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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240117BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240117BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021202512
(22)【出願日】2021-12-14
(65)【公開番号】P2023087944
(43)【公開日】2023-06-26
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】藤本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】山中 晶
(72)【発明者】
【氏名】三宅 雄太
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-160905(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132701(WO,A1)
【文献】特開2014-052531(JP,A)
【文献】特開2014-143850(JP,A)
【文献】特開2003-015069(JP,A)
【文献】米国特許第5436753(US,A)
【文献】特開2011-131651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
H02P 8/00-8/42
G02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示光を出射する表示器と、
回転軸を中心に回転可能に構成され、前記表示器からの表示光を反射して表示画像を投射するミラー部材と、
軸部が前記ミラー部材の前記回転軸と同軸上に配置され、通電により当該軸部を軸回りに回転させるモータと、
前記モータの前記軸部と前記ミラー部材の前記回転軸とを連結し、前記軸部の回転角度と同じ回転角度で前記ミラー部材を回転させる連結部材と、
前記モータを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記モータをハーフステップ駆動又はマイクロステップ駆動により回転制御する
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記モータは、前記モータの非通電時におけるディテントトルクによりロータ位置が安定する複数の機械安定点が現出するものであり、
前記制御部は、機械安定点のみで前記モータを構成するロータを停止させる
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記モータは、前記モータの非通電時におけるディテントトルクによりロータ位置が安定する複数の機械安定点が現出するものであり、
前記制御部は、ユーザ操作によって発生する前記ミラー部材を回転させる旨の操作信号が入力された時点で、前記操作信号が示す回転方向側の次の機械安定点まで、前記モータを構成するロータを回転させると決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ロータを機械安定点で停止させる場合、当該機械安定点で前記ロータが安定する通電を所定時間を行い、その後通電を停止する
ことを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ミラー部材を介して前記表示器に入射する太陽光の光量を所定光量以下とする回転角度に前記ミラー部材を移動させる場合、及び、前記回転角度から前記ミラー部材を移動させる場合の少なくとも一方における前記ミラー部材の第1の回転速度を、ユーザ操作によって前記ミラー部材を回転させる場合、及び、予めユーザによって設定された前記ミラー部材の設定位置まで前記ミラー部材を回転させる場合の少なくとも一方における前記ミラー部材の第2の回転速度よりも高くする
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
表示光を出射する液晶ディスプレイと、
前記液晶ディスプレイからの表示光を反射する折り返しミラーと、
回転軸を中心に回転可能に構成され、前記折り返しミラーからの表示光を車両のウィンドシールドに向けて反射して前記ウィンドシールドに表示画像を投射する凹面ミラーと、
軸部が前記凹面ミラーの前記回転軸と同軸上に配置され、通電により当該軸部を軸回りに回転させるモータと、
前記モータの前記軸部及び前記凹面ミラーの前記回転軸とが互いに対向する側から挿入されることで両者を連結し、前記軸部の回転角度と同じ回転角度で前記凹面ミラーを回転させる連結部材と、
前記モータを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記モータをハーフステップ駆動又はマイクロステップ駆動により回転制御する
