(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】磁気検出装置および回転検出装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
G01D5/245 110B
G01D5/245 W
(21)【出願番号】P 2020162330
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(72)【発明者】
【氏名】江川 広祐
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-82916(JP,A)
【文献】特開2019-200100(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002869(WO,A1)
【文献】特開2010-259290(JP,A)
【文献】特開2004-132506(JP,A)
【文献】特開2004-64850(JP,A)
【文献】特開昭61-137003(JP,A)
【文献】実開昭52-108971(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01B 7/00-7/34
G01R 33/02
H02K 11/00-11/40、
29/00-29/14
H02P 6/00-6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の回転に伴って前記回転軸の周囲を移動し、かつ前記回転軸の軸方向における一方向および他方向の磁界をそれぞれ形成する少なくとも2つの磁界形成部を有し、前記回転軸の回転を検出する回転検出装置において、前記各磁界を検出する磁気検出装置であって、
少なくとも3つの磁気センサと、
前記3つの磁気センサを載置する載置面を有する基板とを備え、
前記各磁気センサは、
大バルクハウゼン効果を生じる磁性線材と、
前記磁性線材の外周側に設けられたコイルと、
外形が柱状に形成され前記コイルの電線を巻回する電線巻回部、および前記電線巻回部内をその軸方向に伸長する空間であり前記磁性線材を配置する磁性線材配置部を有するボビンとを備え、
前記3つの磁気センサはそれぞれの磁性線材の伸長方向が前記載置面と平行となるように前記載置面上に配置され、前記3つの磁気センサおよび前記基板は前記各磁気センサの磁性線材の伸長方向が前記回転軸の軸方向と平行となるように前記2つの磁界形成部の軌道の外周側に配置され、前記3つの磁気センサのそれぞれにおいて、前記ボビンにおける前記磁性線材配置部の位置は、前記3つの磁気センサのそれぞれの磁性線材と前記回転軸との距離がそれぞれ互いに等しくなるように設定され
、前記3つの磁気センサのうち中間に位置する磁気センサのボビンの磁性線材配置部と前記載置面との距離は、前記3つの磁気センサのうち両端に位置する各磁気センサのボビンの磁性線材配置部と前記載置面との距離よりも小さいことを特徴とする磁気検出装置。
【請求項2】
前記各磁気センサのボビンにおいて、前記磁性線材配置部は、前記電線巻回部の周面から前記電線巻回部の内部に向かって形成され、前記電線巻回部をその軸方向に伸長する溝であり、前記3つの磁気センサのうち中間に位置する磁気センサのボビンの電線巻回部に形成された前記溝は、前記3つの磁気センサのうち両端に位置する各磁気センサのボビンの電線巻回部に形成された前記溝よりも深いことを特徴とする請求項
1に記載の磁気検出装置。
【請求項3】
前記各磁気センサのコイルの横断面の形状は、長軸が前記載置面と直交する方向に伸長した略楕円形であることを特徴とする請求項1
または2に記載の磁気検出装置。
【請求項4】
前記各磁気センサのボビンの電線巻回部の横断面の形状は、長軸が前記載置面と直交する方向に伸長した略楕円形であることを特徴とする請求項1ないし
3のいずれかに記載の磁気検出装置。
【請求項5】
回転軸の回転を検出する回転検出装置であって、
前記回転軸の回転に伴って前記回転軸の周囲を移動し、かつ前記回転軸の軸方向における一方向および他方向の磁界をそれぞれ形成する少なくとも2つの磁界形成部と、
前記回転軸の回転に伴って移動せず、前記2つの磁界形成部により形成された磁界を検出する磁気検出部とを備え、
前記磁気検出部は、
少なくとも3つの磁気センサと、
前記3つの磁気センサを載置する載置面を有する基板とを備え、
前記各磁気センサは、
大バルクハウゼン効果を生じる磁性線材と、
前記磁性線材の外周側に設けられたコイルと、
外形が柱状に形成され前記コイルの電線を巻回する電線巻回部、および前記電線巻回部内をその軸方向に伸長する空間であり前記磁性線材を配置する磁性線材配置部を有するボビンとを備え、
前記3つの磁気センサはそれぞれの磁性線材の伸長方向が前記載置面と平行となるように前記載置面上に配置され、前記磁気検出部は前記各磁気センサの磁性線材の伸長方向が前記回転軸の軸方向と平行となるように前記2つの磁界形成部の軌道の外周側に配置され、前記各磁気センサにおいて、前記ボビンにおける前記磁性線材配置部の位置は、前記3つの磁気センサのそれぞれの磁性線材と前記回転軸との距離がそれぞれ互いに等しくなるように設定され
、前記3つの磁気センサのうち中間に位置する磁気センサのボビンの磁性線材配置部と前記載置面との距離は、前記3つの磁気センサのうち両端に位置する各磁気センサのボビンの磁性線材配置部と前記載置面との距離よりも小さいことを特徴とする回転検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を利用して電動モータ等の回転装置の回転軸の回転を検出する磁気検出装置および回転検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電動モータ等の回転装置の回転軸の回転を検出する装置として、大バルクハウゼン効果を生じる磁性線材を利用した回転検出装置が知られている。下記の特許文献1には、このような回転検出装置の一例が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された回転検出装置は、同文献の
図1および
図2に示されているように、4つの磁界形成部と、3つの磁気センサとを備えている。
【0004】
各磁界形成部として永久磁石が用いられている。4つの磁界形成部は回転軸の周囲に90度間隔で配置されている。また、4つの磁界形成部は、隣り合う2つの磁界形成部の磁極の位置が互いに反対となるように配置されている。すなわち、回転軸の周囲には、回転軸の軸方向における一方向の磁界を形成する磁界形成部と、回転軸の軸方向における他方向の磁界を形成する磁界形成部とが90度間隔で交互に配置されている。また、各磁界形成部は、回転軸の外周部に固定されており、回転軸の回転に伴って回転軸の周囲を移動する。
【0005】
一方、各磁気センサは、大バルクハウゼン効果を生じる磁性線材の周囲にコイルを設けることにより形成されている。具体的には、各磁気センサは円柱状のボビンを有している。ボビンの内部には、ボビンの軸方向に伸長した空間が形成され、その空間内に磁性線材が収容されている。また、ボビンの中間部の外周には、コイルを形成する電線が巻回されている。3つの磁気センサは4つの磁界形成部の軌道の外周側に120度間隔で配置されている。また、各磁気センサは、磁性線材の伸長方向が回転軸の軸方向と平行となるように配置されている。また、各磁気センサは、回転軸の回転に伴って移動しないように回転検出装置のケーシング等に固定されている。
【0006】
回転軸が回転すると、4つの磁界形成部が、回転軸の周囲を移動し、3つの磁気センサの近傍を順次通過する。ここで、3つの磁気センサのうちの1つの磁気センサに着目すると、回転軸が回転したとき、回転軸の軸方向における一方向の磁界を形成する磁界形成部と、回転軸の軸方向における他方向の磁界を形成する磁界形成部とが当該1つの磁気センサの近傍を交互に通過する。その結果、回転軸の回転に伴い、当該1つの磁気センサの磁性線材に作用する磁界の方向が変化する。磁性線材は、それに作用する磁界の方向が変化すると、その磁化方向が急激に反転する性質、すなわち、大バルクハウゼン効果を生じる性質を有している。また、磁性線材の磁化方向が急激に反転すると、電磁誘導によりコイルにパルス状の電流が流れる。したがって、回転軸が回転したとき、当該1つの磁気センサのコイルからパルス信号が出力される。同様の原理により、回転軸が回転したとき、他の2つの磁気センサのコイルからもパルス信号が出力される。
【0007】
