(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
A01B69/00 301
A01B69/00 303A
A01B69/00 303M
(21)【出願番号】P 2022140774
(22)【出願日】2022-09-05
(62)【分割の表示】P 2018120249の分割
【原出願日】2018-06-25
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮下 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】森岡 保光
(72)【発明者】
【氏名】西野 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 句美子
(72)【発明者】
【氏名】川井 美紗子
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-24541(JP,A)
【文献】実開昭56-9008(JP,U)
【文献】特開平5-312574(JP,A)
【文献】特開2006-337177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングハンドル
を有する操舵装置と、
前記ステアリングハンドルによる手動操舵と、走行基準ラインに基づく前記ステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体と、
前記車体の方位を検出可能な測位装置と、
前記走行基準ラインの方位を示すライン方位表示部と、前記車体の方位を示す車体方位表示部とを有する表示装置と、
前記測位装置で検出された前記車体の方位と前記走行基準ラインの方位との差である方位差が判定範囲内である場合は前記自動操舵の許可を行い且つ許可である場合に前記操舵装置による自動操舵を行う制御装置と、
前記車体の幅方向の傾きを検出する傾き検出装置と、
を備え
、
前記表示装置は、前記自動操舵を許可する方位を、前記走行基準ラインに対する前記車体方位表示部のズレとして表示し、
前記制御装置は、前記傾き検出装置で検出された前記車体の幅方向の傾きに応じて前記自動操舵を許可するか否かを判定し、
前記表示装置は、前記車体の幅方向の傾きに応じて前記自動操舵の許可と判定された場合には、前記自動操舵が可能であることを表示し、
前記判定範囲は、前記車体の幅方向の傾きが零である場合であり、且つ、前記車体の方位と前記走行基準ラインの方位とが一致する基準線を中心として、一方側の下限値と他方側の上限値との絶対値を同値とし、且つ、前記基準線を中心として前記下限値から前記上限値までの範囲であり、
前記制御装置は、前記判定範囲に基づいて前記自動操舵を許可するか否かの判定を行い、
前記表示装置は、前記方位差が前記判定範囲内である場合に前記自動操舵が可能であることを表示し、前記方位差が前記判定範囲外である場合に前記自動操舵が不可であることを表示する作業車両。
【請求項2】
前記ライン方位表示部は、前記走行基準ラインを示すライン表示部と、前記走行
基準ラインの方位であることを示すマーク部とを含んでいる請求
項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記車体方位表示部は、前記車体の方位を指し示す方位指針部と、前記車体の方位に応じて表示位置が変更される車体を示す車体表示部を含んでいる請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記車体方位表示部は、前記走行基準ラインの方位と前記車体の方位との方位差が所定範囲内である場合と、前記方位差が所定範囲から外れている場合とで表示形態が異なる請求項1~
3のいずれか
1項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農作業機として特許文献1が知られている。特許文献1の農作業機は、手動操舵による手動走行と、基準走行ラインに平行に設定される設定走行ラインに沿って自動操舵により走行する自動走行とを切替自在な走行機体と、手動走行と自動走行とを切替自在な切替スイッチとを備えている。また、農作業機は、畝に沿って走行中に右指示ボタンを押した後、基準走行ラインの始点が設定され、走行中に左指示ボタンを押すことによって基準走行ラインの終点が設定される。即ち、自動操舵前に基準走行ラインの設定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の農作業機では、切替スイッチによって手動走行から自動走行に切り換えることにより、簡単に自動走行を行うことができる。自動走行では農作業機が基準走行ラインに沿って走行するため、自動走行の直前には当該農作業機の進行方向の方位と、基準走行ラインの方位とが一致しているとがよく、両者の方位が大きく外れている場合には当該農作業機の初期の走行時の挙動が安定しない可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、自動操舵を安定して行うことができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
作業車両は、スステアリングハンドルを有する操舵装置と、前記ステアリングハンドルによる手動操舵と、走行基準ラインに基づく前記ステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体と、前記車体の方位を検出可能な測位装置と、前記走行基準ラインの方位を示すライン方位表示部と、前記車体の方位を示す車体方位表示部とを有する表示装置と、前記測位装置で検出された前記車体の方位と前記走行基準ラインの方位との差である方位差が判定範囲内である場合は前記自動操舵の許可を行い且つ許可である場合に前記操舵装置による自動操舵を行う制御装置と、前記車体の幅方向の傾きを検出する傾き検出装置と、を備え、前記表示装置は、前記自動操舵を許可する方位を、前記走行基準ラインに対する前記車体方位表示部のズレとして表示し、前記制御装置は、前記傾き検出装置で検出された前記車体の幅方向の傾きに応じて前記自動操舵を許可するか否かを判定し、前記表示装置は、前記車体の幅方向の傾きに応じて前記自動操舵の許可と判定された場合には、前記自動操舵が可能であることを表示し、前記判定範囲は、前記車体の幅方向の傾きが零である場合であり、且つ、前記車体の方位と前記走行基準ラインの方位とが一致する基準線を中心として、一方側の下限値と他方側の上限値との絶対値を同値とし、且つ、前記基準線を中心として前記下限値から前記上限値までの範囲であり、前記制御装置は、前記判定範囲に基づいて前記自動操舵を許可するか否かの判定を行い、前記表示装置は、前記方位差が前記判定範囲内である場合に前記自動操舵が可能であることを表示し、前記方位差が前記判定範囲外である場合に前記自動操舵が不可であることを表示する。
【0007】
前記ライン方位表示部は、前記走行基準ラインを示すライン表示部と、前記走行基準ラインの方位であることを示すマーク部とを含んでいる。
前記車体方位表示部は、前記車体の方位を指し示す方位指針部と、前記車体の方位に応じて表示位置が変更される車体を示す車体表示部を含んでいる。
【0008】
前記車体方位表示部は、前記走行基準ラインの方位と前記車体の方位との方位差が所定範囲内である場合と、前記方位差が所定範囲から外れている場合とで表示形態が異なる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自動操舵を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】トラクタの構成及び制御ブロック図を示す図である。
【
図3A】プッシュスイッチにおける補正量を説明する説明図である。
【
図3B】スライドスイッチにおける補正量を説明する説明図である。
【
図4A】プッシュスイッチにおける第1補正部及び第2補正部を示す図である。
【
図4B】スライドスイッチにおける第1補正部及び第2補正部を示す図である。
【
図5A】自動操舵中で直進中に演算車体位置が右にずれた場合の状態を示している。
