(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20240118BHJP
F16D 1/02 20060101ALI20240118BHJP
F16D 1/033 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16D1/02 100
F16D1/02 300
F16D1/033 300
(21)【出願番号】P 2021027140
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】上島 徳弘
(72)【発明者】
【氏名】永井 真人
(72)【発明者】
【氏名】赤松 克利
(72)【発明者】
【氏名】松家 伸一
(72)【発明者】
【氏名】長尾 康史
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-069128(JP,U)
【文献】特開2014-206203(JP,A)
【文献】特開2002-166734(JP,A)
【文献】特開2012-228957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
F16D 1/02
F16D 1/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体と、前記走行車体に搭載され圃場内で作業を行う作業装置と、走行駆動力及び作業駆動力を伝動するミッションケースとを備える作業車両において、
前記作業装置の作業を作動油により行う作業油圧系統と、
前記作業油圧系統から前記ミッションケース内に前記作動油を排出する潤滑送油管とを備え、
前記潤滑送油管の排出口は、前記ミッションケースの内部の上部側に配置される前記作業駆動力の伝動機構よりも上側に配置されて
おり、
前記ミッションケースの下部側には、前後の走行装置に伝動する走行伝動シャフトがそれぞれ配置され、
前記それぞれの走行装置は、走行車輪と、前記走行車輪に伝動するアクスルケースで構成され、
それぞれの前記アクスルケースには、前記ミッションケースに向かうドライブシャフトが取り付けられ、
前記ミッションケースの内部のそれぞれの前記走行伝動シャフトと、前記それぞれのアクスルケースの前記ドライブシャフトとは、シャフト連結体を介してそれぞれ連結され、
前記シャフト連結体はいずれも、スペーサと、そのスペーサの両側に角軸形状の凹凸嵌め合い構造で合体された一対のフランジで構成され、
前記走行伝動シャフトはその出力端部がスプライン形状をしており、その出力端部が対応する前記シャフト連結体の一方の前記フランジのスプライン形状の内周に差し込まれて固定されるとともに、そのシャフト連結体の他方の前記フランジのスプライン形状の内周に、対応する前記アクスルケースの前記ドライブシャフトのスプライン形状の端部が差し込まれて固定されていることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記ミッションケースの上部側に配置される前記伝動機構は、前記作業装置に駆動力を伝動する作業伝動軸を有し、
前記作業伝動軸には、前記排出口から排出される前記作動油を受けつつ周囲に拡散させる拡散部材が回転可能に装着されており、
前記拡散部材には、前記作動油が内部に進入可能な通油孔が形成されている、請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームスプレイヤーなどを備えた薬剤散布機などの作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の作業車両は、エンジンから駆動力を得るフロントミッションケースと、フロントミッションケースから伝動下手側への伝動を入切する乾式クラッチと、駆動力を走行系統及びブームスプレイヤー等の作業系統に伝動するリアミッションケースを備えており、リアミッションケースの内部における上方位置には、作業装置に伝動するPTO軸が装着され、また、下方位置には前後の走行車輪に伝動する走行伝動シャフトを装着している(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020‐001612号公報
【文献】特開2002‐346444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、そのような従来の作業車両において、このリアミッションケース内には、ギヤ等の摩耗や焼け付きを軽減する潤滑油が充填されているが、作業時間の累積と共に少しずつ減少していくと、上方位置にあるPTO軸、及びその伝動系統に潤滑油が届きにくくなる。したがって、潤滑油の不足により摩耗が生じやすくなり、耐久性が低下する問題や、焼け付きによりPTO軸等の回転が妨げられ、破損が生じる問題がある。
【0005】
また、特許文献2に示すとおり、下方位置にある走行伝動シャフトは、車体前後に配置された走行アクスルケースに装着されているが、ミッションケースをメンテナンスする際にその走行アクスルケースを取り外す必要があり、メンテナンス作業に、より多くの時間と労力を費やす問題がある。
【0006】
