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  • 特許-即席油揚げ麺及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】即席油揚げ麺及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/113 20160101AFI20240117BHJP
【FI】
A23L7/113
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023066465
(22)【出願日】2023-04-14
【審査請求日】2023-04-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593020108
【氏名又は名称】エースコック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183461
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 芳隆
(74)【代理人】
【識別番号】100121005
【弁理士】
【氏名又は名称】幸 芳
(72)【発明者】
【氏名】香山 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 諒
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 智幸
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-294553(JP,A)
【文献】特開昭53-099344(JP,A)
【文献】特開2003-174853(JP,A)
【文献】国際公開第2017/154656(WO,A1)
【文献】特開2017-023127(JP,A)
【文献】クラシル [オンライン], 2023.03.30 [検索日 2023.07.14], インターネット:<URL:https://www.kurashiru.com/articles/564983df-25a9-4208-be7a-21ead3a11471>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程を備える即席油揚げ麺の製造方法によって得られた即席油揚げ麺であって、
前記混合工程で用いる原材料は、粉末油脂を含有し、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記水分付与工程が、前記α化工程の後、かつ、前記フライ乾燥工程で麺線をカットするまでの間に、前記α化工程によって得られたα化させた麺線に水分を付与する工程であり、
前記フライ乾燥工程で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量が6~10質量%であり、かつ、
前記フライ乾燥工程で得られた即席油揚げ麺の湯戻し時間及び冷却時間の経過後のL値が68~74である、即席油揚げ麺。
【請求項2】
前記混合工程で用いる原材料は、小麦粉、でん粉、及び、植物性たんぱくからなる群より選ばれる少なくとも1種の原料粉を含有する、請求項1に記載の即席油揚げ麺。
【請求項3】
前記即席油揚げ麺の油脂含量が、14.3質量%以下である、請求項1に記載の即席油揚げ麺。
【請求項4】
混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程を備える即席油揚げ麺の製造方法であって、
前記混合工程で用いる原材料は、粉末油脂を含有し、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記水分付与工程が、前記α化工程の後、かつ、前記フライ乾燥工程で麺線をカットするまでの間に、前記α化工程によって得られたα化させた麺線に水分を付与する工程であり、
前記フライ乾燥工程で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量が6~10質量%であり、かつ、
前記フライ乾燥工程で得られた即席油揚げ麺の湯戻し時間及び冷却時間の経過後のL値が68~74である、即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項5】
前記混合工程で用いる原材料は、小麦粉、でん粉、及び、植物性たんぱくからなる群より選ばれる少なくとも1種の原料粉を含有する、請求項4に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席油揚げ麺及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
即席油揚げ(フライ)麺は、通常、生麺線を蒸煮してα化処理した麺を150℃程度の高温の油でフライ処理して乾燥させた麺であり、熱湯を注加するだけ、又は、1分~数分程度炊いて調理するだけで喫食することができる。
しかしながら、即席油揚げ麺は、麺線中に油脂を多く含むことからカロリーが高く、近年の健康意識の向上によって、油脂含量を減少させた即席油揚げ麺が求められている。
【0003】
一方、調理後の即席油揚げ麺は、外観が白っぽく、店舗で提供される茹でた生麺の透明感のある外観とは異なる場合が多い。
近年の消費者の本物志向においては、即席油揚げ麺であっても調理後の外観が、店舗で提供される茹でた生麺のような外観を有することが望ましい。
【0004】
透明感を有する即席麺の製造する方法として、例えば、特許文献1がある。特許文献1には、小麦粉等の麺線材料を用いて麺線をつくる工程と、この麺線を蒸煮する工程を備えた麺類の製法であって、麺線材料として小麦粉に対してでん粉を10~40重量%含有したものを用い、かつ蒸煮工程で麺線に90℃以上の熱湯をスプレーすることを特徴とする透明ノンフライ麺の製法が記載されている。
特許文献1に記載されているのは、透明感を有するノンフライ麺を製造する方法であり、麺を油で揚げる工程を含んでいない。よって、特許文献1に記載のノンフライ麺の製法を、即席油揚げ麺の製造方法にそのまま適用することはできない。
そこで、油脂含量が少なく、かつ、調理後の麺が茹でた生麺に近い外観を有する即席油揚げ麺が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-146577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、油脂含量が少なく、かつ、調理後の麺が茹でた生麺に近い外観を有する即席油揚げ麺、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが、油脂含量が少なく、かつ、調理後の麺が茹でた生麺に近い外観を有する即席油揚げ麺を開発すべく鋭意検討した結果、即席油揚げ麺のたんぱく質含量を6~10質量%とし、調理後のL値を68~74とすることにより、即席油揚げ麺の油脂含量が少なくなり、かつ、調理後の麺の外観が茹でた生麺の外観に近くなることを見出した。本発明はこのような知見に基づき完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
項1.
たんぱく質含量が6~10質量%であり、かつ、
調理後のL値が68~74である、即席油揚げ麺。
項2.
小麦粉、でん粉、及び、植物性たんぱくからなる群より選ばれる少なくとも1種の原料粉を含有する、項1に記載の即席油揚げ麺。
項3.
