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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】コンクリート床版取替工法
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20240117BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20240117BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D19/12
E01D21/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020184786
(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公開番号】P2022074611
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000112196
【氏名又は名称】株式会社ピーエス三菱
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】松金 哲也
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 知明
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-122359(JP,A)
【文献】特開2019-173435(JP,A)
【文献】特開2004-285627(JP,A)
【文献】特開2004-232426(JP,A)
【文献】特開2016-098489(JP,A)
【文献】登録実用新案第3027712(JP,U)
【文献】特開平06-306819(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0018775(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 22/00
E01D 19/12
E01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路橋から既設のコンクリート床版から撤去されたコンクリート板である撤去コンクリート板をフォークリフトに載荷し、撤去コンクリート板の旋回可能位置まで運搬することと、
前記運搬後、前記撤去コンクリート板を旋回台車に載せ替え、略90度向きを回転させることと、
車線方向において互いに離間して配置された2機の門型楊重装置のうち一方の第1の門型楊重装置により運搬車両から新設コンクリート板を吊り上げ、上方へ移動させることと、
前記新設コンクリート板を上方へ移動させた後、略90度向きが変更された前記撤去コンクリート板を、前記2機の門型楊重装置のうち他方の第2の門型楊重装置により吊り上げ、上方へ移動させることと、
前記第2の門型楊重装置によって前記撤去コンクリート板を上方へ移動させた後、前記旋回台車を前記第1の門型楊重装置の真下に移動させ、前記旋回台車に前記新設コンクリート板を載せ、該新設コンクリート板の旋回可能位置まで運搬し、略90度向きを回転させることと、
略90度向きを回転させた前記新設コンクリート板を前記フォークリフトにより施工位置まで運搬し、設置することと、
を有するコンクリート床版取替工法。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリート床版取替工法であって、
運搬車両を前記第2の門型楊重装置の真下に移動させ、該第2の門型楊重装置によって前記撤去コンクリート板を運搬車両に載せること
をさらに有するコンクリート床版取替工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路橋のコンクリート板の更新工事に採用されるコンクリート床版取替工法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼桁上の鉄筋コンクリート床版の経年劣化に対する更新工事がある。かかる更新工事では、撤去したコンクリート板を鋼桁上フランジから剥離・撤去した後、工場などで製造されたプレキャスト板(以下、PCa板と呼ぶ。)を現地に搬入し、撤去されたコンクリート板の位置に、PCa板を据え付け、鋼桁および隣接する他の新設PCa板と接合することにより道路橋床版の更新が行われる。
道路橋上という限られた施工空間において、重量物であるPCa板の更新位置までの運搬・架設方法には多くの方法が提案・実施されているが、施工速度、安全性、経済性の面でさらに改善の余地が残されている。
【0003】
コンクリート板の据え付け方法には、旋回型の自走式クレーン車により行う方法(例えば特許文献1)、脚、梁の伸縮機能を持たせた門型クレーンを用いる方法(例えば特許文献2、3)、門型架設装置に据え付け用の片持ち梁を備えたもの(例えば特許文献4)などが知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平06-306819号公報
【文献】実登3027712号公報
【文献】特開2016-098489号公報
【文献】特開2004-232426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、旋回型の自走式クレーン車を用いた方法は、クレーン車のアウトリガーを十分張り出せるクレーン設置場が必要であるという理由から採用できる現場が制限される。また、例えば幅員10mの道路橋の更新工事の場合、PCa板の平面寸法は10m×2m程度となり、これを架設するための旋回型の自走式クレーン車のブーム頂点までの高さが20-30m程度となり、下路トラス橋など、路面上に構造物がある場合の利用には不向きである。さらには、クレーンでPCa板を90度程度回転させるとき、PCa板の長手寸法より大きい作業半径が必要となり、他の構造物が近接する環境での接触事故などの危険もある。
