(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】磁性コア、フープ材、および磁気部品
(51)【国際特許分類】
H02K 1/02 20060101AFI20240117BHJP
H01F 27/245 20060101ALI20240117BHJP
H01F 27/25 20060101ALI20240117BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
H02K1/02 B
H01F27/245 150
H01F27/25
H01F27/24 M
H01F27/24 Q
(21)【出願番号】P 2022547561
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2021032521
(87)【国際公開番号】W WO2022054726
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2020151209
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】阿部 宗光
(72)【発明者】
【氏名】花田 成
(72)【発明者】
【氏名】山下 翔寛
(72)【発明者】
【氏名】大場 達也
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/088264(WO,A1)
【文献】特開2020-126963(JP,A)
【文献】特開2019-134564(JP,A)
【文献】特開2020-092139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/02
H01F 27/245
H01F 27/25
H01F 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア薄帯が複数積層された積層コアを備える磁性コアであって、
それぞれの前記コア薄帯に連設された繋ぎ桟を前記コア薄帯の積層方向に切断することにより形成された切断痕を有し、
前記切断痕は前記コア薄帯の外周よりも内方側に位置
し、
前記積層コアは、積層方向に隣り合う前記コア薄帯が固着部で互いに固着されたブロック薄帯を有し、
前記固着部の少なくとも一部は、前記切断痕が位置する部分を含むことを特徴とする磁性コア。
【請求項2】
コア薄帯が複数積層された積層コアを備える磁性コアであって、
それぞれの前記コア薄帯に連設された繋ぎ桟を前記コア薄帯の積層方向に切断することにより形成された切断痕を有し、
前記切断痕は前記コア薄帯の外周よりも内方側に位置し、
前記積層コアにおいて、積層方向に隣り合う少なくとも2枚の前記コア薄帯が固着部で互いに固着し、
前記固着部の少なくとも一部は、前記切断痕が位置する部分を含むことを特徴とする磁性コア。
【請求項3】
前記積層コアは、積層方向に隣り合う前記コア薄帯が
前記固着部で互いに固着されたブロック薄帯を有する、
請求項2に記載の磁性コア。
【請求項4】
前記コア薄帯は、アモルファス合金材料が熱処理によりナノ結晶化したナノ結晶含有合金材料からなる部分を有する、
請求項1または請求項2に記載の磁性コア。
【請求項5】
前記コア薄帯において前記切断痕が位置する部分は前記アモルファス合金材料からなる、
請求項4に記載の磁性コア。
【請求項6】
前記コア薄帯において前記切断痕が位置する部分は前記ナノ結晶含有合金材料からなる、
請求項4に記載の磁性コア。
【請求項7】
前記固着部では前記切断痕が溶着している、
請求項1または請求項2に記載の磁性コア。
【請求項8】
前記固着部はレーザ溶断部からなる、請求項7に記載の磁性コア。
【請求項9】
前記ブロック薄帯が複数配置された構造を有するコアアセンブリを備える、
請求項1または請求項3に記載の磁性コア。
【請求項10】
第1方向に沿って並ぶ複数の前記ブロック薄帯からなり、複数の前記ブロック薄帯の前記固着部が前記第1方向に並ばない部分を有するシフト配置ブロック薄帯群を有する、請求項9に記載の磁性コア。
【請求項11】
前記積層コアは含浸コートされている、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の磁性コア。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載される磁性コアが備えるコア薄帯となるコア薄帯部と、前記コア薄帯部の面内方向に延びる帯状の基材部と、前記コア薄帯部と前記基材部とを接続する繋ぎ桟と、を備えるフープ材。
【請求項13】
複数の前記コア薄帯部のそれぞれが前記繋ぎ桟により前記基材部に接続されている、請求項12に記載のフープ材。
【請求項14】
前記基材部に位置決め部を有する、請求項12または請求項13に記載のフープ材。
【請求項15】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載される磁性コアを備えることを特徴とする磁気部品。
【請求項16】
モータのステータである、請求項15に記載の磁気部品。