前記即席油揚げ麺の油脂含量が、14.3質量%以下である、項1に記載の即席油揚げ麺。
項4.
混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程を備える即席油揚げ麺の製造方法であって、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記フライ乾燥工程で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量が6~10質量%であり、かつ、
前記フライ乾燥工程で得られた即席油揚げ麺を調理した後の麺のL値が68~74である、即席油揚げ麺の製造方法。
項5.
前記混合工程で用いる原材料は、小麦粉、でん粉、及び、植物性たんぱくからなる群より選ばれる少なくとも1種の原料粉を含有する、項4に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
項6.
項4又は5に記載の即席油揚げ麺の製造方法によって得られた即席油揚げ麺。
【0009】
なお、本発明のうち、製造工程で規定された即席油揚げ麺は、現時点で、どのような成分までが含まれているか、又は、その構造がどのようなものであるか、その全てを特定することが不可能又はおよそ実際的ではない程度に困難であるため、プロダクトバイプロセスクレームによって記載している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、油脂含量が少なく、かつ、調理後の麺が茹でた生麺に近い外観を有する即席油揚げ麺、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例2の、色素を含まない即席油揚げ麺の調理後の状態を示す写真である。
図2図2は、市販されている従来の色素を含まない即席油揚げ麺の調理後の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.即席油揚げ麺の製造方法
以下、本発明の即席油揚げ麺の製造方法について詳細に説明する。
【0013】
本発明の即席油揚げ麺の製造方法は、混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程を備える。
【0014】
以下、製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0015】
混合工程
即席麺を製造する常法に従って、前記即席麺の原料と水とを混合する(混練する)ことによって麺生地を製造する。
【0016】
原材料
即席油揚げ麺の原材料は、小麦粉、でん粉、及び、植物性たんぱくからなる群より選ばれる少なくとも1種の原料粉を含有する。
【0017】
小麦粉としては、通常、ラーメン、うどん、そば等の各種麺類の原材料として使用される小麦粉を用いることができる。小麦粉の産地、品種等は問わない。小麦を通常の方法により製粉したものを、いずれも好適に使用することができる。例えば、強力粉(たんぱく質含量:約11.8~14.5質量%)、準強力粉(たんぱく質含量:約11.0~13.5質量%)、中力粉(たんぱく質含量:約8.5~11.0質量%)、薄力粉(たんぱく質含量:約7.0~10.0質量%)等に分類される小麦粉を、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0018】
でん粉として、小麦でん粉、じゃがいもでん粉、タピオカでん粉、キャッサバでん粉、コーンスターチ等のでん粉等が挙げられる。前記でん粉として、生でん粉、α化でん粉、エーテル化でん粉等の加工でん粉等を使用することもできる。
でん粉のたんぱく質含量は、小麦粉及び植物性たんぱくと比較すると極めて少ない。例えば、小麦でん粉のたんぱく質含量は約0.2質量%であり、じゃがいもでん粉のたんぱく質含量は約0.1質量%であり、キャッサバでん粉のたんぱく質含量は約0.1質量%である。
【0019】
植物性たんぱくとは、穀物、野菜等から得られるたんぱく質である。具体的には、大豆、小麦、とうもろこし、米等を加工した各種植物由来たんぱく質を使用することができる。小麦から採れる、グルテン、グリアジン、グルテニン、アルブミン、グロブリン等の小麦たんぱく質が好ましく、グルテンがより好ましい。グルテンとしては、市販の粉末グルテン、粉末活性グルテン、又は粉末分解グルテンのいずれも用いることができる。グルテンには、たんぱく質が、例えば、約78~87質量%程度含まれる。
【0020】
前記原料粉のたんぱく質含量の合計は、通常6.3~10.3質量%であり、好ましくは6.5~9.6質量%であり、より好ましくは6.8~8.0質量%である。
ここで、小麦粉、植物性たんぱく、及び原料粉のたんぱく質含量は、マクロ改良ケルダール法を用いて測定することができる。
原料粉中に含まれる小麦粉、でん粉、又は植物性たんぱくの含有量は、原料粉のたんぱく質含量の合計が6.3~10.3質量%となるように適宜設定すればよい。原料粉は小麦粉だけを含んでいてもよいし、小麦粉と植物性たんぱくとを含んでいてもよい。原料粉は、小麦粉、でん粉、及び植物性たんぱくの3種を含むことが好ましい。
【0021】
前記原材料は、前記原料粉(小麦粉、でん粉、及び、植物性たんぱく)に加えて、さらに小麦粉以外の穀粉、粉末油脂等を含むことができる。
小麦粉以外の穀粉として、例えば、そば粉、米粉等が挙げられる。
【0022】
粉末油脂は、粉末状の油脂である。粉末油脂には、油を水中に乳化させた水中油型乳化液、若しくは水を油中に乳化させた油中水型乳化液を乾燥粉末化させたもの、又は、乳化していない油脂を乾燥粉末化させたものが含まれる。粉末油脂としては、乳化していない油脂を乾燥粉末化させたものが好ましい。
