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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】分類プログラム、分類装置及び分類方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/50 20180101AFI20240118BHJP
   G16H 10/00 20180101ALI20240118BHJP
   G06V 30/19 20220101ALI20240118BHJP
   G06V 30/194 20220101ALI20240118BHJP
【FI】
G16H50/50
G16H10/00
G06V30/19 Z
G06V30/194
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020028085
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021131805
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】506301140
【氏名又は名称】公立大学法人会津大学
(73)【特許権者】
【識別番号】509013703
【氏名又は名称】公立大学法人福島県立医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】慎 重弼
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊輔
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0217679(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0053269(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107451559(CN,A)
【文献】特開2010-131280(JP,A)
【文献】国際公開第2017/065241(WO,A1)
【文献】特開2018-114232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
G06V 30/19
G06V 30/194
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1グループ及び第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者による手書き文字についての複数の特徴のそれぞれを示す第1特徴値を取得し、
前記複数の対象者ごとに、各対象者に対応する前記第1特徴値と、基準文字についての前記複数の特徴のそれぞれを示す第2特徴値とのDP(Dynamic Programming)マッチングを行い、
前記DPマッチングの結果に基づいて、前記複数の特徴のうち、前記第1グループに含まれる複数の対象者と前記第2グループに含まれる複数の対象者との間において前記第1特徴値の傾向が異なる1以上の特徴を特定し、
前記第1グループ及び前記第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者についての前記1以上の特徴のそれぞれを示す前記第1特徴値の少なくとも一部と、各対象者が前記第1グループ及び第2グループのうちのどちらに含まれるかを示す情報とを含む複数の学習データを生成し、
前記複数の学習データを用いることによって学習モデルを生成する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする分類プログラム。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数の特徴は、前記手書き文字の書字時における所定時間ごとのペンの先端部の筆圧及び座標と、前記ペンの後端部の高度角及び方位角とのうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする分類プログラム。
【請求項3】
請求項1において、
前記1以上の特徴を特定する処理では、
前記DPマッチングの結果を示す値についてのt検定を行い、
前記複数の特徴のうち、前記t検定によって算出されたp値が所定以下である特徴を特定する、
ことを特徴とする分類プログラム。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1グループに含まれる複数の対象者は、所定の病気の罹患者でない対象者であり、
前記第2グループに含まれる複数の対象者は、前記所定の病気の罹患者である対象者である、
ことを特徴とする分類プログラム。
【請求項5】
請求項4において、さらに、
前記複数の特徴ごとに、各特徴を示す前記第1特徴値のうち、前記第1グループに含まれる複数の対象者に対応する特徴値の平均値を取得し、
前記平均値のそれぞれに対応する文字を前記基準文字として特定する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする分類プログラム。
【請求項6】
請求項2において、さらに、
前記第1グループ及び前記第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、前記第1特徴値を用いることによって、前記複数の特徴と異なる複数の他の特徴のそれぞれを示す第3特徴値を算出し、
前記第3特徴値を用いることにより、前記複数の他の特徴のうち、前記第1グループに含まれる複数の対象者と前記第2グループに含まれる複数の対象者との間において前記第3特徴値の傾向が異なる1以上の他の特徴を特定する、
処理をコンピュータに実行させ、
前記複数の学習データを生成する処理では、
前記第1グループ及び前記第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者についての前記1以上の特徴のそれぞれを示す前記第1特徴値の少なくとも一部と、各対象者についての前記1以上の特徴のそれぞれを示す前記第3特徴値の少なくとも一部と、各対象者が前記第1グループ及び第2グループのうちのどちらに含まれるかを示す情報とを含む複数の学習データを生成する、
ことを特徴とする分類プログラム。
【請求項7】
請求項6において、
前記複数の他の特徴は、前記手書き文字の書字時における前記ペンの後端部の高度角の前記所定時間における第1変化率と、前記第1変化率の前記所定時間における第2変化率と、前記ペンの後端部の方位角の前記所定時間における第3変化率と、前記第3変化率の前記所定時間における第4変化率とのうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする分類プログラム。
【請求項8】
請求項6において、
前記複数の他の特徴は、前記手書き文字の書字時における前記所定時間ごとの前記座標のうち、第1座標と第2座標との間における距離と前記第2座標と第3座標との間における距離とが所定の長さである3点の座標における、前記第1座標と前記第2座標とを通る直線と前記第2座標と前記第3座標とを通る直線とのなす角を含む、
ことを特徴とする分類プログラム。
【請求項9】
請求項1において、さらに、
新たな対象者についての前記複数の特徴のそれぞれ示す新たな特徴値を受け付け、
前記学習モデルに対する前記新たな特徴値の入力に応じて出力される情報として、前記新たな対象者が前記第1グループ及び第2グループのうちのどちらに含まれるかを示す情報を出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする分類プログラム。