【請求項17】
モータのロータである、請求項15に記載の磁気部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性コア、かかる磁性コアを製造するためのフープ材およびかかる磁性コアを備える磁気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属材料をプレス加工により打抜き成型し、鉄心構成片を形成する打ち抜き工程と、前記鉄心構成片を積層して結合することにより、複数の鉄心構成片を積層鉄心として一体化する積層工程とを含む積層鉄心の製造方法において、前記打ち抜き工程が順送り金型を用いた複数の打ち抜き工程からなり、鉄心構成片の外周形状の打ち抜きに先立ち、連結部を介して金属材料と鉄心構成片とが連結されるように、外周端面に沿って鉄心構成片の外周の一部を構成する複数の開口部を形成する開口部形成工程と、前記連結部を切除し鉄心構成片を金属材料から分離せしめる連結部除去工程とを含むようにしたことを特徴とする積層鉄心の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される積層鉄心の製造方法では、開口部形成工程により形成された連結部は、鉄心構成片の外周に位置する。このため、除去工程において、連結部が切除されると、切除により鉄心構成片の外周の一部が形成されることになる。このため、
図10に示されるように、複数の鉄心構成片801、802、・・・80nが積層されてなる積層鉄心800の最外側面には、開口部形成工程により形成された外周に基づく外側面(開口部外側面810)と除去工程により形成された外周に基づく外側面(除去外側面820)との境界830が存在してしまう。
【0005】
図10にも示される積層鉄心800を用いてなる磁気部品がステータである場合を典型例として、磁気部品を備える磁気製品の磁気回路の磁路はその磁気部品を構成する積層鉄心800の最外側面を通過する場合がある。このような場合には、最外側面に境界830があると、磁路がその境界830を通過するときに磁気特性が不安定化し、結果、磁気製品の動作安定性に影響を及ぼすことが懸念される。
【0006】
本発明は、コア薄帯が複数積層された構造を有する磁性コアであって、磁気特性が安定しやすい磁性コアを提供することを目的とする。本発明は、かかる磁性コアを製造するためのフープ材を提供すること、およびかかる磁性コアを備える磁気部品を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明は、一態様において、コア薄帯が複数積層された積層コアを備える磁性コアであって、それぞれの前記コア薄帯に連設された繋ぎ桟を前記コア薄帯の積層方向に切断することにより形成された切断痕を有し、前記切断痕は前記コア薄帯の外周よりも内方側に位置することを特徴とする磁性コアである。
【0008】
磁性コアとして有用な部分(磁性コアを備える磁気部品において磁路が通る部分、主要部)を含むコア薄帯とコア薄帯以外の部分である基材とが繋ぎ桟で接続された構造を有する薄帯(フープ材)を積層して、得られた積層体においてコア薄帯の積層方向に並ぶ繋ぎ桟を切断部として薄帯(フープ材)からコア薄帯を分離させることにより、切断加工がコア薄帯に与える影響(磁気的影響、機械的影響)を最小限に抑えることができる。上記のように切断加工により形成された切断痕がコア薄帯の外周よりも内方側に位置する場合には、複数のコア薄帯を積層してなる積層コアの最外側面には切断痕が位置しない。このため、積層コアを備える磁性コアを用いてなる磁気部品の磁気特性に、切断痕与える影響を特に少なくすることができる。
【0009】
上記の磁性コアにおいて、前記コア薄帯は、アモルファス合金材料が熱処理によりナノ結晶化したナノ結晶含有合金材料からなる部分を有してもよい。薄帯が熱処理によって物性が変化し、例えば切断加工しにくい材料となる場合であっても、切断部が位置する繋ぎ桟については熱処理を行わないという選択が可能であり、そのようにすることで、繋ぎ桟の切断加工性を確保することができる。
【0010】
この場合において、前記コア薄帯において前記切断痕が位置する部分は前記アモルファス合金材料からなることが好ましい。繋ぎ桟がナノ結晶化せずアモルファス合金材料から構成されていれば、切断加工性に優れる。また、コア薄帯のみが熱処理を受け、繋ぎ桟およびこれに連設される基材がアモルファス合金材料である場合には、熱処理を経たが切断加工を行う前の状態の薄帯における基材や繋ぎ桟の部分を支持部とすることにより、薄帯においてナノ結晶化して脆化した部分(コア薄帯)に触れることなく、薄帯を移動させることができる。それゆえ、熱処理後のコア薄帯を枚葉で積層する工程により磁性コアを作成しても、コア薄帯を破損させることなく磁性コアが作成できる。
【0011】
なお、前記コア薄帯において前記切断痕が位置する部分は前記ナノ結晶含有合金材料から構成されていてもよい。ナノ結晶合金部分は切断加工性が低下していても、繋ぎ桟が切断部となっているため、切断加工がコア薄帯に与える影響を少なくすることができる。
【0012】
