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特許7421711ロイシンリッチα2グリコプロテインの免疫測定方法及び測定試薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ロイシンリッチα2グリコプロテインの免疫測定方法及び測定試薬
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20240118BHJP
   G01N 33/545 20060101ALI20240118BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240118BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20240118BHJP
   G01N 33/541 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G01N33/543 581D
G01N33/545 B
G01N33/53 V
G01N33/536 F
G01N33/541
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020551153
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2019039564
(87)【国際公開番号】W WO2020075691
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2018190905
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505314022
【氏名又は名称】国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】仲 哲治
(72)【発明者】
【氏名】世良田 聡
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/088455(WO,A1)
【文献】特開2017-134067(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062557(WO,A1)
【文献】特開2019-004880(JP,A)
【文献】国際公開第2011/010673(WO,A1)
【文献】炎症性腸疾患の疾患活動性を迅速に評価する血清バイオマーカー(LRG)の共同開発,国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所,2016年,https://www.nibiohn.go.jp/information/nibio/2cf6eb2bcce3acbb7810dd7aaf78fdbc83436d80.pdf
【文献】Instruction for Use Code No Mouse LRG Assay Kit -IBL 96 Well,IBL-America, Inc.,2015年07月01日,https://www.ibl-america.com/content/elisa/27785.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
G01N 33/545
G01N 33/53
G01N 33/536
G01N 33/541
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体由来試料中のロイシンリッチα2グリコプロテイン(LRG)の免疫学的測定方法であって、
液相中で、当該試料と、少なくとも第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子とを接触させる工程を含
前記不溶性担体粒子が、平均粒子径が100nm~340nmのラテックス粒子であり、かつ、臨界凝集濃度が65mM~270mMのラテックス粒子である、前記測定方法。
【請求項2】
第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子と第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子の平均粒子径が同一である請求項に記載の測定方法。
【請求項3】
第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子が前記液相中に等量含まれている請求項1又は2に記載の測定方法。
【請求項4】
生体由来試料が血清である、請求項1~のいずれかに記載の測定方法。
【請求項5】
免疫凝集法が、ホモジーニアス法にもとづく方法である請求項1~のいずれかに記載の測定方法。
【請求項6】
前記液相中で、生体由来試料と、第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子とを接触させる工程が、次の工程である請求項1~のいずれかに記載の測定方法。
(1)液相中で、当該試料と緩衝液を含む第一試薬とを接触させる工程
(2)工程(1)の後に、第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子を含む第二試薬を液相中に添加する工程
【請求項7】
前記(1)の液相中の塩濃度が、700~900mMである請求項に記載の測定方法。
【請求項8】
さらに、LRGと抗LRGモノクローナル抗体を担持した不溶性担体粒子の複合体の凝集度合いを光学的に測定する工程を含む請求項1~のいずれかに記載の測定方法。
【請求項9】
光学的に測定する工程が、散乱光強度、吸光度又は透過光強度を光学機器で測定する工程である請求項に記載の測定方法。
【請求項10】
血液試料中のLRGを免疫学的測定法により測定するための試薬であって、少なくとも第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子を含み、
前記不溶性担体粒子が、平均粒子径が100nm~340nmのラテックス粒子であり、かつ、臨界凝集濃度が65mM~270mMのラテックス粒子である、前記試薬。