【請求項10】
第1グループ及び第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者による手書き文字についての複数の特徴のそれぞれを示す複数の第1特徴値を取得し、
前記第1グループ及び第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、前記第1特徴値を用いることによって、前記複数の特徴と異なる複数の他の特徴のそれぞれを示す第3特徴値を算出し、
前記第3特徴値を用いることにより、前記複数の他の特徴のうち、前記第1グループに含まれる複数の対象者と前記第2グループに含まれる複数の対象者との間において前記第3特徴値の傾向が異なる1以上の他の特徴を特定し、
前記第1グループ及び前記第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者についての前記1以上の他の特徴のそれぞれを示す前記第1特徴値の少なくとも一部と、各対象者が前記第1グループ及び第2グループのうちのどちらに含まれるかを示す情報とを含む複数の学習データを生成し、
前記複数の学習データを用いることによって学習モデルを生成する、
処理をコンピュータに実行させ、
前記複数の他の特徴は、前記手書き文字の書字時における所定時間ごとのペンの先端部の筆圧及び座標と、前記ペンの後端部の高度角及び方位角と、前記所定時間ごとの前記座標のうち、第1座標と第2座標との間における距離と前記第2座標と第3座標との間における距離とが所定の長さである3点の座標における、前記第1座標と前記第2座標とを通る直線と前記第2座標と前記第3座標とを通る直線とのなす角とのうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする分類プログラム。
【請求項11】
第1グループ及び第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者による手書き文字についての複数の特徴のそれぞれを示す第1特徴値を取得する特徴値取得部と、
前記複数の対象者ごとに、各対象者に対応する前記第1特徴値と、基準文字についての前記複数の特徴のそれぞれを示す第2特徴値とのDPマッチングを行うマッチング部と、
前記DPマッチングの結果に基づいて、前記複数の特徴のうち、前記第1グループに含まれる複数の対象者と前記第2グループに含まれる複数の対象者との間において前記第1特徴値の傾向が異なる1以上の特徴を特定する特徴特定部と、
前記第1グループ及び前記第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者についての前記1以上の特徴のそれぞれを示す前記第1特徴値の少なくとも一部と、各対象者が前記第1グループ及び第2グループのうちのどちらに含まれるかを示す情報とを含む複数の学習データを生成するデータ生成部と、
前記複数の学習データを用いることによって学習モデルを生成するモデル生成部と、を有する、
ことを特徴とする分類装置。
【請求項12】
第1グループ及び第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者による手書き文字についての複数の特徴のそれぞれを示す複数の第1特徴値を取得する特徴値取得部と、
前記第1グループ及び第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、前記第1特徴値を用いることによって、前記複数の特徴と異なる複数の他の特徴のそれぞれを示す第3特徴値を算出する特徴値算出部と、
前記第3特徴値を用いることにより、前記複数の他の特徴のうち、前記第1グループに含まれる複数の対象者と前記第2グループに含まれる複数の対象者との間において前記第3特徴値の傾向が異なる1以上の他の特徴を特定する特徴特定部と、
前記第1グループ及び前記第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者についての前記1以上の他の特徴のそれぞれを示す前記第1特徴値の少なくとも一部と、各対象者が前記第1グループ及び第2グループのうちのどちらに含まれるかを示す情報とを含む複数の学習データを生成するデータ生成部と、
前記複数の学習データを用いることによって学習モデルを生成するモデル生成部と、を有し、
前記複数の他の特徴は、前記手書き文字の書字時における所定時間ごとのペンの先端部の筆圧及び座標と、前記ペンの後端部の高度角及び方位角と、前記所定時間ごとの前記座標のうち、第1座標と第2座標との間における距離と前記第2座標と第3座標との間における距離とが所定の長さである3点の座標における、前記第1座標と前記第2座標とを通る直線と前記第2座標と前記第3座標とを通る直線とのなす角とのうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする分類装置。
【請求項13】
第1グループ及び第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者による手書き文字についての複数の特徴のそれぞれを示す第1特徴値を取得し、
前記複数の対象者ごとに、各対象者に対応する前記第1特徴値と、基準文字についての前記複数の特徴のそれぞれを示す第2特徴値とのDPマッチングを行い、
前記DPマッチングの結果に基づいて、前記複数の特徴のうち、前記第1グループに含まれる複数の対象者と前記第2グループに含まれる複数の対象者との間において前記第1特徴値の傾向が異なる1以上の特徴を特定し、
前記第1グループ及び前記第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者についての前記1以上の特徴のそれぞれを示す前記第1特徴値の少なくとも一部と、各対象者が前記第1グループ及び第2グループのうちのどちらに含まれるかを示す情報とを含む複数の学習データを生成し、
前記複数の学習データを用いることによって学習モデルを生成する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする分類方法。
【請求項14】
第1グループ及び第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者による手書き文字についての複数の特徴のそれぞれを示す複数の第1特徴値を取得し、
前記第1グループ及び第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、前記第1特徴値を用いることによって、前記複数の特徴と異なる複数の他の特徴のそれぞれを示す第3特徴値を算出し、
前記第3特徴値を用いることにより、前記複数の他の特徴のうち、前記第1グループに含まれる複数の対象者と前記第2グループに含まれる複数の対象者との間において前記第3特徴値の傾向が異なる1以上の他の特徴を特定し、
前記第1グループ及び前記第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者についての前記1以上の他の特徴のそれぞれを示す前記第1特徴値の少なくとも一部と、各対象者が前記第1グループ及び第2グループのうちのどちらに含まれるかを示す情報とを含む複数の学習データを生成し、
前記複数の学習データを用いることによって学習モデルを生成する、
処理をコンピュータに実行させ、
