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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240117BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240117BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021202513
(22)【出願日】2021-12-14
(65)【公開番号】P2023087945
(43)【公開日】2023-06-26
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 祐介
(72)【発明者】
【氏名】山中 晶
(72)【発明者】
【氏名】三宅 雄太
(72)【発明者】
【氏名】村田 直久
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕史
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/171885(WO,A1)
【文献】特開2017-003684(JP,A)
【文献】特開2020-086070(JP,A)
【文献】特開2013-246379(JP,A)
【文献】特開2019-215507(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099165(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0322025(US,A1)
【文献】特開2020-067651(JP,A)
【文献】特開2016-062095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
G02F 1/133
G09G 3/00-3/08,3/12-3/26,3/34-3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デューティ比制御によって調光制御され、表示光を出射する表示器と、
回転軸を中心に回転可能に構成され、前記表示器からの表示光を反射して表示画像を投射するミラー部材と、
デューティ比制御によって前記表示器を調光制御すると共に、前記ミラー部材の回転を制御する制御部と、
前記表示器から出射される表示光の経路外に設けられ前記表示器周辺の雰囲気温度に応じた信号を出力する温度センサと、を備え、
前記制御部は、
前記温度センサからの信号に基づく雰囲気温度と、前記表示器のデューティ比とに基づいて、前記表示器の温度を予測する温度予測部と、
前記温度予測部により予測された前記表示器の温度が閾値以上となった場合に、前記表示器のデューティ比の上限を低下させる低下制御、及び、前記ミラー部材を介して前記表示器に入射する太陽光の光量を減少させる前記ミラー部材の回転制御の少なくとも一方を故障回避制御として実行する故障回避部と、を有し、
前記故障回避部は、前記温度予測部により予測された前記表示器の温度が前記閾値以上となった場合において、当該表示器の温度が高くなるほど、前記表示器のデューティ比の上限を低下させる
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記故障回避部は、前記温度予測部により予測された前記表示器の温度が前記閾値を超える規定値以上となった場合、前記表示器のデューティ比の上限をゼロまで低下させて前記表示器を消灯させ、かつ、前記ミラー部材を介して前記表示器に入射する太陽光の光量を所定光量以下とする第1回転角度まで前記ミラー部材を回転させ
求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記故障回避部は、前記温度予測部により予測された前記表示器の温度が前記規定値以上となり、前記表示器を消灯させ且つ前記第1回転角度まで前記ミラー部材を回転させた状態から、前記温度予測部により予測された前記表示器の温度が前記規定値未満となった場合に、前記表示器を点灯させる点灯制御、及び、前記ミラー部材を前記第1回転角度とする前の第2回転角度に復帰させる復帰制御の少なくとも一方である制限解除制御を実行す
求項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記故障回避部は、前記点灯制御を実行させた場合において、前記温度予測部により予測された前記表示器の温度が低くなるほど、前記表示器のデューティ比の上限を高くす
求項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記温度予測部は、前記温度センサにより検出された雰囲気温度、及び、前記表示器のデューティ比と点灯時間とに基づいて求められる発熱量から、前記表示器の温度を予測す
