IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大黒屋グループ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-中敷き及びこれを備えた靴 図1
  • 特許-中敷き及びこれを備えた靴 図2
  • 特許-中敷き及びこれを備えた靴 図3
  • 特許-中敷き及びこれを備えた靴 図4
  • 特許-中敷き及びこれを備えた靴 図5
  • 特許-中敷き及びこれを備えた靴 図6
  • 特許-中敷き及びこれを備えた靴 図7
  • 特許-中敷き及びこれを備えた靴 図8
  • 特許-中敷き及びこれを備えた靴 図9
  • 特許-中敷き及びこれを備えた靴 図10
  • 特許-中敷き及びこれを備えた靴 図11
  • 特許-中敷き及びこれを備えた靴 図12
  • 特許-中敷き及びこれを備えた靴 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】中敷き及びこれを備えた靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 17/00 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
A43B17/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021144979
(22)【出願日】2021-09-06
(62)【分割の表示】P 2018150969の分割
【原出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2021191457
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2018132925
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513078044
【氏名又は名称】大黒屋グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】森本 信正
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-154263(JP,A)
【文献】登録実用新案第3064165(JP,U)
【文献】特開2005-305063(JP,A)
【文献】特開平06-062906(JP,A)
【文献】米国特許第09072338(US,B1)
【文献】特開2020-014817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿通開口が形成された中敷き本体と、
前記中敷き本体の足指側前部に取り付けられた柱状の前坪と、
前記前坪の上端部に固定され靴の甲被部内面に接触することで前記前坪を支持する甲側支え部材と、
前記前坪を前記中敷き本体に固定する固定部材と、
を備え、
前記前坪は、前記中敷き本体に対して立った状態を維持するように固定され
前記前坪と前記固定部材は前記挿通開口を通じて結合されることを特徴とする中敷き。
【請求項2】
スリットが形成された中敷き本体と、
前記中敷き本体の足指側前部に取り付けられた柱状の前坪と、
前記前坪の上端部に固定され靴の甲被部内面に接触することで前記前坪を支持する甲側支え部材と、
前記前坪を前記中敷き本体に固定する固定部材と、
を備え、
前記前坪は、前記中敷き本体に対して立った状態を維持するように固定され
前記前坪と前記固定部材は前記スリットを通じて結合されることを特徴とする中敷き。
【請求項3】
前記前坪は、その外側にスリーブを備え、当該スリーブは柔軟性素材又は弾性素材により形成されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の中敷き。
【請求項4】
前記前坪は、一端部が前記中敷き本体に固定され、他端部が前記甲側支え部材に固定される芯索を備える、請求項1から請求項3のいずれかに記載の中敷き。
【請求項5】
前記甲側支え部材には、靴の甲被部内面への保持を強化する保持強化部が設けられていることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の中敷き。
【請求項6】
靴本体の内底に請求項1から請求項5のいずれかに記載の中敷きが収容された靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足指先の力を靴底に安定して伝達させることができる中敷き及びこれを備えた靴に関する。
【背景技術】
【0002】
