(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】便蓋装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/12 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
A47K13/12
(21)【出願番号】P 2020143716
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】天野 万那
(72)【発明者】
【氏名】木稲 洋介
(72)【発明者】
【氏名】荒津 義和
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-170537(JP,A)
【文献】特開2005-244(JP,A)
【文献】特開2004-180739(JP,A)
【文献】特開2013-52032(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0007083(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00 - 17/02
E03D 9/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシングの前方に配置され前記ケーシングに対して回動可能な便蓋と、
前記便蓋を電動開閉する電動開閉装置と、
を備え、
前記電動開閉装置は、
駆動部と、
前記駆動部の作動に応じて回動する回動部と、
前記便蓋と接続され、前記回動部の回動を前記便蓋に伝達する伝達部と、
を有し、
前記回動部は、前記伝達部に向かって突出する突出部を有し、
前記伝達部は、前記回動部と係合するアーム部を有し、
前記アーム部は、左右方向において前記突出部と重なり前記突出部が摺動可能なレール部を有し、
前記回動部は、前記便蓋の開方向へ回動するときに、前記突出部を前記レール部に沿って摺動させることで、前記伝達部を前方へ押して前記便蓋を前方へスライドさせることを特徴とする便蓋装置。
【請求項2】
前記ケーシングは、上面部と、前記上面部の前端から前方へ向かって下方へ傾斜する傾斜面部と、を有することを特徴とする請求項1記載の便蓋装置。
【請求項3】
前記伝達部は、前記ケーシングの外に設けられ、
前記電動開閉装置は、前記伝達部の側方を覆うカバー部をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の便蓋装置。
【請求項4】
前記伝達部は、前記アーム部から前記カバー部に向かって突出する突起部をさらに有し、
前記カバー部は、左右方向において前記突起部と重なり前記突起部が摺動可能なガイド部を有することを特徴とする請求項3記載の便蓋装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、便蓋装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーシングに対して回動可能な便蓋を電動開閉する便蓋装置がある(例えば、特許文献1)。近年、便蓋装置のデザイン性を向上させるために、便蓋とケーシングとの割面をストレート形状にすることが検討されている。これを実現する手段として、アーム部品を介して便蓋をケーシングに取り付けるアームヒンジ構造を採用することが考えられる。例えば、アーム部品を便蓋の裏面に取り付けることで、便蓋とケーシングとの割面をストレート形状にすることができる。
【0003】
通常、便蓋とケーシングとの間には、便蓋を回動させる際に便蓋がケーシングに干渉しないように、隙間が設けられる。アームヒンジ構造では、便蓋及びケーシングの寸法ばらつきに加えて、アーム部品の寸法ばらつきも考慮して、便蓋とケーシングとの間の隙間を通常よりも大きくすることが求められる。そのため、便蓋を閉めた際に、便蓋とケーシングとの間の隙間が目立ってしまい、デザイン性が低下してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、アームヒンジ構造を採用した場合にも、便蓋を回動させる際に便蓋がケーシングに干渉することを抑制しつつ、便蓋を閉めた際の便蓋とケーシングとの間の隙間を可及的に小さくすることができる便蓋装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、ケーシングと、前記ケーシングの前方に配置され前記ケーシングに対して回動可能な便蓋と、前記便蓋を電動開閉する電動開閉装置と、を備え、前記電動開閉装置は、駆動部と、前記駆動部の作動に応じて回動する回動部と、前記便蓋と接続され、前記回動部の回動を前記便蓋に伝達する伝達部と、を有し、前記回動部は、前記伝達部に向かって突出する突出部を有し、前記伝達部は、前記回動部と係合するアーム部を有し、前記アーム部は、左右方向において前記突出部と重なり前記突出部が摺動可能なレール部を有し、前記回動部は、前記便蓋の開方向へ回動するときに、前記突出部を前記レール部に沿って摺動させることで、前記伝達部を前方へ押して前記便蓋を前方へスライドさせることを特徴とする便蓋装置である。
