(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】新規組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/12 20060101AFI20240117BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240117BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240117BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240117BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240117BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240117BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A61K38/12
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/10
A61P31/04
(21)【出願番号】P 2021535273
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 GB2019053655
(87)【国際公開番号】W WO2020128507
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-13
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521265106
【氏名又は名称】アレコー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】イェゼク ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ゲリング デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ハウエル サラ
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-511522(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0172167(US,A1)
【文献】国際公開第2018/073269(WO,A1)
【文献】特表2004-525108(JP,A)
【文献】特表2020-531410(JP,A)
【文献】Sanchez-Rubio Ferrandez, J. et al.,Stability of daptomycin reconstituted vials and infusion solutions,European Journal of Hospital Pharmacy,2016年03月14日,Vol. 25,pp. 107-110
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/12
A61K 9/00
A61K 47/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHが5.0~8.0の範囲の水溶液組成物であって、
濃度が30~100mg/mlであるダプトマイシ
ン又はその塩、
少なくとも65%(重量/体積)の量の水、
二価金属カチオン、及び
任意選択で、3.0~9.0の範囲のpK
aをもち、そのpK
aが
前記組成物のpHの2pH単位以内にある
、少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1
種又は複数の緩衝剤を含み、
前記緩衝剤
が0~5mMの合計濃度で存在する水溶液組成物。
【請求項2】
前記組成物
が水を少なくとも
80%(重量/体積)の量で含む、請求項
1に記載の水溶液組成物。
【請求項3】
前記二価金属カチオンの濃度
が10~150mMである、請求項1
又は2に記載の水溶液組成物。
【請求項4】
前記二価金属カチオンが、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン及び亜鉛イオ
ンから選択される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の水溶液組成物。
【請求項5】
緩衝剤を実質的に含まない、請求項1~
4のいずれか一項に記載の水溶液組成物。
【請求項6】
前記緩衝
剤が、マレイン酸塩、亜硫酸塩、アスパルテーム、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、酒石酸塩、アデニン、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、フェニル酢酸、没食子酸塩、シトシン、
ヒスチジン、p-アミノ安息香酸、ソルビン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、アルギン酸塩、尿酸塩、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、重炭酸塩、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、N-(2-アセトアミド)-2-イミノ二酢酸、2-[(2-アミノ-2-オキソエチル)アミノ]エタンスルホン酸、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、リン酸塩、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、3-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリエタノールアミン、ピペラジン-N,N’-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N-トリス(ヒドロキシメチル)グリシン、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸、クエン酸塩及びそれらの塩、並びにそれらの組み合わせからなる群より選択され
る、請求項1~
4のいずれか一項に記載の水溶液組成物。
【請求項7】
前記pHが6.0~7.0の範囲にあ
る、請求項1~
6のいずれか一項に記載の水溶液組成物。
【請求項8】
メチオニン、グルタチオン、アスコルビン酸塩、ブチル化ヒドロキノン、乳酸塩、ニコチンアミド、ニコチン酸塩、トリプトファン、フェニルアラニン及びチロシンからなる群より選択される抗酸化物
質をさらに含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の水溶液組成物。
【請求項9】
張度調節剤をさらに含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の水溶液組成物。
【請求項10】
前記張度調節剤が
、グリセロール、1,2-プロパンジオール、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、ラクトース、PEG300及びPEG400からなる群より選択される
非荷電張度調節剤である、請求項
9に記載の水溶液組成物。
【請求項11】
前記張度調節剤が
、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウ
ム及びアミノ
酸から選択される
荷電張度調節剤である、請求項
9に記載の水溶液組成物。
【請求項12】
前記荷電張度調節剤を、300mM以
上の濃度で含む、請求項
11に記載の水溶液組成物。
【請求項13】
グリシン、プロリン、メチオニン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群より選択されるアミノ
酸をさらに含む、請求項1~
12のいずれか一項に記載の水溶液組成物。
【請求項14】
前記pHが6.0~7.0の範囲にある、請求項1~
13のいずれか一項に記載の水溶液組成物。
【請求項15】
pHが5.0~8.0の範囲の水溶液組成物であって、
ダプトマイシ
ン又はその塩、
カルシウムイオン及びマグネシウムイオンから選択される二価金属カチオン、
グリシン、プロリン、メチオニン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群より選択されるアミノ酸、及び
3.0~9.0の範囲のpK
aをもち、そのpK
aが前記組成物のpHの2pH単位内にある、少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1
種又は複数の緩衝剤を含み、
前記緩衝剤が
0.5~5mMの合計濃度で存在し、前記組成物中のダプトマイシ
ン又はその塩の濃度が
40~60mg/mlであり、水を少なくとも90%(重量/体積)の量で含む、水溶液組成物。
【請求項16】
前記pHが6.0~7.0の範囲にある、請求項
15に記載の水溶液組成物。
【請求項17】
前記緩衝剤がリン酸塩である、請求項
15又は16に記載の水溶液組成物。
【請求項18】
グリセロール、1,2-プロパンジオール、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、ラクトース、PEG300及びPEG400からなる群より選択される非荷電張度調節剤を、100~500mMの濃度で含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の水溶液組成物。
【請求項19】
治療で使用するための組成物である、請求項1~
18のいずれか一項に記載の水溶液組成物。
【請求項20】
医薬組成物である、請求項1~
18のいずれか一項に記載の水溶液組成物。
【請求項21】
細菌感染症の治療で使用するための、請求項1~
18のいずれか一項に記載の水溶液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダプトマイシンの水溶液組成物、特に低緩衝剤濃度のダプトマイシンの水溶液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ダプトマイシンは、ストレプトマイセス・ロゼオスポラス(Streptomyces roseosporus)の発酵によって得られる環状リポペプチド抗菌剤で、キュビシン(登録商標)の商品名でヒトに使用するための抗菌剤としてメルク社(Merck&Co.,Inc.)によって製造されている。キュビシン(登録商標)は、0.9%塩化ナトリウム注射液で再溶解した後に静脈内(IV)に使用するための、500mgのダプトマイシンを含有する無菌で防腐剤無添加の凍結乾燥ケーキとして単回使用バイアルで提供される。キュビシン(登録商標)は、複雑性皮膚・皮膚軟部組織感染症(cSSSI)の治療及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus Aureus)血流感染症(菌血症)の治療に適応される。
【0003】
キュビシン(登録商標)は、2分かけて注射するか、30分かけて点滴するかのいずれかによって静脈内に投与されるべきである。典型的には、治療レジメンは適応症に応じて、1~6週間、24時間ごとに1回である。
【0004】
現在利用可能な製剤では、一旦再溶解すると、とりわけ加水分解を介してダプトマイシンが分解することになるので、凍結乾燥ダプトマイシンは使用直前に再溶解される。IV注射又はIV点滴の前に、ダプトマイシンの凍結乾燥製剤を再溶解する必要があることにより、投与手順が少なからず複雑なものになる。したがって、ダプトマイシンの安定な液体組成物を開発することは非常に望ましいことであり、静注用溶液の再溶解及び調製のための複雑な手順の間のエラーの可能性が少なくなるので、投与の大幅な簡素化につながる可能性もあり、投与の安全性を向上させる可能性もある。
【0005】
ダプトマイシンの液体製剤がヒトへの使用を承認されるためには、以下を含む数多くの基準を満さなければならない。
・物理的安定性が良好なこと(保存中及び使用中に凝集が最小限で、ゲル化がないこと)、
・化学的安定性が良好なこと(不純物のレベルが指定された限度内であること)、
・注射部位の反応(例えば注射時の痛み、注射部位の発赤)が最小限であるか、又は反応がないこと、
・安全性プロファイルが受け入れられるものであること。
【0006】
本発明の目的は、良好な物理的及び化学的安定性を有し、ヒトにおける静脈内使用に適したダプトマイシンの液体製剤、特に50mg/mlなど高濃度の液体製剤を提供することである。
【0007】
