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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 1/12 20060101AFI20240117BHJP
   C09D 11/16 20140101ALI20240117BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B43K1/12 B
C09D11/16
B43K8/02 100
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023147481
(22)【出願日】2023-09-12
【審査請求日】2023-09-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】奥野 瑛司
(72)【発明者】
【氏名】川合 敬士
(72)【発明者】
【氏名】細木 真百合
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-193866(JP,A)
【文献】特開2004-067769(JP,A)
【文献】特開2002-283786(JP,A)
【文献】特開2023-083886(JP,A)
【文献】特開2004-243561(JP,A)
【文献】特開2023-084799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00-1/12
B43K 5/00-8/24
C09D 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクと、
前記インクを収容し、排出させる筆記具本体とを備え、
前記筆記具本体が、
前記インクを収容するインク収容部と、
前記インク収容部から延在し、前記インク収容部から供給される前記インクを通過させて吐出させるインク吐出面を有するチップとを有し、
前記インクが、顔料を含む着色剤を含有し、
前記顔料が、第1顔料と、前記第1顔料の平均粒径と異なる平均粒径を有する第2顔料とを含み、
前記チップは、内側チップと、前記内側チップを取り囲むように設けられた外側チップとを有し、
前記内側チップは、複数本の第1繊維と、前記第1顔料を含む内側インクを前記第1繊維の間に通過させる第1流路を有し、
前記外側チップは、複数本の第2繊維と、前記第2顔料を含み、前記内側インクの外観とは異なる外観を示す外側インクを前記第2繊維の間に通過させる第2流路を有し、
前記チップの前記インク吐出面は、前記外側チップの先端面であって互いに分離されている2つの第2端面と、前記内側チップの先端面であって前記2つの第2端面の間に配置される第1端面とを有
前記チップは、前記インクが前記チップの前記内側チップ及び前記外側チップに接触するように配置されており、
前記第1顔料の平均粒径に対する前記第1繊維の太さの比は、2[μm/デニール]以下であり、
前記第2顔料の平均粒径に対する前記第2繊維の太さの比は、2[μm/デニール]以下である、筆記具。
【請求項2】
前記第1顔料の平均粒径が前記第2顔料の平均粒径よりも大きくなっており、
前記内側チップが、前記外側チップで覆われた非露出側面と、前記非露出側面よりも前記インク収容部側で露出された露出側面とを有する、請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記インクが水溶性有機溶剤を含み、前記水溶性有機溶剤が、分岐した疎水性基を有さない、請求項1又は2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記インクが水溶性有機溶剤を含み、前記水溶性有機溶剤の沸点が200℃以上である、請求項1又は2に記載の筆記具。
【請求項5】
前記インクが界面活性剤を含み、前記界面活性剤が、非リン酸エステル系界面活性剤で構成される、請求項1又は2に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
筆記具として、二重発色筆記線を筆記することが可能な筆記具が知られている。例えば下記特許文献1には、金属粉顔料、水、水溶性有機溶剤、着色剤及びリン酸エステル系界面活性剤を含む二重発色インキを、マーキングペンなどの筆記具に用い得ることが記載されている。下記特許文献1では、この筆記具を用いて紙に対して筆記を行うと、着色剤及び水溶性有機溶剤が紙に浸透拡散し、その上の一部を金属粉顔料が覆うことで、金属粉顔料の色による内側筆記線の両側に、着色剤による色の外側筆記線(縁取り線)が形成され、その結果、二重発色筆記線が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-060666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の筆記具は、以下に示す課題を有していた。
すなわち、上記筆記具では、着色剤及び水溶性有機溶剤が紙に浸透拡散することによって内側筆記線の両側に外側筆記線が形成されるが、その場合でも、外側筆記線の外側の輪郭を明瞭にすることができず、二重発色筆記線の外側の輪郭の明瞭性の点で改善の余地があった。
また、筆記線には、三重発色筆記線などに対するニーズも考えられる。さらには、色だけでなく、模様や表面状態などの外観が異なる筆記線を含む多重外観筆記線に対するニーズも考えられる。
