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特許7421774成分測定方法および成分測定用ストリップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】成分測定方法および成分測定用ストリップ
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/22 20060101AFI20240118BHJP
   A01G 31/00 20180101ALI20240118BHJP
【FI】
G01N31/22 121G
A01G31/00 601A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021063953
(22)【出願日】2021-04-05
(65)【公開番号】P2021177169
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2020080242
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000223045
【氏名又は名称】東洋濾紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】阿部 亮二
(72)【発明者】
【氏名】石井 裕也
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-103542(JP,A)
【文献】特開2004-004106(JP,A)
【文献】特開平05-023199(JP,A)
【文献】特開平02-232551(JP,A)
【文献】特公昭61-051737(JP,B2)
【文献】実公平01-042041(JP,Y2)
【文献】特許第3076361(JP,B2)
【文献】特公平05-050275(JP,B2)
【文献】特許第2547664(JP,B2)
【文献】特開昭62-161053(JP,A)
【文献】特許第2553639(JP,B2)
【文献】特開昭63-088000(JP,A)
【文献】国際公開第01/091540(WO,A1)
【文献】特開昭52-151091(JP,A)
【文献】特開2021-065188(JP,A)
【文献】特開平11-172131(JP,A)
【文献】特開2020-153988(JP,A)
【文献】特開2018-128391(JP,A)
【文献】特表平09-508200(JP,A)
【文献】特表2013-537978(JP,A)
【文献】製品紹介 みどりくんスターターキット,富士平工業株式会社,2020年04月24日,https://www.fujihira.co.jp/seihin/soi/midorikun.html
【文献】有機質肥料活用型養液栽培マニュアル (第1版),独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構,2014年06月,https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/vt_youekisaibai_manual_20140616.pdf
【文献】上山 啓一,普及技術事例-No.02 RQフレックスを用いた作物・土壌診断技術,宮城県農業・園芸総合研究所園芸環境部,2013年01月28日,https://web.archive.org/web/20130128054953/https://www.naro.affrc.go.jp/org/brain/shien/seika/gijutu/examples/02/example_02.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/22
A01G 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を生育する液体試料の成分を測定する成分測定方法であって、
第1試薬を保持する第1試薬パッドと第2試薬を保持する第2試薬パッドとが基材シート上に重ねて設けられたストリップを準備する第1工程と、
前記ストリップに前記液体試料を接触させる第2工程と、
前記液体試料と、前記第1試薬パッドが保持する第1試薬と、前記第2試薬パッドが保持する第2試薬とを混合させて呈色反応を発生させる第3工程と、
前記呈色反応が発生した呈色領域の色を比色する第4工程と、を含み、
前記第1試薬パッドと前記第2試薬パッドは、前記基材シート上に、前記第2試薬パッド、前記第1試薬パッドの順に重ねて設けられ、前記第1試薬パッドが前記ストリップの最表面になり、前記呈色領域は前記第1試薬パッドに現れることを特徴とする成分測定方法。
【請求項2】
前記第3工程は、
