IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TOTO株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-便蓋装置 図1
  • 特許-便蓋装置 図2
  • 特許-便蓋装置 図3
  • 特許-便蓋装置 図4
  • 特許-便蓋装置 図5
  • 特許-便蓋装置 図6
  • 特許-便蓋装置 図7
  • 特許-便蓋装置 図8
  • 特許-便蓋装置 図9
  • 特許-便蓋装置 図10
  • 特許-便蓋装置 図11
  • 特許-便蓋装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】便蓋装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 13/12 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
A47K13/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020143825
(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公開番号】P2022039042
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】木稲 洋介
(72)【発明者】
【氏名】天野 万那
(72)【発明者】
【氏名】荒津 義和
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-170537(JP,A)
【文献】特開2004-180739(JP,A)
【文献】特開2003-260010(JP,A)
【文献】実開平3-67193(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00 - 17/02
E03D 9/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の上に設置されるケーシングと、
前記ケーシングの前方に配置され前記ケーシングに対して回動可能な便蓋と、
前記便蓋を電動開閉する電動開閉装置と、
を備え、
前記電動開閉装置は、
駆動部と、
前記便蓋の閉状態と開状態との間で前記駆動部により回動される回動軸と、
先端側に前記便蓋が取り付けられ、基端側で前記回動軸に相対移動可能に嵌合するとともに前記回動軸と一緒に回動する出力軸と、
前記便蓋を閉状態から開状態に開く場合に前記出力軸を基準位置から前方位置に向けて移動させる移動部と、を有することを特徴とする便蓋装置。
【請求項2】
前記移動部は、前記便蓋が閉状態である場合に前記出力軸を前方に向けて付勢する付勢部材を有することを特徴とする請求項1に記載の便蓋装置。
【請求項3】
前記電動開閉装置は、前記便蓋が閉状態にある場合に前記出力軸が前方に移動するのを規制する規制部を有し、
前記出力軸は、前記基準位置から所定の角度に回動されたときに、前記規制部による規制が解除されて前記移動部により前方位置に移動されることを特徴とする請求項1または2に記載の便蓋装置。
【請求項4】
前記電動開閉装置は、前記ケーシングに着脱可能に設けられるユニットとなっていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の便蓋装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に便蓋装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便器の上に設置されるケーシングと、ケーシングに対して回動可能な便蓋と、便蓋を電動開閉する電動開閉装置と、を備えた便蓋装置がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-200508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
便蓋が開閉(回動)するときに便蓋がケーシングに干渉(接触)しないようにするには、ケーシングと便蓋との間に隙間を確保する必要がある。そうすると、便蓋が閉じているときには、ケーシングと便蓋との間の隙間が目立ってしまい、デザイン性が低下してしまう虞がある。
【0005】
