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特許7421479植物病原性微生物による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害を防除又は防止する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】植物病原性微生物による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害を防除又は防止する方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/40 20060101AFI20240117BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240117BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A01N43/40 101D
A01P3/00
A01M1/20 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020532894
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018085986
(87)【国際公開番号】W WO2019122012
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】17208993.0
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519295993
【氏名又は名称】シンジェンタ パーティシペーションズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】イヴァチッチ ダミール
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-514077(JP,A)
【文献】特表2016-518385(JP,A)
【文献】特開2010-285352(JP,A)
【文献】特表2009-539791(JP,A)
【文献】特表2015-512873(JP,A)
【文献】国際公開第2017/207362(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、ボトリチス・シネリア(Botrytis cinerea)及びアルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)から選択される植物病原性微生物による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害を防除又は防止する方法であって、植物の作物、その場所又はその繁殖材料に、式(Ic):

(式中、R11、R12及びAは、以下の表において定義されるとおりである)


で表される化合物1~3及び7のいずれか1つから選択される化合物;
又はその塩若しくはN-オキシド;
又はこれらの化合物の互変異性体又は立体異性体を施用する工程を含む方法。
【請求項2】
前記植物が、ジャガイモ、トマト、メロン及びオクラから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記植物病原性微生物が、アルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)であり、前記植物が、ジャガイモ又はトマトである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記植物病原性微生物が、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)であり、前記植物が、オクラ、トマト及びメロンから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、ボトリチス・シネリア(Botrytis cinerea)及びアルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)から選択される植物病原性微生物による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害を防除又は防止するための、請求項1に定義される化合物の使用。
【請求項6】
野菜、トマト及びジャガイモ植物を栽培するための方法であって、その繁殖材料を請求項1に定義される化合物で処理する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物病原性微生物、特に、エリシフェ属菌(Erysiphe sp.)、例えば、スファエロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)、レベイルラ・タウリカ(Leveillula taurica)、スクレロチニア・スクレロチオルム(Sclerotinia sclerotiorum)、サーコスポラ属菌(Cercospora)、フザリウム属菌(Fusarium sp.)、特に、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)及びフザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、ヘルミントスポリウム・ソラニ(Helminthosporium solani)、フォーマ・ツベローサ(Phoma tuberosa)、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、フィトフソラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、バーティシリウム・ダリア(Verticillium dahlia)、ディディメラ・ブリオニエ(Didymella bryoniae)、ボトリチス・シネリア(Botrytis cinerea)並びにアルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害を防除又は防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かび(mildew)、菌核病(sclerotinia stem rot、white mold)、斑点病(leaf spot)、フザリウム病(fusaria)、茎枯病(stem blight)は、野菜類の植物、例えば、ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、タマネギ又はペッパー(pepper)に一般的な病害である。輪紋病、フザリウム病、斑点病、うどんこ病はトマトに一般的な病害であり、塊茎の病害(tuber disease)(銀か病及び黒あざ病等)、かび、スクレロチニア属菌による病害(sclerotinia)、夏疫病はジャガイモ植物に一般的な病害である。
【0003】
特に、アルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)は、ジャガイモの夏疫病と呼ばれる病原真菌であり、この病害では葉に目立つ斑点が現れ、トマトの茎病変及び実腐病並びにジャガイモの塊茎腐敗(tuber blight)も発生させ得る。未防除の場合、夏疫病(輪紋病)は収穫量を大きく低下させ得る。
【0004】
フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)は幅広い宿主植物を攻撃する病原真菌である。フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)の病徴は、太い葉脈(large vein)間の黄化、白化、立ち枯れ又は葉の壊死である。
【0005】