【
図5B】自動操舵中で直進中に演算車体位置が左にずれた場合の状態を示している。
【
図6】運転席の前方のカバーを運転席側から見た図である。
【
図7】自動操舵における制御を説明する説明図である。
【
図9】方位差ΔFと判定範囲G1との関係を示した図である。
【
図10A】トラクタが右下がりの場合における判定範囲G1の下限値を変更する例を説明する説明図である。
【
図10B】トラクタが左下がりの場合における判定範囲G1の上限値を変更する例を説明する説明図である。
【
図10C】トラクタが右下がりの場合における判定範囲G1の上限値を変更する例を説明する説明図である。
【
図10D】トラクタが左下がりの場合における判定範囲G1の下限値を変更する例を説明する説明図である。
【
図13A】車体方位F1とライン方位F2とが一致している場合の方位画面M2を示す図である。
【
図13B】車体方位F1がライン方位F2に対して左側に少しずれている場合の方位画面M2を示す図である。
【
図13C】車体方位F1がライン方位F2に対して右側に少しずれている場合の方位画面M2を示す図である。
【
図14A】車体方位F1がライン方位F2に対して左側に大きくずれている場合の方位画面M2を示す図である。
【
図14B】車体方位F1がライン方位F2に対して右側に大きくずれている場合の方位画面M2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図16は作業車両1の一実施形態を示す側面図であり、
図16は作業車両1の一実施形態を示す平面図である。本実施形態の場合、作業車両1はトラクタである。但し、作業車両1は、トラクタに限定されず、コンバインや移植機等の農業機械(農業車両)であってもよいし、ローダ作業機等の建設機械(建設車両)等であってもよい。
【0012】
以下、トラクタ(作業車両)1の運転席10に着座した運転者の前側(
図16の矢印A1方向)を前方、運転者の後側(
図16の矢印A2方向)を後方、運転者の左側を左方、運転者の右側を右方として説明する。また、作業車両1の前後方向に直交する方向である水平方向を車体幅方向として説明する。
図16に示すように、トラクタ1は、車体3と、原動機4と、変速装置5とを備えている。車体3は走行装置7を有していて走行可能である。走行装置7は、前輪7F及び後輪7Rを有する装置である。前輪7Fは、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。また、後輪7Rも、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。
【0013】
原動機4は、ディーゼルエンジン、電動モータ等であって、この実施形態ではディーゼルエンジンで構成されている。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切換可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切換が可能である。車体3には運転席10が設けられている。
また、車体3の後部には、3点リンク機構等で構成された連結部8が設けられている。連結部8には、作業装置を着脱可能である。作業装置を連結部8に連結することによって、車体3によって作業装置を牽引することができる。作業装置は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。
【0014】
図1に示すように、変速装置5は、主軸(推進軸)5aと、主変速部5bと、副変速部5cと、シャトル部5dと、PTO動力伝達部5eと、前変速部5fと、を備えている。推進軸5aは、変速装置5のハウジングケース(ミッションケース)に回転自在に支持され、当該推進軸5aには、エンジン4のクランク軸からの動力が伝達される。主変速部5bは、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。主変速部5bは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、推進軸5aから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
【0015】
副変速部5cは、主変速部5bと同様に、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。副変速部5cは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、主変速部5bから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
シャトル部5dは、シャトル軸12と、前後進切替部13とを有している。シャトル軸12には、副変速部5cから出力された動力がギア等を介して伝達される。前後進切換部13は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によってシャトル軸12の回転方向、即ち、トラクタ1の前進及び後進を切り換える。シャトル軸12は、後輪デフ装置20Rに接続されている。後輪デフ装置20Rは、後輪7Rが取り付けられた後車軸21Rを回転自在に支持している。
【0016】
PTO動力伝達部5eは、PTO推進軸14と、PTOクラッチ15とを有している。PTO推進軸14は、回転自在に支持され、推進軸5aからの動力が伝達可能である。PTO推進軸14は、ギア等を介してPTO軸16に接続されている。PTOクラッチ15は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によって、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達する状態と、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達しない状態とに切り換わる。
【0017】
前変速部5fは、第1クラッチ17と、第2クラッチ18とを有している。第1クラッチ17及び第2クラッチは、推進軸5aからの動力が伝達可能であって、例えば、シャトル軸12の動力が、ギア及び伝動軸を介して伝達される。第1クラッチ17及び第2クラッチ18からの動力は、前伝動軸22を介して前車軸21Fに伝達可能である。具体的には、前伝動軸22は、前輪デフ装置20Fに接続され、前輪デフ装置20Fは、前輪7F
が取り付けられた前車軸21Fを回転自在に支持している。
【0018】
第1クラッチ17及び第2クラッチ18は、油圧クラッチ等で構成されている。第1クラッチ17には油路が接続され、当該油路には油圧ポンプから吐出した作動油が供給される第1作動弁25に接続されている。第1クラッチ17は、第1作動弁25の開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。第2クラッチ18には油路が接続され、当該油路には第2作動弁26に接続されている。第2クラッチ18は、第2作動弁26の開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。第1作動弁25及び第2作動弁26は、例えば、電磁弁付き二位置切換弁であって、電磁弁のソレノイドを励磁又は消磁することにより、接続状態又は切断状態に切り換わる。
【0019】
第1クラッチ17が切断状態で且つ第2クラッチ18が接続状態である場合、第2クラッチ18を通じてシャトル軸12の動力が前輪7Fに伝達される。これにより、前輪及び後輪が動力によって駆動する四輪駆動(4WD)で且つ前輪と後輪との回転速度が略同じとなる(4WD等速状態)。一方、第1クラッチ17が接続状態で且つ第2クラッチ18が切断状態である場合、四輪駆動になり且つ前輪の回転速度が後輪の回転速度に比べて速くなる(4WD増速状態)。また、第1クラッチ17及び第2クラッチ18が切断状態である場合、シャトル軸12の動力が前輪7Fに伝達されないため、後輪が動力によって駆動する二輪駆動(2WD)となる。
【0020】