本発明の態様はかかる課題の認識に基づいてなされたものであり、ケーシングと便蓋との間の隙間を可及的に小さくすることができる便蓋装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、便器の上に設置されるケーシングと、前記ケーシングの前方に配置され前記ケーシングに対して回動可能な便蓋と、前記便蓋を電動開閉する電動開閉装置と、を備え、前記電動開閉装置は、駆動部と、前記便蓋の閉状態と開状態との間で前記駆動部により回動される回動軸と、先端側に前記便蓋が取り付けられ、基端側で前記回動軸に相対移動可能に嵌合するとともに前記回動軸と一緒に回動する出力軸と、前記便蓋を閉状態から開状態に開く場合に前記出力軸を基準位置から前方位置に向けて移動させる移動部と、を有することを特徴とする便蓋装置である。
【0007】
この便蓋装置によれば、便蓋を閉状態から開状態に開くときに、移動部により出力軸を前方に移動させるので、便蓋がケーシングに接触するのを抑制することができる。また、便蓋が閉状態の場合には、便蓋とケーシングとの間の隙間を可及的に小さくすることができるので、デザイン性を向上できる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記移動部は、前記便蓋が閉状態である場合に前記出力軸を前方に向けて付勢する付勢部材を有することを特徴とする便蓋装置である。
【0009】
この便蓋装置によれば、移動部は付勢部材を有しているので、複雑な機構を用いることなく、簡単に出力軸を前方に移動させることができる。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記電動開閉装置は、前記便蓋が閉状態にある場合に前記出力軸が前方に移動するのを規制する規制部を有し、前記出力軸は、前記基準位置から所定の角度に回動されたときに、前記規制部による規制が解除されて前記移動部により前方位置に移動されることを特徴とする便蓋装置である。
【0011】
この便蓋装置によれば、便蓋は、閉状態から所定の角度に回動されたときに、出力軸の規制が解除されて前方に移動する。すなわち、便蓋は、開作動中に前方に移動するので、例えば便蓋を手動で持ち上げた場合でも、便蓋を前方に移動させることができる。
【0012】
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記電動開閉装置は、前記ケーシングに着脱可能に設けられるユニットとなっていることを特徴とする便蓋装置である。
【0013】
この便蓋装置によれば、電動開閉装置は、ケーシングと別体となっているので、既存のケーシングや便蓋に簡単に取り付けることができる。また、電動開閉装置のみをケーシングから取り外してメンテナンスや交換作業の作業性を向上できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の態様によれば、ケーシングと便蓋との間の隙間を可及的に小さくすることができる便蓋装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態による便蓋装置を備えたトイレ装置示す斜視図である。
図2】便蓋装置を上方からみた平面図である。
図3】便蓋の開閉状態を示す側面図である。
図4図2中の矢示A-A方向からみた断面図である。
図5】便蓋が前方に移動した状態を示す図4と同様の断面図である。
図6】便蓋が開状態となった場合を示す図4と同様の断面図である。
図7図2中の電動開閉装置を矢示B-B方向からみた断面図である。
図8】出力軸が基準位置から前方位置に移動した状態を示す図7と同様の断面図である。
図9】出力軸が前方位置から開位置に回動した状態を示す図7と同様の断面図である。
図10】電動開閉装置の出力軸の移動軌跡を示す説明図である。
図11】電動開閉装置を単体で示す斜視図である。
図12図11中の上ケース、下ケース、および出力軸を取り外した状態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施形態による便蓋装置を備えたトイレ装置を示す斜視図である。
以下の実施形態の説明では、「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「右側方」、および「左側方」を用いるが、これらの方向は、開いた状態の便蓋30を背にして便座5に着座した使用者からみた方向とする。
【0017】
図1に示すように、トイレ装置1は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)2と、便器2の上側に設けられた便蓋装置10とを備える。便器2は、下方に向けて窪んだボウル部において使用者の尿や便などの排泄物を受ける。
【0018】
図2は、便蓋装置を上方からみた平面図である。
図3は、便蓋の開閉状態を示す側面図である。
図4は、図2中の矢示A-A方向からみた断面図である。
図5は、便蓋が前方に移動した状態を示す図4と同様の断面図である。
図6は、便蓋が開状態となった場合を示す図4と同様の断面図である。