粉末油脂に使用される油脂としては、食用であれば特に限定はなく、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、菜種油(キャノーラ油)、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、米油、サフラワー油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、魚油、シア脂、サル脂、イリッペ脂、カカオ脂、豚脂(ラード)、牛脂、乳脂、それらの分別油又はそれらの加工油(硬化及びエステル交換反応のうち1つ以上の処理がなされたもの)等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。油脂として、加工油が好ましく、油脂に水素添加を行い、二重結合をほぼ完全になくした極度硬化油がより好ましい。
粉末油脂の形状は、粉体であれば特に制限されず、例えば、鱗片状、球状、棒状等が挙げられる。
粉末油脂の製造方法は、特に限定されない。製造方法として、例えば、溶解した油脂を冷却塔(チラー)の中へ噴霧して粉末化するスプレークーリング方式、高温気流中に溶解した油脂を微粒化分散して、瞬間的に乾燥粉末を得るスプレードライ方式、溶解した油脂をドラムドライヤーを用いて乾燥するドラムドライ方式等が挙げられる。
粉末油脂には、極度硬化油を乾燥粉末化したものを好ましく使用することができる。
【0023】
粉末油脂を配合する場合、その粉末油脂の配合量(配合割合)としては、前記原料粉の合計量に対して、通常、0.01~6質量%であり、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.3~4質量%である。
【0024】
これらの原材料は、それぞれ1種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0025】
さらに、前記原材料に、必要に応じて、即席麺の製造において一般に使用されている添加剤、例えば、アルカリ剤(かんすい)、食塩、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、イノシン酸等)、醤油(例えば、薄口、濃口等)、チキンエキス、増粘剤、麺質改良剤、液体状の油脂、乳化油脂、カロチノイド色素等の色素、保存料等を添加することができる。
【0026】
これらの添加剤は、水と混合して使用するが、添加方法としては、原料粉等と一緒に固体の状態で添加してもよく、練り水に溶解又は懸濁させて水溶液又は懸濁液として添加してもよい。
【0027】
前記混合工程において、前記原材料に練り水を加え、次いで、ピンミキサー等の製麺ミキサーを用いて、各種原材料が均一に混ざるように混練して麺生地を製造する。
混合工程の温度は、特に限定はなく、例えば、通常、18~32℃であり、好ましくは20~28℃であり、より好ましくは22~26℃である。
混合工程の時間は、特に限定はなく、例えば、通常、6~16分であり、好ましくは8~14分であり、より好ましくは10~12分である。
ここで、混合工程において使用される水(練り水)の量は、麺生地の形成に必要な水分量であればよい。例えば、原料粉の総重量に対する水の比率(加水率)が、25質量%~50質量%程度であればよい。加水率は、32~45質量%程度が好ましく、36~42質量%程度がより好ましく、38~40質量%がさらに好ましい。
なお、α化工程前の麺(生麺)に含まれる水分量として、前記混合工程で原料粉に添加される水の比率(加水率)で表すことができるが、加水率以外にも、製麺工程後(α化工程前)の麺線の水分値で表すことができる。
【0028】
製麺工程
得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する。麺生地を減圧下で押し出すことで、麺生地に含まれる空気を抜くことができる。
具体的には、エクストルーダー又は押出成型機を用いて、麺生地を減圧下においてダイスより押し出すことにより、小塊又は板状とする。使用する装置として、例えば、特開昭61-132132号公報に記載されている麺生地製造装置等が挙げられる。
製麺工程における具体的な使用条件としては、まず、エクストルーダー(押出スクリュー)又は押出成型機の装置内を脱気して、真空度(ゲージ圧)を-0.090MPa~-0.098MPaにする。得られた上記麺生地を前記真空度に調整した減圧下の装置内を通し、直径5mm~50mm程度、好ましくは直径6~24mm程度、より好ましくは7~12mm程度のダイスから、円筒状の生地(ドウ)として押し出す。その生地を圧出時に間欠的に切断することで、長さ10mm~100mm程度の小塊とする。その後、得られた小塊を常法に従って麺線化する。具体的には、得られた小塊を整形及び複合して麺帯を調製し、この麺帯を複数の圧延ロールを用いて圧延し、切刃を用いて切り出すことによって麺線を製造する。
前記製麺工程により得られた麺線の水分値は、33~38質量%が好ましく、34~36質量%がより好ましく、34.5~35.5質量%がさらに好ましい。製麺工程後の麺線の水分値は、OHAUS社製ハロゲン水分計MB45により求めることができる。
【0029】
α化工程
α化工程において、麺線に含まれるでん粉がα化(糊化)する。麺線をα化させる方法として、蒸気を使った蒸し処理を行う。蒸し処理は、蒸気を使用した蒸機を使用して行うことが好ましい。蒸し処理で使用する蒸気の質として、乾いた蒸気、湿り気のある蒸気等を使用することができ、得られる麺線の食感をよりよくするためには、湿り気のある蒸気を使用することが好ましい。あるいは、ボイラーで発生させた蒸気を減圧して蒸機内に噴射し、その蒸機の中を、麺線を通過させることによってα化させてもよい。
α化工程の蒸気の温度は、特に限定はなく、例えば、通常、96~110℃であり、好ましくは98~105℃であり、より好ましくは99~100℃である。
α化工程の時間は、特に限定はなく、例えば、通常、1~3.5分であり、好ましくは1.5~3分であり、より好ましくは2~2.5分である。
【0030】
水分付与工程
水分付与工程において、前記α化工程によって得られたα化させた麺線に水分を付与する。該水分付与工程は、前記α化工程の後、かつ、後述するフライ乾燥工程で麺線をカットする前までの間に行われる。すなわち、本願発明における水分付与工程は、後述するフライ乾燥工程でカットした麺線にほぐし液を付与することを含まない。
