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特許7421671太陽電池の製造方法及び太陽電池モジュール、並びに発電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】太陽電池の製造方法及び太陽電池モジュール、並びに発電システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
H01L31/04 260
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2023018959
(22)【出願日】2023-02-10
(65)【公開番号】P2023133150
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】202210239657.8
(32)【優先日】2022-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517358085
【氏名又は名称】浙江愛旭太陽能科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG AIKO SOLAR ENERGY TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.655, Haopai Road, Suxi Town, Yiwu City, Zhejiang Province, 322009, China
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】王永謙
(72)【発明者】
【氏名】許文理
(72)【発明者】
【氏名】朱▲うぇい▼
(72)【発明者】
【氏名】陳剛
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-103259(JP,A)
【文献】特開2015-159272(JP,A)
【文献】特表2017-511597(JP,A)
【文献】特開2019-121627(JP,A)
【文献】国際公開第2016/111339(WO,A1)
【文献】特開2011-049573(JP,A)
【文献】中国実用新案第207904389(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と半導体領域と膜層を含み、前記基板は第1領域及び/又は第2領域において前記半導体領域に覆われた、電極を設置すべき太陽電池の前記第1領域及び/又は前記第2領域に膜層開孔を行い、開孔領域を形成するステップS1と、
前記太陽電池にシード層を成長させるステップS2であって、前記シード層は、前記ステップS1の前記開孔領域を介して前記第1領域及び/又は前記第2領域の前記半導体領域と導電性接触を形成するステップS2と、
電気めっきすべき前記太陽電池を水平に搬送し、カソード電気めっきブラシを水平に搬送された前記太陽電池上の前記シード層に接触させ、前記シード層電気めっきのためのカソードとし、アノード部材を電気めっき槽の電気めっき液中に設置し、前記電気めっき槽内に設置された移動機構で前記移動機構の入口から出口方向へ前記太陽電池を移動させて、前記太陽電池の電気めっきを通電及び水平搬送中に実現し、前記シード層上に前記電極とするための電気めっき層を形成するステップS3と、を含み
前記シード層は、質量含有量≧70%且つAlである主成分と、質量含有量≦30%且つMo、Ni、Ti、W、Cr、Si、Mn、Pd、Bi、Nb、Ta、Pa、Vのうちのいずれか1つ又は複数を含む補強成分と、を含むことを特徴とする、太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記半導体領域がトンネル酸化層及びドープトポリシリコン層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
物理気相成長法によって前記太陽電池に前記シード層を成長させることを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記ステップS2において、前記シード層を成長させる前に、先にして気相成長法によって前記膜層及び前記半導体領域上に透明導電性酸化物薄膜を成長させることを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記太陽電池上の前記第1領域と前記第2領域とが同時に前記基板の裏面にある場合に、
前記ステップS3で電気めっきされた前記太陽電池の前記電気めっき層のうちで前記電極とする領域にマスクを製造した後、前記太陽電池をエッチングし、その後、前記第1領域上と前記第2領域上の前記電気めっきの絶縁分離を形成するステップA1をさらに含むことを特徴とする、請求項1、2、3、4のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記太陽電池上の前記第1領域と前記第2領域とが同時に前記基板の裏面にある場合に、前記ステップS2と前記ステップS3との間は、前記第1領域上と前記第2領域上の前記電気めっき層の物理的分離を実現するために、前記シード層にマスクを形成するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1、2、3、4のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項7】
前記ステップS3の後に、前記シード層上の前記マスクを洗浄し、その後、湿式化学エッチングを行って前記シード層を除去し、前記第1領域と前記第2領域の前記電気めっき層の絶縁分離を形成するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記透明導電性酸化物薄膜は、前記シード層が湿式化学エッチングによって除去されると同時に除去されることを特徴とする、請求項4に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記太陽電池上の前記第1領域と前記第2領域とが同時に前記基板の裏面にある場合に、前記ステップS2の後に、
前記第1領域上と前記第2領域上の前記シード層の絶縁分離を実現するために、前記シード層にマスクを形成した後に湿式化学エッチングを行うステップB1と、