求項1から請求項のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インストルメントパネル上面に形成された開口内に、表示器と、表示器に表示される映像をウィンドシールドに向けて反射するミラーとを備えたヘッドアップディスプレイ装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6107380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、太陽光がミラーを介して表示器に入射してしまうことがあり、この場合には表示器が高温化して故障してしまう可能性があった。そこで、表示器の温度が高い場合には、表示器を構成するバックライトへの通電を制御するためのデューティ比を下げる等の故障回避制御を行うことが考えられる。
【0005】
しかし、ヘッドアップディスプレイ装置において表示器の温度が不明であることから、適切なタイミングで故障回避制御を行うことができない。そこで、表示器に温度センサを設けようとしても、温度センサは表示器からの表示光を阻害しない位置(表示光の経路外)にしか設置できず、表示器の温度を正確に検出することが困難である。この結果、表示器の温度が高くなりきってない場合に故障回避制御を行ったり、表示器の温度が非常に高いにもかかわらず故障回避制御が実行されなかったりすることがあり得る。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、より適切なタイミングで故障回避制御を行うことができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置は、デューティ比制御によって調光制御され、表示光を出射する表示器と、回転軸を中心に回転可能に構成され、前記表示器からの表示光を反射して表示画像を投射するミラー部材と、デューティ比制御によって前記表示器を調光制御すると共に、前記ミラー部材の回転を制御する制御部と、前記表示器から出射される表示光の経路外に設けられ前記表示器周辺の雰囲気温度に応じた信号を出力する温度センサと、を備え、前記制御部は、前記温度センサからの信号に基づく雰囲気温度と、前記表示器のデューティ比とに基づいて、前記表示器の温度を予測する温度予測部と、前記温度予測部により予測された前記表示器の温度が閾値以上となった場合に、前記表示器のデューティ比の上限を低下させる低下制御、及び、前記ミラー部材を介して前記表示器に入射する太陽光の光量を減少させる前記ミラー部材の回転制御の少なくとも一方を故障回避制御として実行する故障回避部と、を有し、前記故障回避部は、前記温度予測部により予測された前記表示器の温度が前記閾値以上となった場合において、当該表示器の温度が高くなるほど、前記表示器のデューティ比の上限を低下させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より適切なタイミングで故障回避制御を行うことができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置を示す概略側面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の要部を示す概略側面図である。
図3】表示器の温度とデューティ比の上限との相関を示す相関図である。
図4】第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の動作を示すフローチャートであって、故障回避制御に関する処理を示している。
図5】第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の動作を示すフローチャートであって、制限解除制御に関する処理を示している。
図6】第2実施形態に係る表示器の温度とデューティ比の上限との相関を示す相関図である。
図7】第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の動作を示すフローチャートであって、故障回避制御に関する処理を示している。
図8】第3実施形態に係る表示器の温度とデューティ比の上限との相関を示す相関図である。
図9】第3実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の動作を示すフローチャートであって、制限解除制御に関する処理を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0011】
図1は、本発明の第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置を示す概略側面図であり、図2は、本発明の第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の要部を示す概略側面図である。