具体的には、本発明の目的は、IV投与(IV注射又はIV点滴のいずれか)に適したダプトマイシン(例えば50mg/ml)の安定な液体製剤を提供することである。
【0008】
国際公開第2011/035108A1号及び国際公開第2011/062676A1号(ともにイーグル・ファーマスーティカルス社(EAGLE PHARMACEUTICALS, INC.))には、長期保存安定性を有するといわれているダプトマイシンを含有する組成物が開示されている。
【0009】
国際公開第2018/073269A1号(クセリア ファーマシューティカルズ社(XELLIA PHARMACEUTICALS APS))には、ダプトマイシン、1つ又は複数のプロトン性極性溶媒、及びその混合物を含む製剤が開示されている。
【0010】
米国特許出願公開第2002/0111311A1号(ゴヴァルダン(GOVARDHAN)ら)には、結晶形態のダプトマイシンを調製する方法が開示されている。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明によれば、pHが5.0~8.0の範囲の水溶液組成物であって、
ダプトマイシン若しくはその類似体、又はその塩、及び
二価金属カチオン、及び
任意選択で、3.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1つ又は複数の緩衝剤を含み、
その緩衝剤が0~5mMの合計濃度で存在する、水溶液組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で記載されるのは、ダプトマイシン及び二価カチオンの安定な水溶液組成物であり、その組成物は緩衝剤を有しないか、又は緩衝剤を非常に低濃度で有する。
【0013】
ダプトマイシンは、N-デカノイル-L-トリプトフィル-D-アスパラギニル-L-アスパルチル-L-トレオニルグリシル-L-オルニチル-L-アスパルチル-D-アラニル-L-アスパルチルグリシル-D-セリル-トレオ-3-メチル-L-グルタミル-3-アントラニロイル-L-アラニンε1-ラクトンという化学名をもつ環状リポペプチド抗菌剤である。
【0014】
ダプトマイシンはLY146032としても知られ、ストレプトマイセス・ロゼオスポラスのファクターA-21978Co型抗菌剤の一つである。ダプトマイシンの化学構造は次の通りである。
【0015】
【0016】
ダプトマイシンの実験式はC72H101N17O26であり、その分子量は1619.71である。
【0017】
ダプトマイシンの類似体としては、A-21978Co型抗菌剤が挙げられる。
【0018】
ダプトマイシン及びその類似体の塩は、限定されないが、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、マンガン及び亜鉛を含む好適な対イオンと形成されうる。
【0019】
より高い濃度のダプトマイシンを含有する組成物が特に注目されている。ペプチド分子間の分子相互作用の割合が増加するので、高濃度の水性ペプチド治療薬を製剤することは簡単なことではない。分子相互作用の増加は、凝集、フィブリル形成、並びに分子間相互作用に起因する他の分解経路のより高い出現率につながりうる。
【0020】
1つの実施形態では、組成物中のダプトマイシンの濃度は、≧27mg/ml、≧30mg/ml、≧35mg/ml、≧40mg/ml、≧45mg/ml又は≧50mg/mlなど、>25mg/mlであり、例えば最大で100mg/ml前後である。1つの実施形態では、組成物中のダプトマイシンの濃度は、30~60mg/ml、35~60mg/ml、40~60mg/ml又は45~55mg/mlなど、30~100mg/mlである。1つの実施形態では、組成物中のダプトマイシンの濃度は約50mg/mlである。
【0021】
本明細書で使用される「水溶液組成物」という用語は、水、好ましくは蒸留水、脱イオン水、注射用水、注射用滅菌水又は注射用静菌水の溶液組成物を指す。
【0022】
本発明の組成物は、水を、少なくとも70%(重量/体積)、少なくとも75%(重量/体積)、少なくとも80%(重量/体積)、少なくとも85%(重量/体積)、又は少なくとも90%(重量/体積)など、少なくとも65%(重量/体積)の量で含む。
【0023】
1つの実施形態では、組成物溶媒は、(体積基準で)少なくとも85%の水、少なくとも90%の水、少なくとも95%の水又は少なくとも99%の水など、少なくとも80%の水を含む。1つの実施形態では、溶媒は水であり、すなわち組成物中に存在する唯一の溶媒は水である。
【0024】
本発明の発明者らは、ある特定の組成物パラメーターの調整及び組成物へのある特定の添加剤の添加により、化学的及び/又は物理的安定性が向上したダプトマイシン組成物を形成できることを発見した。
【0025】
まず第1に、本発明者らは、ある特定のダプトマイシン組成物において、二価金属イオンの存在によりダプトマイシンの安定性が向上しうることを発見した。実施例1に見られるように、塩化カルシウムと塩化マグネシウムはともに、ダプトマイシンの安定性を向上させ、塩化カルシウムが最大の効果を示した。
【0026】
1つの実施形態では、二価金属カチオンは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン及び亜鉛イオンから選択される。1つの実施形態では、二価金属カチオンはカルシウムイオンである。別の実施形態では、二価金属カチオンはマグネシウムイオンである。
【0027】
二価金属カチオンは、典型的には、例えば塩化物塩、硝酸塩、酢酸塩、乳酸塩、又は硫酸塩などの塩の形態で組成物に添加されることになる。また、二価金属カチオンは水酸化物として組成物に添加することもできる。
【0028】
1つの実施形態では、組成物中の二価金属カチオンの濃度は、20~130mM、30~120mM、40~100mM、40~80mM又は50~70mMなど、10~150mMである。
【0029】
組成物のpHは5.0~8.0であり、例えば5.5~7.5であることができる。
実施例1及び2に見られるように、試験した組成物に関してカルシウムイオン存在下でのダプトマイシンの至適pHは6.0~7.0であった。したがって、好ましい実施形態では、組成物のpHは6.0~7.0の範囲である。本明細書での「pH」への言及はすべて、25℃で評価された組成物のpHを指す。組成物のpHが6.0~7.0の範囲である場合、組成物は任意選択で、4.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1つ又は複数の緩衝剤を含む。
【0030】
本発明の発明者らはまた、ある特定のダプトマイシン組成物では、緩衝剤の存在が濃度依存的にダプトマイシンの安定性に有害な影響を与えることも発見した。実施例1に見られるように、50mMの緩衝剤(リン酸塩やADAなど)の存在は、試験した組成物の安定性を損なうことにつながった。実施例4は、ヒスチジンバッファーが10mM以上の濃度で製剤の安定性に悪影響を及ぼすことを示している。また、実施例4は、ADAバッファーが20mMでも不安定性を引き起こしうることを示している。したがって、組成物中の緩衝剤の濃度はできる限り制限されるべきである。
【0031】
理論に拘束されることを望むものではないが、ダプトマイシンは、本明細書に記載の濃度及びpH範囲で製剤されたとき、それ自体が比較的良好な緩衝剤であると考えられる。このダプトマイシンの自己緩衝能は、十分な緩衝能を確保するために組成物への緩衝剤の添加が必須ではないことを意味し、本発明の発明者らは、組成物へのさらなる緩衝剤の添加は実際には不安定化しうることを発見した。クレームされる組成物中の緩衝剤の「合計濃度」は、組成物中のダプトマイシンの濃度を除いたものであることに留意されたい。しかし、水溶液組成物中の緩衝剤の濃度を計算するときには、緩衝能を有するダプトマイシンの塩形態のいずれの対イオンも、緩衝剤の合計濃度に含められるべきである。
【0032】
1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0~4mM、0~3mM、0~2mM、0~1mM、0~0.5mM、0~0.4mM、0~0.3mM、0~0.2mM又は0~0.1mMなど、0~5mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0~3mM、0~2mM、0~1mM、0~0.5mM、0~0.4mM、0~0.3mM、0~0.2mM又は0~0.1mMなど、0~4mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0~2mM、0~1mM、0~0.5mM、0~0.4mM、0~0.3mM、0~0.2mM又は0~0.1mMなど、0~3mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0~1mM、0~0.5mM、0~0.4mM、0~0.3mM、0~0.2mM又は0~0.1mMなど、0~2mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0~0.5mM、0~0.4mM、0~0.3mM、0~0.2mM又は0~0.1mMなど、0~1mMである。
【0033】
1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.1~4mM、0.1~3mM、0.1~2mM、0.1~1mM、0.1~0.5mM、0.1~0.4mM、0.1~0.3mM又は0.1~0.2mMなど、0.1~5mMである。
【0034】
1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.1~3mM、0.1~2mM、0.1~1mM、0.1~0.5mM、0.1~0.4mM、0.1~0.3mM又は0.1~0.2mMなど、0.1~4mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.1~2mM、0.1~1mM、0.1~0.5mM、0.1~0.4mM、0.1~0.3mM又は0.1~0.2mMなど、0.1~3mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.1~1mM、0.1~0.5mM、0.1~0.4mM、0.1~0.3mM又は0.1~0.2mMなど、0.1~2mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.1~0.5mM、0.1~0.4mM、0.1~0.3mM又は0.1~0.2mMなど、0.1~1mMである。
【0035】
1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.2~4mM、0.2~3mM、0.2~2mM、0.2~1mM、0.2~0.5mM、0.2~0.4mM又は0.2~0.3mMなど、0.2~5mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.2~3mM、0.2~2mM、0.2~1mM、0.2~0.5mM、0.2~0.4mM又は0.2~0.3mMなど、0.2~4mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.2~2mM、0.2~1mM、0.2~0.5mM、0.2~0.4mM又は0.2~0.3mMなど、0.2~3mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.2~1mM、0.2~0.5mM、0.2~0.4mM又は0.2~0.3mMなど、0.2~2mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.2~0.5mM、0.2~0.4mM又は0.2~0.3mMなど、0.2~1mMである。
【0036】
1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.3~4mM、0.3~3mM、0.3~2mM、0.3~1mM、0.3~0.5mM又は0.3~0.4mMなど、0.3~5mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.3~3mM、0.3~2mM、0.3~1mM、0.3~0.5mM又は0.3~0.4mMなど、0.3~4mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.3~2mM、0.3~1mM、0.3~0.5mM又は0.3~0.4mMなど、0.3~3mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.3~1mM、0.3~0.5mM又は0.3~0.4mMなど、0.3~2mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.3~0.5mM又は0.3~0.4mMなど、0.3~1mMである。