4つの磁界形成部が90度間隔で配置され、3つの磁気センサが120度間隔で配置されているので、2つ以上の磁界形成部が2つ以上の磁気センサの近傍を同時に通過することがない。したがって、回転軸が回転している間、3つの磁気センサから、それぞれ異なるタイミングでパルス信号が出力される。これらのパルス信号に基づき、回転軸の回転の検出、例えば、回転軸の回転数または回転角度の検出を行うことができる。
【0008】
また、大バルクハウゼン効果を生じる磁性線材を利用した回転検出装置によれば、大バルクハウゼン効果および電磁誘導により、回転軸の回転を検出するためのパルス信号を形成することができる。したがって、回転軸の検出を無電源で行うことができる。
【0009】
なお、大バルクハウゼン効果を生じる磁性線材を利用した回転検出装置により高精度な回転検出を実現するためには、磁気センサの個数は3つ以上であることが望ましい(上記特許文献1を参照)。一方、磁界形成部の個数は4つに限らず、2つでもよい。4つの磁界形成部および3つの磁気センサを用いることにより回転軸の回転を30度単位で高精度に検出することができ、また、2つの磁界形成部および3つの磁気センサを用いることにより回転軸の回転を60度単位で高精度に検出することができる。なお、磁界形成部の個数を6つ以上とすることも可能である。ただし、この場合には、2つ以上の磁界形成部が2つ以上の磁気センサの近傍を同時に通過することがないように、磁界形成部間の間隔および磁気センサ間の間隔を調整する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したような回転検出装置を電動モータ等の回転装置に組み付ける場合、各磁界形成部は、回転軸において回転装置の本体から突出した部分の外周部に取り付けられる。また、各磁気センサは、回転装置の本体に支持部材等を介して取り付けられ、各磁界形成部の軌道の外周側に配置される。
【0012】
ところで、回転装置が小型である場合、磁界形成部および磁気センサを配置するスペースが小さくなるため、回転検出装置を回転装置に組み付けるに当たり様々な工夫が必要となる。例えば個々の磁界形成部および個々の磁気センサのサイズを小さくすることが望ましい。また、例えば各磁界形成部を構成する磁石を回転軸の外周部に直接取り付けるなどして磁界形成部の軌道の直径を小さくすることが望ましい。また、各磁気センサを磁界形成部の軌道に近づけて配置することが望ましい。また、例えば磁気センサを30度間隔で配置するなどして、磁気センサ間の間隔を小さくすることが望ましい。さらに、回転検出装置が有する3つの磁気センサを1枚の基板上に集約して実装することにより、各磁気センサの支持構造をコンパクトにすることが望ましい。
【0013】
ここで、3つの磁気センサを1枚の基板上に実装することとした場合、次のような問題がある。
【0014】
各磁界形成部は、回転軸の外周部に固定され、回転軸の回転に伴い、回転軸の軸心を中心とした円軌道に沿って移動する。また、3つの磁気センサは、磁性線材と回転軸の軸心との距離がそれぞれ互いに等しくなるように、磁界形成部の円軌道の外周側に配置されている。この構造により、磁界形成部の円軌道と各磁気センサの磁性線材との距離が等しくなるので、各磁界形成部が形成する磁界が各磁気センサの磁性線材に同等に作用するようになる。その結果、磁界形成部が磁気センサの近傍を通過したときに磁気センサのコイルからパルス信号が出力されるタイミングが磁気センサごとに揃う。すなわち、4つの磁界形成部が回転軸の周囲に90度間隔で配置され、3つの磁気センサが4つの磁界形成部の軌道の外周側に120度間隔で配置されている上記回転検出装置の場合には、回転軸が一方向に一定の速度で回転したときに、3つの磁気センサから出力されるパルス信号のタイミングが等しい間隔となる。また、各磁界形成部が形成する磁界が各磁気センサの磁性線材に同等に作用するようになる結果、磁気センサのコイルから出力されるパルス信号の波高が磁気センサごとに揃う。このように、磁界形成部が磁気センサの近傍を通過したときに磁気センサのコイルからパルス信号が出力されるタイミングが磁気センサごとに揃い、かつ磁気センサのコイルから出力されるパルス信号の波高が磁気センサごとに揃うことにより、これらパルス信号を用いて回転軸の回転を認識するための信号処理の精度を高めることができる。
【0015】
ところが、3つの磁気センサを1枚の基板上に実装すべく、3つの磁気センサを基板の平らな表面に並べて配置した場合、3つの磁気センサが有する3つの磁性線材が同一平面上に配置されることとなり、その結果、3つの磁気センサにおいて、磁性線材と回転軸の軸心との距離をそれぞれ互いに等しくすることができなくなるという問題が生じる。
【0016】
例えば、3つの磁気センサを1枚の基板上に実装した結果、3つの磁気センサのうち、1つの磁気センサの磁性線材と回転軸の軸心との距離が、他の1つの磁気センサの磁性線材と回転軸の軸心との距離と異なることとなった場合、磁界形成部が磁気センサの近傍を通過したときに磁気センサのコイルからパルス信号が出力されるタイミングが、これら2つの磁気センサ間で異なり、または、磁気センサのコイルから出力されるパルス信号の波高が、これら2つの磁気センサ間で異なってしまう。このような事態が生じた場合には、上記信号処理の精度が低下するおそれがある。
【0017】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、少なくとも3つの磁気センサを1枚の基板上に集約して実装した場合でも、これら磁気センサにおいて磁性線材と回転軸の軸心との距離をそれぞれ互いに等しくすることができ、回転軸の回転を認識するための信号処理の精度を高めることができる磁気検出装置および回転検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の磁気検出装置は、回転軸の回転に伴って前記回転軸の周囲を移動し、かつ前記回転軸の軸方向における一方向および他方向の磁界をそれぞれ形成する少なくとも2つの磁界形成部を有し、前記回転軸の回転を検出する回転検出装置において、前記各磁界を検出する磁気検出装置であって、少なくとも3つの磁気センサと、前記3つの磁気センサを載置する載置面を有する基板とを備え、前記各磁気センサは、大バルクハウゼン効果を生じる磁性線材と、前記磁性線材の外周側に設けられたコイルと、外形が柱状に形成され前記コイルの電線を巻回する電線巻回部、および前記電線巻回部内をその軸方向に伸長する空間であり前記磁性線材を配置する磁性線材配置部を有するボビンとを備え、前記3つの磁気センサはそれぞれの磁性線材の伸長方向が前記載置面と平行となるように前記載置面上に配置され、前記3つの磁気センサおよび前記基板は前記各磁気センサの磁性線材の伸長方向が前記回転軸の軸方向と平行となるように前記2つの磁界形成部の軌道の外周側に配置され、前記3つの磁気センサのそれぞれにおいて、前記ボビンにおける前記磁性線材配置部の位置は、前記3つの磁気センサのそれぞれの磁性線材と前記回転軸との距離がそれぞれ互いに等しくなるように設定されていることを特徴とする。
【0019】
また、上記本発明の磁気検出装置において、前記3つの磁気センサのうち中間に位置する磁気センサのボビンの磁性線材配置部と前記載置面との距離は、前記3つの磁気センサのうち両端に位置する各磁気センサのボビンの磁性線材配置部と前記載置面との距離よりも小さい。
【0020】
また、上記本発明の磁気検出装置において、前記各磁気センサのボビンにおいて、前記磁性線材配置部は、前記電線巻回部の周面から前記電線巻回部の内部に向かって形成され、前記電線巻回部をその軸方向に伸長する溝であり、前記3つの磁気センサのうち中間に位置する磁気センサのボビンの電線巻回部に形成された前記溝は、前記3つの磁気センサのうち両端に位置する各磁気センサのボビンの電線巻回部に形成された前記溝よりも深い構成としてもよい。
【0021】
また、上記本発明の磁気検出装置において、前記各磁気センサのコイルの横断面の形状を、長軸が前記載置面と直交する方向に伸長した略楕円形としてもよい。
【0022】