【0007】
この便蓋装置によれば、便蓋を開方向に回動させる際に、回動部が便蓋を前方へスライドさせることで、便蓋とケーシングとの間に大きな隙間を確保することができる。これにより、便蓋を回動させる際に、便蓋がケーシングに干渉することを抑制できる。また、便蓋を開方向に回動させる際に、便蓋を前方へスライドさせることで隙間を確保するため、便蓋を閉めた際の便蓋とケーシングとの間の隙間を可及的に小さくすることができる。これにより、デザイン性を向上させることができる。また、この便蓋装置によれば、回動部の突出部と伝達部のレール部とによって、回動部の回動を伝達部の前方への移動に変換して、便蓋を前方へスライドさせる。これにより、比較的シンプルな構造で、便蓋を開方向に回動させる際に、便蓋を前方へスライドさせることができる。したがって、電動開閉装置を小型化することができ、デザインの自由度を高くすることができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記ケーシングは、上面部と、前記上面部の前端から前方へ向かって下方へ傾斜する傾斜面部と、を有することを特徴とする便蓋装置である。
【0009】
この便蓋装置によれば、ケーシングの上面部の前方に傾斜面部を設けることで、便蓋の後端部が傾斜面部の上方を通過するようにして、便蓋を回動させることができる。これにより、傾斜面部を設けない場合と比べて、便蓋を前方へスライドさせる長さを短くすることができる。したがって、電動開閉装置を小型化することができる。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記伝達部は、前記ケーシングの外に設けられ、前記電動開閉装置は、前記伝達部の側方を覆うカバー部をさらに有することを特徴とする便蓋装置である。
【0011】
この便蓋装置によれば、伝達部をケーシングの外に設けることで、ケーシングの上面部に伝達部を避けるための長孔を設ける必要がない。また、伝達部の側方を覆うカバー部を設けることで、伝達部をケーシングの外に設けた場合にも、使用者から伝達部が見えることを抑制できる。これにより、デザイン性を向上させることができる。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、前記伝達部は、前記アーム部から前記カバー部に向かって突出する突起部をさらに有し、前記カバー部は、左右方向において前記突起部と重なり前記突起部が摺動可能なガイド部を有することを特徴とする便蓋装置である。
【0013】
この便蓋装置によれば、カバー部に伝達部の突起部が摺動可能なガイド部を設けることで、便蓋を開方向に回動させる際に、伝達部をガイド部に沿って移動させることができる。これにより、電動開閉装置による便蓋の開閉動作をより安定させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の態様によれば、アームヒンジ構造を採用した場合にも、便蓋を回動させる際に便蓋がケーシングに干渉することを抑制しつつ、便蓋を閉めた際の便蓋とケーシングとの間の隙間を可及的に小さくすることができる便蓋装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るトイレ装置を模式的に表す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る便蓋装置の便蓋が閉じた状態を模式的に表す側面図である。
【
図3】実施形態に係る便蓋装置の便蓋が開いた状態を模式的に表す側面図である。
【
図4】実施形態に係る便蓋装置の電動開閉装置の周辺を模式的に表す斜視図である。
【
図5】実施形態に係る便蓋装置の電動開閉装置の周辺を模式的に表す平面図である。
【
図6】第1状態における電動開閉装置の一部を模式的に表す断面図である。
【
図7】第2状態における電動開閉装置の一部を模式的に表す断面図である。
【
図8】第3状態における電動開閉装置の一部を模式的に表す断面図である。
【
図9】第1状態における電動開閉装置の別の一部を模式的に表す断面図である。
【
