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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】運動方向変換器
(51)【国際特許分類】
   F16H 49/00 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
F16H49/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023574331
(86)(22)【出願日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2022048290
【審査請求日】2023-11-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523450041
【氏名又は名称】津村 進一
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津村 進一
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-160985(JP,A)
【文献】特開昭50-038017(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3719976(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸及び当該回転軸を中心に回転する回転子と、
前記回転子の回転方向に沿って外周に配置された壁面体と、
前記回転子に向かって進退運動を行う直線運動体と、を備え、
前記壁面体は、複数の分割壁面体を含み、
前記複数の分割壁面体は、前記回転子の回転方向に沿って間隔をあけて配置され、
前記直線運動体は、隣接する複数の前記分割壁面体の間を前記回転子に向かって進退し、
前記回転子の外周に第1磁性体が備えられ、
前記複数の分割壁面体に第2磁性体が備えられ、
前記直線運動体における前記回転子との対向部に第3磁性体が備えられ、
前記第1磁性体、前記第2磁性体、及び前記第3磁性体は同極であり、
前記第1磁性体と前記第2磁性体との間隔は、前記回転方向の上流から下流に向かって広がるように形成され、
前記第1磁性体と前記第3磁性体との間隔は、前記回転方向の上流から下流に向かって広がるように形成され、
前記回転子の回転に伴い前記第1磁性体が前記第3磁性体と対向すると、前記直線運動体は前記回転子に向かって進行し、更なる前記回転子の回転に伴い前記第1磁性体が前記第3磁性体から回転方向下流に移動すると前記直線運動体は前記回転子から退避するように進退する、
ことを特徴とする運動方向変換器。
【請求項2】
請求項1に記載の運動方向変換器であって、
前記第2磁性体は、前記回転子の回転面を含む面内において2次曲線状となる曲面状に形成される、
ことを特徴とする運動方向変換器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の運動方向変換器であって、
前記分割壁面体と同数の前記直線運動体を備え、
前記第2磁性体及び前記第3磁性体と異なる数からなる前記第1磁性体を備える、
ことを特徴とする運動方向変換器。
【請求項4】
請求項1に記載の運動方向変換器であって、
前記直線運動体が前記回転子に向かって最も進行した状態で、前記直線運動体は前記回転子に対して無接点となる位置に配置される、
ことを特徴とする運動方向変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動方向変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「磁性体の帯を外表面付近に螺旋状に巻き付けた実質的非磁性体の直丸棒が、前記磁性体の帯と実質的に同じ幅の永久磁石の帯を内表面付近に前記螺旋と同じピッチの螺旋状に貼張した丸孔を持った片体を、それらが、少なくとも前記螺旋に従って回りながらであれば直丸棒と片体とが直丸棒の軸方向に相対直線移動することを拒まない条件のもとで、直丸棒の磁性体の帯と片体の永久磁石の帯とが重なり合うように接近させて、貫通しており、直丸棒か片体のいずれか一方を軸を中心として回転させた時、他の一方がこの回転に従わないように拘束され、かつ、直丸棒と片体とを相対直線運動させるための案内を備えた回転運動を直線運動に変換する機構(要約抜粋)」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-79341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の機構によれば、回転運動を直線運動に変換できるが、直線運動を回転運動に変換することはできない。