また、上記本発明の磁気検出装置において、前記各磁気センサのボビンの電線巻回部の横断面の形状を、長軸が前記載置面と直交する方向に伸長した略楕円形としてもよい。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の回転検出装置は、回転軸の回転を検出する回転検出装置であって、前記回転軸の回転に伴って前記回転軸の周囲を移動し、かつ前記回転軸の軸方向における一方向および他方向の磁界をそれぞれ形成する少なくとも2つの磁界形成部と、前記回転軸の回転に伴って移動せず、前記2つの磁界形成部により形成された磁界を検出する磁気検出部とを備え、前記磁気検出部は、少なくとも3つの磁気センサと、前記3つの磁気センサを載置する載置面を有する基板とを備え、前記各磁気センサは、大バルクハウゼン効果を生じる磁性線材と、前記磁性線材の外周側に設けられたコイルと、外形が柱状に形成され前記コイルの電線を巻回する電線巻回部、および前記電線巻回部内をその軸方向に伸長する空間であり前記磁性線材を配置する磁性線材配置部を有するボビンとを備え、前記3つの磁気センサはそれぞれの磁性線材の伸長方向が前記載置面と平行となるように前記載置面上に配置され、前記磁気検出部は前記各磁気センサの磁性線材の伸長方向が前記回転軸の軸方向と平行となるように前記2つの磁界形成部の軌道の外周側に配置され、前記各磁気センサにおいて、前記ボビンの電線巻回部における前記磁性線材配置部の位置は、前記3つの磁気センサのそれぞれの磁性線材と前記回転軸との距離がそれぞれ互いに等しくなるように設定されていることを特徴とする。また、上記本発明の回転検出装置において、前記3つの磁気センサのうち中間に位置する磁気センサのボビンの磁性線材配置部と前記載置面との距離は、前記3つの磁気センサのうち両端に位置する各磁気センサのボビンの磁性線材配置部と前記載置面との距離よりも小さい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、少なくとも3つの磁気センサを1枚の基板上に集約して実装した場合でも、これら磁気センサにおいて磁性線材と回転軸の軸心との距離をそれぞれ互いに等しくすることができ、回転軸の回転を認識するための信号処理の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ハウジングを取り外した状態の本発明の実施形態の回転検出装置および電動モータを示す斜視図である。
【
図2】ハウジングを取り付けた状態の本発明の実施形態の回転検出装置および電動モータを示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態の回転検出装置におけるホルダを示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態における磁気検出部のホルダへの取付構造を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施形態における磁界形成部の配置を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態における磁気検出部を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施形態における磁気検出部の正面図である。
【
図8】本発明の実施形態における磁気検出部の平面図である。
【
図9】
図7中の切断線IX-IXに沿って切断した磁気検出部の断面を
図7中の上方から見た状態を示す断面図である。
【
図10】本発明の実施形態における磁気検出部の背面図である。
【
図11】
図1中の切断線XI-XIに沿って切断した回転軸および磁気検出部の断面等を
図1中の上方から見た状態を示す断面図である。
【
図12】
図2中の切断線XII-XIIに沿って切断した回転検出装置およびハウジングの断面を
図2中の上方から見た状態を示す断面図である。
【
図13】本発明の実施形態の回転検出装置の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(回転検出装置)
図1は、ハウジングを取り外した状態の本発明の実施形態の回転検出装置11、および回転検出装置11が組み付けられた電動モータ1を示している。電動モータ1は回転装置の具体例である。電動モータ1は、
図1に示すように、本体2、および本体2に回転可能に設けられた回転軸3を備えている。電動モータ1の稼働時に回転軸3は本体2に対して回転する。また、回転軸3の一端側は本体2から突出している。以下、本体2から突出した回転軸3の一端側部分を突出部4という。
【0027】
なお、実施形態の説明において、上(Ud)、下(Dd)、前(Fd)、後(Bd)、左(Ld)、右(Rd)の方向を述べる際には、原則として、
図1等において右下に描いた矢印に従う。また、実施形態の説明では、その全体を通して、
図1に示すように、回転軸3の一端側が上を向くように電動モータ1が配置されていることとする。
【0028】
回転検出装置11は、大バルクハウゼン効果を生じる磁性線材を利用した磁気式回転検出装置である。回転検出装置11は、回転軸3の突出部4の周囲に設けられ、ホルダ71により、電動モータ1の本体2に支持されている。
【0029】
回転検出装置11は、電動モータ1の回転軸3の回転を検出する。具体的には、電動モータ1および回転検出装置11の電源が入っているとき、回転検出装置11は回転軸3の回転検出を行い、検出結果を例えば電動モータ1の駆動制御回路に出力する。電動モータ1の駆動制御回路は、回転検出装置11から出力された検出結果に基づいて電動モータの駆動を制御する。
【0030】
また、回転検出装置11は無電源で動作することができる(上記特許文献1を参照)。電動モータ1および回転検出装置11の電源が切れている間に、回転軸3に外力が加わって回転軸3が回転したときには、回転検出装置11はその回転を検出し、検出結果を記憶する。その後、電動モータ1および回転検出装置11の電源が入ったときに、回転検出装置11は、電動モータ1および回転検出装置11の電源が切れている間に記憶した検出結果を電動モータ1の駆動制御回路に出力する。これにより、電動モータ1の駆動制御回路は、電動モータ1の駆動制御の再開時に、電動モータ1および回転検出装置11の電源が切れている間における回転軸3の回転量を認識することができる。
【0031】
図2は、ハウジングを取り付けた状態の回転検出装置11、および電動モータ1を示している。回転検出装置11はハウジング83を備えている。ハウジング83は、
図2に示すように、回転軸3の突出部4の前方に位置する前壁板84、突出部4の後方に位置する後壁板85(
図12を参照)、突出部4の左方に位置する左壁板86、突出部4の右方に位置する右壁板87(
図12を参照)、および突出部4の上方に位置する上壁板88を有している。ハウジング83は、前壁板84、後壁板85、左壁板86、右壁板87および上壁板88により、上側が閉塞された四角筒状に形成され、回転軸3の突出部4、リング磁石25、26、および磁気検出部30の周囲を覆っている。また、ハウジング83はホルダ71に固定されている。また、前壁板84および後壁板85のそれぞれの左右方向の寸法は例えば20mm程度であり、左壁板86および右壁板87のそれぞれの前後方向の寸法は例えば15mm程度である。
【0032】
図3はホルダ71を示している。ホルダ71は、
図3に示すように、電動モータ1の本体2に固定されたロワーベース72、ロワーベース72の上方に設けられたアッパーベース75、およびロワーベース72の上方にアッパーベース75を支持するための壁部77、78を備えている。ロワーベース72は概ね直方体状に形成され、上方視形状が長方形のベース面73を有している。また、ロワーベース72には、回転軸3の突出部4を通すための軸挿通穴74が設けられ、軸挿通穴74はベース面73内に開口している。また、アッパーベース75も概ね直方体状に形成され、回転軸3の突出部4を通すための軸挿通穴82が設けられている。回転軸3の突出部4は、ロワーベース72の軸挿通穴74およびアッパーベース75の軸挿通穴82を通ることにより、ホルダ71を貫通して上方に伸長している。また、ロワーベース72の軸挿通穴74およびアッパーベース75の軸挿通穴82のそれぞれの直径は回転軸3の突出部4の直径よりも大きく設定されているため、ホルダ71は回転軸3の回転を妨げない。また、ロワーベース72のベース面73からアッパーベース75の上面76までの距離は例えばおよそ20mm程度である。
【0033】
図4(A)はホルダ71を右方から見た状態を示している。ホルダ71には、
図4(A)に示すように、回転検出装置11の磁気検出部30を取り付けるための2つの取付部79、80が設けられている。一方の取付部79はロワーベース72の右後部に設けられ、他方の取付部80はアッパーベース75の右前部に設けられている。取付部79、80には、ねじ穴81がそれぞれ設けられている。
図4(B)は、
図4(A)に示したホルダ71に磁気検出部30が取り付けられた状態を示している。
図4(B)に示すように、磁気検出部30は、ねじ56を用いてホルダ71の取付部79、80に取り付けられる。