図10】第2状態における電動開閉装置の別の一部を模式的に表す断面図である。
【
図11】第3状態における電動開閉装置の別の一部を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係るトイレ装置を模式的に表す斜視図である。
図2は、実施形態に係る便蓋装置の便蓋が閉じた状態を模式的に表す側面図である。
図3は、実施形態に係る便蓋装置の便蓋が開いた状態を模式的に表す側面図である。
図1~
図3に表したように、実施形態に係るトイレ装置100は、便器10と、便蓋装置20と、を備える。
【0017】
本願明細書においては、「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「右側方」、「左側方」のそれぞれは、開いた状態の便蓋22を背にして便座24に着座した使用者からみた方向とする。
【0018】
便器10は、いわゆる腰掛け大便器である。便器10は、下方へ向けて窪むボウル部を有する。便器10は、ボウル部において使用者の尿や便などの排泄物を受ける。
【0019】
便蓋装置20は、ケーシング21と、便蓋22と、電動開閉装置23と、便座24と、を有する。ケーシング21は、便器10の後部の上に設けられる。ケーシング21は、中空の箱状であり、例えば、電動開閉装置23の一部などを内蔵する。また、ケーシング21は、例えば、使用者の局部を洗浄するための機能部や使用者を検知するセンサなどを内蔵していてもよい。
【0020】
ケーシング21は、上面部21aと、前面部21bと、背面部21cと、側面部21dと、を有する。上面部21aは、ケーシング21の上端を構成する略水平な面である。この例では、上面部21aは、後方へ向かってわずかに下方へ傾斜している。前面部21bは、ケーシング21の前端を構成する立面である。背面部21cは、ケーシング21の後端を構成する立面である。側面部21dは、ケーシング21の左右の側端を構成する立面である。
【0021】
この例では、ケーシング21は、上面部21aの前端から前方へ向かって下方へ傾斜する傾斜面部21eをさらに有する。傾斜面部21eの上端は、上面部21aの前端と接続されている。また、傾斜面部21eの下端は、前面部21bの上端と接続されている。つまり、傾斜面部21eは、上面部21aの前端と前面部21bの上端とを接続している。
【0022】
便蓋22は、電動開閉装置23に軸支されることで、ケーシング21に対して回動可能に設けられている。
図2は、便蓋22が閉じた状態を表している。
図3は、便蓋22が開いた状態を表している。便蓋22は、閉じた状態で、ケーシング21の前方に配置されている。便蓋22の下には、使用者が着座する便座24が設けられている。便座24は、ケーシング21に対して回動可能に軸支されている。便蓋22は、便蓋22が閉じた状態において、便座24の上方を覆う。
【0023】
電動開閉装置23は、便蓋22を軸支し、電動で開閉する。電動開閉装置23は、例えば、使用者を検知するセンサの検知結果や使用者による操作部(リモコン)の操作などに基づいて、便蓋22を電動で開閉する。電動開閉装置23は、例えば、ケーシング21の左右の端部のそれぞれに設けられる。つまり、便蓋装置20は、例えば、左右に一対の電動開閉装置23を有する。電動開閉装置23については、後述する。
【0024】
図4は、実施形態に係る便蓋装置の電動開閉装置の周辺を模式的に表す斜視図である。
図5は、実施形態に係る便蓋装置の電動開閉装置の周辺を模式的に表す平面図である。
図4及び
図5は、
図1に示した領域A1の拡大図である。
図4及び
図5では、便蓋22を省略している。
図4及び
図5に表したように、電動開閉装置23は、駆動部30と、回動部40と、伝達部50と、カバー部60と、を有する。
【0025】
駆動部30は、便蓋22を回動させるための駆動力を付与する。駆動部30は、例えば、モータなどを有する。駆動部30は、作動時に回転する軸部31を有する。軸部31は、言い換えれば、駆動部30の駆動力を出力するための出力軸である。
【0026】
回動部40は、駆動部30の作動に応じて回動する。回動部40は、本体部41と、突出部42と、を有する。本体部41は、駆動部30と係合している。突出部42は、本体部41から伝達部50に向かって突出している。
【0027】
この例では、本体部41は、係合部41aと、延出部41bと、を有する。係合部41aには、左右方向に貫通する孔部41hが設けられている。孔部41hには、駆動部30の軸部31が挿通されている。これにより、係合部41aは、軸部31と係合し、軸部31の回転に応じて、回転する。なお、係合部41aは、孔部41hの代わりに、軸部31が突出する方向に窪む凹部を有していてもよい。