トラクタ1は、測位装置40を備えている。測位装置40は、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システム(測位衛星)により、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出可能である。即ち、測位装置40は、測位衛星から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、衛星信号に基づいて位置(例えば、緯度、経度)を検出する。測位装置40は、受信装置41と、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)42とを有している。受信装
置41は、アンテナ等を有していて測位衛星から送信された衛星信号を受信する装置であり、慣性計測装置42とは別に車体3に取付けられている。この実施形態では、受信装置41は、車体3に設けられたロプスに取付けられている。なお、受信装置41の取付箇所は、実施形態に限定されない。
【0021】
慣性計測装置42は、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等を有している。車体3、例えば、運転席10の下方に設けられ、慣性計測装置42によって、車体3のロール角、ピッチ角、ヨー角等を検出することができる。
図1に示すように、トラクタ1は、操舵装置11を備えている。操舵装置11は、運転者の操作によって車体3の操舵を行う手動操舵と、運転者の操作によらずに自動的に車体3の操舵を行う自動操舵とを行うことが可能な装置である。
【0022】
操舵装置11は、ステアリングハンドル(ステアリングホイール)30と、ステアリングハンドル30を回転可能に支持するステアリングシャフト(回転軸)31とを有している。また、操舵装置11は、補助機構(パワーステアリング装置)32を有している。補助機構32は、油圧等によってステアリングシャフト31(ステアリングハンドル30)の回転を補助する。補助機構32は、油圧ポンプ33と、油圧ポンプ33から吐出した作動油が供給される制御弁34と、制御弁34により作動するステアリングシリンダ35とを含んでいる。制御弁34は、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁であり、ステアリングシャフト31の操舵方向(回転方向)に対応して切り換わる。ステアリングシリンダ35は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)36に接続されている。
【0023】
したがって、運転者がステアリングハンドル30を把持して一方向又は他方向に操作す
れば、当該ステアリングハンドル30の回転方向に対応して制御弁34の切換位置及び開度が切り換わり、当該制御弁34の切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ35が左又は右に伸縮することによって、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。つまり、車体3は、ステアリングハンドル30の手動操舵によって、進行方向を左又は右に変更することができる。
【0024】
次に、自動操舵について説明する。
図2に示すように、自動操舵を行うに際しては、まず、自動操舵を行う前に走行基準ラインL1を設定する。走行基準ラインL1の設定後に、当該走行基準ラインL1に平行な走行予定ラインL2の設定を行うことによって自動操舵を行うことができる。自動操舵では、測位装置40によって測定された車体位置と走行予定ラインをL2とが一致するように、トラクタ1(車体3)の進行方向の操舵を自動的に行う。
【0025】
具体的には、自動操舵を行う前にトラクタ1(車体3)を圃場内の所定位置に移動させ(S1)、所定位置にて運転者がトラクタ1に設けられた操舵切換スイッチ52の操作を行うと(S2)、測位装置40によって測定された車体位置が走行基準ラインL1の始点P10に設定される(S3)。また、トラクタ1(車体3)を走行基準ラインL1の始点P10から移動させ(S4)、所定の位置で運転者が操舵切換スイッチ52の操作を行うと(S5)、測位装置40によって測定された車体位置が走行基準ラインL1の終点P11に設定される(S6)。したがって、始点P10と終点P11とを結ぶ直線が走行基準ラインL1として設定される。
【0026】
走行基準ラインL1の設定後(S6後)、例えば、トラクタ1(車体3)を、走行基準ラインL1を設定した場所とは異なる場所に移動させ(S7)、運転者が操舵切換スイッチ52の操作を行うと(S8)、走行基準ラインL1に平行な直線である走行予定ラインL2が設定される(S9)。走行予定ラインL2の設定後、自動操舵が開始され、トラクタ1(車体3)の進行方向が走行予定ラインL2に沿うように変更される。例えば、現在の車体位置が走行予定ラインL2に対して左側にある場合には、前輪7Fが右に操舵され、現在の車体位置が走行予定ラインL2に対して右側にある場合には、前輪7Fが左に操舵される。なお、自動操舵中において、トラクタ1(車体3)の走行速度(車速)は、運転者が手動で当該トラクタ1に設けられたアクセル部材(アクセルペダル、アクセルレバー)の操作量を変更したり、変速装置の変速段を変更することにより変更することができる。
【0027】
また、自動操舵の開始後、運転者が任意の箇所で操舵切換スイッチ52の操作を行うと、自動操舵を終了することができる。即ち、走行予定ラインL2の終点は、操舵切換スイッチ52の操作による自動操舵の終了によって設定することができる。つまり、走行予定ラインL2の始点から終点までの長さは、走行基準ラインL1よりも長く設定したり、短く設定することができる。言い換えれば、走行予定ラインL2は、走行基準ラインL1の長さとは関連付けされておらず、走行予定ラインL2によって、走行基準ラインL1の長さよりも長い距離を自動操舵しながら走行させることができる。
【0028】
図1に示すように、操舵装置11は、自動操舵機構37を有している。自動操舵機構37は、車体3の自動操舵を行う機構であって、測位装置40で検出された車体3の位置(車体位置)に基づいて車体3を自動操舵する。自動操舵機構37は、ステアリングモータ38とギア機構39とを備えている。ステアリングモータ38は、車体位置に基づいて、回転方向、回転速度、回転角度等が制御可能なモータである。ギア機構39は、ステアリングシャフト31に設けられ且つ当該ステアリングシャフト31と供回りするギアと、ステアリングモータ38の回転軸に設けられ且つ当該回転軸と供回りするギアとを含んでいる。ステアリングモータ38の回転軸が回転すると、ギア機構39を介して、ステアリン
グシャフト31が自動的に回転(回動)し、車体位置が走行予定ラインL2に一致するように、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。
【0029】
図1に示すように、トラクタ1は、表示装置45を備えている。表示装置45は、トラクタ1に関する様々な情報を表示可能な装置であって、少なくともトラクタ1の運転情報を表示可能である。表示装置45は、運転席10の前方に設けられている。
図1に示すように、トラクタ1は、設定スイッチ51を備えている。設定スイッチ51は、少なくとも自動操舵の開始前の設定を行う設定モードに切り換えるスイッチである。設定モードは、自動操舵を開始する前に当該自動操舵に関する様々な設定を行うモードであり、例えば、走行基準ラインL1の始点、終点の設定等を行うモードである。
【0030】
設定スイッチ51は、ON又はOFFに切換可能であり、ONである場合には設定モードが有効である信号を出力し、OFFである場合には設定モードが無効である信号を出力する。また、設定スイッチ51は、ONである場合には設定モードが有効である信号を表示装置45に出力し、OFFである場合には設定モードが無効である信号を表示装置45に出力する。
【0031】