さらに、メンテナンス後に走行伝動シャフトを組み直す際、走行アクスルケースとミッションケースの位置合わせを精密に行う必要があり、メンテナンス作業に、より多くの時間と労力を費やす問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来の作業車両の課題を考慮し、潤滑油不足に対応できる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明は、
走行車体と、前記走行車体に搭載され圃場内で作業を行う作業装置と、走行駆動力及び作業駆動力を伝動するミッションケースとを備える作業車両において、
前記作業装置の作業を作動油により行う作業油圧系統と、
前記作業油圧系統から前記ミッションケース内に前記作動油を排出する潤滑送油管とを備え、
前記潤滑送油管の排出口は、前記ミッションケースの内部の上部側に配置される前記作業駆動力の伝動機構よりも上側に配置されており、
前記ミッションケースの下部側には、前後の走行装置に伝動する走行伝動シャフトがそれぞれ配置され、
前記それぞれの走行装置は、走行車輪と、前記走行車輪に伝動するアクスルケースで構成され、
それぞれの前記アクスルケースには、前記ミッションケースに向かうドライブシャフトが取り付けられ、
前記ミッションケースの内部のそれぞれの前記走行伝動シャフトと、前記それぞれのアクスルケースの前記ドライブシャフトとは、シャフト連結体を介してそれぞれ連結され、
前記シャフト連結体はいずれも、スペーサと、そのスペーサの両側に角軸形状の凹凸嵌め合い構造で合体された一対のフランジで構成され、
前記走行伝動シャフトはその出力端部がスプライン形状をしており、その出力端部が対応する前記シャフト連結体の一方の前記フランジのスプライン形状の内周に差し込まれて固定されるとともに、そのシャフト連結体の他方の前記フランジのスプライン形状の内周に、対応する前記アクスルケースの前記ドライブシャフトのスプライン形状の端部が差し込まれて固定されていることを特徴とする作業車両である。
第2の本発明は、
前記ミッションケースの上部側に配置される前記伝動機構は、前記作業装置に駆動力を伝動する作業伝動軸を有し、
前記作業伝動軸には、前記排出口から排出される前記作動油を受けつつ周囲に拡散させる拡散部材が回転可能に装着されており、
前記拡散部材には、前記作動油が内部に進入可能な通油孔が形成されている、第1の本発明の作業車両である。
本発明に関連する第1の発明は、
走行車体と、前記走行車体に搭載され圃場内で作業を行う作業装置と、走行駆動力及び作業駆動力を伝動するミッションケースとを備える作業車両において、
前記作業装置の作業を作動油により行う作業油圧系統と、
前記作業油圧系統から前記ミッションケース内に前記作動油を排出する潤滑送油管とを備え、
前記潤滑送油管の排出口は、前記ミッションケースの内部の上部側に配置される前記作業駆動力の伝動機構よりも上側に配置されていることを特徴とする作業車両である。
【0009】
本発明に関連する第2の発明は、
前記ミッションケースの上部側に配置される前記伝動機構は、前記作業装置に駆動力を伝動する作業伝動軸を有し、
前記作業伝動軸には、前記排出口から排出される前記作動油を受けつつ周囲に拡散させる拡散部材が回転可能に装着されており、
前記拡散部材には、前記作動油が内部に進入可能な通油孔が形成されている、本発明に関連する第1の発明の作業車両である。
【0010】
本発明に関連する第3の発明は、
前記潤滑送油管は、前記ミッションケースの前側または後側に装着されており、
前記潤滑送油管の排出口にはオリフィスが形成され、前記オリフィスは前記ミッションケースの内部に臨んでいる、本発明に関連する第1または2の発明の作業車両である。
【0011】
本発明に関連する第4の発明は、
前記ミッションケースの下部側には、前後の走行装置に伝動する走行伝動シャフトがそれぞれ配置され、
前記それぞれの走行装置は、走行車輪と、前記走行車輪に伝動するアクスルケースで構成され、
それぞれの前記アクスルケースには、前記ミッションケースに向かうドライブシャフトが取り付けられ、
前記ミッションケースの内部のそれぞれの前記走行伝動シャフトと、前記それぞれのアクスルケースの前記ドライブシャフトとは、シャフト連結体を介してそれぞれ連結されている、本発明に関連する第1から3のいずれかの発明の作業車両である。
【0012】
本発明に関連する第5の発明は、
前記シャフト連結体はいずれも、スペーサと、そのスペーサの両側に角軸形状の凹凸嵌め合い構造で合体された一対のフランジで構成され、
前記走行伝動シャフトはその出力端部がスプライン形状をしており、その出力端部が対応する前記シャフト連結体の一方の前記フランジのスプライン形状の内周に差し込まれて固定されるとともに、そのシャフト連結体の他方のフランジのスプライン形状の内周に、対応する前記アクスルケースの前記ドライブシャフトのスプライン形状の端部が差し込まれて固定されている、本発明に関連する第4の発明の作業車両である。
【0013】
本発明に関連する第6の発明は、
左右の前記走行装置に対応する左右のブレーキ機構が設けられ、
前記左右のブレーキ機構は、左右のブレーキペダルと、前記左右のブレーキペダルを互いに連結された状態と独立した状態に切り替えるブレーキ連結部材とを有し、
前記ブレーキ連結部材と、前記ブレーキ連結部材を駆動させる切替アクチュエータはともに、前記左右一方の同じブレーキペダル側に設けられ、
前記走行車体が圃場内にいるかどうかを判定する圃場判定装置が設けられ、