前記液体試料と前記第1試薬との第1反応を発生させる工程と、
前記第1反応により生成される反応物と前記第2試薬との第2反応を発生させる工程と、を含み、
前記第2反応の結果が前記呈色反応の結果であることを特徴とする請求項1に記載の成分測定方法。
【請求項3】
前記第2試薬は、酸試薬およびアルカリ試薬のいずれか一方であることを特徴とする請求項1または2に記載の成分測定方法。
【請求項4】
前記第2試薬は、不揮発性酸であることを特徴とする請求項に記載の成分測定方法。
【請求項5】
前記第1試薬または前記第2試薬は、酸化剤および還元剤のいずれか一方であることを特徴とする請求項1または2に記載の成分測定方法。
【請求項6】
前記第1試薬は、塩素化試薬であることを特徴とする請求項に記載の成分測定方法。
【請求項7】
植物を生育する液体試料の成分を測定する成分測定用ストリップであって、
基材シート上に設けられた、第1試薬を保持する第1試薬パッドと2試薬を保持する第2試薬パッドと備え、
前記第1試薬パッドと前記第2試薬パッド、前記液体試料を接触させた場合に、前記液体試料と、前記第1試薬パッドが保持する第1試薬と、前記第2試薬パッドが保持する第2試薬とが混合されて呈色反応が発生するように配置され
前記第1試薬パッドと前記第2試薬パッドは、前記基材シート上に、前記第2試薬パッド、前記第1試薬パッドの順に重ねて設けられており、前記第1試薬パッドが前記ストリップの最表面になり、前記呈色反応が発生した呈色領域は前記第1試薬パッドに現れることを特徴とする成分測定用ストリップ。
【請求項8】
前記第1試薬パッドおよび前記第2試薬パッドは、試験紙により構成されていることを特徴とする請求項に記載の成分測定用ストリップ。
【請求項9】
前記第1試薬パッドと前記第2試薬パッドとは、
前記液体試料を接触させた場合に、まず前記液体試料と前記第1試薬との第1反応が発生し、次に、前記第1反応により生成される反応物と前記第2試薬との第2反応が発生するように配置されていることを特徴とする請求項またはに記載の成分測定用ストリップ。
【請求項10】
前記第2試薬は、酸試薬およびアルカリ試薬のいずれか一方であることを特徴とする請求項またはに記載の成分測定用ストリップ。
【請求項11】
前記第2試薬は、不揮発性酸であることを特徴とする請求項10に記載の成分測定用ストリップ。
【請求項12】
前記第1試薬または前記第2試薬は、酸化剤および還元剤のいずれか一方であることを特徴とする請求項またはに記載の成分測定用ストリップ。
【請求項13】
前記第1試薬は、塩素化試薬であることを特徴とする請求項12に記載の成分測定用ストリップ。
【請求項14】
植物を生育する液体試料の成分を測定する成分測定用ストリップの製造方法であって、
第1試薬を保持する第1試薬パッドを作製する第1工程と、
第2試薬を保持する第2試薬パッドを作製する第2工程と、
前記第1試薬パッドと前記第2試薬パッドとを基材シート上に重ねて設置する第3工程と、を含み、
前記第3工程では、
前記液体試料を接触させた場合に、前記液体試料と、前記第1試薬パッドが保持する第1試薬と、前記第2試薬パッドが保持する第2試薬とが混合されて呈色反応が発生するように、前記第1試薬パッドと前記第2試薬パッドとを設置し、
前記第1試薬パッドと前記第2試薬パッドは、前記基材シート上に、前記第2試薬パッド、前記第1試薬パッドの順に重ねて設けられ、前記第1試薬パッドが前記ストリップの最表面になり、前記呈色反応が発生した呈色領域は前記第1試薬パッドに現れることを特徴とする成分測定用ストリップの製造方法。
【請求項15】
前記第2工程は、
前記第2試薬パッドの本体に前記第2試薬の溶液を含浸させる工程と、
前記第2試薬の溶液を含浸させた前記第2試薬パッドを乾燥させる工程と、を含み、
前記第2試薬は、不揮発性酸であることを特徴とする請求項14に記載の成分測定用ストリップの製造方法。
【請求項16】
植物を生育する液体試料の成分を測定する成分測定装置であって、
第1試薬を保持する第1試薬パッドと第2試薬を保持する第2試薬パッドとが基材シート上に設けられたストリップを保持する保持部と、
前記液体試料と、前記ストリップの前記第1試薬パッドが保持する第1試薬と、前記第2試薬パッドが保持する第2試薬とが混合されて呈色反応が発生した呈色領域の色を比色し、前記液体試料中の成分の濃度を測定する測定部と、を備え
前記第1試薬パッドと前記第2試薬パッドとは、前記基材シート上に、前記第2試薬パッド、前記第1試薬パッドの順に重ねて設けられ、前記第1試薬パッドが前記ストリップの最表面になり、前記呈色領域は前記第1試薬パッドに現れることを特徴とする成分測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料中の成分を測定する成分測定方法および成分測定用ストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、植物工場においては、植物(野菜等の作物)に必要な養分を水に溶かした養液による養液栽培が行われる。養液栽培としては、養液が循環する循環式の水耕栽培がある。