【0034】
回転検出装置11は、回転軸3の回転に伴って回転軸3の周囲を移動し、かつ回転軸3の軸方向における一方向および他方向の磁界をそれぞれ形成する4つの磁界形成部と、回転軸3の回転に伴って移動せず、4つの磁界形成部により形成された磁界を検出する磁気検出部30とを備えている。
図1に示すように、4つの磁界形成部は、回転軸3の突出部4の外周部に取り付けられた2つのリング磁石25、26により形成されている。また、磁気検出部30は、3つの磁気センサ31~33および基板45を備え、ホルダ71の取付部79、80に取り付けられている。
【0035】
(磁界形成部)
図5は回転検出装置11の4つの磁界形成部21~24を示している。回転軸3の突出部4の外周部には、
図5に示すように、2つのリング磁石25、26が取り付けられている。リング磁石25は突出部4の上側部分(回転軸3の軸方向一側部分)に取り付けられ、リング磁石26は突出部4の下側部分(回転軸3の軸方向他側部分)に取り付けられている。各リング磁石25、26は環状に形成された永久磁石である。各リング磁石25、26は例えば接着剤等により突出部4の外周面に固定されている。各リング磁石25、26は回転軸3と共に回転する。すなわち、各リング磁石25、26は、回転軸3が回転したとき、回転軸3の軸心Xを中心とした円を描くように回転軸3の周囲を移動する。
【0036】
各リング磁石25、26は、その外周側に複数の磁極が配置されるように着磁されている。具体的には、リング磁石25の外周側には、4つの磁極25A~25Dが90度間隔で配置されている。また、リング磁石26の外周側には、4つの磁極26A~26Dが90度間隔で配置されている。また、磁極25Aと磁極26Aとは周方向における位置が互いに一致しており、上下方向(回転軸3の軸方向)に隣り合うように並んでいる。同様に、磁極25Bと磁極26Bとの周方向における位置は互いに一致しており、磁極25Cと磁極26Cとの周方向における位置は互いに一致しており、磁極25Dと磁極26Dとの周方向における位置は互いに一致している。
【0037】
また、リング磁石25において、磁極25A~25Dは、周方向に隣り合う2つの磁極が互いに異なるように配置されている。また、リング磁石26において、磁極26A~26Dは、周方向に隣り合う2つの磁極が互いに異なるように配置されている。また、2つのリング磁石25、26は、上下方向に隣り合う2つの磁極が互いに異なるように配置されている。例えば、4つの磁極25A、25C、26B、26DはそれぞれN極である。また、4つの磁極25B、25D、26A、26CはそれぞれS極である。
【0038】
4つの磁界形成部21~24のうち、第1の磁界形成部21は磁極25Aおよび磁極26Aにより形成されている。第1の磁界形成部21は下方向の磁界(回転軸3の軸方向における一方向の磁界)を形成する。第2の磁界形成部22は磁極25Bおよび磁極26Bにより形成されている。第2の磁界形成部22は上方向の磁界(回転軸3の軸方向における他方向の磁界)を形成する。第3の磁界形成部23は磁極25Cおよび磁極26Cにより形成されている。第3の磁界形成部23は下方向の磁界(回転軸3の軸方向における一方向の磁界)を形成する。第4の磁界形成部24は磁極25Dおよび磁極26Dにより形成されている。第4の磁界形成部24は上方向の磁界(回転軸3の軸方向における他方向の磁界)を形成する。このように、4つの磁界形成部21~24は、リング磁石25の磁極25A~25Dおよびリング磁石26の磁極26A~26Dにより回転軸3の突出部4の外周部に形成され、突出部4の外周部に90度間隔で配置されている。また、これら磁界形成部21~24は、周方向に隣り合う2つの磁界形成部が形成する磁界の方向が互いに異なるように(互いに反対となるように)配置されている。また、これら磁界形成部21~24は、回転軸3が回転したとき、回転軸3の軸心Xを中心とした円を描くように回転軸3の周囲を移動する。
【0039】
(磁気検出部)
図6(A)は磁気検出部30を示している。
図6(B)は磁気検出部30を分解した状態を示している。
図7は磁気検出部30をその正面から見た状態を示している。
図8は
図7中の磁気検出部30を
図7中の上方から見た状態を示している。
図9は
図7中の切断線IX-IXに沿って切断した磁気検出部30の断面を
図7中の上方から見た状態を示している。
図10は、磁気検出部30の背面を示している。
図11は、
図1中の切断線XI-XIに沿って切断した回転軸3および磁気検出部30の断面等を示している。
【0040】
磁気検出部30は、上述したように、3つの磁気センサ31~33および基板45を備えている。各磁気センサ31~33は、
図7に示すように、磁性線材34、コイル35、ボビン36、第1の接続部材41および第2の接続部材42を備えている。なお、磁気検出部30は特許請求の範囲に記載された回転検出装置の磁気検出部の具体例である共に、磁気検出装置の具体例である。
【0041】
磁性線材34は大バルクハウゼン素子である。具体的には、磁性線材34は、大バルクハウゼン効果を生じる線状の強磁性体であり、一軸異方性を有する。磁性線材34は複合磁気ワイヤと呼ばれるものである。磁性線材34は、例えば鉄およびコバルトを含む半硬質磁性線材に捻りを加えることにより形成することができる。磁性線材34の長さは例えば10mm~18mm程度である。
【0042】
コイル35は、磁性線材34の外周側に設けられている。コイル35は、例えばエナメル線等の電線をボビン36に巻回することにより形成されている。
【0043】
ボビン36は、例えば樹脂材料により全体的に見て円柱状に形成されている。ボビン36は、
図9に示すように、コイル35の電線を巻回する電線巻回部37、および磁性線材34を配置する磁性線材配置部38を有している。
【0044】
電線巻回部37はボビン36の軸方向中間部に形成されている。電線巻回部37は円柱状の外形を有している。コイル35の電線は電線巻回部37の外周に巻回されている。なお、
図9、
図11および
図12においてコイル35の電線の具体的な図示を省略している。
【0045】
磁性線材配置部38は電線巻回部37内をその軸方向に伸長する空間である。具体的には、磁性線材配置部38は、電線巻回部37の周面から電線巻回部37の内部に向かって形成され、電線巻回部37をその軸方向に伸長する溝である。磁性線材34は、
図9に示すように、磁性線材配置部38内に配置されている。具体的には、磁性線材34は、磁性線材配置部38である溝の底部(例えば溝の底面上)に配置されている。磁性線材34は磁性線材配置部38内に配置されることによりコイル35の内側に位置している。また、
図7に示すように、磁性線材配置部38の上端は電線巻回部37の上端を越えてボビン36の上端側へ伸長し、磁性線材配置部38の下端は電線巻回部37の下端を越えてボビン36の下端側へ伸長している。また、磁性線材34の上端はコイル35の上端を越えてボビン36の上端側へ伸長し、磁性線材34の下端はコイル35の下端を越えてボビン36の下端側へ伸長している。
【0046】
第1の接続部材41および第2の接続部材42はそれぞれ、コイル35の電線の端部を止める支柱として機能すると共に、基板45に形成された電気回路51(
図10を参照)にコイル35を電気的に接続する端子として機能する。第1の接続部材41および第2の接続部材42はそれぞれ、例えば金属等の導電材料により棒状に形成されている。
図7に示すように、第1の接続部材41は、ボビン36の上端側部分に設けられ、第2の接続部材42は、ボビン36の下端側部分に設けられている。また、
図8に示すように、第1の接続部材41の一端側部分41A(
図8において下端側部分)には、コイル35の電線の一端部が巻き付けられて止められている。また、第2の接続部材42の一端側部分42Aには、コイル35の電線の他端部が巻き付けられて止められている。また、第1の接続部材41の他端側部分41B(
図8において上端側部分)は、基板45に形成された電気回路51に電気的に接続されている。第2の接続部材42の他端側部分42Bも電気回路51に電気的に接続されている。
【0047】
基板45は、例えばエポキシガラスにより形成されたプリント基板である。基板45は、例えば、長辺が20mm程度であり、短辺が10.5mm程度である長方形の平板状に形成されている。また、基板45の前面は、