未防除の場合、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)は植物に著しい損害を与え、収量の低下を引き起こし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの病害は農業生産に悪影響を及ぼすため、野菜、トマト及びジャガイモ植物におけるこれらの病害を防除又は防止するための一般的な手法の代替となる効率的な方法を提供することが求められている。したがって、本発明は、かび、菌核病、斑点病、フザリウム病、茎枯病、夏疫病(輪紋病)、斑点病及びスクレロチニア属菌による病害等の病害の原因となる植物病原性微生物による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害を防除又は防止するためのさらなる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の説明
シクロブチルカルボキサミド化合物及びこれらを調製するための方法が、国際公開第2013/143811号及び国際公開第2015/003951号に開示されている。ここで、国際公開第2013/143811号及び/又は国際公開第2015/003951号に開示されている特定のシクロブチルカルボキサミド化合物は、植物病原性微生物、特に、エリシフェ属菌(Erysiphe sp.)、例えば、スファエロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)、レベイルラ・タウリカ(Leveillula taurica)、スクレロチニア・スクレロチオルム(Sclerotinia sclerotiorum)、サーコスポラ属菌(Cercospora)、フザリウム属菌(Fusarium sp.)、特に、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)及びフザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、ヘルミントスポリウム・ソラニ(Helminthosporium solani)、フォーマ・ツベローサ(Phoma tuberosa)、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、フィトフソラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、バーティシリウム・ダリア(Verticillium dahlia)、ディディメラ・ブリオニエ(Didymella bryoniae)、ボトリチス・シネリア(Botrytis cinerea)並びにアルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害の防除又は防止に非常に有効であることが意外にも分かった。これらは非常に有効な化合物であり、したがって、農業従事者にとって、かび、菌核病、斑点病、フザリウム病、茎枯病、夏疫病(輪紋病)、斑点病及びスクレロチニア属菌による病害等の病害による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害を防除又は防止する重要な新規な解決法となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
したがって、実施形態1として、スファエロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)、レベイルラ・タウリカ(Leveillula taurica)、スクレロチニア・スクレロチオルム(Sclerotinia sclerotiorum)、サーコスポラ属菌(Cercospora)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、Fusarium solani(フザリウム・ソラニ)、ヘルミントスポリウム・ソラニ(Helminthosporium solani)、フォーマ・ツベローサ(Phoma tuberosa)、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、フィトフソラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、バーティシリウム・ダリア(Verticillium dahlia)、ディディメラ・ブリオニエ(Didymella bryoniae)、ボトリチス・シネリア(Botrytis cinerea)及びアルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)から選択される植物病原性微生物による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害を防除又は防止する方法であって、植物の作物、その場所又はその繁殖材料に、式(I):
【化1】
(式中、
Yが、O、C=O又はCR12R13であり;
Aが、酸素、窒素及び硫黄からそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含有する5員若しくは6員芳香族複素環又はフェニル環であり;芳香族複素環又はフェニルは、1つ以上のR6で任意に置換され;
R6が、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、C1~C4-アルコキシ、C1~C4-ハロアルコキシ、C1~C4-ハロアルキルチオ、C1~C4-アルコキシ-C1~4-アルキル又はC1~C4-ハロアルコキシ-C1~C4-アルキルであり;
R1、R2、R3、R4、R12及びR13は、互いに独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-アルコキシ又はC1~C4-ハロアルキルであり、
R5が、水素、メトキシ又はヒドロキシルであり、
Bが、1つ以上のR8で置換されるフェニルであり、
R8が、互いに独立して、ハロゲン、シアノ又は基-L-R9であり、ここで、各Lが、互いに独立して、結合、-O-、-OC(O)-、-NR7-、-NR7CO-、-NR7S(O)n-、-S(O)n-、-S(O)nNR7-、-COO-又はCONR7-であり、
nが、0、1又は2であり、
R7が、水素、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、ベンジル又はフェニルであり、ここで、ベンジル及びフェニルが、非置換であるか又はハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル若しくはC1~C4-ハロアルキルで置換され、
R9が、互いに独立して、非置換であるか若しくは1つ以上のR10で置換されたC1~C6-アルキル、非置換であるか若しくは1つ以上のR10で置換されたC3~C6-シクロアルキル、非置換であるか若しくは1つ以上のR10で置換されたC6~C14-ビシクロアルキル、非置換であるか若しくは1つ以上のR10で置換されたC2~C6-アルケニル、非置換であるか若しくは1つ以上のR10で置換されたC2~C6-アルキニル、非置換であるか若しくはR10で置換されたフェニル又は非置換であるか若しくは1つ以上のR10で置換されたヘテロアリールであり、
R10が、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、C1~C4-アルコキシ、C1~C4-ハロアルコキシ、C1-C4-アルキルチオ、C1~C4-ハロアルキルチオ、C3~C6-アルケニルオキシ又はC3~C6-アルキニルオキシであり、
ここで、B及びA-CO-NR5は4員環上で互いに対してシスである);
で表される化合物;
又はその塩若しくはN-オキシド;
又はこれらの化合物の互変異性体若しくは立体異性体を施用する工程を含む方法が提供される。
【0009】
実施形態1に記載のより好ましい方法が、以下の実施形態に示される。
【0010】
実施形態2として、
Yが、O又はCH2であり;
Aが、1~2個の窒素原子を含有する6員芳香族複素環、又はフェニル環であり;芳香族複素環又はフェニルは、1つ以上のR6で任意に置換され;