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インストルメントパネル上面に形成された開口内に、表示器と、表示器に表示される映像をウィンドシールドに向けて反射するミラーとを備えたヘッドアップディスプレイ装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6107380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載のようなヘッドアップディスプレイ装置には、ウォームギアを備え、ウォームギアを介してミラーを一方向又は他方向に回転させて虚像高さを変更するものがある。
【0005】
このようなウォームギアを備えるヘッドアップディスプレイ装置は、減速比が大きくなり易く、ミラーを高速で回転させることが困難であるという問題があった。
【0006】
また、高速移動を実現するために減速比を小さくすることも考えられるが、この場合にミラー回転時の分解能が下がってしまい、違和感ある回転動作となる可能性があった。
【0007】
加えて、モータ通電量を上げてミラー回転を高速化することも考えられるが、この場合には駆動音が大きくなってしまい、ミラー回転時にユーザが煩わしく感じてしまう可能性があった。
【0008】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ミラー回転時における分解能の低下を抑制しつつも駆動音を抑えて高速移動を可能とすることができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置は、表示光を出射する表示器と、回転軸を中心に回転可能に構成され、前記表示器からの表示光を反射して表示画像を投射するミラー部材と、軸部が前記ミラー部材の前記回転軸と同軸上に配置され、通電により当該軸部を軸回りに回転させるモータと、前記モータの前記軸部と前記ミラー部材の前記回転軸とを連結し、前記軸部の回転角度と同じ回転角度で前記ミラー部材を回転させる連結部材と、前記モータを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記モータをハーフステップ駆動又はマイクロステップ駆動により回転制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ミラー回転時における分解能の低下を抑制しつつも駆動音を抑えて高速移動を可能とするヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置を示す概略側面図である。
図2】本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の一部構成を示す斜視図である。
図3図2に示した構成の分解斜視図である。
図4図2及び図3に示したモータの斜視図である。
図5図2及び図3に示した連結部材の第1の斜視図である。
図6図2及び図3に示した連結部材の第2の斜視図である。
図7図2及び図3に示したモータホルダの第1の斜視図である。
図8図2及び図3に示したモータホルダの第2の斜視図である。
図9図3に示した凹面ミラーの回転軸近傍の拡大斜視図である。
図10】組付状態における連結部材近傍を含む断面図である。
図11】モータの電気的構造の一例を示す概念図であり、(a)は第1回転位置を示し、(b)は第2回転位置を示し、(c)は第3回転位置を示し、(d)は第4回転位置を示している。
図12】本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の駆動方法を説明する概念図である。
図13】本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の駆動方法を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置を示す概略側面図である。図1に示すように、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1は、車両のインストルメントパネル2の上面に形成された開口部Oに収納されて配置されている。このヘッドアップディスプレイ装置1は、図1に示すように、表示器10と、折り返しミラー20と、凹面ミラー(ミラー部材)30とを備えている。
【0014】
表示器10は、運転者に提供すべき情報を表示光として出射するものである。表示器10からの表示光は折り返しミラー20に向けて出射され、折り返しミラー20にて凹面ミラー30に向けて反射される。凹面ミラー30は表示光を反射し、表示画像を車両のウィンドシールドWに投射するものである。ウィンドシールドWに投射された表示画像は、運転者に虚像Iとして認識される。
【0015】
ここで、凹面ミラー30は、回転軸32(図3参照)を有し、回転軸32を中心に回動する構成となっている。また、ヘッドアップディスプレイ装置1は、制御基板(制御部)40を備えている。制御基板40は、運転者(ユーザ)からのスイッチ操作(操作)によって発生する操作信号等を入力すると、この操作信号等に基づいて凹面ミラー30を回転軸32周りに回転させる。凹面ミラー30が回転させられると、表示画像のウィンドシールドWへの投射位置(高さ位置)が変化することとなる。
【0016】
図2は、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1の一部構成を示す斜視図であり、図3は、図2に示した構成の分解斜視図である。図2及び図3に示すように、凹面ミラー30は、車幅方向が長手方向となる横長の反射面30aを有したミラー本体31を備えている。ミラー本体31の反射面30aは、車両前方に向かって凸となる曲面を形成している。このような凹面ミラー30は、その長手方向の両端部に回転軸32を備えている(図3において一端側の回転軸32のみ図示する)。凹面ミラー30は、回転軸32を中心に(すなわち、図2に示す一点鎖線を中心に)回転する構成となっている。
