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特許7421578サセプタ及び窒化物半導体発光素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】サセプタ及び窒化物半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20240117BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240117BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20240117BHJP
   C30B 25/12 20060101ALI20240117BHJP
   C30B 29/38 20060101ALI20240117BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20240117BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/68 N
C23C16/458
C30B25/12
C30B29/38 D
H01L33/32
H01S5/343 610
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022011364
(22)【出願日】2022-01-28
(65)【公開番号】P2023110124
(43)【公開日】2023-08-09
【審査請求日】2022-01-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 一史
(72)【発明者】
【氏名】ペルノ シリル
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/071308(WO,A1)
【文献】特開2007-251078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/683
C23C 16/458
C30B 25/12
C30B 29/38
H01L 33/32
H01S 5/343
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハが配置されるとともに回転中心よりも外周側に形成されたポケットを有するサセプタであって、
前記ポケットの側面は、円周状に形成された円周側面部と、前記円周側面部よりも前記ポケットの外周側に広がるよう形成された拡大側面部とを有し、
前記ポケットの開口側から見た平面視において、
前記サセプタの回転中心と前記円周側面部の円周中心とを通る直線を第1直線、前記第1直線に直交するとともに前記円周中心を通る直線を第2直線としたとき、前記拡大側面部は、前記第2直線と重なるよう形成されており、
前記ポケットの周方向における、前記ポケットの前記拡大側面部が形成された領域の長さをL1とし、前記ポケットの周方向における、前記ポケットの前記円周側面部が形成された領域の長さをL3としたとき、値L1/L3は、0.300以上0.600以下を満たし、
前記ポケットの底面は、前記ウエハが載置される載置面であるとともに平面状に形成されている、
サセプタ。
【請求項2】
前記ポケットの周方向における前記拡大側面部の中心位置は、前記第2直線よりも前記サセプタの外周側に位置している、
請求項1に記載のサセプタ。
【請求項3】
前記ポケットの前記側面は、前記サセプタの回転方向における前記ポケットの両側に形成された2つの前記拡大側面部を有する、
請求項1又は2に記載のサセプタ。
【請求項4】
前記2つの拡大側面部は、前記第1直線を軸とした線対称に形成されている、
請求項3に記載のサセプタ。
【請求項5】
前記拡大側面部は、前記ポケットの開口側に向かうほど、前記ポケットの外周側に広がるよう形成されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のサセプタ。
【請求項6】
前記円周中心から前記円周側面部までの前記平面視における長さを前記円周側面部の半径R2とし、前記円周中心から前記拡大側面部までの前記平面視における最長直線距離を前記拡大側面部の半径R3としたとき、値R3/R2は、1.002以上1.030以下を満たす、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のサセプタ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のサセプタを用いて窒化物半導体発光素子を製造する窒化物半導体発光素子の製造方法であって、
前記ポケットに基板を配置する基板配置工程と、
前記サセプタを加熱するとともに回転させながら、前記基板上に窒化物半導体から形成される半導体層をエピタキシャル成長させる成長工程と、を備える
窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記ポケットの前記側面は、前記サセプタの回転方向における前記ポケットの両側に形成された2つの前記拡大側面部を有し、
前記ポケットの周方向における前記2つの拡大側面部の長さの合計を、前記基板の円周長で除した値は、0.200以上0.440以下を満たす、
請求項7に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記ポケットの開口側から見た平面視における前記円周中心から前記拡大側面部までの最長直線距離を、前記基板の半径で除した値は、1.004以上1.050以下を満たす、
