(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】テントサウナセット及びサウナ用テント
(51)【国際特許分類】
A61H 33/06 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
A61H33/06 L
(21)【出願番号】P 2023185595
(22)【出願日】2023-10-30
【審査請求日】2023-10-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523409430
【氏名又は名称】エコマテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100226997
【氏名又は名称】辻 知英
(74)【代理人】
【識別番号】100221291
【氏名又は名称】青井 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸明
【審査官】五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-052829(JP,U)
【文献】米国特許第6510565(US,B1)
【文献】中国実用新案第201267605(CN,Y)
【文献】韓国登録実用新案第20-0430034(KR,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0367929(US,A1)
【文献】人生に遊びとサウナを,OLTAS INC.,2021年,https://web.archive.org/web/20211210074425/https://oltas.jp/noppasauna
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00-33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サウナ用テントと電気式ヒーターを備えるテントサウナセットであって、
前記サウナ用テントは、展張後に前記電気式ヒーターによって暖められる閉空間を形成するインナーテントと、該インナーテントの外側に展張されるアウターテントを備え、該アウターテントの内側に隙間を形成して前記インナーテントを取り付けるテントであって、
前記インナーテント及び前記アウターテントは、それぞれ天面、底面及び少なくとも1枚以上の側面のテント布がそれぞれ閉空間を形成するように連結され、各テント布は、断熱シートと、防水防湿シートと、前記断熱シート及び前記防水防湿シートで挟まれる保温層の少なくとも3層以上の多層構造で形成されており、
前記電気式ヒーターは、前記サウナ用テントの内部に設置可能であり、一般家庭用の交流100ボルトコンセントから供給される定格電力が1000~1500ワットであり、
前記インナーテントの内容積が2.6立方メートル以下である
ことを特徴とするテントサウナセット。
【請求項2】
前記インナーテント及び前記アウターテントは、前記天面、前記底面及び4枚の側面がそれぞれ四辺形のテント布を略直方体又は略立方体の形状を構成するように連結して形成されており、
前記アウターテントの前記天面及び前記4枚の側面の各テント布には、それぞれ4本のフレームが中央から4つの角部に向かって配され、前記4本のフレームが各テント布の中央部に取り付けられた連結具で折りたたみ可能に連結されてテント布に一体形成され、前記天面及び前記4枚の側面の各テント布の中央部がテント外側に引っ張られることによって各テント布が展張され、前記天面及び前記4枚の側面の各テント布がすべて展張されることによって、前記アウターテントを展張状態で固定可能であって、
前記アウターテントの前記天面及び前記4枚の側面の各テント布のテント内面の中央部には前記インナーテントを取り付けるための複数の第1の取付部が形成されており、該複数の第1の取付部に、前記インナーテントの前記天面及び前記4枚の側面の各テント布のテント外側面の前記アウターテントの前記複数の第1の取付部に対応する位置に形成されている複数の第2の取付部を取り付けて前記インナーテントを展張可能とし、
前記アウターテント及び前記インナーテントの展張状態において、該アウターテント及び前記インナーテントの前記天面及び前記4枚の側面の各テント布には略四角錐状の凸面が形成され、前記天面のテント布における略四角錐部の高さは前記4枚の側面のテント布における略四角錐部の高さの少なくとも1.5倍以上である
ことを特徴とする請求項1に記載のテントサウナセット。
【請求項3】
前記アウターテントの第1の側面のテント布において、該テント布の中央部に形成された前記連結具から、前記第1の側面に隣接する第2の側面との連結辺の両端部に向かう2本の前記フレームに沿って設けられたファスナーによって前記連結辺を軸にして略くの字に開閉可能な第1の出入口部を備え、