図6(B)に示すように、3つの磁気センサ31~33を載置する載置面46となっている。また、基板45の2つの角部には、磁気検出部30をホルダ71の取付部79、80に取り付けるためのねじ56を通すためのねじ挿通穴47がそれぞれ形成されている。また、基板45には、3つの磁気センサ31~33がそれぞれ有する第1の接続部材41および第2の接続部材42の他端側部分41B、42Bを通すための6つの接続部材挿通穴48が形成されている。
【0048】
また、基板45の背面には、
図10に示すように、電気回路51が形成されている。電気回路51は、3つの磁気センサ31~33のコイル35からそれぞれ出力された検出信号に基づいて回転軸3の回転を認識するための信号処理を行うIC(集積回路)52と、3つの磁気センサ31~33がそれぞれ有する第1の接続部材41および第2の接続部材42の他端側部分41B、42Bが電気的に接続される6つのランド53と、各ランド53とIC52とを電気的に接続するための配線54を有している。6つのランド53は6つの接続部材挿通穴48に対応する位置に配置されている。各接続部材挿通穴48はランド53の中央に位置している。各磁気センサ31~33の第1の接続部材41および第2の接続部材42の他端側部分41B、42Bは、基板45の載置面46から接続部材挿通穴48を通って基板45の背面に至り、基板45の背面に形成されたランド53に例えば半田付けにより接続されている。なお、IC52は、
図4および
図10においては図示しているが、その他の図においては図示を省略している。
【0049】
3つの磁気センサ31~33は、
図6(A)に示すように、それぞれの磁性線材34の伸長方向が基板45の載置面46と平行となるように載置面46上に配置されている。また、3つの磁気センサ31~33は、磁性線材34の伸長方向がそれぞれ互いに平行となるように、載置面46上に並べられている。また、3つの磁気センサ31~33は、磁気検出部30を正面から見たとき、3つの磁性線材34のそれぞれの間隔が等しくなるように載置面46上に配置されている。また、3つの磁気センサ31~33において、載置面46上で隣り合う2つの磁気センサの間隔は極めて小さい。また、3つの磁気センサ31~33のボビン36は、基板45の平らな載置面46上にそれぞれ置かれており、3つのボビン36の電線巻回部37の軸線(電線巻回部37の中央を軸方向に貫く直線)は載置面46と平行な同一平面内に位置している。
【0050】
また、
図1に示すように、磁気検出部30は、その向きが、3つの磁気センサ31~33が載置された基板45の載置面46が回転軸3の突出部4と対向し、かつ各磁気センサ31~33の磁性線材34の伸長方向が回転軸3の軸方向と平行となるように設定されている。また、磁気検出部30は、
図11に示すように、回転軸3の突出部4の外周側かつ4つの磁界形成部21~24の軌道Tの外周側に配置されている。また、磁気検出部30は、
図4(B)に示すように、基板45の2つの角部が、ホルダ71の取付部79、80にねじ56を用いて取り付けられることによってホルダ71に固定されている。
【0051】
このように、本発明の実施形態によれば、3つの磁気センサ31~33を1枚の基板に集約して実装することにより、回転検出装置11を小型化することができる。特に、3つの磁気センサ31~33を、それぞれの磁性線材34の伸長方向が基板45の載置面46と平行となり、かつそれぞれの磁性線材34の伸長方向がそれぞれ互いに平行となるように1枚の基板45の載置面46上に載置し、その基板45を、3つの磁気センサ31~33の磁性線材34の伸長方向が回転軸3の軸方向と平行となるようにホルダ71に取り付ける構成としたから、回転軸3の周囲の小径の柱状の領域内に回転検出装置11を納めることができる。したがって、本実施形態によれば、径寸法が小さい本体2を有する小型の電動モータ1に組付可能な回転検出装置11を実現することができる。
【0052】
(磁性線材配置部の位置およびコイルの形状)
図11に示すように、3つの磁気センサ31~33のそれぞれにおいて、ボビン36における磁性線材配置部38の位置は、3つの磁気センサ31~33が有する3つの磁性線材34と回転軸3の軸心Xとの距離がそれぞれ互いに等しくなり、かつ、3つの磁性線材34が回転軸3の軸心Xの周囲に所定の間隔で配置されるように設定されている。
【0053】
具体的には、3つの磁気センサ31~33のうち、中間に位置する磁気センサ32のボビン36の磁性線材配置部38と基板45の載置面46との距離bは、3つの磁気センサ31~33のうち、両端に位置する2つの磁気センサ31、33のボビン36の磁性線材配置部38と基板45の載置面46との距離a、cのいずれよりも小さい。より具体的に説明すると、中間に位置する磁気センサ32のボビン36に磁性線材配置部38として形成された溝は、両端に位置する2つの磁気センサ31、33のボビン36に磁性線材配置部38として形成された溝のいずれよりも深い。その結果、中間に位置する磁気センサ32のボビン36に磁性線材配置部38として形成された溝の底面と載置面46との距離bは、両端に位置する2つの磁気センサ31、33のボビン36に磁性線材配置部38として形成された溝の底面と載置面46との距離a、cのいずれよりも小さい。
【0054】
また、両端に位置する2つの磁気センサ31、33のボビン36に磁性線材配置部38として形成された溝の深さは互いに等しい。その結果、両端に位置する2つの磁気センサ31、33のボビン36に磁性線材配置部38として形成された溝の底面と載置面46との距離a、c(すなわち、両端に位置する2つの磁気センサ31、33のボビン36の磁性線材配置部38と載置面46との距離)は互いに等しい。
【0055】
3つの磁気センサ31~33の磁性線材配置部38の位置がこのように設定されていることにより、これらの磁性線材配置部38内にそれぞれ配置された3つの磁性線材34と回転軸3の軸心Xとの距離がそれぞれ互いに等しくなっている。すなわち、これら3つの磁性線材34は、
図11に示すように、回転軸3の軸心Xを中心とする円Uの円周上に位置している。また、その結果、3つの磁性線材34と磁界形成部21~24の軌道Tとの距離がそれぞれ互いに等しくなっている。また、3つの磁気センサ31~33の磁性線材配置部38の位置が上述したように設定されていることにより、3つの磁性線材34は円Uの円周上に所定の間隔で配置されている。本実施形態においては、3つの磁性線材34が円Uの円周上に30度間隔で配置されている。
【0056】
また、
図11に示すように、各磁気センサ31~33におけるボビン36の電線巻回部37の横断面の形状は、長軸が載置面46と直交する方向に伸長した略楕円形である。また、各磁気センサ31~33のコイル35の横断面の形状は、長軸が載置面46と直交する方向に伸長した略楕円形である。
【0057】
このように、本発明の実施形態の回転検出装置11によれば、中間に位置する磁気センサ32のボビン36の磁性線材配置部38と基板45の載置面46との距離bが、両端に位置する2つの磁気センサ31、33のボビン36の磁性線材配置部38と基板45の載置面46との距離a、cのいずれよりも小さくなるように、各磁気センサ31~33のボビン36における磁性線材配置部38の位置を設定したことにより、3つの磁気センサ31~33を基板45の平らな載置面46上に配置しつつも、3つの磁気センサ31がそれぞれ有する3つの磁性線材34と回転軸3の軸心Xとの距離をそれぞれ互いに一致させることができる。3つの磁性線材34と回転軸3の軸心Xとの距離をそれぞれ互いに一致させることにより、3つの磁気センサ31~33において、磁界形成部21~24が磁気センサの近傍を通過したときに当該磁気センサのコイル35からパルスが出力されるタイミングを揃えることができ、または、各磁気センサ31~33のコイル35から出力されるパルスの高さを揃えることができる。これにより、IC52によって行われる、回転軸3の回転を認識するための信号処理の精度を高めることができる。したがって、本実施形態によれば、3つの磁気センサ31~33を1枚の基板45上に集約して実装して回転検出装置11の小型化を図りながらも、回転軸3の回転検出の精度を高めることができる。
【0058】
また、各磁気センサ31~33におけるボビン36の電線巻回部37の横断面の形状を長軸が載置面46と直交する方向に伸長した略楕円形とし、各磁気センサ31~33のコイル35の横断面の形状を長軸が載置面46と直交する方向に伸長した略楕円形とした。これにより、電線巻回部37の軸方向と直交し、かつ基板45の載置面46と平行な方向における電線巻回部37の寸法を小さくすることができる。したがって、3つの磁気センサ31~33を、サイズが小さい基板45上に集約して実装しつつも、コイル35の電線の十分な巻回量を確保することができる。また、基板45の載置面46に直交する方向における電線巻回部37の寸法を大きくすることができ、ボビン36の強度を高めることができる。
