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  • 特許-カーボネート誘導体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】カーボネート誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 68/02 20060101AFI20240118BHJP
   C07D 317/38 20060101ALI20240118BHJP
   C08G 64/38 20060101ALI20240118BHJP
   C07C 69/96 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C07C68/02 Z
C07D317/38
C08G64/38
C07C69/96 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020556165
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2019044690
(87)【国際公開番号】W WO2020100977
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018215003
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 明彦
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-181028(JP,A)
【文献】特開2000-128976(JP,A)
【文献】特開2007-084469(JP,A)
【文献】HOGGARD, E. P. et al.,Catalysis of the photodecomposition of carbon tetrachloride in ethanol by an amberlite anion exchang,Journal of Catalysis,2010年,Vol.275,pp.243-249
【文献】BROOKE, M. C. et al.,A photocatalyzed synthesis of dialkyl carbonates from phosgene generated in situ,Current Catalysis,2015年,Vol.4, No.1,pp.12-19
【文献】入江喜一,ホスゲンの製造と利用,燃料協会誌,1960年,Vol.39,No.400,pp.575-583
【文献】KUWAHARA, Y. et al.,Photochemical molecular storage of Cl2, HCl, and COCl2 : Synthesis of organochlorine compounds, salt,Org. Lett.,2012年,Vol.14, No.13,pp.3376-3379
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボネート誘導体を製造するための方法であって、
クロロホルムおよび水酸基含有化合物を含む組成物に酸素存在下で180nm以上、280nm以下の波長の光を含む高エネルギー光を照射する工程を含み、
前記クロロホルム1モルに対する前記水酸基含有化合物の総使用量のモル比が0.05以上であり、
前記水酸基含有化合物が下式(i)で表される化合物であり且つ前記カーボネート誘導体が下式(I)で表される鎖状カーボネート誘導体であるか、または、
前記水酸基含有化合物が下式(ii)で表される化合物であり且つ前記カーボネート誘導体が下式(II-1)で表される単位を含むポリカーボネート誘導体もしくは下式(II-2)で表される環状カーボネート誘導体であることを特徴とする方法。
(i) R1-OH
(ii) HO-R2-OH
(I) R1-O-C(=O)-O-R1
(II-1) [-O-R2-O-C(=O)-]
【化1】
[式中、
1は、ヘテロ原子を含んでもよい一価C1-200有機基であり、
2は、ヘテロ原子を含んでもよい二価C1-200有機基である。]
【請求項2】
前記水酸基含有化合物、下記式(ii-2)で表される水酸基含有化合物である請求項1に記載の方法。
【化2】
[式中、
7 とR 8 は、独立して-(CR 11 12 q1 -または-(-O-(CR 11 12 q2 -) q3 -(式中、R 11 とR 12 は、独立して、HまたはC 1-6 アルキル基を表し、q1は0以上、10以下の整数を表し、q2は1以上、10以下の整数を表し、q3は1以上、10以下の整数を表し、q1またはq2が2以上の整数である場合、複数のR 11 またはR 12 は互いに同一であっても異なっていてもよい)を表し、
9 とR 10 は、独立して、ハロゲノ基、C 1-20 脂肪族炭化水素基、C 1-20 アルコキシル基、C 3-20 シクロアルキル基、C 6-20 芳香族炭化水素基、C 7-20 アラルキル基、C 6-20 芳香族炭化水素オキシ基、またはC 3-20 シクロアルコキシル基を表し、
1 は下記に示す基または単結合を表し、
【化3】
(式中、
13 とR 14 は、独立して、H、ハロゲノ基、置換基αを有してもよいC 1-20 脂肪族炭化水素基、置換基αを有してもよいC 1-20 アルコキシル基、置換基βを有してもよいC 6-20 芳香族炭化水素基を表すか、或いはR 13 とR 14 が結合して、C 3-20 炭素環または5-12員ヘテロ環を形成してもよく、
15 とR 16 は、独立して、HまたはC 1-6 アルキル基を表し、r1が2以上の整数である場合、複数のR 15 またはR 16 は互いに同一であっても異なっていてもよく、
17 ~R 24 は、独立して、ハロゲノ基、置換基αを有してもよいC 1-20 脂肪族炭化水素基、置換基αを有してもよいC 1-20 アルコキシル基、または置換基βを有してもよいC 6-12 芳香族炭化水素基を表し、
25 は置換基αを有してもよいC 1-9 アルキレン基を表し、
r1は1以上、20以下の整数を表し、
r2は1以上、500以下の整数を表す。)
p1とp2は、独立して、0以上、4以下の整数を表し、
置換基αは、C 1-6 アルコキシル基、C 1-7 アシル基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、およびカルバモイル基から選択される1以上の置換基を表し、
置換基βは、C 1-6 アルキル基、C 1-6 アルコキシル基、C 1-7 アシル基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、およびカルバモイル基から選択される1以上の置換基を表す。]
【請求項3】
更に、高エネルギー光を照射せずに前記組成物を攪拌する工程を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記高エネルギー光の光源と前記組成物との最短距離が1m以下である請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
2種以上の前記水酸基含有化合物を用いる請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全かつ効率的にカーボネート誘導体を製造するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボネート誘導体のうち鎖状カーボネートは従来より溶媒などとして利用されてきたが、特に近年、リチウムイオン二次電池の電解液の非水溶媒として生産量が増えてきている。また、炭酸とビスフェノール化合物との縮合体であるポリカーボネートは、透明性や耐衝撃性に優れるエンジニアリングプラスチックとして広く利用されている。
【0003】
カーボネート誘導体は、一般的に、ホスゲンと水酸基含有化合物から製造される。しかしホスゲンは水と容易に反応して塩化水素を発生させたり、毒ガスとして利用された歴史があるなど、非常に有毒なものである。その他、一酸化炭素とアルコールと酸素を使ってカーボネート誘導体を合成する方法もあるが、高価な触媒や有毒である一酸化炭素を高圧で用いなければならないという問題がある。そこで、炭酸エステルやポリカーボネートの安全な製造方法が種々検討されている。
【0004】
例えば特許文献1には、触媒存在下に炭酸エステルをエステル交換反応に付して目的のカーボネート誘導体を製造する方法が記載されている。しかしこの方法では、原料化合物としての炭酸エステルを如何に製造すべきかとの問題が残っており、根本的な解決とはならない。また、高価な触媒を用いなければならないことや、残留触媒による逆反応や副反応の問題もある。
【0005】
特許文献2には、触媒の存在下、エポキシ化合物と二酸化炭素からカーボネート誘導体を製造する方法が開示されている。この方法ではホスゲンや一酸化炭素を用いる必要は無いが、高価な触媒を用いなければならず、また、二酸化炭素を高圧にしなければならない。更に、この方法で製造できるポリカーボネートは限られており、また、副生物の問題もある。
【0006】
ところで本発明者は、ハロゲン化炭化水素とアルコールとを酸化的光反応に付すことによるハロゲン化ギ酸エステルの製造方法(特許文献3)や、酸素存在下、クロロホルムに光照射してホスゲンを含有する混合物を得る工程、ホスゲンを単離することなくアルコールを前記混合物と反応させる工程を具備するハロゲン化ギ酸エステルの製造方法を開発している(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平7-10811号公報
【文献】特開2001-129397号公報
【文献】国際公開第2015/156245号パンフレット
【文献】特開2013-181028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、カーボネート誘導体の製造にはホスゲンが一般的に使用されており、ホスゲンを使用しない製造方法であっても、その他の有毒な化合物や高価な触媒を使用するものであったり、原料化合物の製造にホスゲンを使用しなければならないといった問題があった。
また、特許文献3の発明でハロゲン化ギ酸エステルが得られるのは、塩基を用いないことから反応がそれ以上進行しないためであると考えられる。しかし塩基を使用すると、例えばポリカーボネートでは、残留塩基が着色や分解の原因となり、光学材料としての利用価値が減ぜられることがある。また、ハロゲン化炭化水素から生成した塩化水素を回収して再利用することが好ましい。具体的には、回収した塩化水素を塩素と水に分解し、得られた塩素をメタンと反応させてクロロホルム等のクロロメタンを製造し、再利用することができる。しかし、塩基を用いると塩化水素から塩が生じ、塩化水素を回収するには電解処理が必要となる。
そこで本発明は、塩基を用いなくても安全かつ効率的にカーボネート誘導体を製造するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、酸素の存在下、ハロゲン化メタンと特定量の水酸基含有化合物とを光反応に付すことで、驚くべきことに塩基を使用せずともカーボネート誘導体を安全かつ効率的に製造できることを見出して、本発明を完成した。従来、水酸基含有化合物はハロゲン化炭化水素の分解を抑制する安定化剤として知られており、ハロゲン化炭化水素に対する水酸基含有化合物の割合を増やすとハロゲン化炭化水素の分解が進行しないと考えられていた。それに対して、当該割合を高めることにより、塩基を用いなくてもハロゲン化ギ酸エステルで反応が停止することなくカーボネート誘導体が効率的に生成することは、非常に驚くべきことであった。
以下、本発明を示す。
【0010】
[1] カーボネート誘導体を製造するための方法であって、
ハロゲン化メタンおよび水酸基含有化合物を含む組成物に酸素存在下で高エネルギー光を照射する工程を含み、
前記ハロゲン化メタン1モルに対する前記水酸基含有化合物の総使用量のモル比が0.05以上であり、
前記水酸基含有化合物が下式(i)で表される化合物であり且つ前記カーボネート誘導体が下式(I)で表される鎖状カーボネート誘導体であるか、または、
前記水酸基含有化合物が下式(ii)で表される化合物であり且つ前記カーボネート誘導体が下式(II-1)で表される単位を含むポリカーボネート誘導体もしくは下式(II-2)で表される環状カーボネート誘導体であることを特徴とする方法。
(i) R1-OH
(ii) HO-R2-OH
(I) R1-O-C(=O)-O-R1
(II-1) [-O-R2-O-C(=O)-]
【化1】