足指先の力を靴底に安定して伝達させるための中敷きとして、中敷き本体と、この中敷き本体に着脱自在に装着される趾股ブリッジとを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この趾股ブリッジは、足裏ベース部と、甲被カバー部と、足裏ベース部及び甲被カバー部を接続する趾股ブリッジ部とを備えており、また中敷き本体の前端部にはスリット部が設けられており、この趾股ブリッジの趾股ブリッジ部が中敷き本体のスリット部に挿嵌される。
【0003】
この中敷きにおいては、足指の第1趾と第2趾との間に趾股ブリッジの趾股ブリッジ部が位置し、かかる第1趾及び第2趾により趾股ブリッジ部が挟まれるようになるために、足指先の瞬発的力を靴の爪先底部にロスなく伝達することができ、運動能力の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5806427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の中敷きでは、趾股ブリッジが中敷き本体のスリット部に着脱自在に挿嵌される構成である故に、下り坂やでこぼこ道を走行する場合などで趾股ブリッジに大きな力が加わると、中敷き本体に対して趾股ブリッジが相対的に移動しやすく、足指先の力を趾股ブリッジ及び中敷き本体を介して靴の爪先底部に確実に伝達することができない。特に、中敷きを靴の内底に収容した状態においては、この趾股ブリッジの足裏ベース部が靴の内底に接触保持され、その甲被カバー部が靴の甲被部内面に接触保持されるので、趾股ブリッジの保持を充分確実に行うことが難しいという問題がある。
【0006】
また、この趾股ブリッジでは、第1趾と第2趾との間の趾股に趾股ブリッジ部が位置するが、この趾股ブリッジ部が壁状に設けられているので、第1趾及び第2趾により趾股ブリッジ部をつかむことが難く、従って、第1趾を含む足の指先に力が入り難いという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、足指先の力を靴底に安定して伝達させることができるとともに、足指の筋肉アップを図ることができる中敷き及びこれを備えた靴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の中敷きは、靴の内底に収容可能な中敷き本体と、前記中敷き本体の足指側前部に設けられた前坪と、前記前坪における前記中敷き本体と反対側端部に設けられた甲側支え部材とを備え、前記甲側支え部材は前記前坪と接する部分の中心から足指側先端部までの長さが、前記前坪と接する部分の中心から踵側端部までの長さよりも長いことを特徴とする。
【0009】
このような中敷きにおいては、甲側支え部材の外面に、靴の甲被部への保持を強化する保持強化部を設けるのが好ましく、このように構成することにより、甲側支え部材と靴の甲被部との接触保持が強化され、中敷きを収容した靴を履いて歩行、走行、登山などをしても中敷きと靴との位置関係がずれることがなく、これにより、足の第1趾と第2趾とで挟んだ前坪の位置がずれることがない。
【0010】
また、前坪が中敷き本体に対して直立した状態において、甲側支え部材の足指側先端部が中敷き本体の足指側先端部と前坪直立方向に間隔をおいて略重なることが好ましく、このように構成することにより、靴の内底に収容した状態では、この甲側支え部材の先端部が靴の先端部内面に確実に当接するようになり、これにより、甲側支え部材の靴の先端側への移動をさらに確実に抑えることができ、前坪を中敷き本体と甲側支え部材との間の所定部位に確実に保持することができる。
【0011】
また、靴の前記内底に収容した状態において、甲側支え部材の足指側先端部が靴の足指側先端部内面に当接し、甲側支え部材に設けられた保持強化部の外面が靴の甲被部に接触するように構成するのが好ましく、このように構成することにより、甲側支え部材の先端部が靴の先端部内面に当接するとともに、保持強化部の外面が靴の甲被部内面に接触保持され、これにより、甲側支え部材の靴の先端側への移動をさらに確実に抑えることができる。
【0012】
また、中敷き本体と甲側支え部材との間に配設された柔軟性の中空スリーブ及び中空スリーブを挿通して配設された芯索から前坪を構成し、芯索の一端部を中敷き本体に固定し、その他端部を甲側支え部材に固定するようにしてもよく、このように構成することにより、足の第1趾及び第2趾並びにこれらの間の趾股には柔軟性の中空スリーブが接触するようになり、足に優しい中敷きを提供することができる。
【0013】