【0006】
門型架設装置を用いた方法は、PCa板を載せた運搬用台車を通過させることができる程度の門サイズにする必要があることから、大型化が避けられず、設備コストが大きくなる。また、門型架設装置は所轄官庁の検査を受ける必要があるなど、法的規制が多く、工期短縮が求められる床版更新工事では制約が多い。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題を解決し得るコンクリート床版取替工法を提供することにある。特に本発明は、比較的簡素な設備構成で、道路橋のコンクリート床版の更新を効率的に行うことができ、特に必要な設備群を1車線幅の領域内に配置でき、空間的な制約を軽減可能なコンクリート床版取替工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る一形態のコンクリート床版取替工法は、
道路橋から既設のコンクリート床版から撤去されたコンクリート板である撤去コンクリート板をフォークリフトに載荷し、撤去コンクリート板の旋回可能位置まで運搬することと、
前記運搬後、前記撤去コンクリート板を旋回台車に載せ替え、向きを略90度回転させることと、
車線方向において互いに離間して配置された2機の門型楊重装置のうち一方の第1の門型楊重装置により運搬車両から新設コンクリート板を吊り上げ、上方へ移動させることと、
前記新設コンクリート板を上方へ移動させた後、略90度向きが変更された前記撤去コンクリート板を、前記2機の門型楊重装置のうち他方の第2の門型楊重装置により吊り上げ、上方へ移動させることと、
前記第2の門型楊重装置によって前記撤去コンクリート板を上方へ移動させた後、前記旋回台車を前記第1の門型楊重装置の真下に移動させ、前記旋回台車に前記新設コンクリート板を載せ、該新設コンクリート板の旋回可能位置まで運搬し、略90度向きを回転させることと、
略90度向きを回転させた前記新設コンクリート板を前記フォークリフトにより施工位置まで運搬し、設置することと、を有する。
【0009】
本発明に係る一形態のコンクリート床版取替工法によれば、道路橋の床版の取り替えを効率的に行うことができる。特に、必要な設備群を1車線幅の領域内に配置でき、作業を1車線幅の領域で実施することができるので、床版を幅員方向に複数分割して取り替える工法において好適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る第1の実施形態のコンクリート床版取替工法の設備を道路幅員方向xに見た側面図である。
図2図1の平面図である。
図3図1の門型楊重装置7a、7bを車線方向yに見た側面図である。
図4図1の門型楊重装置7a、7bを道路幅員方向xに見た側面図である。
図5図1のコンクリート床版取替工法において床版撤去のためのフォークリフト5の移動を示す側面図である。
図6図1のコンクリート床版取替工法において撤去コンクリート板1aを載荷したフォークリフト5によるコンクリート板旋回可能位置への運搬を示す側面図である。
図7図1のコンクリート床版取替工法においてフォークリフト5から旋回台車8への撤去コンクリート板1aの載せ替えを示す側面図である。
図8図1のコンクリート床版取替工法において旋回台車8の回転による撤去コンクリート板1aの向きの変更を示す側面図である。
図9図1のコンクリート床版取替工法において第1の門型楊重装置7aから旋回台車8への新設コンクリート板1bの吊り下ろしを示す側面図である。
図10図1のコンクリート床版取替工法において旋回台車8の回転による新設コンクリート板1bの向き変更を示す側面図である。
図11図1のコンクリート床版取替工法において旋回台車8からフォークリフト5への新設コンクリート板1bの載せ替えを示す側面図である。
図12図1のコンクリート床版取替工法においてフォークリフト5による道路橋上の床版更新区画への新設コンクリート板1bの運搬と第2の門型楊重装置7bによる撤去コンクリート板1aの運搬車両4への吊り下ろしを示す側面図である。
図13図1のコンクリート床版取替工法においてフォークリフト5による道路橋上の床版更新区画への新設コンクリート板1bの設置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る第1の実施形態のコンクリート床版取替工法の設備を道路幅員方向xに見た側面図、図2図1の平面図である。
本実施形態のコンクリート床版取替工法は、床版を幅員方向に複数分割して取り替える工法において採用されることが可能である。床版を幅員方向に複数分割して取り替える工法は、一車線のみの規制で施工可能であるので、渋滞による社会的損失を最小限に抑えることが可能な工法である。
【0012】
図1、2において、1は更新対象である既設床版、1aは既設床版1を車線方向に適宜分割して撤去される1更新区画分のコンクリート板(以下「撤去コンクリート板1a」と呼ぶ。)、1bは新設のPCa板などの1更新区画分の新設コンクリート板である。撤去コンクリート板1a、新設コンクリート板1bを特に区別しない場合には単に「コンクリート板」と呼ぶこともある。新設コンクリート板1bは、運搬の制約上幅が2m程度に制限されるため、既設床版1における一回の更新区画の車線方向yの長さは、新設コンクリート板1bの幅に合わせて2m程度とされる。
【0013】
本実施形態のコンクリート床版取替工法では、設備機器として、フォークリフト5、旋回台車8および2機の門型楊重装置7a、7bが用いられる。
【0014】
フォークリフト5は、1更新区画分の撤去コンクリート板1aあるいは1更新区画分の新設コンクリート板1bを載荷し、車線方向yに運搬するための設備機器である。旋回台車8は、フォークリフト5あるいは門型楊重装置7a、7bから受け渡された撤去コンクリート板1aあるいは新設コンクリート板1bを載荷し、水平面で旋回することによってコンクリート板1a、1bの向きを略90度回転させるための設備機器である。2機の門型楊重装置7a、7bはそれぞれ、旋回台車8および運搬車両4から撤去コンクリート板1aあるいは新設コンクリート板1bを取り上げて上方に移動させたり、旋回台車8および運搬車両4に撤去コンクリート板1aあるいは新設コンクリート板1bを吊り下ろして載荷するために撤去コンクリート板1aあるいは新設コンクリート板1bを下方に移動させたりするための設備機器である。2機の門型楊重装置7a、7bは、床版更新現場付近の車線において車線方向yに互いに離間して配置されている。
