(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】嵌合式折板屋根用タイトフレーム
(51)【国際特許分類】
E04D 3/36 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
E04D3/36 A
(21)【出願番号】P 2020007360
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】593162095
【氏名又は名称】株式会社長谷川工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 周藏
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-241669(JP,A)
【文献】特開2009-215843(JP,A)
【文献】特開平07-317228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚部を介して屋根下地
に固定
されるフレーム母体の上部に、嵌合式の折板屋根材の山部の下面を支持する支持部
及び前記折板屋根材の山部の左右両側の傾斜部に
形成された係合凹部に係止する係止
部を具備する嵌合頭部が設けられ
た嵌合式折板屋根用タイトフレーム
であって、前記フレーム母体
、前記嵌合頭部及び前記脚部は、一枚の金属板
で一体成形され
たものであり、
前記フレーム母体は、立板部の左右両側背面方向に直角に折曲して形成された補強用折曲板部が設けられて平断面コ字状に構成され、また、前記嵌合頭部は、
上縁背面方向に直角に折曲して形成された四つの分断片が夫々
近接状態で連設されて構成される前記支持部
を具備し、この支持部は、中央側の二つの前記分断片が前記折板屋根材の緩傾斜状の山部を支持する緩傾斜支持部であり、また、両端の二つの前記分断片が前記緩傾斜状の山部に連設し前記係合凹部を構成する急傾斜板部を支持する急傾斜支持部であり、この両端の前記急傾斜支持部で前記係止部
が構成され
、また、前記脚部は、前記補強用折曲板部の下端に外方向に直角に折曲して形成され前記屋根下地に面接するように構成されたものであることを特徴とする嵌合式折板屋根用タイトフレーム。
【請求項2】
請求項1記載の嵌合式折板屋根用タイトフレームにおいて、夫々の前記補強用折曲板部の上縁には、外方向に直角に折曲して形成され前記嵌合頭部の下縁に連設される補強部材が設けられていることを特徴とする嵌合式折板屋根用タイトフレーム。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の嵌合式折板屋根用タイトフレームにおいて、前記立板部及び前記補強用折曲板部には、夫々、複数の円形の肉抜き穴が設けられていることを特徴とする嵌合式折板屋根用タイトフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌合式折板屋根用のタイトフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から嵌合式と称される折板構造屋根が実施されている。
【0003】
この嵌合式の折板構造屋根を簡単に説明すると、上部に嵌合頭部が設けられたタイトフレームと、この嵌合頭部の上面に支持される山部,及び嵌合頭部の左右両端部の係止部が係止可能な係合凹部を具備する嵌合式折板屋根材とを使用するものであり、タイトフレームの上方から折板屋根材を被嵌して下方へ荷重を加えるだけで、嵌合頭部の左右両端部に設けられている係止部に折板屋根材の係合凹部が引っ掛かり係止して山部の下面が嵌合頭部上面に支持され、嵌合頭部上で隣接する折板屋根材の端部のハゼ部同士を重ねてハゼ締めすることにより、隣接する折板屋根材同士が接合されると共に、係止部が係合凹部から係脱しないように保持される屋根構造である(例えば、特許文献1の使用状態を示す参考図及び使用状態を示す参考拡大断面図参照。)。
【0004】
このような嵌合式の折板構造屋根は、施工性に優れる上に、吊子固定式のような一箇所止めでなく、タイトフレームの嵌合頭部の少なくとも左右二箇所に直接的に折板屋根材が係止固定される構造であるから、屋根固定強度が高く、強風による吹上力に対しても優れた耐久性を発揮でき、異常気象による強風被害の発生が今後も懸念される昨今、この嵌合式の折板構造屋根への注目度が高くなってきている。
【0005】
