(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】乗用型農作業車
(51)【国際特許分類】
B60T 7/04 20060101AFI20240118BHJP
B60T 17/22 20060101ALI20240118BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20240118BHJP
G05G 1/01 20080401ALI20240118BHJP
G05G 1/36 20080401ALI20240118BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B60T7/04 E
B60T17/22 Z
G05G1/30 E
G05G1/01 F
G05G1/36
A01B69/00 301
A01B69/00 303Z
(21)【出願番号】P 2020152930
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2022-12-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楫野 豊
(72)【発明者】
【氏名】勝野 志郎
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-156308(JP,A)
【文献】特開2019-091353(JP,A)
【文献】特開2014-227132(JP,A)
【文献】特開2019-196169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/04
B60T 17/22
A01B 69/00
G05G 1/01
G05G 1/30
G05G 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右ブレーキペダル(12L),(12R)と両左右ブレーキペダル(12L),(12R)を一体に連結するペダル連結部(25)を設けた乗用型農作業車において、制御部(42)が圃場地図データ(47)を持ち、車体位置認識装置(48)で認識する機体位置が圃場外であればペダル連結部(25)を自動で連結して、左右ブレーキペダル(12L),(12R)のどちらを踏み込んでも左右輪(4),(5)を同時制動するように制御
し、
操縦席(7)にシートベルトセンサ(17S)で装着を検出するシートベルト(17)を設けて、操縦者の着座時にシートベルト(17)の装着を促し、シートベルトセンサ(17S)が未装着を検出するとペダル連結部(25)の連結解除を阻止することを特徴とする乗用型農作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場で農作業するトラクタ等の乗用型農作業車のブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型農作業車は、圃場を走行する場合には急旋回を可能にするために左右のブレーキペダルを単独で作動させて、左右片側のブレーキペダルを踏むとその側の走行輪にブレーキが作用して急旋回となるようにして圃場を効率的に旋回しながら農作業が行えるようにしているが、路上を走行する場合には左右ブレーキペダルを連結して左右ブレーキペダルのどちらを踏み込んでも通常のブレーキとしてそのまま走行を停止するようにしている。
【0003】
特許文献1に記載の農作業車では、高速走行可能状態で左右ブレーキペダルが連結されていないと警報を発して注意を促し、連結ペダルを踏むと左右ブレーキペダルの連結部がソレノイドで連結し、連結した状態では高速走行しても警報を発しないようにすることで、左右ブレーキペダルを連結しないで高速走行中に片ブレーキを利かせて急旋回による転倒が生じないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、乗用型農作業車が路上走行する場合、低速走行であっても路面幅が狭い場合や車体が前後或いは左右に傾いていた場合は、走行中に片ブレーキ状態になると車輪が路面から逸脱したり車体の傾きが大きくなったりして転倒の危険性がある。すなわち、速度で切り分けて制御することは危険である。
【0006】
本発明は、左右ブレーキペダルを設けた乗用型農作業車において、路上走行時には左右ブレーキペダルの片側を踏み込んでも片ブレーキとならないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0008】
本発明は、左右ブレーキペダル(12L),(12R)と両左右ブレーキペダル(12L),(12R)を一体に連結するペダル連結部(25)を設けた乗用型農作業車において、制御部(42)が圃場地図データ(47)を持ち、車体位置認識装置(48)で認識する機体位置が圃場外であればペダル連結部(25)を自動で連結して、左右ブレーキペダル(12L),(12R)のどちらを踏み込んでも左右輪(4),(5)を同時制動するように制御し、