【0017】
さらに、ヘッドアップディスプレイ装置1は、凹面ミラー30のほか、モータ50、連結部材60、モータホルダ70、スプリング81,82と、軸受部材90とを備えている。
【0018】
図3に示すモータ50は、制御基板40からの指示に基づいて軸部51(図4参照)を回転制御するものである。本実施形態においてモータ50は例えばステッピングモータである。このモータ50は、凹面ミラー30の回転軸32と同軸上に軸部51を有している。この軸部51は、凹面ミラー30側に突出しており、連結部材60の挿入孔61に挿入される。軸部51が挿入孔61に挿入されると、軸部51は、連結部材60と連結し、回転制御時における回転トルクを連結部材60に伝達させることができる。
【0019】
連結部材60は、モータ50の軸部51と凹面ミラー30の回転軸32との間に介在して、これらを連結するものである。この連結部材60によって両者が連結されることで、軸部51の回転角度と同じ回転角度で凹面ミラー30が回転可能となる。
【0020】
モータホルダ70は、モータ50が固定されると共に、連結部材60が挿通配置される筒部71が形成されたものである。詳細に説明するとモータ50は、貫通孔52が形成された2つの固定片53を有している。また、モータホルダ70は、筒部71の径方向に広がる板部72を有し、板部72の所定箇所に2つの貫通孔73が形成されている。モータ50は、貫通孔52,73同士が一致された状態でネジ止めされることでモータホルダ70に固定される。なお、モータホルダ70は、適宜手段によってヘッドアップディスプレイ装置1を構成する筐体(図示せず)等に固定される。
【0021】
第1スプリング81は、モータホルダ70の筒部71と連結部材60との間に圧縮状態で介在させられるコイルスプリングである。この第1スプリング81は連結部材60をモータ50側に付勢する。このため、連結部材60に連結させられる凹面ミラー30についてもモータ50側に片寄せさせられることとなり、ガタ防止が図られることとなる。
【0022】
第2スプリング82は、モータホルダ70に形成されるフック部74と、連結部材60に形成されるフック部62との間に伸長状態で掛けられたコイルスプリングであり、凹面ミラー30の回転方向におけるガタを詰める役割を有している。
【0023】
図2に示す軸受部材90は、凹面ミラー30のモータ50が設けられる側と反対側に設けられる回転軸32を回転自在に支持するものである。この軸受部材90もモータホルダ70と同様に、適宜手段によってヘッドアップディスプレイ装置1を構成する筐体(図示せず)等に固定される。
【0024】
次に、図2及び図3に示した各部構成について詳細に説明する。図4は、図2及び図3に示したモータ50の斜視図である。図4に示すように、モータ50は、その底面50aから軸部51が突出している。軸部51は、根元側が円筒形状とされている。軸部51の先端側は、円筒側面を一部削り取ったようにして形成した削り面51aを有している。削り面51aは、軸部51の中心軸を挟んで対向して2面形成されている。このため、軸部51は、先端側が断面視して略矩形状となっている。
【0025】
図5及び図6は、図2及び図3に示した連結部材60の斜視図である。図5に示すように、連結部材60は軸部51が挿入される挿入孔61を有している。挿入孔61の形状は軸部51の先端側の削り面51aが合致する平面部61aを有した形状となっている。この平面部61aは、軸部51が回転した際に削り面51aと接触し、軸部51からの回転トルクを受けることとなる。
【0026】
図6に示すように、連結部材60は、モータホルダ70の筒部71に挿入配置される挿入部63を備えている。挿入部63は、略筒形状とされており、筒内部に回転軸32が挿入される構成となっている。また、挿入部63は、筒壁の一部がアーム部64として構成されている。このアーム部64は、挿入部63の根元側(モータ50側)で接続される片持ち状とされており、先端側に係止孔65が形成されている。係止孔65には、後述する回転軸32の係止突起32a(図9参照)が嵌り込むこととなる。さらに、挿入部63の根元側周辺部67(図6の破線参照)は、第1スプリング81の一端が当接する箇所となっている。
【0027】
フック部62は、挿入部63の径方向外側に位置している。このフック部62は、径方向に沿って延びる基部62aと、基部62aより約90°折り曲げられた状態で延びる先端部62bを有した鉤型構造となっている。第2スプリング82の一端は、この鉤型部分によって引っ掛けられることとなる。
【0028】
図7及び図8は、図2及び図3に示したモータホルダ70の斜視図である。図7に示すように、モータホルダ70の筒部71は、内筒71aと外筒71bとを有している。図6に示す連結部材60の挿入部63は内筒71aの内側に挿入される。また、筒部71は、内筒71aと外筒71bとを接続する底壁71cを有している。第1スプリング81は、内筒71aと外筒71bとの間に配置され、底壁71cに押されることで連結部材60をモータ50側に付勢する。
【0029】