前記複数の他の特徴は、前記手書き文字の書字時における所定時間ごとのペンの先端部の筆圧及び座標と、前記ペンの後端部の高度角及び方位角と、前記所定時間ごとの前記座標のうち、第1座標と第2座標との間における距離と前記第2座標と第3座標との間における距離とが所定の長さである3点の座標における、前記第1座標と前記第2座標とを通る直線と前記第2座標と前記第3座標とを通る直線とのなす角とのうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする分類方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分類プログラム、分類装置及び分類方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病は、特徴的な症状を呈する神経難病であり、パーキンソン病の運動症状としては、例えば、振戦(ふるえ)、動作緩慢及び小字症等がある。そして、パーキンソン病は、一般的に、他の病気の区別することが困難な病気であり、医師による診断に時間や費用を要することが知られている。
【0003】
そのため、近年では、ペンタブレット等によって取得された手書き文字の解析結果からパーキンソン病の診断を行うための研究が行われている。具体的に、このような手書き文字を用いた研究では、ペンタブレット等によって取得された筆圧や書字速度等の情報に基づいて、振戦等の有無についての解析が行われる(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-131280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パーキンソン病には、例えば、上記のような運動症状の他にも多様な運動症状が存在する。そのため、上記のような筆圧や書字速度等を用いた解析では、パーキンソン病の進行具体等についての高精度な診断を行うことができない場合がある。したがって、医療現場では、パーキンソン病の診断をより高精度に行うことが可能な手法が求められている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、パーキンソン病の診断をより高精度に行うことを可能とする分類プログラム、分類装置及び分類方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明における分類プログラムは、第1グループ及び第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者による手書き文字についての複数の特徴のそれぞれを示す第1特徴値を取得し、前記複数の対象者ごとに、各対象者に対応する前記第1特徴値と、基準文字についての前記複数の特徴のそれぞれを示す第2特徴値とのDP(Dynamic Programming)マッチングを行い、前記DPマッチングの結果に基づいて、前記複数の特徴のうち、前記第1グループに含まれる複数の対象者と前記第2グループに含まれる複数の対象者との間において前記第1特徴値の傾向が異なる1以上の特徴を特定し、前記第1グループ及び前記第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者についての前記1以上の特徴のそれぞれを示す前記第1特徴値の少なくとも一部と、各対象者が前記第1グループ及び第2グループのうちのどちらに含まれるかを示す情報とを含む複数の学習データを生成し、前記複数の学習データを用いることによって学習モデルを生成する、処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明における分類プログラムは、一つの態様では、前記複数の特徴が、前記手書き文字の書字時における前記所定時間ごとのペンの先端部の筆圧及び座標と、前記ペンの後端部の高度角及び方位角とのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するための本発明における分類プログラムは、一つの態様では、前記DPマッチングの結果を示す値についてのt検定を行い、前記複数の特徴のうち、前記t検定によって算出されたp値が所定以下である特徴を特定する、ことを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明における分類プログラムは、一つの態様では、前記第1グループに含まれる複数の対象者が、所定の病気の罹患者でない対象者であり、前記第2グループに含まれる複数の対象者が、前記所定の病気の罹患者である対象者である、ことを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するための本発明における分類プログラムは、一つの態様では、前記複数の特徴ごとに、各特徴を示す前記第1特徴値のうち、前記第1グループに含まれる複数の対象者に対応する特徴値の平均値を取得し、前記平均値のそれぞれに対応する文字を前記基準文字として特定する、処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するための本発明における分類プログラムは、一つの態様では、前記第1グループ及び前記第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、前記第1特徴値を用いることによって、前記複数の特徴と異なる複数の他の特徴のそれぞれを示す第3特徴値を算出し、前記複数の第3特徴値を用いることにより、前記複数の他の特徴のうち、前記第1グループに含まれる複数の対象者と前記第2グループに含まれる複数の対象者との間において前記第3特徴値の傾向が異なる1以上の他の特徴を特定し、前記第1グループ及び前記第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者についての前記1以上の特徴のそれぞれを示す前記第1特徴値の少なくとも一部と、各対象者についての前記1以上の特徴のそれぞれを示す前記第3特徴値の少なくとも一部と、各対象者が前記第1グループ及び第2グループのうちのどちらに含まれるかを示す情報とを含む複数の学習データを生成する、ことを特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するための本発明における分類プログラムは、一つの態様では、前記複数の他の特徴が、前記手書き文字の書字時における前記ペンの後端部の高度角の前記所定時間における第1変化率と、前記第1変化率の前記所定時間における第2変化率と、前記ペンの後端部の方位角の前記所定時間における第3変化率と、前記第3変化率の前記所定時間における第4変化率とのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする。
【0014】
また、上記目的を達成するための本発明における分類プログラムは、一つの態様では、前記複数の他の特徴が、前記手書き文字の書字時における前記所定時間ごとの前記座標のうち、第1座標と第2座標との間における距離と前記第2座標と第3座標との間における距離とが所定の長さである3点の座標における、前記第1座標と前記第2座標とを通る直線と前記第2座標と前記第3座標とを通る直線とのなす角を含む、ことを特徴とする。
【0015】
また、上記目的を達成するための本発明における分類プログラムは、一つの態様では、新たな対象者についての前記複数の特徴のそれぞれ示す新たな特徴値を受け付け、前記学習モデルに対する前記新たな特徴値の入力に応じて出力される情報として、前記新たな対象者が前記第1グループ及び第2グループのうちのどちらに含まれるかを示す情報を出力する、処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0016】