【0037】
1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.4~4mM、0.4~3mM、0.4~2mM、0.4~1mM又は0.4~0.5mMなど、0.4~5mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.4~3mM、0.4~2mM、0.4~1mM又は0.4~0.5mMなど、0.4~4mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.4~2mM、0.4~1mM又は0.4~0.5mMなど、0.4~3mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.4~1mM又は0.4~0.5mMなど、0.4~2mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.4~1mM又は0.4~0.5mMである。
【0038】
1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.5~4mM、0.5~3mM、0.5~2mM又は0.5~1mMなど、0.5~5mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.5~3mM、0.5~2mM又は0.5~1mMなど、0.5~4mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.5~2mM又は0.5~1mMなど、0.5~3mMである。1つの実施形態では、溶液中の緩衝剤の合計濃度は、0.5~2mM又は0.5~1mMである。
【0039】
1つの実施形態では、組成物中の緩衝剤の合計濃度は、≦4mM、≦3mM、≦2mM、≦1mM、≦0.5mM、≦0.4mM、≦0.3mM、≦0.2mM又は≦0.1mMなど、≦5mMである。
【0040】
1つの実施形態では、組成物は緩衝剤を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」とは、水溶液組成物中の緩衝剤の合計濃度が0.1mM未満であることを意味する。繰り返しになるが、溶液組成物中の緩衝剤の濃度を考えるとき、ダプトマイシン自体の緩衝能を除外すべきである。1つの実施形態では、組成物は緩衝剤を含まない。
【0041】
緩衝剤は、存在する場合、組成物のpHにおいて緩衝能を有することになる。緩衝剤は、典型的には、組成物のpHの1pH単位以内にpKaをもつイオン化可能な基を含むが、組成物のpHよりも1pH単位を超えて大きい又は小さいpKaをもつイオン化可能な基を有する部分も、十分な量で存在すれば、ある程度の緩衝効果をもたらしうる。1つの実施形態では、該緩衝剤(又は緩衝剤)(the(or a)buffer)は、組成物のpHの1pH単位以内のpKaをもつイオン化可能な基を含む。別の実施形態では、該緩衝剤(又は緩衝剤)は、組成物のpHの1.5pH単位以内(組成物のpHの1~1.5pH単位など)のpKaをもつイオン化可能な基を含む。さらなる実施形態では、該緩衝剤(又は緩衝剤)は、組成物のpHの2pH単位以内(組成物のpHの1.5~2pH単位など)のpKaをもつイオン化可能な基を含む。緩衝能は25℃で好適に測定される。
【0042】
好適には、緩衝剤を実質的に含まない組成物は、組成物のpHの2pH単位以内のpKaをもつ少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質を実質的に含まない。
【0043】
1つの実施形態では、組成物は単一の緩衝剤を含有する。1つの実施形態では、組成物は2つの緩衝剤を含有する。
【0044】
1つの実施形態では、組成物は、単一のイオン化可能な基を含む緩衝剤を含有する。1つの実施形態では、組成物は両性イオン種を含有しない。
【0045】
水溶液のpHは、酸が加えられた場合に低下し、塩基が加えられた場合に上昇する。所定の温度及び大気圧において、酸の添加によるpHの減少の程度、又は塩基の添加によるpHの増加の程度は、(1)酸又は塩基の添加量、(2)水溶液の開始pH(すなわち酸又は塩基の添加前)及び(3)緩衝剤の有無に依存する。したがって、(1)所与のpHから出発して、より多量の酸又は塩基の添加は、より大きな程度のpH変化をもたらすことになり、(2)所与の量の酸又は塩基の添加は、中性pH(すなわちpH7.0)で最大のpH変化をもたらすことになり、pH変化の程度は、開始pHがpH7.0から離れるにつれて減少することになり、(3)所与pHから始まるpH変化の程度は、緩衝剤がない場合よりも緩衝剤がある場合のほうが小さいことになる。したがって、緩衝剤は、溶液に酸又は塩基が添加された場合、pHの変化を少なくする能力を有する。
【0046】
好適には、強酸又は強塩基のいずれかが添加され、溶液中の酸又は塩基の0.1mMの増加をもたらすとき、物質が、緩衝剤を含まない同一の溶液と比較して、溶液のpH変化の程度を75%、好ましくは50%、最も好ましくは25%にまで減少させることが可能である場合、その物質は緩衝剤であるとみなされる。
【0047】
逆に、好適には、強酸又は強塩基のいずれかが添加され、溶液中の酸又は塩基の0.1mMの増加をもたらすとき、物質が、その物質を含まない同一の溶液と比較して、溶液のpH変化の程度を75%、好ましくは50%、最も好ましくは25%にまで減少させることができない場合には、その物質は緩衝剤であるとみなされない。
【0048】
1つの実施形態では、該緩衝剤(又は緩衝剤)はアミノ酸である。別の実施形態では、該緩衝剤(又は緩衝剤)はアミノ酸ではない。
【0049】
1つの実施形態では、組成物は、マレイン酸塩、亜硫酸塩、グリオキシル酸塩、アスパルテーム、グルクロン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、グリコール酸、アデニン、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、フェニル酢酸、没食子酸塩、シトシン、p-アミノ安息香酸、ソルビン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、アルギン酸塩、尿酸塩、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、重炭酸塩、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、N-(2-アセトアミド)-2-イミノ二酢酸、2-[(2-アミノ-2-オキソエチル)アミノ]エタンスルホン酸、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、リン酸塩、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、3-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリエタノールアミン、ピペラジン-N,N’-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、2-[(2-アミノ-2-オキソエチル)-(カルボキシメチル)アミノ]酢酸(ADA)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N-トリス(ヒドロキシメチル)グリシン並びにN-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸、及びその塩、並びにそれらの組み合わせからなる群より選択される緩衝剤又は複数の緩衝剤を含む。そのような緩衝剤は、3.0~9.0の範囲のpKaをもつイオン化可能な基を含有する。
【0050】
1つの実施形態では、組成物は、マレイン酸塩、亜硫酸塩、アスパルテーム、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、酒石酸塩、アデニン、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、フェニル酢酸、没食子酸塩、シトシン、p-アミノ安息香酸、ソルビン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、アルギン酸塩、尿酸塩、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、重炭酸塩、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、N-(2-アセトアミド)-2-イミノ二酢酸、2-[(2-アミノ-2-オキソエチル)アミノ]エタンスルホン酸、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、リン酸塩、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、3-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリエタノールアミン、ピペラジン-N,N’-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、2-[(2-アミノ-2-オキソエチル)-(カルボキシメチル)アミノ]酢酸(ADA)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N-トリス(ヒドロキシメチル)グリシン、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸、クエン酸塩及びそれらの塩、並びにそれらの組み合わせからなる群より選択される緩衝剤又は複数の緩衝剤を含む。そのような緩衝剤は、4.0~9.0の範囲のpKaをもつイオン化可能な基を含有する。
【0051】
1つの実施形態では、緩衝剤は、マレイン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、安息香酸塩、酢酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン及びクエン酸塩、特に乳酸塩、酢酸塩、リン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン及びクエン酸塩からなる群より選択され、特にリン酸塩である。
【0052】
「pKa」への言及はすべて、25℃で評価されたイオン化可能な基のpKa(CRC化学・物理学ハンドブック(CRC Handbook of Chemistry and Physics)、第79版、1998年、D.R.Lideを参照)を指すことに留意されたい。
【0053】
組成物への1つ又は複数の安定剤の添加は、さらなる安定性の利点をもたらすことができる。安定剤は安定化量で使用されることになる。
【0054】
ある特定のpH範囲において、安定剤、又は実際に本明細書に記載の任意の他の添加剤(キレート剤、両親媒性種などを含む)は緩衝能を有する場合があり、例えば、pHが5.0~8.0の範囲の組成物において、安定剤又は添加剤は、3.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内である少なくとも1つのイオン化可能な基を有することがある。疑義を避けるために明記すると、そのような安定剤又は添加剤の濃度は、緩衝剤の合計濃度に含められるべきである。したがって、そのような安定剤又は添加剤は、合計緩衝剤濃度の制限を満たすように十分に低い濃度、例えば5mMを超えない濃度で組成物に存在する。
【0055】
1つの実施形態では、安定剤は、アミノ酸、特にα-アミノ酸などの天然のアミノ酸から選択される。1つの実施形態では、アミノ酸は、メチオニン、グリシン、プロリン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群より選択され、特に、グリシン、プロリン、メチオニン、アルギニン、リシン及びアスパラギン酸からなる群より選択され、例えば、グリシン、プロリン、メチオニン、アルギニン及びリシンからなる群より選択される。好適には、アミノ酸は、1~100mM、1~50mM、1~20mM、1~10mM、1~5mM、1~4mM、1~3mM又は1~2mMなど、1~200mMの濃度で存在する。
【0056】
1つの実施形態では、アミノ酸は、組成物の所与のpHにおいて緩衝剤ではなく、すなわち、アミノ酸は、組成物のpHの1.5pH単位又は1pH単位など、2pH単位以内のpKaをもつイオン化可能な基を含まない。1つの実施形態では、アミノ酸はヒスチジンではない。
【0057】