前記シード層上の前記マスクを除去するステップB2と、をさらに含むことを特徴とする、請求項1、2、3、4のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記太陽電池上の前記第1領域と前記第2領域とが同時に前記基板の裏面にある場合に、前記ステップS2において、前記第1領域上と前記第2領域上の前記シード層の絶縁分離を実現するために、マスクブランクを用いてパターン化された前記シード層を前記太陽電池に形成することを特徴とする、請求項1、2、3、4のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項11】
前記補強成分は非金属成分をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項12】
前記主成分はAlで、含有量≧70%であり、前記補強成分はNiで、含有量≦30%であることを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項13】
前記主成分はAlで、含有量≧70%であり、前記補強成分はWで、含有量≦30%であることを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項14】
前記主成分はAlで、含有量≧70%であり、前記補強成分はTiで、含有量≦30%であることを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項15】
前記主成分はAlで、含有量≧70%であり、前記補強成分はMoで、含有量≦30%であることを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項16】
前記主成分はAlで、含有量≧70%であり、前記補強成分はCrで、含有量≦30%であることを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項17】
前記主成分はAlで、含有量≧70%であり、前記補強成分はSiで、含有量≦30%であることを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項18】
前記シード層は物理気相成長法、スクリーン印刷法、化学気相成長、電気めっき、化学めっき、イオンめっきのうちのいずれか1つの製造方法で前記基板上に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項19】
前記物理気相成長法はスパッタリング及び蒸着を含むことを特徴とする、請求項18に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項20】
前記シード層の上方がさらに導電層で覆われることを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項21】
前記導電層は、Cu、Ag、Alのうちのいずれか1つ又は複数を含むことを特徴とする、請求項20に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項22】
前記膜層はパシベーション膜であり、前記パシベーション膜に前記開孔領域である開口が設置され、前記シード層は前記開口を介して前記半導体領域に接触することを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項23】
前記シード層と前記パシベーション膜との間に透明導電性酸化物薄膜がさらに設置され、前記透明導電性酸化物薄膜は、前記パシベーション膜に設置された前記開口を介して前記半導体領域に接触することを特徴とする、請求項22に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項24】
前記透明導電性酸化物薄膜は、錫ドープ酸化インジウム又は酸化亜鉛系薄膜であることを特徴とする、請求項23に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項25】
前記半導体領域は、トンネル酸化層及びドープトポリシリコンを含むことを特徴とする、請求項22に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項26】
前記導電層を前記シード層に成長させる方法は、電気めっき、物理気相成長、スクリーン印刷、化学めっきのうちのいずれか1つを含むことを特徴とする、請求項20に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項27】
前記導電層の上部が保護層で覆われることを特徴とする、請求項20に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項28】
前記保護層はSn又はAg層であることを特徴とする、請求項27に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項29】
前記保護層は電気めっき又は化学めっきの方法によって前記導電層に成長することを特徴とする、請求項27又は28に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項30】
前記シード層は複数のサブシード層を積層して構成されることを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項31】
前記基板から離れる方向に積層された前記サブシード層中の前記主成分の含有量は徐々に低下することを特徴とする、請求項30に記載の太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池の技術分野に関し、具体的には太陽電池の製造方法及び太陽電池モジュール、並びに発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、太陽電池の電極の製造方法は一般的に、N型シリコンウェハの表面に対して湿式化学法によってテクスチャ化処理を行うステップ1と、N型シリコンウェハの正面にエミッタを製造するステップ2と、N型シリコンウェハの裏面にトンネル酸化層を堆積させ、トンネル酸化層にドープトポリシリコンを堆積させるステップ3と、N型シリコンウェハの両面に対してめっき膜を施すステップ4と、N型シリコンウェハの正面と裏面にレーザーアブレーションを行い、電極グリッド線の所定領域及び電気めっき用の押圧ピン領域を形成するステップ5と、電池の正面及び裏面の電気めっき用の押圧ピン領域を電気めっき電極で挟んで槽式電気めっきを行うステップ6と、を含む。
