(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】人協働ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 5/02 20060101AFI20240118BHJP
B25J 19/06 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B25J5/02 Z
B25J19/06
(21)【出願番号】P 2022033995
(22)【出願日】2022-03-05
【審査請求日】2023-03-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522088977
【氏名又は名称】梅馨堂合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179165
【氏名又は名称】宇都宮 将之
(72)【発明者】
【氏名】梅野 真
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-000685(JP,A)
【文献】特開2018-015885(JP,A)
【文献】国際公開第2016/151724(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 5/02
B25J 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットと、走行可能な支持台と、センサと、実験台とからなる人協働ロボットシステムであって、
前記実験台に走行レールを設け、
前記支持台の一方端は当該走行レールに摺動可能な状態で結合し、
当該支持台の先端側には前記ロボットを載置し、
前記支持台に前記センサを設け、
前記センサはロボットの作業範囲に人が侵入したことを検知することを特徴とする人協働ロボットシステム。
【請求項2】
ロボットと、走行可能な支持台と、センサと、実験台とからなる人協働ロボットシステムであって、
前記実験台に走行レールを設け、
前記支持台の一方端は当該走行レールに摺動可能な状態で結合し、
当該支持台の先端側には前記ロボットを載置し、
前記支持台に前記センサを設け、
前記センサはロボットの作業範囲に人が侵入したことを検知し、
当該センサを中心とする小さい略扇形状の防護領域と、センサを中心とする大きい略扇形状の警告領域の2つのセンサ検出範囲を有することを特徴とする人協働ロボットシステム。
【請求項3】
前記実験台の天板の下部中央から支柱板を当該実験台の長手方向を支える状態で設け、
当該支柱板に前記走行レール2本を平行となる様に上下に配置し、
当該走行レールと支持台を摺動可能な状態で結合することを特徴とする請求項1又は2に記載の人協働ロボットシステム。
【請求項4】
前記支持台に駆動装置を設け、
当該駆動装置にピニオンを結合し、前記走行レールの2本の間にラックを支柱板に設置し、
前記ピニオンと前記ラックを摺動可能な状態で配置することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の人協働ロボットシステム。
【請求項5】
前記ロボット及び前記駆動装置に接続されるケーブル類を保持するケーブルキャリアを設け、
前記上部の走行レールの設置位置としては、前記ケーブルキャリアの可動部端が、前記支持台の下部側に固定できる高さで設置することを特徴とする請求項4に記載の人協働ロボットシステム。
【請求項6】
前記センサとしてセーフティレーザスキャナを用い、検知範囲として警告領域と防護領域の2つの検知範囲を設けることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の人協働ロボットシステム。
【請求項7】
制御装置により、
前記センサのセンサ検出範囲のうち防護領域及び警告領域に被検知物の反応があるかを検知し、いずれの領域にも反応が無い場合は前記支持台と前記ロボットを通常運転させ、前記センサのセンサ検出範囲のうち防護領域内に反応がなく、警告領域内で人の侵入を検知した場合は、支持台とロボットを減速運転させ、
前記センサのセンサ検出範囲のうち防護領域内で人の
侵入を検知した場合は、支持台とロボットを停止させる制御を行うことを特徴とする請求項5に記載の人協働ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明の開示の実施形態は、人協働ロボットシステムに関する。
【0002】