水分の付与(補給)方法は、特に制限はなく、水、又は、食塩、調味料等を含む水溶液(着味液)を、前記製麺工程で得られた麺線に、雨だれ式又はスプレー式に散布(噴霧)する方法、前記製麺工程で得られた麺線を前記水等に浸漬する方法等が挙げられ、浸漬する方法が好ましい。前記着味液には乳化剤又は油脂を添加してもよい。
【0031】
水又は着味液の温度は、30℃以上70℃以下であり、40℃以上60℃以下が好ましく、45℃以上55℃以下がより好ましい。
前記水分付与工程で麺線に付与される水分量(麺線への水分付与量、水の添加量)は、フライ乾燥工程において20cm程度にカットする前の麺線の水分量が48質量%~57質量%になるように調節すればよい。具体的には、前記水分付与工程後の麺線の水分値(麺線への水分付与量、水の添加量)は、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり25ml~47ml程度であり、26ml~33ml程度がより好ましく、27ml~31mlがさらに好ましい。例えば、前記製麺工程で得られた麺線約76gを1食分とした場合、19ml~36ml程度であり、20ml~25ml程度がより好ましく、20ml~23ml程度がさらに好ましい。水分付与工程後の麺線の水分値は、OHAUS社製ハロゲン水分計MB45により求めることができる。なお、α化工程を蒸し処理で行う場合、製麺工程で得られた麺線の質量とα化工程で得られた麺線の質量とは略同じである。
【0032】
水分付与工程の後、直ちにフライ乾燥を行うのではなく、麺線をそのまま静置する時間を設けることが好ましい。麺線を静置しておくことで、麺線表面に付着した水分を麺線内部に吸収させることができる。麺線を静置する時間は特に限定されないが、通常1~3.5分間程度、好ましくは1.5~3分間程度、より好ましくは2~2.5分間程度である。
【0033】
フライ乾燥(油揚げ)工程
次いで、得られた麺線を、20cm程度にカットする。カットした麺線を、フライ乾燥用フライ枠(例えば、円錐台形状のフライ枠等)に投入する。この麺線には、1食分あたり20ml程度のほぐし液を付与することができる。前記ほぐし液の付与には、麺線の結着の防止、フライ乾燥用フライ枠中での麺線のさばけ(麺線をフライ枠に投入する際の、そのフライ枠への麺線の収まりやすさ、及び、フライ枠に投入した麺線を圧縮エアー等で均す際の麺線の整形のされやすさ)を向上させる等の効果がある。前記ほぐし液には、水分付与工程で使用する水又は着味液を使用してもよいし、水に乳化剤、油脂、増粘多糖類等を溶解させた液、着味液に乳化剤、油脂、増粘多糖類等を添加した液等を使用してもよい。そして、この麺線は食用油を用いてフライ乾燥を行う。
フライ乾燥は、フライヤーと呼ばれる器具を用いることができる。フライ温度は、例えば、150℃前後で行うことができる。なお、フライヤーによる麺の乾燥は、食用油の温度を、最初は130~140℃程度の比較的低めの温度に設定し、途中で155~165℃程度の温度に上げて行ってもよい。
フライ乾燥に用いる食用油は、特に限定はなく、例えば、パーム油、ラード、ごま油等が挙げられる。フライ乾燥後の麺塊の水分としては、3~6質量%となるように乾燥する。
具体的なフライ工程としては、麺線を投入した金属製の枠に金属製の上蓋で蓋をし、その枠に入れた麺線をフライ槽内を移動させ、麺を油中に浸漬させることにより、麺中の水分を蒸発させ、麺を乾燥する。
【0034】
フライ乾燥の後、蓋を外し、容器から麺塊を取り出す。取り出した麺塊は、所定時間冷却することで、即席油揚げ麺が得られる。冷却後の麺塊の重さは、約58g(58g±3g)程度である。
【0035】
冷却した即席油揚げ麺は、包装工程に移り、スープ、具材等とともにカップに包装され、即席麺製品(カップ入り即席麺)として販売される。
【0036】
2.即席油揚げ麺
本発明の即席油揚げ麺は、たんぱく質含量が通常6~10質量%であり、好ましくは6.0~10.0質量%であり、より好ましくは6.4~9.8質量%であり、特に好ましくは7~9.5質量%である。
【0037】
本発明の即席油揚げ麺は、油脂含量が低減されている。その油脂含量としては、通常14.3質量%以下、好ましくは9~14質量%、より好ましくは9~12質量%、より好ましくは9~10質量%である。なお、油脂含量は、例えば、ソックスレー抽出法等の公知の方法で測定することができる。
【0038】
本発明の即席油揚げ麺は、調理後に色差計(コニカミノルタ株式会社製、色彩色差計 CR-410)で測定したL値(明度)が通常68~74であり、好ましくは69.0~74.0であり、より好ましくは70~73であり、特に好ましくは71~72である。
本明細書において、「調理後」は、即席油揚げ麺の湯戻し時間及び冷却時間の経過後を意味する。前記湯戻し時間は、使用する原料、麺の幅又は厚みによって変化し、例えば、3~6分間の間で適宜調整することができる。
例えば、麺の幅は、麺を切断する際に使用する切刃の番手によって変わる。また、切刃の種類によって、麺の形状(断面)が変わる。切刃として角刃を用いる場合は、断面がうどん等のように角張った麺線を得ることができる。また、丸刃を用いる場合には、ラーメン等の断面が丸い麺線を得ることができる。
例えば、麺の厚みは0.8~1.6mm程度に適宜設定することができる。麺の厚みが厚くなれば、湯戻し時間も長くなる。
湯戻し時間が3分の即席油揚げ麺は、18番角、22番丸等の番手の切刃を用い、厚みを0.8~1.6mm程度に適宜設定することで得ることができる。また、湯戻し時間が5分の即席油揚げ麺は、12番角、16番丸等の番手の切刃を用い、厚みを0.8~1.6mm程度に適宜設定することで得ることができる。使用する切刃番手(麺幅)と厚みとが異なる4種類の即席油揚げ麺を調理した後、麺のL値を測定したところ、L値はほとんど変わらないことがわかった。