【0028】
延出部41bは、便蓋22が閉じた状態において、係合部41aから後方へ向かって延びている。延出部41bは、係合部41aの回転に応じて、回動する。突出部42は、延出部41bの先端(すなわち、係合部41aとは反対側の端部)から伝達部50に向かって突出している。突出部42は、延出部41bの回動に応じて、円弧状の軌跡で位置を変化させる。
【0029】
伝達部50は、便蓋22と接続され、回動部40の回動を便蓋22に伝達する。伝達部50は、少なくとも一部が回動部40と左右方向に重なる位置に設けられる。伝達部50は、アーム部51と、接続部52と、突起部53と、を有する。
【0030】
アーム部51は、回動部40と係合している。アーム部51は、突出部42が摺動可能なレール部51aを有する。突出部42がレール部51aに対して摺動可能に係合することで、アーム部51と回動部40とが係合している。レール部51aは、左右方向において、突出部42と重なる位置に設けられている。この例では、レール部51aは、左右方向に貫通し、便蓋22が閉じた状態において、上下方向に延びる長孔である。レール部51aは、突出部42が突出する方向に窪む溝であってもよい。
【0031】
接続部52は、アーム部51の前端に設けられており、便蓋22と接続される。接続部52は、例えば、便蓋22の裏面(すなわち、便蓋22が閉じた状態において、下方を向く面)に接続される。突起部53は、アーム部51からカバー部60に向かって突出している。この例では、突起部53は、便蓋22が閉じた状態において、レール部51aの前方に位置する。
【0032】
この例では、回動部40及び伝達部50は、ケーシング21の外に設けられている。一方、駆動部30は、ケーシング21の内部に設けられている。ケーシング21には、左右方向に貫通する孔部が設けられている。駆動部30の軸部31は、この孔部からケーシング21の外に突出し、係合部41aの孔部41hに挿通されている。
【0033】
カバー部60は、ケーシング21の外に設けられた回動部40の及び伝達部50の少なくとも一部の側方を覆っている。この例では、カバー部60は、回動部40及び伝達部50の少なくとも一部の上方及び前方も覆っている。
【0034】
カバー部60の前面部60aには、前後方向に貫通し上下方向に延びる長孔状の孔部60hが設けられている。孔部60hには、伝達部50のアーム部51が挿通されている。接続部52は、カバー部60(前面部60a)よりも前方に位置している。
【0035】
また、この例では、アーム部51は、軸部31(係合部41a)を中心とする円弧状に湾曲している。アーム部51を湾曲させることで、便蓋22を回動させる際の、アーム部51の上下方向の移動範囲を狭くすることができる。これにより、カバー部60の孔部60hの上下方向の幅を可及的に小さくすることができる。
【0036】
以下、電動開閉装置23の動きについて、説明する。
電動開閉装置23は、便蓋22を開方向に回動させる際に、閉じた状態の便蓋22を前方へスライドさせてから、便蓋22の開方向への回動を開始させる。以下、便蓋22が閉じた状態かつ前方へスライドする前の状態を第1状態、便蓋22が閉じた状態かつ前方へスライドした後の状態を第2状態、便蓋22が開いた状態を第3状態、とする。
【0037】
図6は、第1状態における電動開閉装置の一部を模式的に表す断面図である。
図7は、第2状態における電動開閉装置の一部を模式的に表す断面図である。
図8は、第3状態における電動開閉装置の一部を模式的に表す断面図である。
図6~
図8は、
図5に示したB1-B2線による断面図である。
【0038】
図6に表したように、第1状態において、回動部40の突出部42は、第1位置にある。この例では、第1位置は、係合部41aの後方である。このとき、突出部42は、レール部51a内の一端(上端)に位置する。
【0039】
図7に表したように、駆動部30が作動して軸部31が便蓋22の開方向(時計回りの方向)に回転すると、軸部31と係合する係合部41aが便蓋22の開方向に回転する。これにより、延出部41bが係合部41aを軸にして回動し、突出部42が第1位置から第2位置に移動する。第2位置は、第1位置よりも前方かつ下方である。つまり、第1状態から第2状態になるとき、突出部42は、前方かつ下方へ移動する。この例では、第2位置は、係合部41aの後方かつ下方である。
【0040】
突出部42は、第1位置から第2位置に移動する際に、レール部51a内の一端(上端)から他端(下端)まで、レール部51aに沿って下方へ摺動する。また、このとき、突出部42は、レール部51aを前方へ押す。これにより、アーム部51及び接続部52(すなわち、伝達部50の全体)が前方へ押され、接続部52に接続された便蓋22が前方へスライドする。つまり、伝達部50は、第1状態から第2状態になる際には、回動部40とともに回動せずに、前方へスライド移動する。これにより、便蓋22は、閉じた状態で前方へスライドする。