【0003】
上記方法で製造された電極は幅がレーザーアブレーションの寸法に制限され、レーザーアブレーションは一定の損傷を引き起こすため、レーザーアブレーションの寸法が大きいほど、レーザーによる損傷が深刻になり、また、電極は、正面にあると、太陽光の入射が遮られ、広くなり過ぎると、電池の変換効率が低下する。しかし、レーザーアブレーションの寸法が狭くなると、1)電極の幅が狭いほどグリッド線の脱落を引き起こしやすい問題、2)電極の幅が狭いほど電極の線抵抗が小さく、電池の変換効率に影響を及ぼす問題という、別の2つの問題が発生する。理想的には、電極の幅が大きいほど太陽電池の線抵抗が小さく、太陽電池の使用効率の向上により有利である。従って、上記方法で製造された電極の幅とアブレーション寸法との矛盾をどのように解決するかは、太陽電池製造の技術分野において速やかな解決が望まれる難問となる。
【0004】
なお、上述した従来の電極製造方法は垂直電気めっきの方式を採用し、垂直電気めっきは太陽電池を流れ作業の方式で電気めっきすることができず、電気めっきの効率が低下し、太陽電池の大規模な電気めっきに対する需要を満たすことができず、また、垂直電気めっきにおける電極の押圧点が電気めっき反応を妨害し、電池の外観及び変換効率に影響する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アブレーション寸法に影響しない前提で、太陽電池の電極幅を保証し、グリッド線の脱落を防止し、且つ大規模な電気めっきの需要を満たすことを目的として、太陽電池の製造方法及び太陽電池モジュール、並びに発電システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は次の技術的解決手段を用いる。
【0007】
電極を設置すべき太陽電池の第1領域及び/又は第2領域に膜層開孔を行うステップS1と、前記太陽電池にシード層を成長させるステップS2であって、前記シード層は、ステップS1の開孔領域を介して前記第1領域及び/又は前記第2領域と導電性接触を形成するステップS2と、電気めっきすべき前記太陽電池を水平に搬送し、カソード電気めっきブラシを水平に搬送された前記太陽電池上の前記シード層に接触させ、前記シード層に電気めっき系のカソードを形成させ、アノード部材を電気めっき槽の電気めっき液中に設置し、前記電気めっき槽内に設置された移動機構で前記太陽電池移動機構の入口から出口方向へ前記太陽電池を移動させて、前記太陽電池の電気めっきを通電及び水平搬送中に実現するステップS3と、を含む太陽電池の製造方法を提供する。
【0008】
好ましくは、前記第1領域及び前記第2領域がトンネル酸化層及びポリシリコン層で覆われる。
【0009】
好ましくは、物理気相成長法によって前記太陽電池に前記シード層を成長させる。
【0010】
好ましくは、ステップS2において、前記シード層を成長させる前に、先にして物理気相成長法によって透明導電性酸化物薄膜を成長させる。
【0011】
好ましくは、前記太陽電池上の前記第1領域と前記第2領域とが同時にシリコンウェハの裏面にある場合に、前記製造方法は、電気めっきされたサンプル上の電気めっき電極領域にマスクを製造した後、前記サンプルをエッチングし、その後、前記第1領域上と前記第2領域上との前記電気めっき電極の絶縁分離を形成するステップS4をさらに含む。
【0012】
好ましくは、前記太陽電池上の前記第1領域と前記第2領域とが同時にシリコンウェハの裏面にある場合に、前記ステップS2と前記ステップS3との間は、前記第1領域上と前記第2領域上との電気めっき層の物理的分離を実現するために、前記シード層にマスクを形成するステップをさらに含む。
【0013】
好ましくは、ステップS3の後に、前記シード層上のマスク層を洗浄し、その後、湿式化学エッチングを行って前記シード層を除去し、前記第1領域と前記第2領域との前記電気めっき電極の絶縁分離を形成するステップをさらに含む。
【0014】
好ましくは、前記太陽電池上の前記第1領域と前記第2領域とが同時にシリコンウェハの裏面にある場合に、ステップS2の後に、前記第1領域上と前記第2領域上との前記シード層の絶縁分離を実現するために、前記シード層にマスクを形成した後に湿式化学エッチングを行うステップB1と、前記シード層上のマスクを除去するステップB2と、をさらに含む。
【0015】
好ましくは、前記太陽電池上の前記第1領域と前記第2領域とが同時にシリコンウェハの裏面にある場合に、ステップS2において、前記第1領域上と前記第2領域上とのシード層の絶縁分離を実現するために、マスクブランクを用いて物理気相成長法により成長されたパターン化された電気めっきシード層を前記太陽電池に形成する。
【0016】
好ましくは、前記透明導電性酸化物薄膜は、前記シード層が湿式化学エッチングによって除去されると同時に除去される。
【0017】
好ましくは、電極を設置すべき前記太陽電池は、シリコンウェハの表面に対してテクスチャ化処理を行うステップL1と、前記シリコンウェハの裏面にトンネル酸化層を堆積させ、その後、前記トンネル酸化層に第1極性を有する第1ドープトポリシリコンを堆積させるステップL2と、前記第1ドープトポリシリコンに第1マスクを堆積させるステップL3と、シリコンウェハの裏面の第1領域に予め設置された前記第1マスクを残し、シリコンウェハの裏面の第2領域に予め設置された前記第1マスクを除去するステップL4と、前記第2領域に堆積した前記第1ドープトポリシリコン及び前記トンネル酸化層を除去した後、前記第2領域に第2マスクを再び製造するステップL5と、前記第2領域に前記トンネル酸化層を堆積させ、その後、前記第2領域の前記トンネル酸化層に第2極性を有する第2ドープトポリシリコンを堆積させるステップL6と、前記第2領域に堆積した前記第2ドープトポリシリコンに第3マスクを製造するステップL7と、前記第2領域上の非GAP領域の前記第3マスクを残し、前記第2領域上のGAP領域外の前記第3マスクを除去するステップL8と、前記第1領域に堆積した前記第2マスク、前記第2マスクの上方の材料層、シリコンウェハの裏面の前記GAP領域に堆積した前記トンネル酸化層及び前記第2ドープトポリシリコンを湿式化学方法によって除去するステップL9と、前記シリコンウェハの両面に対してめっき膜を施し、電極を設置すべき前記太陽電池を得るステップL10と、によって製造される。
【0018】
好ましくは、前記シード層は、波長範囲が850~1200nmの間で平均屈折率が2より小さいいずれか1つ又は複数の金属である主成分と、Mo、Ni、Ti、Wのうちのいずれか1つ又は複数を含む補強成分とを含む。