R6が、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、又はC1~C4-ハロアルコキシであり;
R1、R2、R3、R4、及びR5がそれぞれ水素であり;
Bが、1つ以上のR8で置換されるフェニルであり;
R8が、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、C1~C4-ハロアルコキシ及びC3~C6-シクロアルキルから選択される、実施形態1に記載の方法が提供される。
【0011】
実施形態3として、Aが、1~2個の窒素原子を含有し、且つR6から選択される1~3つの置換基を有する6員芳香族複素環、又はR6から選択される1つ又は3つの置換基を有するフェニル環である、実施形態1又は実施形態2に記載の方法が提供される。
【0012】
実施形態4として、Bが、1~3つの置換基R8で置換されるフェニルである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0013】
実施形態5として、
Bが、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、シクロプロピル、ジフルオロメトキシ及びトリフルオロメトキシから独立して選択される1~3つの置換基で置換されるフェニルであり;
Aが、フェニル、ピリジル又はピラジニルであり、それらの環は、互いに独立して、非置換であるか、又はクロロ、ブロモ、フルオロ、メチル、シアノ、及びトリフルオロメチルから独立して選択される1~3つの置換基で置換され、Yが、O又はCH2であり、R1、R2、R3、R4及びR5がそれぞれ水素である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0014】
実施形態6として、
YがCH2であり;
Bが、モノ又はジ-ハロゲン置換フェニルであり;
Aが、フェニル、ピラジニル及びピリジルから選択され、これらはそれぞれ、ハロゲン及びC1~C4-ハロアルキルから独立して選択される置換基で一置換又は二置換され;
R1、R2、R3、R4及びR5がそれぞれ水素である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0015】
実施形態1~6のいずれか1つに開示される式(I)の化合物は、左側のフェニル環及び右側のA-C(=O)-NH基が、シクロブチル環上で互いに対してシスであるシスラセミ化合物:
【化2】
を表す。
【0016】
したがって、式(I)のラセミ化合物は、式(Ia)及び(Ib)の化合物の1:1混合物である。式(Ia)及び(Ib)の化合物中に示されるくさび形の結合が、絶対立体化学を表す一方、実施形態1の式(I)の化合物について示されるものなどの太い直線の結合は、ラセミ化合物における相対立体化学を表す。
【0017】
また、式(I)の化合物の1つの鏡像異性体が、スファエロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)、レベイルラ・タウリカ(Leveillula taurica)、スクレロチニア・スクレロチオルム(Sclerotinia sclerotiorum)、サーコスポラ属菌(Cercospora)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、ヘルミントスポリウム・ソラニ(Helminthosporium solani)、フォーマ・ツベローサ(Phoma tuberosa)、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、フィトフソラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、バーティシリウム・ダリア(Verticillium dahlia)、ディディメラ・ブリオニエ(Didymella bryoniae)、ボトリチス・シネリア(Botrytis cinerea)及びアルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)から選択される植物病原性微生物による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害を防除又は防止するのに特に有用であることが意外にも分かった。
【0018】
したがって、実施形態7として、化合物が、式(Ia):
【化3】
のものである、実施形態1~6のいずれか一つに記載の方法が提供される。
【0019】
当業者は、実施形態7に記載の方法に従い、式(Ia)の化合物が、一般に、殺有害生物組成物の一部として施用されることを認識している。したがって、実施形態8として、スファエロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)、レベイルラ・タウリカ(Leveillula taurica)、スクレロチニア・スクレロチオルム(Sclerotinia sclerotiorum)、サーコスポラ属菌(Cercospora)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、Fusarium solani(フザリウム・ソラニ)、ヘルミントスポリウム・ソラニ(Helminthosporium solani)、フォーマ・ツベローサ(Phoma tuberosa)、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、フィトフソラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、バーティシリウム・ダリア(Verticillium dahlia)、ディディメラ・ブリオニエ(Didymella bryoniae)、ボトリチス・シネリア(Botrytis cinerea)及びアルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)から選択される植物病原性微生物による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害を防除又は防止する方法であって、植物の作物、その場所又はその繁殖材料に、実施形態1~7のいずれか1つに記載の化合物及び1つ以上の製薬助剤を含む殺有害生物組成物を施用することを含む方法が提供される。実施形態9として、スファエロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)、レベイルラ・タウリカ(Leveillula taurica)、スクレロチニア・スクレロチオルム(Sclerotinia sclerotiorum)、サーコスポラ属菌(Cercospora)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、ヘルミントスポリウム・ソラニ(Helminthosporium solani)、フォーマ・ツベローサ(Phoma tuberosa)、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、フィトフソラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、バーティシリウム・ダリア(Verticillium dahlia)、ディディメラ・ブリオニエ(Didymella bryoniae)、ボトリチス・シネリア(Botrytis cinerea)及びアルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)から選択される植物病原性微生物による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害を防除又は防止する方法であって、植物の作物、その場所又はその繁殖材料に、式(Ia)の化合物及び1つ以上の製薬助剤を含む殺有害生物組成物を施用する工程を含む方法が提供される。実施形態9に記載の方法において、式(Ia)の化合物及び式(Ib)の化合物の両方を含む殺有害生物組成物では、式(Ia)の化合物対その鏡像異性体(式(Ib)の化合物)の比率は、1:1を超えなければならない。好ましくは、式(Ia)の化合物対式(Ib)の化合物の比は、1.5:1超、より好ましくは、2.5:1超、特に、4:1超、有利には9:1超、望ましくは20:1超、特に35:1超である。
