(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】心臓の調律異常を識別するコンピュータ実装方法、コンピュータシステム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/346 20210101AFI20240117BHJP
【FI】
A61B5/346
(21)【出願番号】P 2020560270
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2019060367
(87)【国際公開番号】W WO2019206908
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-22
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516373384
【氏名又は名称】バーツ ヘルス エヌエイチエス トラスト
【氏名又は名称原語表記】BARTS HEALTH NHS TRUST
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィンレイ, マルコム
(72)【発明者】
【氏名】ホーナーバクシュ, ショレイ
(72)【発明者】
【氏名】シリング, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ハンター, ロス
(72)【発明者】
【氏名】アラー, ワクアス
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-140381(JP,A)
【文献】特開2018-023788(JP,A)
【文献】特開2017-124176(JP,A)
【文献】特表2016-518166(JP,A)
【文献】特表2015-516824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録時間期間にわたって、複数の電極から記録され、この電極に対応する心臓における一連の検知位置で取得された、少なくとも興奮データを含む、電位図データを使用して、心臓の異常な調律を支えまたは起こることに関与する、前記心臓の心筋の1つまたは複数の領域を識別する方法について、
下記ステップを行うようにコンピュータシステムが実行するように、コンピュータに実装された実装方法であって、
a)事前に定められた測地的距離を設定するステップと、
b)前記記録時間期間をいくつかの分析時間期間に分割し、それぞれの検知位置を、前記定められた測地的距離内にある、複数の他の検知位置とペアリングし、かくして複数の位置ペアリングを形成するステップと、
c)前記分析時間期間の各々について、各位置ペアリング内の各位置における各興奮信号の相対タイミングを定めるステップと、
d)前記興奮信号の前記相対タイミングが、妥当な生物学的指標の範囲内に入るかどうかを判定するステップと、
e)前記それぞれの分析時間期間内において、興奮している前記位置ペアリング内において、先導する性状を有する先導信号を定めるステップと、
f)前記それぞれの分析時間期間内において、各前記興奮信号が各位置ペアリング内で先導している、それぞれの前記分析時間期間内の時間の割合に基づいて、取得されたそれぞれの電位図のペアリングに一連の先導信号スコアを割り振るステップと、
g)前記分析ステップb~fを少なくとも一回反復するステップであって、この反復が、同一の検知位置について、少なくともお互いに反復の分析時間期間と重複する分析時間期間のために行うものである、反復するステップと、
h)各検知位置ごとの各分析時間期間を結合して、各検知位置が定められた測地的距離の領域内の他の位置に対して先導する傾向がある割合の統計的尺度を提供するステップと、
i)前記測地的距離の重複する領域から得られた先導信号スコアを関連付けて、相対的な結合された先導信号スコアとし、当該検知位置が全体的に他の領域に先行し、したがって、前記異常な調律をもたらすドライバ領域にあるかまたは隣接するドライバ領域にあるかの相対的な可能性の指示を提供するステップと、
を含む、
コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記先導信号を定めるステップは、ペアリングされた電極における興奮の相対的タイミングを確認すること及びそこからの前記先導信号を定めることを含む、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
多数の分析時間期間にわたって取得された先導信号スコアが、それらの分析時間期間にわたって同時に記録された、すべての前記電極にわたる1つまたは複数の興奮順序を識別するために使用される、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
事前に定められた測地的距離が0.2cm以上6cm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
複数の検知位置から前記同時に取得された電位図の性状であって、前記性状が、サイクル長、興奮順序、サイクル長が変化したタイミング、および電位図の形態のうちの1つまたは複数に基づいて、前記先導信号スコアに優先を与えまたは拒絶するステップをさらに含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記結合された先導信号スコアが、解剖学的位置、あるいはアブレーションの効きめに関する、当該ケースの間における、もしくは以前のデータから取得された他の既知の修正因子に応じて修正され、修正された先導信号スコアとして提供される、
請求項1~5のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
以前の患者のデータ、生データからの静的または動的な計算、ならびにコンピュータモデルまたは統計モデルのうちの1つまたは複数を使用して、前記修正因子が、生成される、請求項6に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記修正因子が、ニューラルネットワーク内のフィードバック深層学習モデルを使用して生成される、請求項7に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
割り振られた前記先導信号スコアをグラフィカル表現で表示するためにディスプレイ出力を生成するステップをさらに含み、前記グラフィカル表現が、前記心臓の前記対応する検知位置の空間配置に対応して、前記先導信号スコアが前記空間配置に表示される、グラフィカル表現を有する3Dグラフィカル表現である、請求項1~8のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
記録時間期間にわたって、心臓上の対応する一連の検知位置から取得された複数の電極から記録された、電位図のデータを使用して、心臓の異常な調律を支えまたは起こることに関与する前記心筋の1つまたは複数の領域を識別するためのコンピュータシステムであって、前記電位図のデータは、複数の興奮データを含み、前記心臓の心筋の興奮信号をさらに含み、
プロセッサと、
受信された電位データを記憶するための第1のメモリと、
前記プロセッサによって実行されることにより、
i)事前に定められる測地的距離を設定することと、
ii)前記記録時間期間をいくつかの分析時間期間に分割し、各検知位置を前記定められた測地的距離内にある、複数の他の検知位置とペアリングし、このように複数の位置ペアリングを形成することと、
iii)前記分析時間期間の各々について、各ペアリング内の位置ごとに各興奮信号の相対タイミングを定めることと、
iv)興奮信号の前記相対タイミングが妥当な生物学的指標の範囲内に入るかどうかを判定することと、
v)前記それぞれの分析時間期間内において、興奮している前記位置ペアリング内において、先導する性状を有する先導信号を定めることと、
vi)前記それぞれの分析時間期間内において、各前記興奮信号が各位置ペアリング内で先導している、それぞれの前記分析時間期間内の時間の割合に基づいて、取得されたそれぞれの電位図のペアリングに一連の先導信号スコアを割り振ることと、
vii)前記ii)~vi)のステップの実行を反復することであって、この反復が、同一の検知位置について、少なくともお互いに反復の分析時間期間と重複する分析時間期間のために行うものである、反復することと、
viii)検知位置ごとの各分析時間期間を結合して、各検知位置が定められた測地的距離の領域内の他の位置に対して先導する傾向がある割合の統計的尺度を提供することと、
ix)重複する測地的距離の領域からの先導信号スコアを関連付けて相対的な結合された先導信号スコアを提供することと、
x)各検知位置が全体的に他の領域に先行し、したがって、前記心臓の異常な調律のドライバ領域にあるかまたは隣接するドライバ領域にあるかの相対的な可能性の指示を、出力デイスを介して提供することと
を前記システムに行わせるプログラムコードをその中に記憶している第2のメモリと、
を備える、コンピュータシステム。
【請求項11】
多数の分析時間期間にわたって取得された先導信号スコアが、それらの分析時間期間にわたって同時に記録された、すべての前記電極にわたる1つまたは複数の興奮順序を識別するために使用されように構成された、請求項10に記載のコンピュータシステム。
【請求項12】
前記事前に定められた測地的距離が0.2cm以上6cm以下である、請求項10又は11に記載のコンピュータシステム。
【請求項13】
複数の検知位置から前記同時に取得された電位図の性状であって、前記性状が、サイクル長、興奮順序、サイクル長が変化したタイミング、および電位図の形態のうちの1つまたは複数に基づいて、前記先導信号スコアに優先を与えまたは拒絶するように構成された、請求項10~12のいずれか一項に記載のコンピュータシステム。
【請求項14】
解剖学的位置、あるいはアブレーションの効きめに関する、当該ケースの間における、もしくは以前のデータから取得された他の既知の修正因子に応じて、前記結合された先導信号スコアを修正するように構成された、請求項10に記載のコンピュータシステム。
【請求項15】
前記修正因子が、以前の患者のデータ、生データからの静的または動的な計算、ならびにコンピュータモデルまたは統計モデルのうちの1つまたは複数を使用して生成される、請求項14に記載のコンピュータシステム。
【請求項16】
前記修正因子が、ニューラルネットワーク内のフィードバック深層学習モデルを使用して生成される、請求項15に記載のコンピュータシステム。
【請求項17】
割り振られた前記先導信号スコアをグラフィカル表現で表示するためにディスプレイ出力を生成するステップをさらに含み、前記グラフィカル表現が、前記心臓の前記対応する検知位置の空間配置に対応して、前記先導信号スコアが前記空間配置に表示される、グラフィカル表現を有する3Dグラフィカル表現である、請求項10に記載のコンピュータシステム。
【請求項18】