【請求項11】
第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子と第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子の平均粒子径が同一である請求項10に記載の測定試薬。
【請求項12】
第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子が等量含まれている請求項10又は11に記載の測定試薬。
【請求項13】
生体由来試料が血清である、請求項1012のいずれかに記載の測定試薬。
【請求項14】
免疫凝集法が、ホモジーニアス法にもとづく方法である請求項1013のいずれかに記載の測定試薬。
【請求項15】
血液試料中のLRGを免疫凝集法により測定するための試薬キットであって、以下を含む前記試薬キット。
(1)緩衝液を含む第一試薬
(2)第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子を含み、前記不溶性担体粒子が、平均粒子径が100nm~340nmのラテックス粒子であり、かつ、臨界凝集濃度が65mM~270mMのラテックス粒子である、第二試薬
【請求項16】
第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子と第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子の平均粒子径が同一である請求項15に記載の試薬キット。
【請求項17】
前記(2)の第二試薬が第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子を等量含む請求項15又は16に記載の試薬キット。
【請求項18】
前記(1)の第一試薬が、反応液相中の塩濃度が700~900mMとなるように塩を含む請求項1517のいずれかに記載の試薬キット。
【請求項19】
さらに、以下を含む請求項1518のいずれかに記載の試薬キット。
(3)標準抗原及び/又はコントロールとしてのLRG
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイシンリッチα2グリコプロテインの免疫測定方法及び免疫測定試薬に関する。特に、ロイシンリッチα2グリコプロテインに対する特異的親和性物質を担持させた不溶性担体粒子を用いる免疫測定方法及び免疫測定試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
ロイシンリッチα2グリコプロテイン(以下、単にLRGということがある)は、血清タンパク質の1つで、約50kDaの糖タンパク質であり、好中球から分泌されることなどが報告されている(非特許文献1)。
また、LRGが、ベーチェット病などの自己免疫疾患の検査用のバイオマーカーとして有用であることが開示されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、LRGの検出や定量測定は、プロテオーム解析や免疫学的手法により行われていたことや、免疫学的手法としては、抗LRGモノクローナル抗体を用いたELISA法、ウエスタンブロッティング法などが記載されている。
前記ELISA法の測定試薬としては、例えばHuman LRG Assay Ki-IBL(IBL社)が市販されている。このヒトLRGを測定するELISA試薬は、LRGに結合する抗体とLRGとを抗原抗体反応させ免疫複合体を形成させたのち、免疫複合体中の標識の量を測定することにより、試料中のLRG濃度を定量することが可能である。
【0004】
一般的にELISA法での測定に適する測定対象物の濃度は、pg/mL~ng/mLの範囲であるため、生体試料中に、測定対象物質がμg/mL単位の比較的高濃度で存在する場合には、測定試薬の能力を発揮できる程度まで希釈する前処理が必要であった。
また、高倍希釈による誤差を防ぐために複数段階に分けて希釈する必要があり、工程が煩雑になるという問題があった。具体的には前述の市販試薬であれば、試料中のLRG濃度として、1.56~100ng/mLの定範囲に入るように希釈する必要があった。当該希釈は、例えば潰瘍性大腸炎の際に起こりうるヒト血清中の濃度の最高値が100μg/mLであれば、1000倍もの希釈が必要であることを意味している。
【0005】
また、これまでのLRG測定ELISA試薬においては、測定対象試料と固相抗体を長時間反応させる必要があった。例えば前述の市販キットでは、固相抗体と試料を接触させる一次反応に一晩を要し、これまで試料中のLRGを短時間で測定できる試薬は存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-286279号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】J Leukoc Biol.2002,72(3),478-85,2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、生体試料中のLRGを簡便かつ、短時間で測定できる測定方法及び測定用試薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し、当該試料と、第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子とを接触させる免疫学的測定法、具体的には免疫凝集法において、試薬組成を工夫することにより、希釈等の前処理を必要とせず、簡便かつ短時間で、生体試料中のLRGを測定できることを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
<1>生体由来試料中のロイシンリッチα2グリコプロテイン(LRG)の免疫学的測定方法であって、
液相中で、当該試料と、少なくとも第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子とを接触させる工程を含む、前記測定方法。
<2>不溶性担体粒子が、平均粒子径が100nm~340nmのラテックス粒子である<1>に記載の測定方法。