このような循環式の水耕栽培の場合、養液が循環するにつれ栽培槽に保持される養液の組成が変化する。植物の生育は養液成分に影響されるので、養液分析の結果に基づき、必要に応じて適宜、養液の調整が行われる。
特許文献1には、循環式を採用した水耕栽培において、養液の物理量を検出し、その検出結果をもとに養液のPHや養分濃度といった栽培環境条件を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-53882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体分析装置としては、液体試料に含まれる多項目の成分を分析することができる高速液体クロマトグラフィー(HPLC:High Performance Liquid Chromatograpy)装置がある。しかしながら、HPLC装置は、装置自体が大掛かりであるので、測定対象である液体試料を一旦採取して、分析機器が装備されている分析サイトに送る必要がある。また、HPLC測定にも時間がかかる。
【0005】
よって、特に液体試料が扱われる現場の近くで、比較的短時間に成分分析を行いたい場合は、例えば、液体試料中の成分の呈色反応(発色または変色を伴う化学反応)を用いて液体試料中の成分を分析することが行われる。分析手法としては、比色法、分光測色法等が採用される。このような測定は、特に液体試料の初期段階のスクリーニング検査に有効である。
【0006】
ところが、呈色反応を用いた液体試料の成分測定方法では、液体試料に1種類の試薬を混合させるだけでは呈色反応が発生せず、呈色反応を発生させるためには、さらに第1試薬とは異なる第2試薬を混合させる必要がある場合がある。
この場合、まず、第1試薬を保持する試験紙を液体試料中に浸漬させて液体試料と第1試薬との化学反応物を生成する。次に、当該化学反応物が生成された試験紙を第2試薬中に浸漬または添加させて上記化学反応物と第2試薬との化学反応を発生させ、液体試料の成分濃度に応じて所定の色を呈する反応生成物を生成する。この反応生成物が生成された試験紙に対して光学測定(分光測定など)を行うことで、液体試料中の成分濃度が測定される。
【0007】
しかしながら、上記のような測定方法においては、試験紙を液体試料と第2試薬とに2回浸漬または添加させる必要があり、測定に時間がかかる。また、複数の液体(液体試料、第2試薬)を取り扱うので、各液体の取り扱い(例えば、外部への漏出防止)や廃棄の手間もかかる。さらに、各液体を保持する容器も液体の数だけ必要であり、管理も複雑になる。
【0008】
そこで、本発明は、短時間かつ簡便に液体試料中の成分を測定することができる成分測定方法および成分測定用ストリップを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る成分測定方法の一態様は、第1試薬を保持する第1試薬パッドと第2試薬を保持する第2試薬パッドとが基材シート上に設けられたストリップを準備する第1工程と、前記ストリップに液体試料を接触させる第2工程と、前記液体試料と、前記第1試薬パッドが保持する第1試薬と、前記第2試薬パッドが保持する第2試薬とを混合させて呈色反応を発生させる第3工程と、前記呈色反応が発生した呈色領域の色を比色する第4工程と、を含む。
【0010】
このように、第1試薬を保持する第1試薬パッドと第2試薬を保持する第2試薬パッドとが1つの基材シート上に設けられたストリップを液体試料に1回接触させるだけで、適切に呈色反応を発生させることができる。そのため、第1試薬と第2試薬とを用いて呈色反応を発生させる必要がある場合であっても、短時間で測定を行うことができる。また、第1試薬および第2試薬が、それぞれ試薬パッドに保持されているため、両試薬の取り扱い(例えば、外部への漏出防止)や廃棄の手間、両試薬を保持する容器が不要となる。よって、試薬管理が容易となる。
【0011】
また、上記の成分測定方法において、前記第3工程は、前記液体試料と前記第1試薬との第1反応を発生させる工程と、前記第1反応により生成される反応物と前記第2試薬との第2反応を発生させる工程と、を含み、前記第2反応の結果が前記呈色反応の結果であってもよい。
この場合、液体試料中の成分濃度に応じて、適切に呈色反応の結果を得ることができる。
【0012】
さらに、上記の成分測定方法において、前記第1工程では、前記第1試薬パッドと前記第2試薬パッドとが前記基材シート上に隣接して設けられた前記ストリップを準備するようにしてもよい。この場合、第2工程において、液体試料、第1試薬および第2試薬が混合されやすくすることができる。