前記冷却時間は、湯気の影響を受けずに色差の測定が可能となるまでの時間であり、例えば、3~5分間の間で適宜調整することができる。冷却時間が短すぎる場合(湯戻し後すぐ、又は冷却時間が1~2分間)は、湯気の影響が色差に反映するため、好ましくない。冷却時間としては、3分間が好ましい。
【0039】
ここで、本発明者らが、市販の生麺又はチルド麺3品を所定の時間茹でて、色差計でL値(明度)を測定したところ、68~72程度であった。
本発明の即席油揚げ麺の調理後のL値は、上記市販の生麺又はチルド麺を茹でた後のL値(68~72)に近いことがわかった。なお、従来の市販の即席油揚げ麺(8品)の調理後のL値は、75~83程度であった。
即席油揚げ麺の場合、単に、L値が、市販の生麺又はチルド麺のL値に近づけるだけでは、市販の生麺又はチルド麺のような透明感がある麺を得ることはできないものと考えられる。即席油揚げ麺の場合、本発明のように、たんぱく質含量が特定の6~10質量%であり、かつ、調理後のL値が68~74に設定することで、市販の生麺又はチルド麺のような透明感に近づけることがわかった。なお、本明細書において、「透明感」とは、例えば、麺の表面につやがあり、肉眼で麺をもつ箸の色がわずかに透けて見えるような状態等をいう。
【0040】
本発明の即席油揚げ麺のa値及びb値は、例えば、使用する原料の種類、例えば、色素の有無、使用する色素の種類及び配合量等によって変化するものであり、特に限定されない。
例えば、色素を含まない即席油揚げ麺の調理後のa値は、0.03~3.5程度であり、b値は20.8~28.7程度であり、色素を含む即席油揚げ麺の調理後のa値は、-1.9~-0.2程度であり、b値は36.5~37.6程度であるが、前記L値が68~74であれば、前記a値及びb値が前記数値範囲に含まれない場合であっても、本願発明に含まれる。
【実施例
【0041】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「約」とは、麺の質量の場合には、±(プラスマイナス)3gを意味しており、温度の場合には、±3℃を意味している。
【0042】
<原材料>
使用する原材料は、以下のとおりである。
小麦粉
小麦粉A(たんぱく質含量:9.7質量%)
でん粉
加工でん粉(酢酸でん粉) 松谷化学工業株式会社製、「松谷さくら」(商品名)
植物性たんぱく
グルテンA:グリコ栄養食品株式会社製、「A-グルCC」(商品名)(たんぱく質含量:79.04%)
粉末油脂
理研ビタミン株式会社製、「スプレーファット(登録商標)PM」(商品名)
食塩
ダイヤソルト株式会社製、並塩
かんすい
オリエンタル酵母工業製、「粉末かんすい 赤」(商品名)
色素
理研ビタミン株式会社製、「リケカラー(登録商標)YGL-81」(商品名)(クチナシ黄色素、液体)
【0043】
混合工程で使用する練り水は、以下のとおりである。
練り水A:食塩18g、かんすい2.8gを水400gに溶解した液
練り水B:食塩18g、かんすい2.8g、及びクチナシ色素0.5gを水400gに溶解した液
【0044】
実施例1
(混合工程)
小麦粉A(たんぱく質含量:9.7質量%)650g、でん粉(加工でん粉)350g、及び、植物性たんぱく(グルテンA)(たんぱく質含量:79.04質量%)15gを横型のピンミキサーに投入し、3分間プレミックスを行った。
【0045】
<たんぱく質含量の測定>
この時点で、原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)に含まれるたんぱく質含量の合計を、マクロ改良ケルダール法により測定したところ、7.0質量%であった。
【0046】
次いで、原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)の混合物に、練り水A(食塩18g、かんすい2.8gを水400gに溶解した液)を加え、横型のピンミキサーで10分間混合又は混練した。
【0047】
(製麺工程)
真空押出機(株式会社武蔵商会製、MV-8型)を用い、得られた麺生地を、減圧した装置内(真空圧(ゲージ圧)-0.090MPa~-0.098MPa)を通して直径9mmのダイスから押し出し、小塊状に成形した。得られた小塊状の生地を、ロールに通して麺帯にし、それを2枚合わせた状態で再度ロールを通して一体化させ、さらに4対のロールに通して圧延した後、16番丸の切刃を通して、厚み1.20mmの麺線を得た。なお、この時点における麺線の水分量をOHAUS社製ハロゲン水分計MB45により測定したところ、37.6質量%であった。
【0048】
(α化工程)
得られた麺線を、ボイラーで発生させた蒸気を減圧させた後に噴射している蒸機の中を2分間通過させてα化させた。
【0049】
(水分付与工程)
得られたα化工程後の麺線を、40℃の水に10秒間浸漬させた。この浸漬による麺線への水分付与量は1食分の麺線(約76g)につき21.7ml(製麺工程で得られた麺線100g当たり28.6ml)であり、水分付与後の麺線の水分量をOHAUS社製ハロゲン水分計MB45により測定したところ、51.5質量%であった。
【0050】
(フライ工程)
その後、麺線を20cm程度の長さにカットし、1食当たり20mlのほぐし液を付与し、1食ずつ円錐台形状のフライ枠(天面内径87mm×底面内径72mm×高さ62mm、底面に直径3.2mmの丸孔を複数形成)に充填した。直径3.2mmの丸孔が複数形成された上蓋で蓋をして、約135℃のパーム油に30秒間、その後約160℃のパーム油に90秒間浸漬して、麺塊を乾燥させた。フライ乾燥の後、上蓋を外し、フライ枠から麺塊を取り出し、冷却することにより、即席油揚げ麺(1食分は約58g)が得られた。なお、約58gは、58±3g(55~61g)である(以下、同様)。
【0051】
作製した即席油揚げ麺について、以下の試験を行った。
【0052】
<たんぱく質含量>
得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量を、混合工程後と同様に、マクロ改良ケルダール法により測定した。
実施例1で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、7.2%であった。