制御手段は、前記圃場判定装置が、前記走行車体が圃場外存在すると判定しているときに、前記左右のブレーキペダルが連結された状態でない場合は、その旨を報知装置で報知させるか、あるいは前記ミッションケースの内部のクラッチを入にしない、本発明に関連する第1から5のいずれかの発明の作業車両である。
【発明の効果】
【0014】
第1の本発明によって、ミッションケースの上部側から作動油を排出することにより、内部の潤滑油が不足しやすい上部側の伝動機構を確実に潤滑できるので、摩耗や焼き付きが軽減され、ミッションケースの耐久性の低下が抑えられる。さらに、走行伝動シャフトとドライブシャフトを、各々シャフト連結体に差し込んで装着することにより、位置合わせが容易になる。特に走行伝動シャフトとドライブシャフトを必要な側だけ着脱することができるので、ミッションケース側のメンテナンス時にアクスルケースを外す必要がなくなる。さらに、一対の取付フランジの間にスペーサを配置してシャフト連結体を構成したことにより、負荷に対する強度をより高めることができる。
第2の本発明によって、第1の本発明の効果に加えて、拡散部材の回転により、作動油を遠心力で広い範囲に拡散させることができるので、いっそう作動油の不足による摩耗や焼き付きが防止される。
本発明に関連する第1の発明によって、ミッションケースの上部側から作動油を排出することにより、内部の潤滑油が不足しやすい上部側の伝動機構を確実に潤滑できるので、摩耗や焼き付きが軽減され、ミッションケースの耐久性の低下が抑えられる。
【0015】
本発明に関連する第2の発明によって、拡散部材の回転により、作動油を遠心力で広い範囲に拡散させることができるので、いっそう作動油の不足による摩耗や焼き付きが防止される。
【0016】
また、拡散部材に形成した通油孔に作動油を入り込ませ、回転の遠心力により通油孔から放出させることにより、拡散部材の回転による作動油の拡散範囲をより広範囲に及ばせることが可能になる。
【0017】
本発明に関連する第3の発明によって、潤滑送油管の排出側にオリフィスを形成して作動油の移動経路を狭めることにより、圧力により作動油をより遠くまで飛びやすくできるので、拡散部材と共に作動油の拡散をより確実に行える。潤滑送油管の径を細くすることにより、ミッションケース内部に潤滑送油管を臨ませる孔部の径を小さく抑えることができるので、作動油の漏出や外部からの夾雑物の侵入が防止される。
【0018】
本発明に関連する第4の発明によって、走行伝動シャフトとドライブシャフトを、各々シャフト連結体に差し込んで装着することにより、位置合わせが容易になる。特に走行伝動シャフトとドライブシャフトを必要な側だけ着脱することができるので、ミッションケース側のメンテナンス時にアクスルケースを外す必要がなくなる。
【0019】
また、走行伝動シャフトとドライブシャフトをシャフト連結体に差し込む構成であるので、各シャフトの固定が強固になり、走行による負荷に対する耐久性が向上する。
【0020】
本発明に関連する第5の発明によって、一対の取付フランジの間にスペーサを配置してシャフト連結体を構成したことにより、負荷に対する強度をより高めることができる。
【0021】
また、走行伝動シャフトとドライブシャフトをスプライン結合させたことにより、回転に対する負荷に強い構成となる。
【0022】
本発明に関連する第6の発明によって、圃場外で左右のブレーキペダルを連結していないと報知装置が作動して警告する、あるいは伝動機構を入にさせないことにより、左右のブレーキペダルを独立して操作可能なまま路上走行を行ってしまい、停止時に片方だけを操作して旋回走行してしまうような危険なことを防止できる。
【0023】
また、ブレーキ連結部材を設けた側に切替アクチュエータを設けることにより、独立状態でブレーキペダルを操作したときに切替アクチュエータを破損させることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明における実施の形態にかかる作業車両の側面図
【
図2】同作業車両のミッションケースを前方からみた斜視図
【
図3】同作業車両のミッションケースを後方からみた斜視図
【
図4】同作業車両のミッションケースを後方下側からみた斜視図
【
図7】同ミッションケースの前側ケースを前方から見た斜視図
【
図8】同ミッションケースの前側ケースを内側から見た斜視図
【
図9】同ミッションケースの中央ケースを前方から見た斜視図
【
図10】同ミッションケースの中央ケースを後方から見た斜視図
【
図11】同ミッションケースの後側ケースを内側から見た斜視図
【
図12】同ミッションケースの後側ケースを後方から見た斜視図
【
図13】本発明における実施の形態にかかるクラッチのプレートの正面図
【
図16】同作業車両の走行伝動シャフトとアクスルケースのドライブシャフトの連結をしているシャフト連結体の組み立て図
【
図20】(A)同作業車両のブレーキ機構を示す斜視図、(B)そのブレーキ機構の中の箱部材の斜視図
【
図21】同作業車両の後輪のタイヤスクレーパーの使用状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の実施の態様では、作業車両として、農業用の薬液を散布する防除用の作業車両を例にして説明を行う。
【0026】