また、上記の成分測定方法において、前記第1工程では、前記第1試薬パッドと前記第2試薬パッドとが前記基材シート上に重ねて設けられた前記ストリップを準備するようにしてもよい。この場合、第2工程において、液体試料、第1試薬および第2試薬をより適切に混合させることができる。
【0013】
さらに、上記の成分測定方法において、前記第2試薬は、酸試薬およびアルカリ試薬のいずれか一方であってもよい。この場合、第2試薬を混合させることで酸性度やアルカリ度といったpHを調整することができるので、第3工程において、pHに依存する呈色反応を適切に発生させることができる。
また、上記の成分測定方法において、前記第2試薬は、不揮発性酸であってもよい。この場合、第2試薬が揮発されることなく試薬パッドに定着されたストリップを用いて、適切に成分測定を行うことができる。
【0014】
さらに、上記の成分測定方法において、前記第1試薬または第2試薬は、酸化剤および還元剤のいずれか一方であってもよい。この場合、第3工程において、酸化、還元作用を適切に発生させることができる。
また、上記の成分測定方法において、前記第1試薬は、塩素化試薬であってもよい。ここで第1試薬が酸化剤の場合、前記酸化剤は水溶液中では不安定な場合が多いが、塩素化試薬は比較的安定であるので、分解されることなく試薬パットに定着されたストリップを用いて、適切に成分測定を行うことができる。
【0015】
さらに、本発明に係る成分測定用ストリップの一態様は、基材シート上に設けられた、第1試薬を保持する第1試薬パッドと、前記基材シート上に前記第1試薬パッドに隣接して設けられた、第2試薬を保持する第2試薬パッドと、を備え、前記第1試薬パッドと前記第2試薬パッドとは、液体試料を接触させた場合に、前記液体試料と、前記第1試薬パッドが保持する第1試薬と、前記第2試薬パッドが保持する第2試薬とが混合されて呈色反応が発生するように配置されている。
このように、第1試薬を保持する第1試薬パッドと第2試薬を保持する第2試薬パッドとが1つの基材シート上に隣接して設けられた構成を有するので、当該成分測定用ストリップを液体試料に1回接触させるだけで適切に呈色反応を発生させることができる。したがって、短時間かつ簡便に液体試料中の成分測定が可能なストリップとすることができる。
【0016】
また、上記の成分測定用ストリップにおいて、前記第1試薬パッドおよび前記第2試薬パッドは、試験紙により構成されていてもよい。この場合、適切に試薬を保持することができる。
さらに、上記の成分測定用ストリップにおいて、前記第1試薬パッドと前記第2試薬パッドとは、前記液体試料を接触させた場合に、まず前記液体試料と前記第1試薬との第1反応が発生し、次に、前記第1反応により生成される反応物と前記第2試薬との第2反応が発生するように配置されていてもよい。この場合、液体試料中の成分濃度に応じて、適切に呈色反応を発生させることができる。
【0017】
また、上記の成分測定用ストリップにおいて、前記第1試薬パッドと前記第2試薬パッドとは、前記基材シート上に重ねて設けられていてもよい。この場合、液体試料に接触させた際に、液体試料、第1試薬および第2試薬を適切に混合させることができる。
さらにまた、上記の成分測定用ストリップにおいて、前記第1試薬パッドと前記第2試薬パッドとは、前記基材シート上に、前記第2試薬パッド、前記第1試薬パッドの順に重ねて設けられていてもよい。この場合、呈色領域が現れる第1試薬パッドが最表面に配置されることになる。そのため、呈色領域の色を比色しやすくなる。
【0018】
また、上記の成分測定用ストリップにおいて、前記第1試薬パッドと前記第2試薬パッドとは、互いに接触して前記基材シートの同一面上に並べて設けられていてもよい。この場合、液体試料に接触させた際に、液体試料、第1試薬および第2試薬を適切に混合させることができる。
さらに、上記の成分測定用ストリップにおいて、各々相違する前記第1試薬を保持する複数の前記第1試薬パッドを有し、前記複数の第1試薬パッドの各々と前記第2試薬パッドとは、互いに接触して前記基材シート上に設けられていてもよい。この場合、複数の異なる成分を一度に測定することが可能となる。また、第2試薬パッドを共用とするので、その分のコストを削減することができる。
【0019】
また、上記の成分測定用ストリップにおいて、前記第2試薬は、酸試薬およびアルカリ試薬のいずれか一方であってもよい。この場合、pHに依存する呈色反応を適切に発生させることができる。
さらにまた、上記の成分測定用ストリップにおいて、前記第2試薬は、不揮発性酸であってもよい。この場合、第2試薬が揮発されることなく試薬パッドに定着されたストリップとすることができる。
【0020】
また、上記の成分測定用ストリップにおいて、前記第1試薬または第2試薬は、酸化剤および還元剤のいずれか一方であってもよい。この場合、第3工程において、酸化あるいは還元作用を適切に発生させることができる。