また、この嵌合式の折板構造屋根に用いられるタイトフレームについてさらに説明すると、帯状の金属板が、山・谷が連続する形状(波形状)に折曲されてフレーム母体が形成されていると共に、上面に前記折板屋根材の山部の下面を支持でき且つ左右両端に折板屋根材の前記係合凹部に係止可能な係止部を有する嵌合頭部が、フレーム母体の山部の頂部にカシメ止めなどの止着手段によって付設されている構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来の嵌合式折板屋根用のタイトフレームは、別部品のフレーム母体と嵌合頭部とをカシメ止め等によって止着する作業が必要であるが、この止着作業に思いのほか手間がかかる。
【0008】
また、横幅(長さ)があるために高所での屋根下地(鉄骨)への固定(溶接)作業において取り回しが悪く(施工性が悪く)、嵩張るために輸送性も良くなかった。
【0009】
本発明は、このような従来の嵌合式折板屋根用タイトフレームの問題点に注目し、これを解決しようとするもので、フレーム母体と嵌合頭部とを一枚の金属板によって容易に構成可能となると共に、コンパクト化して取り回しが良く施工性・輸送性に優れる構成とすることも簡易に設計実現可能な嵌合式折板屋根用タイトフレームを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0011】
脚部12を介して屋根下地1に固定されるフレーム母体2の上部に、嵌合式の折板屋根材3の山部4の下面を支持する支持部7及び前記折板屋根材3の山部4の左右両側の傾斜部5に形成された係合凹部6に係止する係止部8を具備する嵌合頭部9が設けられた嵌合式折板屋根用タイトフレームであって、前記フレーム母体2、前記嵌合頭部9及び前記脚部12は、一枚の金属板Pで一体成形されたものであり、前記フレーム母体2は、立板部の左右両側背面方向に直角に折曲して形成された補強用折曲板部2Aが設けられて平断面コ字状に構成され、また、前記嵌合頭部9は、上縁背面方向に直角に折曲して形成された四つの分断片11が夫々近接状態で連設されて構成される前記支持部7を具備し、この支持部7は、中央側の二つの前記分断片11が前記折板屋根材3の緩傾斜状の山部4を支持する緩傾斜支持部であり、また、両端の二つの前記分断片11が前記緩傾斜状の山部4に連設し前記係合凹部6を構成する急傾斜板部を支持する急傾斜支持部であり、この両端の前記急傾斜支持部で前記係止部8が構成され、また、前記脚部12は、前記補強用折曲板部2Aの下端に外方向に直角に折曲して形成され前記屋根下地1に面接するように構成されたものであることを特徴とする嵌合式折板屋根用タイトフレームに係るものである。
【0012】
また、請求項1記載の嵌合式折板屋根用タイトフレームにおいて、夫々の前記補強用折曲板部2Aの上縁には、外方向に直角に折曲して形成され前記嵌合頭部9の下縁に連設される補強部材が設けられていることを特徴とする嵌合式折板屋根用タイトフレームに係るものである。
【0013】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の嵌合式折板屋根用タイトフレームにおいて、前記立板部及び前記補強用折曲板部2Aには、夫々、複数の円形の肉抜き穴17が設けられていることを特徴とする嵌合式折板屋根用タイトフレームに係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述のように構成したから、例えば金属プレス加工等の簡易加工によって一枚の金属板からフレーム母体と嵌合頭部とを容易に一体成形でき、しかも立板状のフレーム母体は、例えば実施例で示したように横幅を小さくしてコンパクトで取り回しが良く施工性・輸送性に優れる構成とすることも容易に設計実現可能であるなど、極めて実用性に優れた嵌合式折板屋根用タイトフレームとなる。
【0015】
また、本発明においては、支持部と係止部を具備する嵌合頭部を簡易構成により容易にフレーム母体と一体成形可能となり、しかも四つの分断片を折曲して支持部を構成するから、折板屋根の山部の形状に対応する形の嵌合頭部を形成することも容易に可能となるなど、一層実用性に優れた構成の嵌合式折板屋根用タイトフレームとなる。
【0016】
また、本発明においては、一枚板でありながら高強度を発揮できるフレーム母体を、簡易構成により容易に設計実現可能となる一層実用性に優れた構成の嵌合式折板屋根用タイトフレームとなる。
【0017】