請求項10に記載のコンピュータシステムを含むシステムであって、前記システムが、多極電気カテーテル、およびそれを介して前記カテーテルからの信号を前記第1のメモリに記憶することができるインターフェース構成をさらに備え、前記インターフェース構成が、アナログデジタルコンバータを含む信号処理手段を備える、コンピュータシステム。
【請求項19】
プログラムがコンピュータに実行されるとき、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の方法を実行するように指示するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓の調律(heart rhythm)の異常をマッピングする際に有用な方法およびシステムに関し、特に、統計的に異常な心臓の調律に至らせている可能性が高い心臓の領域を識別する方法およびシステムを提供する。
【背景技術】
【0002】
心房細動(AF)は、最も一般的な持続性の心臓のリズム異常である。その発生率は、高齢化する人口に部分的に起因して増加し、まん延しつつある流行病と呼ばれている。AFは、動悸の不快な症状を引き起こし、脳卒中、心不全(HF)、および死亡のリスクを増大させる心臓の不規則な収縮をもたらす。経皮カテーテルアブレーション(CA)は、AFの症状がある患者の安全な治療選択肢である。これらの処置の成功率は、AFのより良い理解、新しい技法および技術の開発、ならびにより重要な医師の経験に起因して、時間ともに改善されている。しかしながら、これらの処置の成功率は、依然50%と70%との間に留まる程度である。
【0003】
AFの持続および維持に関与する特定の部位(以後AFドライバと呼ばれる)を標的にする際に見出される困難さの主な理由は、心房細動における活性化(activation:興奮)波頭(wavefronts)の不規則で無秩序な性質である。個々の回転、再突入、または限局性の活性化(興奮)の持続する迂曲および不安定性は、活性化シーケンス(興奮順序)の解明を非常に複雑にする。
【0004】
ごく最近では、特定の「ドライバ」領域が認識され得るような方法で、心房内から記録された電気的なデータ(すなわち、電位図(electrograms))が医師に提示されることを可能にする、いくつかのコンピュータによる電子解剖学的な方法が開発されている。これらのドライバはまた、ドライバの頻度と非ドライバのランダムで無秩序な活動からの活性化の頻度との間の関係に応じて、認識することが容易であったり、困難であったりする可能性がある。パノラマ式マッピング技法は、この問題に対処しようと試みる。本明細書では、対象の心腔に多極カテーテルが挿入され、心室のいたる所からの信号が同時に取得される。これの例には、非接触マッピング(Ensite、Abbott Medical、あるいはAcutus Medical)、ならびに特定の2Dおよび3Dの接触マッピング方法(たとえば、Cartofinder、Biosense Webster、J&J、Topera、Abbott Medical、Rhythmia、Boston Scientific)が含まれる。US2014/0371609は、リズム障害の原因を識別することに対する1つの手法の一例を記載する。
【0005】
心房興奮が隣接するセンサでの興奮よりも前に発生する領域を特定しようとする方法が当技術分野で知られている。1つの例がヨーロッパ特許出願EP3192438A1に例示されている。当該文献において発明者は、興奮が隣接するセンサよりも先に生じる回数の割合を分類し、コンピュータ生成された心腔の画像にこれを表示することを提案している。このような興奮を、その後、分類し、注釈を付け、あるセンサにおいて隣接するセンサよりも先に興奮する回数を、分類に応じて表示することができる。つまりこの方法は、隣接するセンサにおける興奮のみに基づく分類を提案しており、心房細動の多くのコンピュータモデルおよび理論モデル(これらは基本的に二次元的表現に基づいている)において、このような技法は、主要な巣状興奮領域を目立たせるには最初は十分に思えるはずである。しかしながら、臨床では、伝導は不連続となり得るものであり、人間の心房の3次元的な壁厚内では、頻回で、全く無秩序となり得る。したがって、隣接するものとのみ比較することは、判断を誤ってしまう可能性が高く、たとえば、エイリアシング効果が生じることにより、ある領域の興奮が隣接する電極よりも先んじているように見えても、実際には、伝導が非常に遅延していたり、遠距離場の興奮を表しているために、後から興奮している場合がある。これは、不適切な領域でアブレーションを行ってしまったり、患者に対するリスクを増大させたり、侵襲的処置を長引かせる可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、記録時間期間にわたって心臓の対応する一連の検知位置から取得された複数の電極から記録された電位図データを使用して、心臓の異常な調律(heart rhythms)をサポート(支える)または開始する(起こす)ことに関与する心筋の1つまたは複数の領域を識別するコンピュータ実装方法が提供され、方法は、
事前に定められた測地的距離を設定するステップと、
記録時間期間をいくつかの分析時間期間に分割し、各検知位置を定められた測地的距離内からの複数の他の検知位置とペアリングし、このように複数の位置ペアリングを形成し、分析時間期間の各々に対して、各ペアリング内の位置ごとに各興奮信号の相対タイミングを定めるステップと、
興奮信号の相対タイミングが妥当な生物学的指標内に入るかどうかを判定するステップと、
それぞれの分析時間期間内の電位活性化ごとにペアの先導信号(lead signal)を定めるステップと、
各興奮信号が各ペアリング内で先導しているそれぞれの分析時間期間内の時間の割合に基づいて、各分析時間期間内に取得されたそれぞれのペアリングに一連の先導信号スコアを割り振るステップと、
分析時間期間を変更しながら少なくとも一回同じ位置において分析を繰り返すステップと、
信号位置(検知位置)ごとの各分析時間期間を結合して、各信号位置(検知位置)が定められた測地的距離の領域内の他の位置に対して先導する傾向がある割合の統計的尺度を提供するステップと、
重複する測地的距離の領域からの先導信号スコアを関連付けて相対的な結合された先導信号スコアを提供し、各検知位置が全体的に他の領域に先行し、したがって、心臓の異常な調律のドライバ領域にあるかまたは隣接するドライバ領域にあるかの相対的な可能性の指示を提供するステップと
を含む。
【0007】
本発明者は、心房細動(AF)は、興奮(活性化)が生じる部位をアブレーション(焼灼)することにより、ほとんどの場合低減化および停止させることができると認識している。このような部位を特定する1つの方法は、心腔内で多極カテーテルを興奮順序(活性化シーケンス)の方向に定速で移動させ、圧倒的に「最早期」と思われる電極の極に近付けていくことである(心房細動では、興奮順序は繰り返しではなく、時間と共に多かれ少なかれ変化するものであり、患者によっても異なる)。カテーテルがあるポイントを越えると、興奮の順序が「遅く」なり始め、二次元平面でさらに移動させていくと、ある一つの領域が真に一貫して興奮の起源であるかどうかを判定することができる。このような部位において行うアブレーションは、AFの低減化および停止に最も有効であると考えられる。この処置は、AFでは興奮パターンが不規則且つ頻繁に変化すること、ならびに手術者が一度に取り込むことができるデータの量によっては、非常に複雑になる。手術者が利用できる心電図データが多いほど、分析およびマッピングの結果はより正確になるが、データの分析はより困難になる。したがって、手術者は、興奮の相対的タイミング及び心電図パターン、ならびにこれが時間とともにどのように変化するかを絶えず認識しておかなければならない場合が多い。この問題を解決するためのほとんどの方法では、AFメカニズムの所定の理論を比較的解像度の低いデータに当てはめ、このデータに様々なフィルタをかけてこのメカニズムを試行し、解決しようとするものである。
【0008】
本発明者は、EP3192438A1に関して上述された影響などの望ましくない影響は、専門家であれば、周期の急変が後に興奮する部位へと伝播して行く周期変化を注意深く分析することにより、区別し得るものであると認識している。しかしながら、心房細動に存在するかなり無秩序な伝導波頭は、効果的な伝導の境界に存在することが多い、すなわち、周期のわずかな変化が、遠く離れた部位における伝導の減速(減少)または伝導の失敗のいずれかをもたらす可能性があり、その結果、別の部位における短絡、ひいては興奮のタイミングの異常な変化につながる。心電図信号のさらなる特徴を調査および分析することにより、所与のセンサが「先行するもの」であるか、「追随するもの」であるかを正しく分類できることが分かっている。
【0009】
上記で言及された妥当な生物学的パラメータに関して言うと、心筋細胞は、再分極時間、すなわち、心臓細胞が脱分極後に再分極して興奮性となるのにかかる時間の範囲が限られていることがよく知られている。心筋中の電気興奮の伝導速度は、先に記録された妥当な速度を最小限とすること、及びこれが対象の心筋組織によって異なる可能性があることもよく知られている。たとえば、心房組織は、心室内のプルキンエ組織よりも伝導速度が遅い。このようなことはこれまでに研究され定義されているので、フィルタの作成に利用することができる。なぜなら、文献に記載されているパラメータを超える興奮が単一の部位において繰り返すということは、同じ部位の興奮であるはずがなく、むしろ、局所的な興奮および遠距離場での興奮が同じ電極で記録されたか、或いは1つの記録電極から次の記録電極への一連の興奮である可能性があるためである。同じ部位において70ms(ミリ秒)以内に発生する興奮は、生物学的に非現実的と考えられる(たとえば、Hunter RJ、Diab I、Thomas GらのValidation of a classification system to grade fractionation in atrial fibrillation and correlation with automated detection systems、Europace:European pacing、arrhythmias、and cardiac electrophysiology:journal of the working groups on cardiac pacing、arrhythmias、and cardiac cellular electrophysiology of the European Society of Cardiology、2009年11号1587~96、およびNademanee K、McKenzie J、Kosar EらのA new approach for catheter ablation of atrial fibrillation:mapping of the electrophysiologic substrate、Journal of the American College of Cardiology、2004年43号2044~53を参照)。54cm/sの同様の伝導速度は人間のAFを記述し、>60cm/sの伝導速度は、したがって、生物学的に非現実的と考えられ得る(たとえば、Konings KT、Kirchhof CJ、Smeets JR、Wellens HJ、Penn OC、Allessie MAのHigh-density mapping of electrically induced atrial fibrillation in humans、Circulation、1994年4月、89(4):1665~80を参照)。