さらにまた、上記の成分測定用ストリップにおいて、前記第1試薬は、塩素化試薬であってもよい。第1試薬が酸化剤の場合、前記酸化剤は水溶液中では不安定な場合が多いが、塩素化試薬は比較的安定であるので、分解されることなく試薬パットに定着されたストリップを用いて、適切に成分測定を行うことができる。
【0021】
また、本発明に係る成分測定用ストリップの製造方法の一態様は、第1試薬を保持する第1試薬パッドを作製する第1工程と、第2試薬を保持する第2試薬パッドを作製する第2工程と、前記第1試薬パッドと前記第2試薬パッドとを基材シート上に隣接して設置する第3工程と、を含み、前記第3工程では、液体試料を接触させた場合に、前記液体試料と、前記第1試薬パッドが保持する第1試薬と、前記第2試薬パッドが保持する第2試薬とが混合されて呈色反応が発生するように、前記第1試薬パッドと前記第2試薬パッドとを設置する。
これにより、短時間かつ簡便に液体試料中の成分測定が可能なストリップを製造することができる。
【0022】
さらに、上記の成分測定用ストリップの製造方法において、前記第2工程は、前記第2試薬パッドの本体に前記第2試薬の溶液を含浸させる工程と、前記第2試薬の溶液を含浸させた前記第2試薬パッドを乾燥させる工程と、を含み、前記第2試薬は、不揮発性酸であってもよい。
この場合、第2試薬パッドを作製する第2工程において、乾燥工程を経ても第2試薬を適切に試薬パッドに定着させることができる。
【0023】
また、本発明に係る成分測定装置の一態様は、第1試薬を保持する第1試薬パッドと第2試薬を保持する第2試薬パッドとが基材シート上に設けられたストリップを保持するストリップ保持部と、前記液体試料と、前記ストリップの前記第1試薬パッドが保持する第1試薬と、前記第2試薬パッドが保持する第2試薬とが混合されて呈色反応が発生した呈色領域の色を比色し、前記液体試料中の成分の濃度を測定する測定部と、を備える。
これにより、液体試料中の成分濃度を適切に測定することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、短時間かつ簡便に液体試料中の成分を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態における成分測定用ストリップの一例を示す図である。
図2】成分測定用ストリップの製造工程例を示す図である。
図3】成分測定方法における接触工程を示す図である。
図4】成分測定方法における比色工程の別の例を示す図である。
図5】成分測定用ストリップの別の例を示す図である。
図6】成分測定用ストリップの別の例を示す図である。
図7】成分測定用ストリップの別の例を示す図である。
図8】成分測定用ストリップの別の例を示す図である。
図9】成分分析システムの基本構成例を説明するための図である。
図10】従来の成分測定用ストリップの一例を示す図である。
図11】従来の成分測定方法における第1の接触工程を示す図である。
図12】従来の成分測定方法における第2の接触工程を示す図である。
図13】従来の成分測定方法における比色工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、呈色試薬と液体試料との呈色反応を用いて液体試料中の成分を測定する成分測定装置について説明する。
この成分測定装置は、例えば、植物工場において植物(野菜等の作物)に必要な養分を水に溶かした養液の成分分析を行う液体分析システムに用いられる。
【0027】
図9は、植物工場における液体分析システムの例を示す図である。
一般に、植物工場においては、植物(野菜等の作物)に必要な養分を水に溶かした養液による養液栽培が行われる。図9では、養液栽培として、養液91を循環させる循環式の水耕栽培の例を示している。
この図9に示すように、作物92が育成される栽培槽93に供給される養液91は、送液ポンプ94により、循環流路95を介して循環する。循環する養液91の一部は、循環流路95の一部から分岐した液体試料採取流路96を介して、例えば自動的に採取され、採取された養液91は液体分析装置97により成分分析される。
【0028】
循環式の水耕栽培の場合、養液が循環するにつれ栽培槽に保持される養液の組成が変化する。植物の生育は養液成分に影響されるので、養液分析の結果に基づき、必要に応じて適宜、養液の調整が行われる。
液体分析装置97は、例えば、養液91の分析に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を採用した成分測定析装置とすることができる。この場合、液体分析装置97は、養液91中の多項目の成分を精度良く分析することができるが、測定に時間がかかるとともに、装置自体も大がかりとなる。
