(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】復号装置および符号化装置
(51)【国際特許分類】
H04N 19/513 20140101AFI20240117BHJP
H04N 19/105 20140101ALI20240117BHJP
H04N 19/139 20140101ALI20240117BHJP
H04N 19/147 20140101ALI20240117BHJP
H04N 19/176 20140101ALI20240117BHJP
【FI】
H04N19/513
H04N19/105
H04N19/139
H04N19/147
H04N19/176
(21)【出願番号】P 2022048049
(22)【出願日】2022-03-24
(62)【分割の表示】P 2018541987の分割
【原出願日】2017-08-21
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2016188790
(32)【優先日】2016-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴也
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 知宏
【審査官】鉢呂 健
(56)【参考文献】
【文献】CHEN, Jianle et al.,Algorithm Description of Joint Exploration Test Model 3,Joint Video Exploration Team (JVET) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 3rd Meeting: Geneva, CH, 26 May - 1 June 2016, [JVET-C1001_v3],JVET-C1001 (version 3),ITU-T,2016年07月06日,<URL:http://phenix.it-sudparis.eu/jvet/doc_end_user/documents/3_Geneva/wg11/JVET-C1001-v3.zip>: JVET-C1001_V3.docx: pp.18-19
【文献】CHEN, Jianle et al.,Further improvements to HMKTA-1.0,ITU - Telecommunications Standardization Sector STUDY GROUP 16 Question 6 Video Coding Experts Group (VCEG) 52nd Meeting: 19-26 June 2015, Warsaw, Poland, [VCEG-AZ07_v2],VCEG-AZ07 (version 3),ITU-T,2015年06月25日,<URL:http://wftp3.itu.int/av-arch/video-site/1506_War/VCEG-AZ07_v3.zip>: VCEG-AZ07_v2.docx: pp.2-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00-19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号化データを復号する復号装置において、
対象ピクチャに対応する、参照ピクチャの候補を表す第1の参照ピクチャリストと、参照ピクチャの候補を表す第2の参照ピクチャリストとを記憶するメモリと、
前記第1の参照ピクチャリスト内の第1の参照ピクチャと、前記第2の参照ピクチャリスト内の第2の参照ピクチャとを用いて、前記対象ピクチャにおけるサブブロックの動きベクトルを導出する導出部と、を備え、
前記導出部は、
前記対象ピクチャのピクチャ順序番号と前記第1の参照ピクチャのピクチャ順序番号との差分である第1のピクチャ間距離が、前記対象ピクチャのピクチャ順序番号と前記第2の参照ピクチャのピクチャ順序番号との差分である第2のピクチャ間距離とが等しいか否かに基づいて、フラグの値を設定し、
該フラグの値が、真である場合、第1の動きベクトルを用いて特定される前記第1の参照ピクチャ内の第1の領域と、第2の動きベクトルを用いて特定される前記第2の参照ピクチャ内の第2の領域とのマッチングコストが最小となる動きベクトルから、前記サブブロックの動きベクトルを導出し、
該フラグの値が、偽である場合、
前記サブブロックの動きベクトルを導出する導出方法として、該フラグの値が真である場合の導出方法では
、前記サブブロックの動きベクトルを導出しないことを特徴とする復号装置。
【請求項2】
ピクチャを符号化する符号化装置において、
対象ピクチャに対応する、参照ピクチャの候補を表す第1の参照ピクチャリストと、参照ピクチャの候補を表す第2の参照ピクチャリストとを記憶するメモリと、
前記第1の参照ピクチャリスト内の第1の参照ピクチャと、前記第2の参照ピクチャリスト内の第2の参照ピクチャとを用いて、前記対象ピクチャにおけるサブブロックの動きベクトルを導出する導出部と、を備え、
前記導出部は、
前記対象ピクチャのピクチャ順序番号と前記第1の参照ピクチャのピクチャ順序番号との差分である第1のピクチャ間距離が、前記対象ピクチャのピクチャ順序番号と前記第2の参照ピクチャのピクチャ順序番号との差分である第2のピクチャ間距離とが等しいか否かに基づいて、フラグの値を設定し、
該フラグの値が、真である場合、第1の動きベクトルを用いて特定される前記第1の参照ピクチャ内の第1の領域と、第2の動きベクトルを用いて特定される前記第2の参照ピクチャ内の第2の領域とのマッチングコストが最小となる動きベクトルから、前記サブブロックの動きベクトルを導出し、
該フラグの値が、偽である場合、
前記サブブロックの動きベクトルを導出する導出方法として、該フラグの値が真である場合の導出方法では
、前記サブブロックの動きベクトルを導出しないことを特徴とする符号化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、復号装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動画像を効率的に伝送または記録するために、動画像を符号化することによって符号化データを生成する動画像符号化装置、および、当該符号化データを復号することによって復号画像を生成する動画像復号装置が用いられている。
【0003】
具体的な動画像符号化方式としては、例えば、H.264/AVCやHEVC(High-Efficiency Video Coding)にて提案されている方式などが挙げられる。
【0004】
このような動画像符号化方式においては、動画像を構成する画像(ピクチャ)は、画像を分割することにより得られるスライス、スライスを分割することにより得られる符号化単位(符号化ユニット(Coding Unit:CU)と呼ばれることもある)、及び、符号化単位を分割することより得られるブロックである予測ユニット(PU)、変換ユニット(TU)からなる階層構造により管理され、CUごとに符号化/復号される。
【0005】
また、このような動画像符号化方式においては、通常、入力画像を符号化/復号することによって得られる局所復号画像に基づいて予測画像が生成され、当該予測画像を入力画像(原画像)から減算して得られる予測残差(「差分画像」または「残差画像」と呼ぶこともある)が符号化される。予測画像の生成方法としては、画面間予測(インター予測)、および、画面内予測(イントラ予測)が挙げられる。
【0006】
また、近年の動画像符号化及び復号の技術として非特許文献1が挙げられる。非特許文献1では、符号化装置と復号装置において、マッチングにより動きベクトルを探索することで、動きベクトルの伝送に関する符号量を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Video/JVET, "Algorithm Description of Joint Exploration TestModel 1 (JEM 1)", INTERNATIONAL ORGANIZATION FOR STANDARDIZATION ORGANISATION INTERNATIONALE DE NORMALISATION ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 CODING OF MOVING PICTURES AND AUDIO, ISO/IEC JTC1/SC29/WG11/N15790, October 2015, Geneva, CH.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年の動画像符号化及び復号技術においては、符号化データの符号量が増加するという第1の課題が生じていた。また、非特許文献1に開示されているマッチング技術においては、予測画像生成に必要な動きベクトル探索のための処理量が増加するという第2の課題が生じていた。
【0009】
本発明は、上記の第1及び第2の課題の少なくとも何れかの解決を図ることのできる復号装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る復号装置は、符号化データを復号する復号装置において、対象ピクチャに対応する、参照ピクチャの候補を表す第1の参照ピクチャリストと、参照ピクチャの候補を表す第2の参照ピクチャリストとを記憶するメモリと、前記第1の参照ピクチャリスト内の第1の参照ピクチャと、前記第2の参照ピクチャリスト内の第2の参照ピクチャとを用いて、前記対象ピクチャにおけるサブブロックの動きベクトルを導出する導出部と、を備え、前記導出部は、第1の動きベクトルを用いて特定される前記第1の参照ピクチャ内の第1の領域と、第2の動きベクトルを用いて特定される前記第2の参照ピクチャ内の第2の領域とのマッチングコストが最小となる、前記第1の動きベクトルと前記第2の動きベクトルとを、前記サブブロックの動きベクトルとして導出する。
【発明の効果】
【0011】
以上の構成によれば、上記の第1および第2の課題の少なくとも何れかの解決を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る符号化ストリームのデータの階層構造を示す図である。
【
図2】PU分割モードのパターンを示す図である。(a)~(h)は、それぞれ、PU分割モードが、2Nx2N、2NxN、2NxnU、2NxnD、Nx2N、nLx2N、nRx2N、および、NxNの場合のパーティション形状について示している。
【
図3】参照ピクチャおよび参照ピクチャリストの一例を示す概念図である。
【
図4】本実施形態に係る画像符号化装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態に係る画像復号装置の構成を示す概略図である。
【
図6】本実施形態に係る画像符号化装置のインター予測画像生成部の構成を示す概略図である。
【
図7】本実施形態に係るマージ予測パラメータ導出部の構成を示す概略図である。
【
図8】本実施形態に係るAMVP予測パラメータ導出部の構成を示す概略図である。
【
図9】本実施形態に係る画像復号装置の動きベクトル復号処理の動作を示すフローチャートである。
【
図10】本実施形態に係る画像符号化装置のインター予測パラメータ符号化部の構成を示す概略図である。
【
図11】本実施形態に係るインター予測画像生成部の構成を示す概略図である。
【
図12】本実施形態に係るインター予測パラメータ復号部の構成を示す概略図である。
【
図13】動きベクトルを予測する対象であるPU(横幅nPbW)を構成する各サブブロックの動きベクトルspMvLX[xi][yi]を導出する例を示す図である。
【
図14】(a)は、バイラテラルマッチング(Bilateral matching)について説明するための図である。(b)は、テンプレートマッチング(Template matching)について説明するための図である。
【
図15】動き予測モード決定フローの概要を示すフローチャート図である。
【
図16】動き予測モード決定フローの流れを示すシーケンス図である。
【
図17】パターンマッチベクトル導出処理の流れを示すフローチャート図である。
【
図18】(a)~(d)は、パターンマッチベクトル導出処理を説明するための図である。
【
図19】(a)、(b)は、動き探索パターンを説明するための図である。
【
図20】サブブロックにおいてテンプレートマッチングを行う場合の弊害を示す図である。
【
図21】サブブロックレベルではバイラテラルマッチングに固定する場合のパターンマッチベクトル導出処理の流れを示すフローチャート図である。
【
図22】バイラテラルマッチングの性能推定を行う場合のパターンマッチベクトル導出処理の流れを示すフローチャート図である。
【
図23】対象ブロックの上端、または左端に接していないサブブロックについてバイラテラルマッチングを用いる方法を説明するための図である。
【
図24】サブブロックに位置に応じて、パターンマッチングかバイラテラルマッチングかを決定する処理の流れを示すフローチャート図である。
【
図25】サブブロックの位置に応じて、周辺サブブロックの動きベクトルを用いる処理の流れを示すフローチャート図である。
【
図26】(a)~(e)は、周辺ブロックの動きベクトルを用いて対象サブロックの動きベクトルを導出する方法の例を示す図である。
【
図27】予測ベクトル候補導出処理の流れを示すフローチャート図である。
【
図28】ベクトル候補の導出処理を説明するための図である。
【
図29】パターンマッチベクトル候補導出処理の流れを示すフローチャート図である。
【
図30】予測ベクトル候補リストの作成処理を行うための疑似コードの例を示す図である。
【
図31】(a)、(b)は、パターンマッチベクトルを導出するときに用いるテンプレートとなるブロックを示す図である。
【
図32】予測ベクトル候補導出処理の流れを示すフローチャート図である。
【
図33】予測ベクトル候補リストの作成処理を行うための疑似コードの例を示す図である。
【
図34】予測ベクトル候補導出処理の流れを示すフローチャート図である。
【
図35】予測ベクトル候補リストの作成処理を行うための疑似コードの例を示す図である。
【
図36】予測ベクトル候補導出処理の流れを示すフローチャート図である。
【
図37】予測ベクトル候補リストの作成処理を行うための疑似コードの例を示す図である。
【
図38】本実施形態に係る画像符号化装置を搭載した送信装置、および、画像復号装置を搭載した受信装置の構成について示した図である。(a)は、画像符号化装置を搭載した送信装置を示しており、(b)は、画像復号装置を搭載した受信装置を示している。
【
図39】本実施形態に係る画像符号化装置を搭載した記録装置、および、画像復号装置を搭載した再生装置の構成について示した図である。(a)は、画像符号化装置を搭載した記録装置を示しており、(b)は、画像復号装置を搭載した再生装置を示している。
【
図40】本実施形態に係る画像伝送システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図40は、本実施形態に係る画像伝送システム1の構成を示す概略図である。
【0015】
画像伝送システム1は、符号化対象画像を符号化した符号を伝送し、伝送された符号を復号し画像を表示するシステムである。画像伝送システム1は、画像符号化装置(動画像符号化装置、予測画像生成装置)11、ネットワーク21、画像復号装置(動画像復号装置、予測画像生成装置)31及び画像表示装置41を含んで構成される。
【0016】
画像符号化装置11には、単一レイヤもしくは複数レイヤの画像を示す画像Tが入力される。レイヤとは、ある時間を構成するピクチャが1つ以上ある場合に、複数のピクチャを区別するために用いられる概念である。たとえば、同一ピクチャを、画質や解像度の異なる複数のレイヤで符号化するとスケーラブル符号化になり、異なる視点のピクチャを複数のレイヤで符号化するとビュースケーラブル符号化となる。複数のレイヤのピクチャ間で予測(インターレイヤ予測、インタービュー予測)を行う場合には、符号化効率が大きく向上する。また予測を行わない場合(サイマルキャスト)の場合にも、符号化データをまとめることができる。
【0017】
ネットワーク21は、画像符号化装置11が生成した符号化ストリームTeを画像復号装置31に伝送する。ネットワーク21は、インターネット(internet)、広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)、小規模ネットワーク(LAN:Local Area Network)またはこれらの組み合わせである。ネットワーク21は、必ずしも双方向の通信網に限らず、地上デジタル放送、衛星放送等の放送波を伝送する一方向の通信網であっても良い。また、ネットワーク21は、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blue-ray Disc)等の符号化ストリームTeを記録した記憶媒体で代替されても良い。
【0018】
画像復号装置31は、ネットワーク21が伝送した符号化ストリームTeのそれぞれを復号し、それぞれ復号した1または複数の復号画像Tdを生成する。
【0019】
画像表示装置41は、画像復号装置31が生成した1または複数の復号画像Tdの全部または一部を表示する。画像表示装置41は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-luminescence)ディスプレイ等の表示デバイスを備える。また、空間スケーラブル符号化、SNRスケーラブル符号化では、画像復号装置31、画像表示装置41が高い処理能力を有する場合には、画質の高い拡張レイヤ画像を表示し、より低い処理能力しか有しない場合には、拡張レイヤほど高い処理能力、表示能力を必要としないベースレイヤ画像を表示する。
【0020】
<演算子>
本明細書で用いる演算子を以下に記載する。
【0021】
>>は右ビットシフト、<<は左ビットシフト、&はビットワイズAND、|はビットワイズOR、|=は別の条件との和演算(OR)である。
【0022】
x ? y : zは、xが真(0以外)の場合にy、xが偽(0)の場合にzをとる3項演算子である。
【0023】
Clip3(a, b, c) は、cをa以上b以下の値にクリップする関数であり、c<aの場合にはaを返し、c>bの場合にはbを返し、その他の場合にはcを返す関数である(ただし、a<=b)。
【0024】
<符号化ストリームTeの構造>
本実施形態に係る画像符号化装置11および画像復号装置31の詳細な説明に先立って、画像符号化装置11によって生成され、画像復号装置31によって復号される符号化ストリームTeのデータ構造について説明する。
【0025】
図1は、符号化ストリームTeにおけるデータの階層構造を示す図である。符号化ストリームTeは、例示的に、シーケンス、およびシーケンスを構成する複数のピクチャを含む。
図1の(a)~(f)は、それぞれ、シーケンスSEQを既定する符号化ビデオシーケンス、ピクチャPICTを規定する符号化ピクチャ、スライスSを規定する符号化スライス、スライスデータを規定する符号化スライスデータ、符号化スライスデータに含まれる符号化ツリーユニット、符号化ツリーユニットに含まれる符号化ユニット(Coding Unit;CU)を示す図である。
【0026】
(符号化ビデオシーケンス)
符号化ビデオシーケンスでは、処理対象のシーケンスSEQを復号するために画像復号装置31が参照するデータの集合が規定されている。シーケンスSEQは、