操縦席(7)にシートベルトセンサ(17S)で装着を検出するシートベルト(17)を設けて、操縦者の着座時にシートベルト(17)の装着を促し、シートベルトセンサ(17S)が未装着を検出するとペダル連結部(25)の連結解除を阻止することを特徴とする乗用型農作業車とする。
本発明に関連する第1の発明は、左右ブレーキペダル12L,12Rと両ブレーキペダル12L,12Rを一体に連結するペダル連結部25を設けた乗用型農作業車において、制御部42が圃場地図データ47を持ち、車体位置認識装置48で認識する機体位置が圃場外であればペダル連結部25を自動で連結して、左右ブレーキペダル12L,12Rのどちらを踏み込んでも左右輪4,5を同時制動するように制御したことを特徴とする乗用型農作業車とする。
【0009】
本発明に関連する第2の発明は、ペダル連結部25の連結を検出するペダル連結検出センサ37を設け、該ペダル連結検出センサ37が連結を検出しない状態で車速センサ44が所定車速以上の警戒車速を検出するか車体傾斜センサ46が所定以上の警戒傾斜角を検出すると片ブレーキ警報を出すことを特徴とする乗用型農作業車とする。
【0010】
本発明に関連する第3の発明は、車体傾斜センサ46の警報傾斜角度を変更可能にしたことを特徴とする本発明に関連する第2の発明の乗用型農作業車とする。
【0011】
本発明に関連する第4の発明は、操縦席7にシートベルトセンサ17Sで装着を検出するシートベルト17を設けて、操縦者の着座時にシートベルト17の装着を促し、シートベルトセンサ17Sが未装着を検出するとペダル連結部25の連結解除を阻止することを特徴とする本発明に関連する第1から3の何れかの発明の乗用型農作業車とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明で、車体位置認識装置48で認識する車体位置が圃場地図データ47の圃場外であれば、制御部42が左右ブレーキペダル12L,12Rのペダル連結部25を自動で連結するので、圃場外で左右ブレーキペダル12L,12Rのどちらを踏み込んでも左右輪4,5を減速停止することになり、片ブレーキによって走行路面を外れたり車体が傾いたりして転倒することが無く安全である。さらに、機体を操縦する作業者にシートベルト17を装着させ、シートベルト17を外した状態では左右ブレーキペダル12L,12Rの片側を踏み込んで行う急旋回が生じないので、作業者が機体上から振り落とされる危険性がない。
本発明に関連する第1の発明で、車体位置認識装置48で認識する車体位置が圃場地図データ47の圃場外であれば、制御部42が左右ブレーキペダル12L,12Rのペダル連結部25を自動で連結するので、圃場外で左右ブレーキペダル12L,12Rのどちらを踏み込んでも左右輪4,5を減速停止することになり、片ブレーキによって走行路面を外れたり車体が傾いたりして転倒することが無く安全である。
【0013】
本発明に関連する第2の発明で、圃場での作業走行或いは路上走行であっても左右ブレーキペダル12L,12Rのペダル連結部25が連結されていない状態をペダル連結検出センサ37が検出すると、走行速度が所定速度を超えたり車体の傾きが警戒傾斜角を超えたりすると片ブレーキ警報を出して機体の操縦者に注意を促すので、左右ブレーキペダル12L,12Rの片側を踏み込んで片ブレーキを生じさせることを防ぐ。
【0014】
本発明に関連する第3の発明で、本発明に関連する第2の発明の効果に加えて、圃場の硬軟や走行路面の湿り具合などによって機体の操縦者が事前に安全な車体傾斜角度を調整できる。
【0015】
本発明に関連する第4の発明で、本発明に関連する第1から3の何れかの発明の効果に加え、機体を操縦する作業者にシートベルト17を装着させ、シートベルト17を外した状態では左右ブレーキペダル12L,12Rの片側を踏み込んで行う急旋回が生じないので、作業者が機体上から振り落とされる危険性がない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるトラクタの概略右側面図である。
【
図3】同トラクタの操縦席から見た左右ブレーキペダルの概略斜視図である。
【
図4】同トラクタのブレーキ連結解除ペダルの側面図である。
【
図5】(A)同トラクタの操作規制部の側面図、(B)同トラクタの操作規制部の一部正面図である。
【
図7】(A)同トラクタの操作規制部のブレーキ連結解除ペダルの側面図、(B)同トラクタのブレーキ連結解除ペダルの踏み込み側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例を図面に基づき説明する。
【0018】
乗用型農作業車としてのトラクタ1は、自走しながら圃場で耕耘等の農作業を行う農用トラクタである。
