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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/165 20200101AFI20240117BHJP
   B60W 30/12 20200101ALI20240117BHJP
【FI】
B60W30/165
B60W30/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023551431
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2022035502
(87)【国際公開番号】W WO2023054197
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2021162057
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】荒木 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】増井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】井上 知彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】楠本 直紀
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-327531(JP,A)
【文献】特開2006-44326(JP,A)
【文献】特開2007-1384(JP,A)
【文献】特開2001-246962(JP,A)
【文献】特開2017-56786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の前方または前側方に検出された先行車に対して前記自車を追従させる追従制御を実行するために、前記自車を加減速支援する車両制御装置(10)であって、
前記自車が追従制御する対象である制御対象を選択する制御対象選択部(13)と、
前記制御対象が自車線に隣接する隣接車線で前記自車に先行する隣接先行車である場合に、前記隣接先行車が、前記自車線で前記自車に先行する自車線先行車に切り替わる否かを判定する先行車切替判定部(14)と、
前記制御対象に対する追従制御を実行するか否かに基づいて、前記自車の目標加減速度を算出し、制御要求を設定する目標演算/要求部(16)と、を備え、
前記制御対象として前記隣接先行車が選択されている状態で、前記自車に加速操作の操作入力があった場合に、前記先行車切替判定部により、前記隣接先行車が前記自車線先行車に切り替わると判定されたときは、前記隣接先行車に対する追従制御を実行し、前記隣接先行車が前記自車線先行車に切り替わらないと判定されたときは、前記隣接先行車に対する追従制御を終了する車両制御装置。
【請求項2】
自車の前方または前側方に検出された先行車に対して前記自車を追従させる追従制御を実行するために、前記自車を加減速支援する車両制御装置(10)であって、
前記自車が追従制御する対象である制御対象を選択する制御対象選択部(13)と、
前記制御対象として自車線に隣接する隣接車線で前記自車に先行する隣接先行車が選択されている状態で、前記自車に加速操作の操作入力があった場合に、前記隣接先行車に対する追従制御を終了し、前記隣接先行車を前記自車が追い越してから所定の第1時間経過するまで、前記隣接車線を走行する車両に対する追従制御を禁止すると判定する追従禁止判定部(15)と、
前記制御対象に対する追従制御を実行するか否かに基づいて、前記自車の目標加減速度を算出し、制御要求を設定する目標演算/要求部(16)と、を備える車両制御装置。
【請求項3】
前記追従禁止判定部は、前記隣接先行車を前記自車が追い越してから前記第1時間を経過するまでの間に、前記隣接車線を走行する前記隣接先行車とは異なるさらに前方の他の隣接車が検出された場合には、前記他の隣接車を前記自車が追い越してから所定の第2時間経過するまで、前記隣接車線を走行する車両に対する追従制御の禁止を継続する請求項2に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年9月30日に出願された日本出願番号2021-162057号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