【0010】
次に、本発明のオプションの特徴が提示される。これらは、単独で、または本発明の任意の態様との任意の組合せで適用可能である。
【0011】
1つまたは複数の実施形態では、先導信号スコアは、複数の時間期間にわたって取得され、それらの時間期間にわたって同時に記録されたすべての電極にわたる1つまたは複数の興奮順序を識別するために使用される。
【0012】
興奮順序は、包括的な興奮順序を提供するために重複する測地的距離の領域から関係付けられてよい。電位シーケンスは、全体的な興奮順序およびパターンに基づいてグループ化されてよく、これらのグループの各々からの電位シーケンスは別々に分析される。
【0013】
より広いグループのセンサにわたるノンパラメトリック興奮順序の比較が行われてよい。その中で興奮ペアリングが比較されるべき定められた測地的距離により、潜在的に誤解を招く隣接する分類が識別され、エイリアシング効果が拒絶される可能性がある。信号のフィルタリングは信号識別をさらに改善することもでき、これは古典的な信号分析タイプであってよいが、代替として、生理学的に妥当な指標によって決定されてよい。たとえば、伝導速度は、事前に計算されるか、または直接信号から計算されてよく、2つの興奮信号が妥当な伝導の境界からはずれる場合、それらは、同じ波面に直接関係せず、したがって、それらの信号のペアリングが分析から拒絶されると考えられてよい。
【0014】
信号のエイリアシングを回避する別の方法は、センサの各ペアの興奮順序を、各分析時間期間内に複数回評価することを含む。段階的な方式で、信号ごとに、あらゆる潜在的な興奮信号が識別される。その後、1つずつ、これらの興奮信号は、したがって、選択された測地的距離内のすべての他のセンサで発生する各興奮と比較される。センサごとに、比較は、あらゆる興奮に対して、そのペアリングされたセンサのすべてとこのように行われる。センサごとに1つ、確率的データの複数の配列が作成され、それにより、そのセンサが測地的距離内のそのペアリングされたセンサを先導する回数が容易に計算される。センサが先導している時間の割合は、したがって、直接的に計算することができる。
【0015】
この方法の主な利点は、あまり頻繁でない興奮を表すセンサが、より少ない興奮のペアリングに寄与することである。したがって、そのようなセンサがそれらの隣接するセンサを頻繁に先導するように誤って見える場合でも、より少ない数の興奮が、それらが先導するように計算される回数を削減し、したがって、ある時間期間にわたる割合が低くなる。この方法の結果は、不整脈の永続化に決定的に寄与しないバイスタンダ回路がより低い先導スコアを割り当てられることである。
【0016】
1つまたは複数の実施形態では、包括的な信号スコアは、各信号および位置のありそうな相対的な重要性のモデルに基づいて調整される。
【0017】
いくつかの実施形態では、記録時間期間は5秒と5分との間である。
【0018】
いくつかの実施形態では、電位データは、さらに、空間基準フレームに対して電位信号が取得されている検知位置の場所を識別する各電位信号に関連付けられた空間データを備える。
【0019】
そのような実施形態では、空間基準フレームは、心筋を表すモデルの幾何形状を構成する頂点および多角形用の座標を備える。
【0020】
いくつかの実施形態では、事前に定められた測地的距離は、0.2cm以上6cm以下である。
【0021】
いくつかの実施形態では、測地的距離は、信号周波数分析および、計算または事前に決定された伝導速度の組み合わせに基づいて調整されてよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、検知位置は心腔と関連付けられ、各検知位置は、心腔の同じ側面にある他の検知位置のみとペアリングされる。
【0023】
いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法は、複数の利用可能な位置から同時に取得された電位の特性に基づいて、先導信号スコアを優先または拒絶するステップをさらに含み、特性は、サイクル長、興奮順序、サイクル長における変化後のタイミング、および電位形態のうちの1つまたは複数を含む。
【0024】
このようにして、サイクル長の変化、興奮順序、および形態の変化においても先導する先導電位が優先されてよく、そうでない先導電位は拒絶されてよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、結合された先導信号スコアは、修正された先導信号スコアを提供するために、解剖学的位置、またはそのケースの間に、もしくはアブレーション効果に関連付けられた以前のデータから取得された他の既知の修正因子に応じて修正される。
【0026】
このようにして、結合された先導信号スコアは、不整脈の修正、終了、および除去に関連付けられたこれらの部位におけるアブレーョンの可能性をより正確に反映する。結合された先導スコアは正規化されてよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、修正因子は、以前の患者のデータ、生データからの静的または動的な計算、コンピュータモデルまたは統計モデルのうちの1つまたは複数を使用して生成されてよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、修正因子は、ニューラルネットワーク内のフィードバック深層学習モデルを使用して生成されてよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、正規化され、結合された先導信号スコアの修正因子は、アブレーションが実行されたときのサイクル長の変動に関して、または同様の患者に対するアブレーション中に以前に取得されたサイクル長の変動に対する参照から、または同様の患者に対するアブレーションから以前に知られた患者の結果に対する参照によって動的に決定され、それらのうちのいずれも生データまたはコンピュータモデルもしくは統計モデルから静的または動的に計算されてよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、時期尚早に興奮する領域、および/または逆に他より遅く一貫して興奮する、すなわち低い先導信号スコアを有する領域を正確に識別することが可能である。これらの遅延興奮スコアは、受動的な興奮として分類されてよく、不整脈の永続化または発生において重要になる可能性が低い。それらは、したがって、アブレーション処置の間は回避されてよい。さらに、非伝導構造、たとえば、心臓弁または傷跡によって境界を付けられた心腔の領域、および低い先導スコアを有するように一貫して見られる領域は、それら自体を受動的に興奮しているように推論することができる。これらの領域をそのようにラベル付けすることにより、それらは安全に無視されてよく、注意は他の場所に集中する。これは、アブレーション処置の間に取られる時間を削減することが期待されてよく、これらの領域に対するマッピングおよびアブレーションは削減および回避され、したがって、処置時間が削減され、処置の安全性が高まる。
【0031】
いくつかの実施形態では、心臓の傷跡の分布、位置、またはサイズ、心腔のサイズおよび形態などの患者自身のデータは、統計モデルを修正および改善するために使用されてよく、統計モデルは、次いで、正規化さ、結合された先導信号スコアの修正因子をさらに調整するために使用される。
【0032】
いくつかの実施形態では、電位および位置は動的に取得され、統計モデルはリアルタイムで調整されるが、少なくとも1つの検知位置は主として静的でゼロのままであり、1つまたは複数の検知位置は、対象の心筋の表面にわたる位置において調整される。
【0033】
いくつかの実施形態では、相対的な結合された先導信号スコアは、1つもしくは複数のローミング電極ペアから、または遠距離場電位もしくは表面p波などの心電図信号を参照して取得された電位データに関して動的に修正される。
【0034】
いくつかの実施形態では、ローミング電極からの電位の興奮タイミングは、他の電極位置における検知から決定されたグループ分類に関係付けることにより、測地的距離内の特定の位置において以前に取得された電極ペアの近くの位置の仮想興奮タイミングと比較することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、結果として得られた信号スコアおよび治療情報は、処置または臨床の結果データに結合され、ニューラルネットワーク内の深層学習モデルの訓練データセットとして使用される。
【0036】
臨床結果データには、医療記録、臨床結果データベース、患者報告結果尺度、ECGデータ、遠隔測定データ、ウェアラブルデバイスもしくは埋込み式デバイス、患者活動モニタ、または任意の他の生理学的測定ツールからのデータが含まれてよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、処置結果データは、サイクル長、心臓のリズム、電極興奮順序であってよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、アブレーションの位置、アブレーションの時間、およびアブレーションのエネルギーなどの処置要因は、モデルへの入力として使用される。
【0039】
いくつかの実施形態では、遅延興奮領域によって全体的に境界を付けられた心臓の領域、または非伝導解剖学的領域は、したがって不整脈の維持または開始において重要ではない領域として強調される。
【0040】
いくつかの実施形態では、不整脈の維持または開始に対して重要ではないと識別された領域によって境界を付けられた領域は、治療が不整脈の効果的な治療に必要である可能性が低い領域として示される。
【0041】
いくつかの実施形態では、方法は、割り当てられた先導信号スコアのグラフィカル表現を表示するためにディスプレイ出力を生成するステップをさらに含み、グラフィカル表現は、心臓の対応する検知位置の空間配置に対応する空間配置に表示された先導信号スコアのグラフィカル表現を有する3Dグラフィカル表現である。
【0042】
いくつかの実施形態では、先導信号スコアのグラフィカル表現は、心臓の3Dグラフィカル表現に重ね合わされる。
【0043】
いくつかの実施形態では、先導信号スコアの相対値を表すためにカラースケールが使用される。
【0044】
いくつかの実施形態では、先導信号スコアのグラフィカル表現はサイズが変化し、高い先導信号スコアのグラフィカル表現は、低い先導値スコア用のグラフィカル表現よりもサイズが大きい。
【0045】
