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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/00 20060101AFI20240118BHJP
   B62D 5/06 20060101ALI20240118BHJP
   B62D 3/14 20060101ALI20240118BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B62D3/00 Z
B62D5/06 Z
B62D3/14
A01B69/00 302
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020068341
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021165061
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-12-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】都築 洋久
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-002221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 3/00
B62D 5/06
B62D 3/14
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦席(15)の前方に設けるステアリングハンドル(16)の回動をエンジン(3)の近傍に設ける操舵用油圧制御ユニット(70)に伝動して操向操作を行う作業車において、前記エンジン(3)のシリンダブロック(31)に支持ブラケット(50)を立設し、前記支持ブラケット(50)の後側に取付けブラケット(57)を介して前記操舵用油圧制御ユニット(70)の入力軸(71)を前記エンジン(3)の左右中央で後上方へ向けて突出させた状態で設け、該入力軸(71)と前記ステアリングハンドル(16)のハンドル軸(16a)を連結し、
前記取付けブラケット(57)の前記支持ブラケット(50)への取り付け側に前記支持ブラケット(50)を横切るパイプ(45a,45b)を通す凹み部(57e)を形成したことを特徴とする作業車。
【請求項2】
前記凹み部(57e)から浮かせて前記操舵用油圧制御ユニット(70)を前記取付けブラケット(57)に取り付けたことを特徴とする請求項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の如く、作業車の操向装置は、操縦席に設けるステアリングハンドルの回動で油圧操向装置を駆動して前輪を操向し旋回走行するようにしている。この油圧操向装置はステアリングハンドルで回動するステアリング軸の回転が油圧操向装置の入力軸に伝動されて油圧で前輪を操向する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-6567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の作業車の操向装置で、ステアリングハンドルは機体の左右ほぼ中央に設けられ、油圧操向装置は機体の左右中央に搭載するエンジンの側部に設置されているために、ステアリングハンドルのステアリング軸から油圧操向装置の入力軸への回転伝動は後方から前下方へ屈曲して連結した状態で行われることになり、ステアリングハンドルの回動が滑らかに油圧操向装置に伝わり難い。
【0005】
本発明は、作業車の操向装置において、ステアリングハンドルの回動操作が滑らかに油圧操向装置に伝わって快適な旋回操作を行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0007】
第1の本発明は、
操縦席(15)の前方に設けるステアリングハンドル(16)の回動をエンジン(3)の近傍に設ける操舵用油圧制御ユニット(70)に伝動して操向操作を行う作業車において、前記エンジン(3)のシリンダブロック(31)に支持ブラケット(50)を立設し、前記支持ブラケット(50)の後側に取付けブラケット(57)を介して前記操舵用油圧制御ユニット(70)の入力軸(71)を前記エンジン(3)の左右中央で後上方へ向けて突出させた状態で設け、該入力軸(71)と前記ステアリングハンドル(16)のハンドル軸(16a)を連結し、
前記取付けブラケット(57)の前記支持ブラケット(50)への取り付け側に前記支持ブラケット(50)を横切るパイプ(45a,45b)を通す凹み部(57e)を形成したことを特徴とする作業車である。
第2の本発明は、