ロボットと作業者とが協働してする場合、一般的には作業者の安全を確保するためには、光カーテンを用いたり物理的に構成された安全柵を用いたりして、ロボットと作業者との作業範囲を分割する対応を実施していた。しかしながら、近年は作業効率向上のため、ロボットと作業者が近接範囲で協働して作業することが主流になりつつあり、この場合は作業者の安全確保が重要視されることになる。その対応としては、一般的にはロボット自体に近接センサを設けて、作業者の接近を検知する方式が考案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ロボット昇降装置を走行台車上に設け、且つ、双腕ロボットを組立作業台に鉛直方向の回転中心軸廻りに回転可能に支持することによって、双腕ロボットを軽快に移動させることができ、作業効率の向上を図ることができる技術が開示されている。(特許文献1参照)
【0004】
また、特許文献2には、人間・ロボット協働型のライン生産方式に利用することが可能で、製品の生産工場において移動しながら作業を行うことが可能な自走式関節ロボットが開示されている。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018―15885号公報
【文献】再公表2016/103303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2等で開示されている従来技術では、作業効率は良くなるものの、足元の走行台車が邪魔で人が作業台にアクセスしにくいといった課題がある。また、従来技術で開示されるような走行台車は人と協働することを想定されていないため安全が確保できないといった課題がある。さらに、台車の移動速度が遅かったり、位置決め精度が低かったりすることにより作業効率が悪いといった課題もある。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、人とロボットとの協働による自動化を促進し、更なる作業時間と作業効率や精度を高め、省スペース化を実現する人協働ロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の(1)~(5)に関する。
(1)ロボットと、走行可能な支持台と、センサと、実験台とからなる人協働ロボットシステムであって、前記実験台に走行レールを設け、前記支持台の一方端は当該走行レールに摺動可能な状態で結合し、当該支持台の先端側には前記ロボットを載置し、
前記支持台に前記センサを設け、前記センサはロボットの作業範囲に人が侵入したことを
検知することを特徴とする人協働ロボットシステム。
(2)ロボットと、走行可能な支持台と、センサと、実験台とからなる人協働ロボットシステムであって、前記実験台に走行レールを設け、前記支持台の一方端は当該走行レールに摺動可能な状態で結合し、当該支持台の先端側には前記ロボットを載置し、
前記支持台に前記センサを設け、前記センサはロボットの作業範囲に人が侵入したことを
検知し、当該センサを中心とする小さい略扇形状の防護領域と、センサを中心とする大き
い略扇形状の警告領域の2つのセンサ検出範囲を有することを特徴とする人協働ロボットシステム。
(3)前記実験台の天板の下部中央から支柱板を当該実験台の長手方向を支える状態で設け、当該支柱板に前記走行レール2本を平行となる様に上下に配置し、当該走行レールと支持台を摺動可能な状態で結合することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の人協働ロボットシステム。
(4)前記支持台に駆動装置を設け、当該駆動装置にピニオンを結合し、前記走行レールの2本の間にラックを支柱板に設置し、前記ピニオンと前記ラックを摺動可能な状態で配置することを特徴とする前記(1)から(3)のいずれか1つに記載の人協働ロボットシステム。
(5)前記ロボット及び前記駆動装置に接続されるケーブル類を保持するケーブルキャリアを設け、前記上部の走行レールの設置位置としては、前記ケーブルキャリアの可動部端が、前記支持台の下部側に固定できる高さで設置することを特徴とする前記(4)に記載の人協働ロボットシステム。
(6)前記センサとしてセーフティレーザスキャナを用い、検知範囲として警告領域と防護領域の2つの検知範囲を設けることを特徴とする前記(1)から(4)のいずれか1つに記載の人協働ロボットシステム。