また、中敷き本体と甲側支え部材との間に配設された柱状部材及びこの柱状部材を被う弾性スリーブから前坪を構成し、柱状部材の一端部を中敷き本体に固定し、その他端部を甲側支え部材に固定するようにしてもよく、このように構成することにより、前坪の中心部においては柱状部材により充分な剛性及び強度を確保しながら、足の第1趾及び第2趾並びにこれらの間の趾股には弾性スリーブが接触するようになり、このように構成しても足に優しいが趾股には刺激が強い中敷きを提供することができる。
【0014】
また、前坪と甲側支え部材とを一体に構成するようにしてもよく、このように構成することにより、例えば合成樹脂などの一体成形により形成することができ、この中敷きの製作の作業性を向上させることができる。
【0015】
また、甲側支え部材の外面に、靴の甲被部への保持を強化する保持強化部を設けるのが好ましく、このように構成することにより、中敷きの甲側支え部材と靴の甲被部との接触保持が強化され、この中敷きを収容した靴を履いて歩行、走行、登山などしても中敷きと靴との位置関係がずれることがなく、従って、足の第1趾と第2趾とで挟んだ前坪の位置がずれることがない。
【0016】
また、中敷き本体の足指側前部には足指側と踵側とを結ぶ方向に挿通スリットを設け、前坪を挿通スリットに位置調整自在に挿通した後に中敷き本体に固定するようにしてもよく、このように構成することにより、前坪を挿通スリットに位置調整自在に取り付けることができ、第1趾及び第2趾の間の趾股の深さに応じて前坪の位置を調整して中敷き本体に取り付けることができる。要するに、足の踵から足指の第1趾と第2趾の趾股との長さを個人の足に合わせて調整しておけば、趾股から靴の先端までの長さは多少長くてもしっかりと足を保持することができるため、多少幅広で大きめの靴でも形状重視で靴を選択することができる。
【0017】
そして、当該靴を履いたときに、足指先が靴の足指側先端部内面に当接しないように前坪の位置を調整することで、足指先端にストレスがかからなくなり、足指先の損傷や疲労を回避できる。また、これにより足指先の筋力を向上させることができる。
【0018】
また、中敷き本体の少なくとも足指側前部の裏面に、滑りを抑えるための滑止め部材を設けるのが好ましく、このように構成することにより、足の指先の力を中敷き本体を介して靴底に確実に伝えることができ、歩行、走行などをより安定させることができる。
【0019】
また、中敷き本体の足指側前部における足指を支える部分を含む領域に、中敷き本体の厚さを薄くする薄肉部を設けるようにしてもよく、このように構成することにより、山道や階段を登るときに、足指が中敷き本体に接する部分が薄くなっていることから、足指が踏ん張りやすくなり、これにより、踵側の負担が少なくなり腰痛や膝痛を予防することができるともに、足指の筋力アップをすることができる。
【0020】
また、前坪が設けられた位置より足指先端側に、足の親指の開き角度を調整するための調整部を設けるようにしてもよく、このように構成することにより、左右から体を押されたときにも足の親指や足の裏に力が入り踏ん張ることができる。また、この調整部の位置を調整することにより、各人毎の外反母趾を矯正することができる。
【0021】
更に、本発明の靴は、靴本体の内底に請求項1~11のいずれかに記載の中敷きを収容したことを特徴とする。
【0022】
このような靴では、靴を履いたときに、足指先が靴の足指側先端部内面に当接しないように前坪の位置を調整することが好ましく、このように構成することにより、靴を履いたときに、足指先が靴の足指側先端部内面に当接しないようになり、足指先端にストレスがかからず圧迫されなくなり、足指先の損傷や疲労を回避できる。また、これにより足指先の筋力を向上させることができる。
【0023】
また、保持強化部を雄型面ファスナ又は雌型面ファスナから構成し、対応する雌型面ファスナ又は雄型面ファスナを靴の甲被部内面に設けるようにしてもよく、このように構成することにより、中敷きの甲側支え部材の移動を確実に抑え、前坪の下端部側においては、中敷き本体が靴本体内に収容され、この収容された中敷き本体に足が載って体重が加わることにより、この下端部側の移動が確実に抑えられ、またその上端部側においては、甲側支え部材の先端部が靴本体の先端部内面に当接するとともに、甲側支え部材側の雄型面ファスナ(又は雌型面ファスナ)が靴本体の甲被部内面における対応の雌型面ファスナ(又は雄型面ファスナ)に密着して着脱自在に装着されることにより、この上端部側の移動が確実に抑えられ、その結果、前坪を靴本体内の所定部位に確実に保持することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の中敷きによれば、甲側支え部材は前坪と接する部分の中心から足指側先端部までの長さが、前坪と接する部分の中心から踵側端部までの長さよりも長いため、靴の内底に収容した状態において甲側支え部材が靴の先端部内面に当接しやすくなり、甲側支え部材が靴の先端部側に移動するのが抑えられ、前坪は中敷き本体と甲側支え部材との間に確実に支持されるから、前坪に趾股が確実に保持される。