【0005】
本開示は、多重外観筆記線を筆記でき、かつ多重外観筆記線の外側の輪郭の明瞭性を向上できる筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る筆記具は、インクと、インクを収容し、排出させる筆記具本体とを備え、筆記具本体が、インクを収容するインク収容部と、インク収容部から延在し、インク収容部から供給されるインクを通過させて吐出させるインク吐出面を有するチップとを有し、インクが、顔料を含む着色剤を含有し、顔料が、第1顔料と、第1顔料の平均粒径と異なる平均粒径を有する第2顔料とを含み、チップは、内側チップと、内側チップを取り囲むように設けられた外側チップとを有し、内側チップは、第1顔料を含む内側インクを通過させる第1流路を有し、外側チップは、第2顔料を含み、内側インクの外観とは異なる外観を示す外側インクを通過させる第2流路を有し、チップのインク吐出面は、内側チップの先端面であって互いに分離されている2つの第1端面と、外側チップの先端面であって2つの第1端面の間に配置される第2端面とを有する。
【0007】
上記筆記具によれば、筆記具本体のインク収容部からインクがチップに供給されると、インクはチップを通過する。このとき、インクの着色剤中の顔料に含まれる第1顔料を含むインクは内側インクとしてチップの内側チップの第1流路を通過し、内側チップの第1端面から吐出される。一方、インクの着色剤中の顔料に含まれる第2顔料を含むインクは外側インクとしてチップの外側チップの第2流路を通過し、外側チップの第2端面から吐出される。ここで、第1端面から吐出される内側インクの外観と第2端面から吐出される外側インクの外観とは互いに異なる。このため、筆記具を用い、チップのインク吐出面を紙面に押し当てながら内側チップの2つの第1端面及び外側チップの第2端面を通る方向に直交する方向に筆記を行うと、内側インクによる内側筆記線の両側に、外側インクによる外側筆記線が形成され、多重外観筆記線を筆記することが可能となる。また、このとき、着色剤中の顔料が第1顔料及び第2顔料を含んでおり、これらの顔料は、染料などの着色剤に比べて紙に浸透しにくい。このため、外側筆記線の外側の輪郭が明瞭となる。その結果、多重外観筆記線の外側の輪郭の明瞭性を向上できる。
【0008】
上記の筆記具では、第1顔料の平均粒径が第2顔料の平均粒径よりも大きくなっており、内側チップが、外側チップで覆われた非露出側面と、非露出側面よりもインク収容部側で露出された露出側面とを有することが好ましい。
この場合、インクを、内側チップの露出側面から供給することが可能となり、インクとの接触面積を大きくすることができる。このため、第2顔料よりも平均粒径の大きい第1顔料を内側チップに効率よく供給することができる。
【0009】
上記の筆記具では、インクが水溶性有機溶剤を含み、水溶性有機溶剤が、分岐した疎水性基を有さないことが好ましい。
この場合、インクが紙に浸透しにくくなり、上記筆記具による内側筆記線及び外側筆記線が滲み難くなる。その結果、多重外観筆記線の外側の輪郭の明瞭性がより向上する。また、内側筆記線と外側筆記線との間の境界の明瞭性もより向上する。さらに、多重外観筆記線が筆記された紙における多重外観筆記線の裏移りがより十分に抑制される。
【0010】
上記の筆記具では、インクが水溶性有機溶剤を含み、水溶性有機溶剤の沸点が200℃以上であることが好ましい。
この場合、内側筆記線と外側筆記線との間の境界の明瞭性がより向上する。
【0011】
上記の筆記具では、第1顔料及び第2顔料の少なくとも一方が無機顔料を含み、インクが界面活性剤を含み、界面活性剤が、非リン酸エステル系界面活性剤で構成されることが好ましい。
この場合、インク中での無機顔料の分散性がより向上する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、多重外観筆記線を筆記でき、かつ多重外観筆記線の外側の輪郭の明瞭性を向上できる筆記具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の筆記具の一実施形態を示す部分断面図である。
図2図2は、図1のチップの横断面図である。
図3図3は、図1のチップのインク吐出面を示す平面図である。
図4図4は、図1の筆記具によって紙面に筆記された多重外観筆記線を示す部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の筆記具の実施形態について図1図4を参照しながら詳細に説明する。図1は、本開示の筆記具の一実施形態を示す部分断面図、図2は、図1のチップの横断面図、図3は、図1のチップのインク吐出面を示す平面図、図4は、図1の筆記具によって紙面に筆記された多重外観筆記線を示す部分平面図である。
【0015】
図1に示される筆記具1は、インク7と、インク7を収容し、排出させる筆記具本体2と、筆記具本体2に対して着脱可能に設けられるキャップ3とを備える。
【0016】
インク7は、顔料を含む着色剤を含有し、顔料は、第1顔料及び第2顔料を含んでいる。本実施形態では、第1顔料の平均粒径が、第2顔料の平均粒径よりも大きくなっている。
【0017】
筆記具本体2は、本体部4と、バルブ機構5と、チップ6とを有する。
【0018】
