(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】組織修復に適用されるピルフェニドンを含有する半固体油性医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4412 20060101AFI20240117BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240117BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240117BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240117BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240117BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240117BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240117BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20240117BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240117BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240117BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240117BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A61K31/4412
A61K9/06
A61K47/10
A61K47/22
A61K47/14
A61K47/34
A61K47/44
A61K47/06
A61K47/12
A61P17/00
A61K8/49
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2021537019
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(86)【国際出願番号】 MX2019000093
(87)【国際公開番号】W WO2020046102
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】MX/A/2018/010528
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MX
(73)【特許権者】
【識別番号】521084806
【氏名又は名称】エクスカリバー ファーマシューティカルズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】アルメンダリズ ボルンダ,ユアン
(72)【発明者】
【氏名】マガニャ カストロ,ホセ アグスティン ロゲリオ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァズケス セルバンデス,ローラ
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-503026(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101972225(CN,A)
【文献】特表2002-506820(JP,A)
【文献】特表2015-513359(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102670600(CN,A)
【文献】特表平08-510251(JP,A)
【文献】特表2016-515525(JP,A)
【文献】特表2014-505733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A61Q
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2%~12%のピルフェニドン;
(b)20%~60%の溶媒-湿潤剤;
(c)5%~10%の1つ以上の乳化剤;
(d)2%~8%の1つ以上の増粘皮膚軟化剤と、
(e)0.5%~3%の1つ以上の皮膚軟化剤;
(f)0.1%~2%の第1の保存料;
(g)0.05%~0.2%のレオロジー剤又は粘性剤;
(h)0.05%~0.2%の中和剤;
(i)0.05%~0.2%の第2の保存料;及び
(j)0.0005%~0.003%の安定化剤;並びに
任意に0.008%~0.8%の防腐/保存料
を含むピルフェニドン医薬組成物であって、
(i)前記溶媒-湿潤剤がグリセリン、エチルアルコール、Transcutol-P、N-メチルピロリドン、2-ピロリドン、Cremophor
(登録商標) RH-40、及びプロピレングリコールからなる群から選択され、