【0020】
50%以下、好ましくは、40%以下、より好ましくは、30%以下、特に、20%以下、有利には、10%以下、望ましくは、5%以下、特に、3%以下の、式(I)の化合物のトランス立体異性体(すなわち、式中、B及びA-C(=O)-NH基が、互いに対してトランスである)を含有する混合物が、本発明の一部であることも理解される。好ましくは、式(I)の化合物対そのトランス異性体の比率は、1.5:1超、より好ましくは、2.5:1超、特に、4:1超、有利には、9:1超、望ましくは、20:1超、特に、35:1超である。
【0021】
好ましくは、式(Ia)の化合物、そのトランス異性体(すなわち、式中、B及びA-CO-NR2基が、互いに対してトランスである)及び式(Ib)の化合物を含む組成物において、組成物は、式(Ia)の化合物、そのトランス異性体及び式(Ib)の化合物の総量をそれぞれ基準にして、少なくとも50%、より好ましくは、70%、さらにより好ましくは、85%、特に、90%超、特に好ましくは、95%超の濃度の式(Ia)の化合物を含む。
【0022】
さらに、実施形態10として、スファエロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)、レベイルラ・タウリカ(Leveillula taurica)、スクレロチニア・スクレロチオルム(Sclerotinia sclerotiorum)、サーコスポラ属菌(Cercospora)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、ヘルミントスポリウム・ソラニ(Helminthosporium solani)、フォーマ・ツベローサ(Phoma tuberosa)、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、フィトフソラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、バーティシリウム・ダリア(Verticillium dahlia)、ディディメラ・ブリオニエ(Didymella bryoniae)、ボトリチス・シネリア(Botrytis cinerea)及びアルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)から選択される植物病原性微生物による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害を防除又は防止する方法であって、植物の作物、その場所又はその繁殖材料に、式(Ic):
【化4】
(式中、
R11及びR12が、独立して、ハロゲンから選択され;
Aが、独立して、ハロゲン及びC1~C4-ハロアルキルから選択される1つ又は2つの置換基で置換されるピリジルである)で表される化合物を施用する工程を含む、方法が提供される。
【0023】
実施形態11として、
R11及びR12が、独立して、クロロ及びフルオロから選択され;
Aが、1つ又は2つのC1~C4-ハロアルキル置換基で置換される、ピリダ-2-イル又はピリダ-3-イルである、実施形態10に記載の方法が提供される。
【0024】
実施形態12として、
Aが、
【化5】
から選択され、
R13が、C1~C4-ハロアルキル、好ましくは、トリフルオロメチルである、実施形態10又は11に記載の方法が提供される。
【0025】
実施形態13として、化合物が、式(Ic):
【化6】
(式中、R11、R12及びAが、以下の表において定義されるとおりである)で表される化合物1~7のいずれか1つから選択される、実施形態10~12のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0026】
【表1】
【0027】
実施形態14として、
-実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物を含む組成物を提供する工程と;
-繁殖材料に組成物を施用する工程と;
-繁殖材料を植え付ける工程と
を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0028】
実施形態15として、
-実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物を含む組成物を提供する工程と;
-植物の作物又はその場所に、組成物を施用する工程と
を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0029】
実施形態16としてスファエロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害を防除又は防止するための、実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物の使用が提供される。
【0030】
実施形態16.1として、ボトリチス・シネリア(Botrytis cinerea)による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害を防除又は防止するための、実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物の使用が提供され、特に、ボトリチス・シネリア(Botrytis cinerea)によるトマト植物の被害を防除又は防止するための、実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物の使用が提供される。
【0031】
実施形態16.2として、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害を防除又は防止するための、実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物の使用が提供され、特に、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)による野菜植物の被害を防除又は防止するための実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物の使用が提供され、より具体的には、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)によるトマト、オクラ及びメロンから選択される植物の被害を防除又は防止するための実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物の使用が提供される。
【0032】
実施形態17として、アルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害を防除又は防止するための、実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物の使用が提供され、特に、アルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)によるトマト又はジャガイモ植物の被害を防除又は防止するための実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物の使用が提供され、より具体的には、アルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)によるジャガイモ植物の被害を防除又は防止するための、実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物の使用が提供される。