(7)制御装置により、前記センサのセンサ検出範囲のうち防護領域及び警告領域に被検知物の反応があるかを検知し、いずれの領域にも反応が無い場合は前記支持台と前記ロボットを通常運転させ、前記センサのセンサ検出範囲のうち防護領域内に反応がなく、警告領域内で人の侵入を検知した場合は、支持台とロボットを減速運転させ、前記センサのセンサ検出範囲のうち防護領域内で人の侵入等を検知した場合は、支持台とロボットを停止させる制御を行うことを特徴とする前記(5)に記載の人協働ロボットシステム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の人協働ロボットシステム等によれば、人とロボットとの協働による自動化を促進し、更なる作業時間と作業効率や精度を高め、省スペース化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る人協働ロボットシステムの全体概略の一例を表す図である。
【
図2】本実施形態に係る人協働ロボットシステムを上面から表す図である。
【
図3】本実施形態に係る人協働ロボットシステムを正面から表す図である。
【
図4】
本実施形態に係る人協働ロボットシステムを右側面から表す図である。
【
図5】
図3に記載の本実施形態に係る人協働ロボットシステムのA-A断面図であ
る。
【
図6】本実施形態に係る人協働ロボットシステムのセンサ検知範囲の概要を表す図である。
【
図7】本実施形態に係る人協働ロボットシステムのセンサ検知範囲を上面から表す図である。
【
図8】本実施形態に係る人協働ロボットシステムの実験台のカバー部を取り外した状態を表す概要図である。
【
図9】本実施形態に係る人協働ロボットシステムの実験台のカバー部を取り外した状態の正面図である。
【
図10】本実施形態に係る人協働ロボットシステムの支持台と実験台の取り付け状態を示す図である。
【
図11】本実施形態に係る人協働ロボットシステムの制御装置を示すブロック図である。
【
図12】本実施形態に係る人協働ロボットシステムのセンサで検知した際の支持台及びロボットの制御過程を示すフローチャートである。
【
図13】本実施形態に係る人協働ロボットシステムのセンサ検知範囲を示す図である。
【
図14】本実施形態に係るケーブルキャリア支部の取り付け状態を示す図である。
【
図15】本実施形態に係る人協働ロボットシステムにおいて支持台が実験台5の左右に移動した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態について図面を参照しつつ説明する。以下、本実施形態の人協働ロボットシステム等の構造の説明の便宜上、図面に向かって「上」「下」「左」「右」「前」「後」等の方向を適宜使用する。但し、該方向は人協働ロボットシステム等の設置態様によって変動するものであり、各構成の位置関係を限定するものではない。
【0012】
図1を用いて、本実施形態に係る人協働ロボットシステムの全体概略構成の一例について説明する。本実施形態の人協働ロボットシステムは、ロボットに作業者がより接近して、ロボットと共に作業者が作業することができる作業システムである。また、人を検知することにより本実施形態の人協働ロボットシステムはロボットが人の作業範囲外に移動して別の作業を実施することが可能となる。
図1に示すように、人協働ロボットシステム1は、ロボット2と、支持台3と、センサ4(
図3に図示)と、実験台5とからなる。
【0013】
本実施形態で使用したロボット2は、人と同じ作業領域で協働して作業を行えるとともに、指や手が挟まれにくい構造や、人との接触よる危害を最小限に抑える安全機能を備えるものである。なお、本実施形態で使用するロボット2は特に限定されるものではなく、ロボットメーカー各社が市販しているいわゆる人協働ロボットが使用できる。本実施形態では人協働ロボット2として株式会社安川電機社製のMOTOMAN―HC10DTPを使用した。
【0014】
本実施形態で使用した支持台3は、実験台5に設置する走行レール6に摺動可能な状態に結合され、実験台5の外部に突出した支持台3の先端側にはロボット2を載置する。支
持台3の一方端部は、
図1と
図5に示す通り、実験台5の内側から突出する形状であり、当該突出する箇所の高さより低い高さにロボット2を載置する面を形成する。その結果として、支持台3の実験台5から突出する部分の形状は2段階の高さを有する略板状(以下、先端突出部と記載する)となる。また、ロボット2を載置する側と反対側の他方端部の形状は、
図5の断面図に示す通り、前記先端突出部の実験台5の内部の中央の柱部付近より垂直に下部に向かって中央の柱部と平行に略板状に延びる形状である(以下、後端取付部と記載する)。また、当該支持台3の後端取付部は走行レール6に摺動可能な状態で取り付けられている。本実施形態で使用した支持台3は、前記先端突出部と前記後端取付部は一体的に形成されたものを使用したが、これに限定されるものではなく、先端突出部と後端取付部を別々に製造して後から結合する等して形成することも可能である。
【0015】