上記の磁性コアにおいて、前記積層コアは、積層方向に隣り合う前記コア薄帯が固着部で互いに固着されたブロック薄帯を有していてもよい。固着部を有する場合にはブロック薄帯を一体として取り扱うことができるため、磁性コアの組み立て製造過程で破損などの不具合が生じにくい。
【0013】
上記の磁性コアが固着部を有する場合において、前記固着部の少なくとも一部は、前記切断痕が位置する部分を含んでいてもよい。固着部の磁気特性が他の部分と異なる場合であっても、切断痕が位置する部分を含むように固着部を設ければ、コア薄帯の磁気特性に与える影響を少なくすることができ、好ましい。
【0014】
この場合において、前記固着部では前記切断痕が溶着していてもよい。溶着部では薄帯を構成する材料が熱変性を生じる場合があるが、その場合であっても、熱変性した部分は切断痕に位置するため、磁性コアの磁気特性に影響を与えにくい。
【0015】
固着部では切断痕が溶着している場合において、前記固着部はレーザ溶断部からなることが好ましい。繋ぎ桟の切断部と固着部とが一致するため、ブロック薄帯において積層されるコア薄帯の特性のばらつきが少なく、結果、磁性コアの品質が向上する。
【0016】
上記の磁性コアが固着部を有する場合において、前記ブロック薄帯が複数配置された構造を有するコアアセンブリを備えることが好ましい。コアアセンブリを備える磁性コアは、ナノ結晶薄帯を一枚ずつ積層して積層コアを備える磁性コアに比べて、ナノ結晶薄帯に破損などの不具合が生じにくく、結果、コアアセンブリの含浸コート体である磁性コアの品質を高めることが可能となる。
【0017】
上記の磁性コアがコアアセンブリを備える場合において、第1方向に沿って並ぶ複数の前記ブロック薄帯からなり、複数の前記ブロック薄帯の前記固着部が前記第1方向に並ばない部分を有するシフト配置ブロック薄帯群を有してもよい。固着部は他の部分に比べて磁気特性が異なる場合があるが、そのような場合でも、コアアセンブリに含まれる複数の固着部が一方向に並ばないようにブロック薄帯を配置することにより、磁性コアとしての磁気特性の均一性を高めることができる場合がある。
【0018】
上記の磁性コアにおいて、前記積層コアは含浸コートされていることが好ましい。積層コアが含浸コートされていれば、積層コアから薄帯が剥離する不具合が生じにくい。
【0019】
本発明の他の一態様は、上記の磁性コアが備えるコア薄帯となるコア薄帯部と、前記コア薄帯部の面内方向に延びる帯状の基材部と、前記コア薄帯部と前記基材部とを接続する繋ぎ桟と、を備えるフープ材である。
【0020】
複数の前記コア薄帯部のそれぞれが前記繋ぎ桟により前記基材部に接続されていてもよい。前記基材部に位置決め部を有してもよい。
【0021】
本発明の別の一態様は、上記の磁性コアを備えることを特徴とする磁気部品である。前記磁気部品は、モータのステータであってもよいし、モータのロータであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ナノ結晶薄帯が積層された構造を有し、磁気特性が安定しやすい磁性コアが提供される。また、本発明により上記の磁性コアを備える磁気部品も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(a)本発明の一実施形態に係る磁性コアを表す平面図、および(b)
図1(a)が備えるコアアセンブリを表す図である。
【
図2】(a)
図1(b)に示されるコアアセンブリが備えるブロック薄帯を表す図、および(b)ブロック薄帯の平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る磁性コアの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る磁性コアの製造方法の他の一例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る磁性コアの製造方法の別の一例を示すフローチャートである。
【
図6】(a)本発明の一実施形態に係る磁性コアが備えるナノ結晶薄帯を形成するためのアモルファス薄帯からなるフープ材の製造プロセスの説明図、(b)
図6(a)の製造プロセスにより製造されるアモルファス薄帯からなるフープ材の構成の説明図、および(c)
図6(b)に示されるアモルファス薄帯からなるフープ材の抜き加工部を説明する図である。
【
図7】(a)
図6(b)に示されるアモルファス薄帯からなるフープ材を小分けして得られる連成積層体を表す図、(b)
図7(a)の連成積層体の熱処理を説明する図、および(c)
図7(b)の熱処理における熱処理装置の配置を示す図である。
【
図8】(a)
図7(b)の連成積層体の熱処理の変形例を説明する図、および(b)
図7(a)の熱処理に用いられる熱だめの形状を表す平面図である。
【
図9】(a)本発明の一実施形態に係る磁性コアを備える磁気部品が用いられた磁気製品の一例であるモータの外観図、(b)
図9(a)のモータが備える磁気部品の1つであるロータの外観図、および(c)