【0025】
つまり、靴の内底に中敷きを収容した状態で靴を履くと、足の第1趾と第2趾との間の趾股に前坪が位置し、歩くときにこの前坪が趾股に作用し、これにより、歩くときの体重移動が踵から第1趾に向けて直線状に移動するようになり、その結果、足指先の力を靴底に安定して伝えて歩行、走行などを安定させることができる。また、この歩行、走行状態においては、前坪が第1趾と第2趾との間の趾股に作用し、足指に力を入れるときには第1趾及び第2趾がかかる前坪をつかむようなり、そのために、足の指先に力が入って踏ん張りがきくようになり、これによっても歩行、走行などが安定するようになり、また足指の筋力アップを図ることができ、足指にとって優れた中敷き及び靴を提供することができる。
【0026】
また、本発明の靴によれば、靴本体の内底に上述のいずれかの中敷きが収容されているので、足指先の力を靴底に安定して伝達させることができるとともに、足指の筋力アップを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に従う中敷きの第1の実施形態を示す斜視図。
図2図1の中敷きを示す正面図。
図3図1の中敷きを示す平面図。
図4図1の中敷きを示す底面図。
図5図1の中敷きを示す右側面図
図6図5におけるVI-VI線による断面図。
図7図1の中敷きを靴に収容した状態を示す断面図。
図8】前坪の変形形態を示す断面図。
図9】本発明に従う中敷きの第2の実施形態における中敷き本体の一部を示す平面 図。
図10図9におけるX-X線による断面図。
図11】中敷き本体の変形形態を示す断面図。
図12】本発明に従う中敷きの第3の実施形態を示す平面図。
図13図12の中敷きの一部を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う中敷き及びこれを備えた靴の種々の実施形態について説明する。まず、図1図6を参照して、本発明に従う中敷きの第1の実施形態について説明する。
【0029】
図1図5において、図示の中敷き2は、靴102の底部104の内面(即ち、内底106)(図7参照)の形状に対応した中敷き本体4を備え、この中敷き本体4の足指側前部6は平らに形成され、その踵側後部8における幅方向中央部10が平らに形成され、その幅方向両側部12が上側に湾曲して延び、かかる両側部12の内側面が外方に向けて上方に傾斜して延びている。従って、この中敷き本体4においては、足108の裏面が中敷き本体4の平らな部分(即ち、足指側前部6及び踵側後部8の幅方向中央部10)に位置し、中敷き本体4の幅方向両側部12が足108の踵側を両側から包むようになることで靴102に収容可能であるとともに足に対応した形状とされている。
【0030】
このような中敷き本体4は、例えば柔軟性を有する合成樹脂材料などから形成することができ、その表面を織布などで被うようにしてもよい。また、中敷き本体4として、全体が略平らなものを用いるようにしてもよい。
【0031】
この中敷き2においては、中敷き本体4の足指側前部6に前坪14が設けられ、この前坪14の上端部に甲側支え部材16が設けられている。前坪14の長さは任意であるが、当該中敷きを靴に収容して履いたときに足指を圧迫せず、靴の甲被部112の内面に当接可能な高さとすることが望ましい。
【0032】
図6をも参照して、前坪14は、柔軟性を有する中空スリーブとしての円筒状中空スリーブと、この円筒状中空スリーブ18を挿通して配設された一対の芯索20,22とを備え、中空スリーブ18は、例えば合成樹脂材料から形成することができ、一対の芯索20,22は、例えば布を紐状にしたものなどを用いることができる。尚、一対の芯索20,22を一つにまとめたものを用いるようにしてもよく、またこの円筒状スリーブ18を省略するようにしてもよい。
【0033】
この第1の実施形態では、円筒状中空スリーブ18の一端(下端、すなわち中敷き本体4側の端部)は、中敷き本体4の足指側前部6の表面に当接するように配設され、その他端(上端、すなわち甲側支え部材16側の端部)は、甲側支え部材16の内面に当接するように配設され、一対の芯索20,22の一端側を中空スリーブ10の一端側を通して中敷き本体4に固定するとともに、それらの他端側を中空スリーブ10の他端側を通して甲側支え部材16に固定することにより、中敷き本体4と甲側支え部材16との間に支持される。
【0034】