【0005】
本発明は上記課題及び実情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で直線運動を回転運動に変換する運動方向変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は特許請求の範囲に記載の構成を備える。その一例をあげるならば、本発明は、回転軸及び当該回転軸を中心に回転する回転子と、前記回転子の回転方向に沿って外周に配置された壁面体と、前記回転子に向かって進退運動を行う直線運動体と、を備え、前記壁面体は、複数の分割壁面体を含み、前記複数の分割壁面体は、前記回転子の回転方向に沿って間隔をあけて配置され、前記直線運動体は、隣接する複数の前記分割壁面体の間を前記回転子に向かって進退し、前記回転子の外周に第1磁性体が備えられ、前記複数の分割壁面体に第2磁性体が備えられ、前記直線運動体における前記回転子との対向部に第3磁性体が備えられ、前記第1磁性体、前記第2磁性体、及び前記第3磁性体は同極であり、前記第1磁性体と前記第2磁性体との間隔は、前記回転方向の上流から下流に向かって広がるように形成され、前記第1磁性体と前記第3磁性体との間隔は、前記回転方向の上流から下流に向かって広がるように形成され、前記回転子の回転に伴い前記第1磁性体が前記第3磁性体と対向すると、前記直線運動体は前記回転子に向かって進行し、更なる前記回転子の回転に伴い前記第1磁性体が前記第3磁性体から回転方向下流に移動すると前記直線運動体は前記回転子から退避するように進退する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な構成で直線運動を回転運動に変換する運動方向変換器を提供することができる。なお、上述した以外の目的、構成、効果については以下の実施形態において明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る運動方向変換器の正面説明図である。
図2】本実施形態に係る運動方向変換器の側面説明図である。
図3】スイッチ機構の斜視外観図である。
図4】スイッチ機構の側方説明図である。
図5】スイッチ機構及びバッテリの電気系統を示す図である。
図6】ロッドの進退タイミングの説明図である。
図7】回転子の形状と直線運動体の数のバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。全図と通じて同一の構成には同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る運動方向変換器の正面説明図である。図2は、本実施形態に係る運動方向変換器の側面説明図である。
【0011】
運動方向変換器1は、筐体10、回転機構20、及び第1直線運動体30A、第2直線運動体30B、第3直線運動体30C、第4直線運動体30Dを含む。
【0012】
筐体10は、回転機構20を収容する。
【0013】
回転機構20は、回転子21、及び回転軸25を含む。回転軸25は、軸受11により筐体10に回転可能に支持される(図2参照)。回転子21は、回転軸25を中心として回転する。
【0014】
回転子21は、第1羽根22A、第2羽根22B、及び第3羽根22Cを備える。
【0015】
第1羽根22Aの外周には第1磁性体23Aが備えられる。同様に第2羽根22Bの外周には第1磁性体23B、第3羽根22Cの外周には第1磁性体23Cが備えられる。
【0016】
回転子21の外周に沿って、回転子21に非接触となるように間隔をあけて第1分割壁面体26A、第2分割壁面体26B、第3分割壁面体26C、第4分割壁面体26Dが回転子21を取り囲んで配置される。
【0017】
第1分割壁面体26Aにおける回転子21との対向面には第2磁性体27Aが備えられる。同様に、第2分割壁面体26Bにおける回転子21との対向面には第2磁性体27B、第3分割壁面体26Cにおける回転子21との対向面には第2磁性体27C、第4分割壁面体26Dにおける回転子21との対向面には第2磁性体27Dが備えられる。
【0018】
図1は、回転子の回転面を含む面を示している。上記第2磁性体27A、27B、27C、27Dは、回転子21の回転面を含む面内において2次曲線状となる曲面状に形成される。
【0019】