前記凹み部(57e)から浮かせて前記操舵用油圧制御ユニット(70)を前記取付けブラケット(57)に取り付けたことを特徴とする第1の作業車である。
本発明に関連する第1の発明は、操縦席15の前方に設けるステアリングハンドル16の回動をエンジン3の近傍に設ける操舵用油圧制御ユニット70に伝動して操向操作を行う作業車において、前記エンジン3のシリンダブロック31に支持ブラケット50を立設し、前記支持ブラケット50の後側に取付けブラケット57を介して前記操舵用油圧制御ユニット70の入力軸71を前記エンジン3の左右中央で後上方へ向けて突出させた状態で設け、該入力軸71と前記ステアリングハンドル16のハンドル軸16aを連結したことを特徴とする作業車とする。
【0008】
本発明に関連する第2の発明は、前記取付けブラケット57の前記支持ブラケット50への取り付け側に前記支持ブラケット50を横切るパイプ45a,45bを通す凹み部57eを形成したことを特徴とする本発明に関連する第1の発明の作業車とする。
【0009】
本発明に関連する第3の発明は、前記凹み部57eから浮かせて前記操舵用油圧制御ユニット70を前記取付けブラケット57に取り付けたことを特徴とする本発明に関連する第2の発明の作業車とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の本発明によって、機体の左右中央に設けるステアリングハンドル16のハンドル軸16aとエンジン3の左右中央で後上方へ向けた操舵用油圧制御ユニット70の入力軸71が前後で折れ角が少なく直線的に連結されるので、ステアリングハンドル16の回転が操舵用油圧制御ユニット70に伝動されて滑らかな旋回操作になる。さらに、支持ブラケット50の側面にパイプ45a、45bが取付けブラケット57の凹み部57eを通して配管した状態で操舵用油圧制御ユニット70を取り付ける取付けブラケット57が支持ブラケット50に強固に取り付けられてステアリングハンドル16の回動が精度よく操舵用油圧制御ユニット70に伝動されて走行操作が確実になる。
第2の本発明によって、第1の本発明の効果に加えて、取付けブラケット57の後側に操舵用油圧制御ユニット70をその入力軸71が後上方へ向けて突出させた状態に取り付けるので、構成が簡略になる。
本発明に関連する第1の発明で、機体の左右中央に設けるステアリングハンドル16のハンドル軸16aとエンジン3の左右中央で後上方へ向けた操舵用油圧制御ユニット70の入力軸71が前後で折れ角が少なく直線的に連結されるので、ステアリングハンドル16の回転が操舵用油圧制御ユニット70に伝動されて滑らかな旋回操作になる。
【0011】
本発明に関連する第2の発明で、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、支持ブラケット50の側面にパイプ45a、45bが取付けブラケット57の凹み部57eを通して配管した状態で操舵用油圧制御ユニット70を取り付ける取付けブラケット57が支持ブラケット50に強固に取り付けられてステアリングハンドル16の回動が精度よく操舵用油圧制御ユニット70に伝動されて走行操作が確実になる。
【0012】
本発明に関連する第3の発明で、本発明に関連する第2の発明の効果に加えて、取付けブラケット57の後側に操舵用油圧制御ユニット70をその入力軸71が後上方へ向けて突出させた状態に取り付けるので、構成が簡略になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係るトラクタの左側面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るエンジンとその周辺の構成を示す後斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係るエンジンから一部の装置および部品を取り外した状態の後斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係るエンジンからカバー部材を取り外した状態の後斜視図である。
図5】本発明の実施の形態に係るエンジンに取り付ける支持ブラケット等を後斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係る支持ブラケット等を前側方から見た前斜視図である。
図7】本発明の実施の形態に係るエンジンの上部周辺を拡大して示す後斜視図である。
図8】本発明の実施の形態に係る取付けブラケットを取り外したエンジン上部の背面図である。
図9】本発明の実施の形態に係る操舵用油圧制御ユニットを取り外したエンジン上部の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1には、本発明の実施形態に係る作業車両の一例であるトラクタ1が示されている。