この第1の実施形態では、一対の芯索20,22の一端側は、例えば、中敷き本体4に形成された挿通スリット24を通してその裏側に突出させ、図4に破線で示すように、それらの一端部を拡げて中敷き本体4の外面に接着剤などで固着することにより、この中敷き本体4に固定される。また、一対の芯索20,22の他端側は、図示していないが、例えば、それらの他端部を拡げて甲側支え部材16の内面に接着剤などで固定することにより、この甲側支え部材16に固定される。この挿通スリット24は、中敷き本体4の足指側と踵側とを結ぶ方向に延びており、従って、前坪14はかかる方向に位置調整することができる。
【0035】
この第1の実施形態では、中敷き本体4の挿通スリット24を通して一対の芯索20,22が取り付けられているので、一対の芯索20,22を固定する前の状態では、これら芯索20,22を挿通スリット24に沿って中敷き本体4の前後方向(図7の左右方向)に移動させることができ、このように移動させることにより、中敷き本体4に対する前坪14の取付位置を調整することができる。
【0036】
例えば、階段を降りるときや山道を下るときには、通常、足指先が靴の足指側先端部内面に圧迫されてストレスを受けることがある。これにより、足指先が損傷したり体全体の疲労感につながることがある。そのため、当該靴を履いたときに、足指先が靴の足指側先端部内面に当接しない位置に挿通スリット24を利用して前坪14の位置を設定することができる。
【0037】
尚、この形態では、前坪14の円筒状中空スリーブ18の一端(下端)を中敷き本体4の表面に当接させているが、このような構成に代えて、中敷き本体4の足指側前部6に挿通開口を設け(この場合、スリット24は省略される)、この挿通開口内に円筒状中空スリーブ18の一端部を位置付けて接着剤などにより固定するとともに、この挿通開口内の中空スリーブ18の一端側を通して一対の芯索20,22の一端側を中敷き本体4の裏面側に突出させて上述したように固定するようにしてもよい。
【0038】
また、この第1の実施形態では、前坪14の円筒状中空スリーブ18の他端(上端)を甲側支え部材16の内面に当接させているが、このような構成に代えて、前坪14の下端部側と同様に、甲側支え部材16に挿通開口を設け、この挿通開口内に円筒状中空スリーブ18の他端部を位置付けて接着剤などにより固定するとともに、その挿通開口内の中空スリーブ18の他端側を通して一対の芯索20,22の他端側を甲側支え部材16の外面側に突出させて上述したように固定するようにしてもよい。
【0039】
尚、この第1の実施形態においては、中空スリーブ18を円筒状にしているが、必ずしもこれに限定されず、適宜変更が可能である。例えば、三角柱状、六角柱状、楕円柱状などにしてもよく、このように構成しても、中空スリーブ18を趾股にしっかりと保持することができる。
【0040】
また、甲側支え部材16は、例えば合成樹脂材料から形成することができ、その幅W(図3参照)は、足の第1趾及び第2趾の幅よりも大きくなるように構成され、このように構成することにより、前坪14を確実に支持することができる。
【0041】
また、図2及び図3に示すように、この甲側支え部材16は略平板形状であって前坪14と接する部分の中心から足指側先端部までの長さSLが、前坪14と接する部分の中心から踵側端部までの長さKLよりも長く構成されている。そのため、甲側支え部材16の足指側先端部は、中敷き本体4の足指側先端部方向に延び、踵側には長く延び過ぎないように構成している。尚、この甲支え部材16の踵側部分が前坪14から踵側にほとんど突出しないように構成することもでき、この場合、前坪14と接する部分の中心から踵側端部までの長さは、前坪14の半径とほぼ等しくなる。
【0042】
このように構成することにより、靴102の内底106に収容した状態では、図7に示すように、甲側支え部材16の先端部が靴102の先端部110の内面に当接しやすくなり、甲側支え部材16の靴102の先端側への移動を確実に抑えることができるとともに、甲側支え部材16が踵側には長く延び過ぎていないため足の挿入を妨げないように構成されている。この甲側支え部材16は、ある程度の剛性を有するのが望ましく、これにより、甲側支え部材16の先端部が靴の先端部内面に当接して大きく弾性変形することがなく、その結果、前坪14が前方に移動するのを抑えることができる。
【0043】
この中敷き2においては、前坪14の直立した状態において、甲側支え部材16の先端部が中敷き本体4の先端部と前坪直立方向に間隔をおいて略重なるように構成するのが好ましい。これにより、確実に甲側支え部材16の先端部を靴102の先端部110の内面に確実に当接させることができる。
【0044】
この収容状態においては、甲側支え部材16の外面が靴102の甲被部112に接触し、この接触による甲被部112との間の摩擦、また甲側支え部材16の変形抑制によっても甲側支え部材16の靴102の先端側への移動を防止することができ、その結果、前坪14を中敷き本体4と甲側支え部材16との間、即ち靴102内の前部の所定部位に確実に保持することができる。