いくつかの実施形態では、方法は、電位データを取得するステップをさらに含む。そのような実施形態では、電位データは、先導信号スコアを計算するためにデータがその後処理される前の全記録時間期間の間に取得されてよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、心臓電位データは、心臓カテーテルまたは表面ECG電極からの非接触マッピングデータから取得される。
【0047】
本発明の第2の態様によれば、心臓の対応する一連の検知位置から取得された複数の電極から記録された電位データを使用して、心臓の異常な調律をサポートまたは開始することに関与する心筋の1つまたは複数の領域を識別するためのコンピュータシステムが提供され、システムは、
プロセッサと、
受信された電位データを記憶するための第1のメモリと、
プロセッサによって実行されると、
事前に定められた測地的距離を設定するか、またはそれが設定されることを可能にすることと、
記録時間期間をいくつかの分析時間期間に分割し、各検知位置を定められた測地的距離内からの複数の他の検知位置とペアリングし、このように複数の位置ペアリングを形成することと、
分析時間期間の各々に対して、各ペアリング内の位置ごとに各興奮信号の相対タイミングを定めることと、
興奮信号の相対タイミングが妥当な生物学的指標内に入るかどうかを判定することと、
それぞれの分析時間期間内の電位興奮ごとにペアの先導信号を定めることと、
各興奮信号が各ペアリング内で先導しているそれぞれの分析時間期間内の時間の割合に基づいて、各分析時間期間内に取得されたそれぞれのペアリングに一連の先導信号スコアを割り振ることと、
分析時間期間を変更しながら少なくとも一回同じ位置において分析を繰り返すことと、
信号位置(検知位置)ごとの各分析時間期間を結合して、各検知位置 が定められた測地的距離の領域内の他の位置に対して先導する傾向がある割合の統計的尺度を提供することと、
重複する測地的距離の領域からの先導信号スコアを関連付けて相対的な結合された先導信号スコアを提供することと、
各検知位置が全体的に他の領域に先行し、したがって、異常心臓の調律のドライバ領域にあるかまたは隣接するドライバ領域にあるかの相対的な可能性の指示を提供することと
をシステムに行わせるプログラムコードをその中に記憶している第2のメモリと
を備える。
【0048】
第2のメモリは、第1のメモリと同じかまたは異なる物理メモリであってよい。
【0049】
第1の態様(すなわち、コンピュータ実装方法)に関して上述されたオプションの特徴の各々は、本発明の第2の態様(すなわち、コンピュータシステム)または第3の態様に等しく適用されてよい。
【0050】
本発明の第3の態様によれば、プログラムがコンピュータによって実行されると、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法をコンピュータに実行させる命令を備える、コンピュータプログラムが提供される。
【0051】
本発明のさらなるオプションの特徴が以下に提示される。
【0052】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態が例として記載される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】STARマッピングプロセスと呼ばれる場合がある、本発明による方法の一実施形態のフロー図である。
【
図2A】心臓のまわりの様々な位置に配置された電極の一例および結果として得られた信号の分析に対する測地的距離の重要性を描写する図である。
【
図2B】心臓のまわりの様々な位置に配置された電極の一例および結果として得られた信号の分析に対する測地的距離の重要性を描写する図である。
【
図2C】心臓のまわりの様々な位置に配置された電極の一例および結果として得られた信号の分析に対する測地的距離の重要性を描写する図である。
【
図2D】心臓のまわりの様々な位置に配置された電極の一例および結果として得られた信号の分析に対する測地的距離の重要性を描写する図である。
【
図2E】心臓のまわりの様々な位置に配置された電極の一例および結果として得られた信号の分析に対する測地的距離の重要性を描写する図である。
【
図3A】電極によって取得された測定値、およびこの場合、僧帽弁輪のまわりに反時計回りの回路がある不整脈に応答して測地的距離が測定値に対してどのように影響するかのさらなる例を示す図である。
【
図3B】電極によって取得された測定値、およびこの場合、僧帽弁輪のまわりに反時計回りの回路がある不整脈に応答して測地的距離が測定値に対してどのように影響するかのさらなる例を示す図である。
【
図3C】電極によって取得された測定値、およびこの場合、僧帽弁輪のまわりに反時計回りの回路がある不整脈に応答して測地的距離が測定値に対してどのように影響するかのさらなる例を示す図である。
【
図3D】電極によって取得された測定値、およびこの場合、僧帽弁輪のまわりに反時計回りの回路がある不整脈に応答して測地的距離が測定値に対してどのように影響するかのさらなる例を示す図である。
【
図4A】不応期を決定する際の生理学的指標の影響を描写する図である。
【
図4B】
図4Aと同様の波面を描写する図であるが、この例では、波面は示された領域の下部で右から左に今回は進行しているように見える。
【
図4C】時間分析期間内の複数の重複する分析期間の一例を示す図である。
【
図5】妥当な生物生理学から導出されたアルゴリズムを使用して、
興奮および
興奮ベクトルをすでに廃棄している先導スコアに、特許請求された方法のSTARマッピング実施形態が比例関係をどのように
割り振るかを示す図である。
【
図6A】順次取得された部位がそれらの先導信号スコア割当てをどのように結合させることができるかを示す図である。
【
図6B】順次取得された部位がそれらの先導信号スコア割当てをどのように結合させることができるかを示す図である。
【
図6C】順次取得された部位がそれらの先導信号スコア割当てをどのように結合させることができるかを示す図である。
【
図6D】順次取得された部位がそれらの先導信号スコア割当てをどのように結合させることができるかを示す図である。
【
図7】ドライバ領域が見つかる可能性が低い低信号スコアを有する領域を描写する概略図である。
【
図8A】本発明の一実施形態による方法を使用して生成された3Dマップの例を示す図である。
【
図8B】本発明の一実施形態による方法を使用して生成された3Dマップの例を示す図である。
【
図8C】本発明の一実施形態による方法を使用して生成された3Dマップの例を示す図である。
【
図8D】本発明の一実施形態による方法を使用して生成された3Dマップの例を示す図である。
【
図9A】対応する局所的
興奮タイミングマップとともに、本発明の一実施形態による方法を使用して生成された3Dマップの例を示す図である。
【
図9B】対応する局所的
興奮タイミングマップとともに、本発明の一実施形態による方法を使用して生成された3Dマップの例を示す図である。
【
図9C】対応する局所的
興奮タイミングマップとともに、本発明の一実施形態による方法を使用して生成された3Dマップの例を示す図である。
【
図10】マップを計算する簡略化されたプロセスの概略図である。
【
図11A】対応する局所的
興奮タイミングマップとともに、本発明の一実施形態による方法を使用して生成された3Dマップのさらなる例を示す図である。
【
図11B】対応する局所的
興奮タイミングマップとともに、本発明の一実施形態による方法を使用して生成された3Dマップのさらなる例を示す図である。
【
図11C】リズムの組織化として示された先導部位におけるアブレーションの影響を有する対応する電位を描写する図である。
【
図12】アブレーションが実行された人間の臨床研究の間の部位の分布およびそのアブレーションの影響(AFの終了、サイクル長の減速、影響なし、または標的にされていない)を示す図である。
【
図13A】本発明の1つまたは複数の実施形態による方法において、不応期および妥当な
興奮時間の違いを使用することができる方法の概略図である。
【
図13B】本発明の1つまたは複数の実施形態による方法において、不応期および妥当な
興奮時間の違いを使用することができる方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下に記載される実施形態では、システムは、同時パノラマ左心房(LA)マッピングを可能にするために、全心腔バスケットカテーテル(Constellationカテーテル、Boston Scientific,ltd、USおよびFIRMapカテーテル、Abbott、US)と連携して使用されてよい。しかしながら、電位データを取得するための他の適切なカテーテル/電極が使用されてよく、対象の領域全体から同時にデータを収集する必要はない。対象の領域は、たとえば、より小さい領域に分割することができ、より小さい領域ごとに電位データが収集され分析される。次いで、分析の結果は結合され、単一のSTARマップに表示されてよい。
【0055】
以下の実施形態は、以下では「ランク付けされた信号の確率論的軌道分析(STAR)マッピング」システムと呼ばれ、たとえば、3Dマップの形式で表示することができる心不整脈のドライバの部位を識別する目的で開発された、マッピングシステムを開示する。STARマッピングシステムを使用して作成されたマップは、以下では「STARマップ」と呼ばれる。そのようなSTARマッピングプロセスの詳細な例が
図1に示されている。
【0056】
方法を実行するとき、医師は外側左心房に多極パノラママッピングカテーテルを配置し、ある一定期間(たとえば、5秒~5分)の間データを取得し、次いで左心房の隔壁または前壁に近接並置することを確実にするようにカテーテルを再配置し、別の記録が実行される。
【0057】
図6および
図10は、マップを計算する方法の簡略化された概略図を描写する。「先導」電極の割合はマップ間でコヒーレントであり、したがって、データおよび割合は、問題なく同じマップに表示することができるはずである。このようにして、心腔内でカテーテルを移動させ、さらなる記録を取ることにより、複数のコヒーレントな統計マップが順次構築されてよい。
【0058】
システムの原理は、AFが最も一般的である心不整脈の維持に機械的に寄与する興奮を生成する部位を識別することである。AFの無秩序な性質およびAFのサイクル長(CL)の変動性に起因して、固定された基準点に関して最も早い興奮の部位を特定することは実現可能でない。
【0059】
電位データを取得し処理するために使用されるシステムは、通常、患者の心腔に挿入された1つまたは複数の多極電気カテーテル(たとえば、上記で言及されたバスケットカテーテル)、増幅器およびアナログデジタル(AD)コンバータ、信号分析器を含むコンソール、プロセッサおよびGPU、ディスプレイユニット、制御コンピュータユニット、電極の3D位置情報を決定および統合するためのシステムを含む。
【0060】