前記第1の出入口部を備える前記アウターテントの前記第1の側面に対応する前記インナーテントの側面のテント布に前記第1の出入口部に対応する位置に該第1の出入口部に対応した第2の出入口部を備える
ことを特徴とする請求項2に記載のテントサウナセット。
【請求項4】
前記インナーテント及び前記アウターテントの各テント布は、グラフェン素材が織り込まれたアルミ系の前記断熱シートと、オックスフォード生地で製造された前記防水防湿シートと、前記断熱シートと前記防水防湿シートの間に挟まれる空間に中綿を充填した前記保温層がキルティング加工されて3層構造を成しており、
前記各テント布には前記キルティング加工により複数の格子状区画が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のテントサウナセット。
【請求項5】
前記インナーテントの前記底面のテント布は、該インナーテントの前記少なくとも1枚以上の側面のテント布とファスナーを用いて着脱可能に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のテントサウナセット。
【請求項6】
前記アウターテントの前記底面のテント布は、該アウターテントの前記少なくとも1枚以上の側面のテント布とファスナーを用いて着脱可能に連結されることを特徴とする請求項1に記載のテントサウナセット。
【請求項7】
前記アウターテントの前記底面のテント布は、該アウターテントの前記少なくとも1枚以上の側面のテント布に巻き込み仕様で連結されることを特徴とする請求項1に記載のテントサウナセット。
【請求項8】
テント内部に電気式ヒーターを設置可能なサウナ用テントであって、
前記サウナ用テントは、一般家庭用の交流100ボルトコンセントから供給される前記電気式ヒーターによって暖められる閉空間を形成するインナーテントと、該インナーテントの外側に展張されるアウターテントを備え、該アウターテントの内側に隙間を形成して前記インナーテントを取り付けるテントであって、
前記インナーテント及び前記アウターテントは、それぞれ天面、底面及び少なくとも1枚以上の側面のテント布がそれぞれ閉空間を形成するように連結され、各テント布は、断熱シートと、防水防湿シートと、前記断熱シート及び前記防水防湿シートで挟まれる保温層の少なくとも3層以上の多層構造で形成されており、
前記インナーテントの内容積が2.6立方メートル以下である
ことを特徴とするサウナ用テント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ヒーターを備えるテントサウナセット及びサウナ用テントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アウトドアの流行とともに、様々なアウトドア用品が開発されている。その一つとして、屋外でサウナが楽しむことができるサウナ用テントやサウナストーブが市場に出ている。このようなサウナ用テントには、組み立て、展張、持ち運びが可能なものもあり、キャンプ場や公園に出掛けて設置したり、遠出ができない場合でも建物の屋上に設置してアウトドア気分を味わうことにも用いられる。
【0003】
このようなサウナ用テントには、100℃の高温のサウナ室内を実現するために、燃焼炉を備えたサウナストーブを用いたり(特許文献1)、業務用三相交流の200ボルトの電力で動作する電気式ヒーターが使われることが多い。
また、一人用のテント内に100ボルトの家庭用電源で石を加熱するストーブを設置するテントサウナセットが開示されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】合同会社Niiro,”おうちDEサウナ”,[online],令和5年3月3日,PR TIMES,[令和5年10月25日検索],インターネット<URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000078032.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているテントサウナセットは、エタノール等の液体燃料を燃焼させるストーブから排煙が発生し、その排煙をストーブに付属する煙突から排気させる構造であるため、建物内での使用だけでなく、一般家庭のベランダや庭等での利用も制限されてしまう。