自車を加減速支援する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0003】
先行車を制御対象として制御対象に対して自車を追従させる追従制御を実行するために自車を加減速支援する車両制御技術が知られている。特許文献1には、制御対象としてのターゲット車両と自車との間隔や、自車のブレーキ工程を運転者のアクセルペダル値に依存させて調節する。例えば、ターゲット車両が減速車線に車線変更して減速し、これに追従するために自車においてブレーキ工程が開始した場合に、アクセルが踏み込まれると、ブレーキ工程は中断されてターゲット車両に対する自車の追従制御が中断される。これにより、ターゲット車両の側方を通過して追い越すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-79942号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1の技術では、隣接車線を走行する制御対象の後方に自車が車線変更する際にアクセルを踏み込んだ場合にも、追従制御が中断され得るため、制御対象と自車が接近してしまうことが懸念される。また、隣接車線に複数の車両が連なって走行している場合には、制御対象だった車両とは異なるさらに前方の他の隣接車に対して自車が追従し得るため、隣接車線を連なって走行する車群を追い越すためにアクセル操作を繰り返さねばならないことが懸念される。
【0006】
上記を鑑み、本開示は、追従制御を実行するために自車を加減速支援する車両制御装置において、隣接車線を走行する先行車を自車が適切に追い越すことが可能となる技術を提供することを目的とする。
【0007】
本開示は、自車の前方または前側方に検出された先行車に対して前記自車を追従させる追従制御を実行するために前記自車を加減速支援する、第1および第2の車両制御装置を提供する。
【0008】
第1の車両制御装置は、前記自車が追従制御する対象である制御対象を選択する制御対象選択部と、前記制御対象が自車線に隣接する隣接車線で前記自車に先行する隣接先行車である場合に、前記隣接先行車が、前記自車線で前記自車に先行する自車線先行車に切り替わる否かを判定する先行車切替判定部と、前記制御対象に対する追従制御を実行するか否かに基づいて、前記自車の目標加減速度を算出し、制御要求を設定する目標演算/要求部と、を備える。第1の車両制御装置は、前記制御対象として前記隣接先行車が選択されている状態で、前記自車に加速操作の操作入力があった場合に、前記先行車切替判定部により、前記隣接先行車が前記自車線先行車に切り替わると判定されたときは、前記隣接先行車に対する追従制御を実行し、前記隣接先行車が前記自車線先行車に切り替わらないと判定されたときは、前記隣接先行車に対する追従制御を終了する。
【0009】
第1の車両制御装置は、制御対象選択部により選択された制御対象が隣接先行車である場合に、その隣接先行車が、自車線で自車に先行する自車線先行車に切り替わる否かを判定する、先行車切替判定部を備える。そして、制御対象として隣接先行車が選択されている状態で、自車に加速操作の操作入力があった場合に、隣接先行車が自車線先行車に切り替わると判定されたときは、隣接先行車に対する追従制御を実行すると判定する。このため、隣接先行車が自車先行車に切り替わる場合に、その先行車と自車とが接近しすぎることを回避でき、安全性を確保できる。一方、隣接先行車が自車線先行車に切り替わらないと判定されたときは、隣接先行車に対する追従制御を終了する。このため、自車は隣接先行車を滞りなく追い越すことができる。その結果、第1の車両制御装置によれば、隣接車線を走行する先行車を自車が適切に追い越すことが可能となる。
【0010】
第2の車両制御装置は、自車が追従制御する対象である制御対象を選択する制御対象選択部と、前記制御対象として自車線に隣接する隣接車線で前記自車に先行する隣接先行車が選択されている状態で、前記自車に加速操作の操作入力があった場合に、前記隣接先行車に対する追従制御を終了し、前記隣接先行車を前記自車が追い越してから所定の第1時間経過するまで、前記隣接車線を走行する車両に対する追従制御を禁止すると判定する追従禁止判定部と、前記制御対象に対する追従制御を実行するか否かに基づいて、前記自車の目標加減速度を算出し、制御要求を設定する目標演算/要求部と、を備える。
【0011】