システムは、カテーテル用のCarto(登録商標)システム(Biosense Webster、J&J)、NavX Precision(登録商標)(Abbott Medical)またはRhythmia(登録商標)(Boston Scientific)、3D電子解剖統合処理ユニットなどの既知のハードウェアおよびソフトウェアを使用することができる。「バスケット」カテーテル、円形もしくはマルチスプラインマッピングカテーテル(たとえば、Lassoカテーテル、Biosense Webster、J&J、HDマッピングカテーテル、Abbott Medical SJM、Pentarray Biosense Webster、J&J)、デカポーラカテーテル、またはアブレーションカテーテルなどのカテーテルが使用されてよい。これらのシステムおよびカテーテルは、心腔内の様々な位置における電気活動に関する電位図信号ならびに対応する位置データおよび時間データを収集するために使用される。これらのデータは、これらのデータに対するアルゴリズム計算を実行し、これらのデータを解釈して、異常心拍の維持および持続に関与する可能性が最も高い心臓内の領域に関する位置情報を医師に提供することを目的とする処理ユニットに渡される。あるいは、システムは、特注のカテーテル、追跡システム、信号増幅器、制御ユニット、計算システム、およびディスプレイを使用することができる。
【0061】
STARマッピングアルゴリズムは、HL1細胞(不死のマウス心臓細胞)における電気活動およびカルシウム通過を同時にマッピングするために、マルチ電極配列および光学マッピングを使用して体外で検証されている。それは、アブレーションに対する従来のマッピング、同伴、および応答でメカニズムが確認された、i)洞律動の心房ペースの拍動およびii)心房頻脈(AT)をもつ患者においても検証されている。
【0062】
STARマッピング手法をより詳細に考察する前に、(対応する空間データおよび時間データとともに)電位データの取得の後に、(統計的に異常心拍に至らせている可能性が高い心臓内の領域/部位を示す)「先導」信号を識別するために使用されるプロセス内の主なステップの概要を提供することは有用である。
【0063】
第1に、入力された電位信号から干渉および遠距離場の信号成分が取り除かれる。一実施形態では、システムは、たとえば、スペクトル分析、遠距離場信号ブランキング、遠距離場信号控除、フィルタリング、または当技術分野で知られている別の方法により、信号を関連成分に分解する。心臓内の対象の心室内を起源とする信号成分(たとえば、心房信号)が識別される。心房信号の相対タイミングが確立され、それは、明確、確率的、または確率論的な方式であってよい。いくつかの実施形態では、各信号の位相が決定されてよく、異なる電極間の相対的な位相シフトから相対タイミングが確立され得る。
【0064】
第2に、隣接する電極からの信号タイミングがペアリングされる。信号は、電極位置が互いに指定された測地的距離内にある場合にのみ互いにペアリングされる、すなわち、互いに近接する電極のみが互いにペアリングされる。これは、心腔壁の同じ側面に位置する電極のみをペアリングすることによってさらに改善されてよく、すなわち、心臓の後壁上の隣接する電極は隣接すると考えられるが、電極間の絶対距離が小さくても、電極が切れ目、たとえば、肺静脈の両側にある場合は隣接しないと考えられる。ペアリングされた電極における興奮の相対タイミングはこのように規定され、「先行する」電極が重要視される。このペアリングは、個別の分析時間期間の間に、通常、持続時間が10msと200msとの間に実行されてよい。分析時間期間の長さは、分析されているデータのすべてにわたって一定である必要はない。目的は、同じ興奮順序によって引き起こされたペアリングされた電極の興奮の間のタイミングを比較することであり、分析時間期間はそれに応じて決定することができる。たとえば、各分析時間期間は、同じ興奮順序から生み出された可能性が高い電極興奮を包含するように選択することができる。したがって、分析時間期間は互いに重複してよい。
【0065】
第3に、このプロセスは、所与の時間期間にわたって何回も(すなわち、多くの分析時間期間の間、ペアリングごとに)繰り返される。有利なことに、分析時間期間は重複し、たとえば、10~120秒間、最初の分析時間期間に対してシフトされる。所与の時間期間内に、分析時間期間は上述されたように重複してよい。たとえば、分析時間期間が200msである場合、分析時間期間は、100msだけ、すなわち50%重複してよい。言い換えれば、先導電極は、第1の200ms期間の間、次いで第2の200ms時間期間の間に決定され、所与の時間期間の間、第2の時間期間は第1の時間期間の開始後100msから始まり、以下同様である。分析時間期間自体と同様に、重複の程度はデータセットにわたって異なってよい。そのような反復分析により、あまり頻繁に繰り返さないか、または全く繰り返さない興奮順序は廃棄し、より頻繁に現れる興奮順序をより重要で優先度が高いものとしてランク付けすることが可能である。
【0066】
心房細動では、興奮パターンは、波面伝播における頻繁な変化とともに無秩序に現れる。各部位がマッピングされた興奮内のその隣接の各々に先行する「時間」の相対的な割合が計算され、したがって、より頻繁な「先導」電極部位の比例マップが作成される。
【0067】
第4に、各記録された領域が「先導」興奮を費やす「時間」の割合が計算される。この計算は、各電極がそのペアリングされた電極を先導すると判定された間の時間の実際の持続時間に基づいてよい。あるいは、それは、マッピングされた興奮内でその部位が先導する総分析時間期間の割合(それらの時間期間が互いに同じ持続時間かまたは異なる持続時間か)であってよい。したがって、いくつかの例では、相対的な割合は、所与の電極によって見られる心房興奮信号の総数を調べ、互いにペアリングされた複数の他の電極に対してその電極が先導するそれらの興奮信号の割合を決定することによって事実上決定される。隣接する電極のみをマッピングすることはエラーを引き起こす可能性があるが、システムはマッピングされたフィールド内で興奮の方向を確立するために、興奮のサイクルごとにすべての他の電極に対してすべての電極をマッピングする。シーケンスは、記録期間中の支配的な興奮順序およびそれらの興奮を先導している部位、すなわち興奮が生まれるポイントを識別するために分析される。局所化された原因を示唆する軌跡を有する興奮順序は、機構的に重要であると推定される。STARマッピングシステムは、したがって、(もしあれば)支配的なベクトルを確立するために所与のベクトルを用いて興奮順序の割合、および興奮がそのベクトルに続く時間の割合を計算する。マッピングフィールド内のすべての部位に対して、その相対的な重要度を決定するために、その部位から生まれたマッピングされた興奮の割合が計算される。
【0068】
計算された割合は、割合が心臓にわたって比較され得るように正規化される。このデータの統計的プロセス、正規化、およびその後の表示の多くの実施形態を予想することができる。
【0069】
心臓興奮の完全に受動的な領域を覆う電極は、もしあればこれらから生まれるように見える興奮を少ししかもたない傾向がある。興奮順序内で頻繁に「先導する」傾向がある興奮部位のみが、興奮の原因である可能性が高いことを示す原因値になる。同様に、サンプルAのエッジにおいて興奮が繰り返し最も早い重複する電極サンプリング位置AおよびBを考察すると、興奮はBからAに進行するように見られてよく、したがって、Aの早い興奮の部位は不活性であると見なされてよく、サンプルBからの電極が先導すると見なされ、したがって、サンプルBからの先導電極がより大きく強調される。このプロセスは、反復する興奮のパターンをさらに改良および定義し、そうでないパターンを廃棄するために複数の記録時間期間および位置にわたって繰り返されてよく、こうして、多極電極カテーテルから記録する単一の興奮から実現されるよりも広い領域のマッピングが構築される。
【0070】
第5に、計算されたメトリックのグラフィカル表現がディスプレイユニットに表示される。1つの優先的な実施形態では、最も頻繁に先導する電極の上に強調ポイントが示される。別の優先的な実施形態は、電極が「先導する」興奮順序である時間の割合を表すカラースケールの割当てを含む。このカラースケールは、ポイントの上、または対象の心腔の幾何学的シェルもしくは他の解剖学的表現の上に提示されてよい。そのようなカラースケールは、当技術分野で知られた方式の線形、バイナリ、階段状、および非線形であってよい。高密度の電極カバレージがない領域にわたって干渉が行われることを可能にするために、異なる説明の補間が使用されてよい。データスケールの先験的な知識が与えられると、医師は、アブレーションまたは他の治療のために対象の心腔内の「先導」領域の近傍内の領域を標的にすることができる。好都合なことに、カラースケール(または計算されたメトリックの他のグラフィカル表現)は、アブレーション処置の間に使用されるのと同じ解剖学的幾何形状の上へのメトリックの投影を使用して表示することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、システムは、受動的に興奮する領域によって境界が付けられた領域を強調表示する。そのような領域を治療することは、患者のためになるか、または不整脈を終了させる可能性が低く、したがって、これらの受動的に興奮する領域を強調表示することにより、過度な治療が回避されてよく、処置のリスクが軽減される。
【0072】
本システムのさらなる実施形態は、非接触または非侵襲のマッピングシステムから導出された電位または信号のタイミングを使用することができ、計算された非接触マップの空間解像度以外によって効果的に制限されない場合がある数の仮想電極が取得される。
【0073】
STARマッピングシステムの様々な態様が以下でより詳細に説明される。
【0074】
i)極ペアリングおよび測地的距離
心臓の電気興奮順序のマッピングに伴う1つの潜在的な難しさは、互いに近く、ある距離だけ離れた表面とすでに接触している極(たとえば、後方の極とペアリングされた前方の極)が不正確な結果を与える可能性があることである。これらの極は解剖学的幾何形状の異なる側面をマッピングするので、それらは同じ波面を見ておらず、結果として、取得された興奮時間が不正確になるはずである。これを克服するために、極は、それらが互いから事前に定められた測地的距離内にある場合にのみペアリングされる。これは、幾何形状上の投影された極位置を取り、幾何形状の表面を移動しているように投影された極間の距離、すなわち測地的距離を計算することによって決定される。
【0075】
測地的距離の影響は、
図2A~
図2Eを参照してより良く理解することができる。左心房のまわりに配置された一連の電極位置を考察する。
図2Aは、電極位置、ならびに、この例では太い陰影矢印によって示された、おおよそ電極1および電極7から生まれる波面方向のグラウンドトゥルースを示す。AFでは、これは波面を発する複数の領域とともに予想され、そのような領域からそれらが出現する割合は時間とともに変化する。
【0076】
図2Bは、ここで電極4のケースを考察して、この場合大きい測地的距離が適用される状況の一例を示す。電極4は、次に、電極6および8を
興奮する波面と比較される。
【0077】
図2Cに示されたように、電極7の近傍から出現する波面が、電極1の近傍から生まれる波面よりも頻度が高い場合、それは、縞模様の矢印によって示されたように、エイリアシングが発生し、電極4の
興奮が最終的に電極7から来ていることに誤って寄与することであり得る。引き続き、この帰属は、電極1~3の