便蓋装置10は、便器2の上に設置されるケーシング20と、ケーシング20に対して回動可能な便蓋30と、便蓋30を電動開閉する電動開閉装置40と、を備えている。
【0019】
ケーシング20は、便器2の後上方に設置されている。ケーシング20は、内部が空洞のボックス状に形成され、便蓋30を電動開閉させる電動開閉装置40および電動開閉装置40を制御する制御部(図示せず)などが内蔵されている。また、ケーシング20には、その他に便座5を電動開閉させる便座用の電動開閉装置、便座5の温度を制御する便座暖房ユニット、人体局部の洗浄を行う洗浄ユニット、臭気成分を低減する脱臭ユニット、およびリモコン等の操作部と通信可能な通信ユニット等(いずれも図示せず)が必要に応じて内蔵されている。
【0020】
ケーシング20は、上面部20aと、前面部20bと、背面部20cと、側面部20dと、を有する。上面部20aは、ケーシング20の上端を構成する略水平な面である。この例では、上面部20aは、後方へ向かってわずかに下方へ傾斜している。前面部20bは、ケーシング20の前端を構成する立面である。背面部20cは、ケーシング20の後端を構成する立面である。側面部20dは、ケーシング20の左右の側端を構成する立面である。
【0021】
この例では、ケーシング20は、上面部20aの前端から前方へ向かって下方へ傾斜する傾斜面部20eをさらに有する。傾斜面部20eの上端は、上面部20aの前端と接続されている。また、傾斜面部20eの下端は、前面部20bの上端と接続されている。つまり、傾斜面部20eは、上面部20aの前端と前面部20bの上端とを接続している。
【0022】
傾斜面部20eの左右両端側には、便蓋30を回動可能に取り付けるための便蓋取付部25がそれぞれ設けられている。便蓋取付部25は、ケーシング20の側面部20dから左右方向の内側に窪んで形成されている。図1図6に示すように。便蓋取付部25は、ケーシング20に着脱可能な蓋部27により覆われている。図4図6に示すように、蓋部27は、前面側に後述の伝達部32が貫通する貫通孔27aを有している。便蓋取付部25の前側には、便座5がケーシング20に対して回動可能に軸支されている。
【0023】
便蓋30は、ケーシング20の前方に配置されケーシング20に対して回動可能となっている。便蓋30は、ケーシング20の便蓋取付部25から突出する電動開閉装置40の出力軸60に取り付けられている。図2図4図6に示すように、便蓋30は、便座5を覆う平板状の平板部31と、平板部31の後端31a側に位置して左右両端側にそれぞれ設けられた伝達部32とを有している。
【0024】
図1図2に示すように、平板部31の後端31aは、ケーシング20の傾斜面部20eに沿って一直線状に延びている。また、便蓋30の閉状態で、平板部31の後端31aとケーシング20との間の隙間S1は、可及的に小さくなっている。これらにより、便蓋装置10は、便蓋30が閉状態にあるときに、ケーシング20から便蓋30に向けて滑らかなの印象を与えることができるので、デザイン性を向上できる。
【0025】
伝達部32は、ケーシング20の便蓋取付部25に対応する位置に設けられている。伝達部32は、後述する電動開閉装置40の出力軸60と平板部31との間を接続している。これにより、伝達部32は、出力軸60の回動を平板部31に伝達している。そして、伝達部32は、平板部31接続される接続部33と、接続部33から便蓋取付部25に向けて延びるアーム部34と、アーム部34の先端側に設けられ出力軸60に係合する係合部35と、を有している。
【0026】
接続部33は、例えばL字状の板材からなり、平板部31の裏面31bに固着されている。アーム部34は、接続部33の後端から下方に向けて湾曲した板材からなり、途中部位が蓋部27の貫通孔27aに貫通している。図4に示すように、アーム部34は、例えばU字状に形成され、接続部33と係合部35との間を接続している。
【0027】
これにより、蓋部27の貫通孔27aの上下方向の寸法が短くても、便蓋30を後方に向けて十分に回動させることができる。すなわち、例えばアーム部34を接続部33と係合部35との間で一直線状に形成した場合に比べて、蓋部27の貫通孔27aの上下方向の長さを短くすることができる。
【0028】
係合部35は、便蓋取付部25に配置され、アーム部34に接続されている。係合部35には、中央部に厚さ方向に貫通する挿通孔35aが形成されている。この挿通孔35aには、後述する電動開閉装置40の出力軸60が挿通される。なお、挿通孔35aは、厚さ方向に貫通せずに、出力軸60が係合する凹部となっていてもよい。
【0029】
次に、便蓋30を電動開閉する電動開閉装置40について説明する。
図7は、図2中の電動開閉装置を矢示B-B方向からみた断面図である。