図9(a)のモータが備える磁気部品の他の1つであるステータの外観図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0025】
図1(a)は、本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る磁性コアを表す平面図である。
図1(b)は、
図1(a)が備えるコアアセンブリを表す図である。
図2(a)は、
図1(b)に示されるコアアセンブリが備えるブロック薄帯を表す図である。
図2(b)は、ブロック薄帯の平面図である。
【0026】
第1実施形態に係る磁性コア100は、
図1(a)に示されるように、モータのステータの形状を有する。具体的は、磁性コア100は、Z1-Z2方向に沿う中心軸を通る貫通孔20を有する円筒状の本体部10と、円筒状の本体部10の外側面から放射状(XY平面内方向)に延びる複数のティース30とを有する。
図1に示される磁性コア100は、12本のティース30を有し、それぞれのティース30の外側端部には周方向に突出する突出部を有する先端部40が位置する。
【0027】
磁性コア100は、
図1(b)に示される軟磁性体からなるコアアセンブリ50(積層コア)に含浸コートが施されたものである。含浸コートは樹脂系材料からなるコート材をコアアセンブリ50の表面に付着させて含浸させることによって形成される。コート材は例えばエポキシ樹脂からなる。含浸コートの厚さは導電体であるコアアセンブリ50を適切に覆って磁性コア100が適切な絶縁性を有するように設定される。限定されない例示をすれば、含浸コートの厚さは0.1μmから5μmである。
【0028】
コアアセンブリ50は、複数のブロック薄帯51から構成される。
図1(b)に示されるコアアセンブリ50は、5つのブロック薄帯51、52、53、54、55のZ1-Z2方向の積層体からなる。
【0029】
ブロック薄帯51は複数のナノ結晶薄帯511(コア薄帯)の積層体である。ナノ結晶薄帯511はナノ結晶含有合金材料からなる。すなわち、磁性コア100は、コア薄帯(ナノ結晶薄帯511)が積層された積層コア(コアアセンブリ50)を備える。
図2(a)に示されるブロック薄帯51は、n枚のナノ結晶薄帯511のZ1-Z2方向の積層体を備える。
図2(b)に示されるように、ブロック薄帯51の平面視の形状(Z1-Z2方向からみた形状)は、磁性コア100と同様であって、円状の本体部11の中心に貫通部21を有し、本体部11の外側面から12本のティース31が放射状に延出し、各ティース31の外側端部には円周方向に突出する突出部を有する先端部41が位置する。
【0030】
ブロック薄帯51は、積層方向(Z1-Z2方向)に隣り合うナノ結晶薄帯が互いに固着された固着部51Bを有する。
図2(a)に示されるブロック薄帯51では、固着部51Bは、ティース31の先端部41における周方向の突出部42の一方の側面に設けられている。本実施形態では、固着部51Bはレーザ溶断による切断痕51Cが位置する部分と一致する。
【0031】
このように、
図1(b)に示されるコアアセンブリ50は、複数のナノ結晶薄帯511の一体化物として用意されたブロック薄帯51を複数配置して作製されたものである。ブロック薄帯51を用いることにより、ナノ結晶薄帯を一枚ずつ積層して積層コアを形成した場合に比べて、ナノ結晶薄帯に破損などの不具合が生じにくく、結果、コアアセンブリ50の含浸コート体である磁性コア100の品質を高めることが可能となる。
【0032】
また、取り扱い性が容易なブロック薄帯51の配置数を変更することにより、具体的には積層数を変更することにより、コアアセンブリ50全体の大きさを容易に調整することができる。このため、異なる磁気特性を有する磁性コア100を容易に作製することが可能である。さらに、コアアセンブリ50の積層数を変更するだけで磁性コア100の磁気特性を変更できるため、アモルファス薄帯の積層体の熱処理条件を変更することなく、磁性コア100の磁気特性変更が実現される。前述のように、アモルファス薄帯の積層体の枚数が変更すると熱処理条件を新たに設定する必要があるため、このような方法で製造された磁性コアに比べて、本実施形態に係る磁性コア100は、品質の安定性に優れ、生産性にも優れる。
【0033】
上記のとおり、ブロック薄帯51の固着部51Bは、レーザ溶断により形成されたレーザ溶断部であって、切断痕51Cが位置する部分と一致するので、隣り合うナノ結晶薄帯511、511は固着部51Bを通じて電気的に接続される。このため、磁性コア100に渦電流が流れる場合に、渦電流の短絡経路はブロック薄帯51単位となる。すなわち、磁性コア100のコアアセンブリ50は複数のブロック薄帯51が配置された構造を有しているため、短絡経路はブロック薄帯51単位となる。それゆえ、磁性コア100に生じる渦電流損を相対的に少なくすることが可能である。
【0034】
なお、固着部51Bに切断痕51Cが位置していなくてもよい。そのような場合の具体例として、ナノ結晶薄帯511を形成するための切断は機械加工によって行われ、固着部51Bはレーザ溶接によって形成される場合が挙げられる。固着部51Bの固着方法は限定されない。ブロック薄帯51において隣り合うナノ結晶薄帯は接着剤により固着されていてもよい。