【0033】
実施形態18として、野菜、トマト及びジャガイモ植物を栽培するための方法であって、野菜、トマト及びジャガイモ又はその繁殖材料を、実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物で施用又は処理する工程を含む方法が提供される。
【0034】
実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法において定義される化合物の調製は、参照により本明細書に援用される国際公開第2013/143811号及び国際公開第2015/003951号に開示されている。
【0035】
定義:
「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨード、特に、フルオロ、クロロ又はブロモを表す。
【0036】
本明細書において使用される際の「アルキル」又は「alk」という用語は、単独で又はより大きい基(アルコキシ、アルキルチオ、アルコキシカルボニル及びアルキルカルボニルなど)の一部として、直鎖状又は分枝鎖状であり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソ-ペンチル又はn-ヘキシルである。アルキル基は、好適には、C1~C4-アルキル基である。
【0037】
本明細書において使用される際の「ハロアルキル」は、同じか又は異なるハロゲン原子の1つ以上で置換される、上に定義されるアルキル基であり、例えば、CF3、CF2Cl、CF2H、CCl2H、FCH2、ClCH2、BrCH2、CH3CHF、(CH32CF、CF3CH2又はCHF2CH2である。
【0038】
「野菜」又は「野菜植物」という用語は、これらに限定されるものではないが、オクラ、ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、タマネギ、ペッパー、キュウリ、カボチャ(squash)及びメロンを含む。
【0039】
本明細書において使用される際に、一実施形態が「~のいずれか1つに記載の(according to any one of)」、例えば、「実施形態1~5のいずれか1つに記載の」という語を使用することにより他の幾つかの実施形態を参照する場合、当該実施形態は、1及び2等の整数で示される実施形態のみならず、小数成分を有する数字、例えば、1.1、1.2又は2.1、2.2、2.3で表される実施形態も参照している。例えば、「実施形態1~3のいずれか1つに記載の」は、実施形態1、1.1、2、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7のいずれか1つに記載の、を意味する。
【0040】
実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法及び使用は、好ましくは、エリシフェ属菌(Erysiphe sp.)、スファエロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)、スクレロチニア・スクレロチオルム(Sclerotinia sclerotiorum)、サーコスポラ属菌(Cercospora)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、ヘルミントスポリウム・ソラニ(Helminthosporium solani)、フォーマ・ツベローサ(Phoma tuberosa)、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、フィトフソラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、バーティシリウム・ダリア(Verticillium dahlia)、ディディメラ・ブリオニエ(Didymella bryoniae)、ボトリチス・シネリア(Botrytis cinerea)、アルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)及びレベイルラ・タウリカ(Leveillula taurica)(他の殺真菌剤に耐性がある真菌を含む)から選択される植物病原性微生物による野菜、トマト及びジャガイモ作物の被害を防除又は防止するためのものである。特定の殺真菌剤に「耐性がある」真菌とは、例えば、同じ種から予測される感受性と比較して、その殺真菌剤に対する感受性が低い菌株を指す。予測される感受性は、例えば、殺真菌剤に以前に曝されたことのない菌株を用いて測定され得る。
【0041】
実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法又は使用に係る施用は、好ましくは、植物の作物、その場所又はその繁殖材料に対するものである。好ましくは、施用は、植物の場所又はその繁殖材料、より好ましくは、繁殖材料に対するものである。実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物の施用は、通常の施用形態、例えば、葉面施用、潅注、土壌施用、畝間施用、種子処理などのいずれかにしたがって行われ得る。
【0042】
実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物は、1~500g/ha、好ましくは、50~200g/haで、有害生物防除のために好ましくは使用される。
【0043】
実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物は、除草剤などの有効成分に耐性があるように遺伝子組み換えされたものを含む任意の野菜、トマト及びジャガイモ植物に対して使用するのに、又は植物有害生物による被害を防除する生物学的に活性な化合物を生成するのに好適である。
【0044】
一般に、実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物は、担体を含有する組成物(例えば製剤)の形態で使用される。実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物およびその組成物は、エアゾールディスペンサ、カプセル懸濁液、冷煙霧濃縮物(cold fogging concentrate)、粉剤、乳化性濃縮物、水中油乳剤、油中水乳剤、カプセル化した粒剤、細粒剤、種子処理用のフロアブル剤、(加圧)ガス、ガス生成剤(gas generating product)、粒剤、温煙霧濃縮物(hot fogging concentrate)、大型粒剤(macrogranule)、微粒剤(microgranule)、油分散性粉剤、油混和性フロアブル剤、油混和性液体、ペースト、植物用棒状剤(plant rodlet)、乾燥種子処理用の粉剤、農薬で被覆された種子、可溶性濃縮物、可溶性粉剤、種子処理用の液剤、懸濁濃縮物(フロアブル剤)、微量散布用液剤(ultra low volume(ulv)liquid)、微量散布用懸濁剤(ultra low volume(ulv)suspension)、顆粒水和剤または水分散性錠剤、スラリー処理用の水和剤(water dispersible powder for slurry treatment)、水溶性粒剤または水溶性錠剤、種子処理用の水溶性粉剤および水和剤などの様々な形態で使用され得る。
【0045】
製剤は、典型的に、液体または固体担体および、任意に、固体または液体助剤であり得る1つ以上の通例の製剤助剤、例えば、非エポキシ化またはエポキシ化植物油(例えばエポキシ化ヤシ油、ナタネ油またはダイズ油)、消泡剤、例えば、シリコーン油、防腐剤、粘土、無機化合物、粘性調節剤、界面活性剤、結合剤および/または粘着付与剤を含む。この組成物は、本発明の化合物と、殺菌剤、殺真菌剤、殺線虫剤、植物活性化剤、殺ダニ剤、および殺虫剤などの1つ以上の他の生物学的に活性な物質との組合せを含むだけでなく、肥料、微量栄養素供与体(micronutrient donor)または植物の成長に影響を与える他の調製物もさらに含み得る。
【0046】