興奮の帰属に影響を与える可能性があり、これらは、支配的な先導者ではなく支配的な追随者であると誤って割り当てられる可能性がある。略図では、電極は増加する陰影によって先導者として表され、減少する陰影によって追随者として表される。電極1は特に影響を受け、
興奮の下部(a low proportion of activations)においてのみ先導していると見なされる。
【0078】
一方、
図2Dは、小さい測地的距離のみが計算に使用される状況を描写する。ここでは、前の例におけるよりも少なく多い局所的な部位と電極が比較されることを見ることができる。
図2Eは計算された
興奮の結果として生じるベクトルを示し、利用されたより狭い測地的距離に起因して電極3および4が電極6~9ともはや比較されないので、エイリアシングの影響がこうして軽減され除去される。
【0079】
図3Aは、僧帽弁輪のまわりに反時計回りの回路を有する不整脈の代替例を描写する。電極1~9は同じ位置に留まっているが、電極10~13は現在隔壁に配置されている。
【0080】
図3Bに示されたように、小さい測地的距離が使用されると、電極の各グループ(1~4、5~9、および10~13)は個別に扱われ、単一のマクロリエントリ性頻拍のグラウンドトゥルースではなく、複数の先導部位の印象を与える。そのような小さい距離は、重要な回路内にポイントを配置する傾向があるという点である有用性を有するが、それは回路方向のいかなる指示も与えない。
【0081】
代替として、
図3Cは、より大きい測地的距離が使用される比較例を示す。この場合、電極の各グループ(1~4、5~9、および10~13)は、他のグループに対して重複していると見なされる。したがって、単一の回路は前方の壁にわたって反時計回りになっていると識別される。この例では、後方の壁はマッピングされていないが、前方の壁とは反対方向の
興奮の進行を示し、回路を完成する。測地的距離が設定される方法に関する決定は、基本的なリズムの規則性とサイクル長の組合せにより行われる。機械学習はさらにこのプロセスを改良し解決する。
【0082】
最後に、
図3Dは、電極ごとの比較の複数の領域が他の電極との比較用のそれ自体の測地的距離で選択されたさらなる例を示す。電極1~4は互いに比較され、電極部位6~9も互いに比較される(ここでは測地的距離は示されていない)が、各グループは、比較の互いの領域の外側にあるので、この例では別個のグループと見なされる。
【0083】
ii)興奮時間および極の先導(pole leaders)
AFのドライバは、大半の研究では、記録の間に完全な安定性を示していない。しかしながら、これらは、同じ解剖学的部位において反復および再発することを示している。このこととAFの無秩序な性質の両方を考慮して、STARマッピングシステムは、電極がその連続する極ペアに対して先導している時間の割合を決定するように働く。局部電位興奮タイミングは、単極電位上の最も急な下落、すなわち信号内の最大負偏向(dv/dt)を識別することにより、双極電位上の支配的なピークを識別するが、単極もしくは双極の信号の最大位相変化を識別することにより、または他の方法によって決定されてよい。取得された興奮時間を比較して、ペア内の電極は、興奮時間および間隔に応じて、追随者または先導者としてラベル付けすることができる。たとえば、密接した電極AおよびBから記録された電位を考慮すると、AとBとの間の間隔がBからAまでよりも短い場合、AがBを先導していると見なされる。しかしながら、AとBとの間の間隔が生理学的に不可能であるほど短い場合、BがAを先導し、またはBからAまでの時間も生理学的に信じ難く長い場合、興奮は関係がない。これらの指標は、処置の間に取得されたデータおよび以前のケースから得られた先験的知識に従って調整されてよい。あらゆる電極位置に対して、先導極になる全体的な傾向は時間の割合から計算され、それはそれが寄与するあらゆるペアにわたって真の先導極であると判断される。これは、それがペアリングされたすべての極に先んじて興奮された場合にのみ、極が100%先導者であり得ると言うことである。同じラインに沿って、極が他のペアに一貫して追随している場合、極は時間の0%先導している。
【0084】
電極位置ごとに、複数の先導信号スコアが計算されてよく、たとえば、その電極にある個別の興奮ごとに、計算が実行される時間分析ウィンドウごとに、興奮順序よる一連のグループ化ごとに、信号が取得された重複する領域ごとに、スコアを割り振ることができることが認識されよう。
【0085】
したがって、具体的な位置に対する最終的な単一の先導信号スコアは、その位置が先導していると見なされてよい時間の割合の統計的尺度を表し、それは修正、または記録時間期間、サイクル長、記録された興奮の数、記録された重複する領域の数などに正規化されてよい。この最終的な単一の先導信号スコアは、興奮順序のグループ化に応じて、さらに再分割および再計算されてよい。
【0086】
興奮時間を決定するとき、同じ
興奮順序が電極上の局所的および遠距離場の電位偏向を生成すること、ならびにこうしてその電極の2つの別々の
興奮として潜在的にカウントされることを保証するために、不応期を使用するフィルタリングが使用される。電極の
興奮がこの不応期内に入る場合、この時間期間内に心房組織は別の
興奮によって再び刺激することができないので、それは別個の
興奮を表すことができない。それにより、第2の
興奮は最初の
興奮順序の一部であるように見られ、システムによって無視される(
図4A)。複雑な断片化された電位をマッピングすることに関する以前の研究は、心房心筋のおおよそ効果的な不応期として<70msを考えており、それにより、この時間内に見られるいずれも第2の波面である可能性は低い。これは、動物研究においてAFの間に取得された不応期と一致する。
【0087】
不応期を決定する際の生理学的指標の効果は、
図4A~
図4Cを参照してより良く理解することができる。最初に
図4Aを参照すると、パネル1は興奮組織の領域を示し、そこでは波面が左から右まで横断している。これは、後の
興奮を示す増大する陰影の等時線によって表される。この例では、e1~e4とラベル付けされた4つの電極のグループが考察されてよい。代表的な電位がパネル2に示されている。この例では、どの電極が各々を先導しているかを比較する前に、各電極の
興奮時間が識別され(*とマークされ)、電極e1上の(+とマークされた)次の電気偏向は、以前マークされたタイミングと近すぎるタイミングにあり、したがって、別個の
興奮と見なされない。STARマッピングは、e1をすべての他の電極を先導していると見なし、e4をすべての他の電極に追随していると見なす。しかしながら、それらの向きが
興奮の波面に対しておおよそ垂直なので、e3はe2の
興奮時間の非常にわずかしか追随していない。伝導速度は距離/時間によって与えられ、2つの部位の間の時間差は小さいので、直接e3に伝導されるべきe2における波面
興奮に必要とされる伝導速度は実行困難なほど高い。これらの2つの部位の間の不応期は、不応期(RP)を引き起こす任意のまたは計算された最大伝導速度を使用して計算することができる。したがって、STARマッピングシステムは、
興奮がe2からe3に進行することができず(この波面方向は「不可能な波面方向」という説明文を有する黒い矢印でラベル付けされている)、むしろ、e2およびe3における
興奮は、異なる方向から近づく別々の波面から、または同時にe2およびe3を横断する単一の波面の結果としてのいずれかであると判断する。近くの位置からの、または異なる時間期間にわたるデータのさらなる収集は、これら2つの可能性のうちのどちらが正しい可能性であるかを解くのに役立つ。見掛けの伝導ベクトルは、パネル1において縞模様の矢印によって示されている。
【0088】
図4Bは、
図4Aと同様の波面を示すが、この例では、波面は示された領域の下部で右から左に今回は進行しているように見える。これは、右側で時計回りに巻いて方向を変える図の上半分の波面の進行である可能性が高い。ここでは、明確にするために追加の電極部位e5が示されている。現在、部位e1およびe2からe3までに非常に大きい時間差が存在する。次に、上記の伝導速度方程式を考慮すると、これらの部位の間の時間差は、生理学的に可能であると見なされるには長すぎる(すなわち、生理学的ウィンドウPW内にはない)ので、伝導はe1またはe2からe3までと見なされない。e5はe3に伝導すると見なされ、e4からe5までの時間差が生理学的限度内にない限り、波面の2つの肢が別々の波面と見なされてよい。
【0089】
図4Cは、時間分析期間内の複数の重複する分析期間(AP1など)を描写する。分析期間ごとに、どの電極がどれを先導しているかに関して、複数の電極比較が行われる。この例では、測地的距離内からの5つの電極信号が示され、
興奮がアステリスクによって特定されている。AP1では、e1がすべての他の
興奮を先導するように見える。このパターンが続くが、時折e5がe3を先導し、さらにe1、e3、e4の
興奮よりもはるかに少ないこれらの電極の
興奮が存在する。重複する分析期間は、APごとに、その信号がそのAP内の他の信号を先導する回数を示す番号を生成する。電極ごとのすべてのAPスコアは、次いで、電極位置ごとの単一の信号先導スコアを生成するために、全時間期間の分析後に結合される。
【0090】
電極または位置が先導する電極または位置として正確にラベル付けされることを保証するために、電極が同じ興奮順序(または波長)を記録しており、ペア内の電極の1つが異なる興奮順序によって興奮されないことを保証することが重要である。(AFを含む)ある不整脈が再侵入機構を有する複数のさすらう小波から構成されてよいことをいくつかの研究が示唆しているので、ペアリングされた電極が機構的関係をもたない別々の小波を記録していることは極めて起こり得る。これを克服するために、電極間の興奮時間差が見直される。実現可能な差を保持し、互いに関係することができない差を除去するために、電極ペアの間の測地的距離が使用され、伝導速度(CV)とともに、妥当な興奮時間差が特定される。説明の目的で、それらの上に個別の興奮を有する、心臓内に配置された2つの電極、電極AおよびBを考えよう。電極AとBとの間の興奮時間差がSTARマッピングシステムによって設定された限度よりも小さい場合、電極AおよびBが同じ興奮波面によって興奮される可能性が低く、それにより、これらの信号はシステムによって拒絶される。
【0091】
いくつかの研究が、洞律動とAFの両方にある人間のLA内のCVを調査している。傷跡を示す低い電圧ゾーン(LVZ)と比較して、(健康な組織を示す)通常の電圧を有する領域内でCVが異なることが確立されている。双極電圧とLVZの割合との間の否定的な相関関係をCVが有することも示されている。結果として、双極電圧マップおよびLVZの割合は、STARシステム内で使用されるCVに影響を与える。
【0092】
iii)STARマップの作成および解釈