本体部4は、インク7を収容するインク収容部41と、キャップ着脱部42とを有する。インク収容部41は、円筒状の収容部本体41aと、収容部本体41aのキャップ着脱部42側の端部に設けられる底部41bと、収容部本体41aのうち底部41bと反対側の端部に着脱可能に設けられる蓋部41cとを有する。
【0019】
キャップ着脱部42は、インク収容部41の底部41bから円筒状の収容部本体41aの中心軸線Aに沿って延在しており、インク収容部41と一体成形されている。キャップ着脱部42には、収容部本体41aの中心軸線Aに沿って延在し、チップ6を挿入する貫通孔42aが形成されている。
【0020】
バルブ機構5は、インク収容部41の内部に収容されているインク7が貫通孔42aを通して排出される量を調整する。バルブ機構5は、インク収容部41の内部に固定されている。バルブ機構5は、バルブ本体51と、バルブ蓋52と、バルブ棒53と、スプリング54とを有する。
【0021】
バルブ蓋52は、インク収容部41の底部41bに配置されている。バルブ蓋52は、キャップ着脱部42の貫通孔42aを覆うように設けられる蓋本体523と、蓋本体523の表面から中心軸線Aに沿って延在する筒状の側壁部522とを有する。蓋本体523には、側壁部522の内側に貫通孔52aが形成されている。
【0022】
バルブ本体51には貫通孔51aが形成され、インク7を通過させる開口部(図示せず)も形成されている。バルブ本体51は、インク収容部41に固定されている。またバルブ本体51は、側壁部522が嵌め込まれており、側壁部522とともに内部空間55を形成している。
【0023】
バルブ棒53は、バルブ機構5の内部空間55からチップ6へのインクの量を調整する部材である。バルブ棒53は、中心軸線Aに沿って延在する円柱状の棒本体531と、棒本体531のチップ6側に設けられ側壁部522内に配置される先端部532と、棒本体531の先端部532と反対側に設けられる後端部533と、先端部532の周囲に設けられる複数の突起部534とを有する。先端部532は、バルブ本体51の側壁部522内で中心軸線Aに沿って移動することでバルブ蓋52の貫通孔52aを開閉することが可能となっている。隣り合う突起部534同士の間には、インク7を内部空間55から貫通孔52aへと流通させる空間(図示せず)が形成されている。後端部533は、バルブ本体51の貫通孔51aに移動可能に挿入されている。
【0024】
スプリング54は、バルブ棒53の突起部534とバルブ本体51との間に圧縮された状態で配置されている。このため、バルブ棒53が蓋本体523から離れる方向に移動されない状態では、バルブ棒53の先端部532がバルブ蓋52の貫通孔52aを塞いでいる。
【0025】
チップ6は、インク収容部41からバルブ機構5によって供給されるインク7を通過させる。チップ6は、キャップ着脱部42の貫通孔42a内に移動可能に挿入されている。チップ6は、中心軸線Aに沿って延在する円柱状の内側チップ61と、内側チップ61を取り囲む単層の外側チップ62とを有する。内側チップ61は、外側チップ62によって覆われた非露出側面61dと、非露出側面61dよりもインク収容部41側で、外側チップ62によって覆われず露出された露出側面61eとを有しており、インク収容部41側の端部が、バルブ棒53の先端部532内に嵌め込まれている。貫通孔42aの内壁面と非露出側面61dとの間には空間が形成され、この空間にインク7が供給されるようになっている。
【0026】
チップ6の先端面は、インクが吐出されるインク吐出面6aとなっており、インク吐出面6aは、本実施形態では、1つの平面となっている。インク吐出面6aは、図3に示すように、外側チップ62の先端面であって互いに分離されている2つの第2端面62aと、内側チップ61の先端面であって2つの第2端面62aの間に配置される第1端面61aとを有する。ここで、2つの第2端面62aと第1端面61aとは一列に配置されている。
【0027】
内側チップ61は、図2に示すように、中心軸線Aに沿って延在する複数本の第1繊維61bを有する。複数本の第1繊維61bは束ねられており、第1繊維61bの間に、第1顔料を含む内側インクを通過させる複数の第1流路61cを有する。本実施形態では、第1顔料の平均粒径が、第2顔料の平均粒径よりも大きくなっているため、第2顔料も第1流路61cを通過することが可能である。また、内側チップ61は、複数本の第1繊維61bを束ねて構成されているため、インク7は、内側チップ61の露出側面61eから第1繊維61bの隙間を通って第1流路61cに供給することが可能となっている。
【0028】
外側チップ62は、中心軸線Aに沿って延在する複数の第2繊維62bを有する。外側チップ62は、第2繊維62bの間に、第2顔料を通過させる複数の第2流路62cを有する。
第1端面61aから吐出される内側インクの外観と第2端面62aから吐出される外側インクの外観とは互いに異なるようになっている。
【0029】
次に、上記筆記具1の作用効果について説明する。
まず、筆記具1を用いて筆記を行っていない状態では、インク7は、インク収容部41の内部に収容され、バルブ本体51とバルブ蓋52との間の内部空間55にも収容されている。
【0030】