<3>不溶性担体粒子が、臨界凝集濃度が65mM~270mMのラテックス粒子である<1>又は<2>に記載の測定方法。
<4>第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子と第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子の平均粒子径が同一である<1>~<3>のいずれかに記載の測定方法。
<5>第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子が前記液相中に等量含まれている<1>~<4>のいずれかに記載の測定方法。
<6>生体由来試料が血清である、<1>~<5>のいずれかに記載の測定方法。
<7>免疫凝集法が、ホモジーニアス法にもとづく方法である<1>~<6>のいずれかに記載の測定方法。
<8>前記液相中で、生体由来試料と、第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子とを接触させる工程が、次の工程である<1>~<7>のいずれかに記載の測定方法。
(1)液相中で、当該試料と緩衝液を含む第一試薬とを接触させる工程
(2)工程(1)の後に、第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子を含む第二試薬を液相中に添加する工程
<9>前記(1)の液相中の塩濃度が、700~900mMである<8>に記載の測定方法。
<10>さらに、LRGと抗LRGモノクローナル抗体を担持した不溶性担体粒子の複合体の凝集度合いを光学的に測定する工程を含む<1>~<9>のいずれかに記載の測定方法。
<11>光学的に測定する工程が、散乱光強度、吸光度又は透過光強度を光学機器で測定する工程である<10>に記載の測定方法。
<12>血液試料中のLRGを免疫学的測定法により測定するための試薬であって、少なくとも第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子を含む前記試薬。
<13>不溶性担体粒子が、平均粒子径が100nm~340nmのラテックス粒子である<12>に記載の測定試薬。
<14>不溶性担体粒子が、臨界凝集濃度が65mM~270mMのラテックス粒子である<12>又は<13>に記載の測定試薬。
<15>第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子と第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子の平均粒子径が同一である<12>~<14>のいずれかに記載の測定試薬。
<16>第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子が等量含まれている<12>~<15>のいずれかに記載の測定試薬。
<17>生体由来試料が血清である、<12>~<16>のいずれかに記載の測定試薬。
<18>免疫凝集法が、ホモジーニアス法にもとづく方法である<12>~<17>のいずれかに記載の測定試薬。
<19>血液試料中のLRGを免疫凝集法により測定するための試薬キットであって、以下を含む前記試薬キット。
(1)緩衝液を含む第一試薬
(2)第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子を含む第二試薬
<20>不溶性担体粒子が、平均粒子径が100nm~340nmのラテックス粒子である<19>に記載の試薬キット。
<21>不溶性担体粒子が、臨界凝集濃度が65mM~270mMのラテックス粒子である<19>又は<20>に記載の試薬キット。
<22>第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子と第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子の平均粒子径が同一である<19>~<21>のいずれかに記載の試薬キット。
<23>前記(2)の第二試薬が第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子を等量含む<19>~<22>のいずれかに記載の試薬キット。
<24>前記(1)の第一試薬が、反応液相中の塩濃度が700~900mMとなるように塩を含む<19>~<23>のいずれかに記載の試薬キット。
<25>さらに、以下を含む<19>~<24>のいずれかに記載の試薬キット。
(3)標準抗原及び/又はコントロールとしてのLRG
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より簡便かつ、短時間で結果が得られる生体試料中のLRGの測定方法及び測定用試薬が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】処方例1の第一試薬と第二試薬を組み合わせ、自動分析装置を用いて、各既知濃度のLRGを含む試料を測定した結果を示すグラフである。
図2】処方例2の第一試薬と第二試薬を組み合わせ、自動分析装置を用いて、各既知濃度のLRGを含む試料を測定した結果を示すグラフである。
図3】処方例3の第一試薬と第二試薬を組み合わせ、自動分析装置を用いて、各既知濃度のLRGを含む試料を測定した結果を示すグラフである。
図4】処方例4の第一試薬と第二試薬を組み合わせ、自動分析装置を用いて、各既知濃度のLRGを含む試料を測定した結果を示すグラフである。
図5】処方例5の第一試薬と第二試薬を組み合わせ、自動分析装置を用いて、各既知濃度のLRGを含む試料を測定した結果を示すグラフである。
図6】処方例6の第一試薬と第二試薬を組み合わせ、自動分析装置を用いて、各既知濃度のLRGを含む試料を測定した結果を示すグラフである。
図7】健常者検体及び患者検体を用いてに本発明の測定方法により血清中のLRG濃度を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(免疫凝集法)
免疫凝集法は、抗原あるいは抗体等の測定対象に対する特異的親和性物質を固定化した不溶性担体粒子を用いて、抗原や抗体を測定する免疫測定法の1種であり、臨床検査の分野で広く使用されている。不溶性担体粒子としてはラテックスなどが主に用いられ、その場合を特に、ラテックス免疫凝集法(LTIA)という。