運動方向変換器1は、第1直線運動体30A、第2直線運動体30B、第3直線運動体30C、第4直線運動体30Dを含む。本実施形態では直線運動体としてガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関で作動するピストンを用いるが、回転子21の応答速度に対応できれば油圧ピストンでもよい。
【0020】
第1直線運動体30Aは、第1分割壁面体26Aと第2分割壁面体26Bとの間にロッド31Aの先端を回転子21に向かって進退運動するように配置される。第2直線運動体30Bは、第2分割壁面体26Bと第3分割壁面体26Cとの間にロッド31Bの先端を回転子21に向かって進退運動するように配置される。第3直線運動体30Cは、第3分割壁面体26Cと第4分割壁面体26Dとの間にロッド31Cの先端を回転子21に向かって進退運動するように配置される。第4直線運動体30Dは、第4分割壁面体26Dと第1分割壁面体26Aとの間にロッド31Dの先端を回転子21に向かって進退運動するように配置される。
【0021】
第1直線運動体30Aは、ロッド31A、シリンダ32A、第1点火プラグ33A、第2点火プラグ34Aを備える。
【0022】
ロッド31Aの先端、換言すると、回転子21との対向部には第3磁性体37Aが備えられる。第1直線運動体30Aはロッド31Aが回転子21に向かって最も進行した状態、即ち、ロッド31Aがシリンダ32Aから最も押し出された状態で、ロッド31Aの先端に設けられた第3磁性体37Aは、回転子21と非接触、即ち無接点となる位置に配置される。
【0023】
第1点火プラグ33Aはシリンダ32Aにおける第1貯留室35Aに設けられる。第1貯留室35Aには給排気弁38Aが設けられている。第2点火プラグ34Aはシリンダ32Aにおける第2貯留室36Aに設けられる。第2貯留室36Aにも給排気弁39Aが設けられている。給排気弁38A、39A経由で可燃性ガスと空気の混合ガスが流入し、燃焼ガスが排気される。
【0024】
給排気弁38Aから給気して第1点火プラグ33Aが点火すると燃焼し、給排気弁39Aから排気すると共にロッド31Aが回転子21に向かって進行する。給排気弁39Aから給気して第2点火プラグ34Aが点火すると燃焼し、給排気弁38Aから排気してロッド31Aが回転子21から退避する。第2直線運動体30B、第3直線運動体30C、第4直線運動体30Dは、第1直線運動体30Aと同様の構成であるため、重複説明を省略する。
【0025】
第1磁性体23A、23B、23Cと、第2磁性体27A、27B、27C、27Dと、第3磁性体37A、37B、37C、37Dとは全て同極である。第1磁性体23A、23B、23Cと、第2磁性体27A、27B、27C、27Dは電磁石により構成してもよいが、配線の煩雑さを避けるためネオジム磁石などの永久磁石を用いることが望ましい。第3磁性体37A、37B、37C、37Dも電磁石でもよいが、省電力の観点から永久磁石を用いることが望ましい。
【0026】
上記第3磁性体37A、37B、37C、37Dとこれに対向する第1磁性体23A、23B、23Cとの間隔は、回転方向の上流から下流に向かって広がるように形成される。同様に第2磁性体27A、27B、27C、27Dとこれに対向する第1磁性体23A、23B、23Cとの間隔は、回転方向の上流から下流に向かって広がるように形成される。そのための実現方法として、第1磁性体23A、23B、23C、第2磁性体27A、27B、27C、27D、第3磁性体37A、37B、37C、37Dは、回転子21の回転面を含む面内において2次曲線状となる曲面状に形成される。
【0027】
図2に示すように、運動方向変換器1は、スイッチ機構50及びバッテリ60を備える。スイッチ機構50により、第1直線運動体30A、第2直線運動体30B、第3直線運動体30C、第4直線運動体30Dのそれぞれの運動方向が進行方向または退避方向に切り替わる。
【0028】
スイッチ機構50は回転軸25を回転子21と共有する。これにより、回転軸25の回転運動とスイッチ機構50によるスイッチ動作とが同期する。
【0029】
スイッチ機構50は、電力線75を介してバッテリ60から給電される。図2のA-A’断面では、電力線75とスイッチ機構50の接点が含まれないが、説明の便宜のため、電力線75とスイッチ機構50の接点を点線で図示している。
【0030】
また、第4直線運動体30Dの第1点火プラグ33Dは制御線71Dを介してスイッチ機構50のブラシBR4に接続され、制御線73Dを介してバッテリ60に接続される。
【0031】