【0019】
好ましくは、前記主成分は、Al、Ag、Cu、Mgのうちのいずれか1つ又は複数を含む。
【0020】
好ましくは、前記補強成分は非金属成分をさらに含む。
【0021】
好ましくは、前記主成分は含有量>50%である。
【0022】
好ましくは、前記主成分はAlで、含有量≧70%であり、前記補強成分はNiで、含有量≦30%である。
【0023】
好ましくは、前記主成分はAlで、含有量≧70%であり、前記補強成分はWで、含有量≦30%である。
【0024】
好ましくは、前記主成分はAlで、含有量≧70%であり、前記補強成分はTiで、含有量≦30%である。
【0025】
好ましくは、前記主成分はAlで、含有量≧70%であり、前記補強成分はMoで、含有量≦30%である。
【0026】
好ましくは、前記主成分はAlで、含有量≧70%であり、前記補強成分はCrで、含有量≦30%である。
【0027】
好ましくは、前記主成分はAlで、含有量≧70%であり、前記補強成分はSiで、含有量≦30%である。
【0028】
好ましくは、前記シード層は、物理気相成長法、スクリーン印刷法、化学気相成長、電気めっき、化学めっきのうちのいずれか1つの製造方法によって前記基板上に形成される。
【0029】
好ましくは、前記シード層の上方がさらに導電層で覆われる。
【0030】
好ましくは、前記導電層は、Cu、Ag、Alのうちのいずれか1つ又は複数を含む。
【0031】
好ましくは、前記シード層と電極が設置される半導体領域との間にパシベーション膜が形成され、前記パシベーション膜に開口が設置され、前記シード層は前記開口を介して前記半導体領域に接触する。
【0032】
好ましくは、前記シード層と前記パシベーション膜との間に透明導電性酸化物薄膜がさらに設置され、前記透明導電性酸化物薄膜は、前記パシベーション膜に設置された前記開口を介して前記半導体領域に接触する。
【0033】
好ましくは、前記透明導電性酸化物薄膜は、錫ドープ酸化インジウム又は酸化亜鉛系薄膜である。
【0034】
好ましくは、前記半導体領域は、トンネル酸化層及びドープトポリシリコンを含む。
【0035】
好ましくは、前記導電層を前記シード層に成長させる方法は、電気めっき、物理気相成長、スクリーン印刷、化学めっきのうちのいずれか1つを含む。
【0036】
好ましくは、前記導電層の上部が保護層で覆われる。
【0037】
好ましくは、前記保護層はSn又はAg層である。
【0038】
好ましくは、前記保護層は電気めっき又は化学めっきの方法によって前記導電層に成長する。
【0039】
好ましくは、前記シード層は複数のサブシード層を積層して構成される。
【0040】
好ましくは、前記基板から離れる方向に積層された前記サブシード層中の前記主成分の含有量は徐々に低下する。
【0041】
本発明は、前記製造方法を応用して製造される太陽電池をさらに提供する。
【0042】
本発明は、前記製造方法で製造された複数の太陽電池を電気的に接続して構成される太陽電池モジュールをさらに提供する。
【0043】
本発明は、電気的に接続された複数の前記太陽電池モジュールを含む太陽光発電システムをさらに提供する。
【0044】
本発明は次の2つの有益な効果を有する。
【0045】
1、電極を設置すべき太陽電池の第1領域及び/又は第2領域に膜層開孔を行い、該太陽電池にシード層を成長させ、該シード層が開孔領域を介して第1領域及び/又は第2領域と導電性接触を形成することにより、電極幅とアブレーションによる損傷との矛盾を解決し、電極幅を大幅に増加可能にし、太陽電池の線抵抗を低下させる一方、長い間電気めっき電極は線幅が狭すぎるのでグリッド線が脱落しやすいという問題を解決する。
【0046】
2、シード層の成長が完了した電気めっきすべき太陽電池に対して独自に開発した水平電気めっき設備で流れ作業化の電気めっきを行うことにより、従来技術の垂直電気めっき方式による電気めっきは効率が低く、大規模な電気めっきに適しないという問題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
以下において、本発明の実施例の技術的な解決手段をより明確に説明するために、本発明の実施例に用いられる図面について簡単に説明する。明らかに、以下に記載される図面は、本発明の一部の実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面から他の図面に想到し得る。
図1】本発明の一実施例で提供される太陽電池の製造方法の実現ステップ図である。
図2】電極を設置すべき太陽電池を製造する方法のステップ図である。
図3】製造された太陽電池の構造模式図である。
図4】太陽電池を水平搬送方式で電気めっきする設備の構造図である。
図5】Cuと他の金属との拡散係数の対比図である。
図6】電極が脱落して故障になる模式図である。
図7】太陽電池の主グリッドと細グリッドとの接続構造模式図である。
図8】従来の電極電気めっき方法の模式図である。
図9】本発明で提供される電極電気めっき方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に図面を参照しながら、本発明の技術的解決手段を具体的な実施形態によりさらに説明する。
【0049】
図面は例示的な説明のためものに過ぎず、実物図ではなく単なる模式図を示し、本特許を限定するものと理解すべきではない。本発明の実施例をより良く説明するために、図面は一部の部材が省略、拡大又は縮小されることがあり、実際の製品の寸法を示すものではなく、当業者であれば、図面における公知の構造及びその説明のいくつかが省略され得ることは理解可能である。
【0050】
本発明の実施例の図面における同一又は類似の符号は、同一又は類似の部材に対応する。本発明の説明において、理解すべきこととして、「上」、「下」、「左」、「右」、「内」、「外」等の用語によって示される方位又は位置関係は、図面に基づいて示される方位又は位置関係であり、本発明を容易に説明し、説明を簡略化するためのものに過ぎず、示された装置又は要素が必ず特定の方位を有したり、特定の方位で構成、操作されたりすることを明示又は暗示するものではなく、したがって、図面中の位置関係を説明する用語は例示的に説明するためのものに過ぎず、本特許を限定するものと理解してはならないことであり、当業者であれば、具体的な状況に応じて上記用語の具体的な意味を理解可能である。
【0051】