【0012】
図1に示すように、第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1は、車両のインストルメントパネル2の上面に形成された開口部Oに収納されて配置されている。このヘッドアップディスプレイ装置1は、図1及び図2に示すように、表示器10と、折り返しミラー20と、凹面ミラー(ミラー部材)30と、筐体40と、制御基板(制御部)50と、温度センサ60とを備えている。
【0013】
表示器10は、液晶パネル11と、液晶パネル11の後方のバックライト12とを有する液晶ディスプレイであって、デューティ比制御によってバックライト12の明るさを制御することで調光制御されるものである。この表示器10は、運転者に提供すべき情報を表示光として出射する。表示器10からの表示光は図1及び図2に示す折り返しミラー20に向けて出射され、折り返しミラー20において凹面ミラー30に向けて反射される。
【0014】
凹面ミラー30は表示光を反射し、筐体40のカバー部材41を介して表示画像を車両のウィンドシールドWに投射するものである。ウィンドシールドWに投射された表示画像は、運転者に虚像Iとして認識される。また、凹面ミラー30は、回転軸を中心に回転可能に構成されている。凹面ミラー30は、回転軸を中心に回転することで運転者に視認させる虚像Iの高さを制御する構成となっている。
【0015】
制御基板50は、ヘッドアップディスプレイ装置1の全体を制御するものであって、特に本実施形態においてはデューティ比制御によって表示器10を調光制御すると共に、凹面ミラー30の回転を制御する機能を有している。温度センサ60は、表示器10から出射される表示光の経路外に設けられ、表示器10の周辺の雰囲気温度に応じた信号を出力するものである。この温度センサ60は、サーミスタによって構成され、雰囲気温度に応じた信号を制御基板50に送信する。
【0016】
さらに、制御基板50は、温度予測部51と、故障回避部52と、記憶部53とを備えている。温度予測部51は、表示器10の温度を予測するものである。この温度予測部51は、温度センサ60からの信号に基づく表示器10の周辺の雰囲気温度と、表示器10のデューティ比とに基づいて表示器10の温度を予測する。
【0017】
ここで、記憶部53は、表示器10のデューティ比ごとに温度上昇値を記憶している。このため、温度予測部51は、温度センサ60により検出される雰囲気温度に対して、現在のデューティ比に応じた温度上昇値を加算することで、表示器10の温度を予測する。
【0018】
故障回避部52は、温度予測部51より予測された表示器10の温度が閾値以上であるときに表示器10の故障を防止すべく、故障回避制御を実行するものである。故障回避制御は、表示器10のデューティ比の上限を低下させる低下制御、及び、凹面ミラー30を介して表示器10に入射する太陽光の光量を減少させる凹面ミラー30の回転制御の少なくとも一方である。
【0019】
より詳細に説明すると、故障回避部52は、温度予測部51により予測された表示器10の温度が閾値以上となった場合において、当該表示器10の温度が高くなるほど、表示器10のデューティ比の上限を低下させる。
【0020】
図3は、表示器10の温度とデューティ比の上限との相関を示す相関図である。図3に示すように、第1実施形態に係る故障回避部52は、表示器10の温度がA度(閾値)未満である場合には、デューティ比の上限をA%(初期値であって例えば100%)とする。表示器10の温度がA度(閾値)以上B度未満となると、故障回避部52は、デューティ比の上限をB%(<A%)に低下させる。また、表示器10の温度がB度以上C度(規定値)未満となると、故障回避部52は、デューティ比の上限をC%(<B%)に低下させる。
【0021】
さらに、表示器10の温度がC度(規定値)以上となると、故障回避部52は、デューティ比の上限を0%に低下させる。すなわち、故障回避部52は、表示器10を消灯させることとなる。
【0022】
再度図2を参照する。さらに、本実施形態に係る故障回避部52は、表示器10の温度がC度(規定値)以上となると、凹面ミラー30を介して表示器10に入射する太陽光の光量を所定光量以下とするパーキングポジション(第1回転角度の一例であって、以下PP位置という)まで凹面ミラー30を回転させる。ここで、所定光量とは、例えば夏場等においてインストルメントパネル2の上面の温度が80度近くまで上昇する場合において、表示器10を故障温度未満に維持することができる光量をいう。また、所定光量とは、上記場合において、表示器10を保証温度未満に維持することができる光量であることが好ましい。さらに、所定光量とは、ゼロ光量であることがより好ましい。なお、本実施形態においてPP位置は、ゼロ光量となる角度を想定している。また、ここでいう太陽光の光量とは、太陽からウィンドシールドWを通過して、凹面ミラー30及び折り返しミラー20で反射して表示器10に入射する直射光の光量をいう。よって、太陽光の光量は、例えば車外の建物やヘッドアップディスプレイ装置1の筐体40の内面等で反射して表示器10に入射してしまう乱反射的な光の光量を含むものではない。