さらに、非特許文献1に開示されているテントサウナは100ボルトの家庭用電源を使用するために排煙の問題はないものの、一人用のテントであっても80~95℃程度までしか温度の上昇が見込めず、高温域を楽しむサウナとしては不十分である。これに対して、200ボルト電源の電気式ヒーターを利用することも考えられるが、一般住宅に200ボルトの電源設備がなかったり、設備があったとしても場所が限定されることが多いため、一般住宅内で自由に設置場所を決めてサウナを展張できないため、同様に一般住宅での利用は制限されてしまう。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、一般住宅等において容易に本格的な高温域のサウナ体験を実現できるテントサウナセット及びサウナ用テントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、サウナ用テントと電気式ヒーターを備えるテントサウナセットであって、前記サウナ用テントは、展張後に前記電気式ヒーターによって暖められる閉空間を形成するインナーテントと、該インナーテントの外側に展張されるアウターテントを備え、該アウターテントの内側に隙間を形成して前記インナーテントを取り付けるテントであって、前記インナーテント及び前記アウターテントは、それぞれ天面、底面及び少なくとも1枚以上の側面のテント布がそれぞれ閉空間を形成するように連結され、各テント布は、断熱シートと、防水防湿シートと、前記断熱シート及び前記防水防湿シートで挟まれる保温層の少なくとも3層以上の多層構造で形成されており、前記電気式ヒーターは、前記サウナ用テントの内部に設置可能であり、一般家庭用の交流100ボルトコンセントから供給される定格電力が1000~1500ワットであり、前記インナーテントの内容積が2.6立方メートル以下であることを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明は、テント内部に電気式ヒーターを設置可能なサウナ用テントであって、前記サウナ用テントは、一般家庭用の交流100ボルトコンセントから供給される前記電気式ヒーターによって暖められる閉空間を形成するインナーテントと、該インナーテントの外側に展張されるアウターテントを備え、該アウターテントの内側に隙間を形成して前記インナーテントを取り付けるテントであって、前記インナーテント及び前記アウターテントは、それぞれ天面、底面及び少なくとも1枚以上の側面のテント布がそれぞれ閉空間を形成するように連結され、各テント布は、断熱シートと、防水防湿シートと、前記断熱シート及び前記防水防湿シートで挟まれる保温層の少なくとも3層以上の多層構造で形成されており、前記インナーテントの内容積が2.6立方メートル以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一般住宅等において容易に本格的な高温域のサウナ体験を実現できる。具体的には、一般住宅で普通に用いられる100ボルト電源を使用した電気式ヒーターで、約95~105℃の高温域の本格的なサウナ体験を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るサウナ用テント1の外観図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るサウナ用テント1のインナーテント20の外観図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るサウナ用テント1のテント布の複数層構造を説明するための断面イメージ図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るテントサウナセットの電気式ヒーター2の外観図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るサウナ用テント1内の室温の遷移を説明するためのイメージ図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るサウナ用テント1のインナーテント20内側に取り付けられた温度計の写真を示す図である。
【
図7】本発明の別の実施形態に係るサウナ用テント1の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るテントサウナセットについて説明する。本発明の一実施形態に係るテントサウナセットは、一般住宅等の室内や屋上・庭等の屋外で使用可能なサウナ用テント1とテント内に設置する電気式ヒーター2で構成される。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るサウナ用テント1の外観図である。サウナ用テント1は、展張後に電気式ヒーター2によって暖められる閉空間を形成するインナーテント20と、インナーテント20の外側に展張されるアウターテント10を備え、アウターテント10の内側に空気層の隙間を形成しつつインナーテント20を取り付ける構造になっている。
【0014】
本実施形態において、アウターテント10は、天面11、底面16及び4枚の側面12~15(