また、チップ6のインク吐出面6aに外力が加わっていないため、バルブ棒53の先端部532は、スプリング54によって突起部534が蓋本体523側に力を加えられることで、バルブ蓋52の貫通孔52aに嵌め込まれ、貫通孔52aが閉じられている。よって、インク7は、キャップ着脱部42の貫通孔42a内に供給されず、チップ6には供給されていない。
【0031】
この状態で筆記具1を保持し、チップ6のインク吐出面6aを紙に押し当て、チップ6に対して中心軸線Aに沿ってインク収容部41側への外力が加えられると、バルブ棒53がチップ6によってインク収容部41の蓋部41c側に押し込まれることによって、貫通孔52aの内面と先端部532との間に隙間が形成され、バルブ本体51とバルブ蓋52との間の内部空間55からその隙間を通してインク7がキャップ着脱部42の貫通孔42a内に供給される。ここで、インク7はチップ6に接触する。より詳細には、インク7は、内側チップ61の露出側面61eと、外側チップ62のインク収容部41側の端面(以下「後端面」ともいう)に接触し、内側チップ61に供給されるとともに、外側チップ62にも供給される。
【0032】
外側チップ62の後端面に接触したインク7のうち、第2顔料を含むインクは、外側インクとして外側チップ62の第2流路62cを通過し、外側チップ62の第2端面62aに達して吐出される。
【0033】
一方、内側チップ61の露出側面61eに接触したインク7のうち、第1顔料を含むインクが、内側インクとして内側チップ61の第1流路61cを通過し、内側チップ61の第1端面61aに達して吐出される。
ここで、第1端面61aから吐出される内側インクの外観と第2端面62aから吐出される外側インクの外観とは互いに異なる。
【0034】
このため、紙面には、図4に示されるように、内側インクによる内側筆記線L1と、内側筆記線L1の両側に外側インクによる外側筆記線L2が形成された多重外観筆記線Lを筆記することが可能となる。また、このとき、着色剤中の顔料が第1顔料及び第2顔料を含んでおり、これらの顔料は、染料などの着色剤に比べて紙に浸透しにくい。このため、外側筆記線L2の外側の輪郭が明瞭となる。その結果、多重外観筆記線Lの外側の輪郭の明瞭性を向上できる。
【0035】
また、筆記具1では、キャップ着脱部42の貫通孔42a内に供給されたインク7を、内側チップ61の露出側面61eから供給することが可能となる。このため、インク7との接触面積を大きくすることができる。このため、第2顔料よりも平均粒径の大きい第1顔料を内側チップ61に効率よく供給することができる。
【0036】
以下、チップ6及びインク7について詳細に説明する。
<チップ>
内側チップ61を構成する第1繊維61bは樹脂繊維で構成される。樹脂繊維としては、例えばポリアミド繊維、ポリエステル繊維又はアクリル繊維などが挙げられる。
内側チップ61は、例えば第1繊維61bを熱溶着させることによって得ることができる。あるいは、内側チップ61は、例えば第1繊維61bを樹脂バインダで接着させることによっても得ることができる。
内側チップ61の各第1流路61cの断面積は、第1顔料を通過させることができる断面積であればよく、この断面積は、例えば第1繊維61bの太さなどを調整することにより適宜調整することができる。
第1繊維61bの太さは、0.7デニール以上、又は3デニール以上であってよい。第1繊維61bの太さは、30デニール以下、又は20デニール以下であってよい。第1繊維61bの太さは、好ましくは3~20デニールである。
内側チップ61の中心軸線Aに直交する断面における気孔率(内側気孔率)は、40%以上、60%以上又は68%以上であってよい。また、内側気孔率は、例えば80%以下又は76%以下であってよい。内側気孔率は、40~80%であることが好ましく、68~76%であることがより好ましい。
ここで、気孔率は、下記式で算出される値である。
気孔率(%)=100×断面における空隙の総面積(m)/断面積(m)・・・(A)
【0037】
外側チップ62を構成する第2繊維62bも樹脂繊維で構成される。樹脂繊維としては、例えばポリアミド繊維、ポリエステル繊維又はアクリル繊維などが挙げられる。
外側チップ62は、例えば第2繊維62bを熱溶着させることによって得ることができる。あるいは、外側チップ62は、例えば第2繊維62bを樹脂バインダで接着させることによっても得ることができる。
外側チップ62の各第2流路62cの断面積は、第2顔料を通過させることができる断面積であればよく、この断面積は、例えば第2繊維62bの太さなどを調整することにより適宜調整することができる。
第2繊維62bの太さは、0.7デニール以上、又は3デニール以上であってよい。第2繊維62bの太さは、30デニール以下、又は20デニール以下であってよい。第2繊維62bの太さは、好ましくは3~20デニールである。
外側チップ62の中心軸線Aに直交する断面における気孔率(外側気孔率)は、40%以上、60%以上又は68%以上であってよい。また、外側気孔率は、例えば80%以下又は76%以下であってよい。外側気孔率は、40~80%であることが好ましく、68~76%であることがより好ましい。
気孔率は、上記式(A)で算出される値である。
【0038】
図3に示すように、チップ6のインク吐出面6aにおいて、第1端面61a及び2つの第2端面62aを通る縁部Eに沿った第1端面61aの幅W1及び第2端面62aの幅W2は、互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。第1端面61aの幅W1及び第2端面62aの幅W2が同一である場合には、内側筆記線L1及び2つの外側筆記線L2の幅が同一となる。