請求項7又は8に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サセプタ及び窒化物半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、III族窒化物半導体を含有するウエハを有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によって製造する方法が開示されている。特許文献1に記載のウエハの製造方法においては、チャンバ内に配されたサセプタのポケットに基板を配置し、ウエハの各層の原料となる原料ガスをチャンバ内に導入して基板上にウエハの各層を順次エピタキシャル成長させることによってウエハを製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-193726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のウエハの製造方法においては、製造されるウエハにおける発光出力の面内分布を均一化する観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、製造されるウエハにおける発光出力の面内分布を均一化することができるサセプタ及び窒化物半導体発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の目的を達成するため、ウエハが配置されるとともに回転中心よりも外周側に形成されたポケットを有するサセプタであって、前記ポケットの側面は、円周状に形成された円周側面部と、前記円周側面部よりも前記ポケットの外周側に広がるよう形成された拡大側面部とを有し、前記ポケットの開口側から見た平面視において、前記サセプタの回転中心と前記円周側面部の円周中心とを通る直線を第1直線、前記第1直線に直交するとともに前記円周中心を通る直線を第2直線としたとき、前記拡大側面部は、前記第2直線と重なるよう形成されており、前記ポケットの周方向における、前記ポケットの前記拡大側面部が形成された領域の長さをL1とし、前記ポケットの周方向における、前記ポケットの前記円周側面部が形成された領域の長さをL3としたとき、値L1/L3は、0.300以上0.600以下を満たし、前記ポケットの底面は、前記ウエハが載置される載置面であるとともに平面状に形成されている、サセプタを提供する。
【0007】
また、本発明は、前記の目的を達成するため、前記サセプタを用いて窒化物半導体発光素子を製造する窒化物半導体発光素子の製造方法であって、前記ポケットに基板を配置する基板配置工程と、前記サセプタを加熱するとともに回転させながら、前記基板上に窒化物半導体から形成される半導体層をエピタキシャル成長させる成長工程と、を備える窒化物半導体発光素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製造されるウエハにおける発光出力の面内分布を均一化することができるサセプタ及び窒化物半導体発光素子の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態における、ウエハの製造装置の模式的な断面図である。
図2】第1の実施の形態における、サセプタ及び基板の平面図である。
図3図2において二点鎖線で囲った箇所を拡大した図である。
図4図3のIV-IV線矢視断面図である。
図5】第1の実施の形態における、窒化物半導体発光素子の構成を概略的に示す模式図である。
図6】第1の実施の形態における、サセプタ上に堆積物が形成された状態を示す図であって図4に対応する断面図である。
図7】比較例における、サセプタ及び基板の一部を拡大した平面図である。
図8図7のVIII-VIII線矢視断面図である。
図9】実験例における、実施例に係るウエハ及び比較例に係るウエハの面内分布の実験結果を示すグラフである。
図10】第2の実施の形態における、サセプタ及び基板の一部を拡大した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、図1乃至図6を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
(ウエハWの製造装置1)
図1は、本形態におけるウエハWの製造装置1の模式的な断面図である。図1においては、製造されたウエハWも併せて図示している。なお、図1において表れている各要素間の寸法比は、必ずしも実際のものと一致するものではない。
【0012】
製造装置1は、ウエハWの基板(図2の符号10参照)上に複数の半導体層を形成するための装置である。本形態において、製造装置1は、有機金属気相成長(MOCVD)法を用いてウエハWを製造するMOCVD装置である。なお、MOCVD法は、有機金属化学気相エピタキシ(MOVPE:Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法と呼ばれることもある。
【0013】
製造装置1は、リアクタ2、サセプタ3、回転軸4、及びヒータ5を備える。リアクタ2は、ウエハWを成長させる反応室20を区画しており、ウエハWの各半導体層の原料ガスGを反応室20に導入する導入口21、及び原料ガスGを反応室20から排出する排出口22を備える。本形態の製造装置1は、いわゆる縦型のMOCVD装置であり、サセプタ3に対してサセプタ3の厚み方向に原料ガスGが導入される。以後、サセプタ3の厚み方向(例えば図1における上下方向)を上下方向という。また、上下方向の一方側であって、サセプタ3に対して導入口21が位置する側(例えば図1の上側)を上側とし、その反対側(例えば図1の下側)を下側とする。本形態において、製造装置1にてウエハWを製造する際、上下方向は鉛直方向となる。リアクタ2の反応室20内にサセプタ3が配置されている。
【0014】