さらに、モータホルダ70は、板部72のうち筒部71の近傍位置に開口部75が形成されている。開口部75は、連結部材60の挿入部63が筒部71に挿入された状態でフック部62を通過させるためのものである。連結部材60とモータホルダ70との組付時において、フック部62は、この開口部75を通過して、板部72よりも凹面ミラー30側に位置することとなる。
【0030】
図8に示すように、モータホルダ70は、当接筒部76を備えている。当接筒部76は、内筒71aと連続するようにして形成された筒状体であって、その先端が凹面ミラー30の側面の当接部33(図9参照)に当接するようになっている。また、当接筒部76は、先端側の一部が切り欠かれて切欠部77を形成している。切欠部77は、図2に示す組付状態において、アーム部64(図6参照)や係止突起32a(図9参照)が位置する部位となる。
【0031】
図9は、図3に示した凹面ミラー30の回転軸32近傍の拡大斜視図である。図9に示すように、凹面ミラー30は、凹面ミラー30の側面よりも一段高さが異なる当接部33を有している。回転軸32は、この当接部33の中央から突出して設けられている。当接部33は、前述したようにモータホルダ70の当接筒部76が当接する箇所となる。
【0032】
回転軸32は、略直方体形状とされている。また、図6に示すように、挿入部63は内壁が略直方体形状の回転軸32の一面と合致する平面部66を有している。このため、モータ50の回転トルクは連結部材60の平面部66を介して回転軸32側に伝達される。
【0033】
さらに、図9に示すように、回転軸32の一面には係止突起32aが形成されている。係止突起32aは、モータ50側に傾斜面を有する構造となっており、回転軸32が挿入部63の内側に挿入された場合に、アーム部64の係止孔65に嵌まり込む構造となっている。この係止突起32aが係止孔65に嵌まり込むことによって、回転軸32が連結部材60から抜け落ちてしまう事態を防止している。
【0034】
図10は、組付状態における連結部材60近傍を含む断面図である。図10に示すように、モータ50の軸部51が連結部材60の挿入孔61に挿入されて連結されている。また、連結部材60は、モータホルダ70の筒部71内に挿入されている。第1スプリング81は、一端が連結部材60の根元側周辺部67に接触しており、他端が内筒71aと外筒71bとを接続する底壁71cとに接触して、圧縮状態とされている。また、組付状態において回転軸32は、連結部材60の挿入部63内に嵌り込んでおり、係止突起32aがアーム部64の係止孔65に係止されている。
【0035】
以上のような組付状態であることから、モータ50の軸部51の回転角度と同じだけ、回転軸32が回転させられることとなり、減速比による影響を受けず凹面ミラー30の高速回転が可能となっている。また、軸部51を高速回転させる必要もなく、駆動音についても抑えられることとなる。
【0036】
次に、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1の駆動方法を説明するが、これに先立って、モータ50の電気的構造について説明する。図11は、モータ50の電気的構造の一例を示す概念図であり、(a)は第1回転位置を示し、(b)は第2回転位置を示し、(c)は第3回転位置を示し、(d)は第4回転位置を示している。
【0037】
図11に示すように、モータ50は、軸部51に連結されて回転動作するロータRと、ロータRを回転動作させるために通電が行われる複数のステータコイルSCとを備えている。各ステータコイルSCは、コイル一端から他端へ通電させる正方向通電と、コイル他端から一端へ通電させる負方向通電とが可能となっている。また、ロータRは永久磁石によって構成されている。このため、モータ50は、各ステータコイルSCへの通電状態を順次切り替えていくことで、ロータRを回転させることができる。
【0038】
ここで、モータ50は、ステータコイルSCへの通電状態を同じ状態のまま維持することでホールディングトルクによりロータRの回転位置を安定させることができる。一例挙げて説明すると、モータ50は、例えば図11(a)に示す通電状態を維持することで、ホールディングトルクによってロータRを図11(a)に示す回転位置で安定させることができる。同様に、モータ50は、例えば図11(b)に示す通電状態を維持することで、ホールディングトルクによってロータRを図11(b)に示す回転位置で安定させることができる。このような安定する位置を電気安定点という。
【0039】
また、モータ50は、ステータコイルSCへの非通電時におけるディテントトルクによってロータRの回転位置が安定する。詳細に説明すると、複数のステータコイルSCに対して通電がない場合、ロータRは、永久磁石であることから金属部材であるステータコイルSC(いずれかのステータコイルSC)に引かれることとなる。この結果、ロータRは、例えば図11(d)に示すように回転位置が安定することとなる。このような安定する位置を機械安定点という。
【0040】
次に、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1の駆動方法を説明する。図12は、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1の駆動方法を説明する概念図である。モータ50の駆動については、図11(a)に示す励磁状態、図11(b)に示す励磁状態、及び、図11(c)に示す励磁状態の順にステータコイルSCに対して通電を行って回転制御を行う駆動方式をフルステップ駆動という。
【0041】