本実施形態で使用したセンサ4は、ロボット2の作業範囲に人が侵入したことを検知するためのものである。当該センサ4は、ロボット2の作業中に人の侵入を検知した際にはロボット2の作業を中断させたり、ロボット2を走行レール6に沿って安全圏に移動させたりすることが可能となる。また、ロボット2を安全圏に移動させた後には必要な作業をロボット2に再開させること等が可能となる。また、本実施形態で使用するセンサ4は障害物を検知できるものであれば特に限定されるものではなく、レーザセンサや光電センサが使用できる。その中でも、故障に強く、自由自在の保護領域設定性、取り付け場所やミューティングエリアの自由度に優れることかセーフティレーザスキャナが好ましい。なお、本実施形態ではセンサ4としてセーフティレーザスキャナ(北陽電機社製:製品名「UAM―05LP―T301」)を使用した。
【0016】
また、本実施形態で使用したセンサ4は
図4に示す通り、支持台3の裏面(ロボット2を載置した面の下部側の面)に設置した。また、センサ4は、センサ4の中心軸をロボット2の中心軸と略同一軸となる位置から実験台5の間に設置することが好ましい。これにより、センサ4の検出範囲の死角がほぼ無くなり、ロボット2の作業範囲と人を検知する安全範囲が正確に判断することが可能となる。
【0017】
図6は、本実施形態に係る人協働ロボットシステムのセンサ検知範囲の概要を表す図である。本実施形態で使用したセンサ4の検出角度は270°、最小検出幅が30mmの場合の最長検出距離は1.8mである。
図6に示す通り、センサ4を中心とする略扇形状で検知範囲9を設け、当該検知範囲9に人が侵入した際に、ロボット2の作業を中止したり移動させたりする制御を行う。
【0018】
図7は、本実施形態に係る人協働ロボットシステムのセンサ検知範囲を上面から表す図である。
図7に示す通り、センサ4の検出範囲を半円状ではなく270°とすることにより、ロボット2の左右までではなく、左右前方まで検出が可能となり、より安全性を高めることが可能となる。
【0019】
本実施形態で使用した実験台5は
図1や
図3に示す通り、支持台3が移動するための穴であるスリット部7をカバー部8に設けた。当該スリット部7は実験台5の作業面と略平行で水平方向に長い略長方形状をしており、当該スリット部7の幅は支持台3の幅よりも上下約2cmずつ広い形状である。なお、当該スリット部7はロボット2を設置する側の実験台5の側面にカバー部を設けずに走行レール6等の装置がむき出しの状態で使用する場合は必須のものではないが、人協働ロボットシステムであることから、安全面を考慮してカバー部8を設けてスリット部7を形成することが好ましい。
【0020】
また、本実施形態で使用した実験台5のカバー部8を設けない状態を
図8及び
図9に示す。
図8及び
図9に示す通り、支持台3の後端取付部を走行レール6に摺動可能な状態で取り付ける。また、ケーブル類はケーブルキャリア12を介して接続する。当該ケーブルキャリア12は、ケーブルキャリア下部の端は作業台底部中央付近に固定し、ケーブルキャリア上部の端は可動端となっており、支持台3の
下面に固定する。支持台3と走行レール6の取り付けは、一般的な取付け方法で取り付け可能であるが、本実施形態では走行レール6に付属するブロックにボルトを用いて取り付けを行った。
【0021】
実験台5の天板の下部の中央から支柱板13を実験台5の長手方向を支える状態で設ける。当該支柱板13は、略直方形状をしており、長手方向の長さは実験台5の長手方向の長さとほぼ等しく、実験台5の天板下部に一方端を結合して略垂直方向に設け、他方端を実験台5の底面に結合して設置する。また、当該支柱板13に走行レール6を支柱台3の配置面側に設けた。また、走行レール6は上下2本を約40cmの幅で、支柱板13の平面上に、実験台5の天板面と略平行になる様に設置した。走行レール6は上下2本の幅は約40cmに限定されるものではなく、支持台3の形状や実験台5の高さ等により適宜修正は可能である。また、当該走行レール6の長さとしては、特に限定されるものではなくロボット2を移動させたい長さに調整することができるが、本実施形態では汎用性を高めるため、実験台5の長手方向の長さと略等しい長さのものを使用した。
【0022】
本実施形態の人協働ロボットシステムでは、ロボット2が実験台5の長手方向を左右に移動することになるため、ロボット2が実験台5の右端まで移動した際には
図9で示すケーブルキャリア12が上部側に長く伸びた状態となり撓んでしまう場合がある。また、ロボット2が実験台5の左端まで移動した際には
図9で示すケーブルキャリア12の下部側が長く伸びた状態となり撓んでしまう場合がある。この様に左右に長い実験台5等を使用する場合はケーブルキャリア12の撓みを支えるためにケーブルキャリア支部16を上下に設けることも可能である。
図14に本実施形態で使用するケーブルキャリア支部16を取り付けた形状を示す。