図1において側面14,15は側面12,13の裏側のため不図示)のテント布が平面と仮定した場合に、それぞれが四辺形のテント布を略直方体又は略立方体の形状を構成するように連結して形成されている。
なお、アウターテント10の側面は、例えば円筒面のように1枚のテント布で構成するようにしてもよいし、2枚以上の複数の曲面や平面のテント布を連結して構成するようにしてもよい。このような形状の側面の場合の天面11及び底面16の形状は、それぞれの場合に応じて閉空間を形成するように連結できるような形状にすることになる。
【0015】
図2は、本発明の一実施形態に係るサウナ用テント1のインナーテント20の外観図である。本実施形態において、インナーテント20は、アウターテント10と同様に、天面21、底面26及び4枚の側面22~25(
図1において側面24,25は側面22,23の裏側のため不図示)のテント布が平面と仮定した場合に、それぞれが四辺形のテント布を略直方体又は略立方体の形状を構成するように連結して形成されている。なお、インナーテント20の側面も、例えば円筒面のように1枚のテント布で構成するようにしてもよいし、2枚以上の複数の曲面や平面のテント布を連結して構成するようにしてもよい。また、このような形状の側面の場合の天面21及び底面26の形状は、それぞれの場合に応じて閉空間を形成するように連結できるような形状にする。但し、インナーテント20は、後述するように、アウターテント10の内側に取り付けられ、アウターテント10とインナーテント20との間の隙間にできる空気層を保温層として機能させるために、インナーテント20の形状はアウターテント10の形状に対応させることが望ましい。本実施形態では、上述の通り、アウターテント10及びインナーテント20の形状は略直方体又は略立方体の形状である。
【0016】
ここで、アウターテント10の天面11及び4枚の側面12~15の各テント布には、それぞれ4本のフレームが中央から4つの角部に向かって配され、当該4本のフレームが各テント布の中央部に取り付けられた連結具で傘のように開閉するように折りたたみ可能に連結されてテント布に一体形成されている。例えば、天面11のテント布の中央部には連結具111が一体形成されており、連結具111にテント内側に折りたたみ可能に連結された4本のフレーム112~115(
図1においてフレーム112は不図示)が天面11のテント布の4つの角部に向かって配されている。同様に、側面12のテント布の中央部にも連結具121が一体形成されており、連結具121にテント内側に折りたたみ可能に連結された4本のフレーム122~125が側面12のテント布の4つの角部に向かって配されている。他の側面13~15についても同様である。
【0017】
上記のフレームの材質としては、例えば、FRPやグラスファイバーのような非金属製のフレームでも、ジュラルミンやアルミのような金属製フレームでもよい。そして、アウターテント10の天面11及び4枚の側面12~15の各テント布の中央部分がテント外側に引っ張られることによって各テント布が展張され、天面11及び4枚の側面12~15の各テント布がすべて展張されることによって、アウターテント10が展張状態で固定可能になっている。
【0018】
なお、天面11及び4枚の側面12~15の各テント布の連結具111、121等やフレーム112等は、テント布の内側でテント布に取り付けてテントの外側から直接見えないように形成すると、外観的にも美観が担保できる。また、後述するように、アウターテント10の外側のテント布は、丈夫で防水防湿機能のあるオックスフォード生地等のシートで構成されるため、テント布の内側に連結具111等及びフレーム112等を一体形成することによって、連結具111等やフレーム112等が気温・湿度・日射・降雪等の外部環境の影響を受けにくくなる。
【0019】
ここで、アウターテント10の展張状態において、当該アウターテント10の天面11及び4枚の側面12~15の各テント布は、各テント布の中央部分をテント外側に引っ張ることでフレーム112~115,122~125等が傘骨と同様に展開して各テント布が展張し、テント布が略四角錐状の凸面を形成するようになる。
【0020】
例えば、本実施形態において、アウターテント10の天面11、側面12~15、及び底面16の枠サイズ(「各テント布のエッジ部分を枠としたときの枠の大きさ」:以下同じ)は、天面11及び底面16の枠サイズが約100センチメートル(横幅:W)×約100センチメートル(奥行き:D)で、側面12~15の枠サイズが100センチメートル(横幅:W)×約135センチメートル(高さ:H)である。
また、アウターテント10の展張状態において、天面11及び側面12~15はそれぞれ略四角錐状の凸面を形成するが、この場合に、天面11の四角錐の高さは約20センチメートルで、側面12~15の四角錐の高さは約10センチメートルである。
【0021】