【0035】
図1(b)に示されるコアアセンブリ50では、第1方向(Z1-Z2方向)に沿って並ぶ5つのブロック薄帯51、52、53、54、55は、それぞれの固着部51B、52B、53B、54B、55Bが第1方向(Z1-Z2方向)に並ばない部分を有するシフト配置ブロック薄帯群を有する。
図2(b)に示されるように、ブロック薄帯51は4つの固着部51Bを有し、これらの固着部51Bはいずれもティース31の先端部41の突出部42にあり、ブロック薄帯51が有する12個のティース31において2つおきに固着部51Bは配置されている。そして、コアアセンブリ50において隣り合う2つのブロック薄帯(例えばブロック薄帯51、52)はいずれも、2つの固着部51B、52Bが第1方向(Z1-Z2方向)に並んでいない。コアアセンブリ50において複数のブロック薄帯51、52、53、54、55がこのように配置されることにより、固着部51B、52B、53B、54B、55Bが他の部分と磁気的性質が異なる場合であっても、コアアセンブリ50の磁気特性の空間的ばらつきが生じにくくなると期待される。
【0036】
本実施形態において、ナノ結晶薄帯511は、アモルファス合金材料からなるアモルファス薄帯を熱処理によりナノ結晶化させて得られたナノ結晶含有合金材料からなる薄帯である。具体的には、ナノ結晶薄帯に含まれるナノ結晶はbcc-Fe相を主相とする。後述するように、ブロック薄帯51を構成する複数のナノ結晶薄帯511は、ブロック薄帯51に対応するアモルファス薄帯の積層体を一時に熱処理することによって得られる。
【0037】
ブロック薄帯51の厚さは、この熱処理によりアモルファス薄帯からナノ結晶薄帯511を生成しうる厚さに設定されている。アモルファス薄帯の積層体が厚くなると、アモルファス薄帯が結晶化する際に生成する熱が積層体の外部に放出されにくくなり、熱処理の制御性が低下する。したがって、熱処理を適切に進行させる観点から、ブロック薄帯51の厚さには上限が設定されることが好ましい。一方、熱処理により生成したナノ結晶薄帯511は堅く脆いため、熱処理により生成した積層体は、ある程度の枚数のナノ結晶薄帯511が積層されていることが、取り扱い性を高める観点から好ましい。この観点から、ブロック薄帯51の厚さの下限は設定されることが好ましい。
【0038】
限定されない例示をすれば、ブロック薄帯51の厚さは、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい場合がある。また、ブロック薄帯51の厚さは、200μm以上であることが好ましい場合があり、500μm以上であることがより好ましい場合がある。
【0039】
本実施形態に係る磁性コア100の製造方法は限定されないが、次に説明する方法により製造すれば、磁性コア100を生産性高く製造することが可能である。
図3は、本発明の一実施形態に係る磁性コアの製造方法の他の一例を示すフローチャートである。
図6(a)は、本発明の一実施形態に係る磁性コアが備えるナノ結晶薄帯を形成するためのアモルファス薄帯からなるフープ材の製造プロセスの説明図である。
図6(b)は
図6(a)の製造プロセスにより製造されるアモルファス薄帯からなるフープ材の構成の説明図である。
図6(c)は、
図6(b)に示されるアモルファス薄帯からなるフープ材の抜き加工部を説明する図である。
図7(a)は、
図6(b)に示されるアモルファス薄帯からなるフープ材を小分けして得られる連成積層体を表す図である。
図7(b)は、
図7(a)の連成積層体の熱処理を説明する図である。
図7(c)は、
図7(b)の熱処理における熱処理装置の配置を示す図である。
【0040】
図3のフローチャートに示される製造方法では、まず、単ロール法などにより、アモルファス薄帯を製造する(ステップS201)。得られたアモルファス薄帯はナノ結晶薄帯に比べると高い靱性を有するため、得られたアモルファス薄帯を巻き取って、ロール(アモルファスロール201)とする。
【0041】
次に打ち抜きによってフープ材205を生成する(ステップS202)。
図6(a)には、ロールトゥロール方式のフープ材205の製造方法が示されている。アモルファスロール201からアモルファス薄帯202を一方向(具体的にはX1-X2方向X1側)に繰り出し、抜き金型(上型203、下型204)により、アモルファス薄帯202に対して打抜き加工を行う。
【0042】
得られたフープ材205は、
図6(b)に示されるように、最終的に磁性コア100の直接的な構成部材となるコア薄帯部300と、コア薄帯部300の面内方向(具体的にはX1-X2方向)に延びる基材部211と、コア薄帯部300と基材部211とを接続する繋ぎ桟212とからなる抜き加工部350が基材部211の延びる方向(X1-X2方向)に並んで配置されてなる。基材部211には、位置決めのための孔(位置決め部213)が設けられている。
【0043】