本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1において、モータ50の駆動方式はハーフステップ駆動又はマイクロステップ駆動である。ハーフステップ駆動は、例えば図11(a)に示す励磁状態と、図11(b)に示す励磁状態との間に図12に示す励磁状態が介在する駆動方式である。このハーフステップ駆動によって、フルステップ駆動よりも細かな回転位置の制御が可能となる。また、マイクロステップ駆動は、各ステータコイルSCへの通電量を制御することで、例えば図11(a)に示す励磁状態と図12に示す励磁状態との間においても、1又は複数の励磁状態でロータRの回転位置を制御する駆動方式である。このマイクロステップ駆動は、ハーフステップ駆動よりも更に細かな回転位置の制御が可能となる。
【0042】
すなわち、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1は、モータ50の駆動方式がハーフステップ駆動又はマイクロステップ駆動とされており、細かな回転位置の制御を行うことで、凹面ミラー30の回転時における分解能の向上を図ることとなる。
【0043】
さらに、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1は、モータ50を停止させる際には機械安定点のみでロータRを停止させるようになっている。すなわち、制御基板40は、電気安定点等でロータRを停止させることがないことから、ロータRの停止後ステータコイルSCへの通電を遮断でき、消費電力の抑制、及び、発熱等によるモータ負担の軽減につなげることができる。
【0044】
また、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1においては表示器10の熱対策が施されており、凹面ミラー30を介して表示器10に入射する太陽光の光量を所定光量以下とする回転角度(例えばパーキングポジション(以下PP位置という))が設定されている。すなわち、太陽からウィンドシールドWを介して凹面ミラー30に入射して表示器10に至る直射光によって表示器10が故障しないように光量を所定光量以下とするPP位置が設定されている。このため、制御基板40は、表示器10が高温になると判断できる場合には凹面ミラー30をPP位置に移動させる。
【0045】
さらに、本実施形態において制御基板40は、凹面ミラー30をPP位置に移動させる場合、及び、PP位置から凹面ミラー30を移動させる際の第1の回転速度を、通常時における凹面ミラー30の第2の回転速度よりも高くする。ここで、通常時とは、ユーザの操作によって凹面ミラー30を移動させる場合、及び、凹面ミラー30のシートメモリ連動の移動時である。シートメモリ連動とは、シート位置(前後位置や高さ位置)及び虚像Iの高さを予めユーザが設定しておき、イグニッションスイッチのオン時やユーザからの指示があったとき等に、シート位置を移動させ、虚像Iの高さが設定高さとなるように凹面ミラー30を回転させる機能である。このように、PP位置への移動時及びPP位置からの移動時を通常時よりも高速化することで、表示器10が高温となったときに素早く故障防止措置を取ることができ、また、表示器10が低温化したときにはユーザに素早く虚像表示を提供できることとなる。加えて、ユーザ操作による凹面ミラー30の回転が高速でないことから、虚像高さの微調整を行い易くすることができる。
【0046】
次に、ユーザ操作に対応したヘッドアップディスプレイ装置1の動作を説明する。図13は、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1の駆動方法を示すタイミングチャートである。なお、図13は、ハーフステップ駆動における駆動方法を示しているが、マイクロステップ駆動においても同様である。
【0047】
まず、図13に示す時刻t0において、ユーザによるスイッチ操作がない(オフ)とする(操作信号が非入力であるとする)。この場合、スイッチ信号(ロータRを回転させる旨の信号)はオフであり、駆動信号(通電の有無を示す信号)もオフである。このため、制御基板40は、モータ50を動作させることなく、モータ状態は停止となる。なお、本実施形態ではロータRを機械安定点で停止させるものであるため、時刻t0における励磁位置は機械安定点となっている。
【0048】
次に、時刻t1において、ユーザによるスイッチ操作がオンになったとする。これにより、スイッチ信号及び駆動信号はオンとなり、制御基板40は、通電制御を行ってロータRを回転させることとなる。特に、制御基板40は、時刻t1においてスイッチ操作がオンとなった時点で、ロータRを回転方向側の次の機械安定点まで動作させると決定する。このため、励磁位置は電気安定点を経て、時刻t2において次の機械安定点に到達する。なお、この間のモータ状態は通常動作の状態である。
【0049】
時刻t2においては、ユーザによるスイッチ操作がオンのままである。このため、制御基板40は、上記と同様に、時刻t2の時点でロータRを回転方向側の次の機械安定点まで動作させると決定する。このため、励磁位置は電気安定点を経て、時刻t4において次の機械安定点に到達する。
【0050】
ここで、時刻t4で次の機械安定点まで到達する前の時刻t3において、ユーザによるスイッチ操作がオフとなる。しかし、時刻t2において制御基板40は、次の機械安定点までロータRを回転させると決定していることから、スイッチ信号及び駆動信号はオンのまま継続することとなる。