また、本発明においては、脚部を介してフレーム母体を屋根下地に確固に固定可能となると共に、脚部をフレーム母体に簡易に一体成形可能となるなど、一層実用性に優れた構成の嵌合式折板屋根用タイトフレームとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】本実施例を示す、
図2とは別角度から視た斜視図である。
【
図6】本実施例の折曲加工前の金属板を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0020】
本発明の嵌合式折板屋根用タイトフレームAは、屋根下地1に対して固定するフレーム母体2の上部に、嵌合式の折板屋根材3の山部4の下面を支持する支持部7と,折板屋根材3の山部4の左右両側の傾斜部5に設けられた係合凹部6に係止する係止部8とを具備する嵌合頭部9が設けられているが、前記フレーム母体2は、前記屋根下地1に対し立板状に配設固定される一枚の金属板Pで構成され、このフレーム母体2を構成する金属板Pの上部が折曲形成されることによって前記嵌合頭部9がフレーム母体2の上部に一体成形されている。
【0021】
具体的には、嵌合頭部9は、フレーム母体2を構成する前記金属板Pの上部に、この金属板Pの上端部から下方に向かって切込まれる形状の切込部10が形成され、この切込部10の左右両側に存する分断片11が夫々直角に折曲されてこの折曲分断片11Aの上面が前記折板屋根材3の山部4の下面を支持する前記支持部7として構成されていると共に、左端に存する折曲分断片11Aの左端部と右端に存する折曲分断片11Aの右端部とが、折板屋根材3の前記係合凹部6に係止する前記係止部8として構成されている。
【0022】
そのため、例えば所定形状の金属板Pに、金属プレス加工等の既存の簡易加工を施すことによってフレーム母体2と嵌合頭部9とを容易に一体成形できる。
【0023】
また、立板状のフレーム母体2は、例えば実施例で示したように、横幅を小さくしてコンパクトで取り回しが良く施工性・輸送性に優れる構成とすることも簡易に設計実現可能である。
【実施例】
【0024】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0025】
先ず、本実施例で使用する嵌合式の折板屋根材3について説明すると、塗装鋼板や亜鉛メッキ鋼板などの金属板が折り曲げ加工されて形成されているものであって、
図1に示すように、谷部13と、その両方の側端部から斜め上方に向かって突出する山部半体4A・4Bとを備えている。即ち、谷部13の両側部に山部半体4A・4Bを有する形状に形成されている。
【0026】
また、一側(図面右側)の山部半体4Aは、谷部13の一端から外方へ斜め上方に向かって突出する形状の傾斜部5と、この傾斜部5の上部に内方(谷部13側)に向かって段状に屈曲した後に改めて外方へ斜め上方に向かって突出する形状の係合凹部6と、この係合凹部6の上端から外方に向かって緩やかに傾斜突出する形状の頂部14と、この頂部14の端部から上方に向かって突出する断面略逆L字状の下ハゼ部15とを有する形状に構成され、他側の山部半体4Bは、一側の山部半体4Aと略対称形状の傾斜部5と係合凹部6と頂部14とを有すると共に、頂部14の端部から上方に向かって突出する断面略逆U字状であって前記下ハゼ部15に上方から被嵌可能な上ハゼ部16を有する形状に構成されている。
【0027】
そして、隣接させる折板屋根材3の前記下ハゼ部15と前記上ハゼ部16とを上下に重ねた上でハゼ締めすることで隣り合う折板屋根材3
同士を接合し得るように構成されていると共に、ハゼ締めにより接合された一側の山部半体4Aと他側の山部半体4Bとが、折板構造屋根の山部4となるように構成されている(
図1参照)。
【0028】
本実施例の嵌合式折板屋根用タイトフレームAは、屋根下地1(梁材(鉄骨)等)に対して固定するフレーム母体2の上部に、前記折板屋根材3の山部4(前記山部半体4A・4B)の下面を支持する支持部7と,折板屋根材3の山部4の左右両側の前記傾斜部5に設けられた係合凹部6に係止する係止部8とを具備する嵌合頭部9が設けられている。
【0029】
具体的には、前記フレーム母体2は、前記屋根下地1に対し立板状に配設固定される一枚の金属板Pで構成されている。
【0030】
また、このフレーム母体2は、
図2~
図4に示すように、正面視で上下方向に長さを有する長方形板状に形成され
た立板部と、この
立板部の左右両側
を、補強目的で後方へ直角に折曲
して形成された
補強用折曲板部2Aとからなる平断面コ字状体に構成されている。図中符号17は軽量化目的でフレーム母体2に貫通形成されている肉抜き穴17である。