[式中、
1は、ヘテロ原子を含んでもよい一価C1-200有機基であり、
2は、ヘテロ原子を含んでもよい二価C1-200有機基である。]
【0011】
[2] 前記ハロゲン化メタンがクロロホルムである上記[1]に記載の方法。
【0012】
[3] 更に、高エネルギー光を照射せずに前記組成物を攪拌する工程を含む上記[1]または[2]に記載の方法。
【0013】
[4] 前記高エネルギー光が180nm以上、280nm以下の波長の光を含む上記[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
【0014】
2種以上の前記水酸基含有化合物を用いる上記[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明方法では、ホスゲンや一酸化炭素といった毒性が極めて高い化合物や、高価な触媒を原料化合物として使う必要が無い。また、塩基を用いる必要が無いために、目的化合物であるカーボネート誘導体への残留塩基のおそれが無く、高品質なカーボネート誘導体が得られる。よって本発明方法は、有用で高品質なカーボネート誘導体を安全に且つ効率的に製造できる技術として、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明方法で用いられる反応装置の構成の一例を示す模式図である。
図2図2は、水酸基含有化合物としてエチレングリコールを用いた場合における反応液中の環状カーボネート/エチレングリコール比の経時的変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るカーボネート誘導体の製造方法では、ハロゲン化メタンおよび水酸基含有化合物を含む組成物に酸素存在下で高エネルギー光を照射する。
【0018】
1.ハロゲン化メタン
本発明に係る反応においてハロゲン化メタンは、おそらく高エネルギー光と酸素により分解され、ハロゲン化カルボニルまたはハロゲン化カルボニル様の化合物に変換され、水酸基含有化合物と反応してカーボネート誘導体が生成すると考えられる。たとえ有害なハロゲン化カルボニル化合物が生成しても、ハロゲン化カルボニル化合物は反応性が極めて高いために水酸基含有化合物と直ぐに反応し、反応液外へは漏出しないか、或いは漏出してもその漏出量は僅かである。特に本発明では、ハロゲン化メタンに対する水酸基含有化合物の使用量の割合が比較的高いため、生じたハロゲン化カルボニル化合物は水酸基含有化合物と速やかに反応すると考えられる。なお、例えばハロゲン化カルボニルであるホスゲンは非常に毒性が高く、その運搬などには厳しい規制が課せられているが、ハロゲン化メタンは勿論それほど危険ではない。
【0019】
特に常温常圧で液体であるハロゲン化メタンは有機溶媒などとして大量に消費される一方で、大気に放出されると大気汚染やオゾン層の破壊といった環境汚染の原因となる。本発明は、かかるハロゲン化メタンを光分解することで有用な化合物を製造する技術であり、工業的にもまた環境科学的にも寄与するところは大きい。
【0020】
ハロゲン化メタンは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードからなる群より選択される1種以上のハロゲノ基で置換されたメタンである。上述した通り、本発明においてハロゲン化メタンは高エネルギー光と酸素により分解され、ハロゲン化カルボニルと同等の働きをすると考えられる。
【0021】
具体的なハロゲン化メタンとしては、例えば、トリフルオロメタン等のフルオロメタン;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのクロロメタン;ジブロモメタン、ブロモホルム等のブロモメタン;ヨードメタン、ジヨードメタン等などのヨードメタン;クロロジフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ブロモフルオロメタン等を挙げることができる。
【0022】
ハロゲン化メタンは目的とする化学反応や所期の生成物に応じて適宜選択すればよく、また、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。好適には、製造目的化合物に応じて、ハロゲン化メタンは1種のみ用いる。ハロゲン化メタンの中でもクロロを有する化合物が好ましい。
【0023】
本発明方法で用いるハロゲン化メタンは、例えば溶媒としていったん使用したハロゲン化メタンを回収したものであってもよい。その際、多量の不純物や水が含まれていると反応が阻害されるおそれがあり得るので、ある程度は精製することが好ましい。例えば、水洗により水溶性不純物を除去した後、無水硫酸ナトリウムや無水硫酸マグネシウムなどで脱水することが好ましい。但し、水が含まれていても反応は進行すると考えられるので、生産性を低下させるような過剰な精製は必要ない。かかる水含量としては、0質量%以上が好ましく、0.0001質量%以上がより好ましく、また、0.5質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がよりさらに好ましい。また、上記再利用ハロゲン化メタンには、ハロゲン化メタンの分解物などが含まれていてもよい。
【0024】
2.水酸基含有化合物
本発明において「水酸基含有化合物」とは、求核性の水酸基を含む化合物であって、式(i)または式(ii)で表される化合物であり、それぞれ「水酸基含有化合物(i)」または「水酸基含有化合物(ii)」と略記する場合がある。本発明で用いる水酸基含有化合物は、フルオロを置換基として有さない。その結果、本発明方法で製造されるカーボネート誘導体もフルオロを置換基として有さない。また、本発明では特定量の水酸基含有化合物を用いることによって、塩基を用いなくてもカーボネート誘導体までの反応の進行が可能になる。
【0025】
本発明において、水酸基含有化合物(i)を用いる場合、得られるカーボネート誘導体は式(I)で表される鎖状カーボネート(以下、「鎖状カーボネート(I)」と略記する場合がある)であり、水酸基含有化合物(ii)を用いる場合、得られるカーボネート誘導体は式(II-1)で表される単位を含むポリカーボネート誘導体(以下、「ポリカーボネート誘導体(II-1)」と略記する場合がある)か、または式(II-2)で表される環状カーボネート誘導体(以下、「環状カーボネート誘導体(II-2)」と略記する場合がある)である。
【0026】
本発明の製造方法で原料化合物として用いる水酸基含有化合物(i)と水酸基含有化合物(ii)、および、目的化合物である鎖状カーボネート誘導体(I)とポリカーボネート誘導体(II-1)と環状カーボネート誘導体(II-2)は、以下の通りである。
(i) R1-OH
(ii) HO-R2-OH
(I) R1-O-C(=O)-O-R1
(II-1) [-O-R2-O-C(=O)-]
【化2】

