(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】カーボンブラックの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09C 1/48 20060101AFI20240118BHJP
C01B 32/318 20170101ALI20240118BHJP
【FI】
C09C1/48
C01B32/318
(21)【出願番号】P 2019216485
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】517323751
【氏名又は名称】NaturaPax.EI合同会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519229002
【氏名又は名称】田島 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田島 大輔
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-520382(JP,A)
【文献】特開昭61-073773(JP,A)
【文献】特開平05-117544(JP,A)
【文献】特開2017-080662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00-3/12
15/00-17/00
C01B 32/00-32/991
B01J 21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タールを入れた加熱炉内に、供給速度500mL/min以上1000mL/min以下で不活性ガスを供給しながら、温度400℃以上800℃以下、時間30min以上90min以下の条件で、前記タールを加熱する炭化工程と、
前記炭化工程で得られた炭化物を賦活する賦活工程、と、
を有
し、
前記賦活工程は、前記加熱炉内に二酸化炭素を供給速度500mL/min以上700mL/min以下で供給しながら、温度600℃以上900℃以下、時間60min以上180min以下の条件で行うカーボンブラックの製造方法。
【請求項2】
前記タールは、海洋から回収されて破砕されたプラスチックから活性炭を得るための炭化工程で生じたタールである請求項1記載のカーボンブラックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タールを原料としたカーボンブラックの製造方法としては、特許文献1に記載された方法が挙げられる。この方法は、コールタールを分留して得られるクレオソート油と、蒸留残渣であるタールピッチとを、キノリン不溶分が0.7~2.0%、コークス残分が15~40%の範囲内に混和配合してなる組成もしくはこれを主体組成とする原料油を用い、酸素ガスを供給しながら熱分解反応させることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、導電性材料として市販されているアセチレンブラックやケッチェンブラックと比較して、嵩密度に優れたカーボンブラックが製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様のカーボンブラックの製造方法は、タールを入れた加熱炉内に、供給速度500mL/min以上1000mL/min以下で不活性ガスを供給しながら、温度400℃以上800℃以下、時間30min以上90min以下の条件で、前記タールを加熱する炭化工程と、前記炭化工程で得られた炭化物を賦活する賦活工程、と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の方法によれば、導電性材料として市販されているアセチレンブラックやケッチェンブラックと比較して、嵩密度に優れたカーボンブラックを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の導電性材料の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
本実施形態では、海洋から回収されて破砕されたプラスチックを原料とした導電性材料の製造方法を示す。つまり、本実施形態の方法では、海洋から回収されて破砕されたプラスチックから活性炭を得るとともに、この活性炭を得るための一工程である炭化工程で生じたタールを原料として用いて、カーボンブラックを製造する。
【0009】
[構成]
図1に示すように、実施形態の導電性材料の製造方法では、先ず、海洋から回収されたプラスチックごみ1を粉砕して、最大寸法が10mm~50mm程度の大きさの破片11とする。次に、破片11を水が入った容器2に入れて、分離工程を行う。これにより、水より比重の小さな破片11は浮遊物111となり、水より比重の大きな破片11は沈降物112になる。
【0010】
次に、浮遊物111を活性炭ろ過装置3に導入して、加圧加熱することにより、浮遊物111に含まれている塩素を活性炭31により除去する。この工程が塩素除去工程である。
次に、塩素が除去された浮遊物111aを乾燥機41のホッパー41aに導入する。乾燥機41の下流には、炭化炉として、第一の加熱炉42および第二の加熱炉43が接続されている。第二の加熱炉43の下流には、磁気分離器44、サイクロン分級器45、および粉体落下装置46が、この順に接続されている。