【0013】
LTIAによりLRGを測定する方法としては、LRGに対するモノクローナル抗体を固定化したラテックス粒子と、抗原であるLRGとを反応させ、サンドイッチ型の免疫複合体を形成させ、免疫複合体形成に伴う当該ラテックス粒子の凝集の程度からLRGを測定する方法と、抗原を固定化したラテックス粒子と試料中のLRGとを競合させて、当該ラテックス粒子と抗体との免疫複合体の形成を阻害し、免疫複合体の形成阻害に伴う当該ラテックス粒子の凝集阻害の程度からLRGを測定する方法に大別することができる。
【0014】
(試料)
本発明における試料は、生体試料であれば特に限定はされないが、典型的には血液試料であり、例えば全血、血清、血漿が挙げられる。血漿としてはヘパリン血漿、EDTA血漿なども含まれる。
【0015】
(測定対象物質)
本発明における測定対象物質は、ロイシンリッチα2グリコプロテイン(LRG)である。
【0016】
(測定方法)
LTIAに代表される免疫凝集の測定方法としては、生じた凝集の程度を光学的あるいは電気化学的に観察することにより被検物質を測定できる。光学的に観察する方法としては、散乱光強度、吸光度、又は透過光強度を光学機器で測定する方法(エンドポイント法、レート法等)が挙げられる。試料を測定して得た吸光度等の測定値を、標準物質(LRGの濃度が既知の試料)を測定して得た吸光度等の測定値と比較して、試料中に含まれていたLRGの濃度(定量値)を算出する。なお、透過光又は散乱光などの吸光度等の測定は、1波長測定であっても、又は2波長測定(2つの波長による差又は比)であってもよい。測定波長は、500nmから800nmの中から選ばれるのが一般的である。
【0017】
本発明の試料中のLRGの測定は、用手法により行ってもよいし、又は測定装置等の装置を用いて行ってもよい。測定装置は、汎用自動分析装置であっても、専用の測定装置(専用機)であってもよい。 また、この測定は、2ステップ法(2試薬法)等の複数の操作ステップにより行う方法によって実施することが好ましい。
【0018】
(抗LRGモノクローナル抗体)
本発明のモノクローナル抗体は、当業者に周知の方法によって取得することができる。すなわち、抗原としてヒトLRGをリン酸緩衝生理食塩水などの溶媒に溶解し、この溶液を動物に投与して免疫することによりに容易に製造できる。必要に応じて前記溶液に適宜のアジュバントを添加した後、エマルジョンを用いて免疫を行ってもよい。アジュバントとしては、油中水型乳剤、水中油中水型乳剤、水中油型乳剤、リポソーム、水酸化アルミニウムゲルなどの汎用されるアジュバントのほか、生体成分由来のタンパク質やペプチド性物質などを用いてもよい。例えば、フロイントの不完全アジュバント又はフロイントの完全アジュバントなどを好適に用いることができる。アジュバントの投与経路、投与量、投与時期は特に限定されないが、抗原を免疫する動物において所望の免疫応答を増強できるように適宜選択することが望ましい。
【0019】
免疫に用いる動物の種類も特に限定されないが、哺乳動物が好ましく、例えばマウス、ラット、ウシ、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどを用いることができ、より好ましくはマウスを用いることができる。動物の免疫は、一般的な手法に従って行えばよく、例えば、抗原の溶液、好ましくはアジュバントとの混合物を動物の皮下、皮内、静脈、又は腹腔内に注射することにより免疫を行うことができる。免疫応答は、一般的に免疫される動物の種類及び系統によって異なるので、免疫スケジュールは使用される動物に応じて適宜設定することが望ましい。抗原投与は最初の免疫後に何回か繰り返し行うことが好ましい。
【0020】
モノクローナル抗体を得る場合、引き続き以下の操作が行われるが、それに限定されることはなく、モノクローナル抗体それ自体の製造方法については、例えば、Antibodies,A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor LaboratoryPress,(1988))に記載の方法に準じて行うことができる。
【0021】
最終免疫後、免疫した動物から抗体産生細胞である脾臓細胞あるいはリンパ節細胞を摘出し、高い増殖能を有するミエローマ細胞と細胞融合させることによりハイブリドーマを作製することができる。細胞融合には抗体産生能(質・量)が高い細胞を用いることが好ましく、またミエローマ細胞は、融合する抗体産生細胞の由来する動物と適合性があることが好ましい。細胞融合は、当該分野で公知の方法に従って行うことができるが、例えば、ポリエチレングリコール法、センダイウイルスを用いた方法、電流を利用する方法などを採用することができる。得られたハイブリドーマは、公知の方法に従って増殖させることができ、産生される抗体の性質を確認しつつ所望のハイブリドーマを選択することができる。ハイブリドーマのクローニングは、例えば限界希釈法や軟寒天法などの公知の方法により行うことが可能である。
【0022】
第一及び第二のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの選択について説明する。ハイブリドーマの選択は、産生される抗体が実際の測定に用いられる条件を考慮し、選択の段階で効率的に行うこともできる。例えば、ELISA法、RIA法、Biacore法等により、ヒトLRGに反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択することにより得られる。具体的には、まず、培養上清中のモノクローナル抗体を、固相化したヒトLRGと反応させ、次いで標識抗IgG抗体を反応させる抗原固相化ELISA法により、ヒトLRGに対し高い反応性を有するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択する。
【0023】