トラクタ1は、操舵切換スイッチ52を備えている。操舵切換スイッチ52は、自動操舵の開始又は終了を切り換えるスイッチである。具体的には、操舵切換スイッチ52は、中立位置から上、下、前、後に切換可能であり、設定モードが有効である状態で中立位置から下方に切り換えられた場合には自動操舵の開始を出力し、設定モードが有効である状態で中立位置から上方に切り換えられた場合には自動操舵の終了を出力する。また、操舵切換スイッチ52は、設定モードが有効である状態で中立位置から後に切り換えられた場合には、現在の車体位置を走行基準ラインL1の始点P10に設定することを出力し、操舵切換スイッチ52は、設定モードが有効である状態で中立位置から前に切り換えられた場合には、現在の車体位置を走行基準ラインL1の終点P11に設定することを出力する。即ち、操舵切換スイッチ52は、走行基準ラインL1の開始位置(始点P10)及び終了位置(終点P11)を設定する基準ライン設定スイッチを兼用している。なお、操舵切換スイッチ52は、自動操舵の開始又は終了を切り換える操舵切換スイッチ52と、基準ライン設定スイッチとは別体に構成してもよい。
【0032】
トラクタ1は、補正スイッチ53を備えている。補正スイッチ53は、測位装置40によって測定された車体位置(緯度、経度)を補正するスイッチである。即ち、補正スイッチ53は、衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)と、慣性計測装置42で計測した測定情報(加速度、角速度)とで演算された車体位置(演算車体位置という)を補正するスイッチである。
【0033】
補正スイッチ53は、押圧可能なプッシュスイッチ又はスライド可能なスライドスイッチで構成されている。以下、補正スイッチ53がプッシュスイッチ、スライドスイッチのそれぞれである場合について説明する。
補正スイッチ53がプッシュスイッチである場合、当該プッシュスイッチの操作回数に基づいて、補正量が設定される。補正量は、補正量=操作回数×1回の操作回数当たりの補正量により決定される。例えば、
図3Aに示すように、プッシュスイッチを操作する毎に、補正量が数センチ或いは数十センチずつ増加する。プッシュスイッチの操作回数は、第1制御装置60Aに入力され、当該第1制御装置60Aが操作回数に基づいて補正量を設定(演算)する。
【0034】
また、補正スイッチ53がスライドスイッチである場合、当該スライドスイッチの操作量(変位量)に基づいて、補正量が設定される。例えば、補正量は、補正量=所定位置からの変位量により決定される。例えば、
図3Bに示すように、スライドスイッチの変位量
が5mm増加する毎に、補正量が数センチ或いは数十センチずつ増加する。スライドスイッチの操作量(変位量)は、第1制御装置60Aに入力され、当該第1制御装置60Aが変位量に基づいて補正量を設定(演算)する。なお、上述した補正量の増加方法及び増加の割合は、上述した数値に限定されない。
【0035】
詳しくは、
図4A及び
図4Bに示すように、補正スイッチ53は、第1補正部53Aと、第2補正部53Bとを有している。第1補正部53Aは、車体3の幅方向における一方側、即ち、左側に対応する車体位置の補正を指令する部分である。第2補正部53Bは、車体3の幅方向における他方側、即ち、右側に対応する車体位置の補正を指令する部分である。
【0036】
図4Aに示すように、補正スイッチ53がプッシュスイッチである場合、第1補正部53A及び第2補正部53Bは、操作を行う毎に自動的に復帰するON又はOFFのスイッチである。第1補正部53Aを構成するスイッチと第2補正部53Bを構成するスイッチとは一体化されている。なお、第1補正部53Aを構成するスイッチと第2補正部53Bを構成するスイッチとは互いに離間して配置されていてもよい。
図3Aに示すように、第1補正部53Aを押圧する毎に、車体3の左側に対応する補正量(左補正量)が増加する。また、第2補正部53Bを押圧する毎に、車体3の右側に対応する補正量(右補正量)が増加する。
【0037】
図4Bに示すように、補正スイッチ53がスライドスイッチである場合、第1補正部53A及び第2補正部53Bは、長孔の長手方向に沿って左又は右に移動する摘み部55を含んでいる。補正スイッチ53がスライドスイッチである場合、第1補正部53Aと第2補正部53Bとは互いに幅方向に離間して配置されている。
図3Bに示すように、摘み部55を予め定められた基準位置から徐々に左側へ変位させると、変位量に応じて左補正量が増加する。また、摘み部55を予め定められた基準位置から徐々に右側へ変位させると、変位量に応じて右補正量が増加する。なお、
図4Bに示すように、スライドスイッチである場合、第1補正部53Aと第2補正部53Bとを一体化に形成し、摘み部55の基準位置を中央部に設定し、基準位置から左側に移動した場合に左補正量が設定され、摘み部55を中間位置から右側に移動した場合に右補正量が設定される構成としてもよい。
【0038】
次に、補正スイッチ53による補正量(左補正量、右補正量)と、走行予定ラインL2と、トラクタ1(車体3)の挙動(走行軌跡)との関係について説明する。
図5Aは、自動操舵中で直進中に演算車体位置W1が右にずれた場合の状態を示している。
図5Aに示すように、自動操舵が開始された状態において、実際のトラクタ1(車体3)の位置(実際位置W2)と演算車体位置W1とが一致し、且つ、実際位置W2と走行予定ラインL2とが一致している場合、トラクタ1は走行予定ラインL2に沿って走行する。即ち、測位装置40の測位に誤差がなく、測位装置40で検出した車体位置(演算車体位置W1)が実際位置W2と同じである区間P1では、トラクタ1は走行予定ラインL2に沿って走行する。なお、測位装置40の測位に誤差がなく補正も行われていない場合は、演算車体位置W1と、補正量で補正した補正後の車体位置(補正車体位置)W3とは同じ値である。補正車体位置W3は、補正車体位置W3=演算車体位置W1-補正量である。
【0039】
ここで、位置P20の付近において、実際位置W2が走行予定ラインL2に対してズレていないのにも関わらず、様々な影響により、測位装置40の測位に誤差が生じ、測位装置40で検出した車体位置W1が走行予定ラインL2(実際位置W2)に対して右側にズレてしまい、ズレ量W4が維持されているとすると、トラクタ1は、演算車体位置W1と走行予定ラインL2とにズレが生じたと判断し、演算車体位置W1と走行予定ラインL2とのズレ量W4を解消するように、当該トラクタ1を左に操舵する。そうすると、トラク
タ1の実際位置W2は左の操舵によって走行予定ラインL2にシフトする。その後、運転者がトラクタ1が走行予定ラインL2からズレていることに気づき、位置P21にて第2補正部53Bを操舵して右補正量を零から増加させたとする。演算車体位置W1に対して右補正量が加えられ、補正後の車体位置(補正車体位置)W3は、実際位置W2と略同じにすることができる。つまり、第2補正部53Bによって右補正量を設定することにより、位置P20の付近において発生したズレ量W4を解消する方向に、測位装置40の車体位置を補正することができる。なお、
図5Aの位置P21に示すように、車体位置の補正後、トラクタ1の実際位置W2が走行予定ラインL2から左側に離れている場合は、トラクタ1は右に操舵され、当該トラクタ1の実際位置W2を、走行予定ラインL2に一致させることができる。
【0040】
図5Bは、自動操舵中で直進中に演算車体位置W1が左にずれた場合の状態を示している。
図5Bに示すように、自動操舵が開始された状態において、実際位置W2と演算車体位置W1とが一致し、且つ、実際位置W2と走行予定ラインL2とが一致している場合、
図5Aと同様に、トラクタ1は走行予定ラインL2に沿って走行する。即ち、
図5Aと同様に、測位装置40の測位に誤差がない区間P2では、トラクタ1は走行予定ラインL2に沿って走行する。また、
図5Aと同様に、演算車体位置W1と補正車体位置W3とは同じ値である。
【0041】