【0016】
このトラクタ1は、車体2の前側および後側で左右に配置される左右一対の前輪11,11および後輪12,12を備えている。
【0017】
車体2の前部には、開閉可能なボンネット13に囲まれる空間内にエンジン3が搭載されている。ボンネット13は、エンジン3の一部である上面部と前面部と左右側面部の上部とを覆うよう構成されている。
【0018】
また、車体2の中央部から後部には、エンジン3の回転動力を前輪11,11と後輪12,12の双方又はその後者(後輪)に伝達する動力伝達装置4が設けられている。動力伝達装置4は、トランスミッションケース40内に配置される図示しないクラッチ機構、主変速装置、副変速装置、前後進切換機構、デフ装置等により構成されている。
【0019】
また、トラクタ1は、車体2の後部(トランスミッションケース40の後部)に、図示しないロータリ耕耘機等の作業機を装着するロワリンク29、リンク機構等の連結装置を設け、装着した作業機にエンジン3の回転動力を出力するためのPTO軸49がトランスミッションケース40に設けられている。
【0020】
さらに、トラクタ1は、車体2の中央部から後部の途中までの部分に、操縦室となるキャビン14が設けられている。キャビン14内には、運転者が座る操縦席15や、前輪11,11を操舵するステアリングハンドル(ステアリングホイール)16が配置されている。
【0021】
ステアリングホイール16の下方のハンドルポスト21には、前進走行と後進走行の切り換えを行う際に操作される前後進レバー17が設けられている。ハンドルポスト21の前後進レバー17とは反対側には、エンジン3の回転数を調整する際に操作される図示しないスロットルレバーが設けられている。ハンドルポスト21に立設されるハンドル軸16aの上端に取り付けたステアリングホイール16の前方には、操縦等に必要な情報が表示されるメータパネル23が設置されている。操縦席15の左横には、主変速レバー24等の操作レバーが配置されている。
【0022】
キャビン14内のうち操縦席15とステアリングホイール16の下方には、ステップフロア22が設けられている。そのステップフロア22には、ブレーキペダル18、クラッチペダル19等の操作具が設けられている。
【0023】
図2から図4には、上記エンジン3とその近くに設置した装置又は部品が示されている。図3および図4は、図2に示されるエンジン3の近くに配置する装置又は部品の一部が取り外された状態で示されている。
【0024】
エンジン3は、例えばディーゼルエンジンが使用される。このエンジン3は、図4等に示されるように、シリンダブロック31の上部にシリンダヘッド32やシリンダカバー33等が設けられ、そのシリンダブロック31の下部にオイルパン34が設けられている。また、エンジン3は、そのシリンダブロック31の前部に冷却ファン35等が設けられ、そのシリンダブロック31の後方下部にクランク軸と接続されたフライホイールが配置されたフライホイールケース36等が設けられている。
【0025】
シリンダブロック31は、内部に図示しないクランク軸に結合された複数本のピストンが往復動するよう配置された複数のシリンダが設けられている。冷却ファン35は、クランク軸と接続されたプーリ、オルタネータ37等の関係する部品に掛け回されて回転させられるファンベルト38により回転する。(図4
そして、このトラクタ1においては、図2図3等に示されるように、エンジン3の後部に、板状の支持ブラケット50を上方に向けて起立させた状態で取り付けている。
【0026】
また、このトラクタ1においては、図2に示されるように、支持ブラケット50の前面側に取付け器具56を設け、その取付け器具56を介して排気ガス処理装置60を設置しており、しかも、支持ブラケット50の後面側に取付けブラケット57を設け、その取付けブラケット57に操舵用油圧制御ユニット70を設置している。
【0027】
はじめに、支持ブラケット50は、図5図6等に示されるように、所要の長さおよび幅を有して上下方向に長いほぼ長方形の平板からなる本体部51と、本体部51の左右端で後方側にほぼ直角に折れ曲がる板状の左側板部52Aおよび右側板部52Bを有した形状のブラケットになっている。
【0028】
このうち本体部51は、取り付けた際にトラクタ1の前進方向に向ける側の面が前面51aとなり、その際にトラクタ1の後進方向に向ける側の面が後面51bとなる。左側板部52Aと右側板部52Bはいずれも、その上部が下部よりも後方に突出した形状になっている。また、支持ブラケット50は、その上端部側から見た場合、断面形状が凹状又はU字状の形状になっている。
【0029】
また、支持ブラケット50は、その本体部51の下部51cが、エンジン3における上部にあるシリンダヘッド32の後面に形成された取付け加工面における4つのネジ穴を有する固定部55に固定ネジ9Naでねじ止めされて固定されている。