このようにして選別されたハイブリドーマを大量培養することにより、所望の特性を有するモノクローナル抗体を製造することができる。大量培養の方法は特に限定されないが、例えば、ハイブリドーマを適宜の培地中で培養してモノクローナル抗体を培地中に産生させる方法や、哺乳動物の腹腔内にハイブリドーマを注射して増殖させ、腹水中に抗体を産生させる方法などを挙げることができる。モノクローナル抗体の精製は、例えば陰イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、硫安分画法、PEG分画法、エタノール分画法などを適宜組み合わせて行うことができる。
【0024】
本発明の抗体としては、抗体分子全体のほかに抗原抗体反応活性を有する抗体の機能性断片を使用することも可能であり、前記のように動物への免疫工程を経て得られたもののほか、遺伝子組み換え技術を使用して得られるものや、キメラ抗体を用いることも可能である。抗体の機能性断片としては、例えば、F(ab’)、Fab’などが挙げられ、これらの機能性断片は前記のようにして得られる抗体をタンパク質分解酵素(例えば、ペプシンやパパインなど)で処理することにより製造できる。
【0025】
(不溶性担体粒子)
本発明に用いる不溶性担体粒子としては、抗LRGモノクローナル抗体を担持でき、試料中のLRGの測定ができるような不溶性担体粒子であればよく、例えば、ラテックス粒子、磁性粒子、金属粒子等が挙げられるが、このうちでもラテックス粒子が好ましい。
不溶性担体粒子の平均粒子径及び臨界凝集濃度は、LRGの試料中での濃度あるいは測定機器の検出感度などを考慮し、適宜選択される。
不溶性担体粒子の平均粒子径は、好ましくは100nm~340nm、より好ましくは150nm~260nmである。
また、不溶性担体粒子の臨界凝集濃度は、好ましくは65mM~270mM、より好ましくは150mM~270mMのものが適宜選択される。
【0026】
(ラテックス粒子)
本発明に用いる不溶性担体粒子の好ましい例であるラテックス粒子としては、免疫学的測定試薬として一般的に用いられているラテックス粒子であれば特に制限されない。ラテックス粒子は、種々のモノマーを重合又は共重合させることによって得ることができる。ここにモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン,o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、4-ビニル安息香酸、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等のフェニル基を有する重合性単量体、スチレンスルホン酸塩、ジビニルベンゼンスルホン酸塩、o-メチルスチレンスルホン酸塩、p-メチルスチレンスルホン酸塩等のフェニル基及びスルホン酸塩を有する重合性単量体、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、(メタ)アクリル酸α-ナフチル、(メタ)アクリル酸β-ナフチル等のナフチル基を有する重合性単量体などの重合性不飽和芳香族類、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等の重合性不飽和カルボン酸類、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレングリコール-ジ-(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル等の重合性不飽和カルボン酸エステル類、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等の不飽和カルボン酸アミド類、重合性不飽和ニトリル類、ハロゲン化ビニル類、共役ジエン類等を挙げることができる。これらのモノマーは、要求される表面特性、比重等によって適宜選択され、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0027】
ラテックス粒子の平均粒子径は、レーザー回析・散乱法(LS法)、コールター原理、動的光散乱光子相関法、電子顕微鏡などで解析することができる。
【0028】
ラテックス粒子の平均粒子径は、好ましくは100nm~340nm、より好ましくは150nm~260nmのものが適宜選択される。100nm未満では、低濃度から中濃度域の感度が低下し正確な測定がしづらく、また、340nmを超えると低濃度側の感度は上がるものの高濃度側ではいわゆるフック現象が起きてしまい実濃度より低い値が出るという現象が起きるからである。
【0029】
ラテックス粒子の臨界凝集濃度とは、ラテックスが凝集しない塩の最大濃度のことであり、抗体が感作されていないラテックス粒子に段階的に塩を加え、完全に自己凝集する塩濃度を求め、その濃度の1段階薄い塩濃度をいう。例えば、リン酸ナトリウム水溶液(pH7.4)10mMごと、10~400mMの範囲で準備し、各濃度のリン酸ナトリウム水溶液に、ラテックス粒子を最終濃度1%(W/V)になる量を投入して攪拌する。1分間経過後に目視確認してラテックスが自己凝集しているか否か確認し、完全に自己凝集する濃度の1段階薄いリン酸ナトリウム水溶液濃度を臨界凝集濃度(最大非凝集濃度)とする。
【0030】
ラテックス粒子の臨界凝集濃度(リン酸ナトリウム水溶液濃度)は、好ましくは65mM~270mM、より好ましくは150mM~270mMのものが適宜選択される。65mM未満では、ラテックス粒子の分散を保つことが難しく、270mM以上では、免疫反応が起こりづらく、凝集しない。
ラテックス粒子の臨界凝集濃度は、原料の重量比を適宜変更することにより調整することができる。例えば、スチレンラテックスは、スチレンなどのフェニル基を有する重合性単量体の所定量と所定量のスチレンスルホン酸ナトリウムなどのフェニル基とスルホン酸塩とを有する重合性単量体とを、水系媒体中で共重合させることにより得られるが、この場合のスチレンとスチレンスルホン酸ナトリウムの混合比を変更することで臨界凝集濃度を調製することができる。
【0031】
使用されるラテックス粒子は、感度向上等の所望の性能を得るため、材質や粒子径を適宜選択することができ、材質や粒子径が異なるものを組み合わせて使用することもできる。
また、本発明における凝集反応測定時のラテックス粒子の濃度は特に制限がなく、所望の感度や性能に応じて適宜設定することができる。
【0032】