図1の(a)に示すように、ビデオパラメータセット(Video Parameter Set)、シーケンスパラメータセットSPS(Sequence Parameter Set)、ピクチャパラメータセットPPS(Picture Parameter Set)、ピクチャPICT、及び、付加拡張情報SEI(Supplemental Enhancement Information)を含んでいる。ここで#の後に示される値はレイヤIDを示す。
図1では、#0と#1すなわちレイヤ0とレイヤ1の符号化データが存在する例を示すが、レイヤの種類およびレイヤの数はこれによらない。
【0027】
ビデオパラメータセットVPSは、複数のレイヤから構成されている動画像において、複数の動画像に共通する符号化パラメータの集合および動画像に含まれる複数のレイヤおよび個々のレイヤに関連する符号化パラメータの集合が規定されている。
【0028】
シーケンスパラメータセットSPSでは、対象シーケンスを復号するために画像復号装置31が参照する符号化パラメータの集合が規定されている。例えば、ピクチャの幅や高さが規定される。なお、SPSは複数存在してもよい。その場合、PPSから複数のSPSの何れかを選択する。
【0029】
ピクチャパラメータセットPPSでは、対象シーケンス内の各ピクチャを復号するために画像復号装置31が参照する符号化パラメータの集合が規定されている。例えば、ピクチャの復号に用いられる量子化幅の基準値(pic_init_qp_minus26)や重み付き予測の適用を示すフラグ(weighted_pred_flag)が含まれる。なお、PPSは複数存在してもよい。その場合、対象シーケンス内の各ピクチャから複数のPPSの何れかを選択する。
【0030】
(符号化ピクチャ)
符号化ピクチャでは、処理対象のピクチャPICTを復号するために画像復号装置31が参照するデータの集合が規定されている。ピクチャPICTは、
図1の(b)に示すように、スライスS0~SNS-1を含んでいる(NSはピクチャPICTに含まれるスライスの総数)。
【0031】
なお、以下、スライスS0~SNS-1のそれぞれを区別する必要が無い場合、符号の添え字を省略して記述することがある。また、以下に説明する符号化ストリームTeに含まれるデータであって、添え字を付している他のデータについても同様である。
【0032】
(符号化スライス)
符号化スライスでは、処理対象のスライスSを復号するために画像復号装置31が参照するデータの集合が規定されている。スライスSは、
図1の(c)に示すように、スライスヘッダSH、および、スライスデータSDATAを含んでいる。
【0033】
スライスヘッダSHには、対象スライスの復号方法を決定するために画像復号装置31が参照する符号化パラメータ群が含まれる。スライスタイプを指定するスライスタイプ指定情報(slice_type)は、スライスヘッダSHに含まれる符号化パラメータの一例である。
【0034】
スライスタイプ指定情報により指定可能なスライスタイプとしては、(1)符号化の際にイントラ予測のみを用いるIスライス、(2)符号化の際に単方向予測、または、イントラ予測を用いるPスライス、(3)符号化の際に単方向予測、双方向予測、または、イントラ予測を用いるBスライスなどが挙げられる。
【0035】
なお、スライスヘッダSHには、上記符号化ビデオシーケンスに含まれる、ピクチャパラメータセットPPSへの参照(pic_parameter_set_id)を含んでいても良い。
【0036】
(符号化スライスデータ)
符号化スライスデータでは、処理対象のスライスデータSDATAを復号するために画像復号装置31が参照するデータの集合が規定されている。スライスデータSDATAは、
図1の(d)に示すように、符号化ツリーユニット(CTU:Coding Tree Unit)を含んでいる。CTUは、スライスを構成する固定サイズ(例えば64x64)のブロックであり、最大符号化単位(LCU:Largest Coding Unit)と呼ぶこともある。
【0037】
(符号化ツリーユニット)
図1の(e)に示すように、処理対象の符号化ツリーユニットを復号するために画像復号装置31が参照するデータの集合が規定されている。符号化ツリーユニットは、再帰的な4分木分割により分割される。再帰的な4分木分割により得られる木構造のノードのことを符号化ノード(CN:Coding Node)と称する。4分木の中間ノードは、符号化ノードであり、符号化ツリーユニット自身も最上位の符号化ノードとして規定される。CTUは、分割フラグ(cu_split_flag)を含み、cu_split_flagが1の場合には、4つの符号化ノードCNに分割される。cu_split_flagが0の場合には、符号化ノードCNは分割されず、1つの符号化ユニット(CU:Coding Unit)をノードとして持つ。符号化ユニットCUは符号化ノードの末端ノードであり、これ以上分割されない。符号化ユニットCUは、符号化処理の基本的な単位となる。
【0038】
また、符号化ツリーユニットCTUのサイズが64x64画素の場合には、符号化ユニットのサイズは、64x64画素、32x32画素、16x16画素、および、8x8画素の何れかをとり得る。
【0039】
(符号化ユニット)
図1の(f)に示すように、処理対象の符号化ユニットを復号するために画像復号装置31が参照するデータの集合が規定されている。具体的には、符号化ユニットは、予測ツリー、変換ツリー、CUヘッダCUHから構成される。CUヘッダでは予測モード、分割方法(PU分割モード)等が規定される。
【0040】
予測ツリーでは、符号化ユニットを1または複数に分割した各予測ユニット(PU)の予測情報(参照ピクチャインデックス、動きベクトル等)が規定される。別の表現でいえば、予測ユニットは、符号化ユニットを構成する1または複数の重複しない領域である。また、予測ツリーは、上述の分割により得られた1または複数の予測ユニットを含む。なお、以下では、予測ユニットをさらに分割した予測単位を「サブブロック」と呼ぶ。サブブロックは、複数の画素によって構成されている。予測ユニットとサブブロックのサイズが等しい場合には、予測ユニット中のサブブロックは1つである。予測ユニットがサブブロックのサイズよりも大きい場合には、予測ユニットは、サブブロックに分割される。たとえば予測ユニットが8x8、サブブロックが4x4の場合には、予測ユニットは水平に2分割、垂直に2分割からなる、4つのサブブロックに分割される。
【0041】
予測処理は、この予測ユニット(サブブロック)ごとに行ってもよい。
【0042】
予測ツリーにおける分割の種類は、大まかにいえば、イントラ予測の場合と、インター予測の場合との2つがある。イントラ予測とは、同一ピクチャ内の予測であり、インター予測とは、互いに異なるピクチャ間(例えば、表示時刻間、レイヤ画像間)で行われる予測処理を指す。
【0043】
イントラ予測の場合、分割方法は、2Nx2N(符号化ユニットと同一サイズ)と、NxNとがある。
【0044】
また、インター予測の場合、分割方法は、符号化データのPU分割モード(part_mode)により符号化され、2Nx2N(符号化ユニットと同一サイズ)、2NxN、2NxnU、2NxnD、Nx2N、nLx2N、nRx2N、および、NxNなどがある。なお、2NxN、Nx2Nは1:1の対称分割を示し、2NxnU、2NxnDおよびnLx2N、nRx2Nは、1:3、3:1の非対称分割を示す。CUに含まれるPUを順にPU0、PU1、PU2、PU3と表現する。
【0045】
図2の(a)~(h)に、それぞれのPU分割モードにおけるパーティションの形状(PU分割の境界の位置)を具体的に図示している。
図2の(a)は、2Nx2Nのパーティションを示し、(b)、(c)、(d)は、それぞれ、2NxN、2NxnU、および、2NxnDのパーティション(横長パーティション)を示す。(e)、(f)、(g)は、それぞれ、Nx2N、nLx2N、nRx2Nである場合のパーティション(縦長パーティション)を示し、(h)は、NxNのパーティションを示す。なお、横長パーティションと縦長パーティションを総称して長方形パーティション、2Nx2N、NxNを総称して正方形パーティションと呼ぶ。
【0046】
また、変換ツリーにおいては、符号化ユニットが1または複数の変換ユニットに分割され、各変換ユニットの位置とサイズとが規定される。別の表現でいえば、変換ユニットは、符号化ユニットを構成する1または複数の重複しない領域のことである。また、変換ツリーは、上述の分割より得られた1または複数の変換ユニットを含む。
【0047】
変換ツリーにおける分割には、符号化ユニットと同一のサイズの領域を変換ユニットとして割り付けるものと、上述したCUの分割と同様、再帰的な4分木分割によるものがある。
【0048】
変換処理は、この変換ユニットごとに行われる。
【0049】
(予測パラメータ)
予測ユニット(PU:Prediction Unit)の予測画像は、PUに付随する予測パラメータによって導出される。予測パラメータには、イントラ予測の予測パラメータもしくはインター予測の予測パラメータがある。以下、インター予測の予測パラメータ(インター予測パラメータ)について説明する。インター予測パラメータは、予測リスト利用フラグpredFlagL0、predFlagL1と、参照ピクチャインデックスrefIdxL0、refIdxL1と、動きベクトルmvL0、mvL1から構成される。予測リスト利用フラグpredFlagL0、predFlagL1は、各々L0リスト、L1リストと呼ばれる参照ピクチャリストが用いられるか否かを示すフラグであり、値が1の場合に対応する参照ピクチャリストが用いられる。なお、本明細書中「XXであるか否かを示すフラグ」と記す場合、フラグが0以外(たとえば1)をXXである場合、0をXXではない場合とし、論理否定、論理積などでは1を真、0を偽と扱う(以下同様)。但し、実際の装置や方法では真値、偽値として他の値を用いることもできる。
【0050】
符号化データに含まれるインター予測パラメータを導出するためのシンタックス要素には、例えば、PU分割モードpart_mode、マージフラグmerge_flag、マージインデックスmerge_idx、インター予測識別子inter_pred_idc、参照ピクチャインデックスrefIdxLX、予測ベクトルインデックスmvp_LX_idx、差分ベクトルmvdLXがある。
【0051】
(参照ピクチャリスト)
参照ピクチャリストは、参照ピクチャメモリ306に記憶された参照ピクチャからなるリストである。
図3は、参照ピクチャおよび参照ピクチャリストの一例を示す概念図である。
図3の(a)において、矩形はピクチャ、矢印はピクチャの参照関係、横軸は時間、矩形中のI、P、Bは各々イントラピクチャ、単予測ピクチャ、双予測ピクチャ、矩形中の数字は復号順を示す。図に示すように、ピクチャの復号順は、I0、P1、B2、B3、B4であり、表示順は、I0、B3、B2、B4、P1である。
図3の(b)に、参照ピクチャリストの例を示す。参照ピクチャリストは、参照ピクチャの候補を表すリストであり、1つのピクチャ(スライス)が1つ以上の参照ピクチャリストを有してもよい。図の例では、対象ピクチャB3は、L0リストRefPicList0およびL1リストRefPicList1の2つの参照ピクチャリストを持つ。対象ピクチャがB3の場合の参照ピクチャは、I0、P1、B2であり、参照ピクチャはこれらのピクチャを要素として持つ。個々の予測ユニットでは、参照ピクチャリストRefPicListX中のどのピクチャを実際に参照するかを参照ピクチャインデックスrefIdxLXで指定する。図では、refIdxL0およびrefIdxL1により参照ピクチャP1とB2が参照される例を示す。
【0052】
(マージ予測とAMVP予測)
予測パラメータの復号(符号化)方法には、マージ予測(merge)モードとAMVP(Adaptive Motion Vector Prediction、適応動きベクトル予測)モードがある、マージフラグmerge_flagは、これらを識別するためのフラグである。マージ予測モードは、予測リスト利用フラグpredFlagLX(またはインター予測識別子inter_pred_idc)、参照ピクチャインデックスrefIdxLX、動きベクトルmvLXを符号化データに含めずに、既に処理した近傍PUの予測パラメータから導出する用いるモードである。AMVPモードは、インター予測識別子inter_pred_idc、参照ピクチャインデックスrefIdxLX、動きベクトルmvLXを符号化データに含めるモードである。なお、動きベクトルmvLXは、予測ベクトルmvpLXを識別する予測ベクトルインデックスmvp_LX_idxと差分ベクトルmvdLXとして符号化される。
【0053】
インター予測識別子inter_pred_idcは、参照ピクチャの種類および数を示す値であり、PRED_L0、PRED_L1、PRED_BIの何れかの値をとる。PRED_L0、PRED_L1は、各々L0リスト、L1リストの参照ピクチャリストで管理された参照ピクチャを用いることを示し、1枚の参照ピクチャを用いること(単予測)を示す。PRED_BIは2枚の参照ピクチャを用いること(双予測BiPred)を示し、L0リストとL1リストで管理された参照ピクチャを用いる。予測ベクトルインデックスmvp_LX_idxは予測ベクトルを示すインデックスであり、参照ピクチャインデックスrefIdxLXは、参照ピクチャリストで管理された参照ピクチャを示すインデックスである。なお、LXは、L0予測とL1予測を区別しない場合に用いられる記述方法であり、LXをL0、L1に置き換えることでL0リストに対するパラメータとL1リストに対するパラメータを区別する。
【0054】
マージインデックスmerge_idxは、処理が完了したPUから導出される予測パラメータ候補(マージ候補)のうち、いずれかの予測パラメータを復号対象PUの予測パラメータとして用いるかを示すインデックスである。
【0055】
(動きベクトル)
動きベクトルmvLXは、異なる2つのピクチャ上のブロック間のずれ量を示す。動きベクトルmvLXに関する予測ベクトル、差分ベクトルを、それぞれ予測ベクトルmvpLX、差分ベクトルmvdLXと呼ぶ。
【0056】
(インター予測識別子inter_pred_idcと予測リスト利用フラグpredFlagLX)
インター予測識別子inter_pred_idcと、予測リスト利用フラグpredFlagL0、predFlagL1の関係は以下のとおりであり、相互に変換可能である。
【0057】
inter_pred_idc = (predFlagL1<<1) + predFlagL0
predFlagL0 = inter_pred_idc & 1
predFlagL1 = inter_pred_idc >> 1
なお、インター予測パラメータは、予測リスト利用フラグを用いても良いし、インター予測識別子を用いてもよい。また、予測リスト利用フラグを用いた判定は、インター予測識別子を用いた判定に置き替えてもよい。逆に、インター予測識別子を用いた判定は、予測リスト利用フラグを用いた判定に置き替えてもよい。
【0058】
(双予測biPredの判定)
双予測BiPredであるかのフラグbiPredは、2つの予測リスト利用フラグがともに1であるかによって導出できる。たとえば以下の式で導出できる。
【0059】
biPred = (predFlagL0 == 1 && predFlagL1 == 1)
フラグbiPredは、インター予測識別子が2つの予測リスト(参照ピクチャ)を使うことを示す値であるか否かによっても導出できる。たとえば以下の式で導出できる。
【0060】
biPred = (inter_pred_idc == PRED_BI) ? 1 : 0
上記式は、以下の式でも表現できる。
【0061】
biPred = (inter_pred_idc == PRED_BI)
なお、PRED_BIはたとえば3の値を用いることができる。
【0062】
(画像復号装置の構成)
次に、本実施形態に係る画像復号装置31の構成について説明する。
図5は、本実施形態に係る画像復号装置31の構成を示す概略図である。画像復号装置31は、エントロピー復号部301、予測パラメータ復号部(予測画像復号装置)302、ループフィルタ305、参照ピクチャメモリ306、予測パラメータメモリ307、予測画像生成部(予測画像生成装置)308、逆量子化・逆DCT部311、及び加算部312を含んで構成される。
【0063】
また、予測パラメータ復号部302は、インター予測パラメータ復号部(動きベクトル生成装置)303及びイントラ予測パラメータ復号部304を含んで構成される。予測画像生成部308は、インター予測画像生成部309及びイントラ予測画像生成部310を含んで構成される。
【0064】
エントロピー復号部301は、外部から入力された符号化ストリームTeに対してエントロピー復号を行って、個々の符号(シンタックス要素)を分離し復号する。分離された符号には、予測画像を生成するための予測情報および、差分画像を生成するための残差情報などがある。
【0065】
エントロピー復号部301は、分離した符号の一部を予測パラメータ復号部302に出力する。分離した符号の一部とは、例えば、予測モードpredMode、PU分割モードpart_mode、マージフラグmerge_flag、マージインデックスmerge_idx、インター予測識別子inter_pred_idc、参照ピクチャインデックスrefIdxLX、予測ベクトルインデックスmvp_LX_idx、差分ベクトルmvdLXである。どの符号を復号するかの制御は、予測パラメータ復号部302の指示に基づいて行われる。エントロピー復号部301は、量子化係数を逆量子化・逆DCT部311に出力する。この量子化係数は、符号化処理において、残差信号に対してDCT(Discrete Cosine Transform、離散コサイン変換)を行い量子化して得られる係数である。
【0066】
インター予測パラメータ復号部303は、エントロピー復号部301から入力された符号に基づいて、予測パラメータメモリ307に記憶された予測パラメータを参照してインター予測パラメータを復号する。
【0067】
インター予測パラメータ復号部303は、復号したインター予測パラメータを予測画像生成部308に出力し、また予測パラメータメモリ307に記憶する。インター予測パラメータ復号部303の詳細については後述する。
【0068】
イントラ予測パラメータ復号部304は、エントロピー復号部301から入力された符号に基づいて、予測パラメータメモリ307に記憶された予測パラメータを参照してイントラ予測パラメータを復号する。イントラ予測パラメータとは、CUを1つのピクチャ内で予測する処理で用いるパラメータ、例えば、イントラ予測モードIntraPredModeである。イントラ予測パラメータ復号部304は、復号したイントラ予測パラメータを予測画像生成部308に出力し、また予測パラメータメモリ307に記憶する。
【0069】
イントラ予測パラメータ復号部304は、輝度と色差で異なるイントラ予測モードを導出しても良い。この場合、イントラ予測パラメータ復号部304は、輝度の予測パラメータとして輝度予測モードIntraPredModeY、色差の予測パラメータとして、色差予測モードIntraPredModeCを復号する。輝度予測モードIntraPredModeYは、35モードであり、プレーナ予測(0)、DC予測(1)、方向予測(2~34)が対応する。色差予測モードIntraPredModeCは、プレーナ予測(0)、DC予測(1)、方向予測(2~34)、LMモード(35)の何れかを用いるものである。イントラ予測パラメータ復号部304は、IntraPredModeCは輝度モードと同じモードであるか否かを示すフラグを復号し、フラグが輝度モードと同じモードであることを示せば、IntraPredModeCにIntraPredModeYを割り当て、フラグが輝度モードと異なるモードであることを示せば、IntraPredModeCとして、プレーナ予測(0)、DC予測(1)、方向予測(2~34)、LMモード(35)を復号しても良い。