本発明の説明において、別に明確に規定、限定しない限り、「取付」等の部材同士の接続関係を示す用語が現れる場合、当該用語は広義的に理解すべきであり、例えば、固定接続としてもよく、取り外し可能な接続又は一体的接続としてもよく、あるいは、機械的接続としてもよく、電気的接続としてもよく、あるいは、直接接続としてもよく、中間媒体による間接的接続としてもよく、2つの部材の内部連通又は2つの部材の相互作用関係としてもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて本発明における上記用語の具体的な意味を理解可能である。
【0052】
本発明の実施例で提供される太陽電池の製造方法は、図1、3に示すように、電極を設置すべき太陽電池の第1領域100及び/又は第2領域200に膜層開孔を行うステップS1と、太陽電池にシード層1を成長させるステップS2であって、シード層1はステップS1の開孔領域2を介して第1領域100及び/又は第2領域200と導電性接触を形成するステップS2と、電気めっきすべき太陽電池を図4に示す水平電気めっき設備により水平に搬送し、図4におけるカソード電気めっきブラシ1を水平に搬送された太陽電池上のシード層に接触させ、シード層に電気めっき系のカソードを形成させ、アノード部材を図4に示す電気めっき槽2の電気めっき液中に設置し、電気めっき槽2内に設置された移動機構で太陽電池移動機構の入口から出口方向へ太陽電池を移動させて、太陽電池の電気めっきを通電及び水平搬送中に実現するステップS3と、を含む。
【0053】
図3に示すように、本発明は、シード層1を利用してステップS1で得られた開孔領域2を介して第1領域100及び/又は第2領域200と導電性接触を形成し、従来技術で製造された太陽電池の電極幅がアブレーション寸法に制限される問題を解決し、電極幅を大幅に増加可能にし、太陽電池の線抵抗を低下させる一方、長い間電気めっき電極は線幅が狭すぎるのでグリッド線が脱落しやすいという問題を解決する。
【0054】
好ましくは、本実施例は物理気相成長法(スパッタリング、蒸着を含む)を用いて太陽電池にシード層を成長させる。
【0055】
本発明は電極を設置すべき太陽電池に大面積のシード層を成長させるため、槽式電気めっき電極がシード層を挟持しやすくなり、それによって水平電気めっきの解決手段を該太陽電池の大規模な生産に応用することができる。水平電気めっき解決手段の導入は、従来の垂直電気めっきの生産能力が低い問題を解決するとともに、電気めっき電極のピン押圧点における電極の欠落及びピン押圧点における大面積のアブレーションによる電気めっき効率低下の問題を解決する。
【0056】
図3に示すように、太陽電池上の第1領域100と第2領域200とが同時にシリコンウェハの裏面にある場合に、好ましくは、ステップS2とステップS3との間は、第1領域100上と第2領域200上との電気めっき層の物理的分離を実現するために、シード層1にマスクを形成するステップをさらに含む。シード層にマスクを形成した後、さらに、好ましくは、ステップS3の後に、シード層上のマスク層を洗浄し、その後、湿式化学エッチングを行ってシード層を除去し、第1領域と第2領域との電気めっき電極の絶縁分離を形成するステップをさらに含む。
【0057】
好ましくは、太陽電池上の第1領域と第2領域とが同時にシリコンウェハの裏面にある場合に、ステップS2の後に、第1領域上と前記第2領域上との前記シード層の絶縁分離を実現するために、シード層にマスクを形成した後に湿式化学エッチングを行うステップB1と、シード層上のマスクを除去するステップB2と、をさらに含む。
【0058】
別の好ましい解決手段として、太陽電池上の第1領域と第2領域とが同時にシリコンウェハの裏面にある場合に、好ましくは、ステップS2において、第1領域上と第2領域上とのシード層の絶縁分離を実現するために、マスクブランクを用いて物理気相成長法(スパッタリング、蒸着を含む)により成長されたパターン化されたシード層を太陽電池に形成する。
【0059】
好ましくは、太陽電池上の第1領域と第2領域とが同時にシリコンウェハの裏面にある場合に、図1に示すように、太陽電池の製造方法は、電気めっきされたサンプル上の電気めっき電極領域にマスクを製造した後、サンプルをエッチングし、その後、第1領域上と第2領域上との電気めっき電極の絶縁分離を形成するステップS4をさらに含む。
【0060】
本実施例において、図2に示すように、電極を設置すべき太陽電池は、シリコンウェハの表面に対してテクスチャ化処理を行うステップL1と、シリコンウェハの裏面にトンネル酸化層を堆積させ、その後、トンネル酸化層に第1極性(正極又は負極)を有する第1ドープトポリシリコンを堆積させるステップL2と、第1ドープトポリシリコンに第1マスクを堆積させるステップL3と、シリコンウェハの裏面の第1領域に予め設置された第1マスクを残し、シリコンウェハの裏面の第2領域に予め設置された第1マスクを除去するステップL4と、第2領域に堆積した第1ドープトポリシリコン及びトンネル酸化層を除去した後、第2領域に第2マスクを再び製造するステップL5と、第2領域にトンネル酸化層を堆積させ、その後、第2領域のトンネル酸化層に第2極性を有する第2ドープトポリシリコンを堆積させるステップL6と、第2領域に堆積した第2ドープトポリシリコンに第3マスクを製造するステップL7と、第2領域上の非GAP領域(図3では符号「3」で示す)の第3マスクを残し、第2領域上のGAP領域(図3では符号「4」で示す)外の第3マスクを除去するステップL8と、第1領域に堆積した第2マスク、第2マスクの上方の材料層、シリコンウェハの裏面のGAP領域に堆積したトンネル酸化層及び第2ドープトポリシリコンを湿式化学方法によって除去するステップL9と、シリコンウェハの両面に対してめっき膜を施し、電極を設置すべき太陽電池を得るステップL10と、によって製造される。
【0061】
電極を設置すべき太陽電池の製造中、本発明は、物理気相成長法でシード層を成長させる時の粒子衝撃をドープトポリシリコン層によって阻止し、製造された太陽電池の性能の向上に寄与する。
【0062】