【0030】
この際、支持ブラケット50は、図2図3等に示されるように、その本体部51の上部51bがエンジン3の上部(例えばシリンダカバー33)より上方に突出した状態で取り付けられる。
【0031】
次に、排気ガス処理装置60を設置する取付け器具56は、図6等に示されるように、左右に独立して配置されて排気ガス処理装置60を保持する環状の保持部56a,56bと、保持部56a,56bを支持して支持ブラケット50の前面側に取り付けて固定する取付け固定部56cとで構成されている。
【0032】
保持部56a,56bは、外観がほぼ円筒状の排気ガス処理装置60の外周面を締め付け用ネジの調整によって締め付けた状態で保持する仕組みになっている。また、取付け固定部56cは、支持ブラケット50の本体部51の前面51aにおける中央上部51d側に4組のボルト・ナット9Nbで固定されている。
【0033】
排気ガス処理装置60は、ディーゼルエンジンからなるエンジン3から排気される排気ガスを浄化処理する装置であり、例えば、円筒状の収容体61の内部に酸化触媒(DOC)とディーゼル微粒子フィルター(DPF)とを直列に連結された状態で組み込まれて排気ガスを通過させる構造の装置が使用される。DOCは、排気ガス中の有害成分を酸化して無害化させる処理を行う。DPFは、排気ガスに含まれる粒状物質を捕集する処理を行う。
【0034】
また、この排気ガス処理装置60は、図2図3等に示されるように、支持ブラケット50に取付け器具56を介して、エンジン3の上方に位置する状態で取り付けられる。
【0035】
本実施の形態における排気ガス処理装置60は、図7等に示されるように、エンジン3の図示しない排気マニホールドを通して排出される排気ガスが過給機42の排気タービン部42Bを経由して排気用の接続管43から取り込まれる。また、排気ガス処理装置60で処理された排気ガスは、図7等に示されるように、排気管44から排出されて、排気マフラー48(図1)から外に排出されるようになっている。
【0036】
次に、操舵用油圧制御ユニット70を設置する取付けブラケット57は、図2又は図9に示されるように、左右に間隔をあけて向き合った状態で配置される左右の取付け側板部である左取付け側板部57a,および右取付け側板部57bと、左右の取付け側板部である左取付け側板部57a,および右取付け側板部57bをその上下端で連結するとともにその左取付け側板部57a,および右取付け側板部57bにおける上下の端部を支持ブラケット50の後面側に取り付けて固定する上下の取付け固定部57c,57dとで構成されている。
【0037】
左右の取付け側板部である左取付け側板部57a,および右取付け側板部57bは、支持ブラケット50を横切る排気ガス混入パイプ45aと排気ガス戻しパイプ45bを通す凹み部57eを形成して後方側に凸になるよう屈曲した外観形状からなり、その後方に向けて斜めに下がる傾斜部分に操舵用油圧制御ユニット70の一部を左右取付け側板部である左取付け側板部57a,および右取付け側板部57bで挟んで固定ネジで取り付ける構造になっている。また、上下の取付け固定部57c,57dは、図5等に示されるように、支持ブラケット50の本体部51の後面51bにおける中央より下部側に4組のボルト・ナット9Ndで固定される。
【0038】
操舵用油圧制御ユニット70は、例えばオービットロール(登録商標)等の油圧式操舵補助機器が使用される。操舵用油圧制御ユニット70は、取付けブラケット57における左右の取付け側板部である左取付け側板部57a,および右取付け側板部57bの後方に向けて斜めに下がる傾斜部分に挟んで固定されている。
【0039】
操舵用油圧制御ユニット70は、図2に示されるように、後方上向きに突出する入力軸71にステアリングホイール16のハンドル軸16aが自在継手を介して連結されている一方で、複数本の油圧パイプ73が図示しない油圧ポンプに接続されている。トラクタ1は、その油圧ポンプがステアリングシリンダ75を作動させるよう接続されており、ステアリングシリンダ75の作動より変位するタイロッド76により前輪11,11の向きが調節されて操舵される。
【0040】
また、このトラクタ1においては、図2図3等に示されるように、支持ブラケット50の上部に、エンジン3の少なくとも一部を覆うボンネット13を回動可能に支持する回動支持ブラケット28が設けられている。
【0041】
回動支持ブラケット28は、図5図6等に示されるように、左右に所要の間隔をあけて配置される板状の左右の支持本体部28a,28bと、左右の支持本体部28a,28bの下部から支持ブラケット50の左側板部52Aおよび右側板部52Bの各外側面にそれぞれ接近するよう連続して設けられる板状の左右の取付け面部28c,28dと、左右の支持本体部28a,28bを連結する板状の連結部28eと、左右の支持本体部28a,28bの上端部にそれぞれ設けられる軸受部28fとを有する形状になっている。