【0070】
ループフィルタ305は、加算部312が生成したCUの復号画像に対し、デブロッキングフィルタ、サンプル適応オフセット(SAO)、適応ループフィルタ(ALF)等のフィルタを施す。
【0071】
参照ピクチャメモリ306は、加算部312が生成したCUの復号画像を、復号対象のピクチャ及びCU毎に予め定めた位置に記憶する。
【0072】
予測パラメータメモリ307は、予測パラメータを、復号対象のピクチャ及び予測ユニット(もしくはサブブロック、固定サイズブロック、ピクセル)毎に予め定めた位置に記憶する。具体的には、予測パラメータメモリ307は、インター予測パラメータ復号部303が復号したインター予測パラメータ、イントラ予測パラメータ復号部304が復号したイントラ予測パラメータ及びエントロピー復号部301が分離した予測モードpredModeを記憶する。記憶されるインター予測パラメータには、例えば、予測リスト利用フラグpredFlagLX(インター予測識別子inter_pred_idc)、参照ピクチャインデックスrefIdxLX、動きベクトルmvLXがある。
【0073】
予測画像生成部308には、エントロピー復号部301から入力された予測モードpredModeが入力され、また予測パラメータ復号部302から予測パラメータが入力される。また、予測画像生成部308は、参照ピクチャメモリ306から参照ピクチャを読み出す。予測画像生成部308は、予測モードpredModeが示す予測モードで、入力された予測パラメータと読み出した参照ピクチャを用いてPUの予測画像を生成する。
【0074】
ここで、予測モードpredModeがインター予測モードを示す場合、インター予測画像生成部309は、インター予測パラメータ復号部303から入力されたインター予測パラメータと読み出した参照ピクチャを用いてインター予測によりPUの予測画像を生成する。
【0075】
インター予測画像生成部309は、予測リスト利用フラグpredFlagLXが1である参照ピクチャリスト(L0リスト、もしくはL1リスト)に対し、参照ピクチャインデックスrefIdxLXで示される参照ピクチャから、復号対象PUを基準として動きベクトルmvLXが示す位置にある参照ピクチャブロックを参照ピクチャメモリ306から読み出す。インター予測画像生成部309は、読み出した参照ピクチャブロックをもとに予測を行ってPUの予測画像を生成する。インター予測画像生成部309は、生成したPUの予測画像を加算部312に出力する。
【0076】
予測モードpredModeがイントラ予測モードを示す場合、イントラ予測画像生成部310は、イントラ予測パラメータ復号部304から入力されたイントラ予測パラメータと読み出した参照ピクチャを用いてイントラ予測を行う。具体的には、イントラ予測画像生成部310は、復号対象のピクチャであって、既に復号されたPUのうち、復号対象PUから予め定めた範囲にある隣接PUを参照ピクチャメモリ306から読み出す。予め定めた範囲とは、復号対象PUがいわゆるラスタースキャンの順序で順次移動する場合、例えば、左、左上、上、右上の隣接PUのうちのいずれかであり、イントラ予測モードによって異なる。ラスタースキャンの順序とは、各ピクチャにおいて、上端から下端まで各行について、順次左端から右端まで移動させる順序である。
【0077】
イントラ予測画像生成部310は、読み出した隣接PUについてイントラ予測モードIntraPredModeが示す予測モードで予測を行ってPUの予測画像を生成する。イントラ予測画像生成部310は、生成したPUの予測画像を加算部312に出力する。
【0078】
イントラ予測パラメータ復号部304において、輝度と色差で異なるイントラ予測モードを導出する場合、イントラ予測画像生成部310は、輝度予測モードIntraPredModeYに応じて、プレーナ予測(0)、DC予測(1)、方向予測(2~34)の何れかによって輝度のPUの予測画像を生成し、色差予測モードIntraPredModeCに応じて、プレーナ予測(0)、DC予測(1)、方向予測(2~34)、LMモード(35)の何れかによって色差のPUの予測画像を生成する。
【0079】
逆量子化・逆DCT部311は、エントロピー復号部301から入力された量子化係数を逆量子化してDCT係数を求める。逆量子化・逆DCT部311は、求めたDCT係数について逆DCT(Inverse Discrete Cosine Transform、逆離散コサイン変換)を行い、残差信号を算出する。逆量子化・逆DCT部311は、算出した残差信号を加算部312に出力する。
【0080】
加算部312は、インター予測画像生成部309またはイントラ予測画像生成部310から入力されたPUの予測画像と逆量子化・逆DCT部311から入力された残差信号を画素毎に加算して、PUの復号画像を生成する。加算部312は、生成したPUの復号画像を参照ピクチャメモリ306に記憶し、生成したPUの復号画像をピクチャ毎に統合した復号画像Tdを外部に出力する。
【0081】
(インター予測パラメータ復号部の構成)
次に、インター予測パラメータ復号部303の構成について説明する。
【0082】
図12は、本実施形態に係るインター予測パラメータ復号部303の構成を示す概略図である。インター予測パラメータ復号部303は、インター予測パラメータ復号制御部3031、AMVP予測パラメータ導出部3032、加算部3035、マージ予測パラメータ導出部3036およびサブブロック予測パラメータ導出部(動きベクトル導出部)3037を含んで構成される。
【0083】
インター予測パラメータ復号制御部3031は、インター予測に関連する符号(シンタックス要素)の復号をエントロピー復号部301に指示し、符号化データに含まれる符号(シンタックス要素)、例えば、PU分割モードpart_mode、マージフラグmerge_flag、マージインデックスmerge_idx、インター予測識別子inter_pred_idc、参照ピクチャインデックスrefIdxLX、予測ベクトルインデックスmvp_LX_idx、差分ベクトルmvdLXを抽出する。
【0084】
インター予測パラメータ復号制御部3031は、まず、マージフラグmerge_flagを抽出する。インター予測パラメータ復号制御部3031が、あるシンタックス要素を抽出すると表現する場合は、あるシンタックス要素の復号をエントロピー復号部301に指示し、該当のシンタックス要素を符号化データから読み出すことを意味する。
【0085】
マージフラグmerge_flagが0、すなわち、AMVP予測モードを示す場合、インター予測パラメータ復号制御部3031は、エントロピー復号部301を用いて符号化データからAMVP予測パラメータを抽出する。AMVP予測パラメータとして、例えば、インター予測識別子inter_pred_idc、参照ピクチャインデックスrefIdxLX、予測ベクトルインデックスmvp_LX_idx、差分ベクトルmvdLXがある。AMVP予測パラメータ導出部3032は予測ベクトルインデックスmvp_LX_idxから予測ベクトルmvpLXを導出する。詳細は後述する。インター予測パラメータ復号制御部3031は、差分ベクトルmvdLXを加算部3035に出力する。加算部3035では、予測ベクトルmvpLXと差分ベクトルmvdLXを加算し、動きベクトルを導出する。
【0086】
マージフラグmerge_flagが1、すなわち、マージ予測モードを示す場合、インター予測パラメータ復号制御部3031は、マージ予測に係る予測パラメータとして、マージインデックスmerge_idxを抽出する。インター予測パラメータ復号制御部3031は、抽出したマージインデックスmerge_idxをマージ予測パラメータ導出部3036(詳細は後述する)に出力し、サブブロック予測モードフラグsubPbMotionFlagをサブブロック予測パラメータ導出部3037に出力する。サブブロック予測パラメータ導出部3037は、サブブロック予測モードフラグsubPbMotionFlagの値に応じて、PUを複数のサブブロックに分割し、サブブロック単位で動きベクトルを導出する。すなわち、サブブロック予測モードでは、予測ブロックは4x4もしくは8x8という小さいブロック単位で予測される。後述の画像符号化装置11においては、CUを複数のパーティション(2NxN、Nx2N、NxNなどのPU)に分割し、パーティション単位で予測パラメータのシンタックスを符号化する方法に対して、サブブロック予測モードでは複数のサブブロックを集合(セット)にまとめ、当該集合毎に予測パラメータのシンタックスを符号化するため、少ない符号量で多くのサブブロックの動き情報を符号化することができる。
【0087】
詳細に説明すると、サブブロック予測パラメータ導出部3037は、サブブロック予測モードにてサブブロック予測を行う、時空間サブブロック予測部30371、アフィン予測部30372、マッチング予測部(第1の動きベクトル探索部、第2の動きベクトル探索部)30373、の少なくとも一つを備える。
【0088】
(サブブロック予測モードフラグ)
ここで、画像符号化装置11(詳細は後述する)における、あるPUの予測モードがサブブロック予測モードであるか否かを示すサブブロック予測モードフラグsubPbMotionFlagの導出方法について説明する。画像符号化装置11は、後述する空間サブブロック予測SSUB、時間サブブロック予測TSUB、アフィン予測AFFINE、マッチング予測MATのいずれを用いたかに基づいて、サブブロック予測モードフラグsubPbMotionFlagを導出する。たとえば、あるPUで選択された予測モードをN(たとえばNは選択されたマージ候補を示すラベル)とした場合には、以下の式によりサブブロック予測モードフラグsubPbMotionFlagを導出してもよい。
【0089】
subPbMotionFlag = (N == TSUB) || (N == SSUB) || (N == AFFINE) || (N == MAT)
ここで||は、論理和を示す(以下同様)。
【0090】
また、以下のように、画像符号化装置11が行うサブブロック予測のモードの種類に応じて、上記式を、適宜、変更してもよい。すなわち、画像符号化装置11が空間サブブロック予測SSUB、アフィン予測AFFINEを行う構成である場合には、以下のようにサブブロック予測モードフラグsubPbMotionFlagを導出してもよい。
【0091】
subPbMotionFlag = (N == SSUB)|| (N == AFFINE)
また、サブブロック予測に含まれる各予測モード(たとえば、時空間サブブロック予測、アフィン予測、マッチング予測)によって予測が行われる際に、各サブブロック予測に対応する予測モードの処理の中で、subPbMotionFlagを1に設定する構成としてもよい。
【0092】
また、たとえば、CUサイズが8x8(対数CUサイズlog2CbSize == 3)であり、かつ、分割タイプが2Nx2N以外のようなPUが小さいサイズの場合はPUを分割数1のサブブロックとすることができる。この場合、以下のようにサブブロック予測モードsubPbMotionFlagを導出してもよい。
【0093】
subPbMotionFlag |= (log2CbSize == 3 && PartMode != 2Nx2N)
なお|=は、別の条件との和演算(OR)でsubPbMotionFlagが導出されてもよいことを意味する。すなわち、subPbMotionFlagは、次のように、予測モードNの判定と小PUサイズ判定との和演算で導出してもよい(以下同様)。
【0094】
subPbMotionFlag = (N == TSUB) || (N == SSUB) || (N == AFFINE) || (N == MAT)|| (log2CbSize == 3 && PartMode != 2Nx2N)
さらに、たとえば、CUサイズが8x8(log2CbSize == 3)で分割タイプが2NxN、Nx2N、NxNである場合をサブブロック予測に含めてもよい。すなわち、subPbMotionFlagは、次のように導出してもよい。
【0095】
subPbMotionFlag |= (log2CbSize == 3 && (PartMode == 2NxN || PartMode == Nx2N || PartMode == NxN))
さらに、たとえば、CUサイズが8x8(log2CbSize == 3)で分割タイプがNxNである場合をサブブロック予測に含めてもよい。すなわち、subPbMotionFlagは、次のように導出してもよい。
【0096】
subPbMotionFlag |= (log2CbSize == 3 && PartMode == NxN)
また、サブブロック予測と判定する場合として、PUの幅もしくは高さが4である場合を含めてもよい。すなわち、サブブロック予測モードフラグsubPbMotionFlagは、次のように導出してもよい。
【0097】
subPbMotionFlag |= (nPbW == 4 || nPbH == 4)
画像復号装置31のサブブロック予測パラメータ導出部3037では、上述と逆の方法でsubPbMotionFlagからサブブロックの予測モードを導出する。
【0098】
(サブブロック予測部)
次に、サブブロック予測部について説明する。
【0099】
(時空間サブブロック予測部30371)
時空間サブブロック予測部30371は、時間的に対象PUに隣接する参照画像上(たとえば直前のピクチャ)のPUの動きベクトル、もしくは、空間的に対象PUに隣接するPUの動きベクトルから、対象PUを分割して得られるサブブロックの動きベクトルを導出する。具体的には、参照画像上のPUの動きベクトルを対象PUが参照する参照ピクチャに合わせてスケーリングすることにより、対象PU中の各サブブロックの動きベクトルspMvLX[xi][yi] (xi = xPb + nSbW * i, yj = yPb + nSbH * j, i=0, 1, 2,・・・,nPbW / nSbW - 1、j=0, 1, 2,・・・,nPbH / nSbH - 1)を導出する(時間サブブロック予測)。ここで、(xPb, yPb)は対象PUの左上座標、nPbW, nPbHは対象PUのサイズ、nSbW, nSbHはサブブロックのサイズである。
【0100】
また、対象PUに隣接するPUの動きベクトルと、対象PUを分割して得られるサブブロックとの距離に応じて、加重平均を計算することで、対象PU中の各サブブロックの動きベクトルspMvLX[xi][yi] (xi = xPb + nSbW * i, yj = yPb + nSbH * j, i=0, 1, 2,・・・,nPbW / nSbW - 1、j=0, 1, 2,・・・,nPbH / nSbH - 1)を導出してもよい(空間サブブロック予測)。
【0101】
上記、時間サブブロック予測の候補TSUB、空間サブブロック予測の候補SSUBを、マージモードの一つのモード(マージ候補)として選択する。
【0102】
(アフィン予測部)
アフィン予測部30372は、対象PUのアフィン予測パラメータを導出する。本実施形態では、アフィン予測パラメータとして、対象PUの2つの制御点(V0、V1)の動きベクトル(mv0_x, mv0_y)(mv1_x, mv1_y)を導出する。具体的には、対象PUの隣接PUの動きベクトルから予測することにより、各制御点の動きベクトルを導出してもよいし、さらに、制御点の動きベクトルとして導出された予測ベクトルと符号化データから導出される差分ベクトルの和により、各制御点の動きベクトルを導出してもよい。
【0103】
図13は、対象PU(nPbW×nPbH)を構成する各サブブロックの動きベクトルspMvLXを、制御点V0の動きベクトル(mv0_x, mv0_y)およびV1の動きベクトル(mv1_x, mv1_y)から導出する例を示す図である。各サブブロックの動きベクトルspMvLXは、
図13に示すように、各サブブロックの中心に位置する点毎の動きベクトルとして導出する。
【0104】
アフィン予測部30372は対象PUのアフィン予測パラメータに基づいて、対象PU中の各サブブロックの動きベクトルspMvLX[xi][yi] (xi = xPb + nSbW * i, yj = yPb + nSbH* j, i=0, 1, 2,・・・,nPbW / nSbW - 1、j=0, 1, 2,・・・,nPbH / nSbH - 1)を下記の式を用いて、導出する。
【0105】
spMvLX[xi][yi][0]=mv0_x + (mv1_x - mv0_x) / nPbW * (xi + nSbW/2) - (mv1_y - mv0_y) / nPbH * (yi + nSbH/2)
spMvLX[xi][yi][1]=mv0_y + (mv1_y - mv0_y) / nPbW * (xi + nSbW/2) + (mv1_x - mv0_x) / nPbH * (yi + nSbH/2)
ここで、xPb, yPbは、対象PUの左上座標、nPbW, nPbHは、対象PUの幅と高さ、nSbW, nSbHはサブブロックの幅と高さである。
【0106】
(マッチング予測部30373)
マッチング予測部30373は、複数のマッチング方法(バイラテラルマッチングまたはテンプレートマッチング)の何れかのマッチング処理を行うことにより、PUを構成するサブブロックの動きベクトルspMvLXを導出する。
図14は、(a)バイラテラルマッチング(Bilateral matching)、(b)テンプレートマッチング(Template matching)を説明するための図である。マッチング予測モードは、マージモードの一つのマージ候補(マッチング候補)として選択される。
【0107】
マッチング予測部30373は、物体が等速運動をすると仮定して、複数の参照画像における領域のマッチングにより動きベクトルを導出する。バイラテラルマッチングでは、ある物体が、参照画像Aのある領域、対象ピクチャCur_Picの対象PU、参照画像Bのある領域を等速運動で通過するものと仮定して、参照画像A、B間のマッチングにより対象PUの動きベクトルを導出する。テンプレートマッチングでは、対象PUの隣接領域と対象PUの動きベクトルが等しいと仮定して、対象PUの隣接領域Temp_Curと参照ピクチャ上の参照ブロックの隣接領域Temp_L0のマッチングにより動きベクトルを導出する。マッチング予測部では、対象PUを複数のサブブロックに分割し、分割したサブブロック単位で後述のバイラテラルマッチングもしくはテンプレートマッチングを行うことにより、サブブロックの動きベクトルspMvLX[xi][yi] (xi = xPb + nSbW * i, yj = yPb + nSbH * j, i=0, 1, 2,・・・,nPbW / nSbW - 1、j=0, 1, 2,・・・,nPbH / nSbH - 1)を導出する。
【0108】
図14の(a)に示すように、バイラテラルマッチングでは、対象ピクチャCur_PicにおけるサブブロックCur_blockの動きベクトルを導出するために、2枚の参照画像が参照される。より具体的には、まず、サブブロックCur_blockの座標を(xCur,yCur)と表現したとき、参照ピクチャインデックスRef0によって指定される参照画像(参照ピクチャAと呼ぶ)内の領域であって、
(xPos0,yPos0)=(xCur + MV0_x, yCur + MV0_y)
によって特定される左上座標(xPos0,yPos0)を有するBlock_Aと、参照ピクチャインデックスRef1によって指定される参照画像(参照ピクチャBと呼ぶ)内の領域であって、
(xPos1,yPos1)=(xCur + MV1_x, xCur + MV1_y)=(xCur - MV0_x * TD1/TD0, yCur - MV0_y * TD1/TD0)
によって特定される左上座標(xPos1,yPos1)を有するBlock_Bとが設定される。ここで、TD0、及びTD1は、