上記技術的解決手段において、シード層は、波長範囲が850nm~1200nmの間で平均屈折率が2より小さいいずれか1つ又は複数の金属(好ましくはAl(アルミニウム)、Ag(銀)、Cu(銅)、Mg(マグネシウム)のうちのいずれか1つ又は複数)である主成分と、Mo(モリブデン)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、W(タングステン)、Cr、Si、Mn、Pd、Bi、Nb、Ta、Pa、Vのうちのいずれか1つ又は複数を含む補強成分と、を含む。シード層中の主成分は含有量>50%が好ましい。より好ましくは、主成分はAlで、その含有量≧70%であり、補強成分はNiで、含有量≦30%であり、又は、主成分はAlで、含有量≧70%であり、補強成分はWで、含有量≦30%であり、又は、主成分はAlで、含有量≧70%であり、補強成分はTiで、含有量≦30%であり、又は、主成分はAlで、含有量≧70%であり、補強成分はMoで、含有量≦30%であり、又は、主成分はAlで、含有量≧70%であり、補強成分はCrで、含有量≦30%であり、又は、主成分はAlで、含有量≧70%であり、補強成分はSiで、含有量≦30%である。
【0063】
現在、量産化された結晶シリコン太陽電池ではAgペーストを電極材料として使用し、Agペーストのコストが電池の非シリコンコストに占める割合は30%に近い。Agの使用量を減らす又はAgを使用しない生産技術の場合、太陽電池の生産コストを大幅に削減することができる。CuはAgの良好な代替品であり、Agに比べたCuの導電材料としての優位性は下記表aに示す。
【0064】
【表a】
【0065】
上記表aから分かるように、Cuは比較的安定した化学的特徴、優れた延性、十分に低いバルク抵抗及び大量に入手可能で安価である(Ag材料価格の1/72に近い)という優れた特性を有するため、Agの有効な代替品となる。しかし、Cuはその太陽電池への応用を制限する2つの重要な特徴があり、1つは、Cuの拡散係数が大きすぎることであり、図5はよく見られる金属の拡散係数の模式図であり、図5における横、縦座標はそれぞれ温度(単位はケルビンK)の逆数、金属元素の拡散係数を表し、図5から分かるように、Cuの拡散係数は他の金属より遥かに高く、Ag/Al等より>5桁高い。
【0066】
もう1つは、Cu欠陥は正孔に対して大きな捕獲断面を有するため、少数キャリア寿命を大幅に短縮させ、さらに太陽電池の電気的性能を低下させることになり、Cu含有量が少数キャリア寿命及び電池性能に与える影響は下記表bに示す。
【0067】
【表b】
【0068】
上記表bからわかるように、Cu含有量の増加に伴い、バルク少数キャリア寿命が大幅に短縮し、電池効率も大幅に低下する。Cu不純物が1E12/cmしかない場合でも、電池効率が0.29%低下する。
【0069】
従来技術において、通常、Ni(ニッケル)をCu拡散のバリア層として使用し、同時に基板とCu電極を良好に接着でき、その実施形態の大体の手順は、めっき膜が施された基板の用意‐レーザーアブレーション‐Ni電気めっき‐Cu層電気めっきである。しかし、発明者らは研究の過程において、NiをCuのバリア層とすると、その長波長域の反射効果が低く、電池の光閉じ込め効果が低下し、さらに電池の変換効率が低下するという大きな欠点が存在することを発見した。
【0070】
Ni+CuとAgとの電極材料としての電池光学性能を比較したデータは下記表cに示す。
【0071】
【表c】
【0072】
上記表cから分かるように、Ni+Cuの組合せによって電池の短絡電流が大幅に低下し、シミュレーション結果は、短絡電流の密度が0.75mA/cm低下すると予測するが、実験の結果、短絡電流の密度が1.36mA/cm低下し、理論的な予測よりも大きい。
【0073】
以下において、一般的な金属の光閉じ込め効果を分析する。
【0074】
現在、電池シリコンウェハ完成品の厚さは約150umであり、>850nm波長の光であればこの厚さを効果的に透過でき、また、Siの禁制帯幅は1.12eVであるため、>1200nmの光は電子正孔対を励起しにくいことから、発明者らは光閉じ込め効果を考慮する時に主に850~1200nm波長域に注目する。下記表dは異なる金属の界面反射率及び2022年2月時点で調べた市場価格を示す。
【0075】
【表d】
【0076】
上記表dから分かるように、異なる金属間の界面反射率の差異が大きく、Ag/Al/Cu/Mgの4種類の金属では比較的理想的な短絡電流結果を得ることができ、シード層に用いると、いずれも有効な光閉じ込め効果を形成でき、さらに分析すると、Cuはシード層として応用できず、それはシード層の重要な役割の1つはCuを阻止することであるからであり、Mgも、化学的性質が活発すぎるため、好ましい選択肢ではなく、Agも、価格が高いため、好ましい選択肢ではなく、Alは、優れた裏面反射率の効果を有するとともに、化学的性質が比較的安定し、且つ価格がAgの1/223、Cuの1/3だけで安価であるため、理想的なシード層金属である。
【0077】
しかし、単純なAl金属をシード層とした場合には、Alと他の金属との間の接着が弱く、単純なAlをシード層として用いる技術において、製品が信頼性の標準を満たさず、製品の冷熱交替もしくは屈曲、又はモジュール溶接中の溶接点の応力が、いずれもAlと外層金属との分離を招き、脱落を生じさせて、故障を引き起こすという、別の問題が発生する。
【0078】
AlとCuとの結合力が弱く、大面積のグリッド線の脱落を引き起こしやすい。この問題を解決するために、発明者らは、例えばAl/基板の接触面積を大きくしたり、サンプルを昇温して金属同士の相互拡散を促したり、Al/Cu材料の間にTiW等の新材料を挟み込んだりする等、多くの改善方法を試みたが、効果はいずれも理想的ではなく、最終的には、Al材料にCuと良好な相互接続を形成可能な補強成分を直接添加してシード層とすると、Cu電気めっきの後に追加のアニール処理すら必要とすることなく、シード層/電気めっき層の良好な結合が形成され、電気めっき層の接着力が大幅に向上することを発見し、最後にこの問題の解決に至った。
【0079】
実験により、Ni、Mo、Ti、Wの4種類の補強成分は著しい接着力向上効果を発揮することが検証された。
【0080】
さらに、Ni、Mo、Ti、Wの4種類の材料は反射率が低く、過剰に添加すると光学性能が低下することを、発明者らは表dから把握したが、Wを例として、合金成分の性能を成分の強化平均値として簡単に仮定することで、下記表eに示す推定結果を得る。
【0081】
【表e】
【0082】
Wの含有量が30%である場合に、その電流損失が0.36mA/cmであり、これは約0.2%の電池変換効率の低下を招き、この低下が大きいが、CuでAgを代替することによるコスト削減と信頼性問題の解決とを総合して見ると、許容可能であるため、補強成分≦30%を推奨値と考える。
【0083】
さらに、本発明のシード層中の補強成分の割合は不均一に分布してもよく、こうしてより良好な性能効果を得ることができ、その原理は、基板に近い部分では補強成分の含有量を減少させることで光の反射を強化でき、導電層金属と接触する部分では比較的高い補強成分を含有させることで導電層金属との結合力を高めることができることである。