[式中、
1は、ヘテロ原子を含んでもよい一価C1-200有機基であり、
2は、ヘテロ原子を含んでもよい二価C1-200有機基である]
【0027】
本開示においては、例えば炭素数1以上200以下の一価有機基を「一価C1-200有機基」と記す。他の基と他の化合物とに関しても、同様に記す。
【0028】
ヘテロ原子を含んでもよい一価C1-200有機基としては、例えば、置換基αを有してもよい一価C1-20脂肪族炭化水素基、置換基αを有してもよいC3-20シクロアルキル基、置換基βを有してもよい一価C6-32芳香族炭化水素基、置換基βを有してもよい5-20員飽和ヘテロシクリル基、置換基βを有してもよい5-20員芳香族ヘテロシクリル基、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル基を挙げることができる。
【0029】
「一価C1-20脂肪族炭化水素基」は、炭素数1以上、20以下の直鎖状または分枝鎖状の一価脂肪族炭化水素基をいい、C1-20アルキル基、C2-20アルケニル基、およびC2-20アルキニル基を挙げることができる。C1-20アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-オクチル、n-デシル、n-ペンタデシル、n-イコシルが挙げられる。好ましくはC1-10アルキル基またはC1-6アルキル基であり、より好ましくはC1-4アルキル基またはC1-2アルキル基であり、より更に好ましくはメチルである。C2-20アルケニル基としては、例えば、エテニル(ビニル)、1-プロペニル、2-プロペニル(アリル)、イソプロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、オクテニル、デセニル、ペンタデセニル、イコセニル等が挙げられる。好ましくはC2-10アルケニル基またはC2-6アルケニル基であり、より好ましくはエテニル(ビニル)または2-プロペニル(アリル)である。C2-20アルキニル基としては、例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、2-ブチニル、3-ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、オクチニル、デシニル、ペンタデシニル、イコシニル等が挙げられる。好ましくはC2-10アルキニル基またはC2-6アルキニル基であり、より好ましくはC2-4アルキニル基またはC2-3アルキニル基である。
【0030】
「C3-20シクロアルキル基」は、炭素数3以上、20以下の一価環状飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル等である。好ましくはC3-10シクロアルキル基である。
【0031】
「一価C6-32芳香族炭化水素基」とは、炭素数が6以上、32以下の一価芳香族炭化水素基をいう。例えば、フェニル;インデニル、ナフチル、ビフェニル、アセナフテニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、アントラセニル、トリフェニレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ペリレニル、ビフェニル、ペンタフェニル、ペンタセニル、テトラフェニレニル、ヘキサフェニル、ヘキサセニル、ルビセニル、コロネニル、トリナフチレニル、ヘプタフェニル、ヘプタセニル、ピラントレニル、オヴァレニル等などの縮合多環式芳香族炭化水素基;テルフェニレンやクウォーターフェニレン等を挙げることができ、好ましくは一価C6-12芳香族炭化水素基であり、より好ましくはフェニルである。
【0032】
「5-20員飽和ヘテロシクリル基」は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を1以上含み、環を構成する炭素原子とヘテロ原子の合計数が5以上、20以下である飽和環状基をいい、環を1つのみ有する単環基であってもよいし、2以上の基が互いに単結合で結合している直結多環基、縮合環基、橋かけ環基、スピロ環基であってもよい。5-20員飽和ヘテロシクリル基としては、例えば、オキシラニル、アジリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピロリジニル、オキサチオラニル、ピペリジニル、イソソルビド等を挙げることができる。
【0033】
「5-20員芳香族ヘテロシクリル基」とは、窒素原子、酸素原子または硫黄原子などのヘテロ原子を1以上含む5員環芳香族ヘテロシクリル基、6員環芳香族ヘテロシクリル基、縮合環芳香族ヘテロシクリル基などをいう。例えば、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チエニル、フリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾール等の5員環ヘテロアリール基;ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル等の6員環ヘテロアリール基;インドリル、イソインドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル等の縮合環ヘテロアリール基を挙げることができる。
【0034】
「(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル基」とは、アルキレングリコールモノアルキルエーテル基またはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル基をいい、下記式で表される。なお、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル基の炭素数は、主にR4の炭素数とmにより200以下に調整される。例えばR4の炭素数が8である場合、mは24以下の整数となる。
【0035】
【化3】