図14中の枠で囲んだ箇所がケーブルキャリア支部16である。ケーブルキャリア支部16としては、ケーブルキャリア12を撓まないように下側から支えるようなものであれば特に形状は特定するものではなく、板状のものをケーブルキャリア12の下部に、実験台5の前面(ロボット側)のフレームに結合する。本実施形態で使用するケーブルキャリア支部16は
図14に示すように断面形状が略L字形状の柱状の部材を2本連結して使用した。ケーブルキャリア支部12の長さとしてはケーブルキャリアの撓みを支えるものであれば特に限定されるものではないが、本実施形態では実験台5に設置した走行レール6の半分程度の長さとした。また、本実施形態では、当該ケーブルキャリア支部16は
図14に示すように上下のケーブルキャリア12を支える様に設けた。上部のケーブルキャリア支部16を設置するため、走行レール6の上側の設置位置としては、
図14に示す通り、ケーブルキャリア12の可動部端が、支柱台3の下部に固定できる高さで設置することが望ましい。そうすることでケーブルキャリア12の上部のケーブルキャリア上部支部16を実験台5のロボット側フレームに固定でき、支柱板13を実験台5のロボット側により寄せることができるため、実験台5の天板の剛性を向上させることが可能となる。
【0023】
図15(a)は、本実施形態に係る人協働ロボットシステムにおいて支持台3がロボット2の背面から見て実験台5の右側に移動した状態を示す図である。
図15(b)は、支持台3がロボット2の背面から見て実験台5の左側に移動した状態を示す図である。
図15(a)に示すように、支持台3が実験台5の右側に移動した際には、実験台5に設けた上部のケーブルキャリア支台16がケーブルキャリア12を支える状態となる。
図15(b)に示すように、支持台3が実験台5の左側に移動した際には、実験台5に設けた下部のケーブルキャリア支台16がケーブルキャリア12を支える状態となる。また、
図15に示す通り、上部のケーブルキャリア支部16は実験台5の略中央部からロボット2の背面から見て右側に、下部のケーブルキャリア支部16は実験台5の略中央部からロボット2の背面から見て
左側に設置する。
【0024】
本実施形態では、
図9に図示するように実験台5の底面下部に、車輪部10と調整足11を設けた。車輪部10は実験台5を移動させるための車輪であり、特に限定はなく市販のものが使用できる。また、調整足11は実験台を水平に保持するための高さを調整するための調整足であり、特に限定はなく市販のものが使用できる。なお、本実施形態では実験台5を使用したが、使用するものを特に実験台に限られるものではなく、重さのバランスを調整することにより、一般的に市販されている机や作業台等(これらをテーブルと総称する)も使用することが可能である。
【0025】
図10は、本実施形態に係る人協働ロボットシステムの支持台と実験台の取り付け状態を示す図である。本実施形態では、支持台3の後端取付部には駆動装置を設け、駆動装置にはピニオンを結合する。当該駆動装置としては、制御可能なモータであれば特に限定はないが、サーボ機能を有しているものが好ましく、本実施形態では、サーボモータ14を使用した。サーボモータ14は前記支持台3の後端取付部のロボット2側の面でピニオンは支持台3の裏側になるように取り付けた。また、本実施形態ではサーボモータ14は、メンテナンス性を向上させるたえにロボット2の中心軸線上からオフセットした場所に取り付けたが、特にこれに限定されるものではなく、適宜支持台3のいずれかの場所に取り付けることは可能である。本実施形態では、ラック15は2本の走行レール6の間にラック15を配置し、前記サーボモータ14を動かすことにより前述のピニオンがラック15上を走行できる状態とし、走行レール6に取り付けた支持台3を走行させる。また、当該駆動装置は図示しない制御装置70により移動や停止等の制御を行い、支持台3を移動させることにより載置したロボット2を移動させる制御を行う。
【0026】
本実施形態の制御装置70は
図11記載するように、ロボット2を制御するためのロボット制御部71、サーボモータを制御するためのサーボモータ制御部72、センサ4のセンサ検出部41およびセンサ検知情報制御部42を制御するためのセンサ制御部73からなる。また、サーボモータ制御部72とセンサ制御部73をあわせて支持台制御部74とする。また、
図11の符号80は制御装置70にプログラムを入力設定するための設定装置(コントローラ)を示す。
【0027】
さらに、
図12と
図13(a)を参照して、本実施形態の人協働ロボットシステムが、センサの検知範囲9に人が侵入した際に、支持台3を制御して安全を確保して作業を継続する内容について説明する。
【0028】
