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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】高効率脱硝活性触媒の調製方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/16 20060101AFI20240117BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240117BHJP
   B01J 23/28 20060101ALI20240117BHJP
   B01J 23/30 20060101ALI20240117BHJP
   B01J 23/34 20060101ALI20240117BHJP
   B01J 23/887 20060101ALI20240117BHJP
   B01J 23/889 20060101ALI20240117BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B01J37/16 ZAB
B01D53/94 222
B01J23/28 A
B01J23/30 A
B01J23/34 A
B01J23/887 A
B01J23/889 A
B01J37/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022536500
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 CN2020140493
(87)【国際公開番号】W WO2022134137
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】202011517634.6
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522232499
【氏名又は名称】中▲節▼能万▲潤▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】VALIANT CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲曉▼▲玲▼
(72)【発明者】
【氏名】袁 ▲鵠▼
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼ ▲頌▼▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】孟 凡民
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-051990(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0102925(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の原材料を脱硝反応器に充填し、NH及び不活性ガスを供給し、温度を上昇させ、保温後に自然に冷却することにより、高効率脱硝活性触媒を取得し、
前記触媒の原材料の活性成分は、V、Mo、W、Ce、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Sn、Mn又はLaの酸化物から選択された1つ又は複数であり、担体は、二酸化チタン、チタンシリコン粉末、チタンタングステン粉末、チタンタングステンシリコン粉末、二酸化シリコン又は酸化アルミニウムから選択された1つ又は複数であることを特徴とする高効率脱硝活性触媒の調製方法。
【請求項2】
前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム又はアルゴンのうちの1つであることを特徴とする請求項1に記載の高効率脱硝活性触媒の調製方法。
【請求項3】
温度が300~550℃であり、保温時間が1~10hであることを特徴とする請求項1に記載の高効率脱硝活性触媒の調製方法。
【請求項4】
取得された活性触媒は、粉末触媒、ハニカム触媒又はコルゲートプレート触媒であることを特徴とする請求項1に記載の高効率脱硝活性触媒の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、触媒分野に関し、大気汚染処理技術及び環境保護触媒材料技術に属し、具体的に、高効率脱硝活性触媒の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭を主とするエネルギー構造は、NO排出量の増加を招くことにより、生態環境を深刻に汚染してしまう。よって、NOを如何に効果的に除去するかは、現在の環境保護分野の1つの重要な課題として注目されている。
【0003】
多くのNO排出制御技術においては、アンモニア選択的触媒還元技術(NH-SCR)は、現在、世界で最も多く用いられ、技術が最も成熟している煙道ガス脱硝技術の1つであり、火力発電所、工業用ボイラー等の煙道ガス脱硝に幅広く用いられている。当該技術は、脱硝効率が高く、選択性が良く、操作の信頼性が高く、メンテナンスが便利であるというメリットがある。触媒は、NH-SCRシステムの中の最も核心的な部分であり、その性能がシステム全体の脱硝効率及び安定性に直接的に影響を与え、脱硝プロジェクトの成功の鍵である。
【0004】
触媒を調製する重要なステップは、焙焼である。焙焼は、触媒の活性に影響を与える重要な要素である。高すぎる焙焼の温度は、触媒の焼結を引き起こし、触媒の失活をもたらすことを招いてしまう。異なる焙焼の雰囲気は、金属の活性成分が異なる原子価状態を有し、触媒の活性も異なり、適切な焙焼の雰囲気は、触媒の活性を高めることができる。CN10808007には、MNO-CuSO複合酸化物触媒が開示されており、調製工程では、Nを焙焼の雰囲気とし、当該触媒が比較的高い低温脱硝活性及び比較的良い抗SO中毒能力を有し、現在の触媒の調製工程に比べ、プロセスが複雑であり、大量生産に不利である。