【0023】
また、故障回避部52は、表示器10の温度がC度以上となり、表示器10を消灯し、且つ、凹面ミラー30をPP位置まで回転制御した場合において、温度予測部51により予測される表示器10の温度がC度未満となったとき、表示器10を点灯させ、且つ、凹面ミラー30をPP位置とする前の回転位置(第2回転角度)に復帰させる制限解除制御を実行する。
【0024】
特に、故障回避部52は、温度予測部51により予測された表示器10の温度がC度未満となって制限解除制御を実行した場合において、温度予測部51により予測された表示器10の温度が低くなるほど、表示器10のデューティ比の上限を高くする。
【0025】
図3を参照する。本実施形態に係る故障回避部52は、表示器10の温度がC度(規定値)以上である場合、デューティ比の上限を0%に低下させている。この状態から表示器10の温度がB度以上C度未満となると、故障回避部52は、デューティ比の上限をC%に上昇させる。また、表示器10の温度がA度以上B度未満となると、故障回避部52は、デューティ比の上限をB%に上昇させる。
【0026】
さらに、表示器10の温度がA度(閾値)未満となると、故障回避部52は、デューティ比の上限をA%に上昇させる。すなわち、故障回避部52は、デューティ比の上限について故障回避制御を実行する前の状態に戻すこととなる。
【0027】
次に、第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1の動作を説明する。図4は、第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1の動作を示すフローチャートであって、故障回避制御に関する処理を示している。
【0028】
図4に示すように、まず、温度予測部51は、温度センサ60からの信号に基づいて表示器10の周辺の雰囲気温度を検出する(S1)。次に、温度予測部51は、現在の表示器10のデューティ比を読み込む(S2)。次いで、温度予測部51は、ステップS2において読み込んだデューティ比から温度上昇値を求め、ステップS1において検出した雰囲気温度に温度上昇値を加算して表示器10の温度を予測する(S3)。
【0029】
次に、故障回避部52は、表示器10の温度がA度以上であるかを判断する(S4)。表示器10の温度がA度以上でない場合(S4:NO)、故障回避部52は、デューティ比の上限をA%とする(S5)。その後、処理はステップS1に移行する。
【0030】
一方、表示器10の温度がA度以上である場合(S4:YES)、故障回避部52は、表示器10の温度がB度以上であるかを判断する(S6)。表示器10の温度がB度以上でない場合(S6:NO)、故障回避部52は、デューティ比の上限をB%とする(S7)。その後、処理はステップS1に移行する。
【0031】
表示器10の温度がB度以上である場合(S6:YES)、故障回避部52は、表示器10の温度がC度以上であるかを判断する(S8)。表示器10の温度がC度以上でない場合(S8:NO)、故障回避部52は、デューティ比の上限をC%とする(S9)。その後、処理はステップS1に移行する。
【0032】
表示器10の温度がC度以上である場合(S8:YES)、故障回避部52は、デューティ比の上限をゼロとすると共に、凹面ミラー30をPP位置まで回転させ太陽光が表示器10に入射しないようにする(S10)。その後、図4に示す処理は終了する。
【0033】
図5は、第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1の動作を示すフローチャートであって、制限解除制御に関する処理を示している。まず、図5に示すステップS11~S13の処理において、図4に示したステップS1~S3と同様の処理が行われる。
【0034】
その後、故障回避部52は、予測された表示器10の温度がC度未満であるかを判断する(S14)。表示器10の温度がC度未満でない場合(S14:NO)、故障回避部52は、凹面ミラー30をPP位置とする(S15)。その後、処理はステップS11に移行する。
【0035】
一方、表示器10の温度がC度未満である場合(S14:YES)、故障回避部52は、凹面ミラー30の角度を元の角度位置に復帰させる(S16)。次いで、故障回避部52は、表示器10の温度がB度未満であるかを判断する(S17)。表示器10の温度がB度未満でない場合(S17:NO)、故障回避部52は、デューティ比の上限をC%とする(S18)。その後、処理はステップS11に移行する。
【0036】