この組成物は、例えば、本発明の固体化合物を粉砕し、篩にかけ、および/または圧縮することによって、助剤の非存在下で、および、例えば、本発明の化合物を、1つまたは複数の助剤と均質混合し、および/または粉砕することによって、少なくとも1つの助剤の存在下で、それ自体公知の方法で調製される。本発明の固体化合物の場合、化合物の粉砕/ミリングは、特定の粒径を確保するために行われる。
【0047】
農業に使用するための組成物の例は、乳剤、懸濁濃縮物、マイクロエマルション、油分散性の、直接噴霧可能または希釈可能な液剤、延展可能なペースト、希釈乳剤、可溶性粉剤、分散性粉剤、水和剤、ダスト剤(dust)、粒剤またはポリマー物質中への封入物であり、これは、-少なくとも-実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物を含み、組成物のタイプは、意図される目的およびそのときの状況に合わせて選択されるべきである。
【0048】
通例、組成物は、0.1~99%、特に、0.1~95%の、実施形態1~7のいずれか1つに記載の化合物及び1~99.9%、特に、5~99.9%の、少なくとも1つの固体又は液体担体を含み、通例、組成物の0~25%、特に、0.1~20%が、界面活性剤であることが可能である(%はいずれの場合も重量パーセントを意味する)。濃縮され組成物が、商品に好ましい傾向があるが、最終消費者は、通例、かなり低い濃度の有効成分を有する希釈組成物を使用する。
【0049】
プレミックス組成物用の茎葉製剤タイプの例は、以下のとおりである:
GR:粒剤
WP:水和剤
WG:水和性顆粒(粉剤)
SG:水溶性粒剤
SL:可溶濃縮剤
EC:乳化性濃縮物
EW:水中油乳剤
ME:マイクロエマルション
SC:水性懸濁濃縮物
CS:水性カプセル懸濁剤
OD:油系懸濁濃縮物、および
SE:水性サスポエマルション(suspo-emulsion)。
【0050】
一方、プレミックス組成物用の種子処理製剤タイプの例は、以下のとおりである:
WS:種子処理スラリー用の水和剤
LS:種子処理用の液剤
ES:種子処理用の乳剤
FS:種子処理用の懸濁濃縮物
WG:水和性顆粒、および
CS:水性カプセル懸濁剤。
【0051】
タンクミックス(tank-mix)組成物に好適な製剤タイプの例は、液剤、希釈乳剤、懸濁剤、またはそれらの混合物、およびダスト剤である。
【0052】
製剤の性質と同様に、葉面施用、潅注、噴霧、霧化、散布、拡散、塗布または注ぎかけなどの施用方法は、意図される目的およびそのときの状況に応じて選択される。
【0053】
タンクミックス組成物は、一般に、異なる有害生物防除剤、および任意にさらなる助剤を含有する1つ以上のプレミックス組成物を溶媒(例えば、水)で希釈することによって調製される。
【0054】
好適な担体および補助剤は、固体または液体であり得、製剤化技術に通常用いられる物質、例えば、天然または再生鉱物物質、溶媒、分散剤、湿潤剤、粘着付与剤、増粘剤、結合剤または肥料である。
【0055】
一般に、葉面施用または土壌施用のためのタンクミックス製剤は、0.1~20%、特に、0.1~15%の所望の成分、および99.9~80%、特に、99.9~85%の固体または液体助剤(例えば、水などの溶媒を含む)を含み、助剤は、タンクミックス製剤を基準にして、0~20%、特に、0.1~15%の量の界面活性剤であり得る。
【0056】
典型的に、葉面施用のためのプレミックス製剤は、0.1~99.9%、特に、1~95%の所望の成分、および99.9~0.1%、特に、99~5%の固体または液体補助剤(例えば、水などの溶媒を含む)を含み、助剤は、プレミックス製剤を基準にして、0~50%、特に、0.5~40%の量の界面活性剤であり得る。
【0057】
通常、種子処理施用のためのタンクミックス製剤は、0.25~80%、特に、1~75%の所望の成分、および99.75~20%、特に、99~25%の固体または液体助剤(例えば、水などの溶媒を含む)を含み、助剤は、タンクミックス製剤を基準にして、0~40%、特に、0.5~30%の量の界面活性剤であり得る。
【0058】
典型的に、種子処理施用のためのプレミックス製剤は、0.5~99.9%、特に、1~95%の所望の成分、および99.5~0.1%、特に、99~5%の固体または液体補助剤(例えば、水などの溶媒を含む)を含み、助剤は、プレミックス製剤を基準にして、0~50%、特に、0.5~40%の量の界面活性剤であり得る。
【0059】
市販の製品は、好ましくは、濃縮物(例えば、プレミックス組成物(製剤))として製剤化されるであろうが、最終使用者は、通常、希釈製剤(例えば、タンクミックス組成物)を用いるであろう。
【0060】
好ましい種子処理プレミックス製剤は、水性懸濁濃縮物である。この製剤は、流動床技術、ローラーミル法、ロトスタティック種子処理機(rotostatic seed treater)、およびドラムコータ(drum coaters)などの、従来の処理技術および機械を用いて種子に施用され得る。噴流床などの他の方法も有用であり得る。種子は、塗布の前に予め分級され得る。塗布の後、種子は、典型的に、乾燥され、次に、分級のために分級機に移される。このような手順は、当該技術分野において公知である。本発明の化合物は、土壌及び種子処理用途に使用するのに特に適している。
【0061】
一般に、本発明のプレミックス組成物は、0.5~99.9、特に、1~95、有利には、1~50質量%の所望の成分、および99.5~0.1、特に、99~5質量%の固体または液体補助剤(例えば、水などの溶媒を含む)を含有し、助剤(または補助剤)は、プレミックス製剤の質量を基準にして、0~50、特に、0.5~40質量%の量の界面活性剤であり得る。
【0062】
ここで、本発明は、以下の非限定的な実施例によって例示される。全ての引用文献は、参照により援用される。
【0063】
生物学的実施例
トマトのボトリオチニア・フッケリアナ(Botryotinia fuckeliana)(ボトリチス・シネリア(Botrytis cinerea))
4週齢のトマト植物体(cv.ロテル・グノム(Roter Gnom))に水で希釈された製剤化された供試化合物を噴霧チャンバー内で噴霧する。供試植物には施用の2日後に胞子懸濁液を噴霧接種する。接種された供試植物を20℃及び相対湿度95%の温室で生育させ、無処理の対照(check)植物に病害が適切な度合いで出現したら(施用5~6日後)、葉の病斑面積の比率を判定する。
【0064】
【表2】
【0065】
トマトのアルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)
4週齢のトマト植物体(cv.ロテル・グノム(Roter Gnom))に製剤化された供試化合物を水で希釈して噴霧チャンバー内で噴霧する。施用から2日後に供試植物に胞子懸濁液を噴霧接種する。接種された供試植物を22/18℃(昼温/夜温)及び相対湿度95%の温室で生育させ、無処理の対照植物に病害が適切な度合いで出現したら(施用5~7日後)、葉の病斑面積の比率を判定する。
【0066】
【表3】
【0067】
ジャガイモのアルタナリア・ソラニ(Alternaria solani):
アルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)により発生する夏疫病(early blight disease)に対する異なる化合物の有効性を評価するために、2018年にジャガイモ圃場試験をTompkins(New York,USA)において実施した。
【0068】
植え付け時にジャガイモの塊茎に、フラットファンノズルを備えたブームスプレーヤーを使用して畝間施用した。
【0069】
8月初頭に病害が発生し、2018年9月5日に発病度を判定した。
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
【表7】
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
結論:
化合物1は、150gAI/ha以上の比率で用いた場合に、ジャガイモのアルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)に対し87%を超える有効性で非常に良好な活性を示した。化合物2は十分な作用を示したが、化合物1よりも明らかに劣っていた。どちらの化合物も定植後89日間に亘り病害を防除した。
【0078】
トマトのフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum):
トマトのフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)に対する異なる化合物の有効性を評価するために、2017年にSanlucar de Barrameda(Cadiz,Spain)にてトマトの温室試験を実施した。
【0079】
3週齢のトマト植物体を2017年4月7日に移植した後、植物体当たり100mlの量の水を用いて化合物を潅注した。
【0080】
病害圧力を高めるために、1000000個胞子/ml水の濃度のフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)懸濁液60mlを植穴に直接潅注し、翌日、ここに植物体を移植した。移植132日後の2017年8月17日に発病率を判定した。
【0081】
【表11】
【0082】
【表12】
【0083】
【表13】
【0084】
【表14】
【0085】
【表15】
【0086】
【表16】
【0087】
【表17】
【0088】
結論:
化合物1は、施用率を100gAI/ヘクタールとした場合に、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)を95%防除する非常に優れた有効性を示した。化合物1は、移植後132日間に亘り植物をフザリウム属菌(Fusarium)の攻撃から保護した。
【0089】
化合物2はそれよりも劣っており、防除率は80%であり、それに次ぐ化合物3の有効性は61%であり、化合物4は施用比率をはるかに高くしてもわずか21%しか防除しなかった。
【0090】
オクラのフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum):
オクラのフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)に対する異なる化合物の有効性を評価するために、オクラの圃場試験を2018年にKuppanur(Coimbatore,India)において実施した。
【0091】
2018年6月29日にオクラ種子を播種し、その直後に、植物体当たり50mlの量の水を用いて化合物を潅注施用した。播種から2週間後に病害が発生し、2018年8月28日に発病率を判定した。
【0092】
【表18】
【0093】
【表19】
【0094】
【表20】
【0095】
【表21】
【0096】
【表22】
【0097】
【表23】
【0098】
【表24】
【0099】
結論:
化合物1は、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)に対し非常に高い有効性を示し、施用比率を150g及び200gAI/haとした場合、有効性はそれぞれ84%及び94%であった。化合物1の施用比率を200gAI/haとすると、定植後60日間に亘りほぼ完全に病害が防除された。化合物2は、375g/AI haの施用比率で十分に作用したが、化合物1を200gAI/haで施用した場合よりも明らかに劣っていた。
【0100】
メロンのフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum):
メロンのフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)に対する異なる化合物の有効性を評価するために、2017年にEl Ejido(Almeria,Spain)においてメロンの温室試験を行った。
【0101】
2017年5月5日にメロンの移植苗(transplant)を定植した後、植物体当たり100mlの量の水を用いて化合物を潅注施用した。
【0102】
病害圧力を高めるために、移植を行う3日前に、各区画にフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)の100000個胞子/ml水の濃度の懸濁液900mlを接種した。最初の病徴は移植3週間後に視認され、移植69日目である2017年7月13日に発病度を判定した。
【0103】
【表25】
【0104】
【表26】
【0105】
【表27】
【0106】
【表28】
【0107】
【表29】
【0108】
【表30】
【0109】
【表31】
【0110】
結論:
化合物1は非常に良好な有効性を示し、60gAI/ヘクタールの施用比率でフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)を89%防除した。化合物2はそれよりも劣っており、防除率が79%であり、これに次ぐ化合物4は有効性が73%であり、化合物3は防除率が67%であった。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕スファエロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)、レベイルラ・タウリカ(Leveillula taurica)、スクレロチニア・スクレロチオルム(Sclerotinia sclerotiorum)、サーコスポラ属菌(Cercospora)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、ヘルミントスポリウム・ソラニ(Helminthosporium solani)、フォーマ・ツベローサ(Phoma tuberosa)、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、フィトフソラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、バーティシリウム・ダリア(Verticillium dahlia)、ディディメラ・ブリオニエ(Didymella bryoniae)、ボトリチス・シネリア(Botrytis cinerea)及びアルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)から選択される植物病原性微生物による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害を防除又は防止する方法であって、植物の作物、その場所又はその繁殖材料に、式(I):
[化1]
(式中、
Yが、O、C=O又はCR12R13であり;
Aが、酸素、窒素及び硫黄からそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含有する5員若しくは6員芳香族複素環又はフェニル環であり;前記芳香族複素環又は前記フェニルは、1つ以上のR6で置換されていてもよく;
R6が、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、C1~C4-アルコキシ、C1~C4-ハロアルコキシ、C1~C4-ハロアルキルチオ、C1~C4-アルコキシ-C1~4-アルキル又はC1~C4-ハロアルコキシ-C1~C4-アルキルであり;
R1、R2、R3、R4、R12及びR13は、互いに独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-アルコキシ又はC1~C4-ハロアルキルであり、
R5が、水素、メトキシ又はヒドロキシルであり、
Bが、1つ以上のR8で置換されているフェニルであり、
R8が、互いに独立して、ハロゲン、シアノ又は基-L-R9であり、ここで、各Lが、互いに独立して、結合、-O-、-OC(O)-、-NR7-、-NR7CO-、-NR7S(O)n-、-S(O)n-、-S(O)nNR7-、-COO-又はCONR7-であり、