ここで、位置P22において、様々な影響により、測位装置40の測位に誤差が生じ、測位装置40で検出した車体位置W1が実際位置W2に対して左側にズレてしまい、ズレ量W5が維持されているとすると、トラクタ1は、演算車体位置W1と走行予定ラインL2とのズレ量W5を解消するように、当該トラクタ1を右に操舵する。その後、運転者がトラクタ1が走行予定ラインL2からズレていることに気づき、運転者が位置P23にて第1補正部53Aを操舵して左補正量を零から増加させたとする。そうすると、演算車体位置W1に対して左補正量が加えられ、補正後の車体位置(補正車体位置)W3は、実際位置W2と略同じにすることができる。つまり、第1補正部53Aによって左補正量を設定することにより、位置P22の付近において発生したズレ量W5を解消する方向に、測位装置40の車体位置を補正することができる。なお、
図5Bの位置P23に示すように、車体位置の補正後、トラクタ1の実際位置W2が走行予定ラインL2から右側に離れている場合は、トラクタ1は左に操舵され、当該トラクタ1の実際位置W2を、走行予定ラインL2に一致させることができる。
【0042】
次に、設定スイッチ51、補正スイッチ53について説明する。
図6に示すように、ステアリングシャフト31の外周は、ステアリングポスト180により覆われている。ステアリングポスト180の外周は、カバー177により覆われている。カバー177は、運転席10の前方に設けられている。カバー177は、パネルカバー178とコラムカバー179とを含んでいる。
【0043】
パネルカバー178は、表示装置45を支持している。パネルカバー178の上板部178aには、表示装置45を支持する支持部178eが設けられている。支持部178eは、ステアリングシャフト31の前方且つステアリングハンドル30の下方において表示装置45を支持している。また、上板部178aは、設定スイッチ51及び補正スイッチ53が取り付けられた取付面178fを有している。取付面178fは、支持部178eの後方であって且つステアリングハンドル30の下方に設けられている。支持部178eと取付面178fとは連続しており、支持部178eは上板部178aの前部に位置し、取付面178fは上板部178aの後部に位置している。設定スイッチ51、補正スイッチ53は、取付面178fに取り付けられている。これにより、設定スイッチ51、補正スイッチ53は、ステアリングシャフト31の周囲に配置されている。
【0044】
パネルカバー178の左板部178bからはシャトルレバー181が突出している。シャトルレバー181は、車体3の走行方向を切り換える操作を行う部材である。より詳しく説明すると、シャトルレバー181を前方に操作(揺動)することにより、前後進切換部13が走行装置7へ前進動力を出力する状態となり、車体3の走行方向が前進方向に切り換えられる。また、シャトルレバー181を後方に操作(揺動)することにより、前後進切換部13が走行装置7へ後進動力を出力する状態となり、車体3の走行方向が後進方向に切り換えられる。シャトルレバー181が中立位置にあるときには、走行装置7へ動力が出力されない。
【0045】
コラムカバー179は、ステアリングハンドル30の下方に配置されており、ステアリングシャフト31の上部の周囲を覆っている。コラムカバー179は、略四角筒状に形成されており、パネルカバー178の取付面178fから上方に突出している。つまり、取付面178fは、コラムカバー179の周囲に設けられている。そのため、取付面178fに取り付けられた設定スイッチ51、補正スイッチ53は、コラムカバー179の周囲に配置されている。
【0046】
次に、設定スイッチ51、操舵切換スイッチ52、補正スイッチ53のそれぞれの配置について詳しく説明する。
図6に示すように、設定スイッチ51、操舵切換スイッチ52、補正スイッチ53は、ステアリングシャフト31の周囲に配置されている。
設定スイッチ51は、ステアリングシャフト31の一側方(左方)に配置されている。操舵切換スイッチ52は、ステアリングシャフト31の一側方(左方)に配置されている。本実施形態の場合、操舵切換スイッチ52は、揺動可能なレバーから構成されている。操舵切換スイッチ52は、ステアリングシャフト31側に設けられた基端部を支点として揺動可能である。操舵切換スイッチ52の基端部は、コラムカバー179の内部に設けられている。操舵切換スイッチ52は、コラムカバー179の一側方(左方)に突出している。
【0047】
補正スイッチ53は、ステアリングシャフト31の他側方(右方)に配置されている。より詳しくは、補正スイッチ53は、ステアリングシャフト31の右方且つ後方(斜め右後方)に配置されている。補正スイッチ53は、コラムカバー179との位置関係では、コラムカバー179の右方且つ後方(斜め右後方)に配置されている。補正スイッチ53は、パネルカバー178の取付面178fとの位置関係では、取付面178fの右後部に配置されている。補正スイッチ53が傾斜した取付面178fの後部に配置されていることによって、補正スイッチ53とステアリングハンドル30との距離を長く確保することができる。これにより、意図しない補正スイッチ53の操作やステアリングハンドル30の操舵をより確実に防止できる。
【0048】
上述の通り、設定スイッチ51、操舵切換スイッチ52、補正スイッチ53は、ステアリングシャフト31の周囲に配置されている。言い換えれば、設定スイッチ51、操舵切換スイッチ52、補正スイッチ53は、ステアリングシャフト31の周囲に集約して存在している。そのため、運転者は、各スイッチの位置を一目瞭然で把握することができる。加えて、運転者は、運転席10に着座したままの状態で姿勢を変えずに各スイッチを操作することができる。そのため、操作性が良好となり、且つ誤操作を防止することができる。また、各スイッチから配策されるハーネス(配線)を短くすることができる。
【0049】
尚、上述したスイッチの配置について、左と右とを入れ替えて配置してもよい。つまり、一側方が左方であって他側方が右方であってもよいし、一側方が右方であって他側方が左方であってもよい。具体的には、例えば、設定スイッチ51及び操舵切換スイッチ52をステアリングシャフト31の右方に配置し、補正スイッチ53をステアリングシャフト31の左方に配置してもよい。
【0050】
図1に示すように、トラクタ1は、複数の制御装置60を備えている。複数の制御装置60は、トラクタ1における走行系の制御、作業系の制御、車体位置の演算等を行う装置である。複数の制御装置60は、第1制御装置60A、第2制御装置60B及び第3制御装置60Cである。
第1制御装置60Aは、受信装置41が受信した衛星信号(受信情報)と、慣性計測装置42が測定した測定情報(加速度、角速度等)を受信し、受信情報及び測定情報に基づいて車体位置を求める。例えば、第1制御装置60Aは、補正スイッチ53による補正量が零である場合、即ち、補正スイッチ53による車体位置の補正が指令されていない場合、受信情報と測定情報とで演算された演算車体位置W1に対して補正を行わず、演算車体位置W1を自動操舵時に用いる車体位置に決定する。一方、第1制御装置60Aは、補正スイッチ53による車体位置の補正が指令されている場合、補正スイッチ53の操作回数及び補正スイッチ53の操作量(変位量)のいずれかに基づいて車体位置の補正量を設定し、演算車体位置W1を補正量で補正した補正車体位置W3を自動操舵時に用いる車体位置に決定する。
【0051】
第1制御装置60Aは、車体位置(演算車体位置W1、補正車体位置W3)及び走行予定ラインL2に基づいて制御信号を設定し、制御信号を第2制御装置60Bに出力する。第2制御装置60Bは、自動操舵制御部200を有している。自動操舵制御部200は、第2制御装置60Bに設けられた電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。自動操舵制御部200は、第1制御装置60Aから出力された制御信号に基づいて車体3が走行予定ラインL2に沿って走行するように自動操舵機構37のステアリングモータ38を制御する。
【0052】