また、上記目的を達成するための本発明における分類プログラムは、第1グループ及び第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者による手書き文字についての複数の特徴のそれぞれを示す複数の第1特徴値を取得し、前記第1グループ及び第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、前記第1特徴値を用いることによって、前記複数の特徴と異なる複数の他の特徴のそれぞれを示す第3特徴値を算出し、前記複数の第3特徴値を用いることにより、前記複数の他の特徴のうち、前記第1グループに含まれる複数の対象者と前記第2グループに含まれる複数の対象者との間において前記第3特徴値の傾向が異なる1以上の他の特徴を特定し、前記第1グループ及び前記第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者についての前記1以上の特徴のそれぞれを示す前記第1特徴値の少なくとも一部と、各対象者が前記第1グループ及び第2グループのうちのどちらに含まれるかを示す情報とを含む複数の学習データを生成し、前記複数の学習データを用いることによって学習モデルを生成し、前記複数の他の特徴が、前記手書き文字の書字時における所定時間ごとのペンの先端部の筆圧及び座標と、前記ペンの後端部の高度角及び方位角と、前記所定時間ごとの前記座標のうち、第1座標と第2座標との間における距離と前記第2座標と第3座標との間における距離とが所定の長さである3点の座標における、前記第1座標と前記第2座標とを通る直線と前記第2座標と前記第3座標とを通る直線とのなす角とのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする。
【0017】
また、上記目的を達成するための本発明における分類装置は、第1グループ及び第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者による手書き文字についての複数の特徴のそれぞれを示す第1特徴値を取得する特徴値取得部と、前記複数の対象者ごとに、各対象者に対応する前記第1特徴値と、基準文字についての前記複数の特徴のそれぞれを示す第2特徴値とのDPマッチングを行うマッチング部と、前記DPマッチングの結果に基づいて、前記複数の特徴のうち、前記第1グループに含まれる複数の対象者と前記第2グループに含まれる複数の対象者との間において前記第1特徴値の傾向が異なる1以上の特徴を特定する特徴特定部と、前記第1グループ及び前記第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者についての前記1以上の特徴のそれぞれを示す前記第1特徴値の少なくとも一部と、各対象者が前記第1グループ及び第2グループのうちのどちらに含まれるかを示す情報とを含む複数の学習データを生成するデータ生成部と、前記複数の学習データを用いることによって学習モデルを生成するモデル生成部と、を有する、ことを特徴とする。
【0018】
また、上記目的を達成するための本発明における分類装置は、第1グループ及び第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者による手書き文字についての複数の特徴のそれぞれを示す複数の第1特徴値を取得する特徴値取得部と、前記第1グループ及び第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、前記第1特徴値を用いることによって、前記複数の特徴と異なる複数の他の特徴のそれぞれを示す第3特徴値を算出する特徴値算出部と、前記複数の第3特徴値を用いることにより、前記複数の他の特徴のうち、前記第1グループに含まれる複数の対象者と前記第2グループに含まれる複数の対象者との間において前記第3特徴値の傾向が異なる1以上の他の特徴を特定する特徴特定部と、前記第1グループ及び前記第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者についての前記1以上の特徴のそれぞれを示す前記第1特徴値の少なくとも一部と、各対象者が前記第1グループ及び第2グループのうちのどちらに含まれるかを示す情報とを含む複数の学習データを生成するデータ生成部と、前記複数の学習データを用いることによって学習モデルを生成するモデル生成部と、を有し、前記複数の他の特徴が、前記手書き文字の書字時における所定時間ごとのペンの先端部の筆圧及び座標と、前記ペンの後端部の高度角及び方位角と、前記所定時間ごとの前記座標のうち、第1座標と第2座標との間における距離と前記第2座標と第3座標との間における距離とが所定の長さである3点の座標における、前記第1座標と前記第2座標とを通る直線と前記第2座標と前記第3座標とを通る直線とのなす角とのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする。
【0019】
また、上記目的を達成するための本発明における分類方法は、第1グループ及び第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者による手書き文字についての複数の特徴のそれぞれを示す第1特徴値を取得し、前記複数の対象者ごとに、各対象者に対応する前記第1特徴値と、基準文字についての前記複数の特徴のそれぞれを示す第2特徴値とのDPマッチングを行い、前記DPマッチングの結果に基づいて、前記複数の特徴のうち、前記第1グループに含まれる複数の対象者と前記第2グループに含まれる複数の対象者との間において前記第1特徴値の傾向が異なる1以上の特徴を特定し、前記第1グループ及び前記第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者についての前記1以上の特徴のそれぞれを示す前記第1特徴値の少なくとも一部と、各対象者が前記第1グループ及び第2グループのうちのどちらに含まれるかを示す情報とを含む複数の学習データを生成し、前記複数の学習データを用いることによって学習モデルを生成する、処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0020】
また、上記目的を達成するための本発明における分類方法は、第1グループ及び第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者による手書き文字についての複数の特徴のそれぞれを示す複数の第1特徴値を取得し、前記第1グループ及び第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、前記第1特徴値を用いることによって、前記複数の特徴と異なる複数の他の特徴のそれぞれを示す第3特徴値を算出し、前記複数の第3特徴値を用いることにより、前記複数の他の特徴のうち、前記第1グループに含まれる複数の対象者と前記第2グループに含まれる複数の対象者との間において前記第3特徴値の傾向が異なる1以上の他の特徴を特定し、前記第1グループ及び前記第2グループに含まれる複数の対象者ごとに、各対象者についての前記1以上の特徴のそれぞれを示す前記第1特徴値の少なくとも一部と、各対象者が前記第1グループ及び第2グループのうちのどちらに含まれるかを示す情報とを含む複数の学習データを生成し、前記複数の学習データを用いることによって学習モデルを生成し、前記複数の他の特徴が、前記手書き文字の書字時における所定時間ごとのペンの先端部の筆圧及び座標と、前記ペンの後端部の高度角及び方位角と、前記所定時間ごとの前記座標のうち、第1座標と第2座標との間における距離と前記第2座標と第3座標との間における距離とが所定の長さである3点の座標における、前記第1座標と前記第2座標とを通る直線と前記第2座標と前記第3座標とを通る直線とのなす角とのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明における分類プログラム、分類装置及び分類方法によれば、パーキンソン病の診断をより高精度に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の実施の形態における分類装置1の構成例を示す図である。