図2は、サセプタ3及び基板10の平面図である。サセプタ3は、例えば熱伝導性に優れた黒鉛等からなり、略円板状に形成されている。サセプタ3には、サセプタ3の上面30から下側に凹んだポケット31が形成されている。本形態において、サセプタ3には、複数のポケット31が形成されている。なお、図2においては、ポケット31が3つである例を示しているが、サセプタ3に形成されるポケット31の数は特に限定されない。ポケット31は、サセプタ3の回転中心C1よりもサセプタ3の外周側に配されている。以後、サセプタ3の外周側をサセプタ外周側といい、サセプタ3の内周側をサセプタ内周側という。
【0015】
図3は、図2において二点鎖線で囲った箇所を拡大した図である。図4は、図3のIV-IV線矢視断面図である。図3に示すごとく、ポケット31の側面311は、円周状に形成された2つの円周側面部311aと、2つの円周側面部311aの端部同士をつなぐとともに円周側面部311aよりもポケット31の外周側に広がるよう形成された2つの拡大側面部311bとを有する。
【0016】
2つの円周側面部311aのそれぞれは、円弧状に形成されているとともに、サセプタ3を上側から見た平面視(以後、単に平面視ということもある。)において、図示しない共通の仮想円に重なるよう形成されている。以後、ポケット31の外周側をポケット外周側といい、ポケット31の内周側をポケット内周側という。
【0017】
ここで、図3に示すごとく、基板10の半径を半径R1とし、円周側面部311aの円周中心C2から円周側面部311aまでの平面視における長さを円周側面部311aの半径R2とする。このとき、半径R2を半径R1で除した値R2/R1は、1.002以上1.018以下を満たすことが好ましい。この場合、基板10の外周部と円周側面部311aとの間の隙間が過度に広くなることを防止でき、ウエハWの原料ガスGが基板10の下面側に回り込むことに起因して基板10の下面に意図しない結晶成長が生じることを抑制することができる。
【0018】
なお、図2及び図3においては、基板10の結晶方位を示すためのオリエンテーションフラット101(いわゆるオリフラ)が基板10に形成された例を示している。このような場合において、基板10の半径R1とは、基板10の周縁部におけるオリエンテーションフラット101が形成されていない円弧状の部位を、基板10の周方向に延長してできる仮想円の半径を意味する。基板10にV字状のノッチ等が形成されている場合も同様である。また、円周中心C2は、平面視において2つの円周側面部311aが重なる前述の仮想円の中心である。
【0019】
本形態において、円周側面部311aは、上下方向に形成された面である。なお、円周側面部311aは、上下方向に対して傾斜等していてもよい。このような場合、前述の半径R2は、ポケット31の開口端位置(すなわち上端位置)における円周側面部311aと円周中心C2との間の平面視での長さを意味するものとする。
【0020】
2つの拡大側面部311bは、サセプタ3の回転方向におけるポケット31の両端部に形成されている。ここで、図3に示すごとく、平面視において、サセプタ3の回転中心C1と円周側面部311aの円周中心C2とを通る仮想直線を第1直線11、第1直線11に直交するとともに円周中心C2を通る仮想直線を第2直線12と定義する。このとき、平面視において、拡大側面部311bは、第2直線12と重なるよう形成されている。また、平面視において、ポケット31の周方向における拡大側面部311bの中央位置は、第2直線12の位置と略同位置となっている。本形態において、2つの拡大側面部311bは、互いに、第1直線11を軸として線対称となるよう形成されている。
【0021】
拡大側面部311bは、ポケット外周側に膨らむよう湾曲しているとともに、ポケット31の周方向に長尺に形成されている。ポケット31の周方向における2つの拡大側面部311bの長さの合計を合計長さL1とし、基板10の円周長を円周長L2とする。ここで、図3においては、ポケット31の周方向における各拡大側面部311bの長さを符号Lにて示しているため、合計長さL1の値は2×Lである。このとき、合計長さL1を円周長L2で除した値L1/L2は、0.200以上0.440以下を満たすことが好ましく、0.260以上0.380以下を満たすことがさらに好ましい。なお、図2及び図3に示すように、基板10にオリエンテーションフラット101が形成されている場合において、基板10の円周長L2とは、基板10の周縁部におけるオリエンテーションフラット101が形成されていない円弧状の部位を、基板10の周方向に延長してできる仮想円の全周長さを意味する。基板10にV字状のノッチ等が形成されている場合も同様である。
【0022】
ポケット31の周方向における2つの円周側面部311aの長さの合計を合計長さL3とする。このとき、ポケット31の周方向における2つの拡大側面部311bの合計長さL1を合計長さL3で除した値L1/L3は、0.300以上0.600以下を満たすことが好ましい。
【0023】
また、図3に示すごとく、平面視において、円周側面部311aの円周中心C2から拡大側面部311bまでの最長直線距離を拡大側面部311bの半径R3とする。この時、半径R3を基板10の半径R1で除した値R3/R1は、1.004以上1.050以下を満たすことが好ましく、1.004以上1.031以下を満たすことがさらに好ましい。また、半径R3を円周側面部311aの半径R2で除した値R3/R2は、1.002以上1.030以下を満たすことが好ましい。
【0024】
拡大側面部311bの上下方向の高さは、円周側面部311aの上下方向の高さと同等である。図4に示すごとく、本形態において、拡大側面部311bは、上側に向かうほどポケット外周側に広がるよう傾斜して形成されている。これにより、拡大側面部311bとポケット31の底面312との間になす角は、鈍角となる。なお、本形態において、拡大側面部311bは傾斜面であるが、これに限られず、例えば上側に向かうほどポケット外周側に広がるような曲面であってもよい。また、拡大側面部311bは、上下方向に平行な面であってもよい。
