右側に向けて傾いている(右下がり傾斜)と判断する。また、第2制御装置70は、左連結位置P12aが、右連結位置P12bよりも下方に位置している場合、作業装置2は幅方向において左側に向けて傾いている(左下がり傾斜)と判断する。
【0060】
ここで、作業装置2の姿勢が閾値以上変化した場合、即ち、垂直方向において、左連結位置P12aと右連結位置P12bとの相対位置が閾値以上変化した場合、作業装置2の姿勢が閾値未満となるように、左連結位置P12aを制御する。
つまり、作業装置2が左側又は右側に傾いた角度が所定以上(閾値以上)である場合、第2制御装置70は、左連結位置P12aと右連結位置P12bとの垂直方向における相対位置が閾値未満となるように、左連結位置P12aが右連結位置P12bに近づくように、上方向、又は、下方向に移動させる。即ち、第2制御装置70は、垂直方向において、左連結位置P12aが右連結位置P12bに近づく方向に移動するように、右側のリフトロッド108d(油圧シリンダ8b)を伸縮させる。なお、左側のリフトロッド108dの左連結位置P12aの検出は、例えば、左側のリフトロッド108dの先端側に位置検出センサ110(傾斜センサ、加速度センサ等)を取り付けて、第2制御装置70が位置検出センサ110の検出値を左連結位置P12aに換算することにより、左連結位置P12aを求めることができる。
【0061】
また、右側のリフトロッド108dの右連結位置P12bの検出は、図11に示すように、例えば、右側のリフトロッド108dのストロークを検出するストロークセンサ111を取り付けて、第2制御装置70がストロークセンサ111の検出値を右連結位置P12bに換算することにより、右連結位置P12b求めることができる。なお、左連結位置P12a、右連結位置P12bの算出方法は、一例であり限定されない。
【0062】
図11に示すように、連結装置8は、トラクタ1又は作業装置2の周囲の環境を計測する環境計測装置80を備えていてもよい。環境計測装置80は、風速、風向、気温等を計測する装置である。
第2制御装置70は、少なくとも環境計測装置80に計測された環境情報(風速、風向、気温)に基づいて、連結装置8における左連結位置P12a、右連結位置P12bを変更する。
【0063】
第2制御装置70は、環境の変化に応じて最適な作業を判断するための作業最適モデルを有している。作業最適モデルは、人工知能の深層学習によって構築された学習済みモデルである。作業最適モデルを構築するためには、過去に作業を行ったときの作業データを用いる。作業最適モデルは、作業を行ったときの環境情報(風速、風向、気温)、作業装置2の姿勢(左連結位置P12a、右連結位置12b)、作業装置2の高さ(リフトシリンダ108eのストローク)、作業装置2の種類等の作業データを、人工知能の深層学習を行う様々なコンピュータに入力することによって構築することができる。
【0064】
なお、図11に示すように、作業装置2の高さは、リフトシリンダ108eのストロークを検出するストロークセンサ112を取り付けて、第2制御装置70がストロークセンサ112の検出値を作業装置2の高さに換算することにより、得ることができる。作業装置2の種類は、外部機器、トラクタ1及び作業装置2のいずれかから得ることができる。
トラクタ1において、作業を行う場合、第2制御装置70は、環境計測装置80によって計測した環境情報、作業装置2の姿勢(左連結位置P12a、右連結位置12b)、作業装置2の高さ(リフトシリンダ108eのストローク)、作業装置2の種類を、作業最適モデルに適用する。
【0065】
第2制御装置70は、作業最適モデルが判断した結果、即ち、最適な作業を行うための作業装置2の姿勢、作業装置2の高さを取得すると、作業最適モデルが判断した結果と同じになるように、作業装置2の姿勢、作業装置2の高さを変更する。例えば、作業装置2の種類が肥料散布装置、農薬散布装置、播種散布装置のいずれかである場合、風速及び風向に対応して最適な散布の作業をすることができる。また、作業装置2が刈取装置、拡散装置、集草装置、成形装置である場合、圃場の傾斜に起因して作業装置2が傾いている場合は、作業装置2の傾きを圃場の傾斜によらず最適な傾きに訂正して作業をすることができる。
【0066】
上述した実施形態では、連結装置8は、第2連結部8a2の連結位置P12、P12a、12bを変更することについて説明したが、これに代えて、図4Bに示すように、第1連結部8a1の連結位置P11が変更可能な機構である場合は、連結装置8は、第1連結部8a1の連結位置P11の位置を変更してもよい。即ち、上述した実施形態において、連結位置P12を、連結位置P11に読み替えることで、第2制御装置70によって、連結位置P11の位置を自動走行、走行実績に応じて変更することが可能である。
【0067】