図8は、出力軸が基準位置から前方位置に移動した状態を示す図7と同様の断面図である。
図9は、出力軸が前方位置から開位置に回動した状態を示す図7と同様の断面図である。
図10は、電動開閉装置の出力軸の移動軌跡を示す説明図である。
図11は、電動開閉装置を単体で示す斜視図である。
図12は、図11中の上ケース、下ケース、および出力軸を取り外した状態を示す分解斜視図である。
【0030】
図2に示すように、電動開閉装置40は、便蓋取付部25の左右方向にそれぞれ位置して、ケーシング20の内部に設けられている。電動開閉装置40は、図示しない制御部を介して電力源に接続され、制御部からの指令信号により便蓋30を開閉させる。制御部は、例えばリモコンや人体検知センサなどから送信された指令信号に基づき、電動開閉装置40を作動させることで便蓋30を開閉させる。
【0031】
電動開閉装置40は、駆動部42と、駆動部42に接続される動力伝達部44と、動力伝達部44に接続される出力部50と、を有している。電動開閉装置40は、駆動部42、動力伝達部44、および出力部50がケーシング20とは別個の1つのユニットとして形成されている。
【0032】
これにより、電動開閉装置40は、既存のケーシング20や便蓋30に簡単に取り付けることができる。また、電動開閉装置40は、ケーシング20を便器2から取り外すことなく、ケーシング20から取り外すことができるので、メンテナンスを簡単に行うことができる。
【0033】
駆動部42は、制御部に接続されるモータを有し、モータの出力を動力伝達部44に伝達する。動力伝達部44は、一端側がモータに接続され、他端側が回動軸58に接続されるギヤ部を有している。これにより、モータの出力は、動力伝達部44を介して回動軸58に伝達される。
【0034】
出力部50は、駆動部42とは反対側で動力伝達部44に接続されている。図2に示すように、出力部50は、便蓋取付部25に左右方向で対面している。そして、出力部50は、外郭を形成するケース52と、ケース52の内部を延びる回動軸58と、回動軸58に取り付けられる出力軸60と、出力軸60を移動させる移動部70と、を有している。
【0035】
図11図12に示すように、ケース52は、下ケース53と、下ケース53の上側に位置する上ケース54と、を有している。下ケース53と上ケース54とは、ねじ55により固定されている。下ケース53は、後述する移動部70が取り付けられる取付部53aと、出力軸60が前方に移動するのを規制する規制部53bと、を有している。
【0036】
図7図9に示すように、取付部53aは、下ケース53から後方に向けて延びている。取付部53aは、出力軸60の基端部61に対応した位置に形成されている。取付部53aは、内部に移動部70が取り付けられる。規制部53bは、下ケース53の内面のうち取付部53aの前方に位置している。すなわち、規制部53bは、取付部53aと前後方向で対面している。規制部53bには、便蓋30が閉状態にある場合に、出力軸60の突出部63が当接する。これにより、規制部53bは、便蓋30が閉状態にある場合に、出力軸60が前方に移動するのを規制する。
【0037】
規制部53bの上方には、前斜め上方に向けて傾斜する傾斜部53cが形成されている。この傾斜部53cは、便蓋30の閉状態であるときの出力軸60位置から所定の角度に回動した場合(図9の状態)に、出力軸60の突出部63が摺動する部分となっている。すなわち、傾斜部53cは、規制部53bにより出力軸60が前方に移動するのを解除する部分となっている。
【0038】
上ケース54は、回動軸58や出力軸60の上方を覆っている。図7図9に示すように、上ケース54の上端側には、出力軸60の突出部63が移動する円弧状の空間S2が形成されている。下ケース53と上ケース54とは、ねじ56により動力伝達部44に固定されている。
【0039】
図10に示すように、ケース52は、便蓋取付部25に左右方向で対面する側面部52aに出力軸60の接続軸部65が挿通する軸部挿通孔52bが形成されている。この軸部挿通孔52bは、回動軸58の回動によって移動する出力軸60(接続軸部65)の移動軌跡に対応した形状となっている。具体的には、軸部挿通孔52bは、中央部から前斜め上方に向けて延びてから前端側で後斜め上方に向けて屈曲している。
【0040】
回動軸58は、ケース52の内部に位置して、動力伝達部44から突出している。回動軸58は、便蓋30の閉状態(図1図4の状態)と開状態(図6の状態)との間で、駆動部42により回動される。
【0041】
出力軸60は、先端側に便蓋30が取り付けられ、基端側で回動軸58に相対移動可能に嵌合するとともに回動軸58と一緒に回動する。図7図11に示すように、出力軸60は、ケース52の内部に位置して、回動軸58に嵌合する基端部61と、基端部61からケース52の軸部挿通孔52bを貫通して外側に向けて突出する接続軸部65と、接続軸部65に接続された先端部67と、を有している。