【0051】
そして、時刻t4において、制御基板40は、スイッチ信号をオフとする。一方、制御基板40は、駆動信号をオフにせずロータRが機械安定点に到達した時刻t4から所定時間だけ駆動信号オンを継続する。すなわち、この機械安定点でロータRが安定する通電を所定時間だけ行う。そして時刻t4から所定時間経過した時刻t5において駆動信号についてもオフとなる。
【0052】
このようにして、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1によれば、軸部51が凹面ミラー30の回転軸32と同軸上に配置されるモータ50と、モータ50の軸部51と凹面ミラー30の回転軸32とを連結し、軸部51の回転角度と同じ回転角度で凹面ミラー30を回転させる連結部材60とを備える。このため、凹面ミラー30を回転させるにあたりウォームギアを備える必要がなく、減速比が大きくなって凹面ミラー30を高速で回転させることが困難となる事態を防止することができる。また、凹面ミラー30を高速で回転させる場合において分解能の低下が懸念されるが、モータ50がハーフステップ駆動又はマイクロステップ駆動で回転制御されることから、ミラー回転時における分解能の低下を抑制することができる。加えて、高速移動にあたり通電量を上げる必要がなく駆動音も抑制されることとなる。従って、ミラー回転時における分解能の低下を抑制しつつも駆動音を抑えて高速移動を可能とすることができる。
【0053】
また、モータ50を停止させる際には機械安定点のみでロータRを停止させるため、制御基板40は、電気安定点等でロータRを停止させることがなく、ロータRの停止後ステータコイルSCへの通電を遮断でき、消費電力の抑制、及び、発熱等によるモータ50の負担の軽減につなげることができる。
【0054】
また、機械安定点までロータRを回転させるため、例えば機械安定点以外の箇所でロータRの回転を止めてしまい、その後通電オフ時にロータRがディテントトルクによって機械安定点まで回転しまうことが防止される。従って、制御上の位置と機械的位置とが不一致となってしまうことを防止することができる。
【0055】
また、ロータRを次の機械安定点まで回転させた後、所定時間通電状態を維持するため、ロータRが機械安定点に到達後、回転力が収まっていない状態で通電が停止されてしまい、ロータRが機械安定点を中心に往復運動するような振動現象の発生を抑えることができる。
【0056】
また、制御基板40は、凹面ミラー30をPP位置に移動させる場合、及び、PP位置から凹面ミラー30を移動させる際の第1の回転速度を、通常時における凹面ミラー30の第2の回転速度よりも高くする。このため、表示器10が高温となったときに素早く故障防止措置を取ることができ、また、表示器10が低温化したときにはユーザに素早く虚像表示を提供することができる。
【0057】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、適宜公知や周知の技術を組み合わせてもよい。
【0058】
例えば、本実施形態においては、モータ50の軸部51と凹面ミラー30の回転軸32とが1つの連結部材60により連結される構成となっているが、特に連結部材60は1つの部材に限らず、2以上の部材によって構成されていてもよい。
【0059】
さらに、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1は凹面ミラー30を備えているが、これに限らず、表示光を反射して表示画像を投射するものであれば、凹凸面や凸面等のミラーを備えていてもよい。また、本実施形態においてはガタ防止の観点からスプリング81,82が設けられているが、スプリング81,82の位置は、上記したものに限られない。また、可能であれば、スプリング81,82に代えて、ダンパー等の他の種類の弾性部材が用いられてもよい。
【0060】
加えて、図11に示す例においてステータコイルSCは2つであるが、特に2つに限るものではない。また、ロータRについても多極の永久磁石が用いられてもよい。
【0061】
さらに、上記では図13を参照して、機械安定点で所定時間だけ励磁継続した後に通電を遮断する例を説明したが、この所定時間の励磁はユーザ操作によってモータ50を動作させた場合に限らず、凹面ミラー30をPP位置に移動させる場合、PP位置から凹面ミラー30を移動させる場合、及びシートメモリ連動の移動時等においても行われることが好ましい。
【0062】
また、上記実施形態では、凹面ミラー30をPP位置に移動させる場合、及び、PP位置から凹面ミラー30を移動させる場合の双方で、通常時よりも高速化されているが、これに限らず、いずれか一方のみが通常時よりも高速化されていてもよい。加えて、通常時として、ユーザ操作による移動時と、シートメモリ連動の移動時との2つを挙げたが、通常時に該当するものはいずれか一方のみであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 :ヘッドアップディスプレイ装置
10 :表示器
20 :折り返しミラー
30 :凹面ミラー(ミラー部材)
32 :回転軸
40 :制御基板(制御部)
50 :モータ
51 :軸部
60 :連結部材
O :開口部
R :ロータ
W :ウィンドシールド
図1
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