図2図2は、第1の実施の形態の概略における分類処理を説明する図である。
図3図3は、第1の実施の形態における分類処理の詳細を説明するフローチャート図である。
図4図4は、第1の実施の形態における分類処理の詳細を説明するフローチャート図である。
図5図5は、被験者が書字を行う手書き文字の具体例である。
図6図6は、被験者が書字を行う手書き文字の具体例である。
図7図7は、手書き文字から取得される各特徴を示す第1特徴値の具体例について説明する図である。
図8図8は、手書き文字から取得される各特徴を示す第1特徴値の具体例について説明する図である。
図9図9は、手書き文字から取得される各特徴を示す第1特徴値の具体例について説明する図である。
図10図10は、手書き文字から取得される各特徴を示す第1特徴値の具体例について説明する図である。
図11図11は、DPマッチングの結果の具体例について説明する図である。
図12図12は、「Angle 1mm」を説明する図である。
図13図13は、t検定の結果の具体例について説明する図である。
図14図14は、t検定の結果の具体例について説明する図である。
図15図15は、t検定の結果の具体例について説明する図である。
図16図16は、S25の処理で生成した学習モデルの分類精度について説明する図である。
図17図17は、S25の処理で生成した学習モデルの分類精度について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態における分類装置1の構成例を示す図である。分類装置1は、コンピュータ装置であって、例えば、汎用的なPC(Personal Computer)であってよい。また、分類装置1は、据置型、ノードブック型、タブレット型等の形態を問わない。
【0025】
分類装置1は、汎用的なコンピュータ装置のハードウエア構成を有し、例えば、図1に示すように、プロセッサであるCPU101と、メモリ102と、ネットワークインタフェース103と、記憶媒体104とを有する。各部は、バス105を介して互いに接続される。
【0026】
記憶媒体104は、例えば、パーキンソン病患者と健常者との分類を行う処理(以下、分類処理とも呼ぶ)を行うためのプログラム(図示しない)を記憶するプログラム格納領域(図示しない)を有する。また、記憶媒体104は、例えば、分類処理を行う際に用いられる情報を記憶する記憶領域110を有する。なお、記憶媒体104は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)であってよい。
【0027】
CPU101は、記憶媒体104(記憶領域110)からメモリ102にロードされたプログラムを実行して分類処理を行う。
【0028】
また、ネットワークインタフェース103は、例えば、パーキンソン病の診断を行う医師等が操作を行う操作端末5と通信を行う。
【0029】
[第1の実施の形態における概略]
次に、第1の実施の形態の概略について説明する。図2は、第1の実施の形態の概略における分類処理を説明する図である。
【0030】
初めに、分類装置1の特徴値取得部11は、図2に示すように、パーキンソン病患者と健常者とを含む複数の被験者(以下、単に複数の被験者とも呼ぶ)ごとに、各被験者が書字した手書き文字についての複数の特徴のそれぞれを示す特徴値(以下、第1特徴値とも呼ぶ)を取得する。
【0031】
そして、マッチング部12は、複数の被験者ごとに、各対象者に対応する第1特徴値と、各被験者が書字した手書き文字の基準となる文字(以下、基準文字とも呼ぶ)についての複数の特徴のそれぞれを示す特徴値(以下、第2特徴値とも呼ぶ)とのDPマッチングを行う。
【0032】
続いて、特徴特定部13は、DPマッチングの結果に基づいて、複数の特徴のうち、パーキンソン病患者と健常者との間において第1特徴値の傾向が異なる1以上の特徴を特定する。具体的に、特徴特定部13は、例えば、t検定を用いることにより、パーキンソン病患者と健常者の間において第1特徴値の傾向が異なる1以上の特徴の特定を行う。
【0033】
その後、データ生成部14は、複数の被験者ごとに、各被験者についての1以上の特徴(特徴特定部13が特定した1以上の特徴)のそれぞれを示す第1特徴値の少なくとも一部と、各被験者がパーキンソン病患者であるか否か(健常者であるか否か)を示す情報とを含む複数の学習データを生成する。
【0034】
そして、モデル生成部15は、複数の学習データを用いることによって学習モデルを生成する。具体的に、モデル生成部15は、パーキンソン病患者と健常者との分類を行うことが可能な学習モデルの生成を行う。
【0035】
なお、マッチング部12がDPマッチングを行う際に用いる基準文字は、例えば、図2に示すように、文字特定部16によって取得(特定)される。
【0036】
すなわち、本実施の形態における分類装置1は、DPマッチングを用いることにより、学習データの一部として含めることが有効であると判断できる特徴を特定する。そして、分類装置1は、特定した特徴に対応する特徴値(第1特徴値)を含む複数の学習データを用いることによって学習モデルの生成を行う。
【0037】
これにより、分類装置1は、パーキンソン病患者と健常者との分類を高精度で行うことが可能な学習モデルを生成することが可能になる。そのため、パーキンソン病の診断を行う医師は、生成した学習モデルを用いることで、パーキンソン病の診断をより高精度に行うことが可能になる。
【0038】
[第1の実施の形態の詳細]
次に、第1の実施の形態の詳細について説明する。図3及び図4は、第1の実施の形態における分類処理の詳細を説明するフローチャート図である。また、図5から図17は、第1の実施の形態における分類処理の詳細を説明する図である。
【0039】
特徴値取得部11は、図3に示すように、複数の被験者ごとに、各被験者が書字した手書き文字についての複数の特徴を示す第1特徴値を取得する(S11)。以下、手書き文字の具体例について説明を行う。
【0040】
[手書き文字の具体例]
図5及び図6は、被験者が書字を行う手書き文字の具体例である。具体的に、図5及び図6は、被験者が手書き文字を書字した場合におけるタブレット上の状態を示す具体例である。
【0041】
図5(A)及び図5(B)は、アルキメデスの螺旋のなぞり書き(内側から外側に向かうなぞり書き)による手書き文字であり、図5(C)及び図5(D)は、サインカーブのなぞり書き(左側から右側に向かうなぞり書き)による手書き文字であり、図5(E)及び図5(F)は、三重丸の模倣書き(左側の三重丸の模様書き)による手書き文字である。
【0042】
また、図6(A)及び図6(B)は、三本線のなぞり書きによる手書き文字であり、図6(C)及び図6(D)は、カタカナの「ク」のフリーライディング(左側の見本と大きさが同じになるように行うフリーライディング)による手書き文字であり、図6(E)及び図6(F)は、カタカナの「セ」のフリーライディングによる手書き文字である。
【0043】
そして、図5及び図6に示す例において、図5(A)、図5(C)、図5(E)、図6(A)、図6(C)及び図6(E)における手書き文字は、パーキンソン病患者によって書字されたものであり、図5(B)、図5(D)、図5(F)、図6(B)、図6(D)及び図6(F)における手書き文字は、健常者によって書字されたものである。
【0044】
[手書き文字についての特徴の具体例]
次に、図5及び図6で説明した各手書き文字から取得される各特徴の第1特徴値の具体例について説明を行う。図7から図10は、手書き文字から取得される各特徴の第1特徴値の具体例について説明する図である。すなわち、図7から図10は、被験者が手書き文字の書字を行う際にタブレットを介して取得される各種情報について説明する図である。