【0042】
図7図9図12に示すように、基端部61は、出力軸60の基端側に位置している。この基端部61は、長孔62aを有する本体部62と、本体部62から外側に向けて突出する突出部63と、を有している。本体部62は有底筒状に形成されている。図7に示すように、本体部62の長孔62aは、便蓋30が閉じた状態で前後方向に延びている。一方、突出部63は、便蓋30が閉じた状態で本体部62から前方に向けて延びている。
【0043】
本体部62の長孔62aは、長手方向の長さが回動軸58よりも長く形成されている。換言すると、図7に示すように、長孔62aは、回動軸58よりも前後方向に長く形成されている。一方、長孔62aは、長手方向に直交する短手方向(図7の上下方向)の長さが回動軸58とほぼ同じ長さとなっている。これにより、出力軸60は、回動軸58と一緒に回動するとともに、回動軸58に対して摺動移動可能となっている。
【0044】
図7に示すように、回動軸58が長孔62aの前端側に位置している場合は、便蓋30が閉じた状態となっており、この状態が出力軸60の基準位置となっている。一方、図8に示すように、回動軸58が長孔62aの後端側に位置している場合は、便蓋30が閉状態から所定の角度(例えば、10~30度)開き、かつ前方に移動した状態となっており、この状態が出力軸60の前方位置となっている。
【0045】
突出部63は、本体部62の前端側から下ケース53の内面に向けて延びている。図12に示すように、突出部63は、出力軸60の軸方向に沿って延びている。突出部63の先端側は、便蓋30が閉状態で下ケース53の規制部53bに当接している。本実施形態では、突出部63は、先端の一部が下ケース53の規制部53bに当接している。
【0046】
これにより、突出部63が規制部53bや傾斜部53cを摺動するときの摩擦音(異音)の発生を抑制するとともに、摺動抵抗による駆動部42への負荷を低減することができる。なお、突出部63は、先端の全体が規制部53bに当接していてもよい。
【0047】
接続軸部65は、本体部62の側面から外側(便蓋取付部25側)に向けて延びている。この接続軸部65は、基端部61と先端部67とを接続している。接続軸部65は、ケース52の軸部挿通孔52bを挿通している。
【0048】
図10に示すように、便蓋30が閉状態にある場合には、軸部挿通孔52bの下端側に接続軸部65が位置している(図10の点線参照)。この場合、接続軸部65の軸線は、回動軸58の軸線と同軸上に位置している。接続軸部65が軸部挿通孔52bの下端側に位置している場合の出力軸60の位置が基準位置となっている。
【0049】
一方、回動軸58が所定の角度に回動して、出力軸60の突出部63が規制部53bから解除された場合には、後述する移動部70により出力軸60が前側位置に移動させられるので、軸部挿通孔52bの前端側に接続軸部65が移動する(図10の一点鎖線参照)。この場合、接続軸部65の軸線は、回動軸58の軸線から外れる。
【0050】
その後、回動軸58がさらに回動した場合には、接続軸部65の軸線が回動軸58の軸線からずれた位置にあるので、軸部挿通孔52bの上端側に接続軸部65が移動する(図10の二点鎖線参照)。接続軸部65が軸部挿通孔52bの上端側に位置して、出力軸60が図10中の二点鎖線で示す開位置にあるときは、便蓋30が開状態(全開状態)となっている。
【0051】
先端部67は、接続軸部65の先端側に接続され、ケース52の外側に位置している。先端部67は、便蓋取付部25に位置している。図4図6に示すように、先端部67は、便蓋取付部25で便蓋30を構成する係合部35の挿通孔35aに挿通されている。これにより、電動開閉装置40は、出力軸60の回動により便蓋30を開閉させる。また、電動開閉装置40は、出力軸60の移動により便蓋30を前後方向に移動させる。この出力軸60の移動は、ケース52の取付部53aに設けられた移動部70によりなされる。
【0052】
移動部70は、下ケース53の取付部53a内に設けられる。この移動部70は、便蓋30を閉状態から開状態に開く場合に出力軸60を基準位置から前方位置に向けて移動させる。図7図9に示すように、移動部70は、取付部53aの内部に挿入される付勢部材72と、付勢部材72の付勢力により出力軸60押圧する押圧部材74と、を有する。
【0053】
付勢部材72は、出力軸60が基準位置にある場合に、押圧部材74が出力軸60を押圧するように付勢するばね部材となっている。なお、付勢部材72は、ばね部材に限らず、例えば弾性を有するゴムなどの樹脂部材でもよい。押圧部材74は、付勢部材72と出力軸60の基端部61との間に位置している。