好適には、組成物のpHが5.0~8.0の範囲であるとき、アミノ酸は、存在する場合、3.0~9.0の範囲のpKaをもつ側鎖を有しない。1つの実施形態では、アミノ酸は、グリシン、プロリン、メチオニン、アルギニン及びリシンからなる群より選択される。
【0058】
好適には、組成物のpHが6.0~7.0の範囲であるとき、アミノ酸は、存在する場合、4.0~9.0の範囲のpKaをもつ側鎖を有しない。1つの実施形態では、アミノ酸は、好適には、グリシン、プロリン、メチオニン、アルギニン、リシン及びアスパラギン酸からなる群より選択される。
【0059】
1つの実施形態では、アミノ酸は、5mM以下の濃度で、組成物中に存在し、グルタミン酸である。別の実施形態では、アミノ酸は、5mM以下の濃度で、組成物中に存在し、アスパラギン酸から選択される。
【0060】
組成物は張度調節剤を含むことができ、それは帯電していても帯電していなくてもよい。特定の実施形態では、張度調節剤は安定化効果を有しうる。非荷電張度調節剤の例としては、糖(スクロースや、トレハロース、ラクトースなど)、糖アルコール(マンニトールやソルビトールなど)、他のポリオール(グリセロールや1,2-プロパンジオールなど)及びポリエチレングリコール(PEG300やPEG400など)が挙げられる。1つの実施形態では、非荷電張度調節剤は、グリセロール、1,2-プロパンジオール、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、ラクトース、PEG300及びPEG400からなる群より選択される。含まれる場合には、非荷電張度調節剤は、典型的には、組成物中に、例えば、約300mMなど、200~400mMなど、100~500mMなど、100~1000mMなど、50~5000mMの濃度で使用される。荷電張度調節剤の例としては、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、及びグリシン又はアルギニンなどのアミノ酸が挙げられる。1つの実施形態では、荷電張度調節剤は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、及びグリシン又はアルギニンなどのアミノ酸からなる群より選択され、特に、塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムから選択される。1つの実施形態では、荷電張度調節剤は塩化ナトリウムである。好適には、組成物のpH範囲内で緩衝能を有するアミノ酸は、合計緩衝剤濃度が5mMを超えないように十分に低い濃度で使用される。含まれる場合には、塩化ナトリウムなどの荷電張度調節剤は、典型的には、例えば、約150mMなど、100~200mMなど、50~500mMなど、50~1000mMなど、50~2000mMの濃度で、又は0.1~4mM、0.1~3mM、0.1~2mM若しくは0.1~1mMなど、0.1~5mMの濃度で、組成物に使用される。代替的に、塩化ナトリウムなどの荷電張度調節剤は、例えば500mM以上、例えば500~3000mM、例えば1000~2500mM、例えば1500~2500mM、例えば2000mM前後など、300mM以上の濃度で、組成物に使用されてもよい。実施例2及び3に示されるように、高濃度の塩化ナトリウムは、本発明の組成物の安定性を有意に増加させた。
【0061】
組成物は任意選択で、界面活性剤を、好適には0.05~2mg/mlなど0.01~10mg/mlの濃度で含むことができる。
【0062】
1つの実施形態では、界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤の特に好適なクラスは、アルキルグリコシド、特にドデシルマルトシドである。他のアルキルグリコシドとしては、ドデシルグルコシド、オクチルグルコシド、オクチルマルトシド、デシルグルコシド、デシルマルトシド、トリデシルグルコシド、トリデシルマルトシド、テトラデシルグルコシド、テトラデシルマルトシド、ヘキサデシルグルコシド、ヘキサデシルマルトシド、スクロースモノオクタノアート、スクロースモノデカノアート、スクロースモノドデカノアート、スクロースモノトリデカノアート、スクロースモノテトラデカノアート及びスクロースモノヘキサデカノアートが挙げられる。
【0063】
別の好適なクラスの非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート20又はポリソルベート80などのポリソルベート(エトキシル化ソルビタンの脂肪酸エステル)である。ポリソルベート20は、ラウリン酸とポリオキシエチレン(20)ソルビタンから形成されたモノエステルであり、20という数字は分子内のオキシエチレン基の数を示す。ポリソルベート80はオレイン酸とポリオキシエチレン(20)ソルビタンから形成されたモノエステルであり、20という数字は分子内のオキシエチレン基の数を示す。ポリソルベート20は、特にツィーン20及びAlkest TW 20を含むさまざまな商品名で知られている。ポリソルベート80は、特にツィーン80及びAlkest TW 80を含むさまざまな商品名で知られている。他の好適なポリソルベートとしては、ポリソルベート40及びポリソルベート60が挙げられる。
【0064】
別の好適なクラスの非イオン性界面活性剤は、ポリエチレングリコールのアルキルエーテル、特に、ポリエチレングリコール(2)ヘキサデシルエーテル(Brij52)、ポリエチレングリコール(2)オレイルエーテル(Brij93)及びポリエチレングリコール(2)ドデシルエーテル(Brij L4)から選択されるような、Brijという商品名で知られているものである。他の好適なBrij界面活性剤としては、ポリエチレングリコール(4)ラウリルエーテル(Brij30)、ポリエチレングリコール(10)ラウリルエーテル(Brij35)、ポリエチレングリコール(20)ヘキサデシルエーテル(Brij58)及びポリエチレングリコール(10)ステアリルエーテル(Brij78)が含まれる。
【0065】
別の好適なクラスの非イオン性界面活性剤は、ポロキサマーとしても知られているポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体であり、特にポロキサマー188、ポロキサマー407、ポロキサマー171及びポロキサマー185である。ポロキサマーは、プルロニック又はコリフォールという商品名でも知られている。例えば、ポロキサマー188はプルロニックF-68として市販されている。
【0066】
別の好適なクラスの非イオン性界面活性剤は、ポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテル、特にトリトンX-100という商品名でも知られる4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコールである。
【0067】
1つの実施形態では、非イオン性界面活性剤は、アルキルグリコシド、ポリソルベート、ポリエチレングリコールのアルキルエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体、及びポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテルからなる群より選択される。1つの実施形態では、組成物中の非イオン性界面活性剤の濃度は、10~8,000μg/ml、10~5,000μg/ml、10~3,000μg/ml、10~2000μg/ml、50~1000μg/ml、100~500μg/ml又は約200μg/mlなど、10~10,000μg/mlである。1つの実施形態では、非イオン性界面活性剤は、100~10,000μg/ml、1,000~10,000μg/ml又は5,000~10,000μg/mlなど、10~10,000μg/mlの濃度のアルキルグリコシドである。
【0068】
1つの実施形態では、界面活性剤はカチオン界面活性剤である。好適なカチオン界面活性剤としては、ベンザルコニウム及びベンゼトニウム塩が挙げられる。1つの実施形態では、カチオン界面活性剤は、ベンゼトニウム塩、例えば、塩化ベンゼトニウムなどのハロゲン化ベンゼトニウムから選択される。別の実施形態では、カチオン界面活性剤は、ベンザルコニウム塩、例えば、塩化ベンザルコニウムなどのハロゲン化ベンザルコニウムから選択される。さらなる実施形態では、カチオン界面活性剤は、塩化ベンゼトニウムと塩化ベンザルコニウムの混合物などのベンゼトニウム塩とベンザルコニウム塩の混合物である。1つの実施形態では、組成物中のカチオン界面活性剤の濃度は、50~1000μg/ml、100~500μg/ml又は約200μg/mlなど、10~2000μg/mlである。
【0069】
1つの実施形態では、界面活性剤はアニオン界面活性剤である。好適なアニオン界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸アンモニウム、カルボン酸塩(ステアリン酸又はパルミチン酸のナトリウム塩又はアンモニウム塩)、及びリン酸エーテルが挙げられる。
【0070】
1つの実施形態では、界面活性剤は両性イオン界面活性剤である。好適な両性イオン界面活性剤としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン及び3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート(CHAPS)が挙げられる。
【0071】
好適には、上記の通り、界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。
【0072】
1つの実施形態では、組成物は、界面活性剤と、例えば、糖、糖アルコール、他のポリオール及びポリエチレングリコールから選択される非荷電張度調節剤をさらに含む。1つの実施形態では、組成物は、界面活性剤と、塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムなどの荷電張度調節剤をさらに含む。
【0073】
組成物は任意選択で抗酸化物質を含むことができる。1つの実施形態では、抗酸化物質は、メチオニン、グルタチオン、アスコルビン酸塩、ブチル化ヒドロキノン、乳酸塩、ニコチンアミド、ニコチン酸塩、トリプトファン、フェニルアラニン及びチロシンからなる群より選択され、好適には、メチオニン、グルタチオン、アスコルビン酸塩及びブチル化ヒドロキノンから選択され、特にメチオニンである。好適には、抗酸化物質は、5~50mg/mlなど1~100mg/mlの濃度で存在する。理論に拘束されるものではないが、抗酸化物質の存在は、例えば、いくつかの分解経路に関与しうるフリーラジカルを取り除くことによって、ダプトマイシンの化学的及び/又は物理的安定性を向上させうると考えられる。1つの実施形態では、組成物は、例えば、メチオニン、グルタチオン、アスコルビン酸塩、ブチル化ヒドロキノン、乳酸塩、ニコチンアミド、ニコチン酸塩、トリプトファン、フェニルアラニン及びチロシンからなる群より選択される2つの抗酸化物質を含む。
【0074】
組成物は任意選択でキレート剤を含むことができる。キレート剤とは、金属イオン、特に鉄又は銅などの重金属のイオンと錯体形成することができる剤を意味する。微量のこれらの金属はダプトマイシンの化学的分解を促進する。そのような金属は、二価金属の所望の塩の微量混入物として製剤に導入することができる。1つの実施形態では、キレート剤は、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸)及びクエン酸塩からなる群から選択される。1つの実施形態では、キレート剤はヒスチジンではない。
【0075】
1つの実施形態では、キレート剤は組成物の所与のpHにおいて緩衝剤ではなく、すなわちキレート剤は、組成物のpHの1.5pH単位又は1pH単位など、2pH単位以内のpKaをもつイオン化可能な基を含まない。キレート剤は、存在する場合、二価金属カチオンよりも著しく低い濃度である。好適には、キレート剤は、0.1~15mM、0.1~10mM、0.1~5mM又は0.1~1mMなど、0.1~20mMの濃度で存在する。理論に拘束されるものではないが、二価金属カチオンの存在を必要とする組成物にキレート剤を添加することはおそらく直感に反するが、二価金属カチオンの濃度よりはるかに低いキレート剤の存在は、例えば、さまざまな分解経路を触媒することが知られている微量の金属カチオン(特に重金属、例えばFe3+)を取り除くことによって、ダプトマイシンの化学的及び/又は物理的安定性を向上させうると考えられる。1つの実施形態では、キレート剤はマルチアニオンである。マルチアニオンとは、溶液の特定のpHにおいて1分子当たり少なくとも2つのアニオン中心を有する種を意味する。キレート剤がマルチアニオンである場合、それは好適な塩形態として(例えばナトリウム塩として)、又は溶液中でマルチアニオンを形成する酸形態として使用することができる。