【0053】
<油脂含量測定>
油脂含量は、得られた即席油揚げ麺をジエチルエーテルによるソックスレー抽出法により測定した。
具体的には、即席油揚げ麺(約58g)3食を破砕してから均一になるように混合し、混合物10gを測定サンプルとして使用した。
実施例1で得られた即席油揚げ麺の油脂含量は、9.9質量%であった。
【0054】
<L 値、a 値、及びb 値の測定>
得られた即席油揚げ麺をカップに入れ、熱湯を注ぎ、5分間待った。麺をざるにとり、湯切りを10回行った。皿にできるだけ平らになるように置き、3分間放冷した。その後、色差計(コニカミノルタ株式会社製、色彩色差計 CR-410)を用い、L値、a値、及びb値を測定した。測定は3回行い、平均値を求めた。なお、測定は色差計の先端部で麺を覆い、外光を遮断した状態で行うため、L値、a値、及びb値に対する外環境の影響はないと考えられる。
実施例1で得られた即席油揚げ麺は色素を含まない麺であり、調理後のL値は72.04であり、a値は2.22であり、及びb値は25であった。
【0055】
実施例2
実施例1の混合工程を、以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
(混合工程)
小麦粉A(たんぱく質含量:9.7質量%)650g、加工でん粉(酢酸でん粉)(松谷化学工業株式会社製、松谷さくら(商品名))350g、及び、植物性たんぱく(グルテンA)(たんぱく質含量:79.04質量%)15gを横型のピンミキサーに投入し、3分間プレミックスを行った。原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)のたんぱく質含量の合計は、7.0質量%であった。
次いで、原料粉混合物に、粉末油脂(スプレーファットPM)を20g(原料粉の合計量に対して2.0質量%)、及び、食塩18g、かんすい2.8gを水400gに溶解した練り水を加え、横型のピンミキサーで10分間混合又は混練した。
実施例2で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、7.0%であり、油脂含量は、9.3質量%であった。また、実施例2で得られた即席油揚げ麺は色素を含まない麺であり、調理後のL値は72.72であり、a値は2.33であり、及びb値は25.29であった。
さらに、実施例2で得られた、色素を含まない即席油揚げ麺を調理した後の麺を箸で持った状態を写した写真を図1に示し、市販の色素を含まない即席油揚げ麺を調理した後の麺を箸で持った状態を写した写真を図2に示す。図1図2とを比較すると、図1の実施例2の即席油揚げ麺のほうが、麺の表面につやがあり、箸の色が透けて見える部分があるようにみえた。また、図1図2とを比較して、茹でた生麺の外観に近いのは、図1に示す麺であった。
【0056】
実施例3
混合工程において、粉末油脂(スプレーファットPM)の配合量を40g(原料粉の合計量に対して3.9質量%)にした以外は、実施例2と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)のたんぱく質含量の合計は、7.0質量%であった。
実施例3で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、6.9%であり、油脂含量は、11.1質量%であった。また、実施例3で得られた即席油揚げ麺は色素を含まない麺であり、調理後のL値は73.93であり、a値は1.76であり、及びb値は25.18であった。
【0057】
実施例4
混合工程において、植物性たんぱく(グルテンA)の配合量を40gにした以外は、実施例1と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)のたんぱく質含量の合計は、8.6質量%であった。
実施例4で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、8.6%であり、油脂含量は、11.6質量%であった。また、実施例4で得られた即席油揚げ麺は色素を含まない麺であり、調理後のL値は73.56であり、a値は2.4であり、及びb値は25.46であった。
【0058】
実施例5
混合工程において、植物性たんぱく(グルテンA)の配合量を40gにした以外は、実施例2と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)のたんぱく質含量の合計は、8.6質量%であった。
実施例5で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、9.0%であり、油脂含量は、10.7質量%であった。また、実施例5で得られた即席油揚げ麺は色素を含まない麺であり、調理後のL値は72.72であり、a値は1.93であり、及びb値は24.28であった。
【0059】
実施例6
混合工程において、植物性たんぱく(グルテンA)の配合量を40g、及び粉末油脂(スプレーファットPM)を40g(原料粉の合計量に対して3.8質量%)にした以外は、実施例2と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)のたんぱく質含量の合計は、8.6質量%であった。
実施例6で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、8.7%であり、油脂含量は、12.6質量%であった。また、実施例6で得られた即席油揚げ麺は色素を含まない麺であり、調理後のL値は71.15であり、a値は2.23であり、及びb値は25.18であった。
【0060】
実施例7
混合工程において、植物性たんぱく(グルテンA)の配合量を25gにした以外は、実施例2と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)のたんぱく質含量の合計は、7.7質量%であった。