図1は、作業車両1の略左側面図である。本明細書においては、作業車両1の車両の進行方向となる側を前方、その反対側を後方、進行方向の左手側を左方、進行方向の右手側を右方とする。
【0027】
図1に示されるように、作業車両1は、防除用の薬液を散布する車両であり、前輪2と後輪3とを備え、走行車体1’の前側に設けられたボンネット4により、エンジン(図示せず)が覆われている。ボンネット4の後方には、操縦部5が設けられており、操縦部5には、ステアリングハンドル6と、座席8が設けられている。
【0028】
座席8の後方には、薬液を収容する薬液タンク9が取り外し可能に搭載されている。また、作業車両1は、車両の進行方向の正逆および速度を調節可能な機構である油圧式無段変速装置(HST)と、エンジンの始動を規制するエンジン始動規制装置とを備えている。
【0029】
また、作業車両1の車体前部の左右両側には、左右方向に突出した支持ブラケット12aが設けられており、左右の支持ブラケット12aには、それぞれ上下のリンク体により構成された昇降リンク12が回動可能に支持されている。昇降リンク12の上下のリンク体は、互いに連動するように構成されており、昇降リンク12のリンク体下段には、伸縮自在な昇降シリンダ13が、昇降リンク12のリンク体下段と支持ブラケット12aとを接続させるように設けられているので、昇降シリンダ13を伸縮させることで昇降リンク12を上下方向に搖動させることができる。
【0030】
また、昇降リンク12はボンネット4の前方の位置にまで延びており、昇降リンク12の前端部には、前部フレーム11が、左右の昇降リンク12を連結するように取り付けられている。したがって、左右の昇降シリンダ13を同時に伸縮させることによって、上下動する左右の昇降リンク12を介して、前部フレーム11を昇降させることができる。
【0031】
前部フレーム11の両端には、作業装置の一例としての、薬液を散布する左右一対の防除ブーム10が、上下方向を軸として回動可能に取り付けられており、左右の防除ブーム10それぞれについて、左右方向に個別に展開および折り畳みができるようにするブーム切換シリンダが設けられている。防除ブーム10には複数のノズル10aが、前部フレーム11には複数のノズル11aが、それぞれ取り付けられており、各ノズル10aおよび各ノズル11aは、薬液タンク9から薬液の供給を受け、薬液を噴霧状にして散布することができるように構成されている。なお、
図1では、右側の防除ブーム10は図から省略されている。
【0032】
防除ブーム10を折り畳み、車体に沿わせた状態を収納姿勢と呼び、防除ブーム10を展開して左右に延ばした状態を薬液散布姿勢と呼ぶ。収納姿勢のときは、防除ブーム10を作業車両1の左右両側に設けられたブーム受け15に載置することで、防除ブーム10が車体の後方斜め上に向かった状態を保持することができる。
【0033】
図2は、本実施の形態の作業車両に搭載されたミッションケース20の前方から後方を見た斜視図、
図3はこのミッションケース20を後方から前方を見た斜視図、
図4は
図3のミッションケース20を底面側から見た斜視図である。
【0034】
これら、
図2、
図3、
図4において、21は前側ケース、22は中央ケース、22aは中央ケース22の底面、23は後側ケースである。さらに、24はエンジンからの伝動力の入力軸であり、25,26は第1、第2の油圧ポンプである。また、27は後述するクラッチを入り切りするための軸、28は後部の昇降バルブ、29は前輪2の走行出力軸である。また、30は油圧式無段変速装置(HST)、31はクラッチ潤滑孔である。また、32はブームスプレイヤー等の作業装置用のPTO軸、33は、後述するライブPTO出力軸(増設伝動軸)、34は車速センサー、35はドレイン、36は副変速軸、37はブリーザ、38は後輪3を駆動させる駆動力を伝動する走行出力軸である。
【0035】
さらに、ミッションケース20の中は
図5、
図6に示すような構造を持っている。
図5は全体の略示断面図、
図6はクラッチ55を中心とする拡大図である。
【0036】
まず、前側ケース21を中心に説明する。
図7は前側ケース21を前側から見た斜視図であり、
図8は前側ケース21を後側から見た斜視図である。ここで、
図7、
図8においては軸受けのボールベアリングは省略されている。入力軸24は入力軸受け21aに保持されている。その入力軸24の後端にはギヤ40が連結されている。そのギヤ40にはクラッチ駆動軸42に固定されたギヤ41が噛合している。このクラッチ駆動軸42の前端は前側ケース21に形成されているクラッチ前側軸受け43に支持されている。ここに55はクラッチである。
【0037】
さらに、ギヤ41はその下方に位置するギヤ44に噛合しており、このギヤ44は第1油圧ポンプ25を駆動するギヤポンプ駆動軸45に固定され、このギヤポンプ駆動軸45の軸受けであるギヤポンプ軸受け46は前側ケース21に形成されている。
【0038】
他方、ギヤ40の上方には、軸48に取り付けられたギヤ47が噛合しており、この軸48の先端は前側ケース21に形成されている軸受け49によって支持されている。さらに、その軸48の後端は、中央ケース22側に取り付けられている軸受け板部50の一部に設けられた軸受け50aによって支持されている。その軸48の中央付近にはギヤ51が取り付けられ、そのギヤ51にギヤ52が噛合しており、そのギヤ52は上述したライブPTO出力軸33に固定されている。このライプPTO軸33の前端は前側ケース21に形成された軸受け54に支持されており、その後端は軸受け板部50に形成されている軸受け50bに軸支されるとともに、後方へ突出してライブPTO出力軸として利用可能となっている。