【0076】
組成物は任意選択でポリアニオンを含むことができる。1つの実施形態では、ポリアニオンはカルボキシメチルセルロース及び硫酸デキストランからなる群より選択される。好適には、ポリアニオンは、1~5mg/mlなど1~10mg/mlの濃度で存在する。
【0077】
組成物は任意選択でポリカチオンを含むことができる。1つの実施形態では、ポリカチオンは、エチレンイミンのオリゴマー、特にエチレンイミンのオリゴマーであり、オリゴマー中のエチレンイミン(n)の繰り返し単位の数は2~12の範囲である。1つの実施形態では、ポリカチオンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミンからなる群より選択されるエチレンイミンのオリゴマーである。1つの実施形態では、ポリカチオンはTETAである。好適には、ポリカチオンは、1~5mg/mlなど1~10mg/mlの濃度で存在する。
【0078】
理論に拘束されるものではないが、ポリイオン(すなわちポリアニオン及び/又はポリカチオン)の存在は、例えば、弱い複合体を形成し、それにより凝集につながるダプトマイシン分子間の相互作用を防ぐことによって、ダプトマイシンの化学的及び/又は物理的安定性を向上させうると考えられる。
【0079】
組成物は任意選択で荷電両親媒性種を含むことができる。そのような種は、荷電領域及び非極性(疎水性)領域を含む。1つの実施形態では、非極性領域はベンゼン環である。別の実施形態では、非極性領域は、4つ以上の炭素原子からなる脂肪族鎖である。1つの実施形態では、荷電両親媒性種は、安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸、インドール-3-酢酸、フェニル酢酸、3-フェニルプロピオン酸、トランス-桂皮酸、シス-桂皮酸及びマンデル酸からなる群より選択される。1つの実施形態では、荷電両親媒性種は、安息香酸、特にそのイオン形態(安息香酸イオン)である。1つの実施形態では、荷電両親媒性種は、組成物の所与のpHにおいて緩衝剤ではない、すなわち、荷電両親媒性種は、組成物のpHの1.5pH単位又は1pH単位など、2pH単位以内のpKaをもつイオン化可能な基を含まない。好適には、荷電両親媒性種は、5~20mMなど1~100mMの濃度、又は0.1~4mM、0.1~3mM、0.1~2mM若しくは0.1~1mMなど0.1~5mMの濃度で存在する。
【0080】
本発明の1つの態様では、pH5.0~8.0、好適にはpH6.0~7.0の水溶液組成物であって、
35~60mg/ml、40~60mg/ml又は45~55mg/mlなど、30~60mg/mlの濃度のダプトマイシン若しくはその類似体、又はその塩、
カルシウム及びマグネシウムから選択される二価金属カチオン、並びに
任意選択で、3.0~9.0の範囲のpKa、好適には4.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1つ又は複数の緩衝剤を含むか、又はそれらからなり、
その緩衝剤が、0~4mM、0~3mM、0~2mM、0~1mM、0~0.5mM、0~0.4mM、0~0.3mM、0~0.2mM若しくは0~0.1mMなど、0~5mMの合計濃度で、又は0.1~4mM、0.1~3mM、0.1~2mM、0.1~1mM、0.1~0.5mM、0.1~0.4mM、0.1~0.3mM若しくは0.1~0.2mMなど、0.1~5mMの合計濃度で、又は0.2~4mM、0.2~3mM、0.2~2mM、0.2~1mM、0.2~0.5mM、0.2~0.4mM若しくは0.2~0.3mMなど、0.2~5mMの合計濃度で、又は0.3~4mM、0.3~3mM、0.3~2mM、0.3~1mM、0.3~0.5mM若しくは0.3~0.4mMなど、0.3~5mMの合計濃度で、又は0.4~4mM、0.4~3mM、0.4~2mM、0.4~1mM若しくは0.4~0.5mMなど、0.4~5mMの合計濃度で、又は0.5~4mM、0.5~3mM、0.5~2mM若しくは0.5~1mMなど、0.5~5mMの合計濃度で存在する、水溶液組成物が提供される。
【0081】
本発明の1つの態様では、pH5.0~8.0、好適にはpH6.0~7.0の水溶液組成物であって、
35~60mg/ml、40~60mg/ml又は45~55mg/mlなど、30~60mg/mlの濃度のダプトマイシン若しくはその類似体、又はその塩、
カルシウム及びマグネシウムから選択される二価金属カチオンを含むか、又はそれらからなる、水溶液組成物が提供され、
その水溶液組成物は緩衝剤を実質的に含まず、特に、3.0~9.0の範囲のpKa、好適には4.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質を実質的に含まない。
【0082】
本発明の1つの態様では、pH5.0~8.0、好適にはpH6.0~7.0の水溶液組成物であって、
35~60mg/ml、40~60mg/ml又は45~55mg/mlなど、30~60mg/mlの濃度のダプトマイシン若しくはその類似体、又はその塩、並びに
カルシウム及びマグネシウムから選択される二価金属カチオンを含むか、又はそれらからなる、水溶液組成物が提供され、
その水溶液組成物は緩衝剤を実質的に含まず、緩衝剤は、3.0~9.0の範囲のpKa、好適には4.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である。
【0083】
本発明の1つの態様では、pH5.0~8.0、好適にはpH6.0~7.0の水溶液組成物であって、
35~60mg/ml、40~60mg/ml又は45~55mg/mlなど、30~60mg/mlの濃度のダプトマイシン若しくはその類似体、又はその塩、
カルシウム及びマグネシウムから選択される二価金属カチオン、並びに
任意選択で、3.0~9.0の範囲のpKa、好適には4.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1つ又は複数の緩衝剤を含むか、又はそれらからなり、
その組成物中の緩衝剤の合計濃度が≦0.1mMである、水溶液組成物が提供される。
【0084】
本発明の1つの態様では、pH5.0~8.0、好適にはpH6.0~7.0の水溶液組成物であって、
35~60mg/ml、40~60mg/ml又は45~55mg/mlなど、30~60mg/mlの濃度のダプトマイシン若しくはその類似体、又はその塩、
カルシウム及びマグネシウムから選択される二価金属カチオン、
界面活性剤、好適には非イオン性界面活性剤、並びに
任意選択で、3.0~9.0の範囲のpKa、好適には4.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1つ又は複数の緩衝剤を含むか、又はそれらからなり、
その緩衝剤が、0~4mM、0~3mM、0~2mM、0~1mM、0~0.5mM、0~0.4mM、0~0.3mM、0~0.2mM若しくは0~0.1mMなど、0~5mMの合計濃度で、又は0.1~4mM、0.1~3mM、0.1~2mM、0.1~1mM、0.1~0.5mM、0.1~0.4mM、0.1~0.3mM若しくは0.1~0.2mMなど、0.1~5mMの合計濃度で、又は0.2~4mM、0.2~3mM、0.2~2mM、0.2~1mM、0.2~0.5mM、0.2~0.4mM若しくは0.2~0.3mMなど、0.2~5mMの合計濃度で、又は0.3~4mM、0.3~3mM、0.3~2mM、0.3~1mM、0.3~0.5mM若しくは0.3~0.4mMなど、0.3~5mMの合計濃度で、又は0.4~4mM、0.4~3mM、0.4~2mM、0.4~1mM若しくは0.4~0.5mMなど、0.4~5mMの合計濃度で、又は0.5~4mM、0.5~3mM、0.5~2mM若しくは0.5~1mMなど、0.5~5mMの合計濃度で存在する、水溶液組成物が提供される。1つの実施形態では、非イオン性界面活性剤は、好適には10~10,000μg/mlの濃度のドデシルマルトシドなどのアルキルグリコシドである。
【0085】
本発明の1つの態様では、pH5.0~8.0、好適にはpH6.0~7.0の水溶液組成物であって、
35~60mg/ml、40~60mg/ml又は45~55mg/mlなど、30~60mg/mlの濃度のダプトマイシン若しくはその類似体、又はその塩、
カルシウム及びマグネシウムから選択される二価金属カチオン、
抗酸化物質、好適にはメチオニン、並びに
任意選択で、3.0~9.0の範囲のpKa、好適には4.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1つ又は複数の緩衝剤を含むか、又はそれらからなり、
その緩衝剤が、0~4mM、0~3mM、0~2mM、0~1mM、0~0.5mM、0~0.4mM、0~0.3mM、0~0.2mM若しくは0~0.1mMなど、0~5mMの合計濃度で、又は0.1~4mM、0.1~3mM、0.1~2mM、0.1~1mM、0.1~0.5mM、0.1~0.4mM、0.1~0.3mM若しくは0.1~0.2mMなど、0.1~5mMの合計濃度で、又は0.2~4mM、0.2~3mM、0.2~2mM、0.2~1mM、0.2~0.5mM、0.2~0.4mM若しくは0.2~0.3mMなど、0.2~5mMの合計濃度で、又は0.3~4mM、0.3~3mM、0.3~2mM、0.3~1mM、0.3~0.5mM若しくは0.3~0.4mMなど、0.3~5mMの合計濃度で、又は0.4~4mM、0.4~3mM、0.4~2mM、0.4~1mM若しくは0.4~0.5mMなど、0.4~5mMの合計濃度で、又は0.5~4mM、0.5~3mM、0.5~2mM若しくは0.5~1mMなど、0.5~5mMの合計濃度で存在する、水溶液組成物が提供される。
【0086】
本発明の1つの態様では、pH5.0~8.0、好適にはpH6.0~7.0の水溶液組成物であって、
35~60mg/ml、40~60mg/ml又は45~55mg/mlなど、30~60mg/mlの濃度のダプトマイシン若しくはその類似体、又はその塩、
カルシウム及びマグネシウムから選択される二価金属カチオン、
キレート剤、好適には、EDTA、EGTA及びクエン酸塩から選択されるキレート剤、並びに
任意選択で、3.0~9.0の範囲のpKa、好適には4.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1つ又は複数の緩衝剤を含むか、又はそれらからなり、
その緩衝剤が、0~4mM、0~3mM、0~2mM、0~1mM、0~0.5mM、0~0.4mM、0~0.3mM、0~0.2mM若しくは0~0.1mMなど、0~5mMの合計濃度で、又は0.1~4mM、0.1~3mM、0.1~2mM、0.1~1mM、0.1~0.5mM、0.1~0.4mM、0.1~0.3mM若しくは0.1~0.2mMなど、0.1~5mMの合計濃度で、又は0.2~4mM、0.2~3mM、0.2~2mM、0.2~1mM、0.2~0.5mM、0.2~0.4mM若しくは0.2~0.3mMなど、0.2~5mMの合計濃度で、又は0.3~4mM、0.3~3mM、0.3~2mM、0.3~1mM、0.3~0.5mM若しくは0.3~0.4mMなど、0.3~5mMの合計濃度で、又は0.4~4mM、0.4~3mM、0.4~2mM、0.4~1mM若しくは0.4~0.5mMなど、0.4~5mMの合計濃度で、又は0.5~4mM、0.5~3mM、0.5~2mM若しくは0.5~1mMなど、0.5~5mMの合計濃度で存在する、水溶液組成物が提供される。
【0087】
本発明の1つの態様では、pH5.0~8.0、好適にはpH6.0~7.0の水溶液組成物であって、
35~60mg/ml、40~60mg/ml又は45~55mg/mlなど、30~60mg/mlの濃度のダプトマイシン若しくはその類似体、又はその塩、
カルシウム及びマグネシウムから選択される二価金属カチオン、
ポリアニオン、好適には、カルボキシメチルセルロース及び硫酸デキストランからなる群より選択されるポリアニオン、並びに
任意選択で、3.0~9.0の範囲のpKa、好適には4.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1つ又は複数の緩衝剤を含むか、又はそれらからなり、
その緩衝剤が、0~4mM、0~3mM、0~2mM、0~1mM、0~0.5mM、0~0.4mM、0~0.3mM、0~0.2mM若しくは0~0.1mMなど、0~5mMの合計濃度で、又は0.1~4mM、0.1~3mM、0.1~2mM、0.1~1mM、0.1~0.5mM、0.1~0.4mM、0.1~0.3mM若しくは0.1~0.2mMなど、0.1~5mMの合計濃度で、又は0.2~4mM、0.2~3mM、0.2~2mM、0.2~1mM、0.2~0.5mM、0.2~0.4mM若しくは0.2~0.3mMなど、0.2~5mMの合計濃度で、又は0.3~4mM、0.3~3mM、0.3~2mM、0.3~1mM、0.3~0.5mM若しくは0.3~0.4mMなど、0.3~5mMの合計濃度で、又は0.4~4mM、0.4~3mM、0.4~2mM、0.4~1mM若しくは0.4~0.5mMなど、0.4~5mMの合計濃度で、又は0.5~4mM、0.5~3mM、0.5~2mM若しくは0.5~1mMなど、0.5~5mMの合計濃度で存在する、水溶液組成物が提供される。