【0005】
焙焼により触媒の活性を高めることは、水素化脱硫触媒に既に用いられているが、煙道ガス脱硝の分野では、まだ空白である。例えば、CN102407148には、水素化脱硫触媒の活性化方法が開示されており、触媒のイン・サイチュ焙焼及び炭化並びに硫化は、触媒の水素化脱硫活性を高めることができる。CN106140323には、水素化触媒の活性化方法及び応用が開示されており、触媒が硫化水素、不活性ガス及び水素を含む混合ガスの存在で硫化され、その脱硫活性及び安定性が改善されている。本発明は、既存の触媒の調製工程を変更しないという前提で、焙焼という1つのステップのみを追加することで、触媒の脱硝活性を高め、その耐用年数を延ばし、大きな経済的利益をもたらすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、既存の触媒脱硝の効率が低いという問題を解決するために、高効率脱硝活性触媒の調製方法を提供する。当該調製方法では、触媒の原材料を脱硝反応器に充填し、NH及び不活性ガスを供給し、温度を上昇させ、保温後に自然に冷却することにより、高効率脱硝活性触媒を取得する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に用いられる触媒の原材料の活性成分は、V、Mo、W、Ce、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Sn、Mn又はLaの酸化物から選択された1つ又は複数であり、担体は、二酸化チタン、チタンシリコン粉末、チタンタングステン粉末、チタンタングステンシリコン粉末、二酸化シリコン又は酸化アルミニウムから選択された1つ又は複数である。最後に形成された活性触媒は、粉末触媒、ハニカム触媒又はコルゲートプレート触媒である。
【0008】
脱硝反応器は、温度が300~550℃に制御され、保温時間が1~10hであり、NH及び不活性ガスが供給され続ける。不活性ガスは、一般的なガスであり、窒素、ヘリウム又はアルゴンの何れか1つである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有益な効果は、次の通りである。本発明の方法により調製された活性触媒は、低温範囲での触媒の脱硝活性を大幅に高めることができ、SO及びHOがない条件での触媒の脱硝効率を高めることができるだけでなく、SOとHOが同時に含まれている条件での触媒の脱硝効率をも高めることができる。既存の触媒の調製工程を変更しないという前提で、触媒の耐用年数が延び、経済的利益が顕著である。粉末触媒の脱硝効率を25%高めることができ、ハニカム触媒又はコルゲートプレート触媒の脱硝効率を20%高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例を参照しながら、本発明を説明するが、挙げられた例は、本発明を解釈するものに過ぎず、本発明の範囲を制限しない。
【0011】
(第一の実施形態)
高効率脱硝活性触媒の調製方法は、以下の各ステップを含む。
【0012】
ステップ(1)においては、CoMnCeTiOハニカム押出触媒を脱硝反応器に入れ、新鮮なサンプルの脱硝性能を測定する。
【0013】
ステップ(2)においては、NHとNを供給し、温度を上昇させる。
【0014】
ステップ(3)においては、5~6h(時間)で300~350℃を保温する。
【0015】
ステップ(4)においては、保温が完了したら、自然に冷ます。
【0016】
ステップ(5)においては、活性化後のサンプルの脱硝性能を測定し、測定条件が500ppmNO+500ppmNH+10%O+N、GHSV=5000h-1である。
【0017】
(第二の実施形態)
高効率脱硝活性触媒の調製方法は、以下の各ステップを含む。
【0018】
ステップ(1)においては、VMoNiTiOハニカム押出触媒を脱硝反応器に入れ、新鮮なサンプルの脱硝性能を測定する。
【0019】
ステップ(2)においては、NHとHeを供給し、温度を上昇させる。
【0020】
ステップ(3)においては、3~4h(時間)で350~400℃を保温する。
【0021】
ステップ(4)においては、保温が完了したら、自然に冷ます。
【0022】
ステップ(5)においては、活性化後のサンプルの脱硝性能を測定し、測定条件が500ppmNO+500ppmNH+10%O+500ppmSO+20%HO+N、GHSV=10000h-1である。
【0023】
(第三の実施形態)
高効率脱硝活性触媒の調製方法は、以下の各ステップを含む。
【0024】
ステップ(1)においては、VMoTiO粉末触媒を脱硝反応器に入れ、新鮮なサンプルの脱硝性能を測定する。
【0025】
ステップ(2)においては、NHとNを供給し、温度を上昇させる。
【0026】
ステップ(3)においては、1~2h(時間)で450~500℃を保温する。
【0027】
ステップ(4)においては、保温が完了したら、自然に冷ます。
【0028】
ステップ(5)においては、活性化後のサンプルの脱硝性能を測定し、測定条件が500ppmNO+500ppmNH+10%O+500ppmSO+20%HO+N、GHSV=50000h-1である。
【0029】
(第四の実施形態)
高効率脱硝活性触媒の調製方法は、以下の各ステップを含む。
【0030】
ステップ(1)においては、VWCeTiO粉末触媒を脱硝反応器に入れ、新鮮なサンプルの脱硝性能を測定する。
【0031】
ステップ(2)においては、NHとNを供給し、温度を上昇させる。
【0032】
ステップ(3)においては、7~8h(時間)で400~450℃を保温する。
【0033】
ステップ(4)においては、保温が完了したら、自然に冷ます。