[式中、
3はC1-8アルキル基を表し、
4はC1-8アルキレン基を表し、
mは1以上、50以下の整数を表す。]
【0036】
「C1-8アルキル基」は、C1-20アルキル基のうち、炭素数1以上、8以下の直鎖状または分枝鎖状の一価飽和脂肪族炭化水素基をいい、C1-6アルキル基またはC1-4アルキル基が好ましく、C1-2アルキル基がより好ましく、メチルがより更に好ましい。
【0037】
「C1-8アルキレン基」は、炭素数1以上、8以下の直鎖状または分枝鎖状の二価飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、メチレン、エチレン、メチルメチレン、n-プロピレン、メチルエチレン、n-ブチレン、メチルプロピレン、ジメチルエチレン、n-ペンチレン、n-ヘキシレン等である。好ましくはC1-6アルキレン基またはC1-4アルキレン基であり、より好ましくはC2-4アルキレン基である。
【0038】
置換基αとしては、C1-6アルコキシル基、C1-7アシル基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、およびカルバモイル基から選択される1以上の置換基を挙げることができ、置換基βとしては、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシル基、C1-7アシル基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、およびカルバモイル基から選択される1以上の置換基を挙げることができる。
【0039】
「C1-6アルコキシル基」とは、炭素数1以上、6以下の直鎖状または分枝鎖状の一価脂肪族炭化水素オキシ基をいう。例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ等であり、好ましくはC1-4アルコキシル基であり、より好ましくはC1-2アルコキシル基であり、より更に好ましくはメトキシである。
【0040】
「C1-7アシル基」とは、炭素数1以上、7以下の脂肪族カルボン酸からOHを除いた残りの原子団をいう。例えば、ホルミル、アセチル、エチルカルボニル、n-プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、n-ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、t-ブチルカルボニル、n-ペンチルカルボニル、n-ヘキシルカルボニル等であり、好ましくはC1-4アシル基であり、より好ましくはアセチルである。
【0041】
「ハロゲノ基」としては、クロロ、ブロモおよびヨードからなる群より選択される1以上の基であり、クロロまたはブロモが好ましく、クロロがより好ましい。
【0042】
置換基αの置換基数は、置換可能であれば特に制限されないが、例えば、1以上、20以下とすることができる。当該置換基数は、10以下が好ましく、5以下または3以下がより好ましく、2以下または1がより更に好ましい。
【0043】
置換基βの置換基数は、置換可能であれば特に制限されないが、例えば、1以上、10以下とすることができる。当該置換基数は、5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下または1がより更に好ましい。
【0044】
水酸基含有化合物(i)としては、例えば、フェノール、2-クロロフェノール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノール、2-ブロモフェノール、3-ブロモフェノール、4-ブロモフェノール、2-メチルフェノール、3-メチルフェノール、4-メチルフェノールなどのフェノールおよびその誘導体;シクロヘキサノールなどのC3-10シクロアルカノール;ベンジルアルコール、2,6-ベンジルアルコールなどのベンジルアルコールおよびその誘導体;エチレングリコールモノメチルエーテルやプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテル;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルなどのオリゴアルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテルが挙げられる。
【0045】
水酸基含有化合物(i)は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、2種の水酸基含有化合物(i)を併用することにより、非対称の鎖状カーボネート誘導体を合成することができる。但し、製造効率などから、1種のみの水酸基含有化合物(i)を単独で用いることが好ましい。
【0046】
水酸基含有化合物(ii)としては、例えば、以下の水酸基含有化合物(ii-1)が挙げられる。
(ii-1) HO-R5-OH
[式中、R5は、置換基αを有してもよい二価C1-20脂肪族炭化水素基、置換基αを有してもよいC3-20シクロアルキレン基、置換基βを有してもよい二価C6-32芳香族炭化水素基、置換基βを有してもよい5-20員飽和ヘテロシクリレン基、置換基βを有してもよい5-20員芳香族ヘテロシクリレン基、または二価(ポリ)アルキレングリコール基を示す。]
【0047】
上記二価C1-20脂肪族炭化水素基、C3-20シクロアルキレン基、二価C6-32芳香族炭化水素基、5-20員飽和ヘテロシクリレン基、5-20員芳香族ヘテロシクリレン基、および二価(ポリ)アルキレングリコール基としては、それぞれ、一価C1-20脂肪族炭化水素基、C3-20シクロアルキル基、一価C6-32芳香族炭化水素基、5-20員飽和ヘテロシクリル基、5-20員芳香族ヘテロシクリル基、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル基に対応する二価の有機基を挙げることができる。例えば、5-20員飽和ヘテロシクリレン基としては、以下の基を挙げることができる。
【化4】
【0048】
また、二価(ポリ)アルキレングリコール基としては、下記式で表される基を挙げることができる。
【化5】

[式中、R6はC1-8アルキレン基を表し、nは1以上、50以下の整数を表す。]
【0049】
水酸基含有化合物(ii)としては、例えば、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール等のグリコール化合物;カテコールやレゾルシノールなどのジヒドロキシベンゼン化合物;4,6-ジヒドロキシ-2-メチルピリミジン、3,6-ジヒドロキシ-4-メチルピリダジンなどのジヒドロキシヘテロアリール化合物が挙げられる。
【0050】
その他、水酸基含有化合物(ii)としては、例えば、以下の水酸基含有化合物(ii-2)が挙げられる。
【化6】

[式中、
7とR8は、独立して-(CR1112q1-または-(-O-(CR1112q2-)q3-(式中、R11とR12は、独立して、HまたはC1-6アルキル基を表し、q1は0以上、10以下の整数を表し、q2は1以上、10以下の整数を表し、q3は1以上、10以下の整数を表し、q1またはq2が2以上の整数である場合、複数のR11またはR12は互いに同一であっても異なっていてもよい)を表し、
9とR10は、独立して、ハロゲノ基、C1-20脂肪族炭化水素基、C1-20アルコキシル基、C3-20シクロアルキル基、C6-20芳香族炭化水素基、C7-20アラルキル基、C6-20芳香族炭化水素オキシ基、またはC3-20シクロアルコキシル基を表し、
1は下記に示す基または単結合を表し、
【化7】

(式中、
13とR14は、独立して、H、ハロゲノ基、置換基αを有してもよいC1-20脂肪族炭化水素基、置換基αを有してもよいC1-20アルコキシル基、置換基βを有してもよいC6-20芳香族炭化水素基を表すか、或いはR13とR14が結合して、C3-20炭素環または5-12員ヘテロ環を形成してもよく、
15とR16は、独立して、HまたはC1-6アルキル基を表し、r1が2以上の整数である場合、複数のR15またはR16は互いに同一であっても異なっていてもよく、
17~R24は、独立して、ハロゲノ基、置換基αを有してもよいC1-20脂肪族炭化水素基、置換基αを有してもよいC1-20アルコキシル基、または置換基βを有してもよいC6-12芳香族炭化水素基を表し、
25は置換基αを有してもよいC1-9アルキレン基を表し、
r1は1以上、20以下の整数を表し、
r2は1以上、500以下の整数を表す。)
p1とp2は、独立して、0以上、4以下の整数を表す。]
【0051】
-(CR1112q1-としては、例えば、エチレン基(-CH2CH2-)を挙げることができ、-O-(CR1112q2-としては、例えば、-O-CH2CH2-および-O-CH(CH3)CH2-を挙げることができる。なお、R7が-(-O-(CR1112q2-)q3-である場合、安定性の点からHO-R7-PhはHO-(-O-(CR1112q2-)q3-Phとはならず、HO-(-(CR1112q2-O-)q3-Phとなる。
【0052】
13とR14が結合して形成されるC5-20炭素環としては、置換基βを有してもよいC3-20シクロアルキル基、およびシクロアルキル基と芳香族炭化水素基との縮合環を挙げることができる。当該縮合環としては、例えば、アセナフテニルやフルオレニルを挙げることができる。
【0053】
13とR14が結合して形成される5-12員ヘテロ環としては、例えば、オキシラニル、アジリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピロリジニル、オキサチオラニル、ピペリジニル、1(3H)-イソベンゾフラノニル等を挙げることができる。
【0054】
水酸基含有化合物(ii-2)として具体的には、例えば、4,4’-ビフェニルジオール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロウンデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-アリルフェニル)プロパン、3,3,5-トリメチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、α,ω-ビス[3-(o-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルジフェニルランダム共重合シロキサン、α,ω-ビス[3-(o-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスフェノール、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスフェノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-t-ブチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン、4-(9-(4-
ヒドロキシエトキシフェニル)-9H-フルオレン-9-イル)フェノール、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、4、4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、2,2’(9H-フルオレン-9,9’-ジイル)ビス(エタン-1-オール)、9H-フルオレン-9,9-ジイルジメタノール、2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(エタン-1-オール)、2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(メタン-1-オール)、2,2’-(1,4フェニレンビス(オキシ))ビス(エタン-1-オール)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-sec-ブチルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-アリルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)シクロドデカン、7-エチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、5,6-ジメチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカンを挙げることができる。
【0055】
これらの中でも特に4,4’-ビフェニルジオール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデ
カン及び1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロドデカンが好ましい。更に、代表的な水酸基含有化合物(ii-2)を以下に示す。
【0056】
【化8】
【0057】
但し、場合によっては、ジオール化合物(I1)から、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZを除外してもよい。
【0058】
水酸基含有化合物(ii)としては、例えば、以下の水酸基含有化合物(ii-3)が挙げられる。
【化9】