第2の車両制御装置は、制御対象として隣接先行車が選択されている状態で、自車に加速操作の操作入力があった場合に、隣接先行車に対する追従制御を終了して、隣接先行車を自車が追い越してから第1時間経過するまで、隣接車線を走行する車両に対する追従制御を禁止すると判定する追従禁止判定部を備える。追従禁止判定部によれば、隣接車線に複数の車両が連なって走行していても、隣接先行車を自車が追い越してから第1時間経過するまでの間は、追い越した車両とは異なるさらに前方の他の隣接車に対して自車が追従することが禁止されるため、車群を追い越すために加速操作を繰り返すという状況を回避でき、操作性よく車群を追い越すことができる。その結果、第2の車両制御装置によれば、隣接車線を走行する先行車を自車が適切に追い越すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示についての上記目的およびその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
図1図1は、実施形態に係る車両制御装置を含む車載システムであり、
図2図2は、車両制御装置が実行する車両制御処理のフローチャートであり、
図3図3は、先行車切替判定について説明する図であり、
図4図4は、隣接先行車を自車が追い越した状態を示す図であり、
図5図5は、隣接先行車を自車が追い越してから所定時間経過した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、本実施形態に係る車両制御装置10を含む車載システムを示す。車載システムは、車両制御装置10と、センサ類20と、操作入力装置30と、被制御部40と、を備えている。車両制御装置10は、駆動力及び制動力を調整することで、先行車両との目標車間距離を維持するように自車の走行速度を制御するACC(Adaptive Cruise Control)機能を有する。車両制御装置10は、自車の前方または前側方に検出された先行車に対して自車を追従させる追従制御を実行するために、自車の加減速支援を実行する。車両制御装置10は、さらに、自車両の周囲に位置する物体に対して、自車両に対する衝突の有無を判定し、その物体との衝突を回避すべく、若しくは衝突被害を軽減すべく制御を行うPCS(Pre-Crash Safety)システムとしての機能、走行区画線への接近を阻む方向への操舵力を発生させることで、走行中の車線を維持して車両を走行させるLKA(Lane Keeping Assist)機能、隣接車線へと車両を自動で移動させるLCA(Lane Change Assist)機能等を備えていてもよい。
【0014】
センサ類20は、前方監視センサ21と、側方監視センサ22と、後方監視センサ23と、自己位置推定センサ24と、車速センサ25と、を備えている。センサ類20により取得された情報は、車両制御装置10に入力される。
【0015】
前方監視センサ21、側方監視センサ22、および後方監視センサ23は、それぞれ、自車の前方、側方、後方を監視する周辺監視センサである。前方監視センサ21、側方監視センサ22、後方監視センサ23としては、画像センサ、電波レーダ、レーザレーダ、超音波センサを好適に用いることができる。
【0016】
画像センサは、CCDカメラやCMOSイメージセンサ、近赤外線カメラ等で構成されている。なお、画像センサは、単眼カメラであってもよいし、ステレオカメラであってもよい。前方監視センサ21、側方監視センサ22、後方監視センサ23としてカメラを用いる場合、前方カメラ及び後方カメラは、自車両の車幅方向中央の所定高さ、例えばフロントガラス上端付近やリアガラス上端付近にそれぞれ取り付けられ、自車前方や自車後方へ向けて所定角度範囲で広がる領域を撮像する。側方カメラは、自車両の左右方向の両側、例えばフロントドア付近やリアドア付近に取り付けられて、自車両の左右方向の両側へ向けて所定の角度範囲で広がる領域を撮像する。
【0017】