【0039】
<インク>
インク7は、既に述べたとおり、顔料を含む着色剤を含有する。
インク7は、水、水溶性有機溶剤、界面活性剤、固着樹脂、気泡抑制剤、防腐剤、防錆剤、粘度調整剤及びpH調整剤から選択される成分をさらに含有してもよい。
外側チップ62の第2流路62cを通過する外側インクは、内側チップ61の第1流路61cを通過する内側インクとは異なる外観を示す。ここで、外観としては、色、模様(例えばラメの有無)、表面状態(凹凸の程度、鏡面性、光沢性など)が挙げられる。
【0040】
(着色剤)
着色剤は、顔料を含んでいればよく、顔料と顔料以外の着色剤(例えば染料)との混合物であってもよいが、顔料のみで構成されることが好ましい。この場合、顔料以外の着色剤が、水及び水溶性有機溶剤とともに紙に浸透拡散することがなくなるため、多重外観筆記線の外側の輪郭の明瞭性がより向上する。
着色剤中の顔料は、第1顔料及び第2顔料を含む。本実施形態では、第1顔料の平均粒径は第2顔料の平均粒径よりも大きくなっている。
【0041】
第2顔料の平均粒径は、特に制限されるものではなく、例えば0.1μm以上1μm未満であってよい。第2顔料としては、例えば、蛍光顔料、金属酸化物顔料、蓄光顔料及びガラス顔料が挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上の混合物であってもよい。
第2顔料の外観は必要に応じて適宜選択すればよい。
【0042】
インク7中の第2顔料の含有率は、特に制限されるものではないが、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上である。
インク7中の第2顔料の含有率は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下であり、特に好ましくは40質量%以下である。
【0043】
第1顔料の平均粒径は、第2顔料の平均粒径より大きい平均粒径であれば特に制限されるものではないが、好ましくは1~50μmである。
【0044】
第1顔料としては、無機顔料及び有機顔料が挙げられる。無機顔料としては、例えば、アルミニウム等の金属顔料、酸化チタン(白色顔料)等の金属酸化物顔料、蓄光顔料及びガラス顔料が挙げられる。
有機顔料としては、樹脂顔料及び蛍光顔料が挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上の混合物であってもよい。
第1顔料の色は、第2顔料と異なる色であればよい。
【0045】
第1顔料の形状は特に制限されるものではなく、そのような形状としては、鱗片状、板状、球状などが挙げられるが、鱗片状が好ましい。この場合、第1顔料が紙に浸透しにくくなる。
【0046】
インク7中の第1顔料の含有率は、特に制限されるものではないが、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、特に好ましくは8質量%以上である。
インク7中の第1顔料の含有率は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは20質量%以下である。
【0047】
第1顔料の平均粒径に対する内側チップ61に含まれる第1繊維61bの太さ(デニール)の比R1は、特に制限されないが、2[μm/デニール]以下であることが好ましい。R1が2[μm/デニール]以下であると、第1顔料が内側チップ61の第1流路61cを通過しやすくなり、内側チップ61からより排出されやすくなる。R1は1.5[μm/デニール]以下であってよい。R1は0.3[μm/デニール]以上又は0.6[μm/デニール]以上であってよい。
第2顔料の平均粒径に対する外側チップ62に含まれる第2繊維62bの太さ(デニール)の比R2は、特に制限されないが、2[μm/デニール]以下であることが好ましい。R2が2[μm/デニール]以下であると、第2顔料が外側チップ62の第2流路62cを通過しやすくなり、外側チップ62からより排出されやすくなる。R2は1.5[μm/デニール]以下であってよい。R2は0.3[μm/デニール]以上又は0.6[μm/デニール]以上であってよい。
【0048】
(水)
水は、インク7の主溶媒である。
インク7中の水の含有率は特に制限されるものではないが、20質量%以上、30質量%以上又は40質量%以上であってよい。
インク7中の水の含有率は、80質量%以下、70質量%以下又は60質量%以下であってよい。
【0049】
(水溶性有機溶剤)
水溶性有機溶剤としては、例えば、グリセリン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール系溶剤;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル及びヘキシレングリコールなどのグリコルエーテル系溶剤などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上の混合物であってもよい。
中でも、水の表面張力を低下させにくく、インク7を紙に浸透しにくくする観点からは、グリコール系溶剤が好ましい。
【0050】