(ii)前記1つ以上の乳化剤がセチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、Span
(登録商標) 80、Span
(登録商標) 60、モノステアリン酸グリセリル、ポリエチレングリコールステアレート、Cremophor
(登録商標) A-6、鯨蝋、Tween
(登録商標) 60、Cremophor
(登録商標) A-25からなる群から選択され、
(iii)前記1つ以上の増粘皮膚軟化剤がセトステアリルアルコール、マクロゴールセトステアリルエーテル、Ceteareth-25、セチルアルコール、鯨蝋、蜜蝋、モノステアリン酸グリセリル、固形パラフィン及びステアリルアルコールからなる群から選択され、
(iv)前記1つ以上の皮膚軟化剤がジメチコン、鉱油、アジピン酸イソプロピル、イソヘキサデカン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ミリスチルグルコシド、ベヘニルアルコール、C12~15安息香酸アルキル、及びイソステアリン酸イソプロピルからなる群から選択され、
(v)前記第1及び第2の保存料のそれぞれが独立にメチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、フェノキシエタノール、ジアゾリジニル尿素、及びブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルからなる群から選択され、
(vi)前記レオロジー剤又は粘性剤がプロピルパラベンナトリウム又はカルボマーであり、
(vii)前記中和剤はトリエタノールアミン又は水酸化ナトリウムであり、
(viii)前記安定化剤はクエン酸又はビタミンCであり、
前記医薬組成物がクリームの形態である、ピルフェニドン医薬組成物。
【請求項2】
(a)前記溶媒-湿潤基剤がプロピレングリコールであり、
(b)前記乳化剤がSpan
(登録商標) 60、Cremophor
(登録商標) A-6、Cremophor
(登録商標) A-25及びTween
(登録商標) 60であり、
(c)前記増粘皮膚軟化剤がセチルアルコール及びステアリルアルコールであり、
(d)前記皮膚軟化剤がジメチコンであり、
(e)前記第1の保存料がメチルパラベンナトリウムであり、
(f)前記第2の保存料がプロピルパラベンナトリウムであり、
(g)前記レオロジー剤又は粘性剤がカルボマーであり、
(h)前記中和剤がトリエタノールアミンであり、
(i)前記安定化剤が無水クエン酸である、
請求項1に記載のピルフェニドン医薬組成物。
【請求項3】
(a)2%~12%のピルフェニドン;
(b)50%のプロピレングリコール;
(c)6.382%のSpan
(登録商標) 60;
(d)2%のセチルアルコール;
(e)2%のステアリルアルコール;
(f)1%のCremophor
(登録商標) A-6;
(g)1%のCremophor
(登録商標) A-25;
(h)1%のジメチコン;
(i)0.617%のTween
(登録商標) 60;
(j)0.147%のメチルパラベンナトリウム;
(k)0.1%のカルボマー;
(l)0.1%のトリエタノールアミン;
(m)0.066%のプロピルパラベンナトリウム;
(n)0.001%のクエン酸;及び
(o)100%とするのに十分な量の水と
を含む、請求項1又は2に記載のピルフェニドン医薬組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のピルフェニドン医薬組成物を製造する方法であって、
(1)Span
(登録商標) 60、セチルアルコール、ステアリルアルコール、Cremophor
(登録商標) A-6、Cremophor
(登録商標) A-25及びジメチコンを撹拌しながら混ぜ合わせ、融解するまで75℃~80℃で加熱すること;
(2)前記組成物の水の総量の30%にカルボマーを撹拌しながら添加すること;
(3)攪拌しながらプロピレングリコールを75℃~80℃に加熱し、そして、撹拌しながらピルフェニドンを添加して溶解するまで75℃~80℃で加熱し、そして30分間攪拌及び加熱を保持すること;
(4)前記組成物の水の総量の30%に、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、クエン酸、及びTween
(登録商標)60(ポリソルベート60)を溶解するまで撹拌しながら添加すること;
(5)工程2及び工程4の内容物を工程3の溶液に撹拌しながら添加し、75℃~80℃で組み込まれるまで加熱すること;
(6)工程5の混合物を工程1の混合物に75℃~80℃で撹拌しながら添加し、そして混合物の温度を40℃~45℃に下げること;
(7)前記組成物の水の総量の残りの40%にトリエタノールアミンを溶解するまで撹拌しながら添加すること;及び
(8)工程7の溶液を工程6の混合物に60分間又は30℃~35℃の温度に達するまで撹拌しながら添加すること;
を含む、方法。
【請求項5】
(a)