【0019】
図1に示すように、機体前部のボンネット2内にエンジンEを搭載している。エンジンEからの回転動力は、ミッションケース3内の走行伝動装置へ伝達され、走行伝動装置で減速されて車輪、すなわち、トラクタ1の前輪4や後輪5へ伝達される。
【0020】
機体後部のキャビン6の屋根には測位衛星からの電波を受けて機体位置を認識する車体位置認識装置48が取り付けられ、キャビン6内には操縦席7が設けられている。操縦席7の前方には前輪4を操舵するステアリングハンドル8が設けられている。ステアリングハンドル8の前方にはメータパネル9が設けられている。機体の後部のヒッチ51にロータリ作業機などが連結される。このロータリ作業機は、ミッションケース3から後方へ突出しているPTO軸13によって駆動される。
【0021】
ミッションケース3内には、前後進切替機構(図示せず)、主変速機構(図示せず)、副変速機構(図示せず)等、後輪5及び前輪4への伝動機構、左・右後輪5,5の左・右車軸をそれぞれ制動する左・右ブレーキ機構(図示せず)等を内装している。
【0022】
また、キャビン6内において、操縦席7の周りにはステアリングハンドル8やメータパネル9の他、アクセルペダル10、クラッチペダル11、ブレーキペダル12、ブレーキ連結解除ペダル30などの各種操作ペダルや前後進レバー14、主変速レバー15、副変速レバー16などの各種操作レバーが設けられている。
【0023】
さらに、
図8に示す如く、操縦席7にシートベルト17が設けられ、このシートベルト17の装着をシートベルトセンサ17S(
図6参照)で検出して、未装着であれば、ペダル連結部25の連結解除を阻止する。操縦席7の周りには背凭れ角度調節レバー7Aとシート高さ調節レバー7Bとシート前後調節レバー7Cを設け、右側に主変速レバー15とコントロールレバー18を設け、左側には副変速レバー16を設けている。
【0024】
図2に示すように、操縦席7の前方には、ステアリングハンドル8が設けられている。また、ステアリングハンドル8が取り付けられたハンドルポスト20の下部左方にはクラッチペダル11とブレーキ連結解除ペダル30が設けられ、ハンドルポスト20の下部右方にアクセルペダル10およびブレーキペダル12が設けられている。なお、ブレーキペダル12は、左右それぞれのブレーキペダル12L,12Rを備えている。
【0025】
ここで、
図3、
図4および
図5(A)、(B)を参照して左右のブレーキペダル12L,12Rおよび左右のブレーキペダル12L,12Rの連結をロックするロック機構35について説明する
図3に示すように、左右のブレーキペダル12L,12Rは、左右方向に延伸する基軸22に回動可能に軸支され、下方へ延伸するそれぞれのアーム23,23の先端部に設けられている。なお、アーム23,23は、それぞれバネなどの付勢部材24,24によって基軸22に対して操縦作業者が踏み込む向きと反対側へ付勢されている。また、アーム23,23の中途位置には、左右のブレーキペダル12L,12Rを連結するペダル連結部25が設けられている。
【0026】
ペダル連結部25は、連結片26と、受け部27とを備えている。連結片26は、左右のうち一方のブレーキペダル(たとえば、左側のブレーキペダル12L)が設けられたアーム23に、アーム23の延伸向きとは略直交する向きへ回動自在に取り付けられている。また、受け部27は、左右のうち他方のブレーキペダル(たとえば、右側のブレーキペダル12R)が設けられたアーム23に設けられている。
【0027】
ペダル連結部25は、連結片26が回動軸26aを中心に回動して、連結片26の先端部が鉤状の受け部27に嵌ることで、アーム23,23を連結する。このように、ペダル連結部25によってアーム23,23が連結されることで、左右のブレーキペダル12L,12Rは略一体となり、操縦作業者が踏み込んだ場合には共に動作するようになる。なお、左右のブレーキペダル12L,12Rを連結して左右同時に踏み込む操作は、路上などで機体を通常走行させる場合などに用いられる。これに対して、左右のブレーキペダル12L,12Rの連結を解除してそれぞれを個別に踏み込む操作は、圃場などで機体を急旋回させて農作業を行う場合などに用いられる。
【0028】
また、ペダル連結部25の連結片26は、ワイヤ28に接続されており、操縦作業者がブレーキ連結解除ペダル30(
図2参照)を踏み込むと、ワイヤ28によって引き上げられ、左右のブレーキペダル12L,12Rの連結を解除する。なお、操縦作業者がブレーキ連結解除ペダル30から足を離すと、ワイヤ28による連結片26の引き上げが解除され、連結片26が回動して受け部27に嵌り込み、左右のブレーキペダル12L,12Rが連結される。
【0029】
上述したブレーキ連結解除ペダル30は、ハンドルポスト20(
図2参照)の下部に操縦席7側へ向けて突出して設けられている。