nが、0、1又は2であり、
R7が、水素、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、ベンジル又はフェニルであり、ここで、ベンジル及びフェニルが、非置換であるか又はハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル若しくはC1~C4-ハロアルキルで置換されており、
R9が、互いに独立して、非置換であるか若しくは1つ以上のR10で置換されているC1~C6-アルキル、非置換であるか若しくは1つ以上のR10で置換されているC3~C6-シクロアルキル、非置換であるか若しくは1つ以上のR10で置換されているC6~C14-ビシクロアルキル、非置換であるか若しくは1つ以上のR10で置換されているC2~C6-アルケニル、非置換であるか若しくは1つ以上のR10で置換されているC2~C6-アルキニル、非置換であるか若しくはR10で置換されているフェニル又は非置換であるか若しくは1つ以上のR10で置換されているヘテロアリールであり、
R10が、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、C1~C4-アルコキシ、C1~C4-ハロアルコキシ、C1-C4-アルキルチオ、C1~C4-ハロアルキルチオ、C3~C6-アルケニルオキシ又はC3~C6-アルキニルオキシであり、
ここで、B及びA-CO-NR5は4員環上で互いに対してシスである)
で表される化合物;
又はその塩若しくはN-オキシド;
又はこれらの化合物の互変異性体又は立体異性体を施用する工程を含む方法。
〔2〕Yが、O又はCH2であり;
Aが、1~2個の窒素原子を含有する6員芳香族複素環、又はフェニル環であり;前記芳香族複素環又は前記フェニルは、1つ以上のR6で置換されていてもよく;
R6が、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、又はC1~C4-ハロアルコキシであり;
R1、R2、R3、R4、及びR5が、それぞれ水素であり;
Bが、1つ以上のR8で置換されているフェニルであり;
R8が、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、C1~C4-ハロアルコキシ及びC3~C6-シクロアルキルから選択される、
前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕Aが、1~2個の窒素原子を含有し、且つR6から選択される1~3つの置換基を有する6員芳香族複素環、又はR6から選択される1つ又は3つの置換基を有するフェニル環である、前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の方法。
〔4〕Bが、1~3つの置換基R8で置換されているフェニルである、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の方法。
〔5〕Bが、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、シクロプロピル、ジフルオロメトキシ及びトリフルオロメトキシから独立して選択される1~3つの置換基で置換されているフェニルであり;
Aが、フェニル、ピリジル又はピラジニルであり、それらの環は、互いに独立して、非置換であるか、又はクロロ、ブロモ、フルオロ、メチル、シアノ、及びトリフルオロメチルから独立して選択される1~3つの置換基で置換されており、
Yが、O又はCH2であり、
R1、R2、R3、R4及びR5が、それぞれ水素である、
前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の方法。
〔6〕Yが、CH2であり;
Bが、モノ又はジ-ハロゲン置換フェニルであり;
Aが、フェニル、ピラジニル及びピリジルから選択され、これらはそれぞれ、ハロゲン及びC1~C4-ハロアルキルから独立して選択される置換基で一置換又は二置換され;
R1、R2、R3、R4及びR5が、それぞれ水素である、
前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の方法。
〔7〕前記化合物が、式(Ic)
[化2]
(式中、
R11及びR12が、独立して、ハロゲンから選択され;
Aが、ハロゲン及びC 1 ~C 4 -ハロアルキルから独立して選択される1つ又は2つの置換基で置換されているピリジルである)
の化合物である、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の方法。
〔8〕R11及びR12が、独立して、クロロ及びフルオロから選択され;
Aが、1つ又は2つのC 1 ~C 4 -ハロアルキル置換基で置換されている、ピリダ-2-イル又はピリダ-3-イルである、
前記〔7〕に記載の方法。
〔9〕Aが、
[化3]
から選択され、
R13が、C 1 ~C 4 -ハロアルキルである、
前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の方法。
〔10〕前記化合物は、式(Ic):
[化4]
(式中、R11、R12及びAは、以下の表において定義されるとおりである)で表される化合物1~7のいずれか1つから選択される、前記〔1〕に記載の方法。
[表1]

〔11〕前記植物病原性微生物が、ボトリチス・シネリア(Botrytis cinerea)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)及びアルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)から選択され、前記植物が、ジャガイモ、トマト、メロン及びオクラから選択される、前記〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の方法。
〔12〕前記植物病原性微生物が、アルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)であり、前記植物が、ジャガイモ又はトマト、特に、ジャガイモである、前記〔11〕に記載の方法。
〔13〕前記植物病原性微生物が、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)であり、前記植物が、オクラ、トマト及びメロンから選択される、前記〔11〕に記載の方法。
〔14〕スファエロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)、レベイルラ・タウリカ(Leveillula taurica)、スクレロチニア・スクレロチオルム(Sclerotinia sclerotiorum)、サーコスポラ属菌(Cercospora)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、ヘルミントスポリウム・ソラニ(Helminthosporium solani)、フォーマ・ツベローサ(Phoma tuberosa)、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、フィトフソラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、バーティシリウム・ダリア(Verticillium dahlia)、ディディメラ・ブリオニエ(Didymella bryoniae)、ボトリチス・シネリア(Botrytis cinerea)及びアルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)から選択される植物病原性微生物による野菜、トマト及びジャガイモ植物の被害を防除又は防止するための、前記〔1〕~〔10〕のいずれか一項に定義される化合物の使用。
〔15〕野菜、トマト及びジャガイモ植物を栽培するための方法であって、その繁殖材料を前記〔1〕~〔10〕のいずれか一項に定義される化合物で処理する工程を含む、方法。