2%~12%のピルフェニドン;
(b)
10%のプロピレングリコール;
(c)
18.234%のSpan
(登録商標) 60;
(d)
1%のCremophor
(登録商標) A-6;
(e)
1%のCremophor
(登録商標) A-25;
(f)
2.122%のTween
(登録商標) 60;
(g)
1%のセチルアルコール;
(h)
1%のステアリルアルコール;
(i)
0.016%の修飾ジアリルジスルフィドオキシド(M-DDO);及び
(j)
100%とするのに十分な量の固体白色ワセリン
を含むピルフェニドン医薬組成物であって、
前記医薬組成物が軟膏の形態である、ピルフェニドン医薬組成物。
【請求項6】
請求項
5に記載のピルフェニドン医薬組成物を製造する方法であって、
(1)Span
(登録商標) 60、セチルアルコール、ステアリルアルコール、Cremophor
(登録商標) A-6、Cremophor
(登録商標) A-25及び固体白色ワセリンを撹拌しながら融解するまで75℃~80℃で加熱して混ぜ合わせること;
(2)プロピレングリコールを75℃~80℃に加熱して撹拌し、そして撹拌しながらピルフェニドンを添加し、溶解するまで75℃~80℃で加熱し、そして撹拌しながらM-DDOを添加する間に攪拌および加熱を保持し、そして、Tween
(登録商標) 60を添加すること;及び
(3)工程2からの混合物を工程1の混合物に撹拌しながら添加し、そして温度を30℃~35℃に下げること
を含む、方法。
【請求項7】
(a)
2%~12%のピルフェニドン;
(b)
45%のプロピレングリコール;
(c)
18.234%のSpan
(登録商標) 60;
(d)
3%のステアリルアルコール;
(e)
17%の固体白色ワセリン;
(f)
1.764%のTween(登録商標) 60;
(g)
0.001%のクエン酸;
(h)
0.016%の修飾ジアリルジスルフィドオキシド(M-DDO);及び
(i)
100%とするのに十分な量の水
を含むピルフェニドン医薬組成物であって、
前記医薬組成物が膏薬の形態である、ピルフェニドン医薬組成物。
【請求項8】
請求項
7に記載のピルフェニドン医薬組成物を製造する方法であって、
(1)Span
(登録商標) 60、ステアリルアルコール及び固体白色ワセリンを撹拌しながら混ぜ合わせ、融解するまで75℃~80℃で加熱すること;
(2)プロピレングリコールを攪拌しながら75℃~80℃に加熱し、そして、撹拌しながらピルフェニドンを添加し、溶解するまで75℃~80℃で加熱し、そしてM-DDOを添加している間、攪拌及び加熱を保持し、そして攪拌しながらTween
(登録商標) 60を添加すること;
(3)水にクエン酸及びTween
(登録商標) 60(ポリソルベート60)を添加すること;
(4)工程3からの溶液を工程2からの溶液に撹拌しながら添加し、75℃~80℃で加熱し、そして、加熱および攪拌を保持すること;及び
(5)工程4の混合物を工程1の混合物に撹拌しながら添加すること
を含む、方法。
【請求項9】
前記医薬組成物が半固体医薬組成物である、請求項1~3、5
、及び
7のいずれか1項に記載のピルフェニドン医薬組成物。
【請求項10】
コラーゲン並びに他の細胞外基質タンパク質の喪失によって引き起こされる皮膚の欠陥を回復する薬剤の製造における請求項1~3、5、
7、及び
9のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項11】
前記細胞外基質タンパク質は、フィブロネクチン及び/又はエラスチンである、請求項
10に記載の使用。
【請求項12】
しわを治療するための薬剤の製造における請求項1~3、5、
7、及び
9のいずれか1項に記載のピルフェニドン医薬組成物の使用。
【請求項13】
皮膚の菲薄化を治療するための薬剤の製造における請求項1~3、5、
7、及び
9のいずれか1項に記載のピルフェニドン医薬組成物の使用。
【請求項14】
線維性病変を修復及び/又は予防するための薬剤の製造における請求項1~3、5、
7、及び
9のいずれか1項に記載のピルフェニドン医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来技術で既知の他の皮膚投与される医薬品形態と比べ、線維化病変の治療及び予防において利点をもたらす、有効成分としてピルフェニドンを含有する膏薬、ゲル、クリーム又は軟膏の形態の半固体配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、有効抗線維化成分として5-メチル-1-フェニル-2(1H)-ピリドンを含む半固体医薬組成物、並びに線維化病変組織の修復及び線維化病変の予防のための治療におけるその使用に関する。
【0003】
ピルフェニドンは、分子量185.23ダルトンの非ペプチド合成分子である。その化学元素はC
12H
11NOとして表され、その構造は既知である。ピルフェニドンの合成は実現されている。ピルフェニドンは、広域スペクトルの抗線維化薬として製造され、臨床的に評価されている。ピルフェニドンは、TNF-α発現の低下、PDGF発現の低下及びコラーゲン発現の低下による抗線維化特性を有する。5-メチル-1-フェニル-2(1H)-ピリドンは、以下の構造式を有する:
【化1】
【0004】
特許文献1、特許文献2及び特許文献3は、ヒト及び他の哺乳動物における上気道の炎症状態の治療及び皮膚の炎症状態の治療のために血清尿酸及びグルコース値を低下させる化合物5-メチル-1-フェニル-2-(1H)-ピリドン(「ピルフェニドン」)の使用を更に開示している。
【0005】
線維化病変の修復及び予防におけるピルフェニドンの使用は、特許文献4及び特許文献5に開示されている。
【0006】
したがって、本発明の主な目的は、線維化病変組織を修復及び予防する半固体組織を提供することである。
【0007】
本明細書では、「抗線維(anti-fibro)」、「抗線維化(anti-fibrotic)」、又は「線維化抑制(anti-fibrosis)」という用語は、病的コラーゲン重合、コラーゲン疾患、しわ等の修復及び/又は予防、並びに既存の病的線維化組織の正常化を指す。
【0008】
本発明の更なる目的は、有効抗線維化成分として5-メチル-1-フェニル-2(1H)-ピリドン(「ピルフェニドン」)を含むかかる半固体組成物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的、並びにそれらの特徴及び利点は、下記の記載で説明され、又は下記の記載から明らかになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第3,974,281号
【文献】米国特許第4,042,699号
【文献】米国特許第4,052,509号
【文献】欧州特許出願公開第0383591号
【文献】欧州特許出願公開第0702551号
【発明の概要】
【0011】
本発明は、しわ形成又は皮膚菲薄化を引き起こす細胞外基質の喪失又は分解を生じている組織を回復するための治療に有用であり、その透過性及び吸収特性のために従来技術で既知の他の皮膚投与される医薬品形態と比べて利点をもたらす、ピルフェニドンを含有する半固体医薬組成物を記載する。すなわち、ピルフェニドンを含有する半固体組成物の使用が、コラーゲン並びにフィブロネクチン及びエラスチン等の他の細胞外基質タンパク質の喪失によって引き起こされる皮膚の欠陥の回復に効果的であることを示す。
【0012】
本発明の別の課題は、有効成分としてのピルフェニドンと、吸収基剤(absorption base)と、可溶化剤と、保存料と、皮膚軟化剤と、精製水とを含む、皮膚投与用のクリーム、軟膏及び膏薬の形態の半固体組成物を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
5-メチル-1-フェニル-2(1H)-ピリドン、すなわちピルフェニドンは、コラーゲン、フィブロネクチン及びエラスチン等の細胞外基質タンパク質の分解を起こした皮膚の「補填(filling)」を誘導する本発明の半固体組成物の主成分である。
【0014】
これまでに種々の供給源及び治療が使用されてきたが、いずれも実際に効果的であることは示されていない。ピルフェニドンは、実験モデル及び臨床試験の両方で線維芽細胞及び線維芽細胞によって産生されるコラーゲンに対する効果を調べた以前の研究で実証されているように、種々の病理及び器官における抗線維化剤としての有効性が示されている。
【0015】
近年得られた追加情報により、ピルフェニドンがコラーゲンタンパク質及び非コラーゲンタンパク質の分解を刺激する遺伝子の点火(ignition)に関与する転写因子の発現を誘導すると結論付けることができる。しかしながら、ピルフェニドンは、ピルフェニドンが置かれる微小環境に応じて、過剰な細胞外基質の非存在下で(例えば、広範な組織喪失、並びに細胞外基質を産生及び合成する細胞の欠如、顔のしわの形成、並びに皮膚の菲薄化及び弾力性の喪失が見られる糖尿病性足部潰瘍及び静脈瘤性潰瘍の場合)、瘢痕の再構築のためにコラゲナーゼ(コラーゲンを分解する酵素)を誘導する能力に関して以前に報告されたものとは正反対の効果を誘導する。
【0016】
軟膏及び膏薬
膏薬は、ボディー及び稠度を与える適切な基剤に組み込まれた薬物(複数の場合もある)と添加剤とを含有する、軟らかい稠度の製剤として定義される。膏薬は、皮膚及び粘膜に付着させて適用される。基剤は脂溶性又は水溶性であり得るが、一般に無水であるか、又は最大でも20%の水を含む。膏薬は、洗い流せる又は水で落とせる基剤を含有する場合、軟膏としても知られる親水性膏薬とも称される。
【0017】
軟膏の定義は、1955年にUSPに導入された。その定義は広く、ワセリン基剤、すなわち油中水型(W/O)又は水中油型(O/W)エマルション基剤及びいわゆる水溶性基剤が含まれる。
【0018】
基剤は、特定用途のために適用を容易にするように設計されることから、最適な薬物分散性のため、また皮膚軟化特性又は他の薬物的特徴を与えるように選択又は設計される。
【0019】