図7に示すように、車体位置と走行予定ラインL2との偏差が閾値未満である場合、自動操舵制御部200は、ステアリングモータ38の回転軸の回転角を維持する。車体位置と走行予定ラインL2との偏差が閾値以上であって、トラクタ1が走行予定ラインL2に対して左側に位置している場合は、自動操舵制御部200は、トラクタ1の操舵方向が右方向となるようにステアリングモータ38の回転軸を回転する。車体位置と走行予定ラインL2との偏差が閾値以上であって、トラクタ1が走行予定ラインL2に対して右側に位置している場合は、自動操舵制御部200は、トラクタ1の操舵方向が左方向となるようにステアリングモータ38の回転軸を回転する。なお、上述した実施形態では、車体位置と走行予定ラインL2との偏差に基づいて操舵装置11の操舵角を変更していたが、走行予定ラインL2の方位とトラクタ1(車体3)の進行方向(走行方向)の方位(車体方位)F1とが異なる場合、即ち、走行予定ラインL2に対する車体方位F1の角度θgが閾値以上である場合、自動操舵制御部200は、角度θgが零(車体方位F1が走行予定ラインL2の方位に一致)するように操舵角を設定してもよい。また、自動操舵制御部200は、偏差(位置偏差)に基づいて求めた操舵角と、方位(方位偏差)に基づいて求めた操舵角とに基づいて、自動操舵における最終の操舵角を設定してもよい。上述した実施形態における自動操舵における操舵角の設定は一例であり、限定されない。
【0053】
第3制御装置60Cは、運転席10の周囲に設けられた操作部材の操作に応じて、連結部8を昇降させる。なお、第1制御装置60A、第2制御装置60B及び第3制御装置60Cは一体化されていてもよい。また、上述した走行系の制御、作業系の制御、車体位置の演算は限定されない。
さて、走行基準ラインL1の設定後において、自動操舵を行うためには、自動操舵の条件を整える必要がある。例えば、
図8に示すように、トラクタ1を旋回後であって、自動操舵前において当該トラクタ1の進行方向の方位(車体方位)F1と走行基準ラインL1の方位(ライン方位)F2とが大きく異なる場合は、自動操舵を開始したとしても走行基準ラインL1に平行な走行予定ラインL2に沿ってトラクタ1を操舵することが難しく、
このような場合は、第2制御装置60Bは、自動操舵の条件は整っていないと判断する。
【0054】
第2制御装置60Bは、少なくとも自動操舵前、即ち、手動操舵におけるトラクタ1(車体3)の車体方位F1と走行基準ラインL1の方位(ライン方位)F2とに基づいて自動操舵の許可を行うか否かの判定(判断)を行う。
図1に示すように、第2制御装置60Bは、方位判定部207を備えている。方位判定部207は、第2制御装置60Bに設けられた電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。方位判定部207は、車体方位F1とライン方位F2との方位差ΔFが判定範囲G1内であれば、自動操舵の許可を行い、判定範囲G1外であれば自動操舵の許可を行わない。
【0055】
図9は、方位差ΔFと判定範囲G1との関係を示した図である。
図9に示すように、判定範囲G1は、車体方位F1とライン方位F2とが一致する基準線210(方位差ΔFが零となる基準線210)を中心として、一方側(左側)がマイナス、他方側(右側)がプラスで示される範囲である。判定範囲G1の下限値Gminはマイナス側、上限値Gmaxはプラス側である。なお、
図9において判定範囲G1におけるプラスマイナスは便宜上に設定されたもので、上述した例に限定されない。
【0056】
トラクタ1の車体3の幅方向の傾き、即ち、車体3のロール角が水平であって傾きが零である場合(水平地)、判定範囲G1の下限値Gmin及び上限値Gmaxは、予め定められた値であって、下限値Gmin及び上限値Gmaxを絶対値で考えると、両者は同値である。
したがって、トラクタ1が幅方向に傾かずに水平状態を保ったまま走行している状態、即ち、傾斜をしていない圃場を走行している状態において、車体方位F1とライン方位F2との方位差ΔFが判定範囲G1に入っていれば、方位判定部207は、自動操舵を許可し、方位差ΔFが判定範囲G1から外れれば、自動操舵を許可しない。
【0057】
上述した実施形態では、第2制御装置60Bは、方位差ΔFと判定範囲G1とに基づいて自動操舵の許可をするか否かを判断しているが、これに加え、当該第2制御装置60Bは、トラクタ1(車体3)が傾いて走行している場合は、自動操舵に用いる判定範囲G1を車体3の傾きに応じて変更を行う。車体3の傾きは、トラクタ1(車体3)に設けられた傾き検出装置で検出する。この実施形態では、傾き検出装置は、例えば、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等を有する慣性計測装置42であり、トラクタ1(車体3)を検出することができる。なお。傾き検出装置は、複数の測位装置40で構成される装置(例えば、GPSコンパス等)であってもよいし、その他の装置であってもよい。
【0058】
上述したように、トラクタ1の車体3の幅方向の傾き、即ち、車体3のロール角が水平であって傾きが零である場合、
図9に示すように、方位判定部207は、判定範囲G1を標準範囲ST1に設定して、標準範囲ST1に基づいて自動操舵を許可するか否かの判定をする。
図10Aに示すように、トラクタ1(車体3)の幅方向の一方側(左側)が幅方向の他方側(右側)よりも高くなるようにトラクタ1(車体3)が傾いている場合、第2制御装置60Bは、判定範囲G1の下限値Gminを標準範囲ST1で示された下限値Gminよりも大きくする。即ち、トラクタ1から走行基準ラインL1を見たとき、当該走行基準ラインL1が高くトラクタ1側が低く右下がりの場合は、判定範囲G1の下限値Gminを増加させる。この場合、方位判定部207は、下限値Gminが増加した判定範囲G1に基づいて自動操舵を許可するか否かの判定をする。
【0059】
図10Aのように、トラクタ1が右下がりに傾いている場合において、判定範囲G1の範囲を見たとき、当該トラクタ1の高い側(一方側)に対応する下限値Gminを増加さ
せているが、これに加えて、
図10Cに示すように、判定範囲G1の下限値Gminとは反対側の上限値Gmaxを、標準範囲ST1の上限値Gmaxよりも小さくすることが好ましい。言い換えれば、トラクタ1が右下がりに傾いている場合において、当該トラクタ1の低い側(他方側)に対応する上限値Gmaxを減少させる。
【0060】
図10Bに示すように、一方側(左側)が幅方向の他方側(右側)よりも低くなるようにトラクタ1(車体3)が傾いている場合、第2制御装置60Bは、判定範囲G1の上限値Gmaxを標準範囲ST1で示された上限値Gmaxよりも大きくする。即ち、トラクタ1から走行基準ラインL1を見たとき、当該走行基準ラインL1が高くトラクタ1側が低く左下がりの場合は、判定範囲G1の上限値Gmaxを増加させる。この場合、方位判定部207は、上限値Gmaxが増加した判定範囲G1に基づいて自動操舵を許可するか否かの判定をする。
【0061】
図10Bのように、トラクタ1が左下がりに傾いている場合において、判定範囲G1の範囲を見たとき、当該トラクタ1の高い側(右方側)に対応する上限値Gmaxを増加させているが、これに加えて、
図10Dに示すように、判定範囲G1の上限値Gmaxとは反対側の下限値Gminを、標準範囲ST1の下限値Gminよりも小さくすることが好ましい。言い換えれば、トラクタ1が左下がりに傾いている場合において、当該トラクタ1の低い側(一方側)に対応する下限値Gminを減少させる。
【0062】
なお、第2制御装置60Bは、判定範囲G1の下限値Gminや上限値Gmaxを変更するに際して、トラクタ1の車体3の幅方向の傾き(車体3のロール角)の大きさ(傾斜量)に応じて、下限値Gminや上限値Gmaxを大きくする。即ち、第2制御装置60Bは、傾斜量が大きい場合は、標準範囲ST1に対する下限値Gminや上限値Gmaxの増加量を大きくし、傾斜量が小さい場合は、標準範囲ST1に対する下限値Gminや上限値Gmaxの増加量を小さくする。
【0063】
自動操舵制御部200は、方位判定部207によって許可と判定された状態で操舵切換スイッチ52により自動操舵の開始の切換が行われた場合には、上述したように操舵装置11を制御することで、自動操舵を行う。
表示装置45は、方位判定部207によって自動操舵の開始が許可と判定されていることを表示可能である。
図11に示すように、表示装置45に対して所定の動作を行うと、当該表示装置45は、運転画面M1を表示する。
【0064】