【0059】
(磁界検出部の配置)
図12は、
図2中の切断線XII-XIIに沿って切断した回転検出装置11およびハウジング83の断面を
図2中の上方から見た状態を示している。
図12に示すように、磁気検出部30は、3つの磁気センサ31~33の磁性線材34と回転軸3の軸心Xとの距離がそれぞれ互いに等しくなるように、4つの磁界形成部21~24の軌道Tの外周側に配置されている。また、磁気検出部30は、基板45の載置面46が前壁板84の後面、後壁板85の前面、左壁板86の右面および右壁板87の左面のいずれとも非平行となるようにハウジング83内に配置されている。本実施形態において、磁気検出部30は、載置面46と前壁板84の後面との角度Qが例えば75度程度となるように配置されている。
【0060】
このように、磁気検出部30を、基板45の載置面46が前壁板84の後面、後壁板85の前面、左壁板86の右面および右壁板87の左面のいずれとも非平行となるようにハウジング83内に配置したことにより、(a)3つの磁気センサ31~33の磁性線材34と回転軸3の軸心Xとの距離がそれぞれ互いに等しいこと、(b)3つの磁気センサ31~33が4つの磁界形成部21~24の軌道Tの外周側に位置すること、(c)磁気検出部30がホルダ71の壁部77、78と干渉しないこと等の条件を満足しつつ、磁気検出部30を、横断面形状が長方形であるハウジング83内の小さな空間内に納めることができる。これにより、回転検出装置11を小型化することができる。
【0061】
(接続部材の形状)
図8に示すように、各磁気センサ31~33の第1の接続部材41はクランク状またはL字状の形状を有している。各磁気センサ31~33の第2の接続部材42も、第1の接続部材41と同様に、クランク状またはL字状の形状を有している。
【0062】
具体的に説明すると、3つの磁気センサ31~33のうち、
図8において最も左側に配置された磁気センサ31の第1の接続部材41は、その一端側部分41A(
図8において下端側部分)および他端側部分41B(
図8において上端側部分)が基板45の載置面46と直交する方向にそれぞれ伸長し、かつ中間部分が載置面46と平行に伸長したクランク状に形成されている。また、当該磁気センサ31の第1の接続部材41の一端側部分41Aおよび他端側部分41Bは載置面46と直交する方向にボビン36からそれぞれ突出している。また、当該磁気センサ31の第1の接続部材41は、コイル35の電線が止められた一端側部分41Aが、電気回路51に電気的に接続された他端側部分41Bよりも、
図8において載置面46の左端側に位置するようにボビン36にそれぞれ設けられている。当該磁気センサ31の第2の接続部材42も、当該磁気センサ31の第1の接続部材41と同じ形状に形成され、当該磁気センサ31の第1の接続部材41と同様にボビン36に設けられている。
【0063】
また、3つの磁気センサ31~33のうち、
図8において最も右側に配置された磁気センサ33の第1の接続部材41は、
図8において最も左側に配置された磁気センサ31の第1の接続部材41と同様にクランク状に形成されている。また、当該磁気センサ33の第1の接続部材41の一端側部分41Aおよび他端側部分41Bは載置面46と直交する方向にボビン36からそれぞれ突出している。また、当該磁気センサ33の第1の接続部材41は、コイル35の電線が止められた一端側部分41Aが、電気回路51に電気的に接続された他端側部分41Bよりも、
図8において載置面46の右端側に位置するようにボビン36にそれぞれ設けられている。当該磁気センサ33の第2の接続部材42も、当該磁気センサ33の第1の接続部材41と同じ形状に形成され、当該磁気センサ33の第1の接続部材41と同様にボビン36に設けられている。
【0064】
また、3つの磁気センサ31~33のうち、中間に位置する磁気センサ32の第1の接続部材41は、その一端側部分41Aが基板45の載置面46と平行な方向に伸長し、かつ他端側部分41Bが載置面46と直交する方向に伸長したL字状に形成されている。また、当該磁気センサ32の第1の接続部材41は、コイル35の電線が止められた一端側部分41Aが、
図8において載置面46の左端側に向かってボビン36から突出するように、ボビン36に設けられている。当該磁気センサ32の第2の接続部材42も、当該磁気センサ32の第1の接続部材41と同じ形状に形成され、当該磁気センサ32の第1の接続部材41と同様にボビン36に設けられている。なお、中間に位置する磁気センサ32のボビン36から突出した第1の接続部材41および第2の接続部材42の一端側部分41A、42Aが、
図8において最も左側に配置された磁気センサ31のボビン36に接触しないように、磁気センサ31のボビン36の両端部の形状が設定されている(
図6(A)および
図6(B)を参照)。
【0065】
ここで、
図11を見るとわかる通り、磁気検出部30をホルダ71の取付部79、80に取り付けたとき、磁気検出部30は、磁気検出部30の
図8における下部が左後方を向き、磁気検出部30の
図8における左部が右後方を向きとなるように配置される。さらに、磁気検出部30は、3つの磁気センサ31~33のそれぞれの磁性線材34と回転軸3の軸心Xとの距離がそれぞれ互いに等しくなるように、4つの磁界形成部21~24の軌道Tの外周側に配置される。この状態において、3つの磁気センサ31~33のうち最も後ろ側に配置された磁気センサ31の第1の接続部材41および第2の接続部材42の一端側部分41A、42Aは、
図11において、当該磁気センサ31のボビン36の左後部から左後方に伸長しており、その先端は回転軸3、リング磁石25およびリング磁石26の後方に位置している。その結果、当該磁気センサ31の第1の接続部材41および第2の接続部材42の一端側部分41A、42Aは、回転軸3、リング磁石25およびリング磁石26のいずれとも接触することがない。また、3つの磁気センサ31~33のうち最も前側に配置された磁気センサ33の第1の接続部材41および第2の接続部材42の一端側部分41A、42Aは、
図11において、当該磁気センサ33のボビン36の左前部から左後方に伸長しており、その先端は回転軸3、リング磁石25およびリング磁石26の前方に位置している。その結果、当該磁気センサ33の第1の接続部材41および第2の接続部材42の一端側部分41A、42Aは、回転軸3、リング磁石25およびリング磁石26のいずれとも接触することがない。また、3つの磁気センサ31~33のうち中間に配置された磁気センサ32の第1の接続部材41および第2の接続部材42の一端側部分41A、42Aは、
図11において、当該磁気センサ32のボビン36の左後部から右後方へ伸長しており、その先端は回転軸3、リング磁石25およびリング磁石26の右方に位置している。その結果、当該磁気センサ32の第1の接続部材41および第2の接続部材42の一端側部分41A、42Aは、回転軸3、リング磁石25およびリング磁石26のいずれとも接触することがない。
【0066】
このように、両端に位置する各磁気センサ31、33において、第1の接続部材41および第2の接続部材42をそれぞれクランク状に形成し、これら第1の接続部材41および第2の接続部材42を、これらの一端側部分41A、42Aが他端側部分41B、42Bよりも基板45の載置面46の端側に位置するようにボビン36に設けたことにより、
図12に示すようにハウジング83内の小さな空間内に磁気検出部30を設けた場合でも、各磁気センサ31、33の第1の接続部材41および第2の接続部材42の一端側部分41A、42Aが回転軸3、リング磁石25またはリング磁石26に接触することを防止することができる。これにより、回転検出装置11の小型化を図ることができる。
【0067】
また、中間に位置する磁気センサ32において、第1の接続部材41および第2の接続部材42をそれぞれL字状に形成し、これら第1の接続部材41および第2の接続部材42を、これらの一端側部分41Aが基板45の載置面46と平行な方向にボビン36から突出するようにボビン36に設けたことにより、ハウジング83内の小さな空間内に磁気検出部30を設けた場合でも、磁気センサ32の第1の接続部材41および第2の接続部材42の一端側部分41A、42Aが回転軸3、リング磁石25またはリング磁石26に接触することを防止することができる。これにより、回転検出装置11の小型化を図ることができる。
【0068】
(回転軸の軸方向における接続部材の位置)