【0045】
以下、手書き文字から取得される特徴には、手書き文字の書字時におけるペンの先端部の筆圧(以下、単に筆圧とも呼ぶ)と、タブレット上におけるペンの先端部のX座標(以下、単にX座標とも呼ぶ)と、タブレット上におけるペンの先端部のY座標(以下、単にY座標とも呼ぶ)と、ペンの後端部の方位角(以下、単に方位角とも呼ぶ)と、ペンの後端部の高度角(以下、単に高度角とも呼ぶ)とが含まれるものとして説明を行う。
【0046】
なお、ここでの方位角は、例えば、図7に示すように、タブレットTBの水平方向のうちの基準となる一方向(以下、基準方向とも呼ぶ)に対するペンPNの後端部の水平方向における傾きAZが示す値である。また、ここでの高度角は、例えば、図8に示すように、タブレットTBの鉛直方向についてのペンPNの後端部の傾きALを示す値である。
【0047】
そして、図9(A)、図9(C)、図9(E)、図10(A)及び図10(C)のそれぞれは、図5(A)で説明したアルキメデスの螺旋のなぞり書きによる手書き文字の書字時における筆圧、X座標、Y座標、方位角及び高度角に対応する第1特徴値の時系列データを示すグラフである。また、図9(B)、図9(D)、図9(F)、図10(B)及び図10(D)のそれぞれは、図5(B)で説明したアルキメデスの螺旋のなぞり書きによる手書き文字の書字時における筆圧、X座標、Y座標、方位角及び高度角に対応する第1特徴値の時系列データを示すグラフである。なお、図9及び図10に示す各グラフでは、横軸が時間を示しており、縦軸が筆圧等を示している。
【0048】
図3に戻り、文字特定部16は、複数の特徴ごとに、各特徴を示す第1特徴値のうち、健常者に対応する特徴値の平均値を特定する(S12)。
【0049】
そして、文字特定部16は、S12の処理で取得した平均値のそれぞれに対応する文字を基準文字として特定する(S13)。すなわち、文字特定部16は、各健常者によって書字された各手書き文字を平均させるによって基準文字を特定する。
【0050】
続いて、マッチング部12は、複数の被験者ごとに、S11の処理で取得した第1特徴値と、S13の処理で特定した基準文字についての複数の特徴のそれぞれを示す特第2特徴値とのDPマッチングを行う(S14)。
【0051】
具体的に、マッチング部12は、例えば、S11の処理で取得した筆圧、X座標、Y座標、方位角及び高度角のそれぞれについてDPマッチングを行う。また、マッチング部12は、例えば、S11の処理で取得したX座標及びY座標に対応する位置についてDPマッチングを行う。以下、DPマッチングを行う際の処理について説明を行う。
【0052】
[DPマッチングを行う際の処理の具体例]
例えば、手書き文字から取得した筆圧の時系列データT=t、t、…、tであり、基準文字から取得した筆圧の時系列データR=r、r、…、rである場合、マッチング部12は、初めに、ワーキングパスW=w、w、…、wを用いることによって各時系列データにおけるずれの最適化(各時系列データに含まれる要素数の差の吸収)を行う。ワーキングパスWに含まれるwのそれぞれは、t及びrに対応するデータであり、「w=(i,j)」と表現することが可能である。
【0053】
そして、この場合、tとrとの間の距離d(i,j)は、以下の式(1)によって定義され、DPマッチングの結果は、以下の式(2)によって定義される。
【0054】
【数1】
【0055】
【数2】
【0056】
また、各要素における累積最小距離g(i,j)は、以下の式(3)によって表現される。
【0057】
【数3】
【0058】
そして、DPマッチングの結果は、時系列データTと時系列データRとが類似しているほど低くなる。以下、DPマッチングの結果の具体例について説明を行う。
【0059】
[DPマッチングの結果の具体例]
図11は、DPマッチングの結果の具体例について説明する図である。具体的に、図11は、手書き文字から取得した筆圧の時系列データTと基準文字から取得した筆圧の時系列データRとのDPマッチングの結果の具体例について説明する図である。
【0060】
図11(A)に示す例では、文字WD1aが時系列データTに対応し、文字WD1bが時系列データRに対応する。また、図11(A)に示す例は、DPマッチングの結果が「3.8」である場合の例である。
【0061】
また、図11(B)に示す例では、文字WD2aが時系列データTに対応し、文字WD2bが時系列データRに対応する。また、図11(B)に示す例は、DPマッチングの結果が「32.3」である場合の例である。
【0062】
すなわち、図11(A)に示す例における時系列データTと時系列データRとの差異部分(図11(A)における色付部分)の大きさは、図11(B)に示す例における差異部分(図11(B)における色付部分)の大きさよりも小さい。そのため、図11(A)の例におけるDPマッチングの結果は、図11(B)の例におけるDPマッチングの結果よりも小さくなる。
【0063】
図3に戻り、特徴特定部13は、S14の処理の結果を示す値のそれぞれについてt検定を行う(S15)。
【0064】
そして、特徴特定部13は、手書き文字についての複数の特徴から、S15の処理で算出されたp値が所定以下である特徴を特定する(S16)。
【0065】
続いて、特徴値取得部11は、図4に示すように、複数の被験者ごとに、S11の処理で取得した第1特徴値を用いることによって、複数の他の特徴のそれぞれを示す特徴値(以下、第3特徴値とも呼ぶ)を算出する(S21)。以下、S21の処理の具体例について説明を行う。
【0066】
[S21の処理の具体例]
特徴値取得部11は、複数の他の特徴として、手書き文字から取得された位置(手書き文字から取得されたX座標とY座標に対応する位置)を用いることによって、タブレット上におけるペンの先端部の位置の単位時間あたりの変化率(移動速度)を示す「Writing Velocity」と、「Writing Velocity」の単位時間あたりの変化率を示す「Writing Acceleration」と、「Writing Acceleration」の単位時間あたりの変化率を示す「Writing Jerk」とを単位時間ごとに算出して、「Writing Velocity」、「Writing Acceleration」及び「Writing Jerk」の時系列データをそれぞれ取得する。
【0067】
具体的に、特徴値取得部11は、以下の式(4)から式(6)のそれぞれに従うことによって、単位時間ごとの「Writing Velocity」、「Writing Acceleration」及び「Writing Jerk」を算出する。なお、式(4)から(6)において、xは、時間tにおけるペンの先端部のX座標を示し、yは、時間tにおけるペンの先端部のY座標を示し、dは、時間tから時間ti+1までの間におけるペンの先端部の移動距離を示し、vは、時間tから時間ti+1までの間におけるペンの先端部の移動速度(すなわち、「Writing Velocity」)を示し、aは、時間tから時間ti+1までの間におけるvの変化率(すなわち、「Writing Acceleration」)を示し、jは、時間tから時間ti+1までの間におけるaの変化率(すなわち、「Writing Jerk」)を示している。
【0068】
【数4】
【0069】
【数5】
【0070】
【数6】
【0071】
また、特徴値取得部11は、複数の他の特徴として、手書き文字から取得された筆圧を用いることによって、筆圧の1次微分値を示す「Pressure 1st Derivative」と、筆圧の2次微分値を示す「Pressure 2nd Derivative」とを単位時間ごとに算出して、「Pressure 1st Derivative」及び「Pressure 2nd Derivative」の時系列データをそれぞれ取得する。