【0088】
本発明の1つの態様では、pH5.0~8.0、好適にはpH6.0~7.0の水溶液組成物であって、
35~60mg/ml、40~60mg/ml又は45~55mg/mlなど、30~60mg/mlの濃度のダプトマイシン若しくはその類似体、又はその塩、
カルシウム及びマグネシウムから選択される二価金属カチオン、
例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミンからなる群より選択されるエチレンイミンのオリゴマーなどのポリカチオン、並びに
任意選択で、3.0~9.0の範囲のpKa、好適には4.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1つ又は複数の緩衝剤を含むか、又はそれらからなり、
その緩衝剤が、0~4mM、0~3mM、0~2mM、0~1mM、0~0.5mM、0~0.4mM、0~0.3mM、0~0.2mM若しくは0~0.1mMなど、0~5mMの合計濃度で、又は0.1~4mM、0.1~3mM、0.1~2mM、0.1~1mM、0.1~0.5mM、0.1~0.4mM、0.1~0.3mM若しくは0.1~0.2mMなど、0.1~5mMの合計濃度で、又は0.2~4mM、0.2~3mM、0.2~2mM、0.2~1mM、0.2~0.5mM、0.2~0.4mM若しくは0.2~0.3mMなど、0.2~5mMの合計濃度で、又は0.3~4mM、0.3~3mM、0.3~2mM、0.3~1mM、0.3~0.5mM若しくは0.3~0.4mMなど、0.3~5mMの合計濃度で、0.4~4mM、0.4~3mM、0.4~2mM、0.4~1mM又は0.4~0.5mMなど、0.4~5mMの合計濃度で、又は0.5~4mM、0.5~3mM、0.5~2mM若しくは0.5~1mMなど、0.5~5mMの合計濃度で存在する、水溶液組成物が提供される。
【0089】
本発明の1つの態様では、pH5.0~8.0、好適にはpH6.0~7.0の水溶液組成物であって、
35~60mg/ml、40~60mg/ml又は45~55mg/mlなど、30~60mg/mlの濃度のダプトマイシン若しくはその類似体、又はその塩、
カルシウム及びマグネシウムから選択される二価金属カチオン、
好適には安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸、インドール-3-酢酸、フェニル酢酸、3-フェニルプロピオン酸、トランス-桂皮酸、シス-桂皮酸及びマンデル酸からなる群より選択される荷電両親媒性種、特に安息香酸、並びに
任意選択で、3.0~9.0の範囲のpKa、好適には4.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1つ又は複数の緩衝剤を含むか、又はそれらからなり、
その緩衝剤が、0~4mM、0~3mM、0~2mM、0~1mM、0~0.5mM、0~0.4mM、0~0.3mM、0~0.2mM若しくは0~0.1mMなど、0~5mMの合計濃度で、又は0.1~4mM、0.1~3mM、0.1~2mM、0.1~1mM、0.1~0.5mM、0.1~0.4mM、0.1~0.3mM若しくは0.1~0.2mMなど、0.1~5mMの合計濃度で、又は0.2~4mM、0.2~3mM、0.2~2mM、0.2~1mM、0.2~0.5mM、0.2~0.4mM若しくは0.2~0.3mMなど、0.2~5mMの合計濃度で、又は0.3~4mM、0.3~3mM、0.3~2mM、0.3~1mM、0.3~0.5mM若しくは0.3~0.4mMなど、0.3~5mMの合計濃度で、又は0.4~4mM、0.4~3mM、0.4~2mM、0.4~1mM若しくは0.4~0.5mMなど、0.4~5mMの合計濃度で、又は0.5~4mM、0.5~3mM、0.5~2mM若しくは0.5~1mMなど、0.5~5mMの合計濃度で存在する、水溶液組成物が提供される。
【0090】
本発明の1つの態様では、pH5.0~8.0、好適にはpH6.0~7.0の水溶液組成物であって、
35~60mg/ml、40~60mg/ml又は45~55mg/mlなど、30~60mg/mlの濃度のダプトマイシン若しくはその類似体、又はその塩、
カルシウム及びマグネシウムから選択される二価金属カチオン、
張度調節剤、並びに
任意選択で、3.0~9.0の範囲のpKa、好適には4.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1つ又は複数の緩衝剤を含むか、又はそれらからなり、
その緩衝剤が、0~4mM、0~3mM、0~2mM、0~1mM、0~0.5mM、0~0.4mM、0~0.3mM、0~0.2mM若しくは0~0.1mMなど、0~5mMの合計濃度で、又は0.1~4mM、0.1~3mM、0.1~2mM、0.1~1mM、0.1~0.5mM、0.1~0.4mM、0.1~0.3mM若しくは0.1~0.2mMなど、0.1~5mMの合計濃度で、又は0.2~4mM、0.2~3mM、0.2~2mM、0.2~1mM、0.2~0.5mM、0.2~0.4mM若しくは0.2~0.3mMなど、0.2~5mMの合計濃度で、又は0.3~4mM、0.3~3mM、0.3~2mM、0.3~1mM、0.3~0.5mM若しくは0.3~0.4mMなど、0.3~5mMの合計濃度で、又は0.4~4mM、0.4~3mM、0.4~2mM、0.4~1mM若しくは0.4~0.5mMなど、0.4~5mMの合計濃度で、又は0.5~4mM、0.5~3mM、0.5~2mM若しくは0.5~1mMなど、0.5~5mMの合計濃度で存在する、水溶液組成物が提供される。
【0091】
本発明の1つの態様では、pH5.0~8.0、好適にはpH6.0~7.0の水溶液組成物であって、
35~60mg/ml、40~60mg/ml又は45~55mg/mlなど、30~60mg/mlの濃度のダプトマイシン若しくはその類似体、又はその塩、
カルシウム及びマグネシウムから選択される二価金属カチオン、
300mM以上、例えば500mM以上、例えば500~3000mM、例えば1000~2500mM、例えば1500~2500mM、例えば2000mM前後の濃度の塩化ナトリウムなどの荷電張度調節剤、並びに
任意選択で、3.0~9.0の範囲のpKa、好適には4.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1つ又は複数の緩衝剤を含むか、又はそれらからなり、
その緩衝剤が、0~4mM、0~3mM、0~2mM、0~1mM、0~0.5mM、0~0.4mM、0~0.3mM、0~0.2mM若しくは0~0.1mMなど、0~5mMの合計濃度で、又は0.1~4mM、0.1~3mM、0.1~2mM、0.1~1mM、0.1~0.5mM、0.1~0.4mM、0.1~0.3mM若しくは0.1~0.2mMなど、0.1~5mMの合計濃度で、又は0.2~4mM、0.2~3mM、0.2~2mM、0.2~1mM、0.2~0.5mM、0.2~0.4mM若しくは0.2~0.3mMなど、0.2~5mMの合計濃度で、又は0.3~4mM、0.3~3mM、0.3~2mM、0.3~1mM、0.3~0.5mM若しくは0.3~0.4mMなど、0.3~5mMの合計濃度で、又は0.4~4mM、0.4~3mM、0.4~2mM、0.4~1mM若しくは0.4~0.5mMなど、0.4~5mMの合計濃度で、又は0.5~4mM、0.5~3mM、0.5~2mM若しくは0.5~1mMなど、0.5~5mMの合計濃度で存在する、水溶液組成物が提供される。
【0092】
本発明の1つの態様では、pH5.0~8.0、好適にはpH6.0~7.0の水溶液組成物であって、
35~60mg/ml、40~60mg/ml又は45~55mg/mlなど、30~60mg/mlの濃度のダプトマイシン若しくはその類似体、又はその塩、
カルシウム及びマグネシウムから選択される二価金属カチオン、
アミノ酸、好適には、グリシン、プロリン、メチオニン、アルギニン、リシン及びアスパラギン酸からなる群より選択されるアミノ酸、並びに
任意選択で、3.0~9.0の範囲のpKa、好適には4.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1つ又は複数の緩衝剤を含むか、又はそれらからなり、
その緩衝剤が、0~4mM、0~3mM、0~2mM、0~1mM、0~0.5mM、0~0.4mM、0~0.3mM、0~0.2mM若しくは0~0.1mMなど、0~5mMの合計濃度で、又は0.1~4mM、0.1~3mM、0.1~2mM、0.1~1mM、0.1~0.5mM、0.1~0.4mM、0.1~0.3mM若しくは0.1~0.2mMなど、0.1~5mMの合計濃度で、又は0.2~4mM、0.2~3mM、0.2~2mM、0.2~1mM、0.2~0.5mM、0.2~0.4mM若しくは0.2~0.3mMなど、0.2~5mMの合計濃度で、又は0.3~4mM、0.3~3mM、0.3~2mM、0.3~1mM、0.3~0.5mM若しくは0.3~0.4mMなど、0.3~5mMの合計濃度で、又は0.4~4mM、0.4~3mM、0.4~2mM、0.4~1mM若しくは0.4~0.5mMなど、0.4~5mMの合計濃度で、又は0.5~4mM、0.5~3mM、0.5~2mM若しくは0.5~1mMなど、0.5~5mMの合計濃度で存在する、水溶液組成物が提供される。
【0093】
今般特許請求されている発明は、ダプトマイシンを含む組成物が二価金属カチオンの添加によって安定化するという驚くべき観察結果に由来するものである。そのような溶液は、緩衝剤濃度を最小限に抑えることによってさらに安定化することができる。
【0094】
好適には、本発明の組成物は、2~8℃で、少なくとも6か月間、好ましくは少なくとも12か月間、最も好ましくは少なくとも18か月間など長期間保存した後、透明な溶液のままである。
【0095】
好適には、本発明の組成物は、25℃で、少なくとも2週間、好ましくは少なくとも4週間、最も好ましくは少なくとも8週間保存した後、透明な溶液のままである。
【0096】
好適には、本発明の組成物は、2~8℃又は上昇した温度のいずれかにおいて、より高い濃度の同じ緩衝剤又は複数の緩衝剤を含む同等の組成物よりも向上した保存安定性を有する。
【0097】
好適には、本発明の組成物は、2~8℃又は上昇した温度のいずれかにおいて、二価金属カチオンを含まない同等の組成物よりも向上した保存安定性を有する。
【0098】
1つの実施形態では、本発明の組成物は、2~8℃で少なくとも6か月間、好ましくは少なくとも12か月間、最も好ましくは少なくとも18か月間保存した後に、例えば、2%以下、3%以下、4%以下の総不純物など、5%以下の総不純物を含む(RP-HPLC(逆相高速液体クロマトグラフィー)又は同様の好適な技術で測定して、組成物中のダプトマイシンの総重量に基づく)。
【0099】
1つの実施形態では、本発明の組成物は、25℃で少なくとも2週間、好ましくは少なくとも4週間、最も好ましくは少なくとも8週間保存した後に、例えば、2%以下、3%以下、4%以下の総不純物など、5%以下の総不純物を含む(RP-HPLC又は同様の好適な技術で測定して、組成物中のダプトマイシンの総重量に基づく)。
【0100】
1つの実施形態では、本発明の組成物は、2~8℃で少なくとも6か月間、好ましくは少なくとも12か月間、最も好ましくは少なくとも18か月間保存した後、ダプトマイシンを含む市販の組成物よりも、低いレベルの不純物を含む(RP-HPLC又は同様の好適な技術で測定)。1つの実施形態では、市販の組成物はキュビシン(登録商標)である。
【0101】
1つの実施形態では、本発明の組成物は、25℃で少なくとも少なくとも2週間、好ましくは少なくとも4週間、最も好ましくは少なくとも8週間保存した後、ダプトマイシンを含む市販の組成物よりも、低いレベルの不純物を含む(RP-HPLC又は同様の好適な技術で測定)。1つの実施形態では、市販の組成物はキュビシン(登録商標)である。
【0102】
本発明のさらなる態様では、pHが5.0~8.0の範囲のダプトマイシンを含む水溶液組成物の安定性を向上させる方法が提供され、その方法は、その組成物に二価金属カチオンを加えること及び低緩衝剤濃度を維持することを含み、その緩衝剤は、3.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質であり、その緩衝剤は0~5mMの合計濃度で存在する。
【0103】