【0039】
ここで、入力軸24からエンジンの駆動力が入力されると、ギヤ40が回転する。その回転によって噛合しているギヤ47が回転し軸48が回転する。軸48の回転によってギヤ51が回転して、噛み合っているギヤ52が回転する。
【0040】
その結果、ギヤ52に固定されているライブPTO出力軸33が回転し、外部へエンジンからの駆動力が取り出される。この駆動力はクラッチ55より上流側(上手)から駆動力を取り出しているので、クラッチ55の入り切りに左右されず、エンジンが起動している間は駆動力を取り出すことが出来る。
【0041】
また、ギヤ40にはさらにギヤ41に噛み合っており、このギヤ41はクラッチ駆動軸42に固定されているので、入力軸24からエンジンの駆動力はこのクラッチ駆動軸42にも伝達されている。クラッチ駆動軸42はクラッチ55に連結されている。従って、クラッチ駆動軸42に伝えられた駆動力はクラッチ55の入り切りで左右される。
【0042】
さらに、ギヤ41にはギヤ44が噛み合っており、ギヤ44が固定されているギヤポンプ駆動軸45にも入力軸24からエンジンの駆動力が伝わる。このギヤポンプ駆動軸45の回転によって、第1油圧ポンプ25が駆動されることになる。第1油圧ポンプ25によって作業油圧系統へ油が圧送される。なお、前側ケース21に取り付けられる第2油圧ポンプ26も同様の機構で駆動される。
【0043】
次に、中央ケース22と後側ケース23について説明する。中央ケース22は
図9、
図10に示すように、周辺に前側ケース21と後側ケース23とボルト機構で取り外し可能になっている。
図5に示すように、Aは前側ケース21と中央ケース22との境界面を、Bは中央ケース22と後側ケース23との境界面を示す。また、中央ケース22は、作業車両1の走行車体1’のフレームに連結部53で固定されている(
図10参照)。なお、
図11は後側ケース23を内側からみた斜視図、
図12は後方外側から見た斜視図である。
【0044】
その中央ケース22の内部には、前側の位置に上述した軸受け板部50が、また中央位置にクラッチ軸受け板部57がそれぞれ形成されている。
【0045】
前側の軸受け板部50とクラッチ軸受け板部57の間には、クラッチ55が配置され、クラッチ駆動軸42はクラッチ55を介してクラッチ軸受け板部57の軸受け部60に軸支されている。さらに、このクラッチ駆動軸42の後方部はその軸受け部60の孔61(
図10参照)を貫通して、後側ケース23のクラッチ駆動軸軸受け62で軸支されている。
【0046】
なお、HST駆動軸については後側ケース23に支持されているので、後側ケース23で片持ちされるか、あるいはHSTそのものに固定される。
【0047】
また、ドライブシャフトは前後に長いので、前側ケース21、中央ケース22、及び後側ケース23で支持される。
【0048】
さらに、
図5に示すように、クラッチ駆動軸42には変速ギヤ70が固定されており、その変速ギヤ70は作業装置用PTO軸32のシャフトにフリーに回転可能に取り付けられたギヤ71(遊嵌ギヤ)に噛み合っている。
【0049】
このギヤ71の回転は後述するような機構によって、クラッチ駆動軸42の回転がそのPTO軸32に伝達される。従って、この作業装置用PTO軸32の回転は、クラッチ55の入り切りで左右される。なお、32aは後側ケース23に設けられたPTO軸受けである。
【0050】
他方、クラッチ駆動軸42にはさらにギヤ63が取り付けられており、そのギヤ63はHST入力用ギヤ64に噛み合っている。また、HST出力用ギヤ65は3つのギヤ機構66,67,68を介して、前輪の走行出力軸29と、後輪の走行出力軸38に連結している。
図7において29aは前輪の走行出力軸29の軸受けである。従って、HST30で変速された出力が走行出力軸29、38へ伝達されていく。ここに、30aはHST入力側部であり、30bはHST出力側部である。また、72,73はそれぞれHST入力軸受け、HST出力軸受けである。
【0051】
このように、ミッションケース20を前、中央、後の部分に分割し、中央ケース22を作業車両1の走行車体1’のフレームに固定した(連結部53)ことにより、ミッションケース20全体を機体から降ろすことなくケース内のメンテナンス作業ができる構成となる。
【0052】
次に、本実施の形態におけるクラッチ55はいわゆる乾式ではなく湿式構造となっている。すなわち、
図5、
図6に示すように、クラッチ駆動軸42は前側ケース21と後側ケース23で両方の端部が軸支(43、62)されており、軸と支持部に油路が形成されている。潤滑油はクラッチ潤滑孔31から供給される。その潤滑油は防除機の油圧の戻り(作業油圧系統)をクラッチ駆動軸42の油路に戻す。
【0053】
クラッチ55は、クラッチケース55aに複数のクラッチプレート55bを内装すると共に、クラッチケース55aをクラッチ駆動軸42に設けて構成している。さらに、クラッチ駆動軸42は作動油の流路を有し、クラッチプレート55bの内周側に作動油を供給できる。さらに、クラッチケース55aには、クラッチケース55a内に入り込んだ作動油を油圧回路に戻す戻し孔部が形成されている。なお、