電波レーダは、照射した電波の反射波を検出することにより、自車の周囲における物体の存否、物体と自車との距離、物体の位置、大きさ、形状、および自車に対する相対速度等を検出することができる。レーザレーダは、赤外線のレーザ光を用いることにより、電波レーダと同様に、自車の周囲における物体の存否等を検出することができる。超音波センサは、超音波を用いることにより、電波レーダと同様に、自車の周囲における物体と自車との距離等を検出することができる。これらのレーダセンサは、自車の前端部、後端部及び側端部にそれぞれ取り付けられる。所定時間ごとに自車の周囲の領域をレーダ信号で走査するとともに、自車の周囲に存在する物体の表面で反射された電磁波を受信することで、レーダセンサは、物体との距離、物体との相対速度等を物体情報として取得し、車両制御装置10に入力する。物体が先行車であれば、自車と先行車との車間距離、先行車との相対速度、先行車との相対加速度等は、先行車情報として車両制御装置10に入力する。
【0018】
自己位置推定センサ24としては、GPSセンサ、ジャイロセンサ等を用いることができる。GPSセンサは、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信装置の一例であるGPS受信装置により、人工衛星によって地上の現在位置を決定する衛星測位システムからの測位信号を受信し、この測位信号に基づいて、自己位置、すなわち、自車の現在位置(経度・緯度)を推定する。GPS受信装置は、所定周期毎に測位信号を受信できる。測位信号を逐次受信することにより、自己位置を逐次推定できる。
【0019】
自己位置推定センサ24により推定された自己位置は、図示していないナビゲーション装置、無線通信装置等に入力される。ナビゲーション装置は、乗員により予め設定された目的地情報と、GPSセンサにより検出される自車の現在位置とに基づいて、自動運転における予定ルートを決定する。予定ルートの決定や修正のために、GPSセンサに加えて、ジャイロセンサ等のセンサを用いることもできる。ナビゲーション装置は、道幅や車線等の静的な地図情報、渋滞情報等の動的な情報を含むダイナミックマップを有する。無線通信装置は、高度道路交通システムとの無線通信と、他の車両との車車間通信と、道路設備に設置された路側無線機との路車間通信とを実行する。これにより、自車の状況や周囲の状況に関する状況情報を交換できる。
【0020】
車速センサ25は、自車の走行速度を検出するセンサであり、限定されないが、例えば、車輪の回転速度を検知可能な車輪速センサを用いることができる。車速センサ25として利用される車輪速センサは、例えば、車輪のホイール部分に取り付けられており、車両の車輪速度に応じた車輪速度信号を車両制御装置10に出力する。
【0021】
操作入力装置30は、アクセルペダル31と、ステアリングスイッチ32と、方向指示器33とを備えている。運転者により操作入力装置30に入力された操作入力情報は、車両制御装置10に入力される。
【0022】
アクセルペダル31は、運転者によるアクセルペダルの操作入力量を車両制御装置10に入力する。ステアリングスイッチ32は、車両のハンドルに設けられ、クルーズコントロール(Cruise Control)等に関する入力を車両制御装置10に入力する。方向指示器33は、運転者の操作による左右方向のON信号を車両制御装置10に入力する。
【0023】
車両制御装置10は、物体検出部11と、操作判定部12と、制御対象選択部13と、先行車切替判定部14と、追従禁止判定部15と、目標演算/要求部16と、を備えている。車両制御装置10は、ECUであり、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えている。CPUがROMにインストールされているプログラムを実行することで車両制御装置10が備える各部の機能を実現する。これによって、車両制御装置10は、センサ類20および操作入力装置30から取得した情報に基づいて、被制御部40に制御要求を出力することにより、自車の加減速支援等の運転支援を実行し、ACCを実行可能な車両制御装置として機能する。
【0024】
また、車両制御装置10は、追従制御を実施している場合において、自車が車線変更を行う際にその車線変更先の隣車線の前方に他の先行車が存在している場合には、その先行車を新たに制御対象に選択して追従制御を継続する。この場合、車両制御装置10は、方向指示器33のON信号に基づいてドライバの車線変更指令を認識し、先行車の切り替えを実施する。車線変更に際し、車両制御装置10は、隣車線における新たな先行車との車間距離を調整すべく自車の減速を適宜実施する。
【0025】