【0025】
ポケット31の底面312は、ポケット31の側面311の下端を閉塞するよう形成されている。底面312は上下方向に直交する平面状に形成される。底面312には、基板10が配置される。なお、底面312は、例えば、下側に膨らむよう湾曲した構成、上下方向の位置によって径が変わる段状の構成等、平面ではない構成とすることも可能である。図4に示すごとく、ポケット31における基板10の載置面(すなわち底面312)からポケット31の開口端までの上下方向の深さを深さD[mm]とし、基板10の厚みを厚みT[mm]としたとき、ポケット31の深さDは、例えばT-0.1≦D≦T+0.5の範囲とすることが可能である。
【0026】
図1に示すごとく、回転軸4は、サセプタ3に連結されている。回転軸4は、その中心軸を中心に自転することでサセプタ3を回転させる。回転軸4は、図示しない回転機構に接続されており、回転機構から回転力をサセプタ3に伝達する。なお、図1においては、回転軸4上に回転軸4及びサセプタ3の回転方向を矢印にて示しており、図2においては、サセプタ3の回転方向を円弧状の矢印にて表している。
【0027】
ヒータ5は、例えば通電によって発熱するものを採用することができる。ヒータ5は、サセプタ3の下側に位置しており、サセプタ3を通じて、ポケット31内に配された基板10を加熱する。
【0028】
(窒化物半導体発光素子6の概要)
次に、製造装置1を用いて製造される発光素子6の一例について説明する。図5は、ウエハWを利用して製造される窒化物半導体発光素子6(以下、「発光素子6」という。)の構成を概略的に示す模式図である。図5において、発光素子6の各半導体層間の寸法比は、必ずしも実際のものと一致するものではない。
【0029】
製造装置1を用いてウエハWが形成され、ウエハWが後述のダイシング工程にて分割されることで、1つのウエハWから多数の発光素子6が得られる。ウエハWの状態の基板を基板10といい、ウエハWが分割された後の発光素子6の状態の基板を基板61ということとする。
【0030】
発光素子6は、例えば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)又は半導体レーザ(LD:Laser Diode)を構成するものとすることができる。発光素子6は、例えば、中心波長が365nm以下の紫外光を発する深紫外LEDを構成するものとすることができる。具体的には、本形態の発光素子6は、例えば240nm以上365nm以下の深紫外光を発することができるよう構成されている。
【0031】
発光素子6は、基板61上に積層された複数の半導体層を備える。本形態において、基板61上に積層された複数の半導体層は、基板61側から順に、バッファ層62、n型クラッド層63、活性層64、電子ブロック層65、及びp型コンタクト層66である。また、発光素子6は、n型クラッド層63上に形成されたn側電極67と、p型コンタクト層66上に設けられたp側電極68とをさらに備える。
【0032】
発光素子6を構成する半導体としては、例えば、AlGaIn1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)にて表される2~4元系のIII族窒化物半導体を用いることができる。なお、深紫外LEDにおいては、インジウムを含まない窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系の半導体が用いられることが多い。窒化アルミニウムガリウム系の半導体は、窒化アルミニウムガリウム、窒化ガリウム(GaN)、及び窒化アルミニウム(AlN)が含まれるものとする。発光素子6を構成する半導体のIII族元素の一部は、ホウ素(B)、タリウム(Tl)等に置き換えてもよい。また、窒素の一部をリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等で置き換えてもよい。
【0033】
基板61は、サファイア(Al)単結晶を含むサファイア基板である。基板61の厚さは、405μm以上455μm以下とすることができる。基板61としては、サファイア基板の他に、例えば、窒化アルミニウム基板や、窒化アルミニウムガリウム基板を用いても良いが、基板61の下面において意図しない結晶成長が生じることを抑制する観点からは、サファイア基板を用いることが好ましい。
【0034】
バッファ層62は、窒化アルミニウムにより形成されている。なお、基板61が窒化アルミニウム基板又は窒化アルミニウムガリウム基板である場合、バッファ層62は必ずしも設けなくてもよい。
【0035】
n型クラッド層63は、n型不純物としてシリコン(Si)がドープされた窒化アルミニウムガリウムにより形成されている。n型クラッド層63は、一部が活性層64から上側に露出した露出面631となっている。なお、n型クラッド層63にドープされるn型不純物としては、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)又はテルル(Te)等を用いてもよい。これについては、n型クラッド層63以外の、n型不純物を含む半導体層においても同様である。本形態において、n型クラッド層63は単層であるが、複数層であってもよい。
【0036】
活性層64は、窒化アルミニウムガリウムにより形成された障壁層641と、障壁層641を構成する窒化アルミニウムガリウムよりもAl組成比が小さい窒化アルミニウムガリウムにより形成された井戸層642とを備える。なお、Al組成比は、AlNモル分率とも呼ばれる。本形態において、活性層64は、複数の井戸層642を備える多重量子井戸構造となるよう形成されている。本形態において、活性層64は、障壁層641と井戸層642とが交互に3つずつ積層されている。活性層64は、n型クラッド層63に障壁層641が隣接し、電子ブロック層65に井戸層642が隣接している。活性層64は、波長365nm以下の紫外光を出力するためにバンドギャップが3.4eV以上となるように構成されている。活性層64が発する紫外光の中心波長は、240nm以上365nm以下とすることができ、250nm以上300nm以下とすることが好ましく、260nm以上290nm以下とすることがさらに好ましい。