図13はクラッチプレート55bであって、矢印Cに示すように、内周から外周に向けて連通穴92を形成している。
【0054】
クラッチ55はこのような構造であるので、クラッチ駆動軸の流路からクラッチケース55a内に作動油を供給することにより、クラッチプレート55bが焼き付いて動かなくなることを防止できるので、走行伝動及び作業伝動を確実に入切できる。
【0055】
さらにまた、クラッチケース55aに戻し孔部を形成したことにより、クラッチケース55a内に入り込ませた作動油をミッションケース20内に戻すことができるので、内圧の上昇や、作動油の不足が防止される。
【0056】
また、連通穴92を形成したことにより、クラッチプレート55bとクラッチケース55aの間に入り込んだ作動油をクラッチケース55a外に移動させることができるので、流路に戻らなくなった作動油が古くなることで問題を発生させることが防止される。
【0057】
言い換えると、連通孔92をクラッチプレート55bに外周縁部に向かって一か所、または複数個所に貫通させて形成しているので、ミッションケース20内に貯まっている作動油に浸かっている場合は、その部分から連通穴92の内部に作動油が入り込んでクラッチケース55aの内部に作動油を浸透させることが出来る(特に停止時にその現象が起こる)。また、クラッチ駆動軸42の回転による遠心力により、連通孔92に入り込んでいる作動油をクラッチケース55aの外部に飛散させる場合は、ミッションケース20内に作動油を送り込むことになる。言い換えれば、作動油の内部への進入も外部への放出のいずれも可能な構成としている。
【0058】
また、
図14はブームスプレイヤー等の作業装置用のPTO軸32を中心とする
図5の一部拡大図である。
【0059】
ここで、上述したように、クラッチ駆動軸42には変速ギヤ70が固定されており、その変速ギヤ70は作業装置用PTO軸32のシャフトにフリーに回転可能に取り付けられたギヤ71(遊嵌ギヤ)に噛み合っている。このギヤ71はカウンター軸76に固定された第1カウンターギヤ75に噛合されている。このカウンター軸76にはもう一つの第2カウンターギヤ77が固定されており、この第2カウンターギヤ77は、PTO軸32の軸に固定されたギヤ78に噛合している。なお、71aは溝付き座金である。
【0060】
従って、クラッチ駆動軸42の回転によってギヤ70が回転し、その回転は遊嵌ギヤのギヤ71に伝わり、ギヤ71の回転は第1カウンターギヤ75に伝わり、その回転はカウンター軸76に伝わり、その回転は第2カウンターギヤ77へ伝わり、その回転はギヤ78に伝わり、その結果、PTO軸32に伝達され回転することになる。
【0061】
他方、90は、作業油圧系統からミッションケース20内に作動油を戻し排出する潤滑送油管である。79は、後側ケース23に設けられた潤滑送油管90の排出口79である。その潤滑送油管90の排出口79は、ミッションケース20の内部の上部側に配置される、作業駆動力の伝動機構よりも上側に配置されている、ここに伝動機構とは作業機構に駆動力を伝動するための機構であって、例えば、PTO軸32であり、本発明の作業伝動軸の一例である。
【0062】
このような構造であることによって、ミッションケース20の上部側から作動油を排出することにより、内部の潤滑油が不足しやすい上部側の伝動機構を確実に潤滑できるので、摩耗や焼き付きが軽減され、ミッションケース20の耐久性の低下が抑えられる。
【0063】
なお、この場合、ミッションケース20自体がオイルタンクを兼ねていることになる。上述した第1油圧ポンプ25がこのオイルタンクの油を作動油として再び駆動シリンダーへ圧送していく。
【0064】
さらに、このPTO軸(作業伝動軸)32には、排出口79から排出される作動油を受けつつ周囲に拡散させる拡散部材が回転可能に装着されている。本発明の拡散部材の一例が上述したフリー回転するギヤ71である。
【0065】
このようなPTO軸32に設けた拡散部材のギヤ71の回転により、作動油を遠心力で広い範囲に拡散させることができるので、いっそう作動油の不足による摩耗や焼き付きが防止される。
【0066】
さらに、この拡散部材であるギヤ71には、作動油が内部に進入可能な通油孔91を形成している。これにより、回転方向以外にも広範囲に作動油を拡散させやすくなる。通油孔91は複数個設けるのが望ましい。例えば、軸周りに90度づつ4個などである。ギヤ71の内側にも潤滑油が流れ込む効果もある。
【0067】
拡散部材であるギヤ71は一定方向に回転しているので、これだけでは回転する方向にやや偏って作動油が撒かれがちになるが、通油孔911をギヤ71に貫通させて形成しておくことによって、排出口79から内部へ入り込んだ作動油がギヤ71の羽部分(ギヤ歯部分に相当)に弾かれる位置以外において遠心力で放出される構成となり、回転方向の下手側にも作動油が拡散されやすくなる。
【0068】
なお、潤滑送油管90は、ミッションケース20の前側または後側に装着されており、潤滑送油管90の排出口79にはオリフィスが形成され、オリフィスはミッションケース20の内部に臨んでいる。これによって、より遠くへ作動油を飛散させることが出来る。
【0069】