【0034】
ステップ(5)においては、活性化後のサンプルの脱硝性能を測定し、測定条件が500ppmNO+500ppmNH+10%O+500ppmSO+20%HO+N、GHSV=80000h-1である。
【0035】
(第五の実施形態)
高効率脱硝活性触媒の調製方法は、以下の各ステップを含む。
【0036】
ステップ(1)においては、MnCeTiO粉末触媒を脱硝反応器に入れ、新鮮なサンプルの脱硝性能を測定する。
【0037】
ステップ(2)においては、NHとHeを供給し、温度を上昇させる。
【0038】
ステップ(3)においては、9~10h(時間)で300~350℃を保温する。
【0039】
ステップ(4)においては、保温が完了したら、自然に冷ます。
【0040】
ステップ(5)においては、活性化後のサンプルの脱硝性能を測定し、測定条件が500ppmNO+500ppmNH+10%O+N、GHSV=100000h-1である。
【0041】
(第六の実施形態)
高効率脱硝活性触媒の調製方法は、以下の各ステップを含む。
【0042】
ステップ(1)においては、VWTiOハニカムコーティング触媒を脱硝反応器に入れ、新鮮なサンプルの脱硝性能を測定する。
【0043】
ステップ(2)においては、NHとNを供給し、温度を上昇させる。
【0044】
ステップ(3)においては、2~3h(時間)で400~450℃を保温する。
【0045】
ステップ(4)においては、保温が完了したら、自然に冷ます。
【0046】
ステップ(5)においては、活性化後のサンプルの脱硝性能を測定し、測定条件が500ppmNO+500ppmNH+10%O+500ppmSO+20%HO+N、GHSV=20000h-1である。
【0047】
(第七の実施形態)
高効率脱硝活性触媒の調製方法は、以下の各ステップを含む。
【0048】
ステップ(1)においては、VMoWTiOハニカムコーティング触媒を脱硝反応器に入れ、新鮮なサンプルの脱硝性能を測定する。
【0049】
ステップ(2)においては、NHとArを供給し、温度を上昇させる。
【0050】
ステップ(3)においては、8~9h(時間)で450~500℃を保温する。
【0051】
ステップ(4)においては、保温が完了したら、自然に冷ます。
【0052】
ステップ(5)においては、活性化後のサンプルの脱硝性能を測定し、測定条件が500ppmNO+500ppmNH+10%O+500ppmSO+20%HO+N、GHSV=30000h-1である。
【0053】
(第八の実施形態)
高効率脱硝活性触媒の調製方法は、以下の各ステップを含む。
【0054】
ステップ(1)においては、VMoCeTiOコルゲートプレート触媒を脱硝反応器に入れ、新鮮なサンプルの脱硝性能を測定する。
【0055】
ステップ(2)においては、NHとHeを供給し、温度を上昇させる。
【0056】
ステップ(3)においては、4~6h(時間)で500~550℃を保温する。
【0057】
ステップ(4)においては、保温が完了したら、自然に冷ます。
【0058】
ステップ(5)においては、活性化後のサンプルの脱硝性能を測定し、測定条件が500ppmNO+500ppmNH+10%O+500ppmSO+20%HO+N、GHSV=30000h-1である。
【0059】
(第九の実施形態)
高効率脱硝活性触媒の調製方法は、以下の各ステップを含む。
【0060】
ステップ(1)においては、VWCoTiOコルゲートプレート触媒を脱硝反応器に入れ、新鮮なサンプルの脱硝性能を測定する。
【0061】
ステップ(2)においては、NHとNを供給し、温度を上昇させる。
【0062】
ステップ(3)においては、1~2h(時間)で450~500℃を保温する。
【0063】
ステップ(4)においては、保温が完了したら、自然に冷ます。
【0064】
ステップ(5)においては、活性化後のサンプルの脱硝性能を測定し、測定条件が500ppmNO+500ppmNH+10%O+500ppmSO+20%HO+N、GHSV=20000h-1である。
【0065】
(比較例1)
脱硝触媒の調製方法は、以下の各ステップを含む。
【0066】
ステップ(1)においては、TiOハニカムコーティング触媒を脱硝反応器に入れ、新鮮なサンプルの脱硝性能を測定する。
【0067】
ステップ(2)においては、NHとNを供給し、温度を上昇させる。
【0068】
ステップ(3)においては、2~3h(時間)で400~450℃を保温する。
【0069】
ステップ(4)においては、保温が完了したら、自然に冷ます。
【0070】
ステップ(5)においては、活性化後のサンプルの脱硝性能を測定し、測定条件が500ppmNO+500ppmNH+10%O+500ppmSO+20%HO+N、GHSV=20000h-1である。
【0071】
第一の実施形態~第九の実施形態及び比較例1で取得された触媒を、異なる温度での触媒脱硝効果を測定し、脱硝効率が表1に示されている。
【0072】
【表1】
【0073】
表1の測定結果から分かるように、第一の実施形態~第九の実施形態の触媒は、焙焼による活性化後、脱硝効率は何れも高まり、測定温度の上昇に伴い、活性化サンプルと新鮮なサンプルの差が小さくなった。測定温度が180℃である場合、両者の差が最も大きい(15~30%)。よって、本発明による方法は、低温範囲での触媒の脱硝活性を大幅に高めることができることが示されている。
【0074】
比較例1は、活性成分がなく、TiOが担体であり、新鮮なサンプルと活性化サンプルの脱硝効率が類似しており、180~400°Cでの脱硝効率は、何れも5%未満である。よって、本発明による方法は、担体の脱硝活性を高めることができないことが示されている。
【0075】
上述した内容は、本発明の好ましい実施形態であり、本発明を制限しない。本発明の精神及び原則から逸脱しなければ、行われた全ての補正、等価置換、改良等は、何れも本発明の特許請求の範囲に含まれる。