図6(c)に示されるように、抜き加工部350のコア薄帯部300の平面視の形状(Z1-Z2方向からみた形状)は、ブロック薄帯51と同様であって、円状の本体部310の中心に貫通部320を有し、本体部310の外側面から12本のティース330が放射状に延出し、各ティース330の外側端部には周方向に突出する突出部341を有する先端部340が位置する。
図6(c)に示されるように、一部の繋ぎ桟212は、X1-X2方向に沿って延在する2つのティース330の先端部340において周方向(Y1-Y2方向)に突出する突出部341に接続するように設けられている。他の一部の繋ぎ桟212は、Y1-Y2方向に沿って延在する2つのティース330の先端部340において周方向(X1-X2方向)に突出する突出部341に接続するように設けられている。このため、繋ぎ桟212の切断部CPは、繋ぎ桟212で切断した後のナノ結晶薄帯511(コア薄帯)の外周となる先端部340の最外側面につながるようには位置しない。それゆえ、
図6(c)に示される抜き加工部350から得られたブロック薄帯51は、
図2(a)に示されるように、先端部41の最外側面に固着部51B(すなわち切断痕51C)が位置しない。
【0044】
切断痕51Cは、切断方法がレーザであるか機械的切断であるかにかかわらず、結晶状態が他の部分と変化する可能性がある。このため、磁性コア100は切断痕51Cが位置する部分において磁気特性が他の部分と異なる可能性がある。それゆえ、磁性コア100を備える磁気部品の磁気回路の磁路が切断痕51Cを通る場合には、その部分において磁気特性が変化し、結果的に、磁気部品の磁気特性の安定性に影響が及ぶ可能性がある。切断方法を最適化することにより、こうした影響を最小限に抑えることは可能である。ブロック薄帯51を備える磁性コア100が用いられた磁気部品の磁気回路は、その最外側面を貫くように磁路が通る場合があるが、例えば
図6(a)に示される抜き加工部350を用いれば、コアアセンブリ50が得られるため、磁気部品の磁気回路の磁路が切断痕51Cを通る可能性をより低減させることができる。
【0045】
打抜き加工により得られたフープ材205は巻き取られて、ロール材206となる。次に、ロール材206からフープ材205を繰り出して小分けする切断加工を行い、所定の数(例えば3)の抜き加工部350がつながった連成部材251を得る(ステップS203)。
図7(a)に示されるように、得られた連成部材251の複数をZ1-Z2方向に積層して、連成積層体360を得る(ステップS204)。ここで、連成部材251の基材部211を支持すれば、かつコア薄帯部300に直接的に接することなく連成部材251を運搬することが可能である。また、連成部材251の位置決め部213を用いることにより、容易に、かつコア薄帯部300に直接的に接することなく、複数の連成部材251をZ1-Z2方向に積層することができる。
【0046】
続いて、得られた連成積層体360の熱処理を行う(ステップS205)。
図7(b)および
図7(c)に示されるように、連成積層体360の連成部材251が有するコア薄帯部300の積層体の数に応じて複数組の熱処理装置395、396を用意し、コア薄帯部300の積層体を各組の熱処理装置395、396で連成積層体360の積層方向(Z1-Z2方向)から挟む。このとき、コア薄帯部300の積層体と熱処理装置370、371との間で位置決めが必要とされるが、コア薄帯部300の積層体に位置決めのための部位が存在していなくても、繋ぎ桟212を介してコア薄帯部300に対する相対位置が確定している基材部211の位置決め部213と熱処理装置395、396との間で位置決めすることにより、コア薄帯部300の積層体と熱処理装置395、396との間で位置決めすることができる。
【0047】
熱処理装置395、396は、コア薄帯部300の温度を制御するためのものであり、それぞれ、ほぼ円柱状の形状を有しコア薄帯部300を直接的に接する熱だめ370、371と、熱だめ370、371を加熱するヒータブロック390、391とを備える。これにより、熱処理装置395、396は、コア薄帯部300に熱を与える機能を有するとともに、コア薄帯部300から熱を受ける機能を有する。このように1組の熱処理装置395、396を複数配置することにより、連成積層体360が有する複数のコア薄帯部300の積層体のそれぞれに加えられる熱処理の条件を等しくすることができる。なお、熱処理の条件は、連成積層体360のコア薄帯部300を構成する全てのアモルファス薄帯において適切に結晶化が進行し、結晶化によって発生した熱に起因する不具合(化合物など不要物の生成、焼損など)が適切に抑制されるように設定される。
【0048】
図8(a)は、
図7(b)の連成積層体の熱処理の変形例を説明する図、および
図8(b)は、
図7(a)の熱処理に用いられる加熱部材の形状を表す平面図である。
【0049】
図7(b)に示されるように、熱処理装置395、396が備える熱だめ370、371がほぼ円柱形状を有している場合には、
図7(c)に示されるように、切断部CP(