また、第4直線運動体30Dの第2点火プラグ34Dは制御線72Dを介してスイッチ機構50のブラシBR8に接続され、制御線74Dを介してバッテリ60に接続される。
【0032】
第1直線運動体30A、第2直線運動体30B、第3直線運動体30Cは第4直線運動体30Dと同様の構成であるので説明を省略する。
【0033】
図3は、スイッチ機構の斜視外観図である。図4は、スイッチ機構の側方説明図である。図5は、スイッチ機構及びバッテリの電気系統を示す図である。
【0034】
図3に示すように、スイッチ機構50は、絶縁体でできたディスク51を有する。ディスク51の円周面中央と円周面における両側部には導体を埋め込む凹部が形成され、凹部に例えば銅板などの導体が埋め込まれる。
【0035】
よって、ディスク51における第1円周面縁部52には、導体と絶縁体とが円周方向に沿って交互に配置される。第1円周面縁部52の導体が露出した部分は点火スイッチSW1、SW2、SW3に相当する。点火スイッチSW1~SW3は点火プラグ33A~33Dを点火するためのスイッチである(図5参照)。
【0036】
同様に、第2円周面縁部53には、導体と絶縁体とが円周方向に沿って交互に配置される。第2円周面縁部53の導体が露出した部分は点火スイッチSW4、SW5、SW6に相当する。点火スイッチSW4~SW6は点火プラグ34A~34Dを点火するためのスイッチである(図5参照)。
【0037】
符号56A~56E、57A~57Eは電極に付された符号である。
【0038】
ディスク51は回転軸25と共に回転する(図4参照)。その結果、回転子21の回転運動と同期して回転する。
【0039】
点火スイッチSW1~SW3、SW4~SW6の配置数及び配置間隔(周方向角度)は、回転子21の羽根の数及び配置間隔(周方向角度)と同数である。
【0040】
給電用ブラシ59は、導体により構成され、支持体58Eによりディスク51に接触して支持される。支持体58Eは筐体10の外表面にボルト80Eにより固定される。
【0041】
支持体58A~58Dは、直線運動体の配置数及び配置間隔に合わせて配置される。支持体58A~58Dの夫々は、筐体10の外表面にボルト80A、80B、(80Cは不図示)、80Dにより固定される。
【0042】
支持体58A~Dはそれぞれ、ブラシBR1~BR4を備える。ブラシBR1~BR4は導体により構成され、点火スイッチSW1~SW3と接触すると通電する。ディスク51が回転するとBR1~BR4のそれぞれが点火スイッチSW1~SW3の夫々と順次接触し通電することで点火信号が生成される。
【0043】
更に支持体58A~Dはそれぞれ、ブラシBR5~BR8を備える。ブラシBR5~BR8は導体により構成され、点火スイッチSW4~SW6と接触すると通電する。ディスク51が回転するとBR5~BR8のそれぞれが点火スイッチSW4~SW6の夫々と順次接触し通電することで点火信号が生成される。
【0044】
第4直線運動体30Dを例示する。図4に示すように回転軸25と共に回転子21及びディスク51が同期して回転すると、ディスク51の回転に伴ってSW1がブラシBR4に接触して通電し点火信号が生成される。この点火信号は制御線71Dを介して第1点火プラグ33Dに出力され、点火信号を受けて第1点火プラグ33Dが点火する。その結果、第1貯留室35D内で可燃性ガスに点火してロッド31Dが回転子21に向けて押し出される。
【0045】
更に回転軸25と共に回転子21及びディスク51が同期して回転すると、回転に伴ってSW4がブラシBR8に接触して通電し点火信号が生成される。この点火信号は制御線72Dを介して第2点火プラグ34Dに出力され、点火信号を受けて第2点火プラグ34Dが点火する。その結果、第2貯留室36D内で可燃性ガスに点火してロッド31Dが回転子21から遠ざかる方向に退避する。
【0046】
図5に示すように、第1直線運動体30Aの第1点火プラグ33AはブラシBR1、第2点火プラグ34AはブラシBR5に制御線を介して接続される。第2直線運動体30Bの第1点火プラグ33BはブラシBR2、第2点火プラグ34AはブラシBR6に制御線を介して接続される。第3直線運動体30Cの第1点火プラグ33CはブラシBR3、第2点火プラグ34CはブラシBR7に制御線を介して接続される。
【0047】
なお図5において第1円周面縁部52と共に記載した給電用ブラシ59と、第2円周面縁部53と共に記載した給電用ブラシ59とは同一の部材を示している。
【0048】
図6は、ロッドの進退タイミングの説明図である。
【0049】
図5の運動方向変換器1は、第1磁性体23A、23B、23Cは120°毎に、第3磁性体37A、37B、37C、37Dは90°毎に設けられている。