以上説明したように、防除機からミッションケース20内に戻る油圧の戻り(作業油圧系統)には、クラッチ潤滑孔31からクラッチ55を介して戻る系統と、ミッションケース20の後側ケース23の潤滑送油管90の排出口79から戻る系統があるが、その他に、昇降バルブ、及びロワーリンクシリンダから排出される作動油が、ミッションケースケース20の側面に設けるメインバルブからミッションケース20内に戻る系統もある。
【0070】
図15はキャビン全体の側面図であって、ミッションケース20の後側ケース23の背面は、座席シート100の真下に位置している。それによって、潤滑送油管90等を後側ケース23に配策する部分が座席シート100の股下に位置するので、これらの配策部材を着脱する作業スペースが確保されているので、ミッションケース20を降ろす際のメンテナンスを能率よく行える。
【0071】
図18は走行車体1‘の側面図を示し、そこに示すように、ミッションケース20の下部側には、走行装置に伝動する上述した走行出力軸29,38であるところの走行伝動シャフト29,38が配置され(
図5参照)、走行装置は、走行車輪2、3と、走行車輪2,3に伝動するアクスルケース101で構成され、アクスルケース101には、前記ミッションケース20に向かうドライブシャフト102が取り付けられ、ミッションケース20の内部の走行伝動シャフト29,38と、アクスルケース101,101のドライブシャフト102,102とは、前後でそれぞれシャフト連結体103,103を介して連結されている、
図16はシャフト連結体103の組み立て図、
図17はその分解図であって、
図16、
図17に示すように、このシャフト連結体103はいずれも、スペーサ103aと、そのスペーサ103aの両側に角軸形状の凹凸嵌め合い構造103cで合体された一対のフランジ103bで構成されている。フランジ103b同士をボルト締めすることでスペーサ103aを挟んで固定している。
【0072】
スペーサ103aは内径が角軸形状のパイプであるので軽量化が図れる。また角軸形状であるので強度がアップされる。
【0073】
走行伝動シャフト29,38はその出力端部がスプライン形状をしており、その出力端部が対応する前記シャフト連結体103の一方の前記フランジ103bのスプライン形状の内周に差し込まれて固定される。他方、そのシャフト連結体103の他方のフランジ103bのスプライン形状の内周に、対応する前記アクスルケース101の前記ドライブシャフト102のスプライン形状の端部が差し込まれて固定されている。このようにスプライン結合しているのでスライドさせることで後組可能である。
【0074】
なお、スペーサ103aの長さはシャフト同士の隙間と同じ長さである。これによって後組が可能となる。組み方は先にシャフトにフランジを十分奥まで差し込み、その後シャフト間にスペーサ103aを入れる。そしてスペーサ103aに対してフランジを角軸を合わせながら突き合わせ、ボルトで固定する。
【0075】
図19は操縦部5を示し、ステアリングハンドル6には後述するスイッチ105が設けられている。また、
図20(A)は左右の上記走行装置(車輪2,3)に対応する左右のブレーキ機構106を示す斜視図である。
【0076】
この左右のブレーキ機構は、左右のブレーキペダル107,108と、左右のブレーキペダル107,108を互いに連結された状態と独立した状態に切り替えるブレーキ連結部材109とを有する。このブレーキ連結部材109と、ブレーキ連結部材109を駆動させる切替アクチュエータ110はともに、左右一方の同じブレーキペダル108側に設けられている。それによって、独立状態でブレーキペダルを操作したときに、反対側のブレーキペダル107の構成体との接触により切替アクチュエータ110を破損させることが防止できる。
図20の実施例では右側のブレーキペダル108側であり、この切替アクチュエータ110は電磁ソレノイドである。
【0077】
より具体的にはブレーキ連結部材109はTの字状のプレート(109aはその上部、109bはその下部)であり、その中央部において、右のブレーキペダル108に固定された枢軸109cに回動可能に連結されている。さらに、そのプレートの下部109bは右側のブレーキペダル108のパイプフレームに懸架されているスプリング109dによって常時右側へ引っ張られている。その結果、このブレーキ連結部材109の上部109aは常に左側へ回動するように付勢されている。また、そのプレートの上部109aは左右のブレーキペダル107,108の背面に位置している。
【0078】
他方、左側のブレーキペダル107の背面には、
図20(B)に示すような箱部材112が固定されており、回動してくるブレーキ連結部材109の上部109aの左端部が入り込むようになっている。従って、その上部109aの左端部が箱部材112の中に入り込んでいる状態では、左右のブレーキペダル107,108は独立して動くことはできなくなって連結状態となり、強制的に連動することになる。111はフォトセンサなどの連結状態検知センサであって、上部109aの左端部が箱部材112の中にあるかどうかを検出することが出来るようになっている。
【0079】
さらに、電磁ソレノイドの切替アクチュエータ110は、そのロッド110aを突出させることによって上記Tの字状のプレートの下部109bをスプリング109dの力に抗して図面上の時計方向に回動させることが出来、上部109aを箱部材112の中から外すことが出来る。
【0080】