物体検出部11は、前方監視センサ21、側方監視センサ22、後方監視センサ23から取得した物体情報に基づいて、自車の周囲の物体を検出する。例えば、画像センサから取得される画像から算出した物体までの距離及び物体の方位により物体の相対位置及び存在領域等を算出し、これらの情報を画像情報として取得する。レーダセンサから取得される距離情報に含まれる物体までの距離及び物体の方位により物体の相対位置及び存在領域等を算出し、これらの情報をレーダ情報として取得する。物体検出部11は、画像情報とレーダ情報とを融合(フュージョン)して、物体を認識する。より具体的には、画像情報に含まれる物体の存在領域と、レーダ情報に含まれる物体の存在領域とに重複部が存在する場合に、物体を認識する。物体検出部11により、自車の周囲の車両や歩行者等の移動物、道路面の区画白線、交差点の信号機の赤信号の情報、横断歩道や制限速度等の交通標示、及び道路面の各種標示を検出することができる。物体検出部11によって検出された物体についての物体検出情報は、制御対象選択部13および追従禁止判定部15に入力される。
【0026】
操作判定部12は、操作入力装置30に入力された操作入力情報に基づいて、所定の操作入力があったか否かについて判定する。例えば、アクセルペダル31から入力された運転者によるアクセルペダルの操作入力量が所定以上であった場合に、自車に加速操作の操作入力があったと判定する。操作判定部12における判定結果は、制御対象選択部13および追従禁止判定部15に入力される。
【0027】
制御対象選択部13は、自車の前方または前側方に検出された先行車のうちから、自車が追従制御する対象である制御対象を選択する。例えば、制御対象選択部13は、物体検出部11から取得した物体検出情報から自車の前方または前側方に検出された先行車を選択し、操作判定部12から取得した方向指示器33の操作入力判定結果から自車の車線変更指令を認識して、自車が追従する制御対象を選択する。制御対象選択部13が選択した制御対象についての情報は、先行車切替判定部14および目標演算/要求部16に入力される。
【0028】
先行車切替判定部14は、制御対象が自車線に隣接する隣接車線で自車に先行する隣接先行車である場合に、隣接先行車が、自車線で自車に先行する自車線先行車に切り替わる否かを判定する。例えば、隣接先行車が自車線における自車の前方に車線変更することが認識され、自車の車線変更指令が認識されなかった場合には、隣接先行車が自車線先行車に切り替わると判定する。また、例えば、自車が隣接車線における隣接先行車の後方に車線変更することが認識され、隣接先行車の車線変更が認識されなかった場合には、隣接先行車が自車線先行車に切り替わると判定する。先行車切替判定の結果は、追従禁止判定部15に入力される。
【0029】
追従禁止判定部15は、制御対象選択部13が選択した制御対象に対して、自車が追従することを禁止するか否かについて判定する。追従禁止判定部15は、制御対象として隣接先行車が選択されている状態で、自車に加速操作の操作入力があった場合に、隣接先行車に対する追従制御を終了すると判定する。この判定により、自車は、隣接先行車の走行速度に関係なく加速して自車線を走行でき、隣接先行車を追い越すことができる。
【0030】
追従禁止判定部15は、さらに、隣接先行車を自車が追い越してから所定時間経過するまで、隣接車線を走行する車両に対する追従制御を禁止すると判定する。この判定により、隣接先行車を自車が追い越してから所定の第1時間を経過するまでの間は、隣接車線を走行するさらに前方の他の隣接車を制御対象として自車が追従することを回避できる。このため、車群を追い越すためにアクセル操作を繰り返すという状況を回避でき、操作性よく車群を追い越すことができる。
【0031】
追従禁止判定部15は、さらに、隣接先行車を自車が追い越してから第1時間を経過するまでの間に、隣接車線を走行する隣接先行車とは異なるさらに前方の他の隣接車が検出された場合には、その検出された他の隣接車を自車が追い越してから所定の第2時間経過するまで、隣接車線を走行する車両に対する追従制御の禁止を継続する。隣接車線を走行する車両を追い越し切るまで、アクセル操作を繰り返すことなく、操作性よく車群を追い越せる状態を継続できる。なお、第2時間は、第1時間と一致していてもよいし、相違していてもよい。
【0032】