まず、本実施形態の人協働ロボットシステムの設置場所に応じたセンサ4の検出範囲や作業内容に応じたロボット2の作業内容等について設定装置80により初期設定を行う。ロボット2のみで予め設定された作業を行う場合はロボット制御部71のみにより人協働ロボットシステムの制御を行うことになる。
【0029】
センサ4は前述の通り、センサ検出範囲9により周辺領域をスキャンしており、作業者等がセンサ検出範囲9に侵入した場合はセンサ検出部41により人が侵入した旨を検知する。センサ検出範囲9は本実施形態においては、
図13(a)に示すように、センサ4を中心とする小さい略扇形状の
防護領域と、センサ4を中心とする大きい略扇形状の警告領域の2つのセンサ検出範囲9を設定する。
【0030】
センサ4は通常時は周辺領域をスキャンしており、まず、センサ検出範囲9のうち防護領域内に作業者等の人の侵入反応があるかを検知する。次にセンサ検知範囲9のうち警告領域内に反応があったかを検知する。いずれの領域にも反応が無い場合は支持台5とロボット2を通常運転させる。
【0031】
センサ検出範囲9のうち防護領域内に反応がなく、警告領域内で人の侵入等を検知した場合は、制御装置70に検知情報が送信され、ロボット制御部71と支持台制御部74により、支持台3とロボット2を減速運転させる。
【0032】
センサ検出範囲9のうち防護領域内で人の侵入等を検知した場合は、制御装置70に検知情報が送信され、ロボット制御部71と支持台制御部74により、支持台3とロボット2を停止させる。
【0033】
この様に、センサ4のセンサ検知範囲9のうち警告領域内で人の侵入等を検知した場合は支持台3とロボット2を減速運転させ、防護領域内で人の侵入等を検知した場合は支持台3とロボット2を停止させる制御を行うことにより、人とロボットが安全に協働作業を行うことが可能となる。なお、本実施形態では、センサ検出範囲9を警告領域と防護領域の2段階で検知を行うようにしたが、それに限定されるものではなく、センサ検出範囲9として警告領域を設けずに防護領域のみとすることも可能である。
【0034】
図13(b)は、本実施形態の人協働ロボットシステムを実験台5の横の一方端に壁がある場所に配置した際のセンサ検出範囲9(防護領域と警告領域)を支持台3の位置に合わせてセンサ検出範囲9を切り替え、壁を誤検出しないように制御することを示した図である。
【0035】
図13(c)は、本実施形態の人協働ロボットシステム1の実験台5の左右のロボット2から遠い方の隅にセンサ4をそれぞれ配置した場合の例を示す図である。
図13(c)に示す通り、実験台5に設置した2つのセンサ4のセンサ検知範囲9は実験台5と取り囲む様に略四角形状となるように、支持台3に設けたセンサ4と同様に防護領域と警告領域を設定した。なお、
図13(c)ではこの様なセンサ検知範囲としたが特にこれに限定されるものではなく、センサ4を中心とした扇形状等、人協働ロボットシステムの配置場所や作業環境に合わせて適宜設定することが可能である。
【0036】
本実施形態の人協働ロボットシステムは実験台5を1台とロボット2を1体の組み合わせを説明したが、実際の実験室等の作業を行う場所に配置する際には、本実施形態の人協働ロボットシステムのロボット2の背面にさらに実験台5を配置しても良いし、本実施形態の人協働ロボットシステム2セットを実験台5同士向かい合わせとなる様に配置することも可能である。
【0037】
以上、図面を参照しながら本実施形態について詳細に説明したが、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲は、ここで説明した実施の形態になんら限定されるものではない。本実施形態の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、技術的思想の範囲内において、様々な変更や修正、組み合わせなどを行うことに想到できることは明らかである。従って、これらの変更や修正、組み合わせなどが行われた後の技術も、当然に技術的思想の範囲に属するものである。
【0038】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」という意味である。
【0039】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【符号の説明】
【0040】
1 人協働ロボットシステム
2 ロボット
3 支持台
4 センサ
5 実験台
6 走行レール
7 スリット部
8 カバー部
9 センサ検知範囲
10 車輪部
11 調整足
12 ケーブルキャリア
13 支柱板
14 サーボモータ
15 ラック
16 ケーブルキャリア支部
70 制御装置
80 設定装置