図4に示すように、ブレーキ連結解除ペダル30は、先端部にペダル部30aが設けられている。また、ブレーキ連結解除ペダル30は、基端部30bが回動可能に設けられており、操縦作業者による踏み込みを可能にしている。さらに、ブレーキ連結解除ペダル30の基端部30bには、回動中心から上方へ突出した第1凸部31aと、第1凸部31aとは所定角度ずれて回動中心から上方へ突出した第2凸部31bとが設けられている。第1凸部31aおよび第2凸部31bは、ブレーキ連結解除ペダル30が回動すると、これと共に回動方向へ回動する。
【0030】
また、ブレーキ連結解除ペダル30の基端部30bの上方にはロックプレート32が設けられている。ロックプレート32は、回動軸32bを中心に回動可能に設けられている。さらに、ロックプレート32は、ロッド33を介してロックレバー34と連結されている。したがって、ロックプレート32は、ロックレバー34を上下に操作することによって回動軸32bの軸まわりに回動する。このようなロックプレート32は、ブレーキ連結解除ペダル30の第1凸部31aや、ロッド33およびロックレバー34などと共に、左右のブレーキペダル12L,12Rの連結状態を解除するブレーキ連結解除ペダル30を操作不可の状態でロックするロック機構35を構成している。
【0031】
図5(A)に示すように、ロック機構35は、ブレーキ連結解除ペダル30が操縦作業者に踏み込まれていない場合、すなわち、ブレーキ連結解除ペダル30が基準姿勢(略水平姿勢)にある場合は、第1凸部31aが基端部30bを中心に所定角度傾斜した状態である。この状態では、ワイヤ28が引っ張られておらず、ペダル連結部25の連結片26は受け部27に嵌り込んでいるため、左右のブレーキペダル12L,12Rは連結されている。このとき、ロックレバー34が下げられた位置で固定されると、ブレーキ連結解除ペダル30を操縦作業者が踏み込もうとしても、第1凸部31aがロックプレート32の一端部32aに当接するため、左右のブレーキペダル12L,12Rの連結が解除されることはない。
【0032】
図5(B)に示すように、ロックレバー34が上げられると、ロックプレート32が回動してブレーキ連結解除ペダル30に対して踏み込み操作可能となる。ブレーキ連結解除ペダル30が操縦作業者に踏み込まれると、ワイヤ28が引っ張られて、ペダル連結部25の連結片26が引き上げられる。これにより、左右のブレーキペダル12L,12Rの連結が解除される。
【0033】
また、
図4に示すように、ブレーキ連結解除ペダル30付近には、ブレーキ連結解除ペダル30による連結操作を検出する検出部(ペダル連結操作検出スイッチ)37が設けられている。具体的には、ペダル連結操作検出スイッチ37は、ブレーキ連結解除ペダル30の基端部30bの上方に設けられており、ブレーキ連結解除ペダル30が回動すると、これに伴い第2凸部31bが回動して、第2凸部31bにアクチュエータ37aが押圧され、アクチュエータ37aを介して感知部37bが押圧される。これにより、ブレーキ連結解除ペダル30の操作によって、上述した左右のブレーキペダル12L,12Rの連結/連結解除を検出することができる。なお、
図4の例では、ブレーキ連結解除ペダル30が基本姿勢(略水平姿勢)の場合に、ペダル連結操作検出スイッチ37が押圧され、ペダル連結部25による左右のブレーキペダル12L,12Rの連結を検出する。また、ブレーキ連結解除ペダル30が傾倒姿勢の場合に、ペダル連結部25による左右のブレーキペダル12L,12Rの連結解除を検出する。
【0034】
また、
図4に示すように、ロックプレート32付近には、ロックプレート32の回転動作を検出するロック操作検出部(ロック操作検出スイッチ)38が設けられている。具体的には、ロック操作検出スイッチ38は、ロックプレート32の上方に設けられており、ロックプレート32が回動すると、これに伴い、ロックプレート32の上部に設けられた凸部39が所定角度回動して、凸部32aにアクチュエータ38aが押圧され、アクチュエータ38aを介して感知部38bが押圧される。これにより、ロック機構35によって、上述したロック/ロック解除を検出することができる。なお、
図4の例では、ロックレバー34が下げられている場合に、ペダル連結部25のロックを検出する。また、ロックレバー34が上げられている場合に、ロック操作検出スイッチ38が押圧され、ペダル連結部25のロック解除を検出する。
【0035】
次に、前記ブレーキ連結解除ペダル30の操作を規制し又は規制解除する操作規制部40について、説明する。
図5(A)、(B)において、ブレーキ連結解除ペダル30の基端部30bの近傍にペダル操作規制アクチュエータ40aと通電によって該アクチュエータ40aを作動させるソレノイド部40bを設ける。ペダル操作規制アクチュエータ40aは、ブレーキ連結解除ペダル30を構成するペダル部30aのアーム30cの下方に進出すべく常時付勢されて、前記