また、追従禁止判定部15は、操作判定部12、制御対象選択部13および先行車切替判定部14からの入力に基づいて、制御対象に対して、自車が追従することを実行するか否かについて判定するように構成されていてもよい。例えば、追従禁止判定部15は、制御対象として隣接先行車が選択されている状態で、自車に加速操作の操作入力があった場合に、隣接先行車が自車線先行車に切り替わると判定されたときは、隣接先行車に対する追従制御を実行すると判定する。また、例えば、追従禁止判定部15は、制御対象として隣接先行車が選択されている状態で、自車に加速操作の操作入力があった場合に、隣接先行車が自車線先行車に切り替わらないと判定されたときは、隣接先行車に対する追従制御を実行しない(すなわち、追従制御を終了する)と判定する。
【0033】
追従禁止判定の結果に基づいて、追従制御の禁止指令、禁止解除の指令、実行もしくは不実行の指令が目標演算/要求部16に入力される。なお、制御対象に対して自車が追従することを実行するか否かについての判定は、追従禁止判定部15ではなく、目標演算/要求部16において実行されてもよい。または、制御対象に対して自車が追従することを実行するか否かについての判定を実行する構成が独立して車両制御装置10に設けられていてもよい。
【0034】
目標演算/要求部16は、制御対象に対する追従制御を実行するか否かに基づいて、自車の目標加減速度を算出し、制御要求を設定する。追従制御が禁止されておらず、かつ、追従制御実行の指令があった場合には、制御対象に対して自車を追従制御させるための自車の目標加減速度を算出する。追従制御が禁止されている場合や、追従制御が禁止されておらず、かつ、追従制御不実行の指令があった場合には、目標加減速度は、制御対象に対して自車を追従制御させるための加減速度としては算出されない。目標演算/要求部16は、算出した自車の目標加減速度に基づき制御要求を設定し、被制御部40に出力する。
【0035】
被制御部40は、エンジン制御部41と、ブレーキ制御部42とを備えている。目標演算/要求部16により制御対象に対して自車を追従制御させるための自車の目標加減速度に基づき設定された制御要求に従い、エンジン制御部41により駆動装置を制御し、ブレーキ制御部42により制動装置を制御することにより、制御対象に対して車間距離を維持して自車を追従することができ、ACCに係る自車の制御を実現できる。なお、図示していないが、被制御部40は、操舵装置を制御する操舵制御部、ヒューマンインタフェイス(HMI)を制御するインタフェイス制御部等をさらに備えていてもよい。
【0036】
エンジン制御部41は、エンジンの動作を制御する。具体的には、各種アクチュエータを制御することにより、スロットルバルブの開閉動作や、イグナイタの点火動作や、吸気弁の開閉動作等を制御する。
【0037】
ブレーキ制御部42は、ブレーキ装置を制御する。ブレーキ装置は、センサ、モータ、バルブおよびポンプ等のブレーキ制御に関わる装置群(アクチュエータ)により構成される。ブレーキ装置は、ブレーキを掛けるタイミングおよびブレーキ量(制動量)を決定し、決定されたタイミングで決定されたブレーキ量が得られるように、ブレーキ制御に関わる装置群を制御する。
【0038】
図2に、車両制御装置10が実行する車両制御処理に係るフローチャートを示す。図2に示す処理は、車両制御装置10により所定周期で繰り返し実行される。
【0039】
ステップS101では、自車の前方または前側方に検出された先行車のうちから、自車が追従制御する対象である制御対象を選択する。例えば、図3(a)に示すように、左右の白色実線71L,71Rにより区画された道路70において、白色破線72L,72Rにより3つの車線70L,70C,70Rが区画されている。自車50は右側の車線70Rを走行し、先行車60は中央の車線70Cを自車50よりも先行して走行している。先行車60は、自車50の前側方に検出された先行車であり、自車50と先行車60との間に他の車両は存在していない。先行車60は、自車の前方または前側方に検出された先行車のうち、自車50に最も近い車両であり、制御対象として選択される。その後、ステップS102に進む。
【0040】
ステップS102では、制御対象は隣接車線の先行車(隣接先行車)であるか否かを判定する。制御対象が隣接先行車である場合には、ステップS103に進む。制御対象が隣接先行車ではない場合には、処理を終了する。例えば、図3(a)に示す先行車60が制御対象として選択されている場合、先行車60は、自車線(車線70R)に隣接する隣接車線(車線70C)を走行する隣接先行車であるため、ステップS102において肯定判定される。その後、ステップS103に進む。
【0041】
ステップS103では、追従制御が禁止されているか否かを判定する。禁止されていない場合には、「追従制御禁止なし」について肯定判定され、ステップS104に進む。禁止されている場合には、「追従制御禁止なし」について否定判定され、処理を終了する。