【0045】
この第1の実施形態では、中敷き本体4の足指側前部6の裏面に滑止め部材32が配設されている。この滑止め部材32の表面には、適宜の滑止め形状が施されている。この滑止め部材32は、例えばゴム、合成ゴムなどの材料から形成され、例えば接着剤などにより中敷き本体4に固定される。この滑止め部材32を設けることにより、足指先からの力が中敷き本体4及び滑止め部材32を介して靴102の内底106に確実に伝達され、歩行、走行を安定させることができる。また、このように構成することにより、一対の芯索20,22の一端部(中敷き本体4の裏面に露出する端部)が滑止め部材32により被われ、これら芯索20,22の一端部をより確実に固定することができるとともに、中敷き2の前部底面を平坦にすることができる。この滑止め部材32は、中敷き本体4の少なくとも足指側前部6の裏面に設けることにより所望の効果を達成することができるが、中敷き本体全体の裏面に設けるようにしてもよい。
【0046】
更に、この第1の実施形態では、甲側支え部材16の内面に一対のカバー部材34が設けられている(図2図5及び図6参照)。このカバー部材34は、例えば織布、不織布、革、ゴム、合成樹脂などから形成され、上述した記載から理解されるように、一対の芯索20,22の他端部(甲側支え部材16の内面に露出する端部)を被うようになり、これら芯索20,22の他端部をより確実に固定することができる。
【0047】
この中敷き2は、図7に示すように、例えばウォーキングシューズ、運動シューズ、スポーツシューズなどの靴102内に収容され、その内底106の表面に載置される。この収容状態においては、図7に示すように、中敷き本体4の先端部が靴102の先端部110の下端部位内面に当接し、甲側支え部材16の先端部が靴102の先端部110の上端部位内面に当接するようになり、これにより、中敷き本体4及び甲側支え部材16、換言すると前坪14の靴102の先端側への移動が確実に抑えられ、この前坪14を靴102内の前部に確実に保持することができる。また、この前坪14の下端部側においては、靴102を履いたときには、足108が中敷き本体4の上に載るので、体重が足108を介して中敷き本体4に作用し、これによっても前坪14の下端部側の移動が抑えられる。
【0048】
この前坪14の上端側の移動をより確実に抑えるためには、図示していないが、甲側支え部材の外面に靴102の甲被部への保持を強化する保持強化部を設けることができる。保持強化部としては、例えば、少なくとも甲側支え部材16の外面に設けられた面ファスナ(雄型面ファスナ又は雌型面ファスナ)から構成することができ、このように面ファスナを設けることにより、中敷き2側の甲側支え部材16の移動をより確実に抑えことができるとともに、この前坪14を常に直立した状態に保つことができ、その結果、この中敷き2を収容した靴102の履き易さが改善される。
【0049】
また、中敷き2の甲側支え部材16の外面に設けた例えば雄型面ファスナ(又は雌型面ファスナ)に着脱自在に装着される例えば雌型面ファスナ(又は雄型面ファスナ)を靴102本体の甲被部112側内面に設けるようにしてもよい。これにより、さらに確実に前坪14を靴102本体内の所定部位に確実に保持することができる。これらの雄型面ファスナ(又は雌型面ファスナ)は、甲側支え部材16の外面に接着剤により貼付する、或いは糸(又は紐)で縫い付けることができる。
【0050】
このように面ファスナを利用して甲側支え部材16を靴102の甲被部112の内面に着脱自在に装着するようにしてもよいが、このように構成することに代えて、この甲側支え部材16を靴102の甲被部112の内面に接着剤などにより固定する、或いはこの甲被部112に糸などで縫い付けるようにしてもよい。
【0051】
この中敷き4を収容した靴102では、足108の第1趾と第2趾の間の趾股内に前坪14が位置するように靴102を履くようになる。この靴102を履いて歩行(走行)すると、前坪14が第1趾及び第2趾の間の趾股に作用し、これにより、歩くときの体重移動が踵から第1趾に向けて直線状に移動するようになり、その結果、足指先の力を靴底に伝えて安定的に歩行(走行)することができる。また、この歩行(走行)状態においては、前坪14が第1趾と第2趾との間の趾股に作用するために、地面を蹴る際に踏ん張りがきいて足の指先に力が入り、これによっても歩行(走行)を安定させることができ、また蹴る際の踏ん張りがきくために足指や足裏の筋力増強を図ることができる。その結果、歩行姿勢の改善につながり、腰痛、膝痛などを防止することができる。また、前坪14の外形が円筒状であるので、第1趾及び第2趾によりつかみやすく、これにより、足の指先に力が入って蹴る際により踏ん張りやすく、足指や足裏の筋力アップを図ることができる。