【0042】
軸受部28fは、ボンネット13の回動取付け部の構成内容に応じて、支持軸又は軸受穴にて構成される。
【0043】
この回動支持ブラケット28は、左右の取付け面部28c,28dを、支持ブラケット50の左側板部52Aおよび右側板部52Bの上端部に設けたネジ通し孔を介して上下2組のボルト・ナット9Ndでそれぞれ固定されることで取り付けられる。
【0044】
ボンネット13は、その回動取付け部が、回動支持ブラケット28における左右の支持本体部28a,28bの軸受部28fに取り付けられる。これにより、ボンネット13は、図1に二点鎖線で例示されるように、そのボンネット前部側を、軸受部28fを支点にして上方に持ち上げるように回動させて、開けた状態にすることができる。
【0045】
以上説明したトラクタ1においては、エンジンの後部に取り付けられる支持ブラケット50の前面側に取付け器具56を介して排気ガス処理装置60が設置され、その支持ブラケット50の後面側に取付けブラケット57を介して操舵用油圧制御ユニット70が設置されているので、排気ガス処理装置60や操舵用油圧制御ユニット70をエンジン3の近くにそれぞれ設置するための専用の取付け部品を個別に用意する必要がなく、それらがエンジン3の近くに効率よく配置されている。
【0046】
したがって、このトラクタ1においては、エンジン3の近くに取り付ける1つの支持ブラケット50に複数の装置又は構成部品を効率よく配置して取付け部品の点数を削減することができる。
【0047】
また、このトラクタ1においては、ボンネット13の回動支持ブラケット28が支持ブラケット50の上部に設けられているので、その回動支持ブラケット28としてエンジン3の近くに直接取り付けるように構成する専用のブラケットと比べると小型にすることが可能になる。この結果、トラクタ1では、取付け部品の点数を削減することに加えて取付け部品を小型にすることも可能になる。
【0048】
また、本実施の形態における取付け器具56は、図3図5図6等に示されるように、エンジン3の上部に取り付けて固定する固定部材58を備えている。
【0049】
固定部材58は、図5図6等に示されるように、取付け器具56における取付け固定部56cをその下方側から支持するほぼ水平面状の支持部58aと、支持部58aの左端から垂下する左固定部58bと、支持部58aの右端から垂下する右固定部58cとを有した形状の部材である。支持部58aは、取付け器具56における取付け固定部56cに接合して固定されている。左固定部58bは、例えばシリンダヘッド32の左側面部に対して、スタッド58eや図示しない固定ネジで位置決めやねじ止めされて固定される。右固定部58cは、例えばシリンダカバー33の右側面部に対して、固定ネジでねじ止めされて固定される。
【0050】
これにより、トラクタ1においては、上部がエンジン3の上部よりも上方に突出する状態で取り付けられている板状の支持ブラケット50に排気ガス処理装置60がエンジン3の上方に位置する状態で設置されているにもかかわらず、排気ガス処理装置60の取付け器具56と固定部材58が協働して支持ブラケット50の倒れを防止する補強部材となって機能する。
【0051】
この結果、トラクタ1では、支持ブラケット50が倒れるおそれもなく安定した状態に保たれ、排気ガス処理装置60を安定した状態で配置することができる。
【0052】
また、本実施の形態における支持ブラケット50は、図2図3等に示されるように、エンジン3における左右の側面部をそれぞれ覆う左右の側面カバー80A,80Bの一部(例えば後端部)を取り付ける取付け治具59が設けられている。
【0053】
左右の側面カバー80A,80Bは、ボンネット13で覆っていないエンジン3における左右の側面部から熱を外に排出させるとともに、作動しているエンジン3に手などが誤って近づくことを防止するためのものである。
【0054】
この側面カバー80A,80Bは、図3等に示されるように、その覆う範囲に応じた形状からなる通気性のカバー部材81と、カバー部材81を所要の形状に保持する保持部材82とで構成されている。カバー部材81としては、例えば、パンチグメタル等が適用される。
【0055】
取付け治具59は、図7図8等に示されるように、側面カバー80A,80Bの後端部と支持ブラケット50の側部との間をつなげて支持する所要の形状からなる支持アーム部と、支持アームの一端部を側面カバー80A,80Bの後端部の内側にある保持部材82の一部にねじ止め等により固定する固定部と、支持アームの他端部を支持ブラケット50の側部である左側板部52Aおよび右側板部52Bの下部外側にボルト・ナットで取り付ける取付け部を有している。支持アーム部は、丸棒状の部材で構成されている。