【0037】
なお、活性層64を多重量子井戸構造とする場合、活性層64は、井戸層642を複数有していれば種々の構成を採用することが可能である。また、活性層64は、井戸層642を1つ備える単一量子井戸構造となるよう構成されていてもよい。
【0038】
電子ブロック層65は、p型不純物としてマグネシウム(Mg)がドープされたp型の窒化アルミニウムガリウムにより形成されている。本形態において、電子ブロック層65は、下側に形成された第1層651と、上側に形成された第2層652とを有する。第1層651は、第2層652よりもAl組成比が高く、かつ第2層652よりも膜厚が小さい。電子ブロック層65は、活性層64からp型コンタクト層66への電子の流れを抑制することで、活性層64の発光効率を向上させる役割を担っている。なお、p型不純物としては、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、炭素(C)等を用いても良い。電子ブロック層65以外の、p型不純物を含む半導体層においても同様である。また、電子ブロック層65は、必ずしもp型の半導体層に限られず、アンドープの半導体層でも良い。さらに、電子ブロック層65は単層であってもよい。またさらに、発光素子6において電子ブロック層65を設けなくてもよい。
【0039】
p型コンタクト層66は、マグネシウム等の不純物が高濃度にドープされたp型の窒化ガリウムにより形成されている。なお、p型コンタクト層66は、窒化アルミニウムガリウムから形成してもよいが、この場合、p型コンタクト層66を構成する窒化アルミニウムガリウムのAl組成比は10%以下が好ましい。また、p型コンタクト層66の下側に、p型コンタクト層66よりもAl組成比が高く電子ブロック層65よりもAl組成比が低いp型クラッド層を少なくとも1層形成してもよい。
【0040】
n側電極67は、n型クラッド層63の露出面631上に形成されている。n側電極67は、例えばチタン(Ti)、アルミニウム(Al)、チタン、及び金(Au)が下側から順に積層された多層膜で形成することができるが、これに限られず、一般的な構成を採用することが可能である。
【0041】
p側電極68は、p型コンタクト層66の上に形成されている。p側電極68は、例えばニッケル(Ni)及び金が下側から順に積層された多層膜で形成することができるが、これに限られず、一般的な構成を採用することが可能である。
【0042】
(発光素子6の製造方法)
次に、前述の製造装置1を用いて発光素子6を製造する方法の一例について説明する。本形態の発光素子6の製造方法は、基板配置工程と成長工程と領域除去工程と電極形成工程とダイシング工程とが順に実行される。
【0043】
基板配置工程においては、製造装置1のサセプタ3のポケット31内に基板10が配置される。複数のポケット31のそれぞれに基板10が配置されてもよいし、一部のポケット31のみに基板10が配置されてもよい。
【0044】
成長工程においては、ヒータ5にてサセプタ3が熱されることで、基板10が、基板10上に形成される各半導体層の成長に適した温度にされる。一例として、バッファ層62の成長温度は1000℃以上1400℃以下であり、n型クラッド層63の成長温度は1020℃以上1180℃以下であり、活性層64及び電子ブロック層65の成長温度は1000℃以上1100℃以下であり、p型コンタクト層66の成長温度は900℃以上1100℃以下である。そして、回転軸4を介してサセプタ3が回転されるとともに、リアクタ2の導入口21から各半導体層の原料ガスGが導入される。以上のように、成長工程においては、基板10を高温にするとともにサセプタ3を回転させながら、基板10に向けて原料ガスGを供給することで、各半導体層が基板10上に順次エピタキシャル成長され、ウエハWが完成する。各半導体層をエピタキシャル成長させための原料ガスGとしては、アルミニウム源としてトリメチルアルミニウム(TMA)、ガリウム源としてトリメチルガリウム(TMG)、窒素源としてアンモニア(NH)、シリコン源としてテトラメチルシラン(TMSi)、マグネシウム源としてビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)を用いることができる。
【0045】
成長工程が終わると、ウエハWがサセプタ3から取り出される。ここで、新たなウエハWを製造する際は、続けて新たな基板10がサセプタ3のポケット31に配置され、成長工程が行われる。このとき、図6に示すごとく、サセプタ3の上面30には、前回の成長工程にて供給されたウエハWの原料ガスGによって堆積物13が形成され得る。すなわち、ウエハWの各半導体層を成長させる際には、リアクタ2内へ原料ガスGを導入することにより、基板10上に半導体層が積層されるのと同時に、サセプタ3の上面30にも半導体層が積層されて堆積物13が形成される。堆積物13は、ウエハWの各半導体層と同様に、窒化アルミニウムガリウム系の半導体からなる。本形態において、堆積物13は、窒化アルミニウムにより形成された層と窒化アルミニウムガリウムにより形成された層とを少なくとも含み、かつ、n型不純物であるシリコンやp型不純物であるマグネシウムが適所に含まれている。ウエハWの成長工程の回数が増えるほど、堆積物13の厚みが大きくなる。なお、ウエハWのp型コンタクト層66の形成時に堆積物13にp型の窒化ガリウムからなる層が形成されるが、p型の窒化ガリウムは比較的分解温度が低いため、次回の成長工程において堆積層のp型の窒化ガリウムからなる層は分解され得る。堆積物13の厚さが230μmを超えた場合、発光素子6の製造時において堆積物13が剥がれ落ちて製造中のウエハWを汚し、発光素子6の製造が困難となる。そのため、堆積物13が厚み230μmを超えたときに堆積物13を除去する又は堆積物13の厚みを薄くする等して、成長工程中において堆積物13の厚さが230μm以下となるよう調整することが好ましい。