【0084】
異なる電極技術による溶接引張力の対比は下記表fに示す。
【0085】
【表f】
【0086】
上記表fから分かるように、単純なAlシード層はグリッド線の引張力が低く、通常のAg電極より遥かに低いが、AlとCuをTiW材料に直接挟み込んだ後、溶接引張力が向上したが、依然として不十分であるのに対して、本発明におけるAl合金シード層を用いて製造された太陽電池は、溶接引張力が通常のAg電極よりも高い。
【0087】
さらに、シード層の厚さは≧30nmであることが好ましく、実験によると、厚さ30nmのシード層はCu金属の拡散を阻止するのに十分であり、厚さ≦300nmの場合、主な考慮事項はコスト抑制であり、例えば、物理気相成長の方法を用いてシード層を製造する場合、Alの価格が他の金属より低いとしても、Alターゲット材のコストによる影響は依然として無視できず、シード層の厚さが高いほど設備側の生産能力が低く、大規模な生産で普及することに不利であり、したがって、シード層の厚さは30~300nmの間が好ましい。
【0088】
さらに、合金ターゲット材のコストを節約し、且つCu金属の基板への拡散をさらに制限するために、合金シード層と基板との間に1つの透明導電性酸化物層を追加してもよく、長波長域の光は透明導電性酸化物層を透過し、合金層界面で有効に反射することができ、同様に理想的な性能及び信頼性の結果を得ることができる。
【0089】
上記表a、b、cから分かるように、銅導電層と基板との間に本発明において堆積したシード層を追加することで、銅導電層と基板との結合力を増加することができ、且つ太陽電池の光閉じ込め効果を高めることができる。
【0090】
シード層は、物理気相成長法(スパッタリング、蒸着を含む)、スクリーン印刷法、化学気相成長、電気めっき、化学めっきのうちのいずれか1つの製造方法で基板に形成されることが好ましい。シード層は、複数のサブシード層を積層してなることが好ましく、基板から離れる方向に積層したサブシード層中の主成分の含有量が徐々に低下することがより好ましく、基板に近いサブシード層中の主成分の含有量が大きい場合、光反射効果を高め、それにより太陽電池の光閉じ込め効果を高めることができ、基板から遠い(導電層に近い)サブシード層中の補強成分の含有量が大きく、主成分の含有量が比較的少ない場合、またサブシード層と導電層との結合力を確保することができる。
【0091】
シード層の厚さは10~1000nmであることが好ましく、シード層の厚さは30~300nmであることがより好ましい。
【0092】
本実施例で提供される電極は図3に示すように、シード層1の上方に位置する導電層5をさらに含む。該導電層5を製造する材料は、Cu、Ag、Alのうちのいずれか1つ又は複数を含む。導電層をシード層に成長させる方法は、電気めっき、物理気相成長、スクリーン印刷、化学めっきのうちのいずれか1つを含む。導電層の厚さは1~800μmであることが好ましく、導電層の厚さは1~100μmであることがより好ましい。
【0093】
導電層を保護するために、導電層の上部が保護層6で覆われることが好ましい。該保護層6がSn層又はAg層であることがより好ましい。保護層6は、電気めっき又は化学めっきの方法によって導電層5に成長することが好ましい。
【0094】
図3に示すように、シード層1と半導体領域との間にはシード層1を保護するためのパシベーション膜7が形成されることが好ましく、パシベーション膜7上に開口2が設けられ、シード層1は該開口2を介して半導体領域に接触する。シード層1とパシベーション膜7との間には透明導電性酸化物薄膜(TCO,Transparent Conductive Oxide)(図示せず)がさらに設置されることがより好ましく、透明導電性酸化物薄膜(TCO,Transparent Conductive Oxide)は、パシベーション膜に設置される開口を介して半導体領域に接触する。半導体領域は、トンネル酸化層8及びドープトポリシリコン9を含むことが好ましい。
【0095】
本発明は上記製造方法を応用して製造される太陽電池をさらに提供する。
【0096】
本発明は上記製造方法で製造された複数の太陽電池を電気的に接続して構成される太陽電池モジュールをさらに提供する。
【0097】
本発明は電気的に接続された複数の太陽電池モジュールを含む太陽光発電システムをさらに提供する。
【0098】
このように、本発明は、電極を設置すべき太陽電池の第1領域及び/又は第2領域に膜層開孔を行い、該太陽電池にシード層を成長させ、該シード層が開孔領域を介して第1領域及び/又は第2領域と導電性接触を形成することにより、電極幅とアブレーションによる損傷との矛盾を解決し、電極幅を大幅に増加可能にし、太陽電池の線抵抗を低下させる一方、長い間電気めっき電極は線幅が狭すぎるのでグリッド線が脱落しやすいという問題を解決する。また、シード層の成長が完了した電気めっきすべき太陽電池に対して独自に開発した水平電気めっき設備で流れ作業化の電気めっきを行うことにより、従来技術の垂直電気めっき方式による電気めっきは効率が低く、大規模な電気めっきに適しないという問題を解決する。
【0099】
本発明の有益な効果をよりよく理解するために、まずモデリングして本発明による太陽電池の性能向上を計算して評価し、具体的には下記表gに示す。
【0100】
【表g】
【0101】
上記表gから分かるように、従来の技術的解決手段では、電極幅が大きくなるにつれて電極抵抗の損失が徐々に低下するが、正面遮光及び再結合による効率損失が徐々に上昇するという矛盾が生じ、最終的には、電極幅が小さいほど損失が小さい結論を出すが、30μmまで縮小しても効率損失が1.3%に達し、また、この幅では、グリッド線の接着力が不足し、深刻な信頼性問題を引き起こし、これは従来から電気めっき技術が大規模な量産に応用できなかった重要な原因である。
【0102】
それに対して、本発明は、従来技術の矛盾を解決し、1)背面接触電池構造を採用して正面に電極がなく、電極の遮光損失を解決し、2)PVDを用いてシード層を実現し、電極幅をアブレーション寸法より大きくすることを可能にし、レーザー損傷を大幅に低減するとともに、理想的な電極幅を得、3)電極が十分な幅(幅>30μmが好ましく、幅の範囲が80~400μmであることがより好ましい)を有し、電極とシード層、シード層と基板の間の接着力を大幅に高めることができる。
【0103】
電極幅の接着力、信頼性への影響について、以下に重点的に説明する。