一方、インナーテント20はアウターテント10の天面11及び側面12~15等の連結具を用いてテントの内側に取り付けられるので、取り付けられた後のインナーテント20の天面21、側面22~25、及び底面26の枠サイズは、天面21及び底面26の枠サイズが約100センチメートル(横幅:W)×約100センチメートル(奥行き:D)で、側面22~25の枠サイズが100センチメートル(横幅:W)×約135センチメートル(高さ:H)であり、アウターテント10の枠サイズとほぼ同じである。
【0022】
また、展張されたアウターテント10に取り付けられた場合のインナーテント20の形状は、天面21及び側面22~25はそれぞれ略四角錐状の凸面を形成することになるが、この場合に、天面21の四角錐の高さは約15センチメートルで、側面22~25の四角錐の高さは約10センチメートルである。すなわち、本実施形態において、アウターテント10において、天面11のテント布における略四角錐部の高さ(約20センチメートル)は4枚の側面12~15のテント布における略四角錐部の高さ(約10センチメートル)の2倍である。また、インナーテント20において、天面21のテント布における略四角錐部の高さ(約15センチメートル)は4枚の側面22~25のテント布における略四角錐部の高さ(約10センチメートル)の1.5倍である。このようにアウターテント10及びインナーテント20とも側面のテント布は中央部を凸状に展張することで安定したテントの展張が可能になるが、天面11,21の凸部をより高くする(具体的には、側面における略四角錐の高さの少なくとも1.5倍以上の高さ)ことによって、テントの安定した展張状態が得られるだけでなく、サウナ利用者が体格の大きい成人男性であってもサウナ室内で余裕を持って椅子に座ってサウナを楽しむことができるようになる。
【0023】
このように、インナーテント20の天面21以外の側面22~25及び底面26のテント布の形状・サイズは、アウターテント10の側面12~15及び底面16のテント布の形状・サイズとほぼ同じである。
また、天面11と天面21のテント布の形状・サイズ違いに基づくアウターテント10とインナーテント20間の隙間の空間や、インナーテント20の天面21及び側面テント22~25のテント布の弛み等に基づいて生じるアウターテント10とインナーテント20間の隙間の空間に空気層が形成される。当該隙間の空気層はサウナ利用時には保温層として機能する。
【0024】
上記のような構成を有することによって、本実施形態に係るサウナ用テント1は、持ち運び・組み立てが容易であり、しっかりとした安定のある構造を構築できる。また、アウターテント10の内側面に取付部を介してインナーテント20を吊り下げるように取り付けるので、両テントが密着することなく、吊り下げられるインナーテント20の垂れ下がりによってインナーテント20の外側面とアウターテント10の内側面の間の若干の隙間に空気層(例えば、後述する
図3の空間30)が生まれ、両テントの断熱保温効果によって当該空気層の空気が好適に温められ、インナーテント20と当該空気層とアウターテント10の3層によって断熱保温効果がより高められる。
【0025】
アウターテント10の天面11及び4枚の側面12~15の各テント布のテント内面の中央部にはインナーテント20を取り付けるための複数の取付部(不図示)が形成されている。そして、当該複数の取付部に、インナーテント20の天面21及び4枚の側面22~25の各テント布のテント外側面のアウターテント10の複数の取付部に対応する位置に形成されている複数の取付部211、221、231等を取り付けてインナーテント20を展張可能としている。取付具の例としては、フック、フロントリリースバックル、又はサイドリリースバックルのようなものを使用することができる。
【0026】
また、例えば、アウターテント10の天面11、4枚の側面12~15及び底面16のテント内側面において天面11、4枚の側面12~15及び底面16で形成される略直方体又は略立方体の頂点に相当する角部分や各連結辺の中央部分と、インナーテント20のテント外側面においてそれらに対応する部分にも、アウターテント10内部にインナーテント20を取り付けるための取付部が形成されている。例えば、インナーテント20の天面21には、アウターテント10の内側面に取り付けるための取付部として、テント布中央部に取付部211とテント布の4隅の角に取付部212~215が構成されている。
【0027】
また、本実施形態に係るサウナ用テント1には透明なビニール素材を用いた窓が備わっている。本実施形態では、アウターテント10の側面13のテント布の中央上部付近に逆三角形の形状で窓部18が形成され、側面13のテント布と同様の素材のカーテン181によって当該窓部18を覆うことができるようにしている。当該カーテン181は例えば、テント外側にロール式に丸めて固定しておくことができる。また、アウターテント10の側面13の窓部18に対応するインナーテント20の側面23の位置に透明なビニール素材を用いた窓部28が備わっている。さらに、窓部28のテント内側には、ロール式に丸めて固定できるカーテン281が備わっている。なお、本実施形態では、窓部は一対(窓部18,28)だけ備わっているようにしているが、窓部の数に特に制限はなく、また窓部の形成場所にも特に制限はない。