実施例7で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、7.5%であり、油脂含量は、12.3質量%であった。また、実施例7で得られた即席油揚げ麺は色素を含まない麺であり、調理後のL値は73.57であり、a値は0.03であり、及びb値は20.78であった。
【0061】
実施例8
混合工程において、粉末油脂(スプレーファットPM)の配合量を50g(原料粉の合計量に対して4.9質量%)にした以外は、実施例2と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)のたんぱく質含量の合計は、7.0質量%であった。
実施例8で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、7.1%であり、油脂含量は、13.3質量%であった。また、実施例8で得られた即席油揚げ麺は色素を含まない麺であり、調理後のL値は72.98であり、a値は2.22であり、及びb値は25.17であった。
【0062】
実施例9
混合工程において、植物性たんぱく(グルテンA)の配合量を60gにした以外は、実施例1と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)のたんぱく質含量の合計は、9.6質量%であった。
実施例9で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、9.8%であり、油脂含量は、13.6質量%であった。また、実施例9で得られた即席油揚げ麺は色素を含まない麺であり、調理後のL値は71.85であり、a値は2.22であり、及びb値は24.99であった。
【0063】
実施例10
混合工程において、植物性たんぱく(グルテンA)の配合量を60gにした以外は、実施例2と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)のたんぱく質含量の合計は、9.6質量%であった。
実施例10で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、9.7%であり、油脂含量は、12.8質量%であった。また、実施例10で得られた即席油揚げ麺は色素を含まない麺であり、調理後のL値は71.22であり、a値は2.49であり、及びb値は24.81であった。
【0064】
実施例11
混合工程において、植物性たんぱく(グルテンA)の配合量を8gにした以外は、実施例1と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)のたんぱく質含量の合計は、6.5質量%であった。
実施例11で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、6.4%であり、油脂含量は、10.5質量%であった。また、実施例11で得られた即席油揚げ麺は色素を含まない麺であり、調理後のL値は69.93であり、a値は1.4であり、及びb値は24.01であった。
【0065】
実施例12
混合工程において、植物性たんぱく(グルテンA)の配合量を8gにした以外は、実施例2と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)のたんぱく質含量の合計は、6.5質量%であった。
実施例12で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、6.7%であり、油脂含量は、12.1質量%であった。また、実施例12で得られた即席油揚げ麺は色素を含まない麺であり、調理後のL値は72.97であり、a値は1.59であり、及びb値は24.27であった。
【0066】
実施例13
混合工程において、練り水Aの代わりに練り水B(食塩18g、かんすい2.8g、及びクチナシ色素0.5gを水400gに溶解した液)を使用した以外は、実施例12と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)のたんぱく質含量の合計は、6.5質量%であった。
実施例13で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、6.7%であり、油脂含量は、12.1質量%であった。また、実施例13で得られた即席油揚げ麺は色素を含む麺であり、調理後のL値は72.17であり、a値は-1.93であり、及びb値は36.53であった。
【0067】
実施例14
混合工程において、練り水Aの代わりに練り水B(食塩18g、かんすい2.8g、及びクチナシ色素0.5gを水400gに溶解した液)を使用した以外は、実施例2と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)のたんぱく質含量の合計は、7.0質量%であった。
実施例14で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、7.0%であり、油脂含量は、9.3質量%であった。また、実施例14で得られた即席油揚げ麺は色素を含む麺であり、調理後のL値は71.05であり、a値は-0.21であり、及びb値は37.64であった。
【0068】
実施例15
混合工程において、練り水Aの代わりに練り水B(食塩18g、かんすい2.8g、及びクチナシ色素0.5gを水400gに溶解した液)を使用した以外は、実施例5と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)のたんぱく質含量の合計は、8.6質量%であった。
実施例15で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、9.0%であり、油脂含量は、10.7質量%であった。また、実施例15で得られた即席油揚げ麺は色素を含む麺であり、調理後のL値は71.72であり、a値は-1.03であり、及びb値は36.89であった。
【0069】
実施例16