【0054】
図7に示すように、出力軸60が基準位置にあり便蓋30が閉状態となっている場合には、移動部70が出力軸60を押圧しても出力軸60の突出部63が規制部53bに当接しているので、出力軸60の移動が規制される。一方、図8に示すように、回動軸58が回動することにより出力軸60が回動された場合には、突出部63が規制部53bから傾斜部53cに移動するので、出力軸60が移動部70により押圧されて基準位置から前方位置に移動する。
【0055】
すなわち、出力軸60は、基準位置から所定の角度に回動されたときに、規制部53bによる規制が解除されて移動部70により前方位置に移動される。そして、出力軸60が基準位置から前方位置へ移動することにより、便蓋30が前方に移動する。これにより、ケーシング20と便蓋30の後端31aとの間の隙間S1の寸法が大きくなるので、便蓋30がケーシング20に接触するのを抑制できる。
【0056】
本実施形態による便蓋装置10は、上述の如き構成を有するもので、次に便蓋装置10の作動について説明する。
【0057】
便蓋装置10は、例えばリモコン等の操作部からの指示や、人体検知センサによる使用者の検知により、便蓋30の開閉が電動開閉装置40により電気的に行われる。
【0058】
ここで、例えばトイレ装置のデザインとして、ケーシングと便蓋との間の隙間をストレート形状(一直線状)にしようとした場合には、電動開閉装置の出力軸に接続されるアームヒンジを便蓋に設けることが考えられる。一方、アームヒンジを採用した場合には、ケーシング、便蓋、およびアームヒンジの製造公差や組立公差を考慮して、ケーシングと便蓋との間の隙間を確保しなければ便蓋が開閉するときに便蓋がケーシングに接触してしまう虞がある。一方、ケーシングと便蓋との間の隙間を確保すると、その隙間が目立ってしまい、デザイン性が低下する虞がある。
【0059】
そこで、本実施形態では、便蓋30が閉状態にある場合には、ケーシング20と便蓋30との間の隙間S1を可及的に小さくしている。一方、便蓋30が開閉作動する場合には、便蓋30を前方に移動させて、便蓋30がケーシング20に接触しないようにしている。具体的には、電動開閉装置40の出力軸60は、回動するとともに、前後方向に移動可能となっている。以下、便蓋30が開閉作動するときの電動開閉装置40の作動について説明する。
【0060】
まず、図7に示すように、便蓋30が閉状態にある場合には、突出部63が規制部53bに当接することにより、付勢部材72の付勢力に抗するように出力軸60の基端部61が押圧部材74を押圧する。この場合、回動軸58は、前後方向に延びる長孔62aの前端側に位置している。
【0061】
図4に示すように、便蓋30が閉状態にある場合には、ケーシング20と便蓋30との間の隙間S1を可及的に小さくしている。これにより、ケーシング20の傾斜面部20eと便蓋30の平板部31とが滑らかな印象となり、かつ隙間S1が目立たないのでデザイン性を向上できる。
【0062】
便蓋30が閉状態にある場合には、回動軸58の軸線と出力軸60の接続軸部65の軸線とが同軸上に位置している。従って、回動軸58の回動により突出部63が規制部53bから傾斜部53cに到達するまでの間は、出力軸60は前後方向および左右方向に移動することなく基準位置(図10中の点線で示す位置)で回動する。
【0063】
そして、図8に示すように、回動軸58を回動させた場合には、それに伴い出力軸60も回動する。この場合、突出部63が規制部53bを上方に向けて摺動移動して傾斜部53cに到達すると、突出部63が規制部53bによる規制から解除される。また、出力軸60を構成する基端部61の長孔62aの長手方向と付勢部材72の付勢力の方向とが同じ方向になる。
【0064】
これにより、出力軸60の基端部61は、付勢部材72の付勢力により前方に向けて押圧される。その結果、出力軸60は、長孔62aに挿通された回動軸58に対して相対移動することで、基準位置から前方位置に移動する。すなわち、出力軸60の先端部67は、図10中の一点鎖線で示す前方位置に移動する。
【0065】
出力軸60が基準位置から前方位置に移動するときの所定の回動角度は、例えば10~30度程度に設定されている。なお、この回動角度は、10~30度に限定されない。この回動角度は、例えば便蓋30が閉状態にある場合のケーシング20と便蓋30との間の隙間S1の大きさや、ケーシング20の形状などを考慮して、便蓋30がケーシング20に接触しないように、実験、シミュレーションなどにより設定される。
【0066】
図5に示すように、便蓋30は、閉状態から所定の角度に開いた場合に、ケーシング20との間の隙間S1が大きくなるように前方に向けて移動する。これにより、便蓋30が閉状態にあるときにケーシング20と便蓋30との間の隙間S1が小さくても、便蓋30が開閉するときにケーシング20と接触するのを抑制できる。