【0028】
ここで、本実施形態において、アウターテント10の底面16のテント布は、当該アウターテント10の4枚の側面12~15のテント布とファスナー(不図示)を用いて着脱可能に連結されている。また、インナーテント20の底面26のテント布は、当該インナーテント20の4枚の側面22~25のテント布とファスナー261を用いて着脱可能に連結されている。このように、アウターテント10の底面16のテント布やインナーテント20の底面26のテント布をファスナー構造で取り外しできるようにすることで、ベランダ・庭等にサウナ用テント1を設置したときのサウナ利用者の汗の落下による汚れが発生した場合に、底面シートを容易に取り外して選択することができ、洗濯後は容易に取り付けることができる。また、ファスナーによってテント底面から水や虫などの進入を防ぐこともできる。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態に係るサウナ用テント1のテント布の複数層構造を説明するための断面イメージ図である。
図3は、一例として、サウナ用テント1のアウターテント10の側面12のテント布とインナーテント20の側面22のテント布部分の断面をイメージした図になっている。
図3に示すように、アウターテント10の側面12のテント布は、テント外側に位置する防水防湿シート12Aと、テント内側に位置する断熱シート12Bと、防水防湿シート12A及び断熱シート12Bで挟まれる保温層12Cの3層構造で形成されている。同様に、インナーテント20の側面22のテント布は、テント外側に位置する防水防湿シート22Aと、テント内側に位置する断熱シート22Bと、防水防湿シート22A及び断熱シート22Bで挟まれる保温層22Cの3層構造で形成されている。
【0030】
図3に示すアウターテント10及びインナーテント20の各テント布の構成について、より詳細には、防水防湿シート12A、22Aは、例えばオックスフォード生地で製造されており、テント内外の温度変化や湿度変化の影響を受けにくくするとともに、非常に丈夫で耐性に優れている。また、断熱シート12B、22Bは、グラフェン素材が織り込まれたアルミ系の断熱シートであり、アウターテント10及びインナーテント20ともにテント内側の素材として用いられており、グラフェン素材によって強度が強く、熱伝導性にも優れた薄手のシートを実現できる。また、アルミ系素材を使用するため、電気式ヒーターからの輻射熱を反射することで高い遮熱効果を得ることができる。
【0031】
アウターテント10及びインナーテント20のテント布は、防水防湿シート12A、22Aと断熱シート12B、22Bの間に挟まれる空間に中綿を充填した保温層12C、22Cを構成して3層構造のテント布を形成し、そのテント布にはキルティング加工Q1~Q4を施すことにより複数の格子状区画を形成する。なお、本実施形態では、アウターテント10及びインナーテント20のテント布はそれぞれ3層構造としたが、同様以上の効果を得るために、さらに多層の構成にしてもよい。
テント布を上述したような構造にすることによって、インナーテント20及びアウターテント10のテント布に共に耐久性を持たせることができ、小区画に形成された区画ごとに保温できることで布全体の保温効果を高めることができる。
【0032】
アウターテント10のテント布(例えば、側面12のテント布)とインナーテント20のテント布(例えば、側面22のテント布)の間には、アウターテント10とインナーテント20のサイズ差や、インナーテント20をアウターテント10に取り付けたことによるテント布の撓み等によって隙間の空気層(例えば、側面12のテント布と側面22のテント布との間の空間30)が形成される。
【0033】
このように、サウナ用テント1のアウターテント10及びインナーテント20は、それぞれ天面11,21、底面16,26及び4枚の側面12~15,22~25のテント布がそれぞれ閉空間を形成するように連結されている。また、各テント布は、断熱シートと、防水防湿シートと、断熱シート及び防水防湿シートで挟まれる保温層の少なくとも3層以上の多層構造で形成されている。さらに、アウターテント10とインナーテント20との間には保温層となる空気層の隙間空間が形成されている。
【0034】