【0041】
このように、回動部40は、第1状態から第2状態になるときに、突出部42をレール部51aに沿って摺動させることで、伝達部50を前方へ押して便蓋22を前方へスライドさせる。便蓋22が前方へスライドすることで、便蓋22とケーシング21との間の隙間28は、大きくなる。つまり、第2状態における隙間28の前後方向の幅W2は、第1状態における隙間28の前後方向の幅W1よりも大きい。
【0042】
図8に表したように、軸部31が便蓋22の開方向にさらに回転すると、係合部41aが便蓋22の開方向にさらに回転する。これにより、延出部41bが係合部41aを軸にして回動し、突出部42が第2位置から第3位置に移動する。第3位置は、第2位置よりも前方かつ上方である。つまり、第2状態から第3状態になるとき、突出部42は、前方かつ上方へ移動する。この例では、第3位置は、係合部41aの前方である。
【0043】
突出部42は、第2位置から第3位置に移動する際に、レール部51aを前方かつ上方へ押す。これにより、アーム部51及び接続部52(すなわち、伝達部50の全体)が前方かつ上方へ押され、接続部52に接続された便蓋22が上方へ回動する。つまり、伝達部50は、第2状態から第3状態になる際には、回動部40とともに回動することで、便蓋22を回動させる。これにより、便蓋22は、前方へスライドした位置から開く。
【0044】
電動開閉装置23は、便蓋22を閉める際には、上記の第3状態から、第2状態を経て、第1状態になる。つまり、電動開閉装置23は、便蓋22を閉方向に回動させる際に、便蓋22の閉方向への回動を終了した後に、閉じた状態の便蓋22を後方へスライドさせる。
【0045】
突出部42は、第3位置から第2位置に移動する際に、レール部51aを後方かつ下方へ引き込む。これにより、アーム部51及び接続部52(すなわち、伝達部50の全体)が後方かつ下方へ引き込まれ、接続部52に接続された便蓋22が下方へ回動する。つまり、伝達部50は、第3状態から第2状態になる際には、回動部40とともに回動することで、便蓋22を回動させる。これにより、便蓋22が閉まる。
【0046】
突出部42は、第2位置から第1位置に移動する際に、レール部51aに沿って上方へ摺動するとともに、レール部51aを後方へ引き込む。これにより、アーム部51及び接続部52(すなわち、伝達部50の全体)が後方へ引き込まれ、接続部52に接続された便蓋22が後方へスライドする。つまり、伝達部50は、第2状態から第1状態になる際には、回動部40とともに回動せずに、後方へスライド移動する。
【0047】
このように、電動開閉装置23は、便蓋22を開く際には、便蓋22を前方へスライドさせることで便蓋22とケーシング21との間の隙間28を広げてから、便蓋22を開方向に回動させる。また、電動開閉装置23は、便蓋22を閉める際には、便蓋22を閉方向に回動させてから、便蓋22を後方へスライドさせることで便蓋22とケーシング21との間の隙間28を狭める。
【0048】
図9は、第1状態における電動開閉装置の別の一部を模式的に表す断面図である。
図10は、第2状態における電動開閉装置の別の一部を模式的に表す断面図である。
図11は、第3状態における電動開閉装置の別の一部を模式的に表す断面図である。
図9~
図11は、
図5に示したC1-C2線による断面図である。
図9~
図11に表したように、カバー部60の内部には、伝達部50の突起部53が摺動可能なガイド部61が設けられている。ガイド部61は、左右方向において突起部53と重なる位置に設けられている。
【0049】
ガイド部61は、突起部53が突出する方向に窪む溝である。ガイド部61は、前後方向に延びる第1部分61aと、第1部分61aの前端から前方へ向かって円弧状に延びる第2部分61bと、を有する。
【0050】
図9に表したように、第1状態において、突起部53は、第1部分61aの後端に位置する。
【0051】
図10に表したように、突起部53は、第1状態から第2状態になるときに、第1部分61aの後端から第1部分61aの前端(すなわち、第2部分61bの後端)まで、第1部分61aに沿って前方へ摺動する。これにより、伝達部50は、回動部40とともに回動せずに、前方へスライド移動する。
【0052】
図11に表したように、突起部53は、第2状態から第3状態になるときに、第2部分61bの後端から第2部分61bの前端まで、第2部分61bに沿って前方へ円弧状に移動する。これにより、伝達部50は、回動部40とともに回動する。