本発明のさらなる態様では、pHが5.0~8.0の範囲のダプトマイシンを含む水溶液組成物の安定性を向上させるための二価金属カチオンの使用が提供され、その組成物は任意選択で、3.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1つ又は複数の緩衝剤を含み、その緩衝剤は0~5mMの合計濃度で存在する。
【0104】
本発明のさらなる態様では、pHが5.0~8.0の範囲のダプトマイシンと二価金属カチオンの水溶液組成物の安定性を向上させるための最少量の緩衝剤の使用が提供され、組成物は、3.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1つ又は複数の緩衝剤を含み、その緩衝剤は0~5mMの合計濃度で存在する。
【0105】
1つの実施形態では、本発明の組成物は、治療で使用するための組成物である。1つの実施形態では、本発明の組成物は医薬組成物である。
【0106】
水溶液組成物に関する上記の実施形態はすべて、本発明の方法及び使用に等しく適用される。
【0107】
また、本明細書に記載の組成物の1回投与量又は複数回投与量を含有する、例えばプラスチック又はガラス製の容器も提供される。容器は、例えば、バイアル、プレフィルドシリンジ、プレフィルド注入バッグ、又は注入装置とともに使用するための交換可能なアイテムとして設計されたカートリッジでありうる。1つの実施形態では、本明細書に記載の組成物を含有するバイアル、好適には10mlバイアルで、好適には500mgのダプトマイシンを含むバイアルが提供される。
【0108】
本発明の組成物は、注射、特に静脈内点滴又は静脈内注射のために好適にパッケージされうる。
【0109】
安定な液体ダプトマイシン製剤の望ましい剤形は、バイアル又は予め充填された注射器のいずれかに製剤化された50mg/mlの製品である。その製品は、さらに希釈することなく、すぐにIV注射によって(例えば2分間かけて)投与できる状態にあることになる。あるいは、必要な濃度まで希釈した後、IV点滴(例えば30分間の点滴)によって投与されることになる。希釈溶液中のダプトマイシン濃度は、適応症及び点滴を受ける患者に応じて変えることができ、例えば0.5~10mg/ml、例えば1~5mg/mlである。特定の実施形態によれば、本発明の組成物は高張性であるが、それにもかかわらず希釈なしの直接注入を許容することができる。約500mM以上、特に1M以上の濃度の荷電張度調節剤(例えば塩化ナトリウム)を含有する本発明の組成物は、好適には投与前に希釈される。希釈剤の例としては、注射用水、等張生理食塩水及び等張デキストロース溶液が挙げられる。
【0110】
本発明の組成物は、低張性、等張性及び高張性組成物を含む広範囲の重量オスモル濃度値を有することができる。直接投与(例えば希釈なしのIV注射)を意図する場合、好適には、本発明の組成物は実質的に等張性である。1つの実施形態では、本発明の組成物は等張性である。好適には、本発明の組成物の重量オスモル濃度は、投与の経路に応じて、例えば注射時の疼痛を最小限にするように選択される。直接投与を意図する場合、本発明の好適な組成物は、約200mOsm/L~約500mOsm/Lの範囲の重量オスモル濃度(ダプトマイシン由来の重量オスモル濃度への寄与を除く)を有する。好適には、重量オスモル濃度(ダプトマイシン由来の重量オスモル濃度への寄与を除く)は、約250mOsm/L~約350mOsm/Lの範囲、より好適には約300mOsm/Lである。
【0111】
本発明の組成物は、細菌感染症、例えば複雑性皮膚・皮膚軟部組織感染症(cSSSI)、又は黄色ブドウ球菌血流感染症(菌血症)の治療に有用である。
【0112】
本発明の組成物は、本明細書に記載のように、良好な物理的及び化学的安定性を有することが予期される。
【0113】
本発明の付記項
1.pHが5.0~8.0の範囲の水溶液組成物であって、
ダプトマイシン若しくはその類似体、又はその塩、
二価金属カチオン、及び
任意選択で、3.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1つ又は複数の緩衝剤を含み、
緩衝剤が0~5mMの合計濃度で存在する、水溶液組成物。
2.ダプトマイシン、若しくはその類似体、又はその塩の濃度が、≧27mg/ml、≧30mg/ml、≧35mg/ml、≧40mg/ml、≧45mg/ml又は≧50mg/mlなど、>25mg/mlである、項1による水溶液組成物。
3.ダプトマイシン、若しくはその類似体、又はその塩の濃度が、30~60mg/ml、35~60mg/ml、40~60mg/ml又は45~55mg/mlなど、30~100mg/mlである、項1による水溶液組成物。
4.水を、少なくとも70%(重量/体積)、少なくとも75%(重量/体積)、少なくとも80%(重量/体積)、少なくとも85%(重量/体積)、又は少なくとも90%(重量/体積)など、少なくとも65%(重量/体積)の量で含む、項1~3のいずれか一項による水溶液組成物。
5.二価金属カチオンの濃度が、20~130mM、30~120mM、40~100mM、40~80mM又は50~70mMなど、10~150mMである、項1~4のいずれか一項による水溶液組成物。
6.二価金属カチオンが、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン及び亜鉛イオンから選択される、項1~5のいずれか一項による水溶液組成物。
7.二価金属カチオンがカルシウムイオンである、項6による水溶液組成物。
8.二価金属カチオンがマグネシウムイオンである、項6による水溶液組成物。
9.緩衝剤の合計濃度が、0~3mM、0~2mM、0~1mM、0~0.5mM、0~0.4mM、0~0.3mM、0~0.2mM又は0~0.1など、0~4mMである、項1~8のいずれか一項による水溶液組成物。
10.緩衝剤を実質的に含まない、項1~8のいずれか一項による水溶液組成物。
11.緩衝剤又は複数の緩衝剤が、マレイン酸塩、亜硫酸塩、アスパルテーム、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、アデニン、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、フェニル酢酸、没食子酸塩、シトシン、p-アミノ安息香酸、ソルビン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、アルギン酸塩、尿酸塩、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、重炭酸塩、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、N-(2-アセトアミド)-2-イミノ二酢酸、2-[(2-アミノ-2-オキソエチル)アミノ]エタンスルホン酸、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、リン酸塩、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、3-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリエタノールアミン、ピペラジン-N,N’-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N-トリス(ヒドロキシメチル)グリシン、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸、クエン酸塩及びそれらの塩、並びにそれらの組み合わせからなる群より選択される、項1~9のいずれか一項による水溶液組成物。
12.緩衝剤が、マレイン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、安息香酸塩、酢酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン及びクエン酸塩からなる群より選択され、特にリン酸塩である、項11による水溶液組成物。
13.pHが6.0~7.0の範囲にあり、4.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1つ又は複数の緩衝剤を任意選択で含む、項1~12のいずれか一項による水溶液組成物。
14.安定剤を安定化量でさらに含む、項1~13のいずれか一項による水溶液組成物。
15.界面活性剤をさらに含む、項1~14のいずれか一項による水溶液組成物。
16.界面活性剤が0.05~2mg/mlなど0.01~10mg/mlの濃度で存在する、項15による水溶液組成物。
17.界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、項15又は項16による水溶液組成物。
18.非イオン性界面活性剤が、アルキルグリコシド、ポリソルベート、ポリエチレングリコールのアルキルエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体、及びポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテルからなる群より選択される、項17による水溶液組成物。
19.非イオン性界面活性剤が、10~8,000μg/ml、10~5,000μg/ml、10~3,000μg/ml、10~2000μg/ml、50~1000μg/ml、100~500μg/ml又は約200μg/mlなど、10~10,000μg/mlの濃度で存在する、項17又は項18による水溶液組成物。
20.界面活性剤がカチオン界面活性剤である、項15又は項16による水溶液組成物。
21.カチオン界面活性剤がベンザルコニウム及びベンゼトニウム塩から選択される、項20による水溶液組成物。
22.界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸アンモニウム、カルボン酸塩(ステアリン酸若しくはパルミチン酸のナトリウム塩若しくはアンモニウム塩)、又はリン酸エーテルなどのアニオン界面活性剤である、項15又は項16による水溶液組成物。
23.界面活性剤が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン又は3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート(CHAPS)などの両性イオン界面活性剤である、項15又は項16による水溶液組成物。
24.抗酸化物質をさらに含む、項1~23のいずれか一項による水溶液組成物。
25.抗酸化物質が、メチオニン、グルタチオン、アスコルビン酸塩、ブチル化ヒドロキノン、乳酸塩、ニコチンアミド、ニコチン酸塩、トリプトファン、フェニルアラニン及びチロシンからなる群より選択され、特にメチオニンである、項24による水溶液組成物。
26.抗酸化物質が、5~50mg/mlなど1~100mg/mlの濃度で存在する、項24又は項25による水溶液組成物。
27.キレート剤をさらに含む、項1~26のいずれか一項による水溶液組成物。
28.キレート剤が、EDTA、EGTA及びクエン酸塩からなる群より選択される、項27による水溶液組成物。
29.キレート剤が、0.1~15mM、0.1~10mM、0.1~5mM又は0.1~1mMなど、0.1~20mMの濃度で存在する、項27又は項28による水溶液組成物。
30.ポリアニオンをさらに含む、項1~29のいずれか一項による水溶液組成物。
31.ポリアニオンが、カルボキシメチルセルロース及び硫酸デキストランからなる群より選択される、項30による水溶液組成物。
32.ポリアニオンが、1~5mg/mlなど1~10mg/mlの濃度で存在する、項31による水溶液組成物。
33.ポリカチオンをさらに含む、項1~32のいずれか一項による水溶液組成物。
34.ポリカチオンが、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミンからなる群より選択されるエチレンイミンのオリゴマーであり、特にTETAである、項33による水溶液組成物。
35.ポリカチオンが、1~5mg/mlなど1~10mg/mlの濃度で存在する、項33又は項34による水溶液組成物。
36.荷電両親媒性種をさらに含む、項1~35のいずれか一項による水溶液組成物。
37.荷電両親媒性種が、安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸、インドール-3-酢酸、フェニル酢酸、3-フェニルプロピオン酸、トランス-桂皮酸、シス-桂皮酸及びマンデル酸からなる群より選択され、特に安息香酸である、項36による水溶液組成物。
38.荷電両親媒性種が、5~20mMなど1~100mMの濃度で存在する、項36又は項37による水溶液組成物。
39.張度調節剤をさらに含む、項1~38のいずれか一項による水溶液組成物。