図14の(a)に示すように、それぞれ、対象ピクチャCur_Picと参照ピクチャAとのピクチャ間距離、及び対象ピクチャCur_Picと参照ピクチャBとのピクチャ間距離を表している。
【0109】
次に、Block_AとBlock_Bとのマッチングコストが最小となるように、(MV0_x,MV0_y)が決定される。このようにして導出された(MV0_x,MV0_y)が、サブブロックに付与される動きベクトルとなる。
【0110】
一方、
図14の(b)は、上記マッチング処理のうち、テンプレートマッチング(Template matching)について説明するための図である。
【0111】
図14の(b)に示すように、テンプレートマッチングでは、対象ピクチャCur_PicにおけるサブブロックCur_blockの動きベクトルを導出するために、1枚の参照ピクチャが参照される。
【0112】
より具体的には、まず、参照ピクチャインデックスRef0によって指定される参照画像(参照ピクチャAと呼ぶ)内の領域であって、
(xPos,yPos)=(xCur + MV0_x, yCur + MV0_y)
によって特定される左上座標(xPos, yPos)を有する参照ブロックBlock_Aが特定される。ここで、(xCur, yCur)は、サブブロックCur_blockの左上座標である。
【0113】
次に、対象ピクチャCur_PicにおいてサブブロックCur_blockに隣接したテンプレート領域Temp_Curと、参照ピクチャAにおいてBlock_Aに隣接したテンプレート領域Temp_L0とが設定される。
図14の(b)に示す例において、テンプレート領域Temp_Curは、サブブロックCur_blockの上側に隣接する領域及びサブブロックCur_blockの左側に隣接する領域とから構成されている。また、テンプレート領域Temp_L0は、Block_Aの上側に隣接する領域及びBlock_Aの左側に隣接する領域とから構成されている。
【0114】
次にTemp_CurとTempL0とのマッチングコストが最小になる(MV0_x,MV0_y)が決定され、サブブロックに付与される動きベクトルspMvLXとなる。
【0115】
図7は、本実施形態に係るマージ予測パラメータ導出部3036の構成を示す概略図である。マージ予測パラメータ導出部3036は、マージ候補導出部30361とマージ候補選択部30362、マージ候補格納部30363を備える。マージ候補格納部30363は、マージ候補導出部30361から入力されたマージ候補を格納する。なお、マージ候補は、予測リスト利用フラグpredFlagLX、動きベクトルmvLX、参照ピクチャインデックスrefIdxLXを含んで構成されている。マージ候補格納部30363において、格納されたマージ候補には、所定の規則に従ってインデックスが割り当てられる。
【0116】
マージ候補導出部30361は、すでに復号処理が行われた隣接PUの動きベクトルと参照ピクチャインデックスrefIdxLXをそのまま用いてマージ候補を導出する。それ以外にアフィン予測を用いてマージ候補を導出してもよい。この方法を以下で詳細に説明する。マージ候補導出部30361は、アフィン予測を、後述する空間マージ候補導出処理、時間マージ候補導出処理、結合マージ候補導出処理、およびゼロマージ候補導出処理に用いてもよい。なお、アフィン予測はサブブロック単位で行われ、予測パラメータはサブブロック毎に予測パラメータメモリ307に格納されている。あるいは、アフィン予測は画素単位で行われてもよい。
【0117】
(空間マージ候補導出処理)
空間マージ候補導出処理として、マージ候補導出部30361は、所定の規則に従って、予測パラメータメモリ307が記憶している予測パラメータ(予測リスト利用フラグpredFlagLX、動きベクトルmvLX、参照ピクチャインデックスrefIdxLX)を読み出し、読み出した予測パラメータをマージ候補として導出する。読み出される予測パラメータは、復号対象PUから予め定めた範囲内にあるPU(例えば、復号対象PUの左下端、左上端、右上端にそれぞれ接するPUの全部または一部)のそれぞれに係る予測パラメータである。マージ候補導出部30361によって導出されたマージ候補はマージ候補格納部30363に格納される。
【0118】
(時間マージ候補導出処理)
時間マージ導出処理として、マージ候補導出部30361は、復号対象PUの右下の座標を含む参照画像中のPUの予測パラメータを予測パラメータメモリ307から読みだしマージ候補とする。参照画像の指定方法は、例えば、スライスヘッダにおいて指定された参照ピクチャインデックスrefIdxLXでも良いし、復号対象PUに隣接するPUの参照ピクチャインデックスrefIdxLXのうち最小のものを用いて指定しても良い。マージ候補導出部30361によって導出されたマージ候補はマージ候補格納部30363に格納される。
【0119】
(結合マージ候補導出処理)
結合マージ導出処理として、マージ候補導出部30361は、既に導出され、マージ候補格納部30363に格納された2つの異なる導出済マージ候補の動きベクトルと参照ピクチャインデックスを、それぞれL0、L1の動きベクトルとして組み合わせることで結合マージ候補を導出する。マージ候補導出部30361によって導出されたマージ候補はマージ候補格納部30363に格納される。
【0120】
(ゼロマージ候補導出処理)
ゼロマージ候補導出処理として、マージ候補導出部30361は、参照ピクチャインデックスrefIdxLXが0であり、動きベクトルmvLXのX成分、Y成分が共に0であるマージ候補を導出する。マージ候補導出部30361によって導出されたマージ候補はマージ候補格納部30363に格納される。
【0121】
マージ候補選択部30362は、マージ候補格納部30363に格納されているマージ候補のうち、インター予測パラメータ復号制御部3031から入力されたマージインデックスmerge_idxに対応するインデックスが割り当てられたマージ候補を、対象PUのインター予測パラメータとして選択する。マージ候補選択部30362は選択したマージ候補を予測パラメータメモリ307に記憶するとともに、予測画像生成部308に出力する。
【0122】
図8は、本実施形態に係るAMVP予測パラメータ導出部3032の構成を示す概略図である。AMVP予測パラメータ導出部3032は、ベクトル候補導出部(予測ベクトル候補導出部)3033とベクトル候補選択部3034、およびベクトル候補格納部3035を備える。ベクトル候補導出部3033は、参照ピクチャインデックスrefIdxに基づいて予測パラメータメモリ307が記憶する既に処理済みのPUの動きベクトルmvLXを読み出し、予測ベクトル候補を導出し、ベクトル候補格納部3035に対し、予測ベクトル候補リストmvpListLX[]に格納する。
【0123】
ベクトル候補選択部3034は、予測ベクトル候補リストmvpListLX[]の予測ベクトル候補のうち予測ベクトルインデックスmvp_LX_idxが示す動きベクトルmvpListLX[mvp_LX_idx]を予測ベクトルmvpLXとして選択する。ベクトル候補選択部3034は、選択した予測ベクトルmvpLXを加算部3035に出力する。
【0124】
なお、予測ベクトル候補は、復号処理が完了したPUであって、復号対象PUから予め定めた範囲のPU(例えば、隣接PU)の動きベクトルをスケーリングすることで導出する。なお、隣接PUは、復号対象PUに空間的に隣接するPU、例えば、左PU、上PUの他、復号対象PUに時間的に隣接する領域、例えば、復号対象PUと同じ位置を含み、表示時刻が異なるPUの予測パラメータから得られた領域を含む。
【0125】
加算部3035は、AMVP予測パラメータ導出部3032から入力された予測ベクトルmvpLXとインター予測パラメータ復号制御部3031から入力された差分ベクトルmvdLXを加算して動きベクトルmvLXを算出する。加算部3035は、算出した動きベクトルmvLXを予測画像生成部308および予測パラメータメモリ307に出力する。
【0126】
(インター予測画像生成部309)
図11は、本実施形態に係る予測画像生成部308に含まれるインター予測画像生成部309の構成を示す概略図である。インター予測画像生成部309は、動き補償部(予測画像生成装置)3091、重み予測部3094を含んで構成される。
【0127】
(動き補償)
動き補償部3091は、インター予測パラメータ復号部303から入力された、インター予測パラメータ(予測リスト利用フラグpredFlagLX、参照ピクチャインデックスrefIdxLX、動きベクトルmvLX)に基づいて、参照ピクチャメモリ306から、参照ピクチャインデックスrefIdxLXで指定された参照ピクチャにおいて、復号対象PUの位置を起点として、動きベクトルmvLXだけずれた位置にあるブロックを読み出すことによって補間画像(動き補償画像)を生成する。ここで、動きベクトルmvLXの精度が整数精度でない場合には、動き補償フィルタと呼ばれる小数位置の画素を生成するためのフィルタを施して、動き補償画像を生成する。
【0128】
(重み予測)
重み予測部3094は、入力される動き補償画像predSamplesLXに重み係数を乗算することによりPUの予測画像を生成する。予測リスト利用フラグの一方(predFlagL0もしくはpredFlagL1)が1の場合(単予測の場合)で、重み予測を用いない場合には入力された動き補償画像predSamplesLX(LXはL0もしくはL1)を画素ビット数bitDepthに合わせる以下の式の処理を行う。
【0129】
predSamples[X][Y] = Clip3( 0, ( 1 << bitDepth ) - 1, ( predSamplesLX[X][Y] + offset1 ) >> shift1 )
ここで、shift1 = 14 - bitDepth、offset1=1<<(shift1-1)である。また、参照リスト利用フラグの両者(predFlagL0とpredFlagL1)が1の場合(双予測BiPredの場合)で、重み予測を用いない場合には、入力された動き補償画像predSamplesL0、predSamplesL1を平均し画素ビット数に合わせる以下の式の処理を行う。
【0130】
predSamples[X][Y] = Clip3( 0, ( 1 << bitDepth ) - 1, ( predSamplesL0[X][Y] + predSamplesL1[X][Y] + offset2 ) >> shift2 )
ここで、shift2=15-bitDepth、offset2=1<<(shift2-1)である。
【0131】
さらに、単予測の場合で、重み予測を行う場合には、重み予測部3094は、重み予測係数w0とオフセットo0を符号化データから導出し、以下の式の処理を行う。
【0132】
predSamples[X][Y] = Clip3( 0, ( 1 << bitDepth ) - 1, ( (predSamplesLX[X][Y] * w0 + 2^(log2WD - 1)) >> log2WD ) + o0 )
ここで、log2WDは所定のシフト量を示す変数である。
【0133】
さらに、双予測BiPredの場合で、重み予測を行う場合には、重み予測部3094は、重み予測係数w0、w1、o0、o1を符号化データから導出し、以下の式の処理を行う。
【0134】
predSamples[X][Y] = Clip3( 0, ( 1 << bitDepth ) - 1, ( predSamplesL0 [X][Y] * w0 + predSamplesL1[X][Y] * w1 + ((o0 + o1 + 1) << log2WD) ) >> (log2WD + 1) )
<動きベクトル復号処理>
以下では、
図9を参照して、本実施形態に係る動きベクトル復号処理について具体的に説明する。
【0135】
上述の説明から明らかなように、本実施形態に係る動きベクトル復号処理は、インター予測に関連するシンタックス要素を復号する処理(動きシンタックス復号処理とも呼ぶ)と、動きベクトルを導出する処理(動きベクトル導出処理)とを含んでいる。
【0136】
(動きシンタックス復号処理)
図9は、インター予測パラメータ復号制御部3031によって行われるインター予測シンタックス復号処理の流れを示すフローチャートである。
図9の説明における以下の説明において、特に明示のない場合、各処理はインター予測パラメータ復号制御部3031によって行われる。
【0137】
まず、ステップS101において、マージフラグmerge_flagが復号され、ステップS102において、
merge_flag != 0(merge_flagが0でないか)
が判断される。
【0138】
merge_flag !=0 が真(S102でY)の場合、S103においてマージインデックスmerge_idxが復号され、マージモードにおける動きベクトル導出処理(S111)を実行する。
【0139】
merge_flag!=0 が偽(S102でN)の場合、S104においてインター予測識別子inter_pred_idcを復号する。
【0140】
inter_pred_idcがPRED_L1以外(PRED_L0もしくはPRED_BI)の場合、S105、S106、S107において、参照ピクチャインデックスrefIdxL0、差分ベクトルのパラメータmvdL0、予測ベクトルインデックスmvp_L0_idxが各々復号される。
【0141】
inter_pred_idcがPRED_L0以外(PRED_L1もしくはPRED_BI)の場合、S108、S109、S110において、参照ピクチャインデックスrefIdxL1、差分ベクトルのパラメータmvdL1、予測ベクトルインデックスmvp_L1_idxが復号される。続いて、AMVPモードにおける動きベクトル導出処理(S112)を実行する。
【0142】
(動きベクトル導出処理の別の表現)
以上の動きベクトル導出処理は、以下のように表現できる。
図15は、動き予測モード決定フローの概要を示すフローチャート図である。動き予測モード決定フローは、インター予測パラメータ復号部303により実行される。動き予測モードとは、動き補償予測に用いる動きベクトルの導出方法を決定するモードである。
【0143】
図15に示すように、動き予測モード決定フローでは、まず、インター予測パラメータ復号制御部3031によって、マージモードか否かが判断され(S1501)、マージモードでなければ(S1501でNO)、AMVPモードとなる。一方、マージモードであると判断された場合(S1501でYES)、マッチングモードであるか否かが判断される(S1502)。そして、マッチングモードであると判断された場合(S1502でYES)、マッチングモードとなり、マッチングモードではないと判断された場合(S1502でNO)、マージモードとなる。マッチングモードはFRUC(Frame Rate Up Conversion)マージモードとも呼ばれ、上述したテンプレートマッチングまたはバイラテラルマッチングを実行する。
【0144】
次に、
図16を参照して、動き予測モード決定フローの詳細を説明する。
図16は、動き予測モード決定フローの流れを示すシーケンス図である。
【0145】
まず、インター予測パラメータ復号制御部3031によって、ステップS101において、マージフラグmerge_flagが復号され、ステップS102において、merge_flag==1 ?が判断される。
【0146】
merge_flag==1が真(S102でYES)の場合、マッチングモードを示すパラメータfruc_merge_idxが、ステップS103にて復号され、ステップS104において、fruc_merge_idx!=0が判断される。
【0147】
fruc_merge_idx!=0が真(S104でYES)の場合、動きベクトル導出方法としてマッチングモードが選択される。ステップS105では、マッチング予測部30373によって、fruc_merge_idxが1の場合、バイラテラルマッチングによりパターンマッチベクトルが導出され、fruc_merge_idxが2の場合、テンプレートマッチングによりパターンマッチベクトルが導出される。
【0148】
上記では、マッチングモードを示すパラメータfruc_merge_idxが、マッチングモードを用いるか否かを示すフラグと、マッチングモードにおけるマッチング方法を示すパラメータを兼ねているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、マッチングモードを示すパラメータfruc_merge_idxの代わりに、マッチングモードを用いるか否かを示すフラグfruc_merge_flagと、マッチング方法を示すパラメータfruc_merge_paramを用いる構成としてもよい。この場合、fruc_merge_idx!=0の判定はfruc_merge_flag!=0と等価であり、fruc_merge_idx==1の判定は、fruc_merge_param!=0と等価である。なお、fruc_merge_paramはfruc_merge_flagが1の場合に復号される。
【0149】
また、ステップS104において、fruc_merge_idx!=0が偽の場合、マージ予測パラメータ導出部3036によって、S111において、マージインデックスmerge_idxを復号する。続いて、S112において、マージ候補mergeCandを導出し、S113において、動きベクトルmvLXを次式により導出する。
【0150】
mvLX = mergeCand[merge_idx]
一方、ステップS102において、merge_flag==1が偽(S102でNO)の場合、AMVPモードが選択される。より具体的には、AMVP予測パラメータ導出部3032によって、S121において、差分ベクトルmvdLXが復号され、S122において、予測ベクトルインデックスmvp_LX_idxが復号される。更に、S123において、予測ベクトル候補pmvCandを導出する。続いて、S124において、動きベクトルmvLXを次式により導出する。
【0151】
mvLX = pmvCand[mvp_LX_idx] + mvdLX
(マッチング処理による動きベクトル導出処理)
以下では、マッチングモードにおける動きベクトル導出(パターンマッチベクトル導出)処理の流れについて
図17、および
図18を参照して説明する。
図17は、パターンマッチベクトル導出処理の流れを示すフローチャート図である。
図18は、パターンマッチベクトル導出処理を説明するための図である。
【0152】
図17は、
図16に示したシーケンス図におけるステップS105における処理の詳細である。
図17に示す処理は、マッチング予測部30373により実行される。
【0153】
なお、
図17に示す各ステップのうち、ステップS1051~S1054は、ブロックレベルで実行されるブロックサーチである。すなわち、パターンマッチを用いて、ブロック(CU、またはPU)全体で動きベクトルを導出する。具体的には、
図18の(a)に示すように、対象ブロック全体における動きベクトルを導出している。換言すれば対象ブロック単位で動きベクトルを導出している。
【0154】
また、ステップS1055~S1060は、サブブロックレベルで実行されるサブブロックサーチである。すなわち、パターンマッチを用いて、ブロックを構成するサブブロック単位で動きベクトルを導出する。具体的には。
図18の(b)に示すように、対象ブロックにおける各サブブロック単位で動きベクトルを導出している。なお、サブブロックのサイズは、対象ブロックに対し、縦横それぞれ1/8である。ただし、サブブロックの最小サイズは、4×4画素である。
【0155】
まず、ステップS1051において、fruc_merge_idx==1が判断される。fruc_merge_idx==1が偽(S1051でNO)の場合、ステップS1052において、テンプレートマッチングを行うためのテンプレートを取得する。より詳細には、テンプレートマッチング用のテンプレートをブロックの周辺領域から取得する。具体的には、