運転画面M1は、運転情報を示す運転表示部61を有している。運転表示部61は、運転情報として原動機4の回転数(原動機回転数)を表示する回転表示部62を含んでいる。回転表示部62は、レベル表示部63を含んでいる。レベル表示部63は、原動機回転数を段階的に表示する部分である。例えば、レベル表示部63は、目盛部65と、指標部80とを含んでいる。目盛部65は、例えば、第1ライン65Aと、第1ライン65Aに沿って所定の間隔で割り当てられた複数の第2ライン65Bとを有している。また、目盛部65は、第1ライン65Aと所定の間隔で離間した第3ライン65Cとを有している。第1ライン65A及び第3ライン65Cは、例えば、半円形状に形成されていて、一端側(例えば、左側)が最小値とされ、他端側(例えば、右側)が最大値とされている。
【0065】
指標部80は、原動機回転数の大きさに応じて、長さが変化するバーである。指標部80は、例えば、第1ライン65Aと第3ライン65Cとの間に位置されて、原動機回転数の値が零の最小値である場合には、第1ライン65A及び第3ライン65Cの一端側(左側)に位置して長さが最も短く、原動機回転数の値が最大値である場合には、第1ライン65A及び第3ライン65Cの一端側(左側)から第1ライン65A及び第3ライン65Cの他端側(右側)に延びて最も長さが長くなる。回転表示部62は、数字表示部64を
含んでいる。数字表示部64は、原動機回転数を数字で表示する。例えば、回転表示部62は、第1ライン65A及び第3ライン65Cの半円形の内側に配置されている。
【0066】
したがって、運転表示部61によれば、エンジン回転数等の原動機回転数を、レベル表示部63によって段階的に表示し且つ、回転表示部62によって数字で表示することができる。
運転画面M1は、複数のアイコン部66を表示するアイコン表示部67を有している。アイコン表示部67は、様々な情報をアイコン部66で示す部分である。即ち、自動操舵等の走行に関する設定、例えば、設定モードで設定された設定状態をアイコン部66で表示する。アイコン表示部67は、運転表示部61とは異なる位置であって、例えば、運転画面M1の上部に配置されている。
【0067】
複数のアイコン部66は、第1アイコン部66A、第2アイコン部66B、第3アイコン部66C、第4アイコン部66D、第5アイコン部66E、第6アイコン部66F、第7アイコン部66Gである。なお、運転画面M1は、複数のアイコン部66(66A、66B、66C、66D、66E、66F、66G)の全てを有する必要はなく、上述した実施形態に限定されない。
【0068】
第1アイコン部66Aは、警告が発生した場合に表示される。第2アイコン部66Bは、走行基準ラインL1の始点P10が設定された場合に表示される。第3アイコン部66Cは、走行基準ラインL1の終点P11が設定された場合に表示される。
第4アイコン部66Dは、自動操舵の許可がなされている場合に表示される。例えば、第4アイコン部66Dは、設定モードが有効及び走行基準ラインL1の設定の完了であり、第2制御装置60Bの方位判定部207が自動操舵の許可を行った場合に表示される。第4アイコン部66Dを見ることによって、作業者は自動操舵が許可になっていると把握することができる。そして、作業者が、操舵切換スイッチ52を操作することにより自動操舵の開始を行うことができる。
【0069】
第5アイコン部66Eは、連結部8が昇降状態である場合に表示される。第6アイコン部66Fは、4WD増速状態である場合に表示される。第7アイコン部66Gは、受信装置41の受信信号の受信感度に応じて色等が変化する。
なお、上述した実施形態では、自動操舵を許可の条件として、方位差ΔFが所定範囲であることを条件にしているが、操舵装置11の操舵角が所定範囲内であることを条件に加えてもよい。即ち、トラクタ1(車体3)が手動操舵で操舵されている状況において、第2制御装置60Bは、方位差ΔFが所定範囲である場合には方位に関する自動操舵を許可(第1許可)し、操舵装置11の操舵角θが所定範囲である場合には操舵に関する自動操舵を許可(第2許可)する。そして、第2制御装置60Bは、第1許可と第2許可とが揃い、自動操舵の開始の切換が作業者によって行われたときに、自動操舵を開始する。
【0070】
作業車両1は、ステアリングハンドル30を有する操舵装置11と、ステアリングハンドル30による手動操舵と走行基準ラインL1に基づくステアリングハンドル30の自動操舵とのいずれかで走行可能な車体3と、車体3の方位F1を検出可能な測位装置40と、車体3の傾きを検出する傾き検出装置と、測位装置40で検出された車体3の方位F1と走行基準ラインL1の方位F2との差ΔFが判定範囲G1内である場合は自動操舵の許可を行い且つ許可である場合に操舵装置11による自動操舵を行う制御装置60Bと、を備え、制御装置60Bは、傾き検出装置で検出された車体3の傾きに応じて判定範囲を変更する。これによれば、例えば、作業車両1(車体3)が傾斜地で作業を行うにあたって、当該作業車両1が上りの方向に進行方向を向ける場合(車体方位を上りの方向に向ける場合)及び作業車両1が下りの方向に進行方向に向ける場合(車体方位を下りの方向に向ける場合)のいずれの場合にも、傾斜に対応して適正に自動操舵の開始を行うことができ
る。即ち、傾斜地であっても手動操舵から自動操舵に切り換えた場合に安定して走行させる。
【0071】
制御装置60Bは、車体3の幅方向の一方側が幅方向の他方側よりも高くなるように車体3が傾いている場合、判定範囲G1の下限値Gminを車体3の傾きに応じて変更する。また、制御装置60Bは、車体3の幅方向の一方側が幅方向の他方側よりも低くなるように車体3が傾いている場合、判定範囲G1の上限値Gmaxを車体3の傾きに応じて変更する。
【0072】
これによれば、作業車両1(車体3)を傾斜地に走行させる場合において、トラクタ1の高い側(一方側)に対応する下限値Gminを大きくしたり、トラクタ1の高い側(他方側)に対応する上限値Gmaxを大きくすることができる。つまり、判定範囲G1において、作業車両1(車体3)の高い側の値(上限値Gmax、下限値Gmin)が大きくなる。その結果、作業車両1を高い側に手動操舵してから自動操舵を行う場合(トラクタ1を上りの方向に手動操舵した後に自動操舵を行う場合)に、車体方位とライン方位との方位差を大きくしてから自動操舵に切り換えることが可能となる。このように、作業車両1が上り方向における自動操舵の開始を行った場合は、傾斜地において、自動操舵の切換直後の走行を安定して行うことができる。
【0073】
また、
図10Cに示したように、トラクタ1の他方側(右側)が一方側(左側)よりも低くなるように、当該トラクタ1が傾斜する場合は、制御装置60Bは、他方側(右側)に対応する上限値Gmaxを、予め定められた標準範囲ST1よりも小さくする。また、
図10Dに示したように、トラクタ1の一方側(左側)が他方側(右側)よりも低くなるように、当該トラクタ1が傾斜する場合は、制御装置60Bは、一方側(左側)に対応する下限値Gminを、予め定められた標準範囲ST1よりも小さくする。
【0074】
これによれば、作業車両1を低い側に手動操舵してから自動操舵を行う場合(トラクタ1を下りの方向に手動操舵した後に自動操舵を行う場合)に、車体方位とライン方位との方位差を小さくしてから自動操舵に切り換えることが可能となる。このように、作業車両1が下り方向における自動操舵の開始を行った場合は、傾斜地において、自動操舵の切換直後の走行を安定して行うことができる。
【0075】
作業車両1は、自動操舵の開始及び終了のいずれかを切り換える操舵切換スイッチ52を備え、制御装置60Bは、自動操舵の許可がされている状態で、操舵切換スイッチ52により自動操舵の開始の切換が行われた場合に操舵装置11による自動操舵を開始する。これによれば、作業者が自動操舵の開始を行いたいタイミングで当該開始の指令を操舵切換スイッチ52によって行うことができる。
【0076】
作業車両1は、測位装置40で検出された車体3の方位と走行基準ラインL1の方位F2との方位差ΔFが判定範囲G1内であることを表示する表示装置45を備えている。これによれば、作業者は、自動操舵の開始を行うことができる状態であることを表示装置45を見ることによって簡単に把握することができる。