また、本実施形態においては、アウターテント10の側面12において、側面12のテント布上に形成された連結具121から、側面12に隣接する側面13との連結辺の両端部に向かう2本のフレーム124、125に沿って、サウナ用テント1の内部に利用者が出入りするための出入口17を形成するためにテント布の一部を上下に開閉するためのファスナー127が形成されている。また、インナーテント20の側面22において、アウターテント10のファスナー127に対応する位置に、出入口17を形成するために側面22のテント布の一部を上下に開閉するためのファスナー227(不図示)が形成されている。この出入口17は、アウターテント10の側面12のテント布のうち、側面12及び側面13の連結辺を軸にして略「くの字形」の端部を有する略三角形の形状をしたテント布による出入口部126と、インナーテント20の側面22のテント布のうち、側面22及び側面33の連結辺を軸にして略「くの字形」の端部を有する略三角形の形状をしたテント布による出入口部226の二重構造になっている。
このように、本実施形態に係るサウナ用テント1では、出入口17を出入口部126,127で構成しているように、テントの骨組みとして重要なフレームの位置を避け、利用者の出入りに必要な大きさを最小限した形状にすることで、利用者の出入りに応じてサウナ温度の急激な低下を避けることが可能となる。
【0035】
図4は、本発明の一実施形態に係るテントサウナセットの電気式ヒーター2の外観図である。電気式ヒーター2は、サウナ用テント1の内部に設置可能であり、一般家庭で普通に用いられている交流100ボルトの電源を使用する。また、このときに供給される定格電力は1000~1500ワットである。電気式ヒーター2の操作盤には、電気式ヒーター2の内部に位置する加熱用ヒーター(不図示)の温度を調節することでサウナ室内の温度を調節するための温度調節ダイヤル201と、ヒーターの加熱時間を設定して設定時間が経過するとヒーターをオフにするタイマーダイヤル202が備わっている。また、サウナ用テント1を設置した場所から家庭用の100ボルトコンセントにサウナの電源を接続するための電源コード203とコンセント204を備えている。さらに、電気式ヒーター2の側面には、ヒーターの意匠性を高めるために木製飾り205が造作され、家庭等で用いるサウナに対して高級感や雰囲気を高めている。
【0036】
本実施形態では、上記のような一般家庭用での100ボルトコンセントを用いる電気式ヒーター2による加熱で約95~105℃の高温域の本格的なサウナ体験を提供できるテントサウナセットを実現する。そのため、サウナ用テント1の試作及び試験を繰り返し、サウナ用テント1におけるサウナ空間のサイズ、すなわちインナーテント20のサイズ(内容積)を2.6立方メートル以下に限定することで、約95~105℃を達成することが確かめられた。
【0037】
本実施形態では、前述のように、インナーテント20の天面21及び底面26の枠サイズが約100センチメートル(横幅:W)×約100センチメートル(奥行き:D)で、側面22~25の枠サイズが100センチメートル(横幅:W)×約135センチメートル(高さ:H)であって、天面21のテント布における略四角錐部の高さが約15センチメートル、4枚の側面22~25のテント布における略四角錐部の高さが約10センチメートルである。従って、この場合のインナーテント20の体積(内容積)は、約1.58立方メートルとなる。一方、アウターテント10は、天面11のテント布における略四角錐部の高さが約20センチメートルとなり、それ以外の部分はインナーテント20と同じであるため、この場合のアウターテント10の体積(内容積)は1.60立方メートルとなる。
なお、インナーテント20の天面21及び底面26の枠サイズが約130センチメートル(横幅:W)×約130センチメートル(奥行き:D)で、側面22~25の枠サイズが130センチメートル(横幅:W)×約135センチメートル(高さ:H)であって、天面21のテント布における略四角錐部の高さが約15センチメートル、4枚の側面22~25のテント布における略四角錐部の高さが約10センチメートルの場合、インナーテント20の体積(内容積)は約2.6立方メートルとなる。
【0038】
図5は、本発明の一実施形態に係るサウナ用テント内の室温の遷移を説明するためのイメージ図である。
図5では、出願人が一般家庭等の室内や屋上等において、常温(ここでは、約15~25℃)環境下において、サウナ用テント1のサウナ室内(閉空間となるインナーテント20の内部)に電気式ヒーター2を設置して電源をオンにした場合のサウナ室内温度を計測し、時間による温度変化を簡略化したグラフで表したものである。温度計は
図6に示すように、サウナ室内の最も高い位置であるインナーテント20内の天面21中央部のテント側に設置して、サウナ温度として計測した。
図6は、本発明の一実施形態に係るサウナ用テントのインナーテント内側に取り付けられた温度計の写真を示す図である。