図18の(c)に示すように、対象ブロックの上隣接領域または左隣接領域からテンプレートを取得する。なお、テンプレートのサイズ(厚み)は4画素である。そして、ステップS1053に進む。
【0156】
また、fruc_merge_idx==1が真(S1051でYES)の場合もステップS1053に進む。ステップS1053において、対象ブロックにおけるブロックレベルの初期ベクトルを導出(初期ベクトルサーチ)する。なお、初期ベクトルとは、探索のベースとなる動きベクトルであり、限られた動きベクトル候補(空間マージ候補、時間マージ候補、結合マージ候補、ゼロベクトル、対象ブロックのATMVPベクトル等)から、マッチングコストが最小となるベクトルを導出し、初期ベクトルとしている。なお、ATMVPベクトルとは、対象ブロックの周囲の動きベクトルから導出したテンポラルベクトルが示す、参照画像上のブロックからサブブロック単位で導出される動きベクトルである。
【0157】
ステップS1054において、対象ブロックにおけるブロックレベルのローカルサーチ(局所的探索)を行う。ローカルサーチでは、ステップS1051で導出された初期ベクトルを中心とする局所領域をさらにサーチし、マッチングコストが最小となるベクトルを探索し、最終的な対象ブロックの動きベクトルとする。なお、ローカルサーチは、ステップサーチでもよいし、ラスタサーチでもよい。ローカルサーチの詳細については後述する。
【0158】
続いて、対象ブロックに含まれる各サブブロックについて、以下の処理を行う(ステップS1055~S1060)。
【0159】
まず、ステップS1056において、fruc_merge_idx==1が判断される。fruc_merge_idx==1が偽(S1056でNO)の場合、ステップS1057において、テンプレートマッチングを行うためのテンプレートを取得する。より詳細には、テンプレートマッチング用のテンプレートをサブブロックの周辺領域から取得する。具体的には、
図18の(c)に示すように、対象サブブロックの上隣接領域または左隣接領域からテンプレートを取得する。そして、ステップS1058に進む。また、fruc_merge_idx==1が真(S1056でYES)の場合もステップS1058に進む。
【0160】
ステップS1053において、対象ブロックにおけるサブブロックの初期ベクトルを導出(初期ベクトルサーチ)する。詳細には、ベクトル候補(対象ブロックの動きベクトル、ゼロベクトル、当該サブブロックの中心コロケートベクトル、当該サブブロックの右下コロケートベクトル、当該サブブロックのATMVPベクトル、当該サブブロックの上隣接ベクトル、当該サブブロックの左隣接ベクトル等)のうち、マッチングコストが最小となるベクトルを当該サブブロックの初期ベクトルとする。なお、サブブロックの初期ベクトル探索に利用するベクトル候補は上述のベクトルに限定されない。
【0161】
次に、ステップS1059において、S1058で選択されたサブブロックの初期ベクトルを中心とするステップサーチ(ローカルサーチ)を行う。そして、サブブロックの初期ベクトル付近のベクトル候補のマッチングコストを導出し、最小となるベクトルをサブブロックの動きベクトルとして導出する。
【0162】
そして、対象ブロックに含まれる全てのサブブロックについて処理が完了すると、パターンマッチベクトル導出処理が終了する。
【0163】
なお、初期ベクトルサーチ、ローカルサーチともに、fruc_merge_idxが1の場合は、バイラテラルマッチングによってマッチングコストを導出する。また、fruc_merge_idxが2の場合は、テンプレートマッチングによってマッチングコストを導出する。
【0164】
(ローカルサーチのアルゴリズム)
次に、
図19を参照して、ローカルサーチのアルゴリズムについて説明する。
図19は、動き探索パターンを説明するための図である。なお、動き探索に用いる方法(stepMethod)を何回繰り返すかを示すステップ数(stepIter、最大ラウンド数)は所定の値に設定する。後述するように、サブブロックレベルの最大ラウンド数stepIterSubPUは、ブロックレベルの最大ラウンド数stepIterPU未満とするとよい。
【0165】
マッチング予測部30373は、動き探索においてマッチングコストを評価した探索候補点のうち、最も小さいマッチングコストを与える探索候補点を最適な探索点と見做し、当該探索候補点の動きベクトルbestMVを選択する。なお、マッチングコストの導出のために用いる関数の例としては、SAD(Sum of Absolute Difference、絶対値誤差和)およびSATD(アダマール変換絶対値誤差和)、SSD(Sum of Square difference)などが挙げられる。
【0166】
マッチング予測部30373が行う動きベクトルのローカルサーチは、これに限定されるものではないが、ダイヤモンドサーチ(stepMethod = DIAMOND)およびクロスサーチ(stepMethod = CROSS)、ラスタサーチ(ラスタ型の探索、stepMethod = RASTER)などの動き探索アルゴリズムが用いられる。
【0167】
なお、以下では、対象ブロックとしてPUの場合を例に挙げて説明する。
【0168】
<ステップサーチ>
まず、ステップサーチの一例として、ダイヤモンドサーチについて、
図19の(a)、(b)を用いて説明する。
図19の(a)、(b)は、ダイヤモンドサーチを適用したときの動き探索パターンを示す図である。
図19は、7PU(横)×5PU(縦)の探索範囲の例を示している。また、探索候補点を設定するために探索開始点の座標に足し合わせるオフセット候補(offsetCand)が、
offsetCand[8] = {(0, 2), (1, 1), (2, 0), (1, -1), (0, -2), (-1, -1), (-2, 0), (-1, 1)}
で表される8つであるようなダイヤモンドサーチの場合を例示している。マッチング予測部30373は、探索開始点の座標(位置)startMVにオフセット候補(offsetCand)の各値(offsetCand[Idx])を足し合わすことで、8つの探索候補点の座標を選択する。このように選択された各探索候補点は、探索開始方向nDirectStart = 0から探索終了方向nDirectEnd = 7までの8つの方向にそれぞれ対応している。なお、オフセット候補(offsetCand)の数として、ダイヤモンドサーチでは通常8を用いるが、他の値、たとえば、8より大きい任意の値、または8より小さい任意の値であってもよい。ただし、オフセット候補の数を大きくすればそれだけ動き探索の処理に要する時間および演算数が増大するため、適当な値に選択することが望ましい。
【0169】
なお、
図19では、白抜き菱形で各探索回数での初期ベクトルstartMVの起点を示し、黒菱形で各探索ラウンドでの最適ベクトルbestMVの終点を示し、黒丸で各探索回数での探索候補点を示し、白抜き丸で各探索回数での探索済みの点を示している。
【0170】
マッチング予測部30373がステップサーチを適用した動き探索を行う場合、探索を開始する前に探索ラウンドnumIterを0に初期化する。そして、各探索ラウンドの開始時点で、最小コストminCostを探索開始点のマッチングコストに設定し、最適候補インデックスbestIdxに初期値(-1)を設定する。
【0171】
minCost = mcost (startMV)
bestIdx = -1
ここでmcost(X)は、探索ベクトルXでのマッチングコストを導出する関数である。
【0172】
マッチング予測部30373は各探索ラウンドにおいて(ここでは0回目の探索、numIter = 0)当該探索開始点(ここではP0)を中心とする探索候補点を選択し評価する。ここでは、ダイヤモンド状に配置する8つの点を探索候補点(ここでは
図19の(a)の一段目の点0~7)として選択する。すなわち、マッチング予測部30373は、探索開始時に、探索開始点P0を始点とし、各検索候補点を終点とする探索ベクトル(初期ベクトルstartMV = P0)を設定する。
【0173】
マッチング予測部30373は、
図19の(a)の一段目に示す探索候補点0~7について、マッチングコストを評価する。Idx = nDirectStart..nDirectEnd(ここではnDirectStart = 0, nDirectEnd = 7)について、順に動きベクトル候補candMVを以下の式により導出し、各candMVにおけるマッチングコストを評価する。
【0174】
candMV = startMV + offsetCand[Idx]
例えば、最も小さいマッチングコストを与える探索候補点(探索開始点P0も含む)が
図19の(a)の一段目に示す点2である場合、つまり、Idx = 2の探索候補点candMV[Idx]のマッチングコストcandCost (candCost = mcost (candMV[Idx]) )が、最小コストminCost未満(candCost < minCost)であった場合、マッチング予測部30373は、最適探索候補インデックスbestIdxをIdxに更新して、最適コストminCost、最適ベクトルbestMVを更新する。これは、以下のように表すことができる。
【0175】
bestIdx = Idx
minCost = candCost
bestMV = candMV[Idx]
なお、各ラウンドで、探索開始点を中心に探索候補点を設定し、設定された探索候補点についてのマッチングコストを導出、評価し、最適なマッチングコストとなる探索候補点を選択する一通りの処理をここでは「ステップラウンド処理」と呼ぶ。ステップサーチではこの「ステップラウンド処理」を繰り返し実行する。各回のステップラウンド処理では、探索ラウンド数numIterを1だけインクリメントする。
【0176】
各回のステップラウンド処理の終了時点、すべての探索候補点の評価が終了した時点で、今回の処理で最適ベクトルbestMVの更新があった場合(ここではbestIdx >= 0)、かつ、探索ラウンド数numIterが所定の最大ラウンド数stepIter未満の場合(ここではnumIter< stepIter)、マッチング予測部30373は、次のステップラウンド処理を行う。このとき選択された探索候補点は、次のラウンドの探索開始点として用いられる。すなわち、マッチング予測部30373は、次のステップラウンド処理において、予測ブロックPUに関する最適ベクトルbestMVの終点として、
図19の(a)の一段目に示す点2を選択する。
【0177】
startMV = bestMV (ここではP(1))
なお、最適ベクトルbestMVの更新があったか否かの判定は、最適ベクトルbestMVが探索開始点とは異なるか否かのほか、bestIdxが初期値(-1)以外の値に更新されたか否か、もしくは、minCostが開始点の初期コスト以外の値に更新された否かなどにより判定することもできる。なお、次のラウンドで利用される探索開始インデックスnDirectStart、探索終了インデックスnDirectEndを、最適ベクトルbestMVの位置(最適候補インデックスIdx)に依存して、以下の式により決定すれば、すでに探索した探索点を再度探索することがなく、効率的な探索が可能となる。
【0178】
nStep = 2 - (bestIdx & 1)
nDirectStart = bestIdx - nStep
nDirectEnd = bestIdx - nStep
次に、
図19の(a)の二段目に示すように、1回目の探索(numIter = 1)において、マッチング予測部30373は、
図19の(a)の一段目において最適ベクトルbestMVの終点として選択された点2を今回の探索における初期ベクトルstartMV(探索開始点P1)の起点とし、探索開始点P1を中心としてダイヤモンド状に配置する複数の点であって、未だ探索候補点として選択されていない点を探索候補点(
図19の(a)の二段目の点0~4)として、順に選択しマッチングコストを評価する。つまり、Idx = nDirectStart..nDirectEnd(ここではnDirectStart = 0, nDirectEnd = 4)の示す探索候補点を評価する。例えば、最も小さいマッチングコストを与える探索候補点(探索開始点P1も含む)が
図19の(a)の二段目に示す点1である場合、つまり、Idx = 1の探索候補点candMV[Idx]のマッチングコストcandCost (candCost = mcost (candMV[Idx]) )が、最小コストminCost未満(candCost < minCost)であった場合、マッチング予測部30373は、前のラウンドと同様に最適ベクトルbestMVを更新する。
【0179】
今回の処理で最適ベクトルbestMVの更新があったため、マッチング予測部30373は、次のステップラウンド処理を実行する。ここでも、予測ブロックPUに関する最適ベクトルbestMVの起点として、今回のラウンドの最適探索候補点である
図19の(a)の二段目に示す点1を選択する。
【0180】
続けて、
図19の(a)の三段目に示すように、2回目の探索(numIter = 2)において、マッチング予測部30373は、
図19の(a)の二段目に示す点1を今回の探索における初期ベクトルstartMV(探索開始点P2)の起点とし、探索開始点P2を中心としてダイヤモンド状に配置する複数の点であって、未だ探索候補点として選択されていない点であって探索範囲内に存在する点を探索候補点(
図19の(a)の三段目の点0~2)として選択する(つまりnDirectStart = 0, nDirectEnd = 2)。
【0181】
図19の(a)の三段目で、最も小さいマッチングコストを与える探索候補点が
図19の(a)の三段目に示す探索開始点P2のコスト以上である場合、最適ベクトルbestMVを更新しない。ここで、一通りのステップサーチ処理(ダイヤモンドサーチ)は終了となる。
【0182】
マッチング予測部30373は、新たに別のステップサーチを行ってもよい。
図19の(b)では、マッチング予測部30373は、次のステップラウンド処理において、探索開始点P2の周囲をさらに詳細に探索するために、クロスサーチ(stepMethod = CROSS)を1回行う例を示している。
【0183】
クロスサーチでは、オフセット候補(offsetCand)として以下の値を用いる。
【0184】
offsetCand[4] = {(0, 1), (1, 0), (0, -1), (-1, 0)
クロスサーチにおいて、マッチング予測部30373は、探索開始点(
図19の(a)の三段目の探索開始点P2)を中心として、上下左右(十字)の位置の点であって、上述のダイヤモンドサーチでは探索候補点として選択されなかった点を探索候補点として選択する。例えば、探索開始点P2の上下左右の点0~3を探索候補点のうち、最も小さいマッチングコストを与える探索候補点(探索開始点P2も含む)が
図19の(b)に示す点1である場合、マッチング予測部30373は、予測ブロックPUに関する最適ベクトルbestMVの終点として、
図19の(b)に示す点1を選択する。
【0185】
このように、マッチング予測部30373は、あるステップサーチ(例えば、ダイヤモンドサーチ)を1または複数回用いることにより、最も小さいマッチングコストを与える探索候補点を選択した後に、あるステップサーチ(例えば、クロスサーチ)を1または複数回用いて、より詳細に動きベクトルを選択する構成であってもよい。
【0186】
なお、
図19の(a)に示す例に動き探索パターンは、ダイヤモンドサーチを用いた動き探索の一例であり、マッチング予測部30373は、他の動き探索パターンを有するダイヤモンドサーチを用いてもよい。例えば、0回目の探索において、探索開始点から等距離に存在する点を探索候補点として選択し、n回目の探索によって、探索開始点からの距離が2n-1となる点の探索を行うようなダイヤモンドサーチを適用してもよい。
【0187】
<ラスタサーチ>
続いて、ラスタサーチについて説明する。マッチング予測部30373がラスタサーチを適用した動き探索を行う場合、マッチング予測部30373は、探索範囲内の探索点を一定間隔で網羅的に選択し、これらのマッチングコストをラスタスキャン(raster scan)順に評価する。ここで、ラスタスキャンとは、探索範囲の左上を起点とし、左側から右へと右端に到達するまで画素を調べ、右端に到達した場合には、行を1つだけ下がってまた左端から右へと順に画素を調べる網羅的な検索方法である。
【0188】
マッチング予測部30373は、ラスタスキャン順に設定された終点を有する探索ベクトルの各々について算出したマッチングコストのうち、最も小さいマッチングコストを与える探索ベクトルを選択する。
【0189】
ラスタスキャンとは、blkW×blkHのサイズのブロックに対して、最初にY座標y、X座標xを初期値に設定したうえで、xを初期値から終値までスキャンし、xが終値に達したら、xを初期値に戻したうえで、yを増加させ、更新されたyにおいて再度xを初期値から終値までスキャンする処理を繰り返す手順である。疑似コードで示すと、xのループがyのループの内側にあるような以下のような2重ループで行われる。
【0190】
for (y = 0; y < blkH; y++) { // yに関するループ
for (x = 0; x < blkW; x++) { // xに関するループ
ラスタスキャン内の処理
}
}
なお、ラスタスキャンの代わりに、拡張ラスタスキャンを用いてもよい。拡張ラスタスキャンは、ラスタスキャンのようにあらかじめ定められたスキャン順によって、ブロック内の各点を走査するものである。たとえば、中心から周辺に向かって渦巻き状に走査するスパイラルスキャンなどである。
【0191】
(画像符号化装置の構成)
次に、本実施形態に係る画像符号化装置11の構成について説明する。
図4は、本実施形態に係る画像符号化装置11の構成を示すブロック図である。画像符号化装置11は、予測画像生成部101、減算部102、DCT・量子化部103、エントロピー符号化部104、逆量子化・逆DCT部105、加算部106、ループフィルタ107、予測パラメータメモリ(予測パラメータ記憶部、フレームメモリ)108、参照ピクチャメモリ(参照画像記憶部、フレームメモリ)109、符号化パラメータ決定部110、予測パラメータ符号化部111を含んで構成される。予測パラメータ符号化部111は、インター予測パラメータ符号化部(動きベクトル生成装置)112及びイントラ予測パラメータ符号化部113を含んで構成される。
【0192】
予測画像生成部101は画像Tの各ピクチャについて、そのピクチャを分割した領域である符号化ユニットCU毎に予測ユニットPUの予測画像Pを生成する。ここで、予測画像生成部101は、予測パラメータ符号化部111から入力された予測パラメータに基づいて参照ピクチャメモリ109から復号済のブロックを読み出す。予測パラメータ符号化部111から入力された予測パラメータとは、例えばインター予測の場合、動きベクトルである。予測画像生成部101は、対象PUを起点として動きベクトルが示す参照画像上の位置にあるブロックを読み出す。またイントラ予測の場合、予測パラメータとは例えばイントラ予測モードである。イントラ予測モードで使用する隣接PUの画素値を参照ピクチャメモリ109から読み出し、PUの予測画像Pを生成する。予測画像生成部101は、読み出した参照ピクチャブロックについて複数の予測方式のうちの1つの予測方式を用いてPUの予測画像Pを生成する。予測画像生成部101は、生成したPUの予測画像Pを減算部102に出力する。
【0193】
なお、予測画像生成部101は、既に説明した予測画像生成部308と同じ動作である。例えば、