表示器10の温度がB度未満である場合(S17:YES)、故障回避部52は、表示器10の温度がA度未満であるかを判断する(S19)。表示器10の温度がA度未満でない場合(S19:NO)、故障回避部52は、デューティ比の上限をB%とする(S20)。その後、処理はステップS11に移行する。
【0037】
表示器10の温度がA度未満である場合(S19:YES)、故障回避部52は、デューティ比の上限をA%とする(S21)。その後、図5に示す処理は終了する。
【0038】
このようにして、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1によれば、温度センサ60からの信号に基づく雰囲気温度と、表示器10のデューティ比とに基づいて、表示器10の温度を予測する。ここで、ヘッドアップディスプレイ装置1において温度センサ60は表示光の経路外に設けるしかなく表示器10の温度を正確に測定することが困難であるが、表示器10自身の発熱に寄与するデューティ比を考慮することで、より正確に表示器10の温度を予測することができる。そして、予測された表示器10の温度がA度以上となった場合に故障回避制御を実行することで、より適切に故障回避制御を行うことができるヘッドアップディスプレイ装置1を提供することができる。
【0039】
また、表示器10の温度がA度以上となった場合において、表示器10の温度が高くなるほど、表示器10のデューティ比の上限を低下させる。このため、温度がA度以上となったものの、極めて温度が高いわけではない場合には、デューティ比の制限度合いが小さくなり、表示光が暗くなり過ぎてしまうことを防止することができる。
【0040】
また、予測された表示器10の温度がC度以上となった場合、表示器10を消灯させると共に凹面ミラー30を介して表示器10に至る太陽光の光量を所定光量以下とすべく(例えば直射光の光量をゼロとすべく)PP位置まで凹面ミラー30を回転させる。このため、表示器10の温度が極めて高くなる場合には緊急的な故障回避の観点から表示器10の消灯と太陽光の侵入を所定光量以下に制限することとなり、より一層故障を回避し易くすることができる。
【0041】
また、表示器10の消灯と太陽光の侵入を所定光量以下に制限した場合に、表示器10の温度がC度未満となったときに、表示器10を点灯させ、且つ、凹面ミラー30をPP位置とする前の回転角度に復帰させる制限解除制御を実行する。このため、表示器10の温度がC度未満まで低下した場合には制限を解除していくこととなり、例えばA度未満まで低下することを待つことなく、早期に虚像表示を再開することとなり、ヘッドアップディスプレイ装置1の利用性を高めることができる。
【0042】
また、予測された表示器10の温度がC度未満となって表示器10を点灯させた場合において、予測された表示器10の温度が低くなるほど表示器10のデューティ比の上限を高くする。このため、制限を解除する場合についても、極めて温度が高いわけではないときには、デューティ比の制限度合いが小さくなり、表示光が暗くなり過ぎてしまうことを防止することができる。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1は第1実施形態のものと同様であるが、一部処理内容が異なっている。以下、第1実施形態との相違点について説明する。
【0044】
図6は、第2実施形態に係る表示器10の温度とデューティ比の上限との相関を示す相関図である。図6に示すように、第2実施形態において故障回避部52は、予測される表示器10の温度がA度以上となってもデューティ比の上限を低下させず、C度(第2実施形態における閾値)以上となった場合に、表示器10のデューティ比をゼロまで低下させて表示器10を消灯させる。なお、第2実施形態において表示器10の温度がC度以上となった場合に凹面ミラー30をPP位置とする点については第1実施形態と同様である。
【0045】
このように、第2実施形態においては、予測される表示器10の温度がA度以上となっても故障回避制御を実行せず、温度がA度よりも高いC度となった時点で故障回避制御を実行する。すなわち、第2実施形態においては、温度がC度未満である場合に何ら故障回避制御を行わず、温度がC度に達した時点で表示器10を消灯させ(デューティ比をゼロとし)凹面ミラー30をPP位置とする制御を一気に実行することとなる。このため、表示器10の温度が或る程度高まっても表示器10を暗くすることなく視認性を確保しつつ、故障の危険性があるときに故障を防止すべく故障回避制御を実行することとなり、極力視認性を確保しながら故障を回避することができる。
【0046】
なお、第2実施形態において故障回避部52は、第1実施形態と同様の制限解除制御を行うことを想定しているが、これに限らず、予測される表示器10の温度がC度以上の状態からC度未満となった場合、図6に示す相関図に従って、デューティ比の上限を一気にA%まで上げてもよい。