図6(c)参照)は熱だめ370に直接的に接触する。このため、熱処理工程(ステップS205)の後の連成積層体360では、切断部CPも熱処理を受けて結晶化している。それゆえ、切断部CPは切断加工性が低下している可能性がある。前述のように、切断部CPが接続している突出部341は磁路が通る可能性は低いものの、切断加工性が低下していると、切断痕51Cの形状均一性が低下し、ブロック薄帯51の形状品質の維持に影響を与える可能性もある。
【0050】
一方、
図8に示されるように、熱だめ370A、371Aの平面視の形状(Z1-Z2方向からみた形状)が、コア薄帯部300の平面視の形状に対応していれば、熱処理工程(ステップS205)において、繋ぎ桟212における先端部340の突出部341につながる繋ぎ桟212は熱処理を受けていないため、その材質はアモルファス合金材料のままである。それゆえ、繋ぎ桟212は切断加工性に依然として優れる。そこで、繋ぎ桟212におけるティース330の先端部340につながる部分(切断部CP)をレーザ溶断して、コア薄帯部300(ナノ結晶薄帯511)の積層体を分離するとともに、この積層体を構成する複数のナノ結晶薄帯511を固着して、
図2(a)に示されるブロック薄帯51を得る(ステップS206)。したがって、
図3のフローチャートに示される製造方法により製造されたブロック薄帯51の固着部51Bは、切断痕51Cでもある。切断痕51Cは、ブロック薄帯51が有するそれぞれのコア薄帯(ナノ結晶薄帯511)に連設された繋ぎ桟212をコア薄帯(ナノ結晶薄帯511)の積層方向に切断することにより形成されたものである。
【0051】
続いて、得られたブロック薄帯51を複数積層して、
図1(b)に示されるコアアセンブリ50が得られる。この際、隣り合う固着部(例えば固着部51B、固着部52B)が第1方向(Z1-Z2方向)に並ばないように、ブロック薄帯51に対して隣り合うブロック薄帯52を貫通部21の中心軸周りで回転させて積層する、回転積層を行う(ステップS207)。
【0052】
コアアセンブリ50に対して必要に応じ2次熱処理(ステップS208)を行い、含浸コートを行う(ステップS209)ことにより、
図1(a)に示される磁性コア100が得られる。含浸コートを行った後に、必要に応じ、バリ取りなどの形状調整が行われる(ステップS210)ことがある。
【0053】
図3に示される製造方法では、レーザ溶断して、切断加工とブロック化加工とを同時に行ったが、これらの工程は別工程で行われてもよい。
図4は、本発明の一実施形態に係る磁性コアの製造方法の他の一例を示すフローチャートである。
【0054】
図4に示されるフローチャートは、
図3に示されるフローチャートとの対比で、ステップS206の「分離切断/ブロック化」工程が、分離切断工程(ステップS206A)とブロック化工程(ステップS206B)とに分割されている点で相違する。この場合には、分離切断工程は例えば機械的切断により行われ、ブロック化工程は例えばレーザ溶接によって行われる。また、
図4に示されるフローチャートは、
図3に示されるフローチャートとの対比で、熱処理工程(ステップS205)がブロック化工程(ステップS206B)の後に行われている。アモルファス合金からなる部分は熱処理工程(ステップS205)を受けると、ナノ結晶化して切断加工性が低下する。したがって、熱処理工程(ステップS205)の前に分離切断工程(ステップS206A)を行えば、繋ぎ桟212の良好な切断加工性を確保することが容易となる。また、アモルファス薄帯が熱処理により結晶化してナノ結晶薄帯511となると、脆化して取り扱い性が低下するが、熱処理工程(ステップS205)の前にブロック化工程(ステップS206B)を行えば、熱処理により得られる生成物は複数のナノ結晶薄帯511が積層・固着したブロック薄帯51となるため、良好な取り扱い性を確保することができる。
【0055】
図3に示される製造方法では、複数の連成部材251を積層して得られた連成積層体360に対して熱処理したが、これに限定されない。連成部材251を熱処理してから積層してもよい。
図5は、本発明の一実施形態に係る磁性コアの製造方法の別の一例を示すフローチャートである。
【0056】
図5に示されるフローチャートは、
図3に示されるフローチャートとの対比で、ステップS204の「積層」工程とステップS205の「熱処理」工程との順番が入れ替わり、熱処理の後に積層が行われている。
【0057】
この場合には、連成部材251を熱処理して連成部材251が備えるコア薄帯部300の材質を、アモルファス合金材料からナノ結晶含有合金材料へと変化させる。これにより、コア薄帯部300は脆化するため、コア薄帯部300を単独で動かして積層しようとすると、破損の可能性が高くなるが、ナノ結晶含有合金材料からなるコア薄帯部300はアモルファス合金材料からなる繋ぎ桟212を介してアモルファス合金材料からなる基材部211と一体化しているため、基材部211を支持することにより、コア薄帯部300を安全に(破損の危険性が十分に低下した状態で)運搬することができる。
【0058】