STARマッピング技法は、1つまたは複数の多極マッピングカテーテルに接続された任意の電気解剖学マッピングシステム、たとえば、Carto3(Biosense Webster)、Precision(Abbott Ltd)、Rhythmia(Boston Scientific)と連携して使用されてよい。2つ以上のマッピングシステムからのデータは、たとえば、3Dマッピングシステムからの位置データと同時に、LabSystem Pro(Boston Scientific)からのタイムスタンプ付き電位データを使用して結合されてよい。この方法を実行するためのデータ要件は、i)心腔幾何形状を構成する頂点およびポリゴンについての3D座標、ii)電位記録の位置についての3D座標、iii)対応する記録された電位データである。STARマッピング方法は、身体データのエクスポート後別個のシステム上で実行されてよく、あるいは3Dマッピングシステムまたは電気生理学記録システムの物理的なコンピュータプロセッサおよびメモリモジュール上で実行されてよい。
【0093】
典型的なSTARマップは、電位記録極の投影された部位とともに、左心房幾何形状、任意の3Dマッピングシステムで作成されたLA幾何形状のそれ自体のレプリカから構成されてよい。カラー方式は、色が各部位の最終的な先導信号スコアの表現である場所、たとえば、100%先導者が赤で彩色され、0%先導者が青で彩色されるレインボースケールに適用することができる。当技術分野で知られている多数の方法、たとえば、補間された表面カラーリングまたは彩色され重ね合わされたドットは、これらの色をマップに重ね合わせるために適用することができる。補間の各々は、部位マーキングの見掛けの高さ、直径、もしくは色強度におけるアニメーションまたは変動によってさらに強化されてよい。興奮順序の指示として、かつ解釈をさらに支援するために、矢印はその関係するペアに対する支配的に先導する極から描かれてよい。
【0094】
例示的な研究は、STARマッピングアルゴリズムが、人間のLA内のペーシングの複数の部位を正確に識別し、右心房および左心房内の病巣/ミクロリエントリー回路とマクロリエントリー回路の両方を含む複雑なATの機構を確立することができることを立証した。
【0095】
STARマッピングアルゴリズムは、人間のLA内のペーシングの複数の部位からの洞律動における心房ペーシングで広範囲に検証された。手術者および正しい判断ができない観察者は、STARマップ、STARアルゴリズムによって先導者として検出された極、すなわち、最も早い興奮の部位からペーシングの部位を特定することができ、また、電位を見直すときに興奮が最も早いバスケットカテーテル上の極に相互に関連付けられた。さらにこれに対して、先導者として識別された極はまた、対応するCARTOマップを見直すときにペーシングの部位に最も近いバスケット極であった。
【0096】
それにわたって極がペアリングされた測地的距離の変化の影響により、STARマッピング方法が前のデータを考慮して適用可能になることが可能になり、不整脈の維持において重要なドライバがLAの小さい領域を占有し、エイリアシングおよび複数の波面からの誤差を最小化することをサポートする。複雑な波面を識別することに関してSTARマッピングシステムを検証するために、STARマップはATの間に作成され、従来の方法を使用して決定された確認済みAT機構と比較された。
【0097】
図9A~
図9Cは、STARマップおよびCARTOを使用して作成された従来の局部
興奮時間マップ上の隔壁にマッピングされた病巣ATのマッピングを示す。
図9Aは、隔壁における最も早い
興奮を立証する、肩書きがある前方-後方ビュー内の従来の局部
興奮時間マップである。
図9Bは、LAにわたる隔壁からATの広がりをサポートする、肩書きがある右横方向ビュー内の従来の局部
興奮時間マップである。
図9Cは、従来の局部
興奮時間マップ上のATの焦点に相互に関連付ける隔壁において高いSTARスコアを示すSTARマップを示す。最後に、
図9Dは、高いSTARスコアの部位におけるアブレーション時に洞律動で終端する225msのCLを有するATを示す、表面ECG、CS、およびMap電位を含むBARD電位を示す。
【0098】
マッピング用の測地的距離を変更する効果がこの例において立証される。6cmを超える測地的距離は、生理学的に実行困難である別々の解剖学的表面からの記録部位が互いにペアリングされ得るマップをもたらす。したがって、比較用のそのような高い測地的距離は、好ましくは回避されるべきである。同様に、比較用の過度に小さい測地的距離(たとえば、<3cm)は、解剖学的表面の過度のセグメント化を引き起こす。これにより、同じ局部ドライバによって影響を受ける複数の極が互いに比較されないようになり、過度に多い数の極は、結果として高い信号先導スコアを割り当てられてよい。複数の先導極は、誤って識別される可能性があり、アブレーションを必要とする過度に広い領域の指示が続く。
【0099】
一例として、
図8は、AF内のマッピング中のバスケット極のペアリングの間3cmの測地的距離が使用されたSTAR LAマップを示す。このペアリングにより、LAがセクションにセグメント化されることが可能になった。前方-後方(AP)ビュー(
図8A)では、高いSTARスコア極の2つの部位、隔壁および低位前方が識別された。
【0100】
図8Cは、バスケット極のペアリング中に6cmの測地的距離が使用されたAPビュー内のSTAR LAマップを示す。マップは、ATの部位と相互に関連がある高いSTARスコアを有する隔壁にマッピングされた、遅いサイクル長(>300ms)を有する病巣ATを立証する。短い測地的距離を有する同じ頻脈(
図8C)は、その測地的
距離の領域の中央の原因を示す原因を覆う位置以外の決定された測地的距離としてマッピングされた領域のエッジにある複数のドライバすべてを示す。これは解釈可能であるが、
図8Bよりも解釈することが複雑である。
【0101】
図8Dは、マクロエントリーATのペアリング中に6cmの測地的距離が使用されたSTAR LAマップを示す。マップはマクロエントリーATを立証し、それにより、結果として前方の極は後方の極を先導しており、高いSTARスコアの極は識別されず、病巣ATとともに見られたように100%の時間先導している極がない。
【0102】
図10に示されたSTARマップを計算する簡略化された方法が次に説明される。5つの電位ペア(a~e)が示され、各電極から導出された電位が以下に示される。総記録時間の80%を一緒に構成する3つの代表的なパターンが示されている(パネルi~iii)。パネル(i)では、50%の時間を占めて、電極aはすべての他の電極を先導している。パネル(ii)では、異なる
興奮順序が示され、電極(c)が20%の時間を占めて先導する。パネル(iii)は、電極(e)が10%の時間先導する、別の
興奮順序である。各電極は、電極がパネル(iv)に示されたように最も近い関連付けられた電極を「先導している」ように見える時間の割合に基づいて、それに関連付けられた値を有する。最終プロセスは、これらのデータを結合し、結合されたマップ上にこれらを重ね合わせ、たとえば、電極が先導する割合の色分けで先導する電極を強調表示する。
【0103】
図5は、
図4A~
図4Cに記載された妥当な生物生理学から導出されたアルゴリズムを使用して、
興奮および
興奮ベクトルをすでに廃棄している先導スコアに、STARマッピングが比例関係をどのように
割り振るかを示す。3つの電極部位、ここではe1、e6、およびe10がドライバの部位に近接する状況を考察する。心房細動の原因に固有の無秩序な
興奮は、たとえば、e10に40%の時間だけ
興奮の局所領域を先導させ、e6に20%の時間だけ先導させる。先導信号スコアは、領域が測地的
距離の領域内の比較に従って局所
興奮を先導しているように見える割合に関して割り当てられる。これらの信号スコアは、それらが、たとえば不整脈のサイクル長の停止後に一貫して早いかどうかなどの多数の要因によって、または機械学習によって適用された他の重み付けによってさらに修正されてよい。
【0104】
図6は、順次取得された部位がそれらの先導信号スコア割当てをどのように結合させることができるかを示す。
図6Aにおいて電極e1~e5とのマッピングを受ける興奮表面を考察する。一連の信号先導スコアは、STAR方法を使用して記録時間の期間にわたって生成される。次に、
図6Bに示されたように、電極は位置e1’~e5’に再配置され、プロセスは繰り返される。一連の新しい信号先導スコアは、これらの新しい部位において生成される。部位e1’~e5’における新しい信号先導スコアは、たとえば、共通電極位置に正規化することによって以前に取得されたスコアと関係付けることができ、またはマッピング部位とマッピング領域の両方に共通の位置がない場合、補間されたスコアに重複、正規化していない。電極が以前に取得された位置と非常に近い、重複している、または散在している領域が決定されてよく、新しい位置からの新しい信号スコアは、以前に取得された位置からの信号スコアに関係付けられてよい。たとえば、
図6Cでは、位置e1”は、破線の円によって傍接された電極部位によって以前に境界が付けられた位置にあり、以前の部位は前のようにラベル付けされた白いドットの円として示されている。各部位における記録時間が真の局所先導信号スコアを確立するのに十分な長さがある場合、e1”から新しく取得された信号スコアは、e4、e5、e2’、e4’、およびe5’からの信号スコアならびに共通相対スケールに再較正されたすべての信号スコアに関係付けられてよい。これは、線形補間、パターン照合、または他の方法によってよい。e2”~e5”は、したがって、e1”から今較正されたスコアとの関係によって記録されてよい。この方法を繰り返すことにより、表面の全体は分散された電極部位とマッピングされてよい。
図6Dは、いくつかの取得にわたるそのような順次マッピングが互いに関係する信号スコアのカバレージの大きい領域をどのように構築することができるか、および全波面の方向がどのように縞模様の矢印によって示されたように暗示されてよいかを立証する。
【0105】
図7は、ドライバ領域が見つかる可能性が低い、低信号スコアを有する領域の一例を示す。ここでは、興奮組織の領域がいくつかの電極によってマッピングされ、円として表される。各々は信号スコアを割り当てられ、より暗い陰影がより高い信号先導スコアを表し、たとえば、電極e1は先導信号を表す。ある領域は、低い先導信号スコアを表す電極位置、たとえば、e2によって取り囲まれる。この領域は、弁構造、傷跡、アブレーションライン、または他の心臓構造であり得るブロックの既知のライン(太いライン)により、1つの側面上で境界が付けられてよい。この領域は、信号スコアが低い部位によって境界が付けられるので、この領域がドライバ領域を含まず、したがって、詳細にマッピングされる必要がないことを示唆することができる。そのような領域は、ここでは網目模様の領域によって表される。
【0106】
上記の説明は、STARマッピングのコアな構成要素に焦点を当てている。しかしながら、以下に記載されるシステムに組み込まれてよい他の元のファセットが存在する。
【0107】
遠距離場マッピング