図6は、予測画像生成部101に含まれるインター予測画像生成部1011の構成を示す概略図である。インター予測画像生成部1011は、動き補償部10111、重み予測部10112を含んで構成される。動き補償部10111および重み予測部10112については、上述の動き補償部3091、重み予測部3094のそれぞれと同様の構成であるためここでの説明を省略する。
【0194】
予測画像生成部101は、予測パラメータ符号化部から入力されたパラメータを用いて、参照ピクチャメモリから読み出した参照ブロックの画素値をもとにPUの予測画像Pを生成する。予測画像生成部101で生成した予測画像は減算部102、加算部106に出力される。
【0195】
減算部102は、予測画像生成部101から入力されたPUの予測画像Pの信号値を、画像Tの対応するPUの画素値から減算して、残差信号を生成する。減算部102は、生成した残差信号をDCT・量子化部103に出力する。
【0196】
DCT・量子化部103は、減算部102から入力された残差信号についてDCTを行い、DCT係数を算出する。DCT・量子化部103は、算出したDCT係数を量子化して量子化係数を求める。DCT・量子化部103は、求めた量子化係数をエントロピー符号化部104及び逆量子化・逆DCT部105に出力する。
【0197】
エントロピー符号化部104には、DCT・量子化部103から量子化係数が入力され、予測パラメータ符号化部111から符号化パラメータが入力される。入力される符号化パラメータには、例えば、参照ピクチャインデックスrefIdxLX、予測ベクトルインデックスmvp_LX_idx、差分ベクトルmvdLX、予測モードpredMode、及びマージインデックスmerge_idx等の符号がある。
【0198】
エントロピー符号化部104は、入力された量子化係数と符号化パラメータをエントロピー符号化して符号化ストリームTeを生成し、生成した符号化ストリームTeを外部に出力する。
【0199】
逆量子化・逆DCT部105は、DCT・量子化部103から入力された量子化係数を逆量子化してDCT係数を求める。逆量子化・逆DCT部105は、求めたDCT係数について逆DCTを行い、残差信号を算出する。逆量子化・逆DCT部105は、算出した残差信号を加算部106に出力する。
【0200】
加算部106は、予測画像生成部101から入力されたPUの予測画像Pの信号値と逆量子化・逆DCT部105から入力された残差信号の信号値を画素毎に加算して、復号画像を生成する。加算部106は、生成した復号画像を参照ピクチャメモリ109に記憶する。
【0201】
ループフィルタ107は加算部106が生成した復号画像に対し、デブロッキングフィルタ、サンプル適応オフセット(SAO)、適応ループフィルタ(ALF)を施す。
【0202】
予測パラメータメモリ108は、符号化パラメータ決定部110が生成した予測パラメータを、符号化対象のピクチャ及びCU毎に予め定めた位置に記憶する。
【0203】
参照ピクチャメモリ109は、ループフィルタ107が生成した復号画像を、符号化対象のピクチャ及びCU毎に予め定めた位置に記憶する。
【0204】
符号化パラメータ決定部110は、符号化パラメータの複数のセットのうち、1つのセットを選択する。符号化パラメータとは、上述した予測パラメータやこの予測パラメータに関連して生成される符号化の対象となるパラメータである。予測画像生成部101は、これらの符号化パラメータのセットの各々を用いてPUの予測画像Pを生成する。
【0205】
符号化パラメータ決定部110は、複数のセットの各々について情報量の大きさと符号化誤差を示すコスト値を算出する。コスト値は、例えば、符号量と二乗誤差に係数λを乗じた値との和である。符号量は、量子化誤差と符号化パラメータをエントロピー符号化して得られる符号化ストリームTeの情報量である。二乗誤差は、減算部102において算出された残差信号の残差値の二乗値についての画素間の総和である。係数λは、予め設定されたゼロよりも大きい実数である。符号化パラメータ決定部110は、算出したコスト値が最小となる符号化パラメータのセットを選択する。これにより、エントロピー符号化部104は、選択した符号化パラメータのセットを符号化ストリームTeとして外部に出力し、選択されなかった符号化パラメータのセットを出力しない。符号化パラメータ決定部110は決定した符号化パラメータを予測パラメータメモリ108に記憶する。
【0206】
予測パラメータ符号化部111は、符号化パラメータ決定部110から入力されたパラメータから、符号化するための形式を導出し、エントロピー符号化部104に出力する。符号化するための形式の導出とは、例えば動きベクトルと予測ベクトルから差分ベクトルを導出することである。また予測パラメータ符号化部111は、符号化パラメータ決定部110から入力されたパラメータから予測画像を生成するために必要なパラメータを導出し、予測画像生成部101に出力する。予測画像を生成するために必要なパラメータとは、例えばサブブロック単位の動きベクトルである。
【0207】
インター予測パラメータ符号化部112は、符号化パラメータ決定部110から入力された予測パラメータに基づいて、差分ベクトルのようなインター予測パラメータを導出する。インター予測パラメータ符号化部112は、予測画像生成部101に出力する予測画像の生成に必要なパラメータを導出する構成として、インター予測パラメータ復号部303(
図5等、参照)がインター予測パラメータを導出する構成と一部同一の構成を含む。インター予測パラメータ符号化部112の構成については、後述する。
【0208】
イントラ予測パラメータ符号化部113は、符号化パラメータ決定部110から入力されたイントラ予測モードIntraPredModeから、符号化するための形式(例えばMPM_idx、rem_intra_luma_pred_mode等)を導出する。
【0209】
(インター予測パラメータ符号化部の構成)
次に、インター予測パラメータ符号化部112の構成について説明する。インター予測パラメータ符号化部112は、
図12のインター予測パラメータ復号部303に対応する手段であり、
図10に構成を示す。
【0210】
インター予測パラメータ符号化部112は、インター予測パラメータ符号化制御部1121、AMVP予測パラメータ導出部1122、減算部1123、サブブロック予測パラメータ導出部1125、及び図示しない、分割モード導出部、マージフラグ導出部、インター予測識別子導出部、参照ピクチャインデックス導出部、ベクトル差分導出部などを含んで構成される。分割モード導出部、マージフラグ導出部、インター予測識別子導出部、参照ピクチャインデックス導出部、ベクトル差分導出部は各々、PU分割モードpart_mode、マージフラグmerge_flag、インター予測識別子inter_pred_idc、参照ピクチャインデックスrefIdxLX、差分ベクトルmvdLXを導出する。インター予測パラメータ符号化部112は、動きベクトル(mvLX、subMvLX)と参照ピクチャインデックスrefIdxLX、PU分割モードpart_mode、インター予測識別子inter_pred_idc、あるいはこれらを示す情報を予測画像生成部101に出力する。またインター予測パラメータ符号化部112は、PU分割モードpart_mode、マージフラグmerge_flag、マージインデックスmerge_idx、インター予測識別子inter_pred_idc、参照ピクチャインデックスrefIdxLX、予測ベクトルインデックスmvp_LX_idx、差分ベクトルmvdLX、サブブロック予測モードフラグsubPbMotionFlagをエントロピー符号化部104に出力する。
【0211】
インター予測パラメータ符号化制御部1121は、マージインデックス導出部11211とベクトル候補インデックス導出部11212を含む。マージインデックス導出部11211は、符号化パラメータ決定部110から入力された動きベクトルと参照ピクチャインデックスを、予測パラメータメモリ108から読み出したマージ候補のPUが持つ動きベクトルと参照ピクチャインデックスと比較して、マージインデックスmerge_idxを導出し、エントロピー符号化部104に出力する。マージ候補とは、符号化対象となる符号化対象CUから予め定めた範囲にある参照PU(例えば、符号化対象ブロックの左下端、左上端、右上端に接する参照PU)であって、符号化処理が完了したPUである。ベクトル候補インデックス導出部11212は予測ベクトルインデックスmvp_LX_idxを導出する。
【0212】
サブブロック予測パラメータ導出部1125には、符号化パラメータ決定部110がサブブロック予測モードの使用を決定した場合、subPbMotionFlagの値に従って、空間サブブロック予測、時間サブブロック予測、アフィン予測、マッチング予測のいずれかのサブブロック予測の動きベクトルと参照ピクチャインデックスを導出する。動きベクトルと参照ピクチャインデックスは、画像復号装置の説明で述べたように、隣接PU、参照ピクチャブロック等の動きベクトルや参照ピクチャインデックスを予測パラメータメモリ108から読み出し、導出する。
【0213】
AMVP予測パラメータ導出部1122は、上述のAMVP予測パラメータ導出部3032(
図12参照)と同様な構成を有する。
【0214】
すなわち、予測モードpredModeがインター予測モードを示す場合、AMVP予測パラメータ導出部1122には符号化パラメータ決定部110から動きベクトルmvLXが入力される。AMVP予測パラメータ導出部1122は、入力された動きベクトルmvLXに基づいて予測ベクトルmvpLXを導出する。AMVP予測パラメータ導出部1122は、導出した予測ベクトルmvpLXを減算部1123に出力する。なお、参照ピクチャインデックスrefIdx及び予測ベクトルインデックスmvp_LX_idxは、エントロピー符号化部104に出力される。
【0215】
減算部1123は、符号化パラメータ決定部110から入力された動きベクトルmvLXから、AMVP予測パラメータ導出部1122から入力された予測ベクトルmvpLXを減算して差分ベクトルmvdLXを生成する。差分ベクトルmvdLXはエントロピー符号化部104に出力される。
【0216】
なお、上述した実施形態における画像符号化装置11、画像復号装置31の一部、例えば、エントロピー復号部301、予測パラメータ復号部302、ループフィルタ305、予測画像生成部308、逆量子化・逆DCT部311、加算部312、予測画像生成部101、減算部102、DCT・量子化部103、エントロピー符号化部104、逆量子化・逆DCT部105、ループフィルタ107、符号化パラメータ決定部110、予測パラメータ符号化部111をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、画像符号化装置11、画像復号装置31のいずれかに内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0217】
〔実施形態2〕
上述したように、実施形態1では、パターンマッチベクトルの導出処理において、サブブロック単位で動きベクトルを導出している。また、サブブロック単位で、テンプレートマッチングまたはバイラテラルマッチングを用いている(
図17のステップS1055~S1060参照)。しかし、対象ブロックの上端、または左端に接していないサブブロックはテンプレートを取得することができないため、テンプレートマッチングを行うことができない。具体的に、
図20を参照して説明する。
図20は、サブブロックにおいてテンプレートマッチングを行う場合の弊害を示す図である。
図20に示すように、対象ブロックに含まれるサブブロックのうち、対象ブロックの上端、または左端に接していないサブブロックは、対象ブロックの上隣接領域または左隣接領域と接していないため、当該領域からテンプレートを取得することができない。よって、これらのサブブロックにおいては、ブロックレベルの動きベクトルをそのまま用いることになり、符号化効率が低下してしまう。
【0218】
そこで、本実施形態では、テンプレートが取得できないサブブロックについて、以下の処理を行うことにより、符号化効率の低下を防止している。なお、上述したように、パターンマッチ導出処理は、マッチング予測部30373が実行する。
【0219】
(実施形態2-1)
本実施形態では、マッチング予測部30373は、fruc_merge_idxが2の場合、すなわちテンプレートマッチングを示している場合、ブロックレベルではテンプレートマッチングを行い、サブブロックレベルではバイラテラルマッチングを行う。これにより、テンプレートを取得できず、テンプレートマッチングが行えないということを回避することができ、符号化効率の低下を防止することができる。
【0220】
図21を参照して、本実施形態におけるパターンマッチベクトル導出処理の流れを説明する。
図21は、本実施形態におけるパターンマッチベクトル導出処理の流れを示すフローチャート図である。なお、上述した
図17のフローチャート図と同様の処理を行うステップについては、同様のステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0221】
図21に示すように、ブロックレベルにおける処理は、
図17に示したパターンマッチベクトル導出処理と同様である。本実施形態では、、ブロックサーチにおいては、マッチングモードを示すパラメータを参照して、マッチングの種別を判別する。具体的には、fruc_merge_idx(fruc_merge_param)の値に応じてテンプレートマッチングもしくはバイラテラルマッチングを行う。さらに、サブブロックのループに入った後(S1055)、マッチング予測部30373は、マッチングモードを示すパラメータを参照せず(fruc_merge_idx==1か否かの判断を行わず)、ステップS1058に進む。すなわち、
図17のステップS1055~1057の処理を行わずにステップS1058に進む。そして、サブブロックレベルでは、バイラテラルマッチングを行う。
【0222】
上記構成は、ブロックサーチにおいてテンプレートマッチングによる局所的探索を行い、サブブロックサーチにおいてバイラテラルマッチングを用いて局所的探索を行う動作を含む。
【0223】
上記構成のブロックサーチは、バイラテラルマッチングもしくはテンプレートマッチングによる局所的探索を行うことにより動きベクトルを探索するものであり、サブブロックサーチは、ブロックサーチでテンプレートマッチングによる局所的探索を行ったかバイラテラルマッチングによる局所的探索を行ったかにかかわらず、バイラテラルマッチングのみを用いてマッチング処理を行うことを特徴とする。
【0224】
上記構成のブロックサーチは、マッチングモードを示すパラメータに基づいて、バイラテラルマッチングもしくはテンプレートマッチングによる局所的探索を行うことにより動きベクトルを探索するものであり、サブブロックサーチは、マッチングモードを示すパラメータによらずバイラテラルマッチングを用いてマッチング処理を行う。
【0225】
(他の構成)
上述した実施形態では、マッチング予測部30373は、サブロックレベルでは、全てバイラテラルマッチングを行う構成とした。これに限られず、例えば、バイラテラルマッチングを行うことにより、予測精度が向上すると推定された場合のみ、バイラテラルマッチングを行う構成であってもよい。
【0226】
図22を参照して、上記の構成におけるパターンマッチベクトル導出処理の流れを説明する。
図22は、バイラテラルマッチングの性能推定を行う場合のパターンマッチベクトル導出処理の流れを示すフローチャート図である。なお、上述した
図17のフローチャート図と同様の処理を行うステップについては、同様のステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0227】
図22に示すように、ブロックレベルにおける処理は、
図17に示したパターンマッチベクトル導出処理と同様である。本実施形態では、サブブロックレベルにおける処理において、マッチング予測部30373は、サブブロックのループに入る前に、バイラテラルマッチングの性能推定を行い、bilateralAvailableの値をセットする(S2201)。そして、バイラテラルマッチングを用いることで性能が向上する、すなわちバイラテラルマッチングを用いることにより予測精度が向上すると推定された場合(S2202でYES)、サブブロックのループに入り、ステップS1055以降の処理を実行する。なお、ステップS2202において、バイラテラルマッチングにおいて性能が出ないと判定された場合(S2202でNO)、ブロックレベルで導出された動きベクトルをそのまま用いる。
【0228】
(バイラテラルマッチングの性能推定方法)
バイラテラルマッチングの性能推定は、例えば、以下の方法により行うことができる。なお、バイラテラルマッチングの性能推定はマッチング予測部30373によって実行される。
【0229】
(推定方法1)
対象ピクチャとのピクチャ間距離の絶対値が等しい2枚の参照ピクチャが存在する場合、バイラテラルマッチングを用いることで性能が向上すると推定する。すなわち、対象ピクチャの2枚の参照ピクチャのピクチャ間距離TD0とTD1とが1:1になる場合、バイラテラルマッチングを用いることで性能が向上すると推定する。これは、以下の理由による。TD0とTD1とが異なる場合、対象ピクチャと2枚の参照ピクチャとの差分の大きさが異なることになる。これにより、探索精度に悪影響を与えてしまう。一方、TD0とTD1との絶対値が同じであれば、上記のような差分は生じず、探索精度に悪影響を与えることはない。
【0230】
なお、ピクチャ間距離TD0、TD1は対象ピクチャと参照ピクチャとのピクチャ順序番号POCの差分として導出すればよい。具体的には、次式の通りである。
【0231】
TD0 = POC(CurrPic) - POC(Ref0)
TD1 = POC(CurrPic) - POC(Ref1)
そして、ピクチャ間距離TD0、TD1が1:1、つまり、絶対値が一致していれば、バイラテラルマッチングを用いることで性能が向上すると推定する。すなわち、以下の式の通りである。ここで、bilateralAvailableはバイラテラルマッチングで性能が向上すると推定されたか否かを示すフラグである。バイラテラルマッチングで性能が向上すると推定された場合には、bilateralAvailableは真(true)、推定されなかった場合には、bilateralAvailableは偽(false)となる。
【0232】
|TD0| == |TD1| ? bilateralAvailable = true : bilateralAvailable = false
(推定方法2)
対象ピクチャとのピクチャ間距離TD0、TD1が閾値より小さい場合、性能が向上すると推定してもよい。ピクチャ間距離が大きくなるほどピクチャ間の差分が大きくなり、探索精度が悪くなる。そこで、ピクチャ間距離が閾値よりも小さい場合のみ、バイラテラルマッチングを用いることで性能が向上すると推定することにより、探索制度が悪い場合を除くことができる。
【0233】
具体的には、以下の式により判定することできる。
【0234】
(|TDO| <= TH && |TD1| <= TH) ?
bilateralAvailable = true : bilateralAvailable = false
TH:閾値。例えば、閾値として「2」を設定することができる。
【0235】
(推定方法3)
上述した推定方法1と推定方法2とを組み合わせてもよい。すなわち、ピクチャ間距離TD0、TD1の絶対値が一致しており、かつ、閾値よりも小さい場合に、バイラテラルマッチングを用いることで性能が向上すると推定してもよい。
【0236】
具体的には、以下の式により判定することができる。
【0237】
(|TD0| == |TD1| && |TDO| <= TH) ?