(抗LRGモノクローナル抗体を担持した不溶性担体粒子)
LRGに対する抗体は、物理的吸着(疎水結合)法、化学的結合法又はこれらの併用等の公知の方法によりラテックス粒子などの不溶性担体粒子に固定化して担持させることができる。以下、不溶性担体粒子の代表例としてラテックスを例に説明する。
物理的吸着法による場合は、公知の方法に従い、LRGに対する抗体と、ラテックス粒子とを、緩衝液等の溶液中で混合し接触させたり、又は緩衝液等に溶解したLRGに対する抗体を、担体に接触させること等により行うことができる。
【0033】
また、化学的結合法により行う場合は、日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ-技術と応用-」,臨床病理刊行会,1983年発行;日本生化学会編「新生化学実験講座1 タンパク質IV」,東京化学同人,1991年発行等に記載の公知の方法に従い、LRGに対する特異的結合物質と、担体とを、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、イミドエステル又はマレイミド等の二価性の架橋試薬と混合、接触させ、LRGに対する特異的結合物質と、担体の、それぞれのアミノ基、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基又は水酸基等と前記の二価性の架橋試薬とを反応させること等により行うことができる。
【0034】
ラテックス粒子が担持する特定物質に対する抗体は、サンドイッチを形成するために少なくとも2種類であることを要する。すなわち、抗LRGモノクローナル抗体としては、認識部位の異なる2以上のモノクローナル抗体を用いる。
また、第一のモノクローナル抗体と第二のモノクローナル抗体は、それぞれ別の不溶性担体粒子に担持されていることを要する。
本発明において、第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子の濃度は、前述のとおり所望の感度や性能に応じて適宜設定することができるが、反応液相中において等量含まれていることが好ましい。
また、本発明において、第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子と第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子の平均粒子径は前述のとおりそれぞれ100nm~340nmであることが好ましく、両平均粒子径は同程度であることが好ましく、同一であることがよりいっそう好ましい。同程度とは一方の平均粒子径が他方の平均粒子径の80~120%の範囲に含まれることをいい、同一であるとは、一方の平均粒子径が他方の平均粒子径の90~110%の範囲に含まれることをいう。
【0035】
なお、ラテックス粒子の自然凝集や、非特異的反応等を抑制するために処理を行う必要があれば、ラテックス粒子の表面に、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ゼラチン、卵白アルブミン若しくはその塩などのタンパク質、界面活性剤又は脱脂粉乳等を接触させ被覆させること等の公知の方法により処理して、担体のブロッキング処理(マスキング処理)を行ってもよい。
【0036】
(接触)
液相中で、LRGを含む試料と、抗LRGモノクローナル抗体を担持するラテックス粒子とを接触させるとは、典型的には、以下の(1)~(4)が挙げられる。
(1)当該試料と緩衝液を混合した後、この混合液に第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持するラテックス粒子と第二の抗LRGモノクローナル抗体とを混合する態様、
(2)当該試料、緩衝液、並びに、第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持するラテックス粒子と第二の抗LRGモノクローナル抗体抗LRGモノクローナル抗体を担持するラテックス粒子、を同時に混合する態様、
(3)当該試料と緩衝液を混合した後、第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持するラテックス粒子を混合し、次に、第二の抗LRGモノクローナル抗体抗LRGモノクローナル抗体を担持するラテックス粒子を混合する態様
(4)(1)~(3)において当該試料を最後に添加して混合する態様
【0037】
(測定用試薬)
本発明の測定用試薬は、血液試料中のLRGを免疫凝集法により測定するための試薬であって、少なくとも第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子を含む。典型的には、2つ以上の構成試薬により構成され、少なくとも1つの構成試薬は抗LRGモノクローナル抗体を担持するラテックス粒子を含み、別の構成試薬は緩衝液を含む。また、本発明の測定用試薬は、液状の試薬である。
【0038】
本発明の測定用試薬は、このうちでも第一試薬と第二試薬とからなる2試薬型が好ましい。例えば、2試薬型の第一試薬は、LRGを含む生体由来試料を希釈するための緩衝液を含み、第二試薬は、第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持するラテックス粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持するラテックス粒子を含む試液である。
【0039】
また、本発明の測定用試薬が、第一試薬、第二試薬と第3試薬からなる3試薬型である場合、例えば、第一試薬は、緩衝液等を含み、第二試薬は、第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持するラテックス粒子を含む試液、第3試薬は、第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持するラテックス粒子を含む試液である。
【0040】