【0042】
ステップS104では、自車の加速操作の有無を判定する。自車の加速操作があった場合には、肯定判定され、ステップS105に進む。自車の加速操作がなかった場合には、ステップS106に進み、制御対象として選択されている隣接先行車に対して追従制御を実行することを決定し、処理を終了する。
【0043】
ステップS105では、隣接先行車が自車線先行車に切り替わるか否かを判定する。例えば、図3(a)に示すように先行車60が隣接先行車である場合に、図3(b)に示すように、自車50が隣接車線(車線70C)における先行車60の後方となる自車51の位置に車線変更することが認識され、先行車60の車線変更が認識されなかった場合には、車線変更後の自車51と先行車60とは同じ車線70Cを走行することになる。その結果、先行車60は、自車51の自車線(70C)において先行する自車線先行車となる。このため、先行車60は自車線先行車に切り替わると判定する。
【0044】
また、例えば、図3(a)に示すように先行車60が隣接先行車である場合に、図3(c)に示すように、先行車60が自車線(車線70R)における自車50の前方となる先行車61の位置に車線変更することが認識され、自車50の車線変更が認識されなかった場合には、自車50と車線変更後の先行車61とは同じ車線70Rを走行することになる。その結果、先行車61は、自車50の自車線(70R)において先行する自車線先行車となる。このため、先行車60は自車線先行車に切り替わると判定する。制御対象として選択されている隣接先行車に対して追従制御を実行することを決定し、処理を終了する。
【0045】
図3(b),(c)に示すいずれか一方に該当する場合には、ステップS106に進み、制御対象として選択されている隣接先行車に対して追従制御を実行することを決定し、処理を終了する。すなわち、自車線先行車に対する自車の追従制御を実行する。図3(b),(c)に示すいずれにも該当しない場合には、先行車60は自車線先行車に切り替わらないと判定し、ステップS107に進む。
【0046】
ステップS107では、制御対象として選択されている隣接先行車に対する追従制御を終了することを決定する。さらに、ステップS107では、自車を追従制御することを禁止する。その後、ステップS108に進む。
【0047】
ステップS108では、ステップS104において有りと判定された自車の加速操作に基づいて自車を加速し、隣接車線の車両を追い越す。図4に示すように、ステップS102において制御対象として選択された隣接先行車(先行車60)に対する自車50の追従制御が終了されているため、自車50は加速して、自車52として示すように、先行車60を追い越すことができる。なお、自車52が先行車60を追い越したか否かの判定は、例えば、図4に示すように、自車52の先端位置x1が先行車60の先端位置x2よりも前方となった場合に、追い越したと判定するようにしてもよい。
【0048】
また、ステップS107において、自車の追従制御が禁止されているため、ステップS102において制御対象として選択された隣接先行車とは異なるさらに前方の他の隣接車に対しても自車は追従制御されない。その結果、自車は、隣接車線を走行するさらに前方の他の隣接車も追い越すことができる。その後、ステップS109に進む。
【0049】
ステップS109では、ステップS102において制御対象として選択された隣接先行車を自車が追い越した後、所定の時間t1が経過しているか否かについて判定する。なお、時間t1は、第1時間であり、本フローでは、第1時間と第2時間が同じ時間に設定されている。図5(a)に示す自車53は、その先端位置が先行車60の先端位置x2を超えた直後の自車の位置を示している。自車54に示す位置は、自車53に示す位置から時間t1経過後の自車の位置を示している。自車54の位置に到達するまで、ステップS109に示す処理は繰り返され、自車54の位置に到達すると、ステップS110に進む。
【0050】
図4に示す自車50の位置において先行車60に対する追従制御が終了したとすると、自車50の位置から、自車54の位置に至るまでの間、先行車60およびさらに前方の他の隣接車に対する自車の追従制御が禁止される。自車50の位置から自車54の位置に至るまでの間は、自車の前方または前側方に先行車が検出されても、その先行車に対する自車の追従制御は行われない。このため、多数の先行車が存在していても、運転者は、各先行車を追い越すためにアクセルペダルを何度も踏み込む必要がない。