基剤は、刺激性ではなく、容易に除去可能であり、染みにならず、安定し、pHに依存せず、様々な薬物に広く適合する必要がある。
【0020】
ゲル配合物における従来技術と比べた、クリーム又は膏薬の形態の配合物の使用による技術的利点は、配合物のタイプに依存する以下の特性:十分な抗酸化安定性、良好な生理的忍容性、十分なピルフェニドンの放出、良好な感度から実質的になる。皮膚への軟膏の適用によって追求される目的は、治療効果が創傷又は皮膚病変に対して有効性を示す以前の配合物とは異なり、薬物が皮膚に深く浸透することである。
【0021】
使用される軟膏の殆どで局所療法が試みられる。
【0022】
薬物は、皮膚に浸透し得る前に軟膏基剤から放出される必要がある。
【0023】
療法における軟膏基剤の適合性の基準の1つは、薬物の移動速度である。
【0024】
擦り込むか又はマッサージすることで薬物の浸透が2倍又は3倍になる。
【0025】
蝋膏:軟膏が少なくとも25%の割合で蝋を含有する場合。
【0026】
グリセリン製剤:少なくとも50%のグリセリンを含有する場合。
【0027】
膏薬:皮膚又は粘膜への外用を目的とし、ビヒクルとして脂肪及び/又は樹脂を用いる半固体製剤。
【0028】
ペースト:固体を高い割合で含有し、局所適用を目的とする半固体医薬品形態である。水性ゲル又は脂肪性賦形剤から調製することができ、この場合、通常は体温では軟化せず、結果として適用部位で保護層として働く高粘度の膏薬を含む。
【0029】
クリーム:1つ又は幾つかの有効成分を含有し、含水率が20%~80%の乳化した半固体医薬品形態。この用語は従来、油中水型又は水中油型エマルションとして比較的流動性を持って配合された稠度を有する半固体材料に適用されていた。しかしながら、近年では、この用語は、容易に洗い流すことができ、より美容的及び審美的に許容可能な脂肪酸又は長鎖アルコールの水中油型エマルション又は微結晶性水分散液からなる製品に限定されている。
【0030】
これらは、一方が親油性、もう一方が水性の2つの相から構成される医薬品形態である。
【0031】
これらは、高い含水率のために、軟らかい稠度及びニュートン流動又は擬塑性流動を有する。
【0032】
クリームと軟膏との違いは、軟膏は殆ど流動しないが、クリームは容易に流動し、また軟膏が常に単相であるという点である。
【0033】
非浸透又は表皮:或る特定の物理的又は化学的作用物質、滑沢剤、軟化剤、収斂剤、皮膚軟化剤又は角質溶解剤、腐食剤(caustic)、角質軟化剤(keratoplastic)、清涼剤(refreshing agents)からの保護を目的とする。
【0034】
真皮又は内皮:発赤剤、治癒剤(healing)、止痒剤。
【0035】
皮下(Subdermal or hypodermal):局所麻酔剤、ホルモン、ビタミン、抗リウマチ薬。
【0036】
半固体組成物
2%~12%のピルフェニドンを含有する半固体組成物は、20%~60%の溶媒-湿潤剤と、5%~10%の1つ又は組合せの乳化剤と、2%~8%の増粘皮膚軟化剤(consistency and emollience agent)と、0.5%~3%の1つ又は様々な皮膚軟化剤と、0.1%~2%の保存料と、0.05%~0.2%のレオロジー剤又は粘性剤と、0.05%~0.2%の中和剤と、0.05%~0.2%の保存料と、0.0005%~0.003%の安定化剤と、任意に0.008%~0.8%の防腐/保存料とを使用することにより作製される。
【0037】
ここで、溶媒-湿潤剤は、グリセリン、エチルアルコール、Transcutol-P、N-メチルピロリドン、2-ピロリドン、Cremophor RH-40、プロピレングリコールからなる群から選択され、乳化剤は、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、Span 80、Span 60、モノステアリン酸グリセリル、ポリエチレングリコールステアレート、Cremophor A-6、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、鯨蝋、Cremophor A-25からなる群から選択され、増粘皮膚軟化剤は、セトステアリルアルコール、マクロゴールセトステアリルエーテル、Ceteareth-25、セチルアルコール、鯨蝋、蜜蝋、モノステアリン酸グリセリル、固形パラフィン、セチルアルコール及びステアリルアルコールからなる群から選択され、皮膚軟化剤は、ジメチコン、鉱油、アジピン酸イソプロピル、イソヘキサデカン、カプリル/カプリル酸トリグリセリド、ミリスチルグルコシド、ベヘニルアルコール、C12~15安息香酸アルキル、イソステアリン酸イソプロピルからなる群から選択され、保存料は、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、フェノキシエタノール、ジアゾリジニル尿素、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルからなる群から選択され、粘性剤は、プロピルパラベンナトリウムからなる群から選択され、中和剤をトリエタノールアミン又は水酸化ナトリウムとすることができ、安定化剤をクエン酸又は合成ビタミンCの類から選択することができる。