【0015】
図3は門型楊重装置7a、7bを車線方向yに見た側面図、図4は門型楊重装置7a、7bを道路幅員方向xに見た側面図である。これらの図に示されるように、門型楊重装置7a、7bはそれぞれ、同時に昇降駆動する2本のポスト71、71と、2本のポスト71、71の上に水平に支持された梁部72とで構成される。梁部72には、撤去コンクリート板1aあるいは新設コンクリート板1bをワイヤー74を通じて吊り下げるための吊下げ具73が設けられている。
【0016】
次に、コンクリート床版取替工法の手順を説明する。
まず、図5に示すように、フォークリフト5が、既設床板1の更新対象である撤去コンクリート板1aの近傍位置まで道路橋9上を移動し、既設床版1から撤去された1更新区画分の撤去コンクリート板1aがフォークリフト5に載荷される。
【0017】
次に、図6に示すように、撤去コンクリート板1aを載荷したフォークリフト5を2機の門型楊重装置7a、7bの手前のコンクリート板旋回可能位置まで移動する。その一方で、新設コンクリート板1bを積載した運搬車両4を2機の門型楊重装置7a、7bのうちいずれか一方の門型楊重装置(本実施形態では既設床版1により近い方の第1の門型楊重装置7aとする。)の真下に移動させ、第1の門型楊重装置7aによって運搬車両4から新設コンクリート板1bが上方に吊り上げられて移動させる。ここで、第1の門型楊重装置7aによる新設コンクリート板1bの吊り上げ高さは、吊り上げられた新設コンクリート板1bの下を、フォークリフト5が安全に通過できる程度にすることが必要である。第1の門型楊重装置7aによる新設コンクリート板1bの吊り上げ後、運搬車両4をトラック待機位置に移動させる。
【0018】
一方、図7に示すように、撤去コンクリート板1aを載荷したフォークリフト5の既設床版1側の近傍に旋回台車8を配置し、フォークリフト5から旋回台車8に撤去コンクリート板1aを載せ替える。次に、図8に示すように、撤去コンクリート板1aを載荷した旋回台車8の旋回盤を略90度回転させることによって、撤去コンクリート板1aの向きを略90度変更する。これにより、床版1の長手方向が車線方向に沿うような向きになる。
【0019】
続いて、撤去コンクリート板1aを載荷した旋回台車8を第2の門型楊重装置7bの真下に移動させ、第2の門型楊重装置7bによって旋回台車8から撤去コンクリート板1aが上方に吊り上げられて移動させる。この後、図9に示すように、旋回台車8を第1の門型楊重装置7aの真下に移動させ、第1の門型楊重装置7aによって新設コンクリート板1bが旋回台車8に下ろされる。
【0020】
次に、図10に示すように、新設コンクリート板1bを載せた旋回台車8を新設コンクリート板1bの回転可能位置まで移動させた後、旋回台車8を略90度回転させることによって、撤去コンクリート板1aの向きを道路橋9の更新区画に設置可能な向きに変更する。
この後、図11に示すように、待機していたフォークリフト5が旋回台車8の近傍に移動し、旋回台車8からフォークリフト5に新設コンクリート板1bが載せ替えられる。
【0021】
次に、図12、13に示すように、フォークリフト5が撤去コンクリート板1aが撤去された更新区画の近傍に移動し、撤去コンクリート板1aをその更新区画に設置する。一方、待機していた運搬車両4は第2の門型楊重装置7bの真下に移動し、第1の門型楊重装置7bから降ろされた撤去コンクリート板1aを載荷して現場を出立する。
以上により、床版の一つの更新区画の取り替えが完了し、次の更新区画の取り替え作業が同様に行われる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態のコンクリート床版取替工法によれば、フォークリフト5、旋回台車8、2機の門型楊重装置7a、7bといった比較的簡素な設備構成で、床版の取り替えを効率的に行うことができる。特に、必要な設備群を1車線幅の領域内に配置でき、作業を1車線幅の領域で行うことができるので、床版を幅員方向に複数分割して取り替える工法において適切な工法である。
【0023】
なお、上記の実施形態では、旋回台車8を用いて撤去コンクリート板1aおよび新設コンクリート板1bを回転させて向きを略90度変更するようにしたが、例えば、ポスト71間の距離が床版1の長手方向の長さよりも長い門型楊重装置や旋回式の架設装置を設置し、この種の機器により撤去コンクリート板1aおよび新設コンクリート板1bの向きを変更するようにしてもよい。しかしながら、この種の機器は場所をとるため、1車線幅の領域に収まらず、床版を幅員方向に複数分割して取り替える工法には不向きである。このような事情から、床版1の回転には旋回台車8を採用することが適切である。
【0024】
また、上記の実施形態では、2機の門型楊重装置7a、7bにおいて床版更新区画により近い方の門型楊重装置7aにより新設コンクリート板1bを上げ下げし、床版更新区画により遠い方の門型楊重装置7bにより撤去コンクリート板1aを上げ下げすることとしたが、逆に、床版更新区画により近い方の門型楊重装置7aにより撤去コンクリート板1aを上げ下げし、床版更新区画により遠い方の門型楊重装置7bにより新設コンクリート板1bを上げ下げするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1…床版
1a…撤去コンクリート板
1b…新設コンクリート板
4…運搬車両
5…フォークリフト
7a…第1の門型楊重装置
7b…第2の門型楊重装置
8…旋回台車
9…道路橋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13