【0051】
ステップS110では、隣接先行車を自車が追い越してから時間t1を経過するまでの間に、隣接先行車とは異なる、隣接車線を走行するさらに前方の他の隣接車が検出されたか否かを判定する。図5(a)に示すように、自車53の位置から、自車54の位置に至るまでの間、自車の前方または前側方に他の隣接車が検出されなかった場合には、ステップS111に進み、追従制御の禁止を解除して、処理を終了する。図5(b)に示すように、自車53の位置から、自車54の位置に至るまでの間、自車の前方または前側方に他の隣接車62が検出された場合には、ステップS108に戻り、ステップS108~S110に示す処理が繰り返される。このため、自車が隣接車線を走行する車両を追い越し切るまで、アクセル操作を繰り返すことなく、操作性よく車群を追い越せる状態を継続できる。
【0052】
上記の各実施形態によれば、下記の効果を得ることができる。
【0053】
車両制御装置10は、自車の前方または前側方に検出された先行車に対して自車を追従させる追従制御を実行するために、自車を加減速支援する車両制御装置であって、制御対象選択部13と、先行車切替判定部14と、追従禁止判定部15と、目標演算/要求部16と、を備える。
【0054】
制御対象選択部13は、自車が追従制御する対象である制御対象を選択する。先行車切替判定部14は、制御対象が自車線に隣接する隣接車線で自車に先行する隣接先行車である場合に、隣接先行車が、自車線で自車に先行する自車線先行車に切り替わる否かを判定する。目標演算/要求部16は、制御対象に対する追従制御を実行するか否かに基づいて、自車の目標加減速度を算出し、制御要求を設定する。
【0055】
車両制御装置10は、制御対象として隣接先行車が選択されている状態で、自車に加速操作の操作入力があった場合に、先行車切替判定部により、隣接先行車が自車線先行車に切り替わると判定されたときは、隣接先行車に対する追従制御を実行し、隣接先行車が自車線先行車に切り替わらないと判定されたときは、隣接先行車に対する追従制御を終了する。
【0056】
車両制御装置10によれば、隣接先行車が自車先行車に切り替わる場合には隣接先行車に対する自車の追従制御が実行されるため、その先行車と自車とが接近しすぎることを回避でき、安全性を確保できる。一方、隣接先行車が自車線先行車に切り替わらないと判定されたときは、隣接先行車に対する追従制御を終了する。このため、自車は隣接先行車を滞りなく追い越すことができる。その結果、第1の車両制御装置によれば、隣接車線を走行する先行車を自車が適切に追い越すことが可能となる。
【0057】
車両制御装置10は、さらに、追従禁止判定部15を備える。追従禁止判定部15は、制御対象として自車線に隣接する隣接車線で自車に先行する隣接先行車が選択されている状態で、自車に加速操作の操作入力があった場合に、隣接先行車に対する追従制御を終了し、隣接先行車を自車が追い越してから所定の第1時間経過するまで、隣接車線を走行する車両に対する追従制御を禁止すると判定する。追従禁止判定部15によれば、隣接車線に複数の車両が連なって走行していても、隣接先行車を自車が追い越してから第1時間経過するまでの間は、追い越した車両とは異なるさらに前方の他の隣接車に対して自車が追従することが禁止されるため、車群を追い越すために加速操作を繰り返すという状況を回避でき、操作性よく車群を追い越すことができる。車両制御装置10によれば、隣接車線を走行する先行車を自車が適切に追い越すことが可能となる。
【0058】
追従禁止判定部15は、隣接先行車を自車が追い越してから第1時間を経過するまでの間に、隣接車線を走行する隣接先行車とは異なるさらに前方の他の隣接車が検出された場合には、その検出された他の隣接車を自車が追い越してから所定の第2時間経過するまで、隣接車線を走行する車両に対する追従制御の禁止を継続するように構成されていてもよい。自車が隣接車線を走行する車両を追い越し切るまで、加速操作を繰り返すことなく、操作性よく車群を追い越せる状態を継続できる。
【0059】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0060】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
図1
図2
図3
図4
図5