【0031】
また、このフレーム母体2を構成する金属板Pは、左右の補強用折曲板部2Aの夫々の下方に延長板部12を有する形状に形成されており(
図6参照)、この左右の延長板部12が補強用折曲板部2Aに対し外方へ直角に折曲されて、この左右の延長折曲下板部12が前記屋根下地1に面接状態で固定するための脚部12として構成されている。図中符号18は屋根下地1への固定(溶接等)に利用する固定穴である。
【0032】
本実施例は、このフレーム母体2を構成する前記金属板Pの上部が折曲形成されることによって、前記嵌合頭部9がフレーム母体2の上部に一体成形されている。
【0033】
具体的には、嵌合頭部9は、フレーム母体2を構成する前記金属板Pの上部に、この金属板Pの上端部から下方に向かって切込まれる切込部10が形成され、この切込部10の左右両側に存する分断片11が夫々後方へ直角に折曲されてこの折曲分断片11Aの上面が前記折板屋根材3の山部4の下面を支持する前記支持部7として構成されている(
図2,
図3,
図5参照)。
【0034】
さらに詳しくは、前記切込部10は、前記金属板Pの上部の左右方向に間隔を置いた複数箇所(図面は金属板P上部の中央とその左右の合計三箇所)に形成されていることにより、金属板P上部の複数箇所(図面は四箇所)に分断片11が設けられている。
【0035】
また、切込部10は、
図6に示すようなV字状の切込みとされ、このV字状切込部10の左側に設けられている前記分断片11が、この左側分断片11に臨設するV字状切込部10の(左側)切込縁10Aと直交する折縁Eに沿って直角に折曲されていると共に、V字状切込部10の右側に設けられている前記分断片11が、この右側分断片11に臨設するV字状切込部10の(右側)切込縁10Aと直交する折縁Eに沿って直角に折曲されていることにより、左右に隣接する折曲分断片11Aの上面
同士が面一ではなく山形に並設するように構成されていて、この山形に並設する折曲分断片11Aの上面が前記支持部7として構成されている。
【0036】
また、中央並びに左右の三箇所の切込部10のうち、左側と右側のものは、中央のものに対して下方側が中央に寄るようにして斜めに切り込まれていて、これにより中央の切り込み部10の左右の支持部7(折曲分断片11A)よりも、左側切込部10の左側に存する折曲分断片11Aの支持部7と、右側切込部10の右側に存する折曲分断片11Aの支持部7の方が大きく傾斜する形状に形成されている(
図6参照)。
【0037】
そして、
図1に示す一般的な嵌合式の折板屋根材3は、緩傾斜状の前記山部4の左右に前記係合凹部6を構成する急傾斜板部が存在しているが、中央の切込部10の左右に存する折曲分断片11Aの緩傾斜支持部7で山部4の頂部14の下面を支持し得、且つ左端と右端の折曲分断片11Aの急傾斜支持部7で山部4の左右の、前記頂部14に隣接して前記係合凹部6を構成する急傾斜板部を支持し得るように構成されている。
【0038】
また、この急傾斜支持部7を具備する左端の折曲分断片11Aの左端部と、右端に存する折曲分断片11Aの右端部とが、折板屋根材3の前記係合凹部6(の断面く字状部分)に係止する前記係止部8として構成されている。
【0039】
また、本実施例の嵌合式折板屋根用タイトフレームAについて、更に詳しく説明すると、フレーム母体2の左右幅が65~75mm程度(好ましくは70mm程度)、前記脚部12位置での左右幅でも130~140mm程度(好ましくは135mm程度)となるように設定構成されている。即ち、従来の嵌合式折板屋根用のタイトフレームは、横幅が1000mm程もある非常に長い大型金具であったが、この従来品に比して本実施例は非常に小さい横幅を具備するコンパクトな金具となっており、これにより高所でも取り回しが良く施工性に優れると共に、コンパクト設計のために製作において加工し易く量産性に富み、且つ多数を効率的に運ぶことが可能で輸送性にも優れる。
【0040】
以上のように構成されている本実施例の嵌合式折板屋根用タイトフレームAは、金属板Pに金属プレス加工等の既存の簡易加工を施すことによってフレーム母体2と嵌合頭部9とを容易に一体成形できる。
【0041】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0042】
1 屋根下地
2 フレーム母体
2A 補強用折曲板部
3 折板屋根材
4 山部
5 傾斜部
6 係合凹部
7 支持部
8 係止部
9 嵌合頭部
11 分断片
12 脚部
17 肉抜き穴
P 金属板