【0038】
本発明のより良好な理解のために、ピルフェニドンを含有する半固体組成物を作製する方法、並びにその使用及び適用の実例を以下に示す。
【0039】
半固体組成物を以下の方法に従って調製した:
1.以下の工程を含む、クリームの形態の半固体ピルフェニドン医薬組成物を製造する方法:
A)油相
Span 60、セチルアルコール、ステアリルアルコール、Cremophor A-6、Cremophor A-25及びジメチコンを反応器に入れ、撹拌し、完全に融解するまで(75℃~80℃)に加熱する。
油相と特定する。
B)混合物A
精製水の総量の30%を適切な容量のステンレス鋼容器に入れ、カルボマーを完全に湿るまで絶えず撹拌しながら徐々に添加する。
混合物Aと特定する。
C)溶液「A」
プロピレングリコールをポットに入れ、(75℃~80℃)に加熱し、131rpm±10%で撹拌する。
絶えず撹拌しながらピルフェニドンを徐々に添加し、完全に溶解するまで(75℃~80℃)に加熱し続ける。30分間保持する。
(溶液「A」と特定する)
D)溶液「B」
使用する水の総量の30%を適切な容量のステンレス鋼容器に入れ、該容器にメチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、無水クエン酸、ポリソルベート60を完全に溶解するまで絶えず撹拌しながら徐々に添加する。
溶液「B」と特定する。
E)水相
「A」と特定された溶液に混合物「A」及び溶液「B」の内容物を絶えず撹拌しながら徐々に添加し、(75℃~80℃)に加熱し続ける。131rpm±10%で撹拌し続け、完全に組み込まれるまで加熱する。
水相と特定する。
F)相混合物
油相が入った反応器に水相を75℃~80℃の一定温度で絶えず撹拌しながら添加する。71rpm±10%で20分間絶えず撹拌し続け、混合物の温度を40℃~45℃に下げる。
G)溶液「C」
残りの水を別にステンレス鋼容器に入れ、該容器にトリエタノールアミンを完全に溶解するまで絶えず撹拌しながら徐々に添加する。
溶液「C」と特定する。
H)最終混合物
溶液Cを反応器に添加し、71rpm±10%で60分間又は30℃~35℃の温度に達するまで撹拌する。
【0040】
2.以下の工程を含む、軟膏の形態の半固体ピルフェニドン医薬組成物を製造する方法:
A)油相
Span 60、セチルアルコール、ステアリルアルコール、Cremophor A-6、Cremophor A-25及び固体白色ワセリンを反応器に入れ、撹拌し、完全に融解するまで(75℃~80℃)に加熱する。
油相と特定する。
B)溶液「A」
プロピレングリコールをポットに入れ、75℃~80℃に加熱し、131rpm±10%で撹拌し、撹拌する。絶えず撹拌しながらピルフェニドンを徐々に添加し、完全に溶解するまで(75℃~80℃)に加熱し続ける。撹拌下に維持し、20分間加熱し、2%M-DDOを徐々に添加し、10分間撹拌し、Tween 60を添加し、10分間撹拌する。
C)相混合物
油相の入った反応器に水相の全内容物を、71rpmで20分間絶えず撹拌しながら添加する。温度を30℃~35℃に下げる。
【0041】
3.以下の工程を含む、膏薬の形態の半固体ピルフェニドン医薬組成物を製造する方法:
A)油相
Span 60、ステアリルアルコール及び固体白色ワセリンを反応器に入れ、撹拌し、完全に融解するまで(75℃~80℃)に加熱する。
油相と特定する。
B)溶液「A」
プロピレングリコールをポットに入れ、75℃~80℃に加熱し、131rpm±10%で撹拌し、撹拌する。絶えず撹拌しながらピルフェニドンを徐々に添加し、完全に溶解するまで(75℃~80℃)に加熱し続ける。撹拌下に維持し、20分間加熱し、2%M-DDOを徐々に添加し、10分間撹拌し、Tween 60を添加し、10分間撹拌する。
C)溶液「B」
精製水を適切な容量のステンレス鋼容器に入れ、クエン酸及びポリソルベート60を徐々に添加する。
D)水相
絶えず撹拌しながら溶液「B」を「A」と特定された溶液に徐々に添加し、75℃~80℃に加熱し続け、30分間保持する。
E)水相
一定温度で20分間絶えず撹拌しながら油相の入った反応器に水相を添加する。
【実施例】
【0042】
クリームタイプの半固体組成物の例を表1に示す。
【0043】
【0044】
軟膏タイプの半固体組成物の例を表2に示す。
【0045】
【0046】
膏薬タイプの半固体組成物の例を表3に示す。
【0047】
【0048】
本発明を限られた数の実施形態に関して説明したが、或る実施形態の特定の特徴は、本発明の他の実施形態に帰するべきではない。どの実施形態も本発明の全ての態様を代表するものではない。幾つかの実施形態では、組成物又は方法は、本明細書に言及されない幾つかの化合物又は工程を含み得る。他の実施形態では、組成物又は方法は、本明細書に言及されない化合物又は工程を含まない又は実質的に含まない。記載の実施形態に基づく変形形態及び修正形態が存在する。