図6に示すように、インナーテント20の内面は、前述の通り、グラフェン素材が織り込まれたアルミ系の断熱シートであり、キルティング加工が施されることにより複数の格子状区画が形成されている様子が見える。
【0039】
図5に示すように、常温であればおおよそ20分から30分程度でサウナ室内の温度が100℃まで上昇した。なお、常温の範囲内であっても外気温が高いほど早く温度は100℃に到達し、外気温が低くても(例えば、約15℃の場合)30分程度でサウナ室内の温度は100℃まで上昇した。また、100℃に達した後、常温であればサウナ室内の温度は概ね105℃程度までは上昇することが確かめられた(
図6を参照)。
【0040】
すなわち、本実施形態に係るサウナ用テント1と電気式ヒーター2から構成されるテントサウナセットは、上述したようなインナーテント20及びアウターテント10の構造で、かつインナーテント20の内容積が2.6立方メートル以下であることにより、組立や運搬が容易で、一般住宅において容易に展開・設置・給電ができ好適に高温域のサウナ体験をユーザに提供することができる。この分解組み立てや持ち運びが可能な家庭用の1~2人用サウナによれば、家庭用の100ボルト電源を使う電気式ヒーターで常温において約20~30分で95~105℃の高温のサウナ室内が実現できる。
【0041】
なお、2人の成人が余裕をもってサウナ利用を楽しむためにはサウナ空間が広い方がよいが、家庭用の100ボルト電源を使う電気式ヒーター2を用いて95℃以上の高温域のサウナ室内を実現するにはサウナ空間は狭い方が望ましい。
また、温度計に直接、又は温度計の近くに温度センサを設けて電気式ヒーター2と連携させることで、電気式ヒーター2の加熱時間や温度を自動的に調節して、サウナ室内の温度を利用者が一定に維持させるようなことが可能となる。
【0042】
図7は、本発明の別の実施形態に係るサウナ用テント1の外観図である。この実施形態に係るサウナ用テント1においてインナーテント20は上記の実施形態のものと同様であるが、アウターテント10の底面16のテント布がファスナーで側面12~15と連結されているのではなく、底面16のテント布は、アウターテント10の4枚の側面12~15のテント布に巻き込み仕様で連結されている。この際、底面16のテント布は側面12~15のテント布とフロントリリースバックル又はサイドリリースバックルのような連結具で着脱可能なように連結されている。例えば、アウターテント10の底面16は、側面12及び側面13とのコーナー部(第1のコーナー部)において連結具16a,16eで、側面11及び側面12とのコーナー部(第2のコーナー部)において連結具16c,16dで、また第1のコーナー部と第2のコーナー部の中間付近において連結具16bで連結されている。このように、アウターテント10の底面16のテント布をインナーテント20の底面26のテント布を容易に取り外しできるようにすることで、ベランダ・庭等にサウナ用テント1を設置したときのサウナ利用者の汗の落下による汚れが発生した場合に、底面シートを容易に取り外して選択することができ、洗濯後は容易に取り付けることができる。また、巻き込み仕様にすることによってテント底面から水や虫などの進入を防ぐこともできる。
【0043】
なお、本実施形態に係るサウナ用テント1のアウターテント10及びインナーテント20の防水防湿シートはオックスフォード生地を用いているが、同様の防水性、防湿性、或いは撥水性が得られるものであれば、ポリエステル繊維やその他の種類のシートを用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 サウナ用テント
2 電気式ヒーター
10 アウターテント
11,21 天面
12~15,22~25 側面
12A,22A 防水防湿シート
12B,22B 断熱シート
12C,22C 保温層
16,26 底面
17 出入口
20 インナーテント
30 空気層
111,121 連結具
112~115,122~125 フレーム
126,226 出入口部
127,227 ファスナー
221,221 取付部
Q1~Q4 キルティング加工
【要約】
【課題】 一般住宅等において容易に本格的な高温域のサウナ体験を実現できるテントサウナセット及びサウナ用テントを提供する。
【解決手段】 サウナ用テント1は、アウターテント10の内側に隙間を形成してインナーテント20を取り付けて展張し、電気式ヒーター2をテント内側に設置する。アウターテント10は、それぞれ天面11、底面16及び4枚の側面12等のテント布がそれぞれ閉空間を形成するように連結され、各テント布は、断熱シートと、防水防湿シートと、それらに挟まれる保温層の3層構造で形成され、インナーテント20も同様である。電気式ヒーター2は、一般家庭用の交流100ボルトコンセントから供給される定格電力が1000~1500ワットであり、インナーテント20の内容積が2.6立方メートル以下である。
【選択図】
図1