連結装置8は、走行可能な作業車両1に連結する第1連結部8a1と、作業装置2に連結する第2連結部8a2と、第1連結部8a1及び第2連結部8a2のいずれかの連結位置を変更可能なアクチュエータ8bと、アクチュエータ8bを制御する制御装置(第2制御装置)70と、を備えている。これによれば、制御装置(第2制御装置)70によってアクチュエータ8bを制御することによって、第1連結部8a1及び第2連結部8a2のいずれかの連結位置P11、P12を変更することで、作業車両1とは独立して、作業車両1に対する作業装置2の位置を変更することができる。
【0068】
連結装置8は、作業車両1の走行ラインL1に基づいて、連結位置P11、P12を制御する。これによれば、例えば、走行ラインL1に沿って自動運転を行なったり、自動操舵等を行う場合に、作業装置2を当該走行ラインL1に沿うように位置させることが可能である。つまり、作業車両1が走行ラインL1上に一致しているか否かに関わらず、作業装置2を走行ラインL1上に沿わせることができ、走行ラインL1に沿った作業をすることができる。
【0069】
連結装置8は、連結位置P11、P12が走行ラインL1に一致するように、当該連結位置P11、P12を変更する。これによれば、作業装置2を当該走行ラインL1上に一致させることができ、走行ラインL1上に沿った作業をすることができる。
連結装置8は、作業車両1の作業車両位置P10と、作業車両1の走行ラインL1と基づいて、連結位置P11、P12を制御する。また、連結装置8は、作業車両位置P10と走行ラインL1との偏差が閾値以上である場合には、偏差を解消する方向に連結位置P11、P12を変化させる。これによれば、作業車両1の作業車両位置P10が走行ラインL1からずれている場合(偏差が閾値以上)において、少なくとも作業装置2を走行ラインL1に近づけることができる。
【0070】
作業車両1の走行中に、作業装置2の姿勢が閾値以上変化した場合、姿勢が閾値未満となるように、連結位置P11、P12を制御する。これによれば、作業装置2の姿勢を一定に保つことができ、安定した姿勢で作業をすることができる。
連結装置8は、作業車両1の作業車両位置P10及び作業装置2の装置位置P20を含む走行実績に基づいて、連結位置P11、P12を制御する。これによれば、過去の走行実績である作業車両1の作業車両位置P10及び作業装置2の装置位置P20と、現在の作業車両位置P10及び作業装置2の装置位置P20とを比較しながら、作業車両1と作業装置2との位置(連結位置P11、P12)を変更することができ、同一圃場における作業の精度を向上させることができる。
【0071】
連結装置8は、走行実績に基づいて装置位置P20の軌道J2を演算し、軌道J2が圃場に対して適正な場合には軌道J2に一致するように作業車両1の走行時の連結位置P11、P12を変更し、且つ、軌道J2が圃場に対して不適切な場合に作業車両1の走行時の連結位置P11、P12を軌道J2とは異なるように変更する。これによれば、作業車両1によって作業装置2を牽引しながら走行を行う場合において、過去の走行実績で良好に走行が行われた場合(適正に走行が行われた場合)は、過去の走行実績と同じように走行を行うことができ、過去の走行実績で良好に走行が行われなった場合(不適正に走行が行われた場合)は、過去の走行実績の走行に比べて良い走行に補正しながら走行をすることができる。
【0072】
連結装置8は、作業車両1又は作業装置2の周囲の環境に基づいて、連結位置P11、P12を制御する。これによれば、例えば、作業装置2が散布系の作業装置2である場合、環境に適した散布作業をすることができる。
連結装置8は、第1連結部8a1の連結位置P11、P12に基づいて、作業車両1の作業車両位置P10を推定する。これによれば、連結装置8が作業車両1から作業車両位置P10を取得しなくても、当該作業車両位置P10を得ることができ、例えば、推定した作業車両位置P10を考慮して連結位置P11、P12の調整をすることができる。
【0073】
連結装置8は、第2連結部8a2の連結位置P11、P12に基づいて、作業装置2の装置位置P20を推定する。これによれば、連結装置8が作業装置2から装置位置P20を取得しなくても装置位置P20を得ることができ、例えば、把握した装置位置P20を考慮して連結位置P11、P12の調整をすることができる。
連結装置8は、全地球測位システムを有する。これによれば、作業車両1及び作業装置2とは独立して、当該連結装置8の位置を把握することができる。
【0074】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 :作業車両(トラクタ)
2 :作業装置
8 :連結装置
8a1 :第1連結部
8a2 :第2連結部
8b :アクチュエータ
20 :装置位置
J1 :軌道
J2 :軌道
J3 :軌道
L1 :走行ライン
P10 :作業車両位置
P11 :連結位置
P12 :連結位置
P12a :連結位置
P12b :連結位置
P20 :装置位置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12