bilateralAvailable = true : bilateralAvailable = false
なお、閾値THと比較するのはTD0ではなくTD1でもかまわない。
【0238】
(実施形態2-2)
本実施形態では、マッチング予測部30373は、対象ブロックにおけるサブブロックのうち、対象ブロックの上端、または左端に接していないサブブロックについて、テンプレートマッチング以外の方法で動きベクトルを導出する。上述したように、対象ブロックの上端、または左端に接していないサブブロックは、テンプレートを取得することができないため、テンプレートマッチング以外の方法を用いることにより、適切に符号化を行うことができ、符号化効率の低下を防止することができる。
【0239】
(バイラテラルマッチングを用いる方法)
まず、対象ブロックの上端、または左端に接していないサブブロックについては、バイラテラルマッチングを用いる方法が考えられる。すなわち、
図23に示すように、マッチングモードを示すパラメータfruc_merge_idxが2の場合、すなわちテンプレートマッチングを示している場合、サブブロックのうち、対象ブロックの上端、または左端に接していないサブブロックについてはテンプレートマッチングを行い、それ以外のサブブロックについては、バイラテラルマッチングを行う。
【0240】
図24を参照して、具体的なパターンマッチング導出処理の流れを説明する。
図24は、サブブロックのブロックにおける位置に応じて、動きベクトル導出方法をパターンマッチングかバイラテラルマッチングに決定する処理の流れを示すフローチャート図である。なお、上述した
図17のフローチャート図と同様の処理を行うステップについては、同様のステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0241】
図24に示すように、ブロックレベルにおける処理は、
図17に示したパターンマッチベクトル導出処理と同様である。本実施形態では、サブブロックのループに入った後(S1055)、マッチング予測部30373は、ステップS1056cにおいて、fruc_merge_idx==1か否かの判断に加え、x != 0 && y != 0の判断を行う。すなわち、当該サブブロックの位置が、対象ブロックの上端または左端と接していないか否かの判断を行う。そして、サブブロックの位置が、対象ブロックの上端または左端と接している場合(S1056cでNO)、ステップS1057でテンプレートの取得を行い、ステップS1058、ステップS1059でテンプレートマッチングによって動きベクトルを導出する。そうではなく、対象ブロックの上端または左端と接していない場合(S1056cでYES)、ステップS1058に進み、バイラテラルマッチングを行う。
【0242】
本実施形態では、サブブロックサーチにおいて、導出対象となるサブブロックのブロックにおける位置に応じて、上記動きベクトルの導出方法を選択する。すなわち、ブロックにおける位置に応じて上記動きベクトルの導出方法を異ならせる。
【0243】
(周辺サブブロックの動きベクトルを用いる方法)
対象ブロックの上端、または左端に接していないサブブロックについては、当該サブブロックの周辺サブブロックの動きベクトルを用いる方法も考えられる。
【0244】
図25を参照して、具体的なパターンマッチング導出処理の流れを説明する。
図25は、サブブロックの位置に応じて、周辺サブブロックの動きベクトルを用いる処理の流れを示すフローチャート図である。なお、上述した
図17のフローチャート図と同様の処理を行うステップについては、同様のステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0245】
図25に示すように、ブロックレベルにおける処理は、
図17に示したパターンマッチベクトル導出処理と同様である。本実施形態では、サブブロックのループに入った後(S1055)、マッチング予測部30373は、ステップS1056において、fruc_merge_idx==1か否かの判断を行う。そして、fruc_merge_idx==1が真の場合(S1056でYES)、ブロックレベルで導出した動きベクトルを用いて、ステップS1058、ステップS1059においてバイラテラルマッチング用の動きベクトルを導出する。一方、fruc_merge_idx==1が偽の場合(S1056でNO)、ステップS2501において、x == 0 ||y == 0の判断を行う。すなわち、当該サブブロックが対象ブロックの上端または左端に接しているか否かの判断を行う。x == 0 || y == 0が真の場合(S2501でYES)、すなわち、当該サブブロックが対象ブロックの上端または左端に接している場合、ステップS1057でテンプレートの取得を行い、ステップS1058、ステップS1059でテンプレートマッチング用の動きベクトルを導出する。一方、x == 0 || y == 0が偽の場合(S2501でNO)、すなわち、当該サブブロックが対象ブロックの上端または左端に接していない場合、ステップS2502で周辺ブロックの動きベクトルを用いて当該サブブロックの動きベクトルの導出を行う。
【0246】
図26を参照して、周辺ブロックの動きベクトルを用いた導出方法について説明する。
図26は、周辺ブロックの動きベクトルを用いて対象サブロックの動きベクトルを導出する方法の例を示す図である。
【0247】
図26の(a)は、対象サブブロックの左に隣接しているサブブロックの動きベクトルを用いる例を示す。
図26の(a)に示すように、周辺サブブロックとして対象サブブロックの左に隣接しているサブブロックの動きベクトルを用いることができる。
【0248】
図26の(b)は、対象サブブロックの上に隣接しているサブブロックの動きベクトルを用いる例を示す。
図26の(b)に示すように、周辺サブブロックとして対象サブブロックの上に隣接しているサブブロックの動きベクトルを用いることができる。
【0249】
図26の(c)は、対象サブブロックの左に隣接しているサブブロックの動きベクトルと対象サブブロックの上に隣接しているサブブロックの動きベクトルとを用いる例を示す。
図26の(c)に示すように、周辺サブブロックとして対象サブブロックの左に隣接しているサブブロックの動きベクトルと、対象サブブロックの上に隣接しているサブブロックの動きベクトルとの平均を対象サブブロックの動きベクトルとすることができる。
【0250】
図26の(d)は、対象サブブロックの左に隣接しているサブブロックの動きベクトルと対象サブブロックの上に隣接しているサブブロックの動きベクトルと対象サブブロックの右上のサブブロックの動きベクトルとを用いる例を示す。
図26の(d)に示すように、周辺サブブロックとして対象サブブロックの左に隣接しているサブブロックの動きベクトルと、対象サブブロックの上に隣接しているサブブロックの動きベクトルと、対象サブブロックの右上のサブブロックの動きベクトルとの中央値を対象サブブロックの動きベクトルとすることができる。具体的には、対象サブブロックの動きベクトルmvは、以下の式で導出することができる。
【0251】
mv.x = MEDIAN(mvA.x, mvB.x, mvC.x)
mv.y = MEDIAN(mvA.y, mvB.y, mvC.y)
ここで、mvA:左のサブブロックの動きベクトル、mvB:上のサブブロックの動きベクトル、mvC:右上のサブブロックの動きベクトル、MEDIAN(a,b,c):引数a,b,cの中央値を返す、という意味である。
【0252】
なお、対象サブブロックの右上に、動きベクトルを取得可能なサブブロックがない場合は、当該サブブロックの動きベクトルを「0」として導出してもよいし、残りの2つのサブブロックのうちの何れかのサブブロックの動きベクトルを2つ用意することにより中央値を導出してもよい。
【0253】
図26の(e)は、対象サブブロックの左に隣接しているサブブロックの動きベクトルと対象サブブロックの上に隣接しているサブブロックの動きベクトルと対象サブブロックが属する対象ブロックのブロックレベルの動きベクトルとを用いる例を示す。
図26の(e)に示すように、周辺サブブロックとして対象サブブロックの左に隣接しているサブブロックの動きベクトルと、対象サブブロックの上に隣接しているサブブロックの動きベクトルと、ブロックレベルの動きベクトルとの中央値を対象サブブロックの動きベクトルとすることができる。具体的には、対象サブブロックの動きベクトルmvは、以下の式により導出することができる。
【0254】
mv.x = MEDIAN(mvA.x, mvB.x, blkMv.x)
mv.y = MEDIAN(mvA.y, mvB.y, blkMv.y)
ここで、mvA:左のサブブロックの動きベクトル、mvB:上のサブブロックの動きベクトル、blkMv:ブロックレベルの動きベクトル、MEDIAN(a,b,c):引数a,b,cの中央値を返す、という意味である。
【0255】
〔実施形態3〕
(実施形態3-1)
まず、
図27、
図28を参照して、
図16のステップS123の予測ベクトル候補pmvCand導出処理の詳細を説明する。
図27は、予測ベクトル候補導出処理の流れを示すフローチャート図である。
図28は、ベクトル候補の導出処理を説明するための図である。
図27に示すように、予測ベクトル候補導出処理では、ベクトル候補導出部3033が、まず、ステップS1231において、対象ブロックの左隣接領域から左隣接ベクトル候補mvLXAを導出する。具体的には、
図28に示す左隣接領域の候補1または候補2の動きベクトルが左隣接ベクトル候補mvLXAとなる。なお、図中の数字はスキャン順を示す。左隣接ベクトル候補mvLXAの導出処理では、対象ブロックの左隣接領域を、下側から上側にスキャンし、対象ブロックの参照画像と同一の参照画像に対する動きベクトルを予測ベクトル候補とする。
【0256】
次に、ステップS1232において、ベクトル候補導出部3033は、対象ブロックの上隣接領域から上隣接ベクトル候補mvLXBを導出する。具体的には、
図28に示す上隣接領域の候補1、候補2、または候補3の動きベクトルが上隣接ベクトル候補mvLXBとなる。上隣接ベクトル候補mvLXBの導出処理では、対象ブロックの上隣接領域を、右側から左側にスキャンし、対象ブロックの参照画像と同一の参照画像に対する動きベクトルを予測ベクトル候補とする。
【0257】
次に、ステップS1233において、ベクトル候補導出部3033は、対象ブロックが含まれる現画像とは時間的に異なる参照画像(Collocated picture)における同一位置のブロックから時間ベクトル候補mvLXColを導出する。具体的には、
図28に示す候補1または候補2の動きベクトルが時間ベクトル候補mvLXColとなる。時間ベクトル候補mvLXColの導出処理では、参照画像上の対象ブロックと同一位置のブロックを右下側から左上側にスキャンし、対象ブロックの参照画像と同一の参照画像に対する動きベクトルを予測ベクトル候補とする。
【0258】
次に、ステップS1234において、ベクトル候補導出部3033は、パターンマッチングを用いて、パターンマッチベクトル候補を導出する。
【0259】
そして、ベクトル候補導出部3033は、ステップS1235において、ステップS1231~S1234で導出したベクトル候補から予測ベクトル候補リストを作成する。
【0260】
次に、
図29を参照して、ステップS1234におけるパターンマッチベクトル候補導出処理の詳細を説明する。
図29は、パターンマッチベクトル候補導出処理の流れを示すフローチャート図である。
【0261】
図29に示すように、パターンマッチベクトル候補導出処理において、ベクトル候補導出部3033は、まずステップ12341でテンプレートを取得する。次に、ステップS12342で、ブロックレベルの初期ベクトルサーチを行う。最後に、ステップS12343で、ブロックレベルのローカルサーチを行う。なお、初期ベクトルサーチ、およびローカルサーチは、
図17の説明において上述したサーチと同様である。
【0262】
次に、
図30を参照して、予測ベクトル候補リストの作成処理について説明する。
図30は、予測ベクトル候補リストの作成処理を行うための疑似コードの例を示す図である。
【0263】
図30において、mvpListLXは、予測べクトル候補リストを示す。mvLXPMは、パターンンマッチベクトル候補を示す。availableFlagLXAは、mvLXAが導出できたか否かを示すフラグである。availableFlagLXBは、mvLXBが導出できたか否かを示すフラグである。availableFlagLXColは、mvLXColが導出できたか否かを示すフラグである。availableFlagLXPMは、mvLXPMが導出できたか否かを示すフラグである。
【0264】
図30に示すように、予測ベクトル候補リストの作成では、ベクトル候補導出部3033は、まず、左隣接ベクトル候補が導出できていれば(if( availableFlagLXA ))、予測ベクトル候補リストに当該左隣接ベクトル候補を格納する(mvpListLX[ i++ ] = mvLXA)。次に、上隣接ベクトル候補が導出できており、かつ、導出できた上隣接ベクトル候補が左隣接ベクトル候補と異なる場合(if( availableFlagLXB && ( mvLXA != mvLXB ) ))、当該上隣接ベクトル候補を予測ベクトル候補リストに格納する(mvpListLX[ i++ ] =mvLXB)。
【0265】
一方、左隣接ベクトル候補が導出できておらず、上隣接ベクトル候補が導出できていれば(else if( availableFlagLXB ))、当該上隣接ベクトル候補を予測ベクトル候補リストに格納する(mvpListLX[ i++ ] = mvLXB)。
【0266】
また、時間ベクトル候補が導出できていれば(availableFlagLXCol)、当該時間ベクトル候補を予測ベクトル候補リストに格納する(mvpListLX[ i++ ] = mvLXCol)。なお、本実施形態では、予測ベクトル候補リストの最大サイズを「2」としているため、予測ベクトル候補リストのサイズが最大サイズ「2」より小さい場合に(if( i<2 ))は、時間ベクトル候補を予測ベクトル候補リストに格納する。
【0267】
次に、パターンマッチベクトル候補が導出できており、かつ予測ベクトル候補リストの先頭がパターンマッチベクトル候補と異なる場合(availableFlagLXPM && mvpListLX[0] != mvLXPM)、予測ベクトル候補リストの全要素を1つずつ後ろに下げ、最大サイズ(本実施形態では「2」)を超える分は削除し、予測ベクトル候補リストの先頭にパターンマッチベクトル候補を格納する(mvpListLX[ 0 ] = mvLXPM)。
【0268】
最後に、予測ベクトル候補リストの最大サイズまで予測ベクトル候補が格納されていない場合、当該位置にゼロベクトル(0、0)を格納する。
【0269】
(実施形態3-2)
上述した実施形態3-1では、予測ベクトル候補リストの作成において、左隣接ベクトル候補、上隣接ベクトル候補、および時間ベクトル候補を予測ベクトル候補をとするとともに、パターンマッチベクトル候補を予測ベクトル候補としている。そして、左隣接ベクトル候補、上隣接ベクトル候補、および時間ベクトル候補を導出するために参照するブロックと、パターンマッチベクトル候補の導出時にその初期ベクトルを導出するために参照するブロックとは同一である。
図31の(a)、(b)に示すように、左隣接ベクトル候補mvLXAを導出すためのブロック、上隣接ベクトル候補mvLXBを導出すためのブロック、時間ベクトル候補mvLXColを導出すためのブロックは、すべて、パターンマッチベクトル導出時に初期ベクトルを導出するために用いるブロックである。
【0270】
よって、パターンマッチベクトル候補導出時の初期ベクトルと同一の予測ベクトル候補が、左隣接ベクトル候補、右隣接ベクトル候補、および時間ベクトル候補の何れかとして、予測ベクトル候補リストに格納される場合がある。
【0271】
パターンマッチベクトル候補の導出時に、初期ベクトルを修正してパターンマッチベクトル候補を導出し、予測ベクトル候補リストに格納しているにもかかわらず、当該初期ベクトルを予測ベクトル候補リストに格納するのは無駄である。
【0272】
そこで、本実施形態では、パターンマッチベクトル候補導出時に初期ベクトルとして選択された動きベクトルは予測ベクトル候補リストに格納しない。これにより、予測ベクトル候補リストに、パターンマッチベクトル候補と類似のベクトル候補が格納されなくなり、符号化効率を改善することができる。
【0273】
図32、
図33を参照して、本実施形態の具体的な処理について説明する。
図32は、予測ベクトル候補導出処理の流れを示すフローチャート図である。
図33は、予測ベクトル候補リストの作成処理を行うための疑似コードの例を示す図である。なお、
図27で説明したステップにおける処理と同様の処理を行うステップについては、同様のステップ番号を付し、その説明は省略する。
【0274】
図32に示すように、本実施形態における予測ベクトル候補導出処理では、ベクトル候補導出部3033は、
図27に示した処理において、ステップS1234のパターンマッチベクトル候補導出処理を最初に行い、続いて、ステップS1231、S1232、S1233、S1235aの順に行う。また、ステップS1234のパターンマッチベクトル候補導出処理において、初期ベクトルstartMvを保存している。また、ステップS1235aの予測ベクトル候補リスト作成処理では、初期ベクトルstartMvと異なるか否かとの判断も用いて予測ベクトル候補リストの作成を行っている。
図33を参照して、具体的な予測ベクトル候補リストの作成処理について説明する。
【0275】
図33に示すように、本実施形態における予測ベクトル候補リストの作成では、ベクトル候補導出部3033は、まず、パターンマッチベクトル候補が導出できていれば(if( availableFlagLXPM))、予測ベクトル候補リストに当該パターンマッチベクトル候補を格納する(mvpListLX[i++] = mvLXPM)。
【0276】
また、「左隣接ベクトル候補が導出できており」、かつ、「パターンマッチベクトル候補が導出できないてない、または、左隣接ベクトル候補が初期ベクトルと異なる」場合(if( availableFlagLXA && (!availableFlagLXPM | | mvLXA != startMv) ))、左隣接ベクトル候補を予測ベクトル候補リストに格納する(mvpListLX[ i++ ] = mvLXA)。さらに、「上隣接ベクトル候補が導出できており」、かつ、「上隣接ベクトル候補と左隣接ベクトル候補とが異なり」、かつ、「パターンマッチベクトル候補が導出できないてない、または、上隣接ベクトル候補が初期ベクトルと異なる」場合(if( availableFlagLXB && ( mvLXA != mvLXB ) && (!availableFlagLXPM | | mvLXB != startMv) ))、上隣接ベクトル候補を予測ベクトル候補リストに格納する(mvpListLX[ i++ ] = mvLXB)。
【0277】
一方、「左隣接ベクトル候補が導出できておらず」、かつ、「上隣接ベクトル候補が導出できており」、かつ、「パターンマッチベクトル候補が導出できないてない、または、上隣接ベクトル候補が初期ベクトルと異なる」場合(else if( availableFlagLXB && (!availableFlagLXPM | | mvLXB != startMv) ))、上隣接ベクトル候補を予測ベクトル候補リストに格納する(mvpListLX[ i++ ] = mvLXB)。
【0278】
また、「時間ベクトル候補が導出できており」、かつ、「パターンマッチベクトル候補が導出できないてない、または、時間ベクトル候補が初期ベクトルと異なる」場合(if( availableFlagLXCol && (!availableFlagLXPM | | mvLXCol != startMv) ))、時間ベクトル候補を予測ベクトル候補リストに格納する(mvpListLX[ i++ ] = mvLXCol)。なお、本実施形態では、予測ベクトル候補リストの最大サイズを「2」としているため、予測ベクトル候補リストのサイズが最大サイズ「2」より小さい場合に(if( i<2 ))、時間ベクトルを予測ベクトル候補リストに格納する。
【0279】
最後に、予測ベクトル候補リストの最大サイズまで予測ベクトル候補が格納されていない場合、当該位置にゼロベクトル(0、0)を格納する。
【0280】
(実施形態3-3)
上述した実施形態3-1では、予測ベクトル候補リストを作成するために、予測ベクトルとして使用されるか否かに関わらず、常にパターンマッチベクトル候補を導出しなければならない。予測ベクトル候補リストの先頭がパターンマッチベクトル候補と一致しているか否かを判定して、予測ベクトル候補リストの予測ベクトル候補を後ろに1つずつずらすかを決めているためである。
【0281】
そこで、本実施形態では、パターンマッチベクトル候補が、予測ベクトル候補リストの先頭の値と一致している否かの判定を行わず、予測ベクトル候補リストの先頭にパターンマッチベクトル候補を格納する。そして、予測ベクトルとしてパターンマッチベクトル候補が使用されない場合、パターンマッチベクトル候補の導出処理を行わない。
【0282】
これにより、予測ベクトル候補リストの先頭のベクトルを用いない場合、換言すれば、パターンマッチベクトル候補が予測ベクトルとして使用されない場合、パターンマッチベクトル候補の導出処理を省略できるため、処理量が低減することができる。
【0283】
図34、
図35を参照して、本実施形態の具体的な処理について説明する。
図34は、予測ベクトル候補導出処理の流れを示すフローチャート図である。
図35は、予測ベクトル候補リストの作成処理を行うための疑似コードの例を示す図である。なお、
図27で説明したステップにおける処理と同様の処理を行うステップについては、同様のステップ番号を付し、その説明は省略する。
【0284】
図34に示すように、本実施形態における予測ベクトル候補導出処理では、ベクトル候補導出部3033は、まず、ステップS3401において、予測ベクトルが予測ベクトル候補リストの先頭であるか否か(mvp_LX_idx==0か否か)を判定する。予測ベクトル候補リストの先頭である場合(S3401でYES)、ステップS1234に進み、パターンマッチベクトル候補導出処理に進む。その後、ステップS1235に進み、予測ベクトル候補リスト作成処理に進む。
【0285】
一方、予測ベクトル候補リストの先頭でない場合(S3401でNO)、ステップS1231、S1232、S1233、S1236に進む。ステップS1236では、ゼロベクトル候補の導出処理を行う。その後、ステップS1235に進み、予測ベクトル候補リスト作成処理に進む(この場合、予測ベクトル候補リストの先頭は空である)。
【0286】
図35を参照して、具体的な予測ベクトル候補リストの作成処理について説明する。
図35に示すように、本実施形態における予測ベクトル候補リストの作成では、ベクトル候補導出部3033は、まず、予測ベクトルが予測ベクトル候補リストの先頭の場合(if(mvp_LX_idx==0))、予測ベクトル候補リスト先頭に当該パターンマッチベクトル候補を格納する(mvpListLX[0] = mvLXPM)。
【0287】
一方、予測ベクトルが予測ベクトル候補リストの先頭ではない場合、
図30に示す疑似コード例と同様に、左隣接ベクトル候補、上隣接ベクトル候補、および時間ベクトル候補が導出できているか否かにより、予測ベクトル候補リストを作成する。
【0288】
(実施形態3-4)
上述した実施形態3-3では、パターンマッチベクトル候補を常に予測ベクトル候補リストの先頭に格納している。しかし、テンプレートの取得ができない場合など、パターンマッチベクトル候補の導出が出来ない場合であっても、常に予測ベクトル候補リストの先頭をパターンマッチベクトル候補用に空けておくのは無駄である。
【0289】
そこで、本実施形態では、パターンマッチベクトル候補が導出可能か否か判断し、導出可能な場合は、実施形態3-3に示すように、予測ベクトル候補リストの先頭にパターンマッチベクトル候補を格納し、パターンマッチベクトル候補の導出が不可能の場合は、予測ベクトル候補リストの先頭に、他の予測ベクトル候補を格納する。
【0290】
これにより、パターンマッチベクトル候補を導出できないにもかかわらず予測ベクトル候補リストの先頭を空けておくことがなくなり、予測精度を向上させ、符号化効率を向上させることができる。
【0291】
図36、
図37を参照して、本実施形態の具体的な処理について説明する。
図36は、予測ベクトル候補導出処理の流れを示すフローチャート図である。
図37は、予測ベクトル候補リストの作成処理を行うための疑似コードの例を示す図である。なお、
図27で説明したステップにおける処理と同様の処理を行うステップについては、同様のステップ番号を付し、その説明は省略する。
【0292】
図36に示すように、本実施形態における予測ベクトル候補導出処理では、ベクトル候補導出部3033は、まず、ステップS3601において、パターンマッチベクトル候補の導出が可能か否かを判断する。そして、可能であればパターンマッチベクトル候補導出可能フラグPMMVCandAvailableをtrueに設定する。また、不可能であればfalseに設定する。
【0293】
次に、ステップS3602において、ベクトル候補導出部3033は、パターンマッチベクトル候補の導出が可能(PMMCandAvailable:true)であり、かつ、予測ベクトルが予測ベクトル候補リストの先頭の場合(mvp_LX_idc==0)か否かを判断する。パターンマッチベクトル候補の導出が可能で、かつ、予測ベクトルが予測ベクトル候補リストの先頭の場合(S3602でYES)、ステップS1234に進む。
【0294】
一方、パターンマッチベクトル候補の導出が不可能、または、予測ベクトルが予測ベクトル候補リストの先頭ではない場合(S3602でNO)、ステップS1231に進む。それ以降の処理は、
図34に示したフローチャート図と同様である。
【0295】
図37を参照して、具体的な予測ベクトル候補リストの作成処理について説明する。
図37に示すように、本実施形態における予測ベクトル候補リストの作成では、ベクトル候補導出部3033は、パターンマッチベクトル候補が導出可能(PMMVCandAvailable==true)、かつ、予測ベクトルが予測ベクトル候補リストの先頭の場合は、パターンマッチベクトル候補を予測ベクトル候補リストの1番目に格納する。また、パターンマッチベクトル候補が導出不可能な場合は、あるいは予測ベクトルが予測ベクトル候補リストの先頭ではない場合は、まず、ベクトル候補を予測ベクトル候補リストに格納する位置を決定する。パターンマッチベクトル候補が導出不可能な場合は、ベクトル候補を予測ベクトル候補リストの先頭から格納する(i = PMMVCandAvailable ? 1 : 0においてi=0)。また、パターンマッチベクトル候補が導出可能な場合は、ベクトル候補を予測ベクトル候補リストの2番目から格納する(i = PMMVCandAvailable ? 1 : 0においてi=1)。
【0296】
なお、パターンマッチベクトル候補が導出可能か否かの判断方法としては、例えば、テンプレートの取得が可能か否かで判断することができる。テンプレートの取得が可能か否かは、テンプレートの座標が画像の外側にある場合、不可能とすることができる。具体的には、以下の通りである。
(xCurr == 0 && yCurr == 0) ?