【0052】
例えば、前坪として図8に示すように構成するようにしてもよい。変形形態の前坪を示す図8において、この前坪14Aは、柱状部材52と、この柱状部材52を被う弾性スリーブとしての例えば円筒状弾性スリーブ54とから構成され、この柱状部材52及び円筒状弾性スリーブ54が中敷き本体4Aと甲側支え部材16Aとの間に配設されている。
【0053】
この変形形態では、柱状部材52の一端側に下雌ねじ孔56が設けられ、中敷き本体4Aを通して取付ねじ58の雄ねじ部60をこの下雌ねじ孔56に螺着することにより、柱状部材52の下端部が中敷き本体4Aに固定される。また、この柱状部材52の他端側に上雌ねじ孔62が設けられ、甲側支え部材16Aを通して取付ねじ64の雄ねじ部66をこの上雌ねじ孔62に螺着することにより、柱状部材52の上端部が甲側支え部材16Aに固定される。
【0054】
このような前坪14Aにおいては、柱状部材52が鉄、ステンレス鋼などの金属材料、硬質の合成樹脂材料などから形成することができ、このような材料から形成することにより、柱状部材52に剛性及び強度を持たせることができる。また、弾性スリーブ54としては、柔らかい合成樹脂材料、発泡樹脂材料などから形成することができ、このように構成することによって、足に優しいが第1と第2趾との間の趾股には刺激が強い中敷きを提供することができる。
【0055】
尚、別の変形形態の前坪として、取付ねじ58(又は取付ねじ64)を長くして柱状部材52及び甲側支え部材16A(又は柱状部材52及び中敷き本体4A)を挿通させ、甲側支え部材16A(又は中敷き本体4A)から突出する雄ねじ部60(又は66)にナット(図示せず)を螺着して固定するようにしてもよく、この場合、他方の取付ねじ64(又は58)は省略される。これにより、構成を簡易化でき組立性を向上させることができる。このような構成に代えて、柱状部材52を省略し、弾性スリーブ54内を取付ねじ58(又は64)の雄ねじ部60(又は66)を挿通させ、甲側支え部材16(又は中敷き本体4A)から突出する雄ねじ部60(又は66)にナットを螺着して固定するようにしてもよい
【0056】
らなる別の変形形態としての前坪では、前坪14Aと甲側支え部材16Aとを合成樹脂等により一体として構成してもよい。その場合は、前坪14Aの下端側を中敷き本体4に固定するようにすればよい。
【0057】
次いで、図9図11を参照して、本発明に従う中敷きの第2の実施形態について説明する。この第2の実施形態では、中敷き本体の足指側前部における足指を支える部分を含む領域に、中敷き本体の厚さを薄くした薄肉部を設けた点で、第1の実施形態のものと異なっている。
【0058】
図9において、この第2の実施形態の中敷き202においては、中敷き本体204の足指側前部206における足指を支える部分を含む領域に、中敷き本体204の厚さを薄くした薄肉部261が設けられ、この薄肉部261は、足指側前部に逆V字形状に設けてられている。この第2の実施形態では、図10に示すように、中敷き本体204の足が接する表面側の面を削り厚Dだけ除去して薄肉部261Aが形成されている。尚、上述した構成に限定されず、図11に示すように、中敷き本体204の足が接する側と反対側の靴が接する裏面側の面を削り厚Dだけ除去して薄肉部261Bを形成するようにしてもよく、或いは中敷き本体204の表面側及び裏面側の双方の面を所望の削り厚だけ除去して薄肉部を形成するようにしてもよい。この薄肉部261A(261B)を形成するための削り厚Dは任意であるが、足指の自由度ができるだけ確保でき、足指で踏ん張れることが望ましい。
【0059】
尚、第2の実施形態においては、薄肉部261(261A,261B)を逆V字形状に形成しているが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、各指の接する部分のみに薄肉部を形成するようにしてもよいし、各指との接する部分に加えて母趾球までを含む領域に薄肉部を形成するようにしてもよい。少なくとも親指を含む各指が中敷き本体204に接する部分を含む領域に薄肉部が存在していればよい。
【0060】
このように第2の実施形態においては、中敷き本体204の足指側前部における足指を支える部分を含む領域に、中敷き本体の厚さを薄くする薄肉部261(261A,261B)を設けたことにより、山道や階段を登るときに足指が中敷き本体204に接する部分が薄くなることによって、足指が踏ん張りやすくなり、踵側の負担が少なくなり、腰痛や膝痛を予防することができる。また、足指の自由度が向上するため、足指の筋力アップも期待できる。