[式中、R7、R8、およびX1は、上記と同義を表す。]
【0059】
水酸基含有化合物(ii-3)としては、具体的には、9,9-ビス[6-(1-ヒドロキシメトキシ)ナフタレン-2-イル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン-2-イル]フルオレン、9,9-ビス[6-(3-ヒドロキシプロポキシ)ナフタレン-2-イル]フルオレン、および9,9-ビス[6-(4-ヒドロキシブトキシ)ナフタレン-2-イル]フルオレン等が挙げられる。なかでも9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン-2-イル]フルオレンが好ましい。
【0060】
水酸基含有化合物(ii-3)として具体的には、下記式で表されるビナフタレンジオール化合物が挙げられる。
【化10】

[式中、R7とR8は上記と同義を示す。]
【0061】
かかるビナフタレンジオール化合物としては、例えば、2,2’-ビス(1-ヒドロキシメトキシ)-1,1’-ビナフタレン、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン、2,2’-ビス(3-ヒドロキシプロピルオキシ)-1,1’-ビナフタレン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシブトキシ)-1,1’-ビナフタレン等が挙げられる。なかでも、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンが好ましい。
【0062】
水酸基含有化合物(ii)としては、例えば、以下の水酸基含有化合物(ii-4)が挙げられる。
(ii-4) HO-R26-X2-R27-OH
[式中、
26とR27は、独立して-(CR1112m1-または-(-O-(CR1112m2-)m3-(式中、R11とR12は前記と同義を表し、m1は1以上、10以下の整数を表し、m2は1以上、10以下の整数を表し、m3は1以上、10以下の整数を表し、m1またはm2が2以上の整数である場合、複数のR11またはR12は互いに同一であっても異なっていてもよい)を表し、
2は、1以上の炭化水素環またはヘテロ環を含む二価の基を表す。]
【0063】
-(CR1112m1-としては、例えば、エチレン基(-CH2CH2-)を挙げることができ、-O-(CR1112m2-としては、例えば、-O-CH2CH2-および-O-CH(CH3)CH2-を挙げることができる。なお、R26が-(-O-(CR1112m2-)m3-である場合、安定性の点からHO-R26-X3-はHO-(-O-(CR1112m2-)m3-X2-とはならず、HO-(-(CR1112m2-O-)m3-X2-となる。
【0064】
1以上の炭化水素環またはヘテロ環を含む二価の基としては、置換基βを有してもよい二価C6-32芳香族炭化水素基、置換基βを有してもよいC3-20シクロアルキレン基、置換基βを有してもよい5-20員飽和ヘテロシクリレン基、並びに、置換基βを有してもよいC6-32芳香族炭化水素基、置換基βを有してもよいC3-20シクロアルキル基、および置換基βを有してもよい5-20員飽和ヘテロシクリル基から選択される基が2以上連結された二価基を挙げることができる。
【0065】
二価C6-32芳香族炭化水素基は、全体として芳香族性を示すものであれば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選択されるヘテロ原子を含むものであってもよい。二価C6-32芳香族炭化水素基としては、特に制限されないが、以下のものを挙げることができる。
【化11】
【0066】
3-20シクロアルキレン基としては、特に制限されないが、以下のものを挙げることができる。
【化12】
【0067】
5-20員飽和ヘテロシクリレン基としては、特に制限されないが、以下のものを挙げることができる。
【化13】
【0068】
6-32芳香族炭化水素基、C3-20シクロアルキル基、および5-20員飽和ヘテロシクリル基から選択される基が2以上連結された二価基としては、特に制限されないが、以下のものを挙げることができる。
【化14】
【0069】
水酸基含有化合物(ii)としては、例えば、以下の水酸基含有化合物(ii-5)が挙げられる。
【化15】