図5(A)に示すブレーキ連結解除ペダル30が基準姿勢(略水平姿勢)から
図5(B)に示す姿勢への踏込みを規制する。そしてソレノイド部40bが励磁されると付勢に抗してペダル操作規制アクチュエータ40aは退避動し、ブレーキ連結解除ペダル30の基端部30b回りの回動を許容する。
【0036】
トラクタ1は、
図6に示す制御部42を有し、入力情報として、前記ペダル連結操作検出スイッチ37とロック操作検出スイッチ38の情報の他、モード選択スイッチ43情報を入力する。一方出力情報として、前記ソレノイド部40bへの励磁信号がある。ところで、モード選択スイッチ43は、作業モードと非作業モードを切り替えるスイッチであり、例えば操縦席7の側方に配置されるもので、操縦作業者がトラクタ1の走行状態に見合うように作業モード又は非作業モードに切り替えることができる構成としている。モード選択スイッチ43から作業モードの設定情報を入力すると、制御部42はソレノイド部40bに励磁信号を出力するもので、これによってペダル操作規制アクチュエータ40aは退避動し、ブレーキ連結解除ペダル30のペダル部30aの踏込みが可能となる。なお、非作業モード設定の情報の場合はソレノイド部40bは非励磁でペダル操作規制アクチュエータ40aは進出すべく付勢され、ブレーキ連結解除ペダル30のペダル部30aの踏込みを規制する。
【0037】
上記のように、モード選択スイッチ43を備え、路上走行等非作業中は非作業モードに切替えて走行することで、操作規制部40でブレーキ連結解除ペダル30の操作を規制でき、路上走行時の片ブレーキ操作を規制し、安全を確保できる。
【0038】
上記の説明では、操縦作業者のスイッチ操作によってモード切替、及びペダル操作規制アクチュエータ40aの出退を行う構成としたが、この出退を自動で行わせると一層安全である。例えば、トラクタ1の車速を検出する車速センサ44と車体傾斜センサ46を備え、制御部42は、検出した車速情報からトラクタ1の車速が設定した警戒車速より低いとき或いは車体傾斜センサ46で検出した車体の前後或いは左右の傾斜角が設定した警戒傾斜角より小さいときは、前記作業モード選択と同様に、ペダル操作規制アクチュエータ40aを退避動させて、ブレーキ連結解除ペダル30のペダル部30aの踏込みを許容するが、車速が警戒車速よりも高いとき或いは車体の傾斜角が設定した警戒傾斜角より大きいときは、前記非作業モード選択と同様に、ペダル操作規制アクチュエータ40aを付勢により進出させて、ブレーキ連結解除ペダル30のペダル部30aの踏込みを規制するものである。なお、警戒車速と警戒傾斜角は、圃場条件や路面状況によって作業者が変更設定できるようにする。
【0039】
また、車速センサ44に代替して、副変速レバー16位置を検出する副変速レバー位置センサ45を備え、制御部42は、入力した副変速位置情報から副変速レバー16が低速(又は中速)位置にあるときは、前記作業モード選択と同様に、ペダル操作規制アクチュエータ40aを退避動させて、ブレーキ連結解除ペダル30のペダル部30aの踏込みを許容するが、副変速レバー16が高速位置のときは、前記非作業モード選択と同様に、ペダル操作規制アクチュエータ40aを付勢により進出させて、ブレーキ連結解除ペダル30のペダル部30aの踏込みを規制するものであっても良い。
【0040】
また、安全に左右ブレーキペダル12L,12Rを活用するために、制御部42の圃場地図データ47を持たせ、車体位置認識装置48で認識する機体位置が圃場地図データ47で圃場以外であると判定すると、ペダル連結ソレノイド49を作動させて左右ブレーキペダル12L,12Rを連結して一体でブレーキ作用するようにすると良い。
【0041】
さらに、副変速レバー16に路上走行位置を設けたりワンタッチ耕耘ダイヤルに路上走行位置を設けたりした場合に、路上走行位置にするとペダル連結規制ソレノイド49を作動させて左右ブレーキペダル12L,12Rが一体でブレーキ作用するようにすると良い。
【0042】
さらに、トラクタ1に前方地面認識カメラを設けて、地面が路上であると認識すると、ペダル連結ソレノイド49を作動させて左右ブレーキペダル12L,12Rを連結して一体でブレーキ作用するようにすることも出来る。
【0043】
このように、作業状態、非作業状態を、車速情報や副変速位置情報に基づいて制御部42に判定させることにより、操作規制部40でブレーキ連結解除ペダル30の操作を規制でき、高速走行時や車体傾斜時の片ブレーキ操作を規制し、安全を確保できたり、機体が圃場以外にある時に片ブレーキとならないように出来たりする。
【符号の説明】
【0044】
4 前輪
5 後輪
7 操縦席
12L 左ブレーキペダル
12R 右ブレーキペダル
17 シートベルト
17S シートベルトセンサ
25 ペダル連結部
40 操作規制部
42 制御部
43 モード選択スイッチ
44 車速センサ
46 車体傾斜センサ
47 圃場地図データ
48 車体位置認識装置