【0067】
その後、回動軸58をさらに回動させた場合には、接続軸部65の軸線が回動軸58の軸線からずれているので、出力軸60の先端部67は回動しながら図10中の二点鎖線で示す開位置に移動する。この場合、図9に示すように、出力軸60の突出部63は、上ケース54の空間S2内を移動する。これにより、図6に示すように、便蓋30を開状態(全開状態)にすることができる。
【0068】
この場合、図4図6に示すように、ケーシング20は、上面部20aの前方に傾斜面部20eを有している。これにより、便蓋30の後端31aが傾斜面部20eの上方を通過するようにして、便蓋30を開閉させることができる。従って、傾斜面部20eを設けない場合と比べて、便蓋30を前方へ移動させる長さを短くすることができる。
【0069】
そして、便蓋30を開状態から閉状態にする場合には、駆動部42により回動軸58を逆回動させる。出力軸60が開位置から前方位置に移動した後には、突出部63が傾斜部53cを規制部53bに向けて摺動移動する。これにより、出力軸60の基端部61は、付勢部材72の付勢力に抗して移動部70を押圧することにより基準位置に移動する。
【0070】
かくして、本実施形態による便蓋装置10は、便蓋30を閉状態から開状態に開くときに、移動部70により出力軸60を前方に移動させるので、便蓋30がケーシング20に接触するのを抑制することができる。また、便蓋30が閉状態の場合には、便蓋30とケーシング20との間の隙間S1を可及的に小さくすることができるので、デザイン性を向上できる。
【0071】
また、移動部70は付勢部材72を有しているので、複雑な機構を用いることなく、簡単に出力軸60を前方に移動させることができる。また、便蓋30は、閉状態から所定の角度に回動されたときに、出力軸60の規制が解除されて前方に移動する。すなわち、例えば便蓋を前方に移動させてから開作動させた場合には、使用者が閉状態にある便蓋を手動で持ち上げることができない虞がある。
【0072】
しかし、本実施形態による便蓋装置10は、便蓋30が開作動中に前方に移動するので、例えば便蓋30を手動で持ち上げた場合でも、便蓋30を前方に移動させることができる。また、便蓋30を手動で開状態から閉状態にした場合でも、便蓋30が前方に突出した状態とならないので、便蓋30の閉状態ではケーシング20と便蓋30との間の隙間S1を常に小さくすることができる。従って、便蓋装置10は、デザイン性と使用者の使い勝手とを兼ね備えたものとすることができる。
【0073】
また、電動開閉装置40は、駆動部42、動力伝達部44、および出力部50が一体となったユニットとなっており、ケーシング20と別体となっているので、既存のケーシング20や便蓋30に簡単に取り付けることができる。また、電動開閉装置40のみをケーシング20から取り外してメンテナンスや交換作業の作業性を向上できる。
【0074】
なお、上述した実施形態では、移動部70が付勢部材72を有することにより、付勢部材72の付勢力で出力軸60を基準位置と前方位置との間で移動させた場合を例に挙げて説明した、しかし、本発明はこれに限らず、例えば移動部70は、電気的に作動するソレノイドなどでもよい。
【0075】
また、上述した実施形態では、便蓋30は、出力軸60に係合する伝達部32を設けた場合を例に挙げて説明した、しかし、本発明はこれに限らず、例えば伝達部32を設けることなく、便蓋に出力軸60が係合する凹部が設けられていてもよい。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便蓋装置10が備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0077】
1 トイレ装置
2 便器
5 便座
10 便蓋装置
20 ケーシング
20a 上面部
20b 前面部
20c 背面部
20d 側面部
20e 傾斜面部
25 便蓋取付部
27 蓋部
27a 貫通孔
30 便蓋
31 平板部
31a 後端
31b 裏面
32 伝達部
33 接続部
34 アーム部
35 係合部
35a 挿通孔
40 電動開閉装置
42 駆動部
44 動力伝達部
50 出力部
52 ケース
52a 側面部
52b 軸部挿通孔
53 下ケース
53a 取付部
53b 規制部
53c 傾斜部
54 上ケース
55 ねじ
56 ねじ
58 回動軸
60 出力軸
61 基端部
62 本体部
62a 長孔
63 突出部
65 接続軸部
67 先端部
70 移動部
72 付勢部材
74 押圧部材
S1 隙間
S2 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12