【0046】
領域除去工程においては、p型コンタクト層66の上面の一部にマスクが形成され、マスクが形成されていない領域が、p型コンタクト層66の上面からn型クラッド層63の途中位置まで除去される。これにより、n型クラッド層63に露出面631が形成される。露出面631の形成後、p型コンタクト層66の上面からマスクが除去される。
【0047】
電極形成工程においては、n型クラッド層63の露出面631上にn側電極67が形成され、p型コンタクト層66上にp側電極68が形成される。n側電極67及びp側電極68は、例えば、電子ビーム蒸着法やスパッタリング法などの周知の方法により形成することができる。
【0048】
ダイシング工程では、ウエハWを複数の発光素子6に個片化する。これにより、1つのウエハWから、図1に示すような発光素子6が複数形成される。
以上のようにして、発光素子6が製造される。
【0049】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
本形態のサセプタ3のポケット31の側面311は、円周側面部311aと、円周側面部311aよりもポケット外周側に広がるよう形成された拡大側面部311bとを有する。そして、平面視において、拡大側面部311bは、第2直線12と重なるよう形成されている。つまり、拡大側面部311bは、第2直線12の長手方向におけるポケット31の端部に形成されている。これにより、本形態のサセプタ3を用いて製造されるウエハWの発光出力の面内分布を均一化することができる。このことについて、以下説明する。
【0050】
まず、図7及び図8を用いて、比較例のサセプタ9について検討する。図7は、比較例のサセプタ9及び基板10の一部を拡大した平面図である。図8は、図7のVIII-VIII線矢視断面図である。比較例に係るサセプタ9は、ポケット91の側面911が、前述のような拡大側面部311bを有さず、円状に形成されている。比較例において、第1の実施の形態について説明したものと共通する構成要素等については、第1の実施の形態において付した符号と同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図7に示すごとく、比較例においては、平面視において、サセプタ9の回転中心C1と円状の側面911の中心C3とを結ぶ直線を第1直線901、第1直線901に直交するとともに中心C3を通る直線を第2直線902とする。
【0051】
比較例のサセプタ9を用いて製造されるウエハは、第2直線902の長手方向における両端部の発光出力が低くなる傾向にある。このことは、後述の実験例にて定量的に示す。比較例のサセプタ9を用いてウエハを製造する際、第2直線902の長手方向における基板10の両端部分は、ポケット91の側面911から熱を受けやすく、高温になりやすい。さらに、サセプタ9を回転させてウエハが製造する際、第2直線902の長手方向における基板10の両端部分の近傍においては、基板10に原料ガスが届き難い。これらの要因により、第2直線902の長手方向におけるウエハの両端部分の発光出力が低くなるものと予想される。
【0052】
前述のような予想のもと、本形態のサセプタ3のように、ポケット31の側面311に拡大側面部311bを形成したところ、サセプタ3を用いて製造されるウエハWにおける発光出力の面内分布を均一化できることを確認している。これについては、後述の実験例にて定量的に示す。
【0053】
また、特に、図6に示す堆積物13の厚みが大きくなる程、サセプタ3の上面30からのサセプタ3の放熱性が低下し、基板10の周縁部が特に高温になりやすく、製造されるウエハWにおける発光出力の面内分布が不均一となりやすい。そのため、堆積物13が厚くなる程(例えば140μm以上)、拡大側面部311bを設けることの効果は大きい。
【0054】
また、ポケット31の側面311は、サセプタ3の回転方向におけるポケット31の両側に形成された2つの拡大側面部311bを有する。詳細は後述の実験例にて説明するが、図7及び図8に示す比較例のサセプタ9にて製造されるウエハは、第2直線902の長手方向における両端部の発光出力が低くなる。そのため、ポケット31の側面311が、サセプタ3の回転方向におけるポケット31の両側に拡大側面部311bを有することにより、サセプタ3を用いて製造されるウエハWにおける発光出力の面内分布をより均一化することができる。
【0055】
また、2つの拡大側面部311bは、第1直線11を軸とした線対称に形成されている。これにより、ポケット31に2つの拡大側面部311bを容易に形成することができる。また、サセプタ3の回転方向によらず、品質が一定のウエハWを製造することが可能となる。
【0056】
また、拡大側面部311bは、ポケット31の開口側に向かうほど、ポケット外周側に広がるよう形成されている。それゆえ、拡大側面部311bのポケット内周側の空間において原料ガスGが滞留することを抑制しやすい。拡大側面部311bのポケット内周側の空間において原料ガスGが滞留すると、ウエハWにおける拡大側面部311bに臨む部位とその他の部位とにおいて結晶成長の仕方が変わり、ウエハWにおける発光出力の面内分布が不均一になりやすい。一方、本形態においては、拡大側面部311bが、ポケット31の開口側に向かうほど、ポケット外周側に広がるよう形成されているため、拡大側面部311bのポケット内周側の空間に原料ガスGが滞留することを抑制できる結果、製造されるウエハWにおける発光出力の面内分布をより均一化することができる。