【0061】
次に、図12及び図13を参照して、本発明に従う中敷きの第3の実施形態について説明する。この第3の実施形態では、親指の開き角度を調整するための調整部を設けた点で、上述の第1及び第2の実施形態と異なっている。
【0062】
図12及び図13において、この第3の実施形態の中敷き302においては、前坪14に加えて親指の開き角度を調整するための調整部319が設けられ、この調整部319は、中敷き本体304の前坪314が設けられた位置より足指先端側に設けられている。
【0063】
この調整部319は、前坪314と同様の材質及び形状を有していて、その下端部が中敷き本体304に固定され、その上端部が甲側支え部材316に固定されている。前坪314からの位置関係は、前坪314よりも足指先端側に距離Aだけ離れて調整部319は設けられ、この距離Aは各人の足の親指の大きさによって任意であるが、この第3の実施形態においては、この距離Aは、例えば25mmとしている。この距離Aは、各人の足指の大きさや形状により調整可能に構成してもよい。この距離Aの調整は、中敷き本体304に設けたスリットに調整部319の一端部を挿通するととともに、甲側抑え部材に設けたスリットにその他端部を挿通することにより行うことができる。
【0064】
この調整部319を設けることにより、親指を外方(人差し指とは反対側)に開く角度を調整することができる。例えば、スリットを用いて前後方向の位置を調整して、各人に合わせた最適な角度とすることにより、左右から体を押されたときにも足の親指や足の裏に力が入り踏ん張ることができる。また、その位置を左右方向にも調整することにより、各人毎の外反母趾を矯正することができる。
【0065】
第3の実施形態においては、前坪314が設けられた位置より足指先端側の位置に調整部319を設けることとしたが、さらに、親指と人差し指の開き角度が大きくなるように、その配設位置を親指方向に寄った位置に調整してこの調整部319を設けるようにしてもよい。この場合、前坪314から親指方向に斜めに新たなスリットを設けて、その新たなスリットに調整部319を挿通させることにより、位置の調整が可能となる。親指(第1趾)と人差し指(第2趾)の開き角度が大きくなるようにすることにより、さらに外反母趾を矯正することができる。
【0066】
この第3の実施形態においては、調整部319は、前坪14と同様の材質及び形状を有してもよい。例えば、上述した前坪14における柔軟性を有する中空スリーブとしての中空スリーブ18と、この中空スリーブ18を挿通して配設された一対の芯索20,22とを備えた構成としてもよいし、中空スリーブ18を省略し一対の芯索20,22のみの構成としてもよい。また、上述した柱状部材52と、この柱状部材52を被う弾性スリーブとしての円筒状弾性スリーブ54として調整部319としてもよい。その際に、前坪14の構成と調整部319の構成は異なってもよい。さらに、甲側支え部材316、前坪14及び調整部319を一体に形成してもよい。
【0067】
このように、第3の実施形態においては、前坪が設けられた位置より足指先端側に、親指の開き角度を調整するための調整部を設けているので、左右から体を押されたときにも足の親指や足の裏に力が入り踏ん張ることができる。また、その位置を調整することにより、各人毎の外反母趾を矯正することができる。
【0068】
以上、本発明に従う中敷き及びこれを備えた靴の種々の実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0069】
例えば、上述の実施形態では、中敷き本体を靴の内底全体の形状に対応させ、この内底全域を被うように収容するように構成しているが、このような構成に限定されず、中敷き本体を靴の内底の前部形状に対応させ、靴の内底の前部領域を被うように収容するようにしてもよい。
【0070】
また、例えば、上述の実施形態では、ウォーキングシューズ、運動シューズ、スポーツシューズなどの靴に適用して説明したが、本発明は、これら形態の靴に限定されず、ブーツ、雪用靴、長靴、作業シューズ、登山靴、釣り用靴などの各種形態の靴に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
2,202,302 中敷き
4,4A,204,304 中敷き本体
6 足指側前部
8 踵側後部
14,14A 前坪
16,16A,316 甲側支え部材
18 中空スリーブ
20,22 芯索
32 滑止め部材
52 柱状部材
54 弾性スリーブ
102 靴
106 内底
108 足
112 甲被部
261,261A,261B 薄肉部
319 調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13