混合工程において、練り水Aの代わりに練り水B(食塩18g、かんすい2.8g、及びクチナシ色素0.5gを水400gに溶解した液)を使用した以外は、実施例10と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)のたんぱく質含量の合計は、9.6質量%であった。
実施例16で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、9.7%であり、油脂含量は、12.8質量%であった。また、実施例16で得られた即席油揚げ麺は色素を含む麺であり、調理後のL値は70.81であり、a値は-1.56であり、及びb値は37.40であった。
【0070】
比較例1
実施例2の混合工程において、植物性たんぱくを配合しなかった以外は、実施例2と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉及びでん粉)のたんぱく質含量の合計は、6.0質量%であった。
比較例1で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、5.8%であり、油脂含量は、14.5質量%であった。また、比較例1で得られた即席油揚げ麺は色素を含まない麺であり、調理後のL値は77.81であり、a値は0.77であり、及びb値は22.87であった。
【0071】
比較例2
実施例1の混合工程において、原料粉に植物性たんぱくを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉及びでん粉)のたんぱく質含量の合計は、6.0質量%であった。
比較例2で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、5.8%であり、油脂含量は、17.4質量%であった。また、比較例2で得られた即席油揚げ麺は色素を含まない麺であり、調理後のL値は75.36であり、a値は0.11であり、及びb値は21.18であった。
【0072】
比較例3
実施例1の混合工程において、植物性たんぱく(グルテンA)の配合量を80gにした以外は、実施例1と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)のたんぱく質含量の合計は、10.7質量%であった。
比較例3で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、10.6%であり、油脂含量は、17.8質量%であった。また、比較例3で得られた即席油揚げ麺は色素を含まない麺であり、調理後のL値は68.83であり、a値は3.13であり、及びb値は28.07であった。
【0073】
比較例4
実施例2の混合工程において、植物性たんぱく(グルテンA)の配合量を80gにした以外は、実施例2と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)のたんぱく質含量の合計は、10.7質量%であった。
比較例4で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、10.5%であり、油脂含量は、17.7質量%であった。また、比較例4で得られた即席油揚げ麺は色素を含まない麺であり、調理後のL値は66.7であり、a値は3.5であり、及びb値は28.74であった。
【0074】
比較例5
混合工程において、練り水Aの代わりに練り水B(食塩18g、かんすい2.8g、及びクチナシ色素0.5gを水400gに溶解した液)を使用した以外は、比較例4と同様にして即席油揚げ麺を製造した。
原料粉(小麦粉、でん粉及び植物性たんぱく)のたんぱく質含量の合計は、10.7質量%であった。
比較例5で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量は、10.5%であり、油脂含量は、17.7質量%であった。また、比較例5で得られた即席油揚げ麺は色素を含む麺であり、調理後のL値は68.2であり、a値は3.5であり、及びb値は28.74であった。
【0075】
以上の結果より、実施例1~16の即席油揚げ麺は、たんぱく質含量が6~10質量%であり、調理後のL値が68~74であった。また、実施例1~16の即席油揚げ麺は、油脂含量が14.3質量%以下であった。そして、実施例1~16の即席油揚げ麺の調理後のL値はいずれも、上記市販の生麺又はチルド麺を茹でた後のL値(68~72)に近いことがわかった。このように、実施例1~16の即席油揚げ麺は、たんぱく質含量を6~10質量%に、かつ、調理後のL値を68~74に設定することで、調理後の麺を、市販の生麺又はチルド麺のような透明感に近づけることができ、従来の即席油揚げ麺の調理後の麺と比べて透明感が感じられた。
一方、比較例1、2及び4の即席油揚げ麺は、たんぱく質含量が6~10質量%の範囲外であり、かつ、調理後のL値が68~74の範囲外であった。また、比較例3及び5の即席油揚げ麺は、調理後のL値は68~74の範囲内であったが、たんぱく質含量が6~10質量%の範囲外であった。このような比較例1~5の即席油揚げ麺はいずれも、油脂含量が14.3質量%よりも高かった。

【要約】
【課題】本発明の目的は、油脂含量が少なく、かつ、調理後の麺が茹でた生麺に近い外観を有する即席油揚げ麺、及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、たんぱく質含量が6~10質量%であり、かつ、
調理後のL値が68~74である、即席油揚げ麺に関する。
また、本発明は、混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程を備える即席油揚げ麺の製造方法であって、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記フライ乾燥工程で得られた即席油揚げ麺のたんぱく質含量が6~10質量%であり、かつ、
前記フライ乾燥工程で得られた即席油揚げ麺を調理した後の麺のL値が68~74である、即席油揚げ麺の製造方法に関する。
【選択図】図1
図1
図2