図7に示すように、3つの磁気センサ31~33は、それぞれの磁性線材34の上下方向(回転軸3の軸方向)における位置がそれぞれ互いに一致するように基板45の載置面46上に配置されている。この状態において、3つの磁気センサ31~33のうち中間に位置する磁気センサ32の第1の接続部材41の上下方向における位置は、3つの磁気センサ31~33のうち両端に位置する各磁気センサ31、33の第1の接続部材41の上下方向における位置と異なっている。具体的には、中間に位置する磁気センサ32の第1の接続部材41は、両端に位置する各磁気センサ31、33の第1の接続部材41よりも上方に位置している。一方、両端に位置する2つの磁気センサ31、33の第1の接続部材41の上下方向における位置は互いに一致している。
【0069】
磁気センサ32の第1の接続部材41が各磁気センサ31、33の第1の接続部材41よりも上方に位置していることにより、3つの磁気センサ31~33のうち、隣り合う2つの磁気センサの第1の接続部材41間において絶縁距離(例えば1mm)が確保されている。具体的に説明すると、
図7に示すように、磁気センサ31の第1の接続部材41の一端側部分41Aと磁気センサ32の第1の接続部材41の一端側部分41Aとの距離dは絶縁距離以上である。また、磁気センサ32の第1の接続部材41の一端側部分41Aと磁気センサ33の第1の接続部材41の一端側部分41Aとの距離は、上記距離dよりも大きく、絶縁距離以上である。
【0070】
また、
図10に示すように、磁気センサ31の第1の接続部材41の他端側部分41Bが接続されたランド53と、磁気センサ32の第1の接続部材41の他端側部分41Bが接続されたランド53との距離eは絶縁距離以上である。また、磁気センサ32の第1の接続部材41の他端側部分41Bが接続されたランド53と、磁気センサ33の第1の接続部材41の他端側部分41Bが接続されたランド53との距離fは絶縁距離以上である。また、基板45の上部の角部に形成されたねじ挿通穴47には、磁気検出部30をホルダ71の取付部80に取り付けるためのねじ56が挿入され、このねじ56は導電性を有する。このねじ56の頭部56Aと、磁気センサ32の第1の接続部材41の他端側部分41Bが接続されたランド53との距離gは絶縁距離以上である。また、当該ねじ56の頭部56Aと、磁気センサ33の第1の接続部材41の他端側部分41Bが接続されたランド53との距離hも絶縁距離以上である。
【0071】
また、3つの磁気センサ31~33のうち中間に位置する磁気センサ32の第2の接続部材42の上下方向における位置は、3つの磁気センサ31~33のうち両端に位置する各磁気センサ31、33の第2の接続部材42の上下方向における位置と異なっている。具体的には、中間に位置する磁気センサ32の第2の接続部材42は、両端に位置する各磁気センサ31、33の第2の接続部材42よりも下方に位置している。一方、両端に位置する2つの磁気センサ31、33の第2の接続部材42の上下方向における位置は互いに一致している。
【0072】
磁気センサ32の第2の接続部材42が各磁気センサ31、33の第2の接続部材42よりも下方に位置していることにより、3つの磁気センサ31~33のうち、隣り合う2つの磁気センサの第2の接続部材42間において絶縁距離が確保されている。すなわち、
図7に示すように、磁気センサ31の第2の接続部材42の一端側部分42Aと磁気センサ32の第2の接続部材42の一端側部分42Aとの距離i、および磁気センサ32の第2の接続部材42の一端側部分42Aと磁気センサ33の第2の接続部材42の一端側部分42Aとの距離は、いずれも絶縁距離以上である。
【0073】
また、
図10に示すように、磁気センサ31の第2の接続部材42の他端側部分42Bが接続されたランド53と、磁気センサ32の第2の接続部材42の他端側部分42Bが接続されたランド53との距離jは絶縁距離以上である。また、磁気センサ32の第2の接続部材42の他端側部分42Bが接続されたランド53と、磁気センサ33の第2の接続部材42の他端側部分42Bが接続されたランド53との距離kは絶縁距離以上である。また、基板45の下部の角部に形成されたねじ挿通穴47には、磁気検出部30をホルダ71の取付部79に取り付けるためのねじ56が挿入され、このねじ56は導電性を有する。このねじ56の頭部56Aと、磁気センサ31の第2の接続部材42の他端側部分42Bが接続されたランド53との距離mは絶縁距離以上である。また、ねじ56の頭部56Aと、磁気センサ32の第2の接続部材42の他端側部分42Bが接続されたランド53との距離nは絶縁距離以上である。なお、隣り合う配線54間の距離も絶縁距離以上である。
【0074】
このように、本発明の実施形態の回転検出装置11によれば、中間に位置する磁気センサ32の第1の接続部材41を両端に位置する各磁気センサ31、33の第1の接続部材41よりも上方に配置し、かつ中間に位置する磁気センサ32の第2の接続部材42を両端に位置する各磁気センサ31、33の第2の接続部材42よりも下方に配置することにより、3つの磁気センサ31~33のうち隣り合う2つの磁気センサの第1の接続部材41間の絶縁距離および第2の接続部材42間の絶縁距離をそれぞれ確保しつつ、基板45の載置面46において隣り合う2つの磁気センサの間隔を極めて小さくすることができる。したがって、3つの磁気センサ31~33を載置する基板45の載置面46の面積を小さくすることができ、基板45のサイズを小さくすることができる。よって、回転検出装置11の小型化を図ることができ、小型の電動モータ1に組付可能な回転検出装置11を実現することができる。
【0075】
また、両端に位置する2つの磁気センサ31、33において、第1の接続部材41の上下方向における位置は互いに一致し、かつ第2の接続部材42の上下方向における位置は互いに一致している。したがって、両端に配置する2つの磁気センサ31、33として、共通の2つの磁気センサ、すなわち、ボビン36の形状、並びに第1の接続部材41および第2の接続部材42の配置がそれぞれ同一である2つの磁気センサを用いることができる。これにより、磁気センサのボビンを成型するための金型費の削減や、回転検出装置11の製造の簡素化等を図ることができる。なお、
図7を見るとわかる通り、本実施形態においては、磁気センサ33が、磁気センサ31に対して上下の向きが逆となるように配置されている。
【0076】
(回転検出装置の動作)
図13は回転検出装置11の動作を示している。以下、回転検出装置11の動作の一例として、磁界形成部21が磁気センサ31の近傍を通過するときの回転軸3の角度を0度とし、回転軸3が時計回りに0度から150度まで回転する間における動作を、
図13を用いて説明する。
【0077】
図13には、回転検出装置11の6通りの状態が描かれている。
図13において、(A)は回転軸3の回転角度が0度であるときの状態を示し、(B)は回転軸3の回転角度が30度であるときの状態を示し、(C)は回転軸3の回転角度が60度であるときの状態を示している。さらに、(D)は回転軸3の回転角度が90度であるときの状態を示し、(E)は回転軸3の回転角度が120度であるときの状態を示し、(F)は回転軸3の回転角度が150度であるときの状態を示している。また、
図13中のS1は磁気センサ31から出力された検出信号を示し、S2は磁気センサ32から出力された検出信号を示し、S3は磁気センサ33から出力された検出信号を示している。
【0078】
図13中の(A)において、回転軸3の角度が0度であり、磁界形成部21が磁気センサ31の近傍を通過したとき、磁界形成部21によって形成された下方向の磁界が磁気センサ31の磁性線材34に作用する。この下方向の磁界が当該磁性線材34に作用する直前において当該磁性線材34の磁化方向が上方向であったとすると、この下方向の磁界が当該磁性線材34に作用したとき、大バルクハウゼン効果により、当該磁性線材34の磁化方向が上方向から下方向に瞬時に反転する。磁気センサ31の磁性線材34の磁化方向が上方向から下方向へ瞬時に反転すると、電磁誘導により、磁気センサ31のコイル35に短時間のうち大きな電流が流れ、当該コイル35から例えば正方向のパルスP1が出力される。
【0079】
その後、回転軸3が時計回りに回転し、回転軸3の角度が30度に達したとき、磁界形成部21が磁気センサ32の近傍を通過する。このとき、磁界形成部21が磁気センサ31の近傍を通過したときと同様の原理により、磁気センサ32の磁性線材34の磁化方向が上方向から下方向に瞬時に反転し、磁気センサ32のコイル35から正方向のパルスP2が出力される。
【0080】