[式中、R6およびnは、前述したものと同義を表す。]
【0070】
水酸基含有化合物(ii)は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、2種の水酸基含有化合物(ii)を併用することにより、ランダムポリカーボネートを合成することができる。但し、製造効率などの観点からは、1種のみの水酸基含有化合物(ii)を単独で用いることが好ましい。2種以上のジオール化合物を用いる場合には、ジオール化合物の数としては5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2がより更に好ましい。2種以上のジオール化合物を用いて本発明方法で共重合させることにより、得られるポリカーボネートの物性範囲が広がり、物性調整が容易になる。
【0071】
反応組成物におけるハロゲン化メタン1モルに対する水酸基含有化合物の総使用量のモル比は、0.05以上に調整する。本発明では、比較的多量の水酸基含有化合物を用いることにより、塩基を用いなくても反応を良好に進行せしめる。水酸基含有化合物は、上記組成物に高エネルギー光を照射した後、非照射下で追加してもよく、上記モル比は、反応の開始から終了までに反応液に添加した水酸基含有化合物の総使用量のモル比を示す。特に水酸基含有化合物が常温で固体である場合には、比較的多量の水酸基含有化合物をハロゲン化メタンに溶解し難いことがある。この様な場合には、組成物に高エネルギー光を照射した後、非照射下で水酸基含有化合物を追加することが好ましい。上記モル比としては、0.1以上、0.2以上、0.4以上または0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましい。また、上記モル比は1.0以上であってもよく、1.5以上であってもよい。しかし、上記モル比が過剰に大きいと、水酸基含有化合物が固体である場合に溶解性の問題が生じるおそれがあり得るので、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、5.0以下がより更に好ましい。
【0072】
ハロゲン化カルボニルまたはハロゲン化カルボニル様化合物が反応に関与する場合には、水酸基含有化合物の水酸基とハロゲン化カルボニル化合物が相互作用し、水酸基の求核性が低下することがある。このような場合には、一般的に塩基が用いられる。ところが塩基は、例えばポリカーボネート誘導体に残留すると着色や分解などの原因となることがある。本発明においては、塩基を用いることなく、比較的多量の水酸基含有化合物を用いることにより、反応を進行せしめる。即ち、本発明で光反応に付す組成物は、ハロゲン化メタンと水酸基含有化合物を含む他、塩基を含まない。なお、本発明において「塩基」とは、ハロゲン化メタンの分解により生じる酸を中和できるものをいい、水酸基含有化合物の水酸基と相互作用してその求核性を高め、反応を促進する作用を有する。
【0073】
3.反応条件
本発明方法は、上記ハロゲン化メタンおよび水酸基含有化合物を含む組成物に、酸素存在下で高エネルギー光を照射する工程を含む。
【0074】
上記ハロゲン化メタンと水酸基含有化合物との混合態様は特に限定されない。例えば、反応器中、各化合物の全量を予め混合しておいてもよいし、数回に分割して添加してもよいし、任意の速度で連続的に添加してもよい。また、上記ハロゲン化メタンと水酸基含有化合物の一方または両方が常温常圧で液体でない場合には、これら原料化合物を適度に溶解でき、且つ本発明反応を阻害しない溶媒を用いてもよい。かかる溶媒としては、例えば、n-ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;アセトニトリルなどのニトリル系溶媒を挙げることができる。
【0075】
酸素源としては、酸素を含む気体であればよく、例えば、空気や、精製された酸素を用いることができる。精製された酸素は、窒素やアルゴン等の不活性ガスと混合して使用してもよい。コストや容易さの点からは空気を用いることが好ましい。高エネルギー光照射によるハロゲン化メタンの分解効率を高める観点からは、酸素源として用いられる気体中の酸素含有率は約15体積%以上100体積%以下であることが好ましい。酸素含有率は上記ハロゲン化メタンなどの種類によって適宜決定すればよい。例えば、上記ハロゲン化メタンとしてジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化メタンを用いる場合は、酸素含有率15体積%以上100体積%以下が好ましく、ジブロモメタンやブロモホルムなどのハロゲン化メタンを用いる場合は、酸素含有率90体積%以上100体積%以下が好ましい。なお、酸素(酸素含有率100体積%)を用いる場合であっても、反応系内への酸素流量の調節により酸素含有率を上記範囲内に制御することができる。酸素を含む気体の供給方法は特に限定されず、流量調整器を取り付けた酸素ボンベから反応系内に供給してもよく、また、酸素発生装置から反応系内に供給してもよい。
【0076】
なお、「酸素存在下」とは、上記各化合物が酸素と接している状態か、上記組成物中に酸素が存在する状態のいずれであってもよい。従って、本発明に係る反応は、酸素を含む気体の気流下で行ってもよいが、生成物の収率を高める観点からは、酸素を含む気体はバブリングにより上記組成物中へ供給することが好ましい。
【0077】
酸素を含む気体の量は、上記ハロゲン化メタンの量や、反応容器の形状などに応じて適宜決定すればよい。例えば、反応容器中に存在する上記ハロゲン化メタンに対する、反応容器へ供給する1分あたりの気体の量を、5容量倍以上とすることが好ましい。当該割合としては、25容量倍以上がより好ましく、50容量倍以上がよりさらに好ましい。当該割合の上限は特に制限されないが、500容量倍以下が好ましく、250容量倍以下がより好ましく、150容量倍以下がよりさらに好ましい。また、反応容器中に存在する上記C1-4炭化水素化合物に対する、反応容器へ供給する1分あたりの酸素の量としては、5容量倍以上25容量倍以下とすることができる。気体の流量が多過ぎる場合には、上記C1-4炭化水素化合物が揮発してしまう虞があり得る一方で、少な過ぎると反応が進行し難くなる虞があり得る。酸素の供給速度としては、例えば、ハロゲン化メタン4mL当たり0.01L/分以上、10L/分以下とすることができる。
【0078】
上記組成物に照射する高エネルギー光としては、短波長光を含む光が好ましく、紫外線を含む光がより好ましく、より詳細には180nm以上500nm以下の波長の光を含む光が好ましく、ピーク波長が180nm以上500nm以下の範囲に含まれる光がより好ましい。なお、高エネルギー光の波長またはピーク波長は上記ハロゲン化メタンの種類に応じて適宜決定すればよいが、400nm以下がより好ましく、300nm以下がよりさらに好ましい。照射光に上記波長範囲の光が含まれている場合には、上記ハロゲン化メタンを効率良く酸化的光分解できる。例えば、波長280nm以上315nm以下のUV-Bおよび/または波長180nm以上280nm以下のUV-Cを含む光またはピーク波長がこの範囲に含まれる光を用いることができ、波長180nm以上280nm以下のUV-Cを含む光またはピーク波長がこの範囲に含まれる光を用いることが好ましい。
【0079】
光照射の手段は、上記波長の光を照射できるものである限り特に限定されないが、このような波長範囲の光を波長域に含む光源としては、例えば、太陽光、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ等が挙げられる。反応効率やコストの点から、低圧水銀ランプが好ましく用いられる。
【0080】
照射光の強度や照射時間などの条件は、出発原料の種類や使用量によって適宜設定すればよい。例えば、光源から上記組成物の最短距離位置における所望の光の強度としては、1mW/cm2以上、50mW/cm2以下が好ましい。光の照射時間としては、0.5時間以上10時間以下が好ましく、1時間以上6時間以下がより好ましく、2時間以上4時間以下がよりさらに好ましい。光照射の態様も特に限定されず、反応開始から終了まで連続して光を照射する態様、光照射と光非照射とを交互に繰り返す態様、反応開始から所定の時間のみ光を照射する態様など、いずれの態様も採用できる。光照射と光非照射とを交互に繰り返す場合には、水酸基含有化合物のハロゲン化カルボニル化と更なる水酸基含有化合物との反応が交互に行われ、水酸基含有化合物とそのハロゲン化カルボニル体が適度な化学量論比となり、反応が良好に促進される。また、光源とハロゲン化メタンとの最短距離としては、1m以下が好ましく、50cm以下がより好ましく、10cm以下または5cm以下がより更に好ましい。当該最短距離の下限は特に制限されないが、0cm、即ち、光源をハロゲン化メタン中に浸漬してもよい。
【0081】
反応時の温度も特に限定はされず、適宜調整すればよいが、例えば、0℃以上50℃以下とすることができる。当該温度としては、10℃以上がより好ましく、20℃以上がよりさらに好ましく、また、40℃以下がより好ましく、30℃以下がよりさらに好ましい。
【0082】
水酸基含有化合物の一部は、高エネルギー光の照射を停止した後に反応液へ追加してもよい。かかる態様によれば、水酸基含有化合物、ハロゲン化メタンの分解物と水酸基含有化合物との反応物、および/または目的化合物であるカーボネート誘導体の高エネルギー光による分解を抑制することができ得る。
【0083】
更に、ハロゲン化メタンと水酸基含有化合物との反応後、高エネルギー光の照射と酸素の供給を停止し、温度を上げてもよい。かかる工程により、ハロゲン化メタンの光酸化分解により生じたハロゲン化カルボニルを反応液から除外することが可能になる。当該工程の温度は、過剰なハロゲン化カルボニルの量を低減できれば特に制限されないが、例えば、40℃以上、80℃以下とすることができる。
【0084】
本発明の製造方法に使用できる反応装置としては、反応容器に光照射手段を備えたものが挙げられる。反応装置には、攪拌装置や温度制御手段が備えられていてもよい。図1に、本発明の製造方法に使用できる反応装置の一態様を示す。図1に示す反応装置は、筒状反応容器6内に光照射手段1を有するものである。筒状反応容器6内に、上記各原料化合物を添加し、当該反応容器6内に酸素を含有する気体を供給または上記組成物に酸素を含有する気体をバブリングしながら(図示せず)、光照射手段1より光を照射して反応を行う。前記光照射手段1をジャケット2等で覆う場合、該ジャケットは、前記短波長光を透過する素材であることが好ましい。また、反応容器の外側から光照射を行ってもよく、この場合、反応容器は、前記短波長光を透過する素材であることが好ましい。前記短波長光を透過する素材としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、石英ガラス等が好ましく挙げられる。
【0085】
上記反応後の生成物は、従来公知の方法で精製をしてもよい。精製方法としては、蒸留、出発原料化合物の減圧留去、カラムクロマトグラフィー、分液、抽出、洗浄、再結晶などが挙げられる。
【0086】
4.生成化合物
本発明において水酸基含有化合物(ii)を用いる場合、ポリカーボネート誘導体(II-1)が生成するか或いは環状カーボネート誘導体(II-2)が生成するか、またそれらの生成割合は、主に水酸基含有化合物(ii)における2つの水酸基間の距離や化学構造のフレキシビリティに依存する。具体的には、予備実験などにより確認すればよい。
【0087】
本発明方法により製造される鎖状カーボネート誘導体は、非水溶媒などとして有用であり、例えば、鎖状カーボネートはリチウムイオン二次電池の電解質の溶媒などとして利用することができる。さらに、ポリカーボネートは、優れたエンジニアリングプラスチックとして有用である。
【0088】
本願は、2018年11月15日に出願された日本国特許出願第2018-215003号に基づく優先権の利益を主張するものである。2018年11月15日に出願された日本国特許出願第2018-215003号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例
【0089】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0090】
実施例1~4: 脂肪族アルコールの反応
【化16】