【0050】
第1磁性体23Aが図5における真上(0°)を向いている状態で第4直線運動体30Dのロッド31Dが進行すると、第3磁性体37Dが第1磁性体23Aに接近し斥力が発生する。その際、第1磁性体23Aと第3磁性体37Dとの間隔は、回転方向上流から下流に向かって広く形成されるので、上流方向から下流方向に向かって斥力が小さくなる。よって回転子21は、斥力が小さい方へ、即ち回転方向下流に向かって回転し、第1磁性体23Aが第2磁性体27Aと対向する。この状態でロッド31Dはシリンダ32Dの内部に向かって退避し、回転子21から退避する。
【0051】
第1磁性体23Aと第2磁性体27Aとの間も斥力が生じるが、第1磁性体23Aと第2磁性体27Aとの間隔は、回転方向の上流から下流に向かって広がるように形成されるため、下流方向に向かって斥力が小さくなる。よって回転子21は、斥力が小さい方へ、即ち回転方向下流に向かって回転し、第1磁性体23Aの回転角が30°に至る。
【0052】
第1磁性体23Aの回転角が30°に至ると、第1磁性体23Cが第3直線運動体30Cと対向する位置に到達する。そこで、第3直線運動体30Cのロッド31Cが進行すると、第3磁性体37Cが第1磁性体23Cに接近して斥力が生じ、更に回転子21が回転方向下流に向かって回転する。そして、第1磁性体23Cは第2磁性体27Dと対向し、第2磁性体27Dとの間で生じる斥力により更に回転方向下流に向かって回転する。その後ロッド31Cはシリンダ32Cの内部に向かって退避し、回転子21から退避する。
【0053】
回転子21の回転に伴い、第1磁性体23Aの回転角が60°に至ると、第1磁性体23Bが第2直線運動体30Bと対向する位置に到達する。そこで、第2直線運動体30Bのロッド31Bが進行すると、第3磁性体37Bが第1磁性体23Bに接近して斥力が生じ、更に回転子21が回転方向下流に向かって回転する。そして、第1磁性体23Bは第2磁性体27Cと対向し、第2磁性体27Cとの間で生じる斥力により更に回転方向下流に向かって回転する。その後ロッド31Bはシリンダ32Bの内部に向かって退避し、回転子21から退避する。
【0054】
更なる回転子21の回転に伴い、第1磁性体23Aの回転角が90°に至ると、第1磁性体23Aが第1直線運動体30Aと対向する位置に到達する。そこで、第1直線運動体30Aのロッド31Aを進行させる。これにより第3磁性体37Aが第1磁性体23Aに接近して斥力が生じ、更に回転子21が回転方向下流に向かって回転する。そして、第1磁性体23Aは第2磁性体27Bと対向し、第2磁性体27Bとの間で生じる斥力により更に回転方向下流に向かって回転する。その後ロッド31Aはシリンダ32Aの内部に向かって退避し、回転子21から退避する。
【0055】
このように回転子21に設ける第1磁性体23A、23B、23Cの回転方向の角度間隔と、第3磁性体37A、37B、37C、37Dの回転方向の角度間隔とを異ならせることで、2つ以上の第1磁性体23A、23B、23Cが同時に第3磁性体37A、37B、37C、37Dと対向することがなく、他の第1磁性体23A、23B、23Cに作用する斥力が回転運動に対するブレーキとなることを防げる。
【0056】
更に、第1磁性体23A、23B、23Cの回転方向の角度間隔を、第3磁性体37A、37B、37C、37Dの回転方向の角度間隔よりも広げることで、一つの第1磁性体に一つの第3磁性体から斥力が作用して回転すると隣接する他の第3磁性体との間で斥力が作用する前に、他の第1磁性体に他の第3磁性体との間の斥力が作用するので、回転子の回転速度をブーストさせてから隣接する第3磁性体との間で斥力を作用させることできる。よって、回転子の回転速度を高速に保つことができる。
【0057】
図6は、回転子の形状と直線運動体の数のバリエーションを示す図である。
【0058】
図7(a)は、4つの羽根を有する回転子21Aに対して、3つの第1~第3直線運動体30A、30B、30Cを備える運動方向変換器である。
【0059】
図7(b)は、4つの羽根を有する回転子21Aに対して、5つの第1~第5直線運動体30A、30B、30C、30D、30Eを備える運動方向変換器である。
【0060】
図7(c)は、5つの羽根を有する回転子21Bに対して、4つの第1~第4直線運動体30A、30B、30C、30Dを備える運動方向変換器である。
【0061】
図7(d)は、5つの羽根を有する回転子21Bに対して、6つの第1~第6直線運動体30A、30B、30C、30D、30E、30Fを備える運動方向変換器である。