【0057】
また、ポケット31の周方向における2つの拡大側面部311bの合計長さL1を、基板10の円周長L2で除した値L1/L2は、0.200以上0.440以下を満たす。値L1/L2が0.200以上であることにより、ポケット31に配置された基板10における拡大側面部311bに臨む領域をポケット31の周方向に十分に広くすることができ、発光出力の面内分布がより均一化しやすくなる。また、値L1/L2が0.440以下であることにより、ポケット31内に原料ガスGが過剰に流入することを抑制でき、基板10の下面に意図しない結晶成長が生じることを抑制できる。基板10の下面に意図しない結晶成長が生じると、ウエハWの一部において所望の発光出力等が得られなくなるおそれがある。そのため、本形態のように、値L1/L2を0.440以下とすることにより、ウエハWにおける発光出力の面内分布をより均一化することができる。同様の観点から、値L1/L2は、0.260以上0.380以下を満たすことがさらに好ましい。
【0058】
また、拡大側面部311bの半径R3を基板10の半径R1で除した値R3/R1は、1.004以上1.050以下を満たす。値R3/R1が1.004以上であることにより、拡大側面部311bとウエハWとの距離を十分に離すことができる。そのため、サセプタ3を用いて製造されるウエハWのうちの拡大側面部311bの近傍の部位の発光出力を高めやすい。また、値R3/R1を1.050以下とすることにより、ポケット31内に原料ガスGが過剰に流入することを抑制できる。これにより、基板10の下面に意図しない結晶成長が生じることを抑制できる結果、製造されるウエハWにおける発光出力の面内分布がより均一化する。同様の観点から、値R3/R1は、1.004以上1.031以下を満たすことがさらに好ましい。
【0059】
以上のごとく、本形態によれば、製造されるウエハにおける発光出力の面内分布を均一化することができるサセプタ及び窒化物半導体発光素子の製造方法を提供することができる。
【0060】
[実験例]
本例は、図1乃至図4に示す第1の実施の形態のサセプタ3を用いて製造された実施例のウエハと、図7及び図8に示す比較例のサセプタ9を用いて製造された比較例のウエハとにおいて、発光出力の面内分布を比較した例である。実施例のウエハを製造するのに用いたサセプタと、比較例のウエハを製造するのに用いたサセプタとでは、拡大側面部の有無以外は、互いに同様の構成とした。
【0061】
本実験例においては、実施例のウエハと比較例のウエハとのそれぞれをウエハ状態で発光させ、第2直線(図3の符号12及び図7の符号902参照)の長手方向の位置毎に発光出力を測定した。なお、ウエハに形成される複数の発光素子は、第1直線(図3の符号11及び図7の符号901参照)の長手方向の位置によっても発光出力が異なり得るが、ウエハにおける第2直線の長手方向の各位置の発光出力は、その位置において第1直線の長手方向に並ぶよう存在する複数の発光素子の発光出力の平均値とした。
【0062】
本実験例においては、実施例に係るウエハと比較例に係るウエハとのそれぞれに100mAの駆動電流を供給し、各ウエハにおいて、第2直線の長手方向の各位置の発光出力を測定した。結果を図9に示す。図9に示すグラフの横軸は、第2直線の長手方向におけるウエハの位置を示しており、0mmの位置は、ウエハの中心位置であり、正符号の位置は、ウエハの中心位置からサセプタが回転する側に離れた位置を示しており、負符号の位置は、ウエハの中心位置よりもサセプタが回転する側と反対側に離れた位置を示している。なお、本実験例において、実施例及び比較例のウエハを構成する基板は、半径25.40mmのものを用いている。図9において、比較例の結果を一点鎖線にて示しており、実施例の結果を実線にて示している。
【0063】
図9に示すごとく、比較例においては、第2直線の長手方向におけるウエハの両端位置において発光出力が低下していることが分かる。一方、実施例においては、第2直線の長手方向の各位置において、ウエハの発光出力が安定していることが分かる。
以上から、ウエハのポケットに第1の実施の形態のように拡大側面部を設けることにより、ウエハにおける発光出力の面内分布を均一化できることが分かる。
【0064】
[第2の実施の形態]
図10は、本形態におけるサセプタ3及び基板10の一部を拡大した平面図である。
本形態は、第1の実施の形態に対して、ポケット31における2つの拡大側面部311bの形成位置を変更した形態である。本形態において、ポケット31の周方向における拡大側面部311bの中心位置Pは、第2直線12よりもサセプタ外周側に位置している。これにより、平面視において、拡大側面部311bは、ポケット31の周方向における中心位置Pよりもサセプタ内周側の部位が、第2直線12と重なるよう形成されている。
【0065】
その他は、第1の実施の形態と同様である。
なお、第2の実施の形態以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0066】
(第2の実施の形態の作用及び効果)
図7及び図8に示す比較例のサセプタ9を用いてウエハを製造した場合、製造されるウエハは、第2直線902の長手方向における両端部のうち、特にサセプタ外周側の部位の発光出力が低くなることを確認している。この要因としては、次のことが予想される。まず、成長工程中、サセプタ9の回転による遠心力によって基板10がポケット91の側面911のサセプタ外周側の部位に押し付けられ、基板10のサセプタ外周側の部位とポケット91の側面911との間隔が狭くなる。これにより、第2直線902の長手方向における基板10の両端部のうちのサセプタ外周側の部位がポケット91の側面911からの熱を特に受けやすくなり、また、基板10の周縁のうちのサセプタ外周側の部位に特に原料ガスが届き難くなる。その結果、第2直線902の長手方向におけるウエハの両端部のうちのサセプタ外周側の部位の発光出力が低くなるものと予想される。