直径42mm、容量100mLの筒状反応容器内に、直径30mmの石英ガラスジャケットを装入し、さらに石英ガラスジャケット内に低圧水銀ランプ(「UVL20PH-6」SEN Light社製,20W,φ24×120mm)を装入した反応システムを構築した。当該反応システムの模式図を図1に示す。なお、当該低圧水銀ランプからの照射光には波長254nmのUV-Cが含まれ、管壁から5mmの位置における波長254nmの光の照度は6.23~9.07mW/cm2であった。反応容器内に精製したクロロホルム(20mL,250mmol)、および表1に示す脂肪族アルコール(250mmol)を入れ、攪拌混合した。当該反応液を攪拌しつつ、50℃で0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む高エネルギー光を照射した。次いで、反応液を1H NMRで分析し、収率を算出した。結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
表1に示す結果の通り、塩基を用いなくてもクロロホルムとアルコールからカーボネートを容易に合成できることが実証された。なお、アルデヒドは、クロロギ酸エステルが光分解して生成したと考えられた。
【0093】
実施例5~7: エチレンカーボネートの合成
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(16mL,200mmol)とエチレングリコール(5.6mL,100mmol)を入れ、表2に示す温度で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む高エネルギー光を照射した。
8時間後、反応液に水とジクロロメタンを加えて分液し、有機相を80℃で減圧濃縮することにより白色固体であるエチレンカーボネートを得た。収率を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
また、反応温度を50℃に変更し、反応液から試料を30分毎に6時間まで取得し、1H NMRで分析し、エチレングリコールのメチレン基プロトンに対するエチレンカーボネートのメチレン基プロトンのピーク面積の積分比を求めた。結果を図2に示す。
図2に示す結果の通り、反応の進行につれてエチレンカーボネートが生成するものの、反応時間が長くなると、エチレンカーボネート量は減少する傾向が認められた。その理由としては、1H NMRスペクトルの経時的変化から、エチレングリコール量が多い場合には、反応時間が長くなると下記式のように開環重合反応が進行してポリカーボネートジオールが生成していることが考えられた。
【0096】
【化17】
【0097】
別途、反応時間を3.5時間とし、エチレンカーボネートを上記の条件で単離した結果、収率は23%であった、また、1H NMRによる分析結果から求めたポリマーの収率は14%であり、40%のエチレングリコールを回収することができた。
【0098】
実施例8~10: エチレンカーボネートの合成
上記実施例5~7において、クロロホルムの使用量を8mL(100mmol)に変更し、クロロホルムとエチレングリコールのモル比を1:1とした以外は同様にして、エチレンカーボネートを合成した。結果を表3に示す。
【表3】
【0099】
実施例11: PTMGポリカーボネートの合成
【化18】

実施例1で用いた反応システムの反応容器内に、精製クロロホルム(4mL,50mmol)、およびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(「PolyTHF2000S」BASF社製,分子量:2000g/mol,上記式中の「k」は、繰り返しを示す。)(10.3g,5mmol)を入れ、攪拌混合した。当該反応液を攪拌しつつ、20℃で1L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む高エネルギー光を6時間照射した。
次いで、上記低圧水銀ランプの電源を切り、PTMG2000(10.3g,5mmol)を追加し、120℃で3時間攪拌した。
反応液に水とクロロホルムを添加した後、分液した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、50℃で2時間減圧乾燥することにより、黄色液体を得た(収量:15.1g,収率:72%)。得られた液体を1H NMRで分析したところ、目的化合物が生成していることが確認された。
下記の条件のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析し、分子量を求めた。結果を表4に示す。
装置: 高速GPC装置(「HLC-8320GPC」東ソー社製)
カラム: 「SuperMultipore HZ-M」 (4.6mm×150mm)×3本直列 東ソー社製
移動相: クロロホルム 流速: 0.35mL/min
オーブン温度: 40℃ 濃度: 0.2w/v%
注入量: 10μL 分子量標準: ポリスチレン
検出器: RI
【0100】
【表4】
【0101】
実施例12: 1,3-プロパンジオールポリカーボネートの合成
【化19】

実施例1で用いた反応システムの反応容器内に、精製クロロホルム(8mL,100mmol)、および1,3-プロパンジオール(100mmol)を入れ、攪拌混合した。当該反応液を攪拌しつつ、50℃で0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む高エネルギー光を10分間照射した後、上記低圧水銀ランプの電源を切り、高エネルギー光の非照射下で10分間攪拌した。かかるサイクルを24回繰り返した。反応開始から2時間後、4時間後および6時間後に、揮発または分解したクロロホルムを補うために、それぞれ精製クロロホルム(8mL,100mmol)を追加した。反応後、反応液を50℃で2時間減圧乾燥することにより、無色液体を得た。分子量を実施例11と同様の条件により求めた。結果を表5に示す。
【0102】
【表5】
【0103】
実施例13: 1,4-ブタンジオールポリカーボネートの合成
【化20】

実施例1で用いた反応システムの反応容器内に、精製クロロホルム(8mL,100mmol)、および1,4-ブタンジオール(100mmol)を入れ、攪拌混合した。当該反応液を攪拌しつつ、20℃で0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む高エネルギー光を10時間照射した。次いで、上記低圧水銀ランプの電源を切り、高エネルギー光の非照射下、室温で12時間攪拌した。
反応後、反応液を50℃で2時間減圧乾燥することにより、黄色液体を得た。分子量を実施例11と同様の条件により求めた。結果を表6に示す。
【0104】
【表6】
【0105】
実施例14: 4-ヒドロキシメチルエチレンカーボネートの合成
【化21】

実施例1で用いた反応システムの反応容器内に、精製クロロホルム(24mL,300mmol)、およびグリセリン(100mmol)を入れ、攪拌混合した。当該反応液を攪拌しつつ、50℃で0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む高エネルギー光を3時間照射した。
反応後、反応液に内部標準としてアセトンを添加し、1H NMRで分析したところ、目的化合物である4-ヒドロキシメチルエチレンカーボネートの生成を確認することができた(収率:65%)。
【0106】
実施例15: PTMGポリカーボネートの合成
【化22】