【0047】
図7は、第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1の動作を示すフローチャートであって、故障回避制御に関する処理を示している。まず、図7に示すステップS31~S33において図4に示したステップS1~S3と同様の処理が実行される。
【0048】
次いで、図7に示すステップS34において故障回避部52は、表示器10の温度がC度以上であるかを判断する(S34)。表示器10の温度がC度以上でない場合(S34:NO)、故障回避部52は、デューティ比の上限をA%とする(S35)。その後、処理はステップS31に移行する。
【0049】
表示器10の温度がC度以上である場合(S34:YES)、故障回避部52は、デューティ比の上限をゼロとすると共に、凹面ミラー30をPP位置まで回転させ太陽光が表示器10に入射しないようにする(S36)。その後、図7に示す処理は終了する。
【0050】
このようにして、第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
加えて、第2実施形態によれば、予測される表示器10の温度がA度以上となっても故障回避制御を実行せず、温度がA度よりも高いC度以上となった時点で故障回避制御を実行する。このため、表示器10の温度が或る程度高まっても表示器10を暗くすることなく視認性を確保しつつ、故障の危険性があるときに故障を防止すべく故障回避制御を実行することとなり、極力視認性を確保しながら故障を回避することができる。
【0052】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1は第1実施形態のものと同様であるが、一部処理内容が異なっている。以下、第1実施形態との相違点について説明する。
【0053】
まず、第3実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1は、予測される表示器10の温度がC度以上となり、その後C度未満に低下しても、表示器10を点灯させることなく、凹面ミラー30を第2回転角度まで復帰させる。
【0054】
図8は、第3実施形態に係る表示器10の温度とデューティ比の上限との相関を示す相関図である。図8に示すように、第3実施形態において故障回避部52は、予測される表示器10の温度がA度(閾値)及びB度に達するごとにデューティ比の上限を低下させ、C度(規定値)以上となった場合に表示器10のデューティ比をゼロまで低下させて表示器10を消灯させる。
【0055】
また、第3実施形態において故障回避部52は、予測される表示器10の温度がC度以上の状態からC度未満に低下してもD度(特定値)に達するまではデューティ比上限についてゼロを維持する。すなわち、第3実施形態に係る故障回避部52は、予測される表示器10の温度がC度以上の状態からC度未満に低下しても表示器10を点灯させないまま、凹面ミラー30を元の回転角度(第2回転角度)に復帰させる。
【0056】
その後、予測される表示器10の温度がD度未満まで低下すると、故障回避部52は、デューティ比の上限をC%に高めて表示器10を点灯させ、以後、温度がB度及びA度に達する毎に、デューティ比の上限をB%及びA%に高めることとなる。
【0057】
このように、第3実施形態においては、表示器10の点灯に先立って凹面ミラー30を復帰させるようにしている。ここで、凹面ミラー30を復帰させた場合には表示器10に太陽光が所定光量を超えて入射することがある。このため、表示器10の温度が再度C度以上となることもあり得る。よって、予測される表示器10の温度がC度を境に何度も往復することがあり得る。このような場合に、第1実施形態では表示器10が点灯したり消灯したりを繰り返す可能性があるが、第3実施形態では、表示器10の温度がD度未満となったときに表示器10を点灯させることから、このような事態を回避することができる。従って、表示器10が点灯と消灯とを繰り返す事態を抑制することができる。なお、上記では、予測される表示器10の温度がD度未満まで低下すると表示器10を点灯させているが、点灯させるタイミングは予測される表示器10の温度がD度未満となったタイミングに限らず、例えばA度未満等となったタイミングであってもよい。
【0058】
図9は、第3実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1の動作を示すフローチャートであって、制限解除制御に関する処理を示している。まず、図9に示すステップS41~S46において図5に示したステップS11~S16と同様の処理が実行される。
【0059】
次いで、図9に示すステップS47において故障回避部52は、表示器10の温度がD度未満であるかを判断する(S47)。表示器10の温度がD度未満でない場合(S47:NO)、処理はステップS41に移行する。
【0060】