水溶性有機溶剤の炭素原子数は、特に制限されるものではないが、好ましくは5個以下である。水溶性有機溶剤の炭素原子数が5個以下であると、内側筆記線と外側筆記線との間の境界の明瞭性がより向上する。また、多重外観筆記線が筆記された紙における多重外観筆記線の裏移りがより十分に抑制される。
水溶性有機溶剤の炭素原子数は、2個以上であってよい。
【0051】
水溶性有機溶剤は、分岐した疎水性基を有していてもよく、有さなくてもよいが、有さないことが好ましい。この場合、インク7が紙に浸透しにくくなり、筆記具1による内側筆記線及び外側筆記線が滲み難くなる。その結果、多重外観筆記線の外側の輪郭の明瞭性がより向上する。また、内側筆記線と外側筆記線との間の境界の明瞭性もより向上する。さらに、多重外観筆記線が筆記された紙における多重外観筆記線の裏移りがより十分に抑制される。
分岐した疎水性基とは、主鎖に対して分岐する疎水性基であり、疎水性基としては、エチル基、メチル基などのアルキル基が挙げられる。
【0052】
水溶性有機溶剤の沸点は特に限定されるものではなく、例えば188℃以上であってよいが、好ましくは200℃以上である。この場合、内側筆記線と外側筆記線との間の境界の明瞭性がより向上する。水溶性有機溶剤の沸点は220℃以上又は250℃以上であってもよい。
水溶性有機溶剤の沸点は、300℃以下、290℃以下又は270℃以下であってもよい。
【0053】
インク7中の水溶性有機溶剤の含有率は、特に制限されるものではなく、50質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下又は1質量%未満であってよい。中でも、インク7中の水溶性有機溶剤の含有率は、1質量%未満であることが好ましい。この場合、インク7が紙に浸透しにくくなり、筆記具1による内側筆記線及び外側筆記線が滲み難くなる。その結果、多重外観筆記線が筆記された紙における多重外観筆記線の裏移りがより十分に抑制される。
インク7中の水溶性有機溶剤の含有率は、0質量%でもよく、0質量%より大きくてもよい。
インク7中の水溶性有機溶剤の含有率は、好ましくは5~20質量%である。
【0054】
(界面活性剤)
界面活性剤は、顔料が無機顔料を含む場合に、無機顔料の濡れ性を向上させ、インク7中に無機顔料を分散させる。界面活性剤は、特に制限されるものではなく、非リン酸エステル系界面活性剤でも、リン酸エステル系界面活性剤でもよいが、非リン酸エステル系界面活性剤が好ましい。この場合、インク7中での無機顔料の分散性がより向上する。
非リン酸エステル系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上の混合物であってもよい。
【0055】
(固着樹脂)
固着樹脂は、インク7を紙へ固着させやすくする樹脂である。このような固着樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂が挙げられる。
【0056】
(気泡抑制剤)
インク7が水を含み、第1顔料及び第2顔料のうちの少なくとも一方がアルミニウム顔料である場合には、インク7は、気泡抑制剤を含むことが好ましい。この場合、アルミニウム顔料と水との反応により気泡が発生することを抑制できる。
気泡発生剤としては、例えばアスコルビン酸、システイン、N-ビニル-2-ピロリドンのオリゴマーなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0057】
(防腐剤)
防腐剤は、インク7によるカビ等の発生を抑制する成分である。
防腐剤としては、例えば石炭酸、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、含窒素硫黄系化合物、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルフォニル)ピリジンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0058】
(防錆剤)
筆記具本体2が金属部材(例えばバルブ機構5のスプリングなど)を含む場合には、インク7は、防錆剤を含むことが好ましい。この場合、その金属部材の腐食を抑制することができる。
防錆剤としては、例えばベンゾトリアゾール、又はその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸塩、リン酸オクチル、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、サポニン、ジアルキルチオ尿素などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0059】
(粘度)
インク7においては、E型粘度計を用いて温度25℃、6rpmの条件で測定される粘度が、2~50mPa・sであることが好ましく、5~30mPa・sであることがより好ましい。このような粘度を有するインク7を用いることにより、顔料や樹脂粒子の経時による沈降を一層効果的に抑制することが可能となり、且つインク7の追従性が得られるため、更なる保存安定性を達成することができる。
【0060】
本開示は、上述した実施形態に限定されない。例えば上記実施形態では、第1顔料の平均粒径が第2顔料の平均粒径よりも大きくなっているが、第1顔料の平均粒径は第2顔料の平均粒径と異なればよく、第2顔料の平均粒径より小さくてもよい。
【0061】