【0072】
具体的に、特徴値取得部11は、以下の式(7)及び式(8)のそれぞれに従うことによって、「Pressure 1st Derivative」及び「Pressure 2nd Derivative」を算出する。なお、式(7)及び式(8)において、pは、時間tにおけるペンの先端部における筆圧を示し、p1は、時間tから時間ti+1までの間におけるpの微分値(すなわち、「Pressure 1st Derivative」)を示し、p2は、時間tから時間ti+1までの間におけるp1の微分値(すなわち、「Pressure 2nd Derivative」)を示している。
【0073】
【数7】
【0074】
【数8】
【0075】
また、特徴値取得部11は、複数の他の特徴として、手書き文字から取得された方位角を用いることによって、方位角の1次微分値を示す「Azimuth 1st Derivative」と、方位角の2次微分値を示す「Azimuth 2nd Derivative」とを単位時間ごとに算出して、「Azimuth 1st Derivative」及び「Azimuth 2nd Derivative」の時系列データをそれぞれ取得する。
【0076】
具体的に、特徴値取得部11は、以下の式(9)及び式(10)のそれぞれに従うことによって、「Azimuth 1st Derivative」及び「Azimuth 2nd Derivative」を算出する。なお、式(9)及び(10)において、azは、時間tにおけるペンの先端部における方位角を示し、az1は、時間tから時間ti+1までの間におけるペンの先端部における方位角の微分値(すなわち、「Azimuth 1st Derivative」)を示し、az2は、時間tから時間ti+1までの間におけるaz1の微分値(すなわち、「Azimuth 2nd Derivative」)を示している。
【0077】
【数9】
【0078】
【数10】
【0079】
また、特徴値取得部11は、複数の他の特徴として、手書き文字から取得された高度角を用いることによって、高度角の1次微分値を示す「Altitude 1st Derivative」と、高度角の2次微分値を示す「Altitude 2nd Derivative」とを単位時間ごとに算出して、「Altitude 1st Derivative」及び「Altitude 2nd Derivative」の時系列データをそれぞれ取得する。
【0080】
具体的に、特徴値取得部11は、以下の式(11)及び式(12)のそれぞれに従うことによって、「Altitude 1st Derivative」及び「Altitude 2nd Derivative」を算出する。なお、式(11)及び(12)において、alは、時間tにおけるペンの先端部における高度角を示し、al1は、時間tから時間ti+1までの間におけるペンの先端部における高度角の微分値(すなわち、「Altitude 1st Derivative」)を示し、al2は、時間tから時間ti+1までの間におけるal1の微分値(すなわち、「Altitude 2nd Derivative」)を示している。
【0081】
【数11】
【0082】
【数12】
【0083】
また、特徴値取得部11は、複数の他の特徴として、手書き文字から取得された位置を用いることによって、単位時間ごとに取得された位置(以下、第2位置とも呼ぶ)のそれぞれについて、第2位置との距離が「1(mm)」である位置であって第2距離よりも前に取得された位置(以下、第1位置とも呼ぶ)と、第2位置との距離が「1(mm)」である位置であって第2距離よりも後に取得された位置(以下、第3位置とも呼ぶ)とを特定し、第1位置と第2位置とを通る直線と第2位置と第3位置とを通る直線とのなす角を示す「Angle 1mm」を単位時間ごとに算出して、「Angle 1mm」の時系列データを取得する。
【0084】
具体的に、特徴値取得部11は、例えば、図12に示すように、手書き文字WDの書字時におけるペンの先端部の位置(図中の網掛け部分)のうち、位置Pを第1位置として特定し、位置Pを第2位置として特定し、Pを第3位置として特定する。そして、特徴値取得部11は、位置Pと位置Pとを通る直線と位置Pと位置Pとを通る直線とのなす角であるANを特定する。
【0085】
また、特徴値取得部11は、複数の他の特徴として、手書き文字から取得された位置を用いることによって、単位時間ごとに取得された第2位置のそれぞれについて、第2位置との距離が「3(mm)」である位置であって第2距離よりも前に取得された第1位置と、第2位置との距離が「3(mm)」である位置であって第2距離よりも後に取得された第3位置とを特定し、第1位置と第2位置とを通る直線と第2位置と第3位置とを通る直線とのなす角を示す「Angle 3mm」を単位時間ごとに算出して、「Angle 3mm」の時系列データを取得する。
【0086】
さらに、特徴値取得部11は、複数の他の特徴として、手書き文字から取得された位置を用いることによって、単位時間ごとに取得された第2位置のそれぞれについて、第2位置との距離が「5(mm)」である位置であって第2距離よりも前に取得された第1位置と、第2位置との距離が「5(mm)」である位置であって第2距離よりも後に取得された第3位置とを特定し、第1位置と第2位置とを通る直線と第2位置と第3位置とを通る直線とのなす角を示す「Angle 5mm」を単位時間ごとに算出して、「Angle 5mm」の時系列データを取得する。
【0087】
具体的に、特徴値取得部11は、以下の式(13)に従うことによって、「Angle 1mm」、「Angle 3mm」及び「Angle 5mm」を算出する。
【0088】
【数13】
【0089】
ここで、式(13)において、i、j及びkは、以下の式(14)に従うことによって算出(特定)される。
【0090】
【数14】
【0091】
さらに、累積距離lは、以下の式(15)に従うことによって算出される。
【0092】
【数15】
【0093】
すなわち、手書き文字に含まれる真っ直ぐな線が書字される場合、通常、「Angle 1mm」、「Angle 3mm」及び「Angle 5mm」の値は、それぞれ「180」に近づく。そのため、例えば、「Angle 1mm」等の値が「180」から離れている場合、その手書き文字を書字した被験者がアルツハイマー病である可能性があると判断できる。
【0094】
したがって、分類装置1は、後述するように、上記の「Angle 1mm」、「Angle 3mm」及び「Angle 5mm」を算出して学習データに含めることによって、アルツハイマー病患者と健常者との分類を高精度に行うことが可能な学習モデルを生成することが可能になる。
【0095】
図4に戻り、特徴特定部13は、S21の処理で算出した第3特徴値についてt検定を行う(S22)。
【0096】
そして、特徴特定部13は、複数の他の特徴から、S15の処理で算出されたp値が所定以下である特徴を特定する(S23)。以下、S15及びS22の処理で行われるt検定の結果の具体例について説明を行う。
【0097】
[t検定の結果の具体例]
図13から図15は、t検定の結果の具体例について説明する図である。具体的に、図13及び図14は、S22の処理で行われるt検定の具体例について説明する図であり、図15は、15の処理で行われるt検定の具体例について説明する図である。
【0098】