【0062】
図7(e)は、6つの羽根を有する回転子21Cに対して、5つの第1~第5直線運動体30A、30B、30C、30D、30Eを備える運動方向変換器である。
【0063】
図7(f)は、8つの羽根を有する回転子21Dに対して、9つの第1~第9直線運動体30A、30B、30C、30D、30E、30F、30G、30H、30Iを備える運動方向変換器である。
【0064】
このように、回転子の羽根の数と直線運動体との組み合わせは様々な態様が可能であり、上記実施形態に限定されない。また、運動方向変換器の大きさや用途に応じて更に羽根の数や直線運動体の数を増やしてもよい。
【0065】
本発明に係る運動方向変換器によれば、簡易な構成で直線方向運動を回転方向に変換できる。また、無接点で直線方向運動を回転方向に変換できるので、直線方向と回転方向との接点部分の部品の摩耗や変換時の運動エネルギーのロスを防ぐことができる。変換した回転運動は、発電技術への利用も可能である。従来の高圧蒸気を用いた発電では排熱や温室効果ガスの排出量が増え環境負荷が懸念されるが、それらに比べて本発明に係る運動変換器を用いた発電によれば、環境負荷を低減させた発電が可能となることから、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」に貢献することが期待できる。
【符号の説明】
【0066】
1 :運動方向変換器
10 :筐体
11 :軸受
20 :回転機構
21 :回転子
21A :回転子
21B :回転子
21C :回転子
21D :回転子
22A :第1羽根
22B :第2羽根
22C :第3羽根
23A :第1磁性体
23B :第1磁性体
23C :第1磁性体
25 :回転軸
26A :第1分割壁面体
26B :第2分割壁面体
26C :第3分割壁面体
26D :第4分割壁面体
27A :第2磁性体
27B :第2磁性体
27C :第2磁性体
27D :第2磁性体
30A :第1直線運動体
30B :第2直線運動体
30C :第3直線運動体
30D :第4直線運動体
30E :第5直線運動体
30F :第6直線運動体
30G :第7直線運動体
30H :第8直線運動体
30I :第9直線運動体
31A :ロッド
31B :ロッド
31C :ロッド
31D :ロッド
32A :シリンダ
32B :シリンダ
32C :シリンダ
32D :シリンダ
33A :第1点火プラグ
33B :第1点火プラグ
33C :第1点火プラグ
33D :第1点火プラグ
34A :第2点火プラグ
34B :第2点火プラグ
34C :第2点火プラグ
34D :第2点火プラグ
35A :第1貯留室
35D :第1貯留室
36A :第2貯留室
36D :第2貯留室
37 :第3磁性体
37A :第3磁性体
37B :第3磁性体
37C :第3磁性体
37D :第3磁性体
50 :スイッチ機構
51 :ディスク
52 :第1円周面縁部
53 :第2円周面縁部
56A :電極
56B :電極
56C :電極
56D :電極
56E :電極
57A :電極
57B :電極
57C :電極
57D :電極
57E :電極
58A :支持体
58B :支持体
58C :支持体
58D :支持体
58E :支持体
59 :給電用ブラシ
60 :バッテリ
71D :制御線
72D :制御線
73D :制御線
74D :制御線
75 :電力線
80A :ボルト
80B :ボルト
80E :ボルト
BR1 :ブラシ
BR2 :ブラシ
BR3 :ブラシ
BR4 :ブラシ
BR5 :ブラシ
BR6 :ブラシ
BR7 :ブラシ
BR8 :ブラシ
SW1 :点火スイッチ
SW2 :点火スイッチ
SW3 :点火スイッチ
SW4 :点火スイッチ
SW5 :点火スイッチ
SW6 :点火スイッチ
【要約】
運動方向変換器は、回転子と、回転子の外周に沿って配置された複数の分割壁面体と、回転子に向かって進退運動を行う直線運動体とを備える。回転子の外周に第1磁性体、分割壁面体に第2磁性体、直線運動体における回転子との対向部に第3磁性体を備え、これら磁性体は同極である。第1磁性体と第2磁性体との間隔及び第1磁性体と第3磁性体との間隔は、回転方向の上流から下流に向かって広がるように形成される。回転子の回転に伴い第1磁性体が第3磁性体と対向すると、直線運動体は回転子に向かって進行し、更なる回転子の回転に伴い第1磁性体が第3磁性体から回転方向下流に移動すると直線運動体は回転子から退避する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7