【0104】
図6を参照し、電極が脱落して故障になるメカニズムは主に以下の3点がある。
1)故障タイプ1では、横断力である。図6におけるN1は外力を表し、N2は接着力を表し、電極幅が大きいほど、N2とN1とのアームの差が小さく、このタイプの故障リスクを低減することができる。
2)故障タイプ2では、垂直引張力である。電極幅が大きいほど、接着面積が大きく、さらに接着力が大きく、このタイプの故障リスクを低減することができ、
3)故障タイプ3では、モジュール封入材料の分解生成物及び水蒸気による電極へのエッチングである。Ni、Mo、Ti等はCuに比べてより活発であり、特に酸性分解物は長期老化中でシード層を徐々にエッチングし、電極幅が狭くなり過ぎ、製品の長期老化性能に影響する。
【0105】
従来の電気めっき技術の大規模な量産化を制限するもう1つの重要な要因は、生産能力が低すぎ、均一性が悪く、電極挟持領域の外観/性能が悪いことであり、以下において、これについて説明する。
【0106】
従来の技術的解決手段は、電極の下面にレーザーアブレーションを行って電気めっきを必要とする領域を露出させ、次にカソードをアブレーション領域に接続して基板に電気めっき系のカソードを形成させる必要があり、次の問題に臨んでいる。
【0107】
1)図7に示すように、電池全体を縦に貫通する4本の広い電極300は主グリッドと呼ばれ、主グリッド間の微細な電極400は細グリッドと呼ばれる。主グリッドは、細グリッドにより集められた電流を合流させたり、リボンと溶接したりする役割を担うため、大きな幅が必要である。レーザーアブレーション+電気めっきの方式を使用すると、この領域のレーザー損傷は許容されなくなり、そのため、一部の研究者は、主グリッドにAgペーストを使用し、細グリッドに電気めっきを使用する解決手段を折衷的に選択するが、こうして依然としてAgペーストが使用されるため、削減されるコストが限られる。
【0108】
2)従来の太陽電池の電極電気めっき方法は図8に示すように、カソード電極クランプで太陽電池を挟持し(押圧ピンが特に設計されたアブレーション領域と接触する)、その後、電池をシード層がNiであるめっき槽に浸し、Niめっきが完了した後、洗浄槽を経てから水槽まで引き上げて洗浄し、洗浄した後、Cu電気めっき槽に引き上げてCu電気めっきを行い、次いで、再び水槽まで引き上げて洗浄し、その後、Sn槽に引き上げてSnめっきを行う必要がある。挟持の安定性及び比較的小さい応力を保証するために、電極の圧電部位の面積は十分に大きくする必要があり、これは領域的なレーザー損傷と損失を招き、製品の外観に影響する。シリコンウェハ基板の導電性が良くないため、表面電位の不均一が引き起こされ、電池シート内の電気めっきの均一性に影響し、この問題を補うために、多くの場合は単一の電池シート上に複数の電極押圧ピンを設置する必要があり、これは前述した影響をさらに深刻にする。単一の電池シートの異なる領域、異なる電池の位置する槽体の位置が異なるため、その表面の化学薬品濃度にも差異が存在し、これは製品のシート内、シート間の電気めっきの厚さに差を生じさせる。また、機械的構造の制限により単一の槽で挟持される電池シートの数が制限され、その生産能力が限られ、大規模な生産を支えることが困難である。
【0109】
それに対して、本発明では、電極電気めっきの実施形態は図9に示すように、電池シートの裏面に1つのシード層を成長させ、シード層の成長方法は、物理気相成長の技術を用いることが好ましい。このシード層は、電気めっき後に部分的に除去されてもよいし、又は電気めっき前に部分的に除去されてもよいが、少なくとも電気めっき中に、シード層の被覆面積は依然として総面積の>20%を占める。この場合、シード層は、電池の裏面の最外面にあり、シード層はカソード電極と完全に良好に接触することができる。次いで、電池シートを電気めっき槽内でチェーン状に水平に搬送し、ローラが回転して電池シートを移動させ、ローラの一方は導電材料であり電気めっき系のカソード電極を形成する。電池は水平搬送中、カソード電極ローラと連続的又はほぼ連続的な接触を維持し、電気めっきを実現する。上記電極電気めっき方法を採用すれば、1)適切な長さの槽体を設計し、搬送速度を高めるだけで、理想的な単位時間当たりのシート生産量を実現でき、大規模な量産化の需要を満たすことができ、2)シード層の導電率が高いとともに、電池シートの表面が均一に薬液と接触し、電気めっきプロセスの均一性及び安定性が向上し、3)レーザーアブレーションの面積は電極幅から独立し、主グリッド領域、カソード電極接触領域も余分なレーザーアブレーションを必要とせず、レーザー損失が効果的に低減されるという、利点がある。
【0110】
以上の説明から、当業者であれば、本発明の主な有益な効果は、大面積のシード層堆積と水平電気めっきとを有機的に結合したことであると明確に認識でき、従来のシード層電気めっき技術を採用する場合、カソードローラとの良好な接触を形成できず、水平電気めっきを太陽電池の製造に応用できなくなり、大面積シード層によるプロセスに基づいて従来の垂直電気めっき技術を採用する場合、安定性、均一性、生産能力が低い等の問題により、電気めっき技術の大規模な普及を実現することが困難である。
【0111】
さらに、電池電極下の領域にパッシベーション接触技術を採用する場合、即ちトンネル酸化層+ポリシリコンパッシベーション層を成長させる場合、より理想的な効果が得られる。その原因は、1)物理気相成長法(特にスパッタリング)でシード層を成長させると、表面に一定の衝撃損傷を起こしやすいが、基板表面のパッシベーション接触構造はその衝撃損傷を効果的に防ぐことができ、2)パッシベーション接触構造はレーザーアブレーションによる損傷を効果的に低減することができることである。よって、パッシベーション接触構造と物理気相成長シード層+水平電気めっき技術とによるものも、有機的な結合であり、物理気相成長シード層+水平電気めっき技術によるマイナス影響を効果的に解決する。
【0112】
上述した具体的な実施形態は、本発明の好ましい実施例及び適用する技術原理に過ぎないことを言明しておく必要がある。当業者であれば、本発明に様々な修正、同等の代替、変化等を加えることが可能であることを理解すべきである。ただし、これらの変形は、本発明の精神から逸脱しない限り、全て本発明の保護範囲に含まれるものとする。さらに、本願の明細書及び特許請求の範囲で使用されるいくつかの用語は、説明を容易にするためのものに過ぎず、限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9