作業車両1は、測位装置40で検出された車体3の位置を走行基準ラインL1の開始位置及び終了位置に設定する基準ライン設定スイッチを備えている。これによれば、簡単に走行基準ラインL1の設定を行うことができる。
【0077】
さて、表示装置45は、走行基準ラインL1のライン方位F2と車体方位F1とを表示することができる。
図12に示すように、表示装置45に対して所定の動作を行うと、当該表示装置45は、方位画面M2を表示する。方位画面M2は、ライン方位表示部130と、車体方位表示部140とを含んでいる。
ライン方位表示部130は、走行基準ラインL1のライン方位F2を示す部分であり、ライン表示部130aと、マーク部130bとを含んでいる。ライン表示部130aは、走行基準ラインL1自体を線図等で示した部分であって、方位画面M2に設定されたフィールド133上を下側から上側に延びている。マーク部130bは、走行基準ラインL1の方位であることを示す部分であって、例えば、フィールド133において、ライン表示部130aの端部131の上部に配置されている。マーク部130bにおいて、三角形の頂点132は、ライン表示部130aの端部131を指し示している。
【0078】
車体方位表示部140は、車体3の方位(車体方位F1)を指し示す方位指針部141を含んでいる。方位指針部141は、ライン方位F2に対して当該車体方位F1が向いている方向を指し示している。
方位指針部141は、例えば、矢印等の図形によって構成されており、方位指針部141は、ライン表示部130aの線上に設定された原点O1を中心に、ライン表示部130aの一方側又は他方側に移動する。
【0079】
また、車体方位表示部140は、トラクタ1(車体3)を図形で示した車体表示部142を含んでいる。車体表示部142は、方位指針部141と同様に原点O1を中心に方位に応じて位置(表示位置)が変更する。詳しくは、車体表示部142の前部(トラクタ1の前部)に方位指針部141が配置されていて、車体表示部142と方位指針部141とが同時に車体方位F1に応じて揺動する。
【0080】
図13Aに示すように、車体方位F1がライン方位F2と同じ向きである場合、方位指針部141の先端部141aとマーク部130bの端部131とは対向する。また、
図13Bに示すように、車体方位F1がライン方位F2に対して左側にずれている場合、方位指針部141の先端部141aは、ライン表示部130aよりも左側に位置する。
図13Cに示すように、車体方位F1がライン方位F2に対して右側にずれている場合、方位指針部141の先端部141aは、ライン表示部130aよりも右側に位置する。
【0081】
以上によれば、方位指針部141の先端部141aと、マーク部130b又はライン表示部130aとの相対位置を確認することよって、作業者は、車体方位F1がライン方位F2に対してどの程度ズレているのかを把握することができる。
なお、
図12に示すように、方位画面M2には、方位目盛部145を表示してもよい。方位目盛部145は、走行基準ラインL1のライン方位F2を基準点O2とし、基準点O2からの距離に応じて方位差ΔF(方位を示す値)が増減する目盛である。即ち、方位目盛部145は、半円形であって、当該半円形の円周上に沿って所定間隔で方位差ΔFに対応する目盛線145aが割り当てられることで構成されている。方位目盛部145の基準点O2には、マーク部130bの端部131が指し示されている。また、
図15に示すように、方位目盛部145には、判定範囲G1が示されている。即ち、方位目盛部145の複数の目盛線145aには少なくとも2つの色が別々に着色されていて、基準点O2寄りの複数の目盛線145aには、判定範囲G1内の値であることを示す色(範囲内色)が着色され、基準点O2から離れた位置の複数の目盛線145aには判定範囲G1外の値であることを示す色(範囲外色)が着色されている。また、上述したように、車体3の傾きに応じて判定範囲G1が変更された場合には、複数の目盛線145aは、変更後の判定範囲G1に対応するように、範囲内色及び範囲外色が変更される。
【0082】
方位指針部141は、方位目盛部145の内側(径内側)に配置されていて、車体方位F1を方位目盛部145に指し示す。方位指針部141は、ライン方位F2と車体方位F1との方位差ΔFが所定範囲内(判定範囲G1内)である場合と、方位差ΔFが所定範囲外(判定範囲G1外)である場合とで表示形態が異なる。
図13A~
図13Cに示すように、方位指針部141は、方位差ΔFが所定範囲内(判定範囲G1内)にある場合には、
方位目盛部145の範囲内色と同色に着色される。また、
図14A及び
図14Bに示すように、方位指針部141は、方位差ΔFが所定範囲外(判定範囲G1外)にある場合には、方位目盛部145の範囲外色と同色に着色される。
【0083】
また、方位差ΔFが所定範囲内である場合には、表示装置45は、方位画面M2にステアリングハンドル30を図形で示したハンドル表示部68を表示すると共に、自動操舵の開始が可能であることを示す図形143を表示する。
作業車両1は、ステアリングハンドル30と、ステアリングハンドル30による手動操舵と、走行基準ラインL1に基づくステアリングハンドル30の自動操舵とのいずれかで走行可能な車体3と、走行基準ラインL1の方位F2を示すライン方位表示部130と、車体3の方位F1を示す車体方位表示部140とを有する表示装置45と、を備えている。これによれば、走行基準ラインL1の方位F2に対して作業車両1(車体3)の方位がどの方向に向いているかを表示装置45によって簡単に把握することができる。
【0084】
ライン方位表示部130は、走行基準ラインL1を示すライン表示部130aと、走行基準ラインL1の方位F2であることを示すマーク部130bとを含んでいる。これによれば、圃場等の作業場において走行基準ラインL1の方位F2がどのような向きかを作業者が正確に把握できなくても、表示装置45に表示されたライン表示部130a及びマーク部130bを見ることによって、走行基準ラインL1の方位F2を簡単に把握することができる。
【0085】
車体方位表示部140は、車体3の方位F1を指し示す方位指針部141と、車体3の方位F1に応じて表示位置が変更される車体3を示す車体表示部142を含んでいる。これによれば、作業場において車体3の方位F1がどのような向きかを作業者が正確に把握できなくても、表示装置45に表示された方位指針部141及び車体表示部142を見ることによって、車体3の方位F1を簡単に把握することができる。
【0086】
表示装置45は、走行基準ラインL1の方位F2を基準点とし且つ基準点からの距離に応じて方位を示す値が増減する方位目盛部145を備え、ライン方位表示部130は、基準点に走行基準ラインの方位であることを示すマーク部130bを含んでいる。これによれば、作業者が目盛部145を見ることによって走行基準ラインL1の方位F2が車体3に対してどの方向であるかを簡単に把握することができる。
【0087】
車体方位表示部140は、車体3の方位F1を指し示す方位指針部141を含み、方位指針部141は、方位目盛部145に車体3の方位F1を指し示す。これによれば、方位目盛部145に指示した方位指針部141を見ることによって、車体3の方位F1がどの程度、走行基準ラインL1に対してズレているかを簡単に把握することができる。
車体方位表示部140は、走行基準ラインL1の方位F2と車体3の方位F1との方位差ΔFが所定範囲内である場合と、方位差ΔFが所定範囲から外れている場合とで表示形態が異なる。これによれば、作業者が方位差ΔFが所定範囲内であるか否かを簡単に把握することができる。
【0088】
走行基準ラインL1の方位F2と車体3の方位F1との方位差ΔFが所定範囲内である場合に自動操舵の許可を行う制御装置60Bを備えている。これによれば、手動操舵から自動操舵の切換等を簡単に行うことができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
1 作業車両
3 車体
11 操舵装置
30 ステアリングハンドル
40 測位装置
45 表示装置
52 操舵切換スイッチ
60B 制御装置(第2制御装置)
L1 走行基準ライン