PMMVCandAvailable = false : PMMVCandAvailable = true
また、テンプレートの座標が別スライス、テンプレートの座標が別タイルの場合も、テンプレートの取得が不可能と判断できる。
【0297】
〔付記事項〕
また、上述した実施形態における画像符号化装置11、画像復号装置31の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現しても良い。画像符号化装置11、画像復号装置31の各機能ブロックは個別にプロセッサ化しても良いし、一部、または全部を集積してプロセッサ化しても良い。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いても良い。
【0298】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0299】
〔応用例〕
上述した画像符号化装置11及び画像復号装置31は、動画像の送信、受信、記録、再生を行う各種装置に搭載して利用することができる。なお、動画像は、カメラ等により撮像された自然動画像であってもよいし、コンピュータ等により生成された人工動画像(CGおよびGUIを含む)であってもよい。
【0300】
まず、上述した画像符号化装置11及び画像復号装置31を、動画像の送信及び受信に利用できることを、
図38を参照して説明する。
【0301】
図38の(a)は、画像符号化装置11を搭載した送信装置PROD_Aの構成を示したブロック図である。
図38の(a)に示すように、送信装置PROD_Aは、動画像を符号化することによって符号化データを得る符号化部PROD_A1と、符号化部PROD_A1が得た符号化データで搬送波を変調することによって変調信号を得る変調部PROD_A2と、変調部PROD_A2が得た変調信号を送信する送信部PROD_A3と、を備えている。上述した画像符号化装置11は、この符号化部PROD_A1として利用される。
【0302】
送信装置PROD_Aは、符号化部PROD_A1に入力する動画像の供給源として、動画像を撮像するカメラPROD_A4、動画像を記録した記録媒体PROD_A5、動画像を外部から入力するための入力端子PROD_A6、及び、画像を生成または加工する画像処理部A7を更に備えていてもよい。
図38の(a)においては、これら全てを送信装置PROD_Aが備えた構成を例示しているが、一部を省略しても構わない。
【0303】
なお、記録媒体PROD_A5は、符号化されていない動画像を記録したものであってもよいし、伝送用の符号化方式とは異なる記録用の符号化方式で符号化された動画像を記録したものであってもよい。後者の場合、記録媒体PROD_A5と符号化部PROD_A1との間に、記録媒体PROD_A5から読み出した符号化データを記録用の符号化方式に従って復号する復号部(不図示)を介在させるとよい。
【0304】
図38の(b)は、画像復号装置31を搭載した受信装置PROD_Bの構成を示したブロック図である。
図38の(b)に示すように、受信装置PROD_Bは、変調信号を受信する受信部PROD_B1と、受信部PROD_B1が受信した変調信号を復調することによって符号化データを得る復調部PROD_B2と、復調部PROD_B2が得た符号化データを復号することによって動画像を得る復号部PROD_B3と、を備えている。上述した画像復号装置31は、この復号部PROD_B3として利用される。
【0305】
受信装置PROD_Bは、復号部PROD_B3が出力する動画像の供給先として、動画像を表示するディスプレイPROD_B4、動画像を記録するための記録媒体PROD_B5、及び、動画像を外部に出力するための出力端子PROD_B6を更に備えていてもよい。
図38の(b)においては、これら全てを受信装置PROD_Bが備えた構成を例示しているが、一部を省略しても構わない。
【0306】
なお、記録媒体PROD_B5は、符号化されていない動画像を記録するためのものであってもよいし、伝送用の符号化方式とは異なる記録用の符号化方式で符号化されたものであってもよい。後者の場合、復号部PROD_B3と記録媒体PROD_B5との間に、復号部PROD_B3から取得した動画像を記録用の符号化方式に従って符号化する符号化部(不図示)を介在させるとよい。
【0307】
なお、変調信号を伝送する伝送媒体は、無線であってもよいし、有線であってもよい。また、変調信号を伝送する伝送態様は、放送(ここでは、送信先が予め特定されていない送信態様を指す)であってもよいし、通信(ここでは、送信先が予め特定されている送信態様を指す)であってもよい。すなわち、変調信号の伝送は、無線放送、有線放送、無線通信、及び有線通信の何れによって実現してもよい。
【0308】
例えば、地上デジタル放送の放送局(放送設備など)/受信局(テレビジョン受像機など)は、変調信号を無線放送で送受信する送信装置PROD_A/受信装置PROD_Bの一例である。また、ケーブルテレビ放送の放送局(放送設備など)/受信局(テレビジョン受像機など)は、変調信号を有線放送で送受信する送信装置PROD_A/受信装置PROD_Bの一例である。
【0309】
また、インターネットを用いたVOD(Video On Demand)サービスや動画共有サービスなどのサーバ(ワークステーションなど)/クライアント(テレビジョン受像機、パーソナルコンピュータ、スマートフォンなど)は、変調信号を通信で送受信する送信装置PROD_A/受信装置PROD_Bの一例である(通常、LANにおいては伝送媒体として無線または有線の何れかが用いられ、WANにおいては伝送媒体として有線が用いられる)。ここで、パーソナルコンピュータには、デスクトップ型PC、ラップトップ型PC、及びタブレット型PCが含まれる。また、スマートフォンには、多機能携帯電話端末も含まれる。
【0310】
なお、動画共有サービスのクライアントは、サーバからダウンロードした符号化データを復号してディスプレイに表示する機能に加え、カメラで撮像した動画像を符号化してサーバにアップロードする機能を有している。すなわち、動画共有サービスのクライアントは、送信装置PROD_A及び受信装置PROD_Bの双方として機能する。
【0311】
次に、上述した画像符号化装置11及び画像復号装置31を、動画像の記録及び再生に利用できることを、
図39を参照して説明する。
【0312】
図39の(a)は、上述した画像符号化装置11を搭載した記録装置PROD_Cの構成を示したブロック図である。
図39の(a)に示すように、記録装置PROD_Cは、動画像を符号化することによって符号化データを得る符号化部PROD_C1と、符号化部PROD_C1が得た符号化データを記録媒体PROD_Mに書き込む書込部PROD_C2と、を備えている。上述した画像符号化装置11は、この符号化部PROD_C1として利用される。
【0313】
なお、記録媒体PROD_Mは、(1)HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのように、記録装置PROD_Cに内蔵されるタイプのものであってもよいし、(2)SDメモリカードやUSB(Universal Serial Bus)フラッシュメモリなどのように、記録装置PROD_Cに接続されるタイプのものであってもよいし、(3)DVD(Digital Versatile Disc)やBD(Blu-ray Disc:登録商標)などのように、記録装置PROD_Cに内蔵されたドライブ装置(不図示)に装填されるものであってもよい。
【0314】
また、記録装置PROD_Cは、符号化部PROD_C1に入力する動画像の供給源として、動画像を撮像するカメラPROD_C3、動画像を外部から入力するための入力端子PROD_C4、動画像を受信するための受信部PROD_C5、及び、画像を生成または加工する画像処理部PROD_C6を更に備えていてもよい。
図39の(a)においては、これら全てを記録装置PROD_Cが備えた構成を例示しているが、一部を省略しても構わない。
【0315】
なお、受信部PROD_C5は、符号化されていない動画像を受信するものであってもよいし、記録用の符号化方式とは異なる伝送用の符号化方式で符号化された符号化データを受信するものであってもよい。後者の場合、受信部PROD_C5と符号化部PROD_C1との間に、伝送用の符号化方式で符号化された符号化データを復号する伝送用復号部(不図示)を介在させるとよい。
【0316】
このような記録装置PROD_Cとしては、例えば、DVDレコーダ、BDレコーダ、HDD(Hard Disk Drive)レコーダなどが挙げられる(この場合、入力端子PROD_C4または受信部PROD_C5が動画像の主な供給源となる)。また、カムコーダ(この場合、カメラPROD_C3が動画像の主な供給源となる)、パーソナルコンピュータ(この場合、受信部PROD_C5または画像処理部C6が動画像の主な供給源となる)、スマートフォン(この場合、カメラPROD_C3または受信部PROD_C5が動画像の主な供給源となる)なども、このような記録装置PROD_Cの一例である。
【0317】
図39の(b)は、上述した画像復号装置31を搭載した再生装置PROD_Dの構成を示したブロック図である。
図39(b)に示すように、再生装置PROD_Dは、記録媒体PROD_Mに書き込まれた符号化データを読み出す読出部PROD_D1と、読出部PROD_D1が読み出した符号化データを復号することによって動画像を得る復号部PROD_D2と、を備えている。上述した画像復号装置31は、この復号部PROD_D2として利用される。
【0318】
なお、記録媒体PROD_Mは、(1)HDDやSSDなどのように、再生装置PROD_Dに内蔵されるタイプのものであってもよいし、(2)SDメモリカードやUSBフラッシュメモリなどのように、再生装置PROD_Dに接続されるタイプのものであってもよいし、(3)DVDやBDなどのように、再生装置PROD_Dに内蔵されたドライブ装置(不図示)に装填されるものであってもよい。
【0319】
また、再生装置PROD_Dは、復号部PROD_D2が出力する動画像の供給先として、動画像を表示するディスプレイPROD_D3、動画像を外部に出力するための出力端子PROD_D4、及び、動画像を送信する送信部PROD_D5を更に備えていてもよい。
図39の(b)においては、これら全てを再生装置PROD_Dが備えた構成を例示しているが、一部を省略しても構わない。
【0320】
なお、送信部PROD_D5は、符号化されていない動画像を送信するものであってもよいし、記録用の符号化方式とは異なる伝送用の符号化方式で符号化された符号化データを送信するものであってもよい。後者の場合、復号部PROD_D2と送信部PROD_D5との間に、動画像を伝送用の符号化方式で符号化する符号化部(不図示)を介在させるとよい。
【0321】
このような再生装置PROD_Dとしては、例えば、DVDプレイヤ、BDプレイヤ、HDDプレイヤなどが挙げられる(この場合、テレビジョン受像機等が接続される出力端子PROD_D4が動画像の主な供給先となる)。また、テレビジョン受像機(この場合、ディスプレイPROD_D3が動画像の主な供給先となる)、デジタルサイネージ(電子看板や電子掲示板等とも称され、ディスプレイPROD_D3または送信部PROD_D5が動画像の主な供給先となる)、デスクトップ型PC(この場合、出力端子PROD_D4または送信部PROD_D5が動画像の主な供給先となる)、ラップトップ型またはタブレット型PC(この場合、ディスプレイPROD_D3または送信部PROD_D5が動画像の主な供給先となる)、スマートフォン(この場合、ディスプレイPROD_D3または送信部PROD_D5が動画像の主な供給先となる)なども、このような再生装置PROD_Dの一例である。
【0322】
(ハードウェア的実現およびソフトウェア的実現)
また、上述した画像復号装置31および画像符号化装置11の各ブロックは、集積回路(ICチップ)上に形成された論理回路によってハードウェア的に実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェア的に実現してもよい。
【0323】
後者の場合、上記各装置は、各機能を実現するプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM(Read Only Memory)、上記プログラムを展開するRAM(RandomAccess Memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の実施形態の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである上記各装置の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記各装置に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0324】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ類、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD-ROM(Compact Disc Read-Only Memory)/MOディスク(Magneto-Optical disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc)/CD-R(CD Recordable)/ブルーレイディスク(Blu-ray Disc:登録商標)等の光ディスクを含むディスク類、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード類、マスクROM/EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)/EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read-Only Memory:登録商標)/フラッシュROM等の半導体メモリ類、あるいはPLD(Programmable logic device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理回路類などを用いることができる。
【0325】
また、上記各装置を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークは、プログラムコードを伝送可能であればよく、特に限定されない。例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN(Local Area Network)、ISDN(Integrated Services Digital Network)、VAN(Value-Added Network)、CATV(Community Antenna television/Cable Television)通信網、仮想専用網(Virtual Private Network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、この通信ネットワークを構成する伝送媒体も、プログラムコードを伝送可能な媒体であればよく、特定の構成または種類のものに限定されない。例えば、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線等の有線でも、IrDA(Infrared Data Association)やリモコンのような赤外線、BlueTooth(登録商標)、IEEE802.11無線、HDR(High Data Rate)、NFC(Near Field Communication)、DLNA(Digital Living Network Alliance:登録商標)、携帯電話網、衛星回線、地上デジタル放送網等の無線でも利用可能である。なお、本発明の実施形態は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0326】
本発明の実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年9月27日に出願された特願2016-188790に対して優先権の利益を主張するものであり、当該出願を参照することにより、その内容の全てが本書に含まれる。
【0327】
本発明の一態様に係る動きベクトル生成装置は、動画像の符号化または復号に用いられる予測画像を生成するために参照される動きベクトルを生成する動きベクトル生成装置において、マッチング処理により予測ブロック毎に動きベクトルを探索する第1の動きベクトル探索部と、上記第1の動きベクトル探索部により選択された動きベクトルを参照して、上記予測ブロック内に含まれる複数のサブブロックの各々について、マッチング処理により動きベクトルを探索する第2の動きベクトル探索部と、を備え、上記動きベクトル生成装置は、ある対象予測ブロックに対して上記第1の動きベクトル探索部においてテンプレートマッチングによる局所的探索を行い、該対象予測ブロックに対して上記第2の動きベクトル探索部においてバイラテラルマッチングを用いて局所的探索を行う動作を含む構成である。
【0328】
本発明の一態様に係る動きベクトル生成装置は、動画像の符号化または復号に用いられる予測画像を生成するために参照される動きベクトルを生成する動きベクトル生成装置において、マッチング処理により予測ブロック毎に動きベクトルを探索する第1の動きベクトル探索部と、上記第1の動きベクトル探索部により選択された動きベクトルを参照して、上記予測ブロック内に含まれる複数のサブブロックの各々について、マッチング処理により動きベクトルを導出する動きベクトル導出部と、を備え、上記第1の動きベクトル探索部は、予測ブロックに関する初期ベクトル探索を行ったうえで、局所的探索を行うことにより動きベクトルを探索するものであり、上記動きベクトル導出部は、導出対象となる上記サブブロックの、上記予測ブロックにおける位置に応じて上記動きベクトルの導出方法を異ならせる構成である。
【0329】
本発明の一態様に係る動きベクトル生成装置は、動画像の符号化または復号に用いられる予測画像を生成するために参照される動きベクトルを生成する動きベクトル生成装置であって、AMVP(Adaptive Motion Vector Prediction)により予測ブロック毎に動きベクトル導出する動きベクトル生成装置において、上記動きベクトルを導出するために用いる予測ベクトル候補を導出し、予測ベクトル候補リストに格納する予測ベクトル候補導出部を備え、上記予測ベクトル候補導出部は、上記予測ベクトル候補の1つを、対象ブロックに関する初期ベクトル探索を行ったうえで局所的探索を行い、マッチング処理を行うことにより動きベクトルを導出するとともに、上記初期ベクトル探索で探索された初期ベクトルと同じ予測ベクトル候補は上記予測ベクトル候補リストに格納しない構成である。
【0330】
本発明の一態様に係る動きベクトル生成装置は、動画像の符号化または復号に用いられる予測画像を生成するために参照される動きベクトルを生成する動きベクトル生成装置であって、AMVP(Adaptive Motion Vector Prediction)により予測ブロック毎に動きベクトル導出する動きベクトル生成装置において、上記動きベクトルを導出するために用いる予測ベクトル候補を導出し、予測ベクトル候補リストに格納する予測ベクトル候補導出部を備え、上記予測ベクトル候補導出部は、上記予測ベクトル候補の1つを、マッチング処理により導出するとともに、上記マッチング処理により導出された予測ベクトル候補を常に上記予測ベクトル候補リストの先頭に格納する構成である。
【符号の説明】
【0331】
11 画像符号化装置(動画像符号化装置、予測画像生成装置)
31 画像復号装置(動画像復号装置、予測画像生成装置)
112 インター予測パラメータ符号化部(動きベクトル生成装置)
1125、3037 サブブロック予測パラメータ導出部(動きベクトル導出部)
303 インター予測パラメータ復号部(動きベクトル生成装置)
3033 ベクトル候補導出部(予測ベクトル候補導出部)
11253、30373 マッチング予測部(第1の動きベクトル探索部、第2の動きベクトル探索部)