【0067】
そこで、本形態のサセプタ3のように、ポケット31の周方向における拡大側面部311bの中心位置Pを第2直線12よりもサセプタ外周側に位置させることにより、製造されるウエハWにおける発光出力の面内分布をより均一化することが可能となる。
その他、第1の実施の形態と同様の作用効果を有する。
【0068】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0069】
[1]本発明の第1の実施態様は、ウエハ(W)が配置されるポケット(31)が形成されたサセプタ(3)であって、前記ポケット(31)の側面(311)は、円周状に形成された円周側面部(311a)と、前記円周側面部(311a)よりも前記ポケット(31)の外周側に広がるよう形成された拡大側面部(311b)とを有し、前記ポケット(31)の開口側から見た平面視において、前記サセプタ(3)の回転中心(C1)と前記円周側面部(311a)の円周中心(C2)とを通る直線を第1直線(11)、前記第1直線(11)に直交するとともに前記円周中心(C2)を通る直線を第2直線(12)としたとき、前記拡大側面部(311b)は、前記第2直線(12)と重なるよう形成されている、サセプタ(3)である。
これにより、サセプタを用いて製造されるウエハにおける発光出力の面内分布を均一化することができる。
【0070】
[2]本発明の第2の実施態様は、第1の実施態様において、前記ポケット(31)の周方向における前記拡大側面部(311b)の中心位置(P)が、前記第2直線(12)よりも前記サセプタ(3)の外周側に位置していることである。
これにより、サセプタを用いて製造されるウエハにおける発光出力の面内分布をより均一化することができる。
【0071】
[3]本発明の第3の実施態様は、第1又は第2の実施態様において、前記ポケット(31)の前記側面(311)が、前記サセプタ(3)の回転方向における前記ポケット(31)の両側に形成された2つの前記拡大側面部(311b)を有することである。
これにより、サセプタを用いて製造されるウエハにおける発光出力の面内分布をより均一化することができる。
【0072】
[4]本発明の第4の実施態様は、第3の実施態様において、前記2つの拡大側面部(311b)が、前記第1直線(11)を軸とした線対称に形成されていることである。
これにより、サセプタの回転方向によらず、品質が一定のウエハを製造することが可能となる。
【0073】
[5]本発明の第5の実施態様は、第1乃至第4のいずれか1つの実施態様において、前記拡大側面部(311b)が、前記ポケット(31)の開口側に向かうほど、前記ポケット(31)の外周側に広がるよう形成されていることである。
これにより、サセプタを用いて製造されるウエハにおける発光出力の面内分布をより均一化することができる。
【0074】
[6]本発明の第6の実施態様は、第1乃至第5のいずれか1つのサセプタ(3)を用いて窒化物半導体発光素子(6)を製造する窒化物半導体発光素子(6)の製造方法であって、前記ポケット(31)に基板(10)を配置する基板(10)配置工程と、前記サセプタ(3)を加熱するとともに回転させながら、前記基板(10)上に窒化物半導体から形成される半導体層をエピタキシャル成長させる成長工程と、を備える窒化物半導体発光素子(6)の製造方法である。
これにより、サセプタを用いて製造されるウエハにおける発光出力の面内分布を均一化することができる。
【0075】
[7]本発明の第7の実施態様は、第6の実施態様において、前記ポケット(31)の前記側面(311)が、前記サセプタ(3)の回転方向における前記ポケット(31)の両側に形成された2つの前記拡大側面部(311b)を有し、前記ポケット(31)の周方向における前記2つの拡大側面部(311b)の長さの合計を、前記基板(10)の円周長で除した値が、0.200以上0.440以下を満たすことである。
これにより、サセプタを用いて製造されるウエハにおける発光出力の面内分布をより均一化することができる。
【0076】
[8]本発明の第8の実施態様は、第6又は第7の実施態様において、前記ポケット(31)の開口側から見た平面視における前記円周中心(C2)から前記拡大側面部(311b)までの最長直線距離(R3)を、前記基板(10)の半径(R1)で除した値が、1.004以上1.050以下を満たすことである。
これにより、サセプタを用いて製造されるウエハにおける発光出力の面内分布をより均一化することができる。
【0077】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前述した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0078】
例えば、前記各実施の形態においては、ポケットの側面が2つの拡大側面部を有する例を示したが、これに限られず、拡大側面部は1つであってもよい。また、前記各実施の形態において、ポケットの側面は、平面視において第2直線と重ならない位置に、円周側面部よりもポケット外周側に広がった面を有していてもよい。また、前記各実施の形態において、拡大側面部は、湾曲面状に形成されている例を示したが、これに限られず、例えば4角形のうちの3辺に沿うような屈曲した形状であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
10…基板
11…第1直線
12…第2直線
3…サセプタ
31…ポケット
311…側面
311a…円周側面部
311b…拡大側面部
6…窒化物半導体発光素子
C1…回転中心
C2…円周中心
P…拡大側面部の中心位置
R1…基板の半径
R3…最長直線距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10