遠距離場電位は、電気的活動がある距離離れて発生するにもかかわらず、電極において記録された電気的活動である。これは、可能な場合、マッピングシステムによって慣例的に廃棄されてよい。これらは、いくつかの方法で、近距離場電位(その電極に局所的に発生する電気的活動)とは区別されてよい。遠距離場電位は、通常「尖鋭」ではなく、低周波数で、電位信号のデジタルフィルタリングがそれらの除去を可能にすることができる。第2に、遠距離場電位は、別の電位に対応するように識別されてよく、たとえば、心房信号の間の心室信号を表す遠距離場電位は、表面ECG上の心室活動を表記するQRS群に対応してよい。信号成分が局所的であるか遠距離場であるかを識別するためのさらなる方法は、単極信号を利用して、定められた興奮成分に対してより早い重要な信号成分を識別することである。このようにして、マッピングの局所領域の外側の領域が実際に頻脈に至らせているかどうかをいくつかの解剖学的部位にわたって定めることが可能になり、これらの遠距離場電位の勾配は、さらなるマッピングを必要とする、ありそうな解剖学的位置を確立するために比較されてよい。これは、先導部位における初期単極低周波数信号を識別し、この信号の定められたメトリック、たとえば単極信号振幅を、この信号を表現する他のペアリングされ、同時に取得された電位と比較することによって適用されてよい。これらの振幅の勾配は明白であり、たとえば高い振幅は遠距離場信号の発生源に近い。したがって、これらの遠距離場信号の勾配は、不整脈の原因を示している可能性があり、例えば、左心房隔壁と接触している電極上に記録された遠距離場右心房信号を識別する。
【0108】
AFを維持する際にどの部位が重要であるかそうでないかに関するこの最初の予測を改良するために、システムに対する3つのさらなる様相が存在する。
(i)検知確認アルゴリズム
(ii)修正要因
(iii)システムフィードバック
【0109】
検知確認アルゴリズム
電位は暫定的に時間が測定され、波面は、伝導速度および不応期に基づいて妥当な方向に移動すると推定される。3つの機構がSTARシステムによる最初の予測を検知確認し、それらは信号先導スコアを修正するために使用されてよい。
【0110】
第1に、同じ波面によって興奮された任意の表面の場合、その表面上のすべての電極において興奮の1対1関係が存在するべきである。したがって、検知確認アルゴリズムの第1は、任意のマッピングされた波面に対して電極において記録された信号間のそのような関係を探索する。これが存在しない場合、そのような部位は、単一の波面によって興奮されていると見なされない。
【0111】
第2に、不整脈の間、1つのサイクルから次のサイクルまでのサイクル長においてしばしば微妙な変化が存在し、それはしばしばサイクル長における「ふらつき」と呼ばれる。これはAFにおいて特にマークされ、従来の方法によってAFをマッピングすることを不可能にする1つの要因である。波面を生成する局所化された原因は、それが発生するとき、断続的かつ一貫性がないが、反復的であると推定される。波面移動およびありそうな原因に関する予測の後、重要であると推定された波面の間のサイクル長のふらつきの分析が実行されてよい。サイクル長におけるサイクル間の任意の変化は、最初に反復波面の発生源において発生すると想定されてよい。波面が発生源から移動するにつれて、そのようなサイクル長の変化は、発生源から遠くに移動する部位において検出されてよい。これは周波数分析によって決定されてよく、予想される部位から生まれる一連のサイクル長の変動は、コード化された信号と解釈されてよく、定められたチャープと同様の方法で、またはその他の方法で、符号化された信号のブロードキャストは、これが対象の信号であることを確認するために、無線方向発見において使用されてよい。発生源から生まれる波面の指向性は、したがって、それらが当然その1つの発生源から発生することの確認とともに、いくつかのサイクルにわたって比較されてよい。サイクル間の変動または「ふらつき」ロジックの適用は、マッピング分析を確認するためにSTARマッピングの幾何形状および結果を参照して、電位に適用することができる。
【0112】
第3に、興奮の典型的なパターンは、心腔の興奮が特定のドライバ部位によるときに、心臓にわたって発生する。支配的な興奮が発生しているとき、定められた署名パターンの興奮順序が観測されてよい。これは、通常、電極において、たとえば冠状静脈胴内で見られる、反復し変化する興奮によって例示することができる。これらのパターンは、利用され、一緒にグループ興奮パターンに分類され、したがって、一連のマップが作成されることを可能にする。これらのマップの各々は、識別されたドライバ領域の各々によって生成された興奮パターンの各々に多かれ少なかれ対応するはずである。
【0113】
修正要因
STARマッピングは、マッピングを受ける心腔のまわりのマッピングされた部位の各々に信号先導スコアを提供する。これらのスコアは、重要であるようにマッピングされた領域に加えられた重要性を増大または減少させる、いくつかの重み付け基準を組み込むことによってさらに修正されてよい。典型的な重み係数は、既知の文献または以前に取得されたデータから引用されてよい。これらには、不整脈サイクル長、サイクル長の安定性(たとえば、サイクル長の標準偏差)、優位周波数、規則性指数および組織指数、単極電圧または双極電圧、解剖学的部位が含まれる。
【0114】
フィードバックシステム/機械学習
信号先導スコアは、処置内フィードバックによってさらに修正されてよい。これは、アブレーションに対する肯定応答および成功結果を導出されたアブレーションと関連付け、異なる検知確認アルゴリズムに配置された重みおよび重み付け基準の異なる成分の相対重要度の連続適合を可能にする。
【0115】
これらのフィードバック機構の第1は本質的に処置内である。不整脈サイクル長の分析および監視を通して、減速または組織化は特定の部位におけるアブレーションに対する肯定応答を示すことができる。そのようなフィードバックは、信号先導スコアを修正するために使用することができ、同様の患者およびアブレーションに対する応答からのフィードバックを照合することにより、それら自体が、たとえば機械学習を介して、将来の患者において信号スコアを適合するために使用することができる統計的モデルが生成される。
【0116】
AFアブレーションの臨床的成功に影響を与えるように知られた要因は、利用可能な場合臨床的成功の様々な尺度を含む、そのようなモデルに対するフィードバックとして使用することもできる。成功の例示的な臨床マーカは、手術者によって手動で記録された臨床的成功または再発性不整脈、患者によって記録された生活の質データまたは症状スコアデータの品質、埋込み型デバイス(たとえば、ペースメーカまたはループレコーダ)、モバイルフォン、スマートウォッチ、または他のウェアラブルデバイスを含むがそれらに限定されない、患者自身の監視デバイスを介して記録された不整脈の再発性などのデータソースおよび技術を含むはずであり、データには、加速度データ、電位、心拍数監視、および運動能力が含まれてよいが、それらに限定されない。
【0117】
これらのデータは、利用可能な場合、様々な確認アルゴリズムに配置された重み付けおよび重み付け基準を修正する臨床的成功を判断するために、システムによって使用される。機械学習がシステムを改善することを可能にする、処置結果および臨床結果に対するこのフィードバックは、このシステムの別の完全に新規の態様である。
【0118】
図12は、STARマッピングによって誘導されたアブレーション部位の分散の一例であり、一連の患者からの位置は、マッピング部位の一般的な分散を示すために例示的な単一の幾何形状に配置される。アブレーションが好ましい効果をもたらした部位の一般的な空間クラスタリングが、上述された方式で将来の患者の重み付けを知らせるために入力された修正要因として使用されてよいことは明らかである。前述の説明において、もしくは以下の特許請求の範囲において、もしくは添付図面において開示され、それらの具体的な形態で、もしくは開示された機能を実行するための手段に関して表現された特徴、または、必要に応じて、開示された結果を取得するための方法もしくはプロセスは、個別に、またはそのような特徴の任意の組合せで、それらの多様な形態で本発明を実現するために利用されてよい。
【0119】
本発明は上述された例示的な実施形態と連携して記載されているが、本開示が与えられると、多くの同等の修正形態および変形形態が当業者には明らかになる。したがって、上述された本発明の例示的な実施形態は、限定的ではなく、例示的であると見なされる。本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、記載された実施形態に対する様々な変更が行われてよい。
【0120】
いかなる疑問も回避するために、本明細書において提供される任意の理論的な説明が、読者の理解を向上させるために提供される。発明者は、これらの理論的な説明のいずれによっても束縛されることを望まない。
【0121】
本明細書において使用された任意のセクションの見出しは、組織化する目的のためだけであり、記載された主題を限定するものと解釈されるべきでない。
【0122】
後続の特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「備える(comprise)」および「含む(include)」という単語、ならびに「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、および「含む(including)」などの変形形態は、述べられた整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループの含有を意味するが、いかなる他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループの排除も意味しないと理解されよう。
【0123】
本明細書および添付図面において使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他を規定しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。範囲は、本明細書において、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までと表現されてよい。そのような範囲が表現されるとき、別の実施形態は、一方の特定の値から、および/または他方の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表現されるとき、先行の「約」を使用することにより、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されよう。数値に関する「約」という用語はオプションであり、たとえば、+/-10%を意味する。
【0124】
本発明は上述された例示的な実施形態と連携して記載されているが、本開示が与えられると、多くの同等の修正形態および変形形態が当業者には明らかになる。したがって、上述された本発明の例示的な実施形態は、限定的ではなく、例示的であると見なされる。本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、記載された実施形態に対する様々な変更が行われてよい。
【0125】
上記に言及されたすべての参照は、参照により本明細書に組み込まれる。