【0053】
このように、ガイド部61は、ガイド部61に沿って突起部53を移動させることで、伝達部50の移動を規制する。
【0054】
なお、便蓋装置20においては、使用者が手で便蓋22を開閉することもできる。この場合、使用者は、例えば、便蓋22を前方へスライドさせてから、便蓋22を開く。また、この場合、使用者は、例えば、便蓋22を閉じてから、便蓋22を後方へスライドさせる。あるいは、電動開閉装置23は、便蓋22が第3状態から第2状態になったことを検知したら、駆動部30を駆動させて、便蓋22を後方へスライドさせてもよい。
【0055】
以下、実施形態に係る便蓋装置20の作用効果について、説明する。
通常、便蓋とケーシングとの間には、便蓋を回動させる際に便蓋がケーシングに干渉しないように、隙間が設けられる。便蓋とケーシングとの割面をストレート形状にするためにアームヒンジ構造を採用する場合には、便蓋及びケーシングの寸法ばらつきに加えて、アーム部品の寸法ばらつきも考慮して、便蓋とケーシングとの間の隙間を通常よりも大きくすることが求められる。そのため、便蓋を閉めた際に、便蓋とケーシングとの間の隙間が目立ってしまい、デザイン性が低下してしまうという問題がある。
【0056】
これに対し、実施形態に係る便蓋装置20によれば、便蓋22を開方向に回動させる際に、回動部40が便蓋22を前方へスライドさせることで、便蓋22とケーシング21との間に大きな隙間を確保することができる。これにより、便蓋22を回動させる際に、便蓋22がケーシング21に干渉することを抑制できる。また、便蓋22を開方向に回動させる際に、便蓋22を前方へスライドさせることで隙間を確保するため、便蓋22を閉めた際の便蓋22とケーシング21との間の隙間を可及的に小さくすることができる。これにより、デザイン性を向上させることができる。
【0057】
また、回動部40の突出部42と伝達部50のレール部51aとによって、回動部40の回動を伝達部50の前方への移動に変換して、便蓋22を前方へスライドさせる。これにより、比較的シンプルな構造で、便蓋22を開方向に回動させる際に、便蓋22を前方へスライドさせることができる。したがって、電動開閉装置23を小型化することができ、デザインの自由度を高くすることができる。
【0058】
また、ケーシング21の上面部21aの前方に傾斜面部21eを設けることで、便蓋22の後端部が傾斜面部21eの上方を通過するようにして、便蓋22を回動させることができる。これにより、傾斜面部21eを設けない場合と比べて、便蓋22を前方へスライドさせる長さを短くすることができる。したがって、電動開閉装置23を小型化することができる。
【0059】
また、伝達部50をケーシング21の外に設けることで、ケーシング21の上面部21aに伝達部50を避けるための長孔を設ける必要がない。また、伝達部50の側方を覆うカバー部60を設けることで、伝達部50をケーシング21の外に設けた場合にも、使用者から伝達部50が見えることを抑制できる。これにより、デザイン性を向上させることができる。
【0060】
また、カバー部60に伝達部50の突起部53が摺動可能なガイド部61を設けることで、便蓋22を開方向に回動させる際に、伝達部50をガイド部61に沿って移動させることができる。これにより、電動開閉装置23による便蓋22の開閉動作をより安定させることができる。
【0061】
以上のように、実施形態によれば、アームヒンジ構造を採用した場合にも、便蓋を回動させる際に便蓋がケーシングに干渉することを抑制しつつ、便蓋を閉めた際の便蓋とケーシングとの間の隙間を可及的に小さくすることができる便蓋装置が提供される。
【0062】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、トイレ装置や便蓋装置が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0063】
10 便器、 20 便蓋装置、 21 ケーシング、 21a 上面部、 21b 前面部、 21c 背面部、 21d 側面部、 21e 傾斜面部、 22 便蓋、 23 電動開閉装置、 24 便座、 28 隙間、 30 駆動部、 31 軸部、 40 回動部、 41 本体部、 41a 係合部、 41b 延出部、 41h孔部、 42 突出部、 50 伝達部、 51 アーム部、 51a レール部、 52 接続部、 53 突起部、 60 カバー部、 60a 前面部、 60h 孔部、 61 ガイド部、 61a、61b 第1、第2部分、 100 トイレ装置、 W1、W2 幅