また上記実施形態では、インク吐出面6aが一つの平面となっているが、インク吐出面は、例えば第1平面及び第2平面を有し、第1平面及び第2平面が互いに傾斜していてもよい。この場合、例えば第1平面及び第2平面がそれぞれ、第1端面61aの一部と2つの第2端面62aのうちの一方の第2端面62aで構成されてもよい。この場合でも、インク吐出面を中心軸線Aに沿って見たときに第1端面61aは2つの第2端面62aの間に配置される。
【0062】
さらに上記実施形態では、バルブ機構5によってチップ6にインク7が供給されているが、バルブ機構5は必ずしも必要なものではない。
【0063】
また上記実施形態では、内側チップ61が、露出側面を有しているが、インク収容部41側の端面からインク7が供給可能である場合には、露出側面を有さなくてもよい。すなわち、内側チップ61の側面がすべて外側チップ62で覆われて非露出側面となっていてもよい。
【0064】
さらに上記実施形態では、外側チップ62が単層で構成されているが、外側チップ62は内側チップ61に対して同心状に多層で構成されてもよい。この場合、外側チップ62の増加数に応じて顔料の種類も増加させる必要がある。この場合、顔料の平均粒径は互いに異なる必要がある。
【0065】
なお、本開示の概要は以下のとおりである。
[1]インクと、
前記インクを収容し、排出させる筆記具本体とを備え、
前記筆記具本体が、
前記インクを収容するインク収容部と、
前記インク収容部から延在し、前記インク収容部から供給される前記インクを基端部から通過させて吐出させるインク吐出面を有するチップとを有し、
前記インクが、顔料を含む着色剤を含有し、
前記顔料が、第1顔料と、前記第1顔料の平均粒径と異なる平均粒径を有する第2顔料とを含み、
前記チップは、内側チップと、前記内側チップを取り囲むように設けられた外側チップとを有し、
前記内側チップは、前記第1顔料を含む内側インクを通過させる第1流路を有し、
前記外側チップは、前記第2顔料を含み、前記内側インクの外観とは異なる外観を示す外側インクを通過させる第2流路を有し、
前記チップの前記インク吐出面は、前記外側チップの先端面であって互いに分離されている2つの第2端面と、前記内側チップの先端面であって、前記2つの第2端面の間に配置される第1端面とを有する、筆記具。
[2]前記第1顔料の平均粒径が前記第2顔料の平均粒径よりも大きくなっており、
前記内側チップの前記基端部の端面が塞がれ、側面が露出している、[1]に記載の筆記具。
[3]前記インクが水溶性有機溶剤を含み、前記水溶性有機溶剤が、分岐した疎水性基を有さない、[2]に記載の筆記具。
[4]前記インクが水溶性有機溶剤を含み、前記水溶性有機溶剤の沸点が200℃以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の筆記具。
[5]前記インクが界面活性剤を含み、前記界面活性剤が、非リン酸エステル系界面活性剤で構成される、[1]~[4]のいずれかに記載の筆記具。
【実施例
【0066】
以下、実施例及び比較例を挙げて本開示の内容を具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
実施例又は比較例で用いられる着色剤組成物、固着樹脂、水、水溶性有機溶剤及び界面活性剤としては、具体的には以下のものを使用した。
【0068】
<着色剤組成物>
(1)アルミニウムペースト
着色剤(第1顔料)としてのアルミニウム顔料を含むペースト(アルミニウム顔料の平均粒径:7μm、アルミニウム顔料濃度:55質量%)
(2)蛍光顔料の水分散体
着色剤(第2顔料)としての蛍光顔料を含む水分散体
(ピンク色蛍光顔料、蛍光顔料の平均粒径:0.1μm、蛍光顔料濃度:37質量%)
【0069】
<固着樹脂>
アクリル系樹脂(アクリル酸とアクリル酸アルキルとの共重合体)
【0070】
<水>
イオン交換水
【0071】
<水溶性有機溶剤>
・グリセリン(沸点:290℃)
・ジエチレングリコール(沸点:245℃)
・エチレングリコール(沸点:197℃)
・プロピレングリコール(沸点:188℃)
【0072】
<界面活性剤>
・非リン酸エステル系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
【0073】
(実施例1~5)
上記アルミニウムペースト、蛍光顔料の水分散体、固着樹脂、水、水溶性有機溶剤及び界面活性剤を表1に示す割合(単位:質量%)で混合し、インクを調製した。
一方、図1に示す筆記具本体を用意した。筆記具本体のうち、チップ以外の部分は、ゼブラ株式会社製「マッキーペイントマーカー」を使用した。
他方、以下のようにしてチップを用意した。
すなわち、直径2.6mm、長さ30mmの円柱状の内側チップ体を包囲するように外側厚さ0.9mm、長さ30mmのチップ体を形成してなる直径4.4mm、長さ30mmのチップ体を用意した。このとき、内側チップ体は、太さ20デニールの繊維を束ねて作製した。繊維としては、ポリエステル繊維を用いた。外側チップ体は、太さ0.7デニールの繊維で構成した。このとき、繊維としては、ポリエステル繊維を用いた。また内側チップ体及び外側チップ体の気孔率はそれぞれ76%及び51%であった。
次に、この円柱状のチップ体の先端部を、インク吐出面が、3.8mm×2.0mmの長方形の平面となりかつ図3に示すように2つの第2端面とそれらの間に配置される第1端面とを有するように加工した。ここで、インク吐出面の長辺に沿った2つの第2端面の幅W2はそれぞれ0.6mm、第1面の幅W1は2.6mmとした。