40.張度調節剤が非荷電張度調節剤であり、糖、糖アルコール、他のポリオール及びポリエチレングリコールからなる群より選択される、項39による水溶液組成物。
41.非荷電張度調節剤が、グリセロール、1,2-プロパンジオール、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、ラクトース、PEG300及びPEG400からなる群より選択される、項40による水溶液組成物。
42.非荷電張度調節剤の濃度が、約300mMなど、200~400mMなど、100~500mMなど、100~1000mMなど、50~5000mMである、項40又は項41による水溶液組成物。
43.張度調節剤が、荷電張度調節剤であり、好適には、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、及びアミノ酸、例えばグリシン又はアルギニンから選択され、特に塩化ナトリウムである、項39による水溶液組成物。
44.荷電張度調節剤の濃度が、約150mMなど、100~200mMなど、50~500mMなど、50~1000mMなど、50~2000mMである、項43による水溶液組成物。
45.荷電張度調節剤の濃度が、例えば500mM以上、例えば500~3000mM、例えば1000~2500mM、例えば1500~2500mM、例えば2000mM前後など、300mM以上である、項43による水溶液組成物。
46.アミノ酸をさらに含む、項1~45のいずれか一項による水溶液組成物。
47.アミノ酸が、グリシン、プロリン、メチオニン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群より選択され、特に、グリシン、プロリン、メチオニン、アルギニン、リシン及びアスパラギン酸からなる群より選択される、項46による水溶液組成物。
48.アミノ酸が、1~100mM、1~50mM、1~20mM、1~10mM、1~5mM、1~4mM、1~3mM又は1~2mMなど、1~200mMの濃度で存在する、項46又は項47による水溶液組成物。
49.2~8℃で少なくとも6か月間、好ましくは少なくとも12か月間、最も好ましくは少なくとも18か月間保存した後に、4%以下の総不純物、3%以下の総不純物、又は2%以下の総不純物など、5%以下の総不純物を含む(RP-HPLCで測定して、組成物中のダプトマイシンの総重量に基づく)、項1~48のいずれか一項による水溶液組成物。
50.25℃で少なくとも2週間、好ましくは少なくとも4週間、最も好ましくは少なくとも8週間保存した後に、4%以下の総不純物、3%以下の総不純物、又は2%以下の総不純物など、5%以下の総不純物を含む(RP-HPLCで測定して、組成物中のダプトマイシンの総重量に基づく)、項1~49のいずれか一項による水溶液組成物。
51.pHが5.0~8.0の範囲の水溶液組成物であって、
ダプトマイシン若しくはその類似体、又はその塩、
二価金属カチオン、及び
任意選択で、3.0~9.0の範囲のpKaをもち、そのpKaが組成物のpHの2pH単位以内にある少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1つ又は複数の緩衝剤を含み、
その緩衝剤が0~5mMの合計濃度で存在し、組成物中のダプトマイシン、若しくはその類似体、又はその塩の濃度が≧30mg/mlであり、水を少なくとも90%(重量/体積)の量で含む、水溶液組成物。
52.pHが6.0~7.0範囲にある、項51による水溶液組成物。
53.緩衝剤を実質的に含まない、項51又は項52による水溶液組成物。
54.緩衝剤の合計濃度が、0.5~4mM、0.5~3mM、0.5~2mM又は0.5~1mMなど、0.5~5mMである項51又は項52による水溶液組成物。
55.緩衝剤がリン酸塩である、項51、52及び54のいずれか一項による水溶液組成物。
56.塩化ナトリウムなどの荷電張度調節剤を、300mM以上、例えば500mM以上の濃度で含む、項51~55のいずれか一項による水溶液組成物。
57.治療で使用するための組成物である項1~56のいずれか一項による水溶液組成物。
58.医薬組成物である、項1~57のいずれか一項による水溶液組成物。
59.細菌感染症の治療で使用するための項1~58のいずれか一項による水溶液組成物。
60.ヒト患者などの患者における細菌感染症の治療方法であって、それを必要とする患者に、有効量の項1~58のいずれか一項による水溶液組成物を投与することを含む、方法。
61.細菌感染症の治療薬(medicament)を製造するための項1~58のいずれか一項による水溶液組成物の使用。
【0114】
実施例
一般的な方法
逆相クロマトグラフィー(RP-HPLC)法1
超高速逆相クロマトグラフィーは、5μm Zorba Eclipse XDB-C18 150×4.6mmカラムを用いたウォーターズ(Waters)ACQUITY Hクラス Bio UPLC(登録商標)システムを使用して行った。勾配溶離には、移動相A(MQW中の50mMリン酸ナトリウム)及び移動相B(MQW中の50%CAN、25mMリン酸ナトリウム)を使用した。注入量は10μl、流量は1mL/分で、214nmのUV検出を用いた。分析はすべて60℃で行った。
【0115】
逆相クロマトグラフィー(RP-HPLC)法2
超高速逆相クロマトグラフィーは、5μm Kinetix C8 250×4.6mmカラムを用いたサーモサイエンティフィック(Thermo-scientific)Ultimate 3000 UPLC(登録商標)システムを使用して行った。定組成溶離を用いた。移動相は、MQW中の50mMリン酸二水素アンモニウム、pH5.0(70%)及びアセトニトリル(30%)からなった。注入量は10μl、流量は1.5mL/分で、214nmのUV検出を用いた。分析はすべて25℃で行った。
【実施例1】
【0116】
実施例1 ダプトマイシン(50mg/ml)の安定性に対するカルシウムカチオン及び他の製剤条件の影響
表1及び2に示す組成物において、25℃(8週間)及び2~8℃で26週間インキュベートした後に、ダプトマイシン(50mg/ml)の安定性を、一般的方法に記載したRP-HPLC法を用いて評価した。
【0117】
表1:2~8℃で26週間インキュベートした後のダプトマイシン(50mg/ml)の安定性
RP-HPLC法1を用い、安定性は時間ゼロに対するメインピークの保持割合で表される。
【0118】
【0119】
*ADA=2-[(2-アミノ-2-オキソエチル)-(カルボキシメチル)アミノ]酢酸
【0120】
表2:25℃で8週間インキュベートした後のダプトマイシン(50mg/ml)の安定性
RP-HPLC法1を用い、安定性は時間ゼロに対するメインピークの保持割合で表される。
【0121】
【0122】
塩化カルシウムの存在により、pH6.0におけるダプトマイシンの安定性が向上することが示された。その向上の程度は、組成物中のカルシウムの濃度が高くなるほど大きかった。同じ濃度のカルシウムによって生じた向上の程度と比べてその程度は小さかったものの、塩化マグネシウムの存在もまた、濃度依存的にダプトマイシンの安定性を向上させるようであった。
【0123】
興味深いことに、50mMの緩衝剤(リン酸塩又はADA)の存在は、60mMのカルシウムの存在下の安定性を損なう結果になることも示された。これは、国際公開第2011/035108A1号で報告された結果とは対照的である。同様に、50mMのアルギニンの存在もダプトマイシンの安定性を損なうことにつながり、これは国際公開第2011/062676A1号で報告された結果とは対照的である。
【0124】
最後に、カルシウム存在下でのダプトマイシン(50mg/ml)の安定性に最適なpHは、約6.0~7.0であることが示された。
【実施例2】
【0125】
実施例2 塩化カルシウム存在下でのダプトマイシン(50mg/ml)の安定性に対するpH及びさらなる製剤パラメーターの影響
表3に示す組成物において、25℃(8週間)でインキュベートした後に、ダプトマイシン(50mg/ml)の安定性を、一般的方法に記載のしたRP-HPLC法2を用いて評価した。
【0126】
表3:25℃で8週間インキュベートした後のダプトマイシン(50mg/ml)の安定性
RP-HPLC法2を用い、安定性は時間ゼロに対するメインピークの保持割合で表される。
【0127】
【0128】
この実験では、塩化カルシウムの存在下でのダプトマイシンの安定性に最適なpHは7.0前後であることが示された。pH7.0での安定性は、pH6.0での安定性よりも良好で、pH5.0及び8.0での安定性よりもかなり良好であった。ポリオール(300mMのグリセロール又は300mM及び2000mMの1,2-プロパンジオール)の添加は、pH6.0の塩化カルシウムの存在下でのダプトマイシンの安定性に限られた影響しか与えなかった。また、150mM塩化ナトリウムの添加も、pH6.0の塩化カルシウム存在下でのダプトマイシンの安定性に限られた影響しか与えなかった。対照的に、高濃度(2000mM)の塩化ナトリウムを添加すると、塩化カルシウムの存在下でのダプトマイシンの安定性はさらに大きく向上した。
【実施例3】
【0129】
実施例3 塩化カルシウム存在下でのダプトマイシン(50mg/ml)の安定性に対するpH及びさらなる製剤パラメーターの影響
表4に示す組成物において、25℃(8週間)でインキュベートした後に、ダプトマイシン(50mg/ml)の安定性を、一般的方法に記載したRP-HPLC法2を用いて評価した。
【0130】
表4:25℃で8週間インキュベートした後のダプトマイシン(50mg/ml)の安定性
RP-HPLC法2を用い、安定性は時間ゼロに対するメインピークの保持割合で表される。
【0131】
【0132】
この実験では、塩化カルシウムの存在下でのダプトマイシンの安定性に最適なpHは6.0前後であることが示された。pH6.0での安定性は、pH6.5及び7.0での安定性よりも良好であった。結果は、塩化ナトリウムの濃度を150mMから2000mMに上げるにつれて、製剤の安定性が徐々に増加したことを示す。
【実施例4】
【0133】
実施例4-塩化カルシウム存在下でのダプトマイシン(50mg/ml)の安定性に対する緩衝剤の影響
試験A
表5に示す組成物において、25℃(8週間)でインキュベートした後に、ダプトマイシン(50mg/ml)の安定性を、一般的方法に記載したRP-HPLC法2を用いて評価した。
【0134】
表5:25℃で8週間インキュベートした後のダプトマイシン(50mg/ml)の安定性
RP-HPLC法2を用い、安定性は時間ゼロに対するメインピークの保持割合で表される。
【0135】
【0136】
この試験では、20mMの濃度の緩衝剤の存在は、化学的安定性にあまり大きな影響を与えないようであった。緩衝剤を含まない製剤は非常に安定していた。ADAを20mMの濃度で含む組成物は、25℃で8週間保存した後、目に見える粒子を含んでいたが、表5にした他の製剤は、対応する保存後に目に見える粒子を示さなかったことに留意されたい。したがって、ADAはこの組成物の物理的安定性を損なうようである。
【0137】
試験B
ダプトマイシンの製剤中のヒスチジンの効果を調べるために、より徹底的な試験を行った。ダプトマイシンの供給元は、試験Aと異なる。表6に示す組成物において、25℃(8週間)でインキュベートした後に、ダプトマイシン(50mg/ml)の安定性を、一般的方法に記載したRP-HPLC法2を用いて評価した。
【0138】
表6:25℃で8週間インキュベートした後のダプトマイシン(50mg/ml)の安定性
RP-HPLC法2を用い、安定性は時間ゼロに対するメインピークの保持割合で表される。
【0139】
【0140】
この試験は、10mM以上の濃度で使用した場合、ヒスチジンバッファーの存在が、製剤の安定性に悪影響を及ぼすことを示す。
【0141】
試験Aと試験Bの結果を合わせて、緩衝剤を含まない製剤は非常に安定である。一般にヒスチジン及びADAは製剤中では許容されず、その存在は安定性を低下させるようである。リン酸ナトリウムとPIPESは、最大で20mMの濃度まで許容されるようである。
【0142】
明細書及び以下のクレーム全体を通して、文脈上別段の解釈を必要としない限り、「含む(comprise)」という語、並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変化形は、明記された整数(integer)、ステップ、整数群又はステップ群の包含を意味するが、他の整数、ステップ、整数群又はステップ群を排除するものではないことは理解されよう。
【0143】
本発明の明細書全体にわたって言及されている特許、特許出願及び参考文献はすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0144】
本発明は、上記の好ましい及びより好ましい基、並びに好適な及びより好適な基及び基の実施形態のすべての組み合わせを包含する。