実施例1で用いた反応システムの反応容器内に、精製クロロホルム(1mL,12.5mmol)、およびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(「PolyTHF2000S」BASF社製,分子量:2000g/mol,上記式中の「k」は、繰り返しを示す。)(10.3g,5mmol)を入れ、攪拌混合した。当該反応液を攪拌しつつ、20℃で1L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む高エネルギー光を2時間照射した。
次いで、上記低圧水銀ランプの電源を切り、PTMG2000(10.3g,5mmol)を追加し、アルゴンガス雰囲気下、80℃で17時間攪拌し、1H NMRで分析したところ、目的化合物が生成していることが確認された(収量:16.1g,収率:77%)。また、反応液は、室温で固体になった。得られた固体を実施例11と同様の条件のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析し、分子量を求めた。結果を表7に示す。
【0107】
【表7】
【0108】
実施例16: エチレンカーボネートの合成
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に、表8に示す量の精製クロロホルムとエチレングリコール(EG)を入れ、20℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む高エネルギー光を照射した。
1時間後、光照射を停止し、更に50℃で1時間撹拌した。次いで、反応液を1H NMRで分析し、エチレンカーボネート、カーボネートジオール、クロロギ酸エステル、および未反応エチレングリコールの使用エチレングリコールに対する割合を求めた。また、本実験の反応では、クロロホルムから生じたホスゲンとエチレングリコールは主に1:1で反応するはずであるから、相対量が少ない方、即ち実験番号1,2ではクロロホルムを、実験番号3,4ではエチレングリコールを基準として収率を算出した。結果を表8に示す。
【0109】
【表8】
【0110】
表8に示される実験番号1,2の結果の通り、クロロホルムに対するエチレングリコールの量が大過剰である場合であっても、反応は進行した。アルコール化合物はクロロホルムの安定化剤として使用されており、クロロホルム製品にも微量のアルコール化合物が添加されていることから、エチレングリコールが大過剰の場合であっても反応が進行することは驚くべき結果であった。
また、ハロゲン化メタンであるクロロホルム1モルに対する水酸基含有化合物であるエチレングリコールのモル比が0.1である場合には、反応が良好に進行して目的化合物であるエチレンカーボネートが80%という高収率で得られた。
一方、その理由は明らかではないが、ハロゲン化メタンであるクロロホルム1モルに対する水酸基含有化合物であるエチレングリコールのモル比が0.01である場合、反応は十分に進行せずに目的化合物であるエチレンカーボネートの収率が低い一方で、クロロギ酸エステルの収率は比較的高かった。
よって、ハロゲン化メタン1モルに対してモル比が0.05以上の水酸基含有化合物を用いることによって、カーボネート誘導体が良好に得られると考えられる。
【0111】
実施例17: BPEFポリカーボネートの合成
【化23】

実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(8mL,100mmol)、および9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF,田岡化学工業社製,2.19g,5mmol)を入れ、攪拌混合した。当該反応液を攪拌しつつ、20℃で1.0L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む高エネルギー光を3.5時間照射した。
次に、上記低圧水銀ランプの電源を切り、反応液を50℃で1時間撹拌した後、BPEF(2.19g,5mmol)を追加し、180℃で1時間撹拌した。反応液にジクロロメタンとメタノールを加え、析出した沈殿を吸引しつつ濾取し、真空乾燥することにより茶色固体のポリカーボネートを63%の収率で得た。生成物の同定は1H NMRおよびFT-IRによって行った。得られたポリカーボネートを下記の条件のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析し、分子量を求めた。結果を表9に示す。
装置: 高速液体クロマトグラフシステム(「MD-2060」,「PU-2089」,「LC-NetII/ADC」,「CO-2060」日本分光社製)
カラム: 「TSKgel G3000HR」(7.8mm×300mm),「TSKgel G4000HR」(7.8mm×300mm,2本直列)東ソー社製
移動相: THF 流速: 0.5mL/min
オーブン温度: 20℃ 濃度: 0.2w/v%
注入量: 10μL 分子量標準: ポリスチレン
検出器: PDA
【表9】
【0112】
実施例18: PCPDMポリカーボネートの合成
【化24】

実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(40mL,50mmol)、およびペンタシクロペンタデカン ジメタノール(PCPDM,三菱瓦斯化学社製,1.31g,5mmol)を入れ、攪拌混合した。当該反応液を攪拌しつつ、0℃で1.0L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む高エネルギー光を2時間照射した。更に温度を20℃に昇温して、反応を1時間行った。
次に、上記低圧水銀ランプの電源を切り、反応液を50℃で1時間撹拌した後、120℃で1時間撹拌し、更に160℃で1時間撹拌した。反応液にクロロホルムとメタノールを加え、析出した沈殿を吸引しつつ濾取し、50℃で真空乾燥することにより肌色固体のポリカーボネートを51%の収率で得た。生成物の同定は1H NMRおよびFT-IRによって行った。分子量を実施例11と同様の条件により求めた。結果を表10に示す。
【表10】
【0113】
実施例19: TCDDMポリカーボネートの合成
【化25】

実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(4mL,50mmol)、およびトリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノール(TCDDM,オクセア社製,0.98g,5mmol)を入れ、攪拌混合した。当該反応液を攪拌しつつ、0℃で1.0L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む高エネルギー光を3時間照射した。
次に、上記低圧水銀ランプの電源を切り、反応液を50℃で1時間撹拌した後、TCDDM(0.82g,4.18mmol)を追加し、更に120℃で1時間、160℃で1時間撹拌した。反応液にクロロホルムとメタノールを加え、析出した沈殿を吸引しつつ濾取し、80℃で真空乾燥することにより茶色固体のポリカーボネートを87%の収率で得た。生成物の同定は1H NMRおよびFT-IRによって行った。分子量を実施例11と同様の条件により求めた。結果を表11に示す。
【表11】
【0114】
実施例20: 共重合ポリカーボネートの合成
【化26】

実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(4mL,50mmol)、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF,田岡化学工業社製)(2.19g,5mmol)、およびペンタシクロペンタデカン ジメタノール(PCPDM,三菱瓦斯化学社製)(1.31g,5mmol)を入れ、攪拌混合した。当該反応液を攪拌しつつ、0℃で1.0L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む高エネルギー光を3時間照射した。
次に、上記低圧水銀ランプの電源を切り、反応液を50℃で1時間撹拌した。反応液を、アルゴン雰囲気下、120℃で1時間撹拌し、更に温度を200℃に昇温して1時間撹拌した。反応液にジクロロメタンとメタノールを加え、析出した沈殿を吸引ろ過によって濾取し、真空乾燥することにより肌色固体のポリカーボネートを40%の収率で単離した。生成物を1H-NMRとFT-IRスペクトルで分析することにより、目的とするBPEF-PCPDM共重合ポリカーボネートが生成していることが確認された。分子量を実施例17と同様の条件により求めた。結果を表12に示す。
【表12】
【0115】
実施例21: 共重合ポリカーボネートの合成
【化27】

実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(8mL,50mmol)、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF,2.19g,5mmol)およびトリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノール(TCDDM,0.98g,5mmol)を入れ、攪拌混合した。当該反応液を攪拌しつつ、0℃で1.0L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む高エネルギー光を3時間照射した。ランプをOFFにして、更にサンプル溶液を50℃で1時間撹拌した。
このサンプル溶液にTCDDM(0.98g,5mmol)を追加し、アルゴン雰囲気下、反応液を120℃で1時間撹拌し、更に、温度を200℃に昇温して1時間撹拌した。反応液が室温に戻るまで放置すると、茶色固体のポリカーボネートが95%の収率で得られた。生成物は1H-NMR測定によって同定した。分子量を実施例17と同様の条件により求めた。結果を表13に示す。
【表13】
【符号の説明】
【0116】
1: 光照射手段, 2: ジャケット, 3: ウォーターバス,
4: 撹拌子, 5: 熱媒または冷媒, 6: 筒状反応容器
図1
図2