こうして、内側チップ及びそれを取り囲む外側チップを有し、内側チップの一部が露出された二重構造のチップを作製した。
そして、チップのうちインク吐出面と反対側の端部をバルブ棒の前端部内に押し込んで固定した。こうして筆記具本体を用意した。
次に、筆記具本体のインク収容部から蓋部を外し、収容部本体内にインクを注入した後、蓋部を装着した。こうして筆記具を作製した。
【0074】
(比較例1~5)
以下のようにしてチップを作製した。
すなわち、まず、複数本の樹脂繊維を束ねて構成され、長さ30mm、直径4.4mmの円柱状のチップ体を得た。このチップ体の気孔率は76%及び51%であった。
こうして得られた円柱状のチップ体の先端部を、インク吐出面が実施例1のチップのインク吐出面と同一形状(長方形)及び同一寸法となるように加工した。こうして、単一構造のチップを用意した。
そして、チップのうちインク吐出面と反対側の端部をバルブ棒の先端部内に押し込んで固定した。こうして筆記具本体を用意した。
次に、筆記具本体のインク収容部から蓋部を外し、収容部本体内にインクを注入した後、蓋部を装着した。こうして筆記具を作製した。
【0075】
<評価>
実施例1~5及び比較例1~5で得られた筆記具を用い、紙の表面に、チップのインク吐出面を押し当て、インク吐出面の短辺と平行な方向に沿って筆記線を形成した。
そして、筆記線を目視にて確認し、筆記線について下記の評価を行った。
(1)二重発色筆記線
筆記線が所望の二重発色筆記線になっているか否かを下記基準1に基づいて評価した。結果を表1に示す。なお、評価が「〇」であれば合格とし、「×」であれば不合格とした。
(基準1)
○:筆記線が内側筆記線とその両側の外側筆記線とで構成されることが視認でき、かつ、外側筆記線の幅が0.05mm以上の範囲内にある。
×:「筆記線が内側筆記線とその両側の外側筆記線とで構成されることが視認できるが、外側筆記線の幅が0.05mm未満である」か、又は、「筆記線が内側筆記線とその両側の外側筆記線とで構成されることが視認できない。
(2)二重発色筆記線の外側輪郭の明瞭性
二重発色筆記線の外側の輪郭の明瞭性を下記基準2に基づいて評価した。なお、筆記線が内側筆記線とその両側の外側筆記線とで構成されることが視認できない場合には、表1において、「-」と表示した。また、評価が「〇」であれば合格とし、「×」であれば不合格とした。
(基準2)
○:二重発色筆記線における外側の輪郭に滲みが視認できず、輪郭を明瞭に視認できる。
×:二重発色筆記線における外側の輪郭の滲みが見られ、輪郭を明瞭に視認できない。
(3)二重発色筆記線の境界明瞭性
二重発色筆記線が内側筆記線とその両側の外側筆記線とで構成されることが視認できる場合に、内側筆記線と外側筆記線との境界の明瞭性を下記基準3に基づいて評価した。なお、筆記線が内側筆記線とその両側の外側筆記線とで構成されることが視認できない場合には、表1において、「-」と表示した。
(基準3)
◎:内側筆記線と外側筆記線との境界が明瞭であることが視認できる。
〇:内側筆記線と外側筆記線との境界がやや滲んでいるが、視認できる。
×:内側筆記線と外側筆記線との境界を視認することができない。
(4)筆記線の耐裏写り性
筆記線の耐裏移り性を下記基準4に基づいて評価した。
(基準4)
○:筆記線の裏写りが視認できない。
×:筆記線の裏写りが視認できる。
【表1】
【0076】
表1に示す結果より、実施例1~5ではいずれにおいても、二重発色筆記線、二重発色筆記線の外側輪郭線の明瞭性については「○」であり、合格であった。
【0077】
これに対し、比較例1~5ではいずれにおいても、二重発色筆記線については「×」であり、不合格であった。また、二重発色筆記線の外側輪郭の明瞭性についても「×」又は「-」であった。
【0078】
以上のことから、本開示の筆記具は、多重外観筆記線を筆記でき、かつ多重外観筆記線の外側の輪郭の明瞭性を向上できることが確認された。
【符号の説明】
【0079】
1…筆記具、2…筆記具本体、6…チップ、6a…インク吐出面、7…インク、41…インク収容部、61…内側チップ、61a…第1端面、61c…第1流路、62…外側チップ、62a…第2端面、62c…第2流路。
【要約】
【課題】多重外観筆記線を筆記でき、かつ多重外観筆記線の外側の輪郭の明瞭性を向上できる筆記具を提供すること。
【解決手段】インクと、筆記具本体とを備え、筆記具本体が、インク収容部と、インク収容部から延在し、インク収容部から供給されるインクを通過させて吐出させるインク吐出面を有するチップとを有し、インクが、顔料を含む着色剤を含有し、顔料が、第1顔料と、第1顔料の平均粒径と異なる平均粒径を有する第2顔料とを含み、チップは、内側チップと、外側チップとを有し、内側チップは、第1顔料を含む内側インクを通過させる第1流路を有し、外側チップは、第2顔料を含み、内側インクの外観とは異なる外観を示す外側インクを通過させる第2流路を有し、チップのインク吐出面は、内側チップの第1端面であって互いに分離されている2つの第1端面と、外側チップの端面であって、2つの第1端面の間に配置される第2端面とを有する、筆記具。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4