表示器10の温度がD度未満である場合(S47:YES)、故障回避部52は、表示器10の温度がB度未満であるかを判断する(S48)。表示器10の温度がB度未満でない場合(S48:NO)、故障回避部52は、デューティ比の上限をC%とする(S49)。その後、処理はステップS41に移行する。
【0061】
表示器10の温度がB度未満である場合(S48:YES)、故障回避部52は、表示器10の温度がA度未満であるかを判断する(S50)。表示器10の温度がA度未満でない場合(S50:NO)、故障回避部52は、デューティ比の上限をB%とする(S51)。その後、処理はステップS41に移行する。
【0062】
表示器10の温度がA度未満である場合(S50:YES)、故障回避部52は、デューティ比の上限をA%とする(S52)。その後、図9に示す処理は終了する。
【0063】
このようにして、第3実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
加えて、第3実施形態によれば、予測される表示器10の温度がC度未満となったときに凹面ミラー30を復帰させ、表示器10の温度がD度未満となったときに表示器10を点灯させるようにしている。ここで、凹面ミラー30を復帰させた場合には太陽光が所定光量を超えて表示器10に入射することがある。このため、表示器10の温度が上昇して再度C度以上となることもあり得る。よって、予測される表示器10の温度がC度を境に何度も往復することがあり得る。このような場合に、第1実施形態では表示器10が点灯したり消灯したりを繰り返す可能性があるが、第3実施形態では、表示器10の温度がD度未満となったときに表示器10を点灯させることから、このような事態を回避することができる。従って、表示器10が点灯と消灯とを繰り返す事態を抑制することができる。
【0065】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、適宜公知や周知の技術を組み合わせてもよい。
【0066】
例えば、本実施形態において温度予測部51は、雰囲気温度と、デューティ比から求められる温度上昇値とに基づいて、表示器10の温度を予測しているが、これに限らず、例えばデューティ比と点灯時間とに基づいて発熱量を求め、発熱量に基づく温度上昇値を算出して雰囲気温度に加算するようにしてもよい。これにより、発熱量を考慮した温度予測を行うこととなり、より正確が高い温度予測を行うことができるからである。
【0067】
また、上記実施形態において故障回避部52は、表示器10の温度がC度以上である場合には、凹面ミラー30をPP位置としているが、PP位置に限らず、他の回転位置とし、太陽光の入射量を減少させたり所定光量以下(特にゼロ)に制限してもよい。(すなわち第1回転角度はPP位置に限らない)。
【0068】
加えて、故障回避部52は、表示器10の温度が高くなるほど、表示器10に至る太陽光の入射量が減少するように、凹面ミラー30の回転角度を制御してもよい。この際、故障回避部52は、季節及び時刻のデータや自車両の向きに基づいて自車両に対する太陽の位置を判断して角度制御するとよい。
【0069】
さらに、本実施形態においては、図3を参照してデューティ比が段階的に変化させられる内容を説明したが、これに限らず、デューティ比は連続的に変化させられるものであってもよい。加えて、故障回避制御については、デューティ比及び凹面ミラー30の回転制御のいずれか一方のみを行うものであってもよい。
【0070】
また、第3実施形態においては、表示器10の点灯に先立って凹面ミラー30を復帰させるようにしているが、これに限らず、凹面ミラー30を復帰させるのに先立って表示器10を点灯させてもよい。すなわち、表示器10の温度がC度まで低下した段階でデューティ比の上限をA%とし、D度まで低下した段階で凹面ミラー30を復帰させるようにしてもよい。ここで、表示器10を点灯させると、表示器10の温度上昇を招き、予測される表示器10の温度がC度を境に何度も往復することがあり得る。このような場合、表示器10が点灯したり消灯したりを繰り返すこととなるが、凹面ミラー30が復帰しておらず、点灯と消灯とを繰り返していても、これを運転者に認識させないようにすることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 :ヘッドアップディスプレイ装置
2 :インストルメントパネル
10 :表示器
11 :液晶パネル
12 :バックライト
20 :折り返しミラー
30 :凹面ミラー(ミラー部材)
40 :筐体
41 :カバー部材
50 :制御基板(制御部)
51 :温度予測部
52 :故障回避部
53 :記憶部
60 :温度センサ
I :虚像
O :開口部
W :ウィンドシールド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9