その後、回転軸3がさらに時計回りに回転し、回転軸3の角度が60度に達したとき、磁界形成部21が磁気センサ33の近傍を通過する。このとき、磁界形成部21が磁気センサ31の近傍を通過したときと同様の原理により、磁気センサ33の磁性線材34の磁化方向が上方向から下方向に瞬時に反転し、磁気センサ33のコイル35から正方向のパルスP3が出力される。
【0081】
その後、回転軸3がさらに時計回りに回転し、回転軸3の角度が90度に達したとき、磁界形成部22が磁気センサ31の近傍を通過し、磁界形成部22によって形成された上方向の磁界が磁気センサ31の磁性線材34に作用する。この上方向の磁界が当該磁性線材34に作用したとき、大バルクハウゼン効果により、当該磁性線材34の磁化方向が下方向から上方向に瞬時に反転する。磁気センサ31の磁性線材34の磁化方向が下方向から上方向へ瞬時に反転すると、電磁誘導により、磁気センサ31のコイル35に短時間のうち大きな電流が流れ、当該コイル35からパルスP4が出力される。また、このように磁性線材34の磁界方向が下方向から上方向に反転したときにコイル35に流れる電流は、磁性線材34の磁界方向が上方向から下方向に反転したときにコイル35に流れる電流に対して方向が逆になる。したがって、磁性線材34の磁界方向が上方向から下方向に反転したときにコイル35から出力されるパルスの方向が正方向である場合には、磁性線材34の磁界方向が下方向から上方向に反転したときにコイル35から出力されるパルスの方向は負方向となる。それゆえ、パルスP4は負方向のパルスとなる。
【0082】
その後、回転軸3が時計回りに回転し、回転軸3の角度が120度に達したとき、磁界形成部22が磁気センサ32の近傍を通過する。このとき、磁界形成部22が磁気センサ31の近傍を通過したときと同様の原理により、磁気センサ32の磁性線材34の磁化方向が下方向から上方向に瞬時に反転し、磁気センサ32のコイル35から負方向のパルスP5が出力される。
【0083】
その後、回転軸3がさらに時計回りに回転し、回転軸3の角度が150度に達したとき、磁界形成部22が磁気センサ33の近傍を通過する。このとき、磁界形成部22が磁気センサ31の近傍を通過したときと同様の原理により、磁気センサ33の磁性線材34の磁化方向が下方向か上方向に瞬時に反転し、磁気センサ33のコイル35から負方向のパルスP6が出力される。
【0084】
磁気センサ31のコイル35から出力されたパルスP1、P4を含む検出信号S1、磁気センサ32のコイル35から出力されたパルスP2、P5を含む検出信号S2、および磁気センサ33のコイル35から出力されたパルスP3、P6を含む検出信号S3はそれぞれ基板45の背面に設けられたIC52に入力される。IC52は、磁気センサ31~33からそれぞれ出力された検出信号S1~S3に基づいて回転軸3の回転角度または回転量を算出する。この回転軸3の回転角度または回転量の算出方法として、例えば、上記特許文献1に記載された方法を用いることができる。なお、図示を省略しているが、IC52は、回転検出装置11の外部に設けられた電動モータ1の駆動制御回路に電気的に接続されており、IC52は回転軸3の回転角度または回転量を示す信号を電動モータ1の駆動制御回路に出力する。
【0085】
なお、上記実施形態では、中間に位置する磁気センサ32の第1の接続部材41を両端に位置する各磁気センサ31、33の第1の接続部材41よりも上方に配置し、かつ中間に位置する磁気センサ32の第2の接続部材42を両端に位置する各磁気センサ31、33の第2の接続部材42よりも下方に配置することにより、隣り合う2つの磁気センサの第1の接続部材41間の絶縁距離および第2の接続部材42間の絶縁距離をそれぞれ確保した。しかしながら、中間に位置する磁気センサ32の第1の接続部材41を両端に位置する各磁気センサ31、33の第1の接続部材41よりも下方に配置し、かつ中間に位置する磁気センサ32の第2の接続部材42を両端に位置する各磁気センサ31、33の第2の接続部材42よりも上方に配置することにより、隣り合う2つの磁気センサの第1の接続部材41間の絶縁距離および第2の接続部材42間の絶縁距離をそれぞれ確保するようにしてもよい。また、中間に位置する磁気センサ32の第1の接続部材41および第2の接続部材42を、一方の端に位置する磁気センサ31の第1の接続部材41および第2の接続部材42よりも上方に配置し、他方の端に位置する磁気センサ33の第1の接続部材41および第2の接続部材42を、中間に位置する磁気センサ32の第1の接続部材41および第2の接続部材42よりも上方に配置することにより、隣り合う2つの磁気センサの第1の接続部材41間の絶縁距離および第2の接続部材42間の絶縁距離をそれぞれ確保するようにしてもよい。また、中間に位置する磁気センサ32の第1の接続部材41および第2の接続部材42を、一方の端に位置する磁気センサ31の第1の接続部材41および第2の接続部材42よりも下方に配置し、他方の端に位置する磁気センサ33の第1の接続部材41および第2の接続部材42を、中間に位置する磁気センサ32の第1の接続部材41および第2の接続部材42よりも下方に配置することにより、隣り合う2つの磁気センサの第1の接続部材41間の絶縁距離および第2の接続部材42間の絶縁距離をそれぞれ確保するようにしてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、中間に位置する磁気センサ32のボビン36の磁性線材配置部38と基板45の載置面46との距離を、両端に位置する各磁気センサ31、33のボビン36の磁性線材配置部38と載置面46との距離よりも小さくし、両端に位置する各磁気センサ31、33のボビン36の磁性線材配置部38と載置面46との距離を互いに等しくした。しかしながら、3つの磁気センサ31~33間における磁性線材配置部38と載置面46との距離の大小関係はこれに限定されない。例えば、磁気検出部30を4つの磁界形成部21~24の軌道の外周側において
図11と異なる位置に配置する場合などには、3つの磁気センサ31~33の磁性線材34と回転軸3の軸心Xとの距離がそれぞれ互いに等しくなるように、3つの磁気センサ31~33の磁性線材配置部38と載置面46との距離をそれぞれ異なる値に設定してもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、磁性線材配置部38が電線巻回部37に形成された溝である場合を例にあげたが、磁性線材配置部は電線巻回部37内に形成された穴でもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、
図5に示すように、4つの磁界形成部21~24を、磁極25A~25Dを有するリング磁石25および磁極26A~26Dを有するリング磁石26により形成する場合を例にあげたが、4つの磁界形成部の形成方法はこれに限らない。例えば、
図5に示すような合計8つの磁極が配置された一塊の磁石により4つの磁界形成部を形成してもよい。また、一端側がN極で他端側がS極の4本の棒磁石により4つの磁界形成部を形成してもよい。また、独立した8つの磁石により4つの磁界形成部を形成してもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、各磁気センサ31~33におけるボビン36の電線巻回部37の外形を横断面形状が略楕円形の円柱状としたが、電線巻回部37の外形を横断面形状が真円の円柱状としてもよいし、横断面形状が多角形の柱状としてもよい。
【0090】
また、磁気センサの個数は4つ以上でもよい。また、磁界形成部の個数は2つ、6つまたは8つ以上でもよい。また、回転装置は電動モータに限定されない。
【0091】
また、回転検出装置11のホルダ71の上方に、回転軸3の回転を光学的に検出する光学式エンコーダ等の他の回転検出装置を設けてもよい。
【0092】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う磁気検出装置および回転検出装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1 電動モータ(回転装置)
2 本体
3 回転軸
4 突出部
11 回転検出装置
21~24 磁界形成部
30 磁気検出部
31~33 磁気センサ
34 磁性線材
35 コイル
36 ボビン
37 電線巻回部
38 磁性線材配置部
41 第1の接続部材
42 第2の接続部材
45 基板
46 載置面
51 電気回路
71 ホルダ
83 ハウジング
84 前壁板
85 後壁板
86 左壁板
87 右壁板