なお、この電磁ソレノイドの切替アクチュエータ110は、操縦部5のスイッチ105を押し続けないと駆動出来ないタイプであるので、スイッチ105を押しながら左右ブレーキペダル107、108を踏まないと片ブレーキにはならないようになっており、より安全である。そのスイッチ105はステアリングハンドル6のスポーク(親指が届く位置)に取り付けることが望ましい。それによってハンドル6を握ったまま操作できるから便利である。
【0081】
一方、走行車体1‘が圃場内にいるかどうかを判定する圃場判定装置200が設けられており、制御手段300は、圃場判定装置200が、走行車体1’が圃場外存在すると判定しているときに、左右のブレーキペダル107,108が連結された状態でない場合(連結状態検知センサ111によって連結状態を検知する)は、その旨を報知装置で報知させるか、あるいは前記ミッションケース20の内部のクラッチ55を入にしない。
【0082】
圃場判定装置200は例えばGNSS情報を利用して判定する。また、連結状態検知センサ111の結果を操縦部5に表示することも望ましい。
【0083】
なお、
図20(A)において、113はリミットスイッチであって、このリミットスイッチ113はブレーキ連結部材109が固定されていない方の左のブレーキペダル107のパイプの上方に設置されている。このリミットスイッチ113はペダルが上昇しているとき(踏み込んでおらずブレーキがかかっていない状態)に押されて上昇していることを検出できるようになっている。そして、リミットスイッチ113がオフの状態、つまり、ブレーキペダル107が下がっている状態では、左のブレーキを片ブレーキしているか、左右のブレーキを連結して踏み込んでいるかであるので、いずれの場合も電磁ソレノイドの切替アクチュエータ110を駆動させる必要はなく、逆に電磁ソレノイドが作動して連結が解除されると危険であるので、駆動を牽制する制御構成としている。
【0084】
以上のように左右のブレーキ機構106が構成されているので、圃場内においては、左右のブレーキを独立して操作可能として旋回をスムーズにすることが出来、また、圃場外においては、左右のブレーキが確実に連結されているようにしているで、路上走行において片ブレーキをうっかり掛けてしまって危険な状態に落ちることを防ぐことが出来る。
【0085】
図21は、後輪3のタイヤスクレーパー402の使用状態を示す側面図であり、
図22はその斜視図である。防除用の作業車両1において、防除をする際の後部のロワーリンク401にタイヤスクレーパー402を装着して、後輪3の泥を落とす構造である。
【0086】
ここに、防除のためのポンプは座席8の内側に配置し、常時回動軸でポンプを駆動し電磁クラッチでポンプの入り切りを行う。これによって、ロワーリンク401を昇降させても、ポンプの駆動に影響は無い。このロワーリンク401にヒッチ403を介してスクレーパー402を取り付ける。基本的には、作物に当たらないように最上げ状態とし、圃場から出る手前などでスクレーパー402を降ろし、後輪3の泥落としをおこなう。また、スクレーパー402の最下げ位置はロックピンで設定できる。
【0087】
左右のスクレーパー402,402は一本のフレーム402dで繋ぎ、そのフレーム402dをロワーリンク401のヒッチ403につなぐ。これによって左右のスクレーパー402,402を同時に駆動出来る。
【0088】
スクレーパー402は3本の爪で構成され、それぞれタイヤのリム405の形状に合わせた形状を用意する。左右の2つの爪402b、402bはタイヤのリム405に沿うようになっており、中央の一つの爪402cはリム405の間の隙間に当接するように配置している。これら3本の爪402b、402cの根本部402b1、402c1はフレーム402dに回動可能に連結されており、タイヤに当たった状態で圧縮スプリングで逃げるようになっている。
【0089】
さらに、スクレーパー402にはタイヤ側面3aの泥を落とすためのサイドスクレーパー402aが装着されている。そのサイドスクレーパー402aの根本部402a1は横方向に回動可能にフレーム402dに連結されており、タイヤ3が旋回するときに、当接しても逃げるように圧縮スプリングが配設されている。
【0090】
このサイドスクレーパー402aの断面形状はL字状に曲がっており、タイヤの側面3aの泥を削ぎ落す方向に配置され(頂点を上側とし)、泥を下方且つ後方へ飛ばして、再度泥が付着することを防止できるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、潤滑油不足に対応できる作業車両を提供することを目的とし、薬剤散布機などに最適である。
【符号の説明】
【0092】
1 作業車両
1’ 走行車体
2、3 前輪、後輪
20 ミッションケース
21 前側ケース
22 中央ケース
23 後側ケース
24 入力軸
29 走行伝動シャフト
30 HST
38 走行伝動シャフト
33、85ライブPTO出力軸(増設伝動軸)
42 クラッチ駆動軸
47 ギヤ(カウンターギヤ、中継伝動部材)
53 連結部
55 クラッチ
55a クラッチケース
55b クラッチプレート
71 ギヤ(拡散部材)
79 排出口
90 潤滑送油管
91 通油孔
101 アクスルケース
102 ドライブシャフト
103 シャフト連結体
106 ブレーキ機構
107、108左右のブレーキペダル
109 ブレーキ連結部材
110 切替アクチュエータ(電磁ソレノイド)
112 箱部材
200 圃場判定装置
300 制御手段