【0011】
これにより、ホッパー41aから乾燥機41に入った浮遊物111aは、60~80℃で熱風乾燥された後に、第一の加熱炉42内に入り、窒素ガス下で100~300℃で1~3時間加熱される。その後、第二の加熱炉43内に入り、窒素ガス下で400~600℃で1~3時間加熱される。この二段階の加熱により、浮遊物111aとして回収された後に塩素が除去された破片11が、炭化される。この工程が、活性炭を得るための炭化工程である。
【0012】
この炭化工程後に、第二の加熱炉43から出た物は、磁気分離器44に入り、金属は磁石に引きつけられて落下して回収容器47に回収される。炭化物は、磁石に引きつけられずにサイクロン分級器45に入る。
サイクロン分級器45に入った炭化物は比重で分級されて、塊状の炭化物がボトムノズルから排出され、粒状の炭化物がトップノズルから粉体落下装置46に入る。サイクロン分級器45および粉体落下装置46の下方となる部分に、ジェットミル5に向かうベルトコンベヤ15が配置されている。サイクロン分級器45のボトムノズルから排出された塊状の炭化物は、最大寸法が0.5mm~1.0mm程度の大きさ(粒状)に粉砕された後に、ベルトコンベヤ15に載る。また、粉体落下装置46から落下した粒状の炭化物もベルトコンベヤ15に載る。
【0013】
ベルトコンベヤ15に載った粒状の炭化物6は、チャンバー7内を通過する。このチャンバー7内に二酸化炭素を供給しながら、炭化物6に対してレーザ照射による三段階の加熱処理を行う。これにより、炭化物6は賦活処理されて活性炭61となる。この賦活処理としては、レーザ照射に代えて加熱炉内でのガス賦活を行ってもよいし、アルカリ賦活を行ってもよい。
得られた活性炭61は、塩酸による中和処理、純水による洗浄処理が行われた後、乾燥工程を経て、ジェットミル5に入って、粉砕される。
【0014】
一方、活性炭を得るための炭化工程で生じたタールは、第一の加熱炉42および第二の加熱炉43に接続されたタール排出管70から加熱炉71内に導入される。加熱炉71内に供給速度700mL/minで窒素ボンベ72から窒素ガスを供給しながら、600℃で60分間加熱することにより、タールは炭化物となる。この工程が、タールを加熱する炭化工程である。
その後、加熱炉71内に二酸化炭素ボンベ73から二酸化炭素を供給速度700mL/minで供給しながら、850℃で60分間加熱することにより、炭化物が賦活されて、カーボンブラックが得られる。この工程が、カーボンブラックを得るための賦活工程である。
【0015】
また、活性炭を得るための炭化工程で生じた一酸化炭素は、第一の加熱炉42および第二の加熱炉43に接続された一酸化炭素排出管74から、燃焼チャンバー81内に導入される。燃焼チャンバー81には、ウォータービット82からの水も導入される。燃焼チャンバー81内での水と一酸化炭素との反応により生じた熱は、加熱炉71へ供給されるとともに、活性炭ろ過装置3、高温空気発生器83、および蒸気タービン84へも供給される。高温空気発生器83で発生した高温空気が乾燥機41に供給される。蒸気タービン84は発電機85のモータを駆動する。
【0016】
[作用、効果]
本実施形態における、タールを原料として用いたカーボンブラックの製造方法によれば、導電性材料として市販されているアセチレンブラックやケッチェンブラックと比較して、嵩密度に優れたカーボンブラックが得られる。
また、分離工程により、ポリ塩化ビニルからなる破片11は沈降物112になるため、ポリ塩化ビニルは活性炭ろ過装置3に導入されない。よって、ポリ塩化ビニルは第一の加熱炉42および第二の加熱炉43に導入されない。また、浮遊物111に付着している塩素も活性炭ろ過装置3で除去されるため、第一の加熱炉42および第二の加熱炉43に導入されない。これにより、塩素による第一の加熱炉42および第二の加熱炉43の破壊が防止できる。
【0017】
また、活性炭を得るための賦活工程の加熱をレーザ照射で行うことで、加熱炉を用いて行うよりも熱効率が高くなるため、製造効率を高めることができる。
また、「海洋から回収されて破砕されたプラスチックを水中に入れて、浮遊物と沈降物とに分離する分離工程」以外に、プラスチックを種類(材質)で分離する工程を行わないため、プラスチックを種類で分離する手間が軽減できる。
さらに、本実施形態の方法で得られた活性炭61は、カルボキシル基の数が多く、比表面積も大きいため、電極用として好適なものとなる。
【符号の説明】
【0018】
1 海洋から回収されたプラスチックごみ
11 プラスチックごみの破片
111 浮遊物
111a 塩素が除去された浮遊物
112 沈降物
2 水が入った容器
3 活性炭ろ過装置
41 乾燥機
41a 乾燥機のホッパー
42 第一の加熱炉
43 第二の加熱炉
44 磁気分離器
45 サイクロン分級器
46 粉体落下装置
5 ジェットミル
6 粒状の炭化物
61 活性炭
7 チャンバー
70 タール排出管
71 加熱炉
72 窒素ボンベ
73 二酸化炭素ボンベ
74 一酸化炭素排出管
81 燃焼チャンバー
82 ウォータービット
83 高温空気発生器
84 蒸気タービン
85 発電機
15 ベルトコンベヤ