熱処理(ステップS205)の後に複数の連成部材251を積層し、ナノ結晶含有合金材料からなるコア薄帯部300を備える連成積層体360を得る(ステップS204)。得られた連成積層体360の繋ぎ桟212は熱処理を受けていないため、その材質はアモルファス合金材料のままである。それゆえ、繋ぎ桟212は切断加工性に依然として優れる。そこで、繋ぎ桟212におけるティース330の先端部340につながる部分(切断部CP)をレーザ溶断して、コア薄帯部300(ナノ結晶薄帯511)の積層体を分離するとともに、この積層体を構成する複数のナノ結晶薄帯511を固着することにより、
図2(a)に示されるブロック薄帯51が得られる(ステップS206)。したがって、
図5のフローチャートに示される製造方法により製造されたブロック薄帯51の固着部51Bは、切断痕51Cでもある。
【0059】
図9(a)は、本発明の一実施形態に係る磁性コアを備える磁気部品が用いられた磁気製品の一例であるモータの外観図である。
図9(b)は、
図9(a)のモータが備える磁気部品の1つであるロータの外観図である。
図9(c)は、
図9(a)のモータが備える磁気部品の他の1つであるステータの外観図である。
図9(a)に示されるように、モータ700において、円筒状の形状を有するモータ本体701から、その底面の中心を通る回転軸702がZ1-Z2方向Z1側に突出している。
【0060】
モータ本体701の内部には、
図9(b)に示されるロータ710が、Z1-Z2方向の回転軸を中心として回転可能に配置されている。ロータ710は、底面の一方(Z1-Z2方向Z1側)が開いた中空の円柱形状を有するロータ本体711と、ロータ本体711の他方(Z1-Z2方向Z2側)の底面の中央部に固定された回転軸702とを備える。ロータ本体711の内側壁には、複数の磁石712が周方向に並んで配置されている。
【0061】
ロータ710のロータ本体711と回転軸702との間には円柱状の外形を有するステータ720が配置される。ステータ720は、本発明の一実施形態に係る磁性コア100と、その複数のティース30のそれぞれに巻回されたコイル721とからなる。磁性コア100の貫通孔20には回転軸702が挿通される。磁性コア100のティース30の先端部40のそれぞれに対向するように、ロータ710の磁石712は、ロータ本体711の内側壁に設けられている。
【0062】
本発明の一実施形態に係る磁性コア100は、複数のナノ結晶薄帯511が固着部51Bで固定された積層体であるブロック薄帯51が複数積層されたコアアセンブリ50が含浸コートにより固定されたものであるから、優れた磁気特性を有する。具体的には、コアアセンブリ50が有する複数のブロック薄帯51は、磁気的には接続されているが、電気的には接続されていないため、渦電流損が少ない。また、磁性コア100のコアアセンブリ50では、ナノ結晶薄帯511(コア薄帯)の外周となっている先端部41の最外側面に固着部51B(切断痕)が設けられていないため、モータ700の磁気回路が安定しやすい。それゆえ、モータ700は回転特性が特に安定すると期待される。
【0063】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0064】
本発明に係る磁性コアは、コア薄帯が複数積層された積層コアを備え、それぞれのコア薄帯に連設された繋ぎ桟をコア薄帯の積層方向に切断することにより形成された切断痕を有し、切断痕はコア薄帯の外周よりも内方側に位置していればよい。例えば、上記の説明では、磁性コア100が備えるコアアセンブリ50(積層コア)はブロック薄帯51の積層体であるが、コアアセンブリ50(積層コア)は複数のナノ結晶薄帯511から構成され、固着部51Bが設けられていなくてもよい。このような構成のコアアセンブリ50(積層コア)は、例えば、
図5のフローチャートに示される製造方法において、ステップS206の「分離切断/ブロック化」工程でブロック化を行なわず、ステップS207の「回転積層」工程も行わないことによって、製造することができる。ステップS206では、単なるレーザ切断や機械加工による切断を行うことにより、ブロック化を実施しないことが可能である。
【符号の説明】
【0065】
10、11、310 :本体部
20 :貫通孔
21、320 :貫通部
30、31、330 :ティース
40、41、340 :先端部
42、341 :突出部
50 :コアアセンブリ(積層コア)
51、52、53、54、55 :ブロック薄帯
51B、53B、54B、55B :固着部
51C :切断痕
100 :磁性コア
201 :アモルファスロール
202 :アモルファス薄帯
203 :上型
204 :下型
205 :フープ材
206 :ロール材
211 :基材部
212 :繋ぎ桟
213 :位置決め部
251 :連成部材
300 :コア薄帯部
350 :抜き加工部
360 :連成積層体
370、371、370A、371A :熱だめ
390、391 :ヒータブロック
395、396 :熱処理装置
511 :ナノ結晶薄帯(コア薄帯)
700 :モータ
701 :モータ本体
702 :回転軸
710 :ロータ
711 :ロータ本体
712 :磁石
720 :ステータ
721 :コイル
800 :積層鉄心
801、802、803、80n :鉄心構成片
810 :開口部外側面
820 :除去外側面
830 :境界
CP :切断部