本発明の測定試薬に含まれる緩衝液としては、一般的に使用されるものであればよく、例えばトリス塩酸、ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、フタル酸、グルタル酸、マレイン酸、グリシン及びそれらの塩などや、MES、Bis-Tris、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、BES、MOPS、TES、HEPES等のグット緩衝液などが挙げられる。
緩衝液成分の濃度は、試薬中の不溶性担体粒子の自然凝集が起こらず、かつ、所望の免疫反応が行われる濃度範囲であればよく、反応溶液中において100mM以上あればよく、好ましくは200mM以上、さらに好ましくは300mM以上、よりいっそう好ましくは400mM以上である。
【0041】
本発明の測定試薬は、さらに塩を含むことが望ましい。塩の種類としては、無機塩が望ましく、無機塩としては塩化ナトリウム、塩化カルシウム等を挙げることができる。
塩濃度は、試薬中の不溶性担体粒子の自然凝集が起こらず、かつ、所望の免疫反応が行われる濃度範囲であればよく、濃度の下限は、反応液中において100mM以上あればよく、好ましくは300mM以上、さらに好ましくは500mM以上、よりいっそう好ましくは700mM以上である。また、濃度の上限としては、反応液中において2000mM以下が好ましく、さらに好ましくは1500mM以下、よりいっそう好ましくは1000mM以下、もっとも好ましくは900mM以下である。
また、濃度の範囲は、反応液中において、好ましくは100~1500mMであり、さらに好ましくは300~1000mMであり、よりいっそう好ましくは500~1000mMであり、もっとも好ましくは700~900mMである。
【0042】
本発明の測定試薬の測定可能な範囲(測定レンジ)は、LRGを診断用マーカーとして測定するためには、10~80μg/mL程度あればよく、望ましくは5.0~100μg/mLである。
【0043】
(試薬キット)
本発明の試薬キットは、少なくとも下記(1)および(2)の要素を含むことを特徴とする。
(1)緩衝液を含む第一試薬
(2)少なくとも第一の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子及び第二の抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子を含む第二試薬
また、本発明の試薬キットには、上記測定試薬のほかに、(3)標準抗原又はコントロールとしてのLRGを含むことができる。
また、試料を前処理するための試料前処理試薬が含まれていてもよい。試料前処理試薬は(1)の緩衝液を含む第一試薬に含ませておくこともできるし、(1)、(2)とは別の試薬構成として含むこともできる。
またさらに、使用説明書、試料採取用具(採取ピペット、シリンジ、綿棒、ろ過フィルターなど)、試料希釈液、試料抽出液を含むことができる。
【0044】
(ホモジーニアス法)
本発明においてホモジーニアス法とは、試料と試薬液の混和溶液(反応液)中で進行する反応をB/F(結合/非結合)分離を行うことなく特異的に検出する測定法を指し、B/F分離操作によって測定反応に関与しなかった余剰成分を完全に洗浄・除去した後、主反応を進行させて検出するヘテロジーニアス測定法と対比して呼称される測定法のことをいう。したがって、本発明でいう「免疫凝集法が、ホモジーニアス法にもとづく方法である」とは、典型的な下記(1)~(3)の工程において、
(1)液相中で、試料と緩衝液とを接触させる工程
(2)(1)工程の後に、抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子を液相中に添加する工程
(3)(2)の工程の後に、LRGと当該不溶性担体粒子の凝集反応を測定する工程
(3)の工程は、「(2)の工程の途中、あるいは(2)の工程の後に、洗浄・分離工程を経ることなく当該LRGと当該不溶性担体粒子の凝集反応を測定する工程」であることを意味する。
【0045】
(その他の試薬成分)
本発明の試薬は、不溶性担体粒子の凝集形成を増強する成分としてポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、リン脂質ポリマーなどの高分子を含んでもよい。また、凝集の形成をコントロールする成分として、タンパク質、アミノ酸、糖類、金属塩類、界面活性剤類、還元性物質やカオトロピック物質など汎用される成分を1種類、または複数の成分を組み合わせて含んでもよい。
【実施例
【0046】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0047】
〔試験例1〕
LRG濃度測定における不溶性担体粒子の粒子径を変更し、濃度依存的な吸光度変化がみられるかどうか、また、検量線の作成が可能かどうかを調べた。
1.試薬
(1)第一試薬
以下に示す成分を含み、pHを6.5~7.5に調整した。
・HEPES
・1M NaCl
・1.0% BSA
・0.05% Proclin950
【0048】
(2)第二試薬
(2-1)処方例1
下記の2種類の抗LRGモノクローナル抗体感作ラテックス粒子溶液を等量混合し、10mM HEPES緩衝液(pH7.2)で波長570nmの吸光度が4.5Abs.となるように希釈して第二試薬とした。
【0049】
(i)第一の抗LRGモノクローナル抗体(Kan10)感作ラテックス粒子溶液
平均粒子径343nm、臨界凝集濃度60mMの1%ポリスチレンラテックス溶液(20mMグリシン緩衝液)に、等量の50mMグリシン緩衝液で0.71mg/mLに希釈した抗LRGモノクローナル抗体(Kan10)溶液を添加して4℃2時間攪拌した。その後、等量の合成ポリマー(BlockmasterCE210 JSR社製)を添加して4℃、1時間攪拌した。その後、精製水に溶解させた10%BSA液を1/10量添加して4℃、1時間攪拌し、抗LRGモノクローナル抗体(Kan10)感作ラテックス溶液を作製した。
【0050】
(ii)第二の抗LRGモノクローナル抗体感作ラテックス粒子溶液
平均粒子径343nm、臨界凝集濃度60mMのポリスチレンラテックスを用いて上記(i)と同じ方法により抗LRGモノクローナル抗体(Kan11)感作ラテックス粒子溶液を作製した。
【0051】
(iii)ラテックス粒子の物理的性質
(a)ラテックス粒子の粒子径の測定方法