【0056】
これにより、トラクタ1においては、エンジン3の側面部の周囲であっても、側面カバー80A,80Bの一部を支持ブラケット50の側部に取り付けられる取付け治具59を介して容易に配置して取り付けることができる。
【0057】
さらに、本実施の形態における支持ブラケット50は、図5図6図8等に示されるように、その本体部51の上部に、エンジン3の製造時やその取り外し時、トラクタ1の組み立て時等の時期においてエンジン3を吊り上げるときに用いる吊り上げる部材を引っ掛ける吊上げ用穴53が設けられている。
【0058】
吊り上げる部材は、たとえば、フックや、ワイヤー、チェーンなどが挙げられる。吊上げ用穴53は、吊り上げる部材の形状や寸法に適合する条件に設定される。この吊上げ用穴53としては、上下方向に長い縦長穴が形成される。
【0059】
これにより、トラクタ1においては、エンジン3を吊り上げる部材を引っ掛けるための専用の吊上げ用取付け部品を別途設ける必要がなくなり、取付け部品の点数を削減することができる。ちなみに、このエンジン3においては、図4に示されるように、そのエンジン3の前部に、吊上げ用穴が形成された吊上げ用取付け部品85がエンジン3の上部より上方に突出する状態で設けられている。
【0060】
また、本実施の形態におけるエンジン3は、図4等に示されるように、排気ガスの一部を給気側に戻して混入させることにより酸素量を減らして窒素酸化物Noxの発生を低減させる排気再循環装置(EGR:Exhaust Gas Recirculation)45が設けられている。
【0061】
排気再循環装置45は、図4等に示されるように、吸気マニホールド47の途中位置と戻す排気ガスを冷却するEGRクーラ45cとの間を接続するよう設けられている。図4中における符号45bは図示しない排気マニホールドから分岐してEGRバルブ45vを通り、EGRクーラ45cに接続して配策される排気ガス戻しパイプ、符号45aは戻した排気ガスを吸気マニホールド47の途中位置に流し込んで混入させる排気ガス混入パイプである。
【0062】
排気ガス戻しパイプ45bと排気ガス混入パイプ45aとの間には、熱膨張や振動による応力を吸収するベローズ部46が設けられている。EGRクーラベローズ部46は、排気ガス戻しパイプ45bと排気ガス混入パイプ45aよりも径が大きい蛇腹状の外観部分になっており、またシリンダヘッド32の後面に接近した状態で配置される。
【0063】
本実施の形態における支持ブラケット50は、図5から図8等に示されるように、シリンダヘッド32の後面と排気再循環装置45との間に位置するよう取り付けられるので、排気再循環装置45のベローズ部46が本体部51の後面51bと干渉することを避けるために、本体部51のうちベローズ部46と向き合う部分に干渉回避開口(逃がし部)54を設けている。
【0064】
本実施の形態における干渉回避開口54は、支持ブラケット50の下部の強度を確保する観点から、開口形状が横に長い長方形の穴として形成している。この干渉回避開口54は、ベローズ部46との干渉を避けることができる形状であればよく、他の開口形状からなる開口部としてもよい。
【0065】
また、本実施の形態におけるエンジン3は、図4等に示されるように、クランクケースからの排気ガスを浄化するクランクケース浄化装置(CCV: Closed Crankcase Ventilation)90を設ける。
【0066】
そこで、支持ブラケット50には、図8図9等に示されるように、その左側面部52aの下部に、クランクケース浄化装置90を設置するための板状の取付けブラケット91をボルト・ナット9Neで固定して取り付けている。クランクケース浄化装置90は、その少なくとも一部が取付けブラケット91にねじ止めされて固定されている。
【0067】
なお、上記実施の形態では、排気ガス処理装置60として、DOCとDPFを用いる構成例を示したが、排気ガス処理装置60はこれに限定されるものでなく、他にも例えば、排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する選択性還元Nox触媒(SCR:Selective Catalytic Reduction)を適用して構成してもよい。
【符号の説明】
【0068】
3 エンジン
15 操縦席
16 ステアリングハンドル
16a ハンドル軸
31 シリンダブロック
45a 排気ガス混入パイプ
45b 排気ガス戻しパイプ
50 支持ブラケット
57 取付けブラケット
57a 左取付け側板部
57b 右取付け側板部
57e 凹み部
70 操舵用油圧制御ユニット
71 入力軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9