図13等に示すテーブルには、テーブルに含まれる各データを識別する「項番」と、t検定の対象を示す「特徴値」と、アルキメデスの螺旋のなぞり書きの手書き文字についてのt検定を行うことによって算出されたp値を示す「Task1」と、サインカーブのなぞり書きの手書き文字についてのt検定を行うことによって算出されたp値を示す「Task2」と、三重丸の模倣書きの手書き文字についてのt検定を行うことによって算出されたp値を示す「Task3」と、三本線のなぞり書きの手書き文字についてのt検定を行うことによって算出されたp値を示す「Task4」と、カタカナの「ク」のフリーライディングの手書き文字についてのt検定を行うことによって算出されたp値を示す「Task5」と、カタカナの「セ」のフリーライディングの手書き文字についてのt検定を行うことによって算出されたp値を示す「Task6」とを項目として有する。
【0099】
なお、「特徴値」には、「Writing Velocity」、「Writing Acceleration」及び「Writing Jerk」の被験者ごとの平均値である「Writing Velocity Mean」、「Writing Acceleration Mean」及び「Writing Jerk Mean」が設定される。
【0100】
また、「特徴値」には、「Writing Velocity」、「Writing Acceleration」及び「Writing Jerk」の被験者ごとの標準偏差である「Writing Velocity Std」、「Writing Acceleration Std」及び「Writing Jerk Std」が設定される。
【0101】
同様に、「特徴値」には、「Pressure 1st Derivative Mean」、「Pressure 2nd Derivative Mean」、「Pressure 1st Derivative Std」、「Pressure 2nd Derivative Std」、「Azimuth 1st Derivative Mean」、「Azimuth 2nd Derivative Mean」、「Azimuth 1st Derivative Std」、「Azimuth 2nd Derivative Std」、「Altitude 1st Derivative Mean」、「Altitude 2nd Derivative Mean」、「Altitude 1st Derivative Std」、「Altitude 2nd Derivative Std」、「Angle 1mm Mean」、「Angle 3mm Mean」、「Angle 5mm Mean」、「Angle 1mm Std」、「Angle 3mm Std」及び「Angle 5mm Std」が設定される。
【0102】
また、「特徴値」には、S14の処理において行われたX座標、Y座標、筆圧、方位角、高度角及び位置(X座標及びY座標に対応する位置)のそれぞれについてのマッチングの結果に対応する「DP Matching(X coordinate)」、「DP Matching(Y coordinate)」、「DP Matching(Pressure)」、「DP Matching(Azimuth)」、「DP Matching(Altitude)」及び「DP Matching(XY coordinate)」が設定される。
【0103】
具体的に、図13に示すテーブルにおいて、「項番」が「1」であるデータには、「特徴値」として「Writing Velocity Mean」が設定され、「Task1」として「0.10560」が設定され、「Task2」として「0.05703」が設定され、「Task3」として「0.00092」が設定され、「Task4」として「0.09379」が設定され、「Task5」として「0.00001」が設定され、「Task6」として「0.00001」が設定されている。
【0104】
また、図13に示すテーブルにおいて、「項番」が「2」であるデータには、「特徴値」として「Writing Velocity Std」が設定され、「Task1」として「0.35079」が設定され、「Task2」として「0.24773」が設定され、「Task3」として「0.01310」が設定され、「Task4」として「0.51000」が設定され、「Task5」として「0.00002」が設定され、「Task6」として「0.00150」が設定されている。図13から図15に含まれる他のデータについての説明は省略する。
【0105】
そして、特徴特定部13は、S16及びS23の処理において、例えば、「Task1」、「Task2」、「Task3」、「Task4」、「Task5」及び「Task6」に設定された値の全てが所定値以下であるデータの「特徴値」に対応する特徴を特定する。
【0106】
図4に戻り、データ生成部14は、複数の被験者ごとに、S16の処理で特定した特徴を示す第1特徴値と、S23の処理で特定した特徴と示す第3特徴値と、各被験者がパーキンソン病患者と健常者とのうちのどちらであるかを示す情報とを含む複数の学習データを生成する(S24)。
【0107】
具体的に、データ生成部14は、例えば、複数の被験者ごとであって手書き文字の種類ごとに、学習データの生成を行う。
【0108】
そして、モデル生成部15は、S24の処理で生成した複数の学習データを用いることによって学習モデルを生成する(S25)。
【0109】
具体的に、モデル生成部15は、例えば、手書き文字の種類ごとに生成した学習データを用いることにより、手書き文字の種類毎の学習モデルをそれぞれ生成する。
【0110】
その後、分類装置1は、例えば、新たな被験者によって手書き文字の書字が行われた場合、書字された手書き文字に対応する第1特徴値と第3特徴値とを特定する。そして、分類装置1は、特定した第1特徴値と第3特徴値を学習モデル(S25の処理で生成された学習モデル)に入力し、新たな被験者がパーキンソン病患者であるか否かを示す出力値(例えば、パーキンソン病である確率を示す出力値)を取得する。
【0111】
これにより、パーキンソン病の診断を行う医師は、学習モデルからの出力値を参照することで、新たな被験者がパーキンソン病患者であるか否かの診断を容易に行うことが可能になる。以下、S25の処理で生成された学習モデルにおける分類精度について説明を行う。
【0112】
[学習モデルの分類精度]
図16及び図17は、S25の処理で生成した学習モデルの分類精度について説明する図である。図16は、S25の処理で生成した学習モデルの分類精度を説明する図である。これに対し、図17は、S16の処理で特定した特徴を示す第1特徴値を含まない学習データ(S23の処理で特定した特徴と示す第3特徴値と、各被験者がパーキンソン病患者と健常者とのうちのどちらであるかを示す情報とを含む学習データ)によって生成した学習モデルの分類精度を説明する図である。
【0113】
具体的に、図16に示す例は、「Task1」、「Task2」、「Task3」、「Task4」、「Task5」及び「Task6」のそれぞれについての分類精度が「92.83(%)」、「97.17(%)」、「99.50(%)」、「99.75(%)」、「95.92(%)」及び「94.17(%)」であることを示しており、図17に示す例における各分類精度よりも高い数値になっている。
【0114】
すなわち、図16及び図17は、S16の処理で特定した特徴を示す第1特徴値を含む学習データによって生成された学習モデルの方が、S16の処理で特定した特徴を示す第1特徴値を含まない学習データによって生成された学習モデルの方よりも、パーキンソン病患者と健常者との分類を高精度に行うことができることを示している。
【0115】
これにより、パーキンソン病の診断を行う医師は、生成した学習モデルを用いることで、パーキンソン病の診断をより高精度に行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0116】
1:分類装置
5:操作端末
101:CPU
102:メモリ
103:ネットワークインタフェース
104:記憶媒体
105:バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17