レーザー回析・散乱法粒度分布装置LS13320(ベックマンコールター社製)でラテックス粒子径を解析した。
(b)ラテックス粒子の臨界凝集濃度の測定方法
リン酸ナトリウム水溶液(pH7.4)を10~400mMの範囲で10mMごとに準備し、各濃度のリン酸ナトリウム水溶液に、ラテックス粒子を最終濃度1%(W/V)になる量を投入して攪拌した。次に、1分間経過後にラテックスが自己凝集しているか否かを目視で確認し、完全に自己凝集する濃度の1段階薄いリン酸ナトリウム水溶液濃度を臨界凝集濃度とした。
【0052】
(2-2)処方例2~6
処方例1のラテックス粒子を以下のように変更した以外は同様に行った。
処方例2:平均粒子径305nm、臨界凝集濃度70mM
処方例3:平均粒子径251nm、臨界凝集濃度260mM
処方例4:平均粒子径207nm、臨界凝集濃度180mM
処方例5:平均粒子径194nm、臨界凝集濃度230mM
処方例6:平均粒子径121nm、臨界凝集濃度210mM
【0053】
2.被検試料
生理食塩水に精製LRG(Bio Vendor Laboratory medicine社製)を0、5.0、10.0、23.0,50.0,100.0μg/mLとなるように添加した。
【0054】
3.測定方法
各処方例の第一試薬と第二試薬を組み合わせ、日立7180形自動分析装置を用いて、各既知濃度のLRGを含む試料を測定した。具体的には、試料2.5μLに第一試薬150μLを加えて37℃で5分間保温した後、第二試薬50μLを加えて攪拌した。凝集形成に伴う吸光度変化を、その後5分間にわたり、主波長570nm、副波長800nmで測定し、その吸光度変化量を測定した。各吸光度測定値から検量線を作成し、R(決定係数)を求めた。
【0055】
4.測定条件
日立7180形自動分析装置のパラメータ条件を以下に示す。
(1)液量 検体―第一試薬―第二試薬;2.5μL-150μL-50μL
(2)分析法 2ポイントエンド法(測光ポイント19-34)
(3)測定波長 主波長570nm/副波長800nm
(4)キャリブレーション スプライン
【0056】
5.測定結果及び考察
結果を図1図6に示す。
本結果によれば、処方例1は高濃度のLRG濃度(100μg/ml)ではフック現象がみられたが、低~中濃度では、濃度依存的に吸光度が上昇した。また、処方例2~6は、低濃度~高濃度で濃度依存的に吸光度が上昇し、Rも0.99以上であった。このうちでも特に処方例3,4,5はRが極めて良好で0.996以上であった。
以上より、ラテックス粒子の平均粒子径は、100nm~340nmであればヒト血清中のLRG濃度分布を網羅する濃度範囲で正確な測定が可能であり、そのうちでも150nm~260nmであればより高度な正確性をもった測定が可能であることがわかった。
また、臨界凝集濃度は65mM~270mMであればヒト血清中のLRG濃度分布を網羅する濃度範囲で正確な測定が可能であり、そのうちでも150mM~270mMであればより高度な正確性をもった測定が可能であることがわかった。
【0057】
〔試験例2〕
実検体に近い検体の測定ができるかどうかを調べるために、プール血清に精製LRGを添加して既知濃度のLRG模擬検体を調製し、LRGの濃度測定を行った。
1.試薬
試験例1の処方例2~6の試薬を用いた。
【0058】
2.被検試料
(1)プール血清をパネル検体Lとした。
(2)プール血清に精製LRGを28.2μg/mLとなるように添加し、パネル検体Mとした。
(3)プール血清に精製LRGを63.1μg/mLとなるように添加し、パネル検体Hとした。
【0059】
3.測定方法および測定条件
試験方法及び測定条件は試験例1に同じである。試験例1で求めた検量線で各パネル検体の濃度を求め、また、既知濃度との相対比(%)を算出した。
【0060】
4.測定結果及び考察
結果を表1に示す。
本結果によれば、処方例2~6の試薬で実検体に近い模擬検体でも正確な測定ができることがわかった。特に、処方例3~5は既知濃度に対する相対比が99%という極めて高い正確性を有していた。
以上より、ラテックス粒子の平均粒子径は100nm~340nm、であれば正確な測定が可能であり、そのうちでも150nm~260nm、であればより高度な正確性をもった測定が可能であることがわかった。
また、ラテックスの臨界凝集濃度は、65mM~270mMであれば正確な測定が可能であり、そのうちでも150mM~270mMであればより高度な正確性をもった測定が可能であることがわかった
【0061】
【表1】
【0062】
〔試験例3〕
健常者検体及び患者検体を用いて本発明の測定方法によってマーカーとしてLRGの測定ができることを確認した。
1.試薬
試験例1の処方例5の試薬を用いた。
【0063】
2.被検試料
(1)健常者の血清検体
PROMEDDEX社より購入した7検体
(2)潰瘍性大腸炎患者(軽度(寛解期))の血清検体
Bioreclamtion社より購入した13検体
(3)潰瘍性大腸炎患者(重度(活動期))の血清検体
Bioreclamtion社及びProteogenex社より購入した5検体
【0064】
3.測定方法および測定条件
試験例1に同じである。
【0065】
4.測定結果および考察
結果を図7に示す。
本結果によれば、健常者、軽度及び重度の潰瘍性大腸炎患者の検体中のLRGの測定が可能であり、これらの状態を区別可能なマーカーとしての測定ができることがわかった。
したがって、本発明測定試薬は診断薬としての役割を果たすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、液相中で、LRGを含む生体試料と、抗LRGモノクローナル抗体を担持する不溶性担体粒子を接触させ、凝集度合いを測定することにより、簡便で、かつ、短時間で結果が得られる生体試料中のLRGの測定方法及び測定試薬を提供することができた。本発明の測定方法及び測定試薬は、汎用の自動分析装置にも適用することができるため、LRGをより簡単かつ大量に同時測定することが可能となった。
したがって、LRGをバイオマーカーとして簡単かつ短時間で定量することができ、炎症性腸疾患などの疾患活動性の評価を容易に行うことができるようになった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7