そこで、比較的短時間に養液91中の成分を測定したい場合には、呈色試薬と養液91との呈色反応を用いて、養液91中の成分を測定する方法が用いられる。
【0029】
以下、従来の呈色反応を用いた液体試料の成分測定方法について説明する。
まず、試薬が保持されたストリップ(試験片)を準備する。
ストリップの構造例を図10に示す。図10に示すように、ストリップ10´は、短冊形状の基材シート13の片側表面であって当該基材シート13の一端近傍に、試薬を保持する試薬パッド11が設けられた構造を有する。
【0030】
そして、図11(a)に示すように、サンプル容器31aに保持された液体試料31(例えば、図9に示す水耕栽培用の養液91)を準備する。そして、その液体試料31中に、図10に示すストリップ10´を浸漬する(接触工程)。このとき、試薬パッド11の少なくとも一部は、必ず液体試料31中に浸漬されるようにする。なお、試薬パッド11は、すべて液体試料31中に浸漬される方が好ましい。
なお、この接触工程においては、図11(b)に示すように、図10に示すストリップ10´を試薬パッド11が上面側に位置するように配置し、ピペット等を用いて液体試料31を試薬パッド11部分に滴下するようにしてもよい。
本工程により、試薬パッド11上にて、液体試料31と試薬とが反応し、液体試料31中の成分の濃度に応じた呈色反応が発生する。そのため、試薬パッド11の色の度合をもとに、液体試料31中の成分の濃度を測定することができる。
【0031】
ところが、植物工場の肥料成分の中には、上記のように1種類の試薬との反応だけでは呈色反応が発生しないものがある。
このような肥料成分を測定するためには、まず、液体試料と第1試薬とを反応させ、次に、液体試料と第1試薬との化学反応物を、第1試薬とは異なる第2試薬と反応させて、呈色反応を発生させる。
この場合の液体試料の成分測定は、以下の手順で行われる。
【0032】
まず、第1試薬が保持された試薬パッド11を備えるストリップ10´を準備する。そして、上述した図11(a)または図11(b)に示すように、液体試料31中にストリップ10´を浸漬させる(第1の接触工程)。これにより、液体試料31と第1試薬とを反応させる。
【0033】
次に、図12(a)に示すように、第2試薬容器22aに保持された第2試薬22を準備する。そして、図11(a)または図11(b)に示す工程を経たストリップ10´を乾燥させ、第2試薬22中に、乾燥済のストリップ10´を浸漬する(第2の接触工程)。このとき、試薬パッド11の少なくとも一部は、必ず第2試薬22中に浸漬されるようにする。なお、試薬パッド11は、すべて第2試薬22中に浸漬される方が好ましい。
なお、この第2の接触工程においては、図12(b)に示すように、ストリップ10´を試薬パッド11が上面側に位置するように配置し、ピペット等を用いて第2試薬22を試薬パッド11部分に滴下するようにしてもよい。
【0034】
本工程により、液体試料31と第1試薬との化学反応物と第2試薬22との化学反応が発生し、反応生成物が生成される。生成された反応生成物は、液体試料31の成分濃度に応じて、所定の色を呈する。
このように、液体試料、第1試薬、第2試薬を混合させることにより、呈色反応を発生させることができる。ここで、第1試薬または第2試薬としては、酸試薬もしくはアルカリ試薬といったpH調整剤や、酸化還元剤などを用いることができる。
【0035】
呈色反応が得られたストリップ10´は、図13に示すように成分測定装置100´にセットされ、液体試料31中の成分濃度が測定される(比色工程)。成分測定装置100´は、例えば光学測定器(分光測色計)である。成分測定装置100´は、ストリップ10´の試薬パッド11における呈色領域の色を比色することで、液体試料31中の成分濃度を測定することができる。なお、呈色領域の色を比色する場合には、目視により呈色領域を観測し、例えば比色表などを参照して液体試料31中の成分濃度を推定してもよい。
【0036】
このように、上記従来の成分測定方法においては、ストリップ10´に液体試料31と第2試薬22とを2回接触させる必要がある。そのため、測定に時間がかかる。また、複数の液体(液体試料31、第2試薬22)を取り扱うので、各液体の取り扱い(例えば、外部への漏出防止)や廃棄の手間もかかる。さらには、各液体を保持する容器も液体の数だけ必要であり、管理も複雑になる。
【0037】
本実施形態は、液体の複雑な管理等を必要とすることなく、短時間かつ簡便に液体試料31中の成分を測定するものである。
実施形態における成分測定方法においては、例えば短冊形状の1枚の基材シートに第1試薬を保持する第1試薬パッド(本実施形態では、試験紙)と、第2試薬を保持する第2試薬パッド(本実施形態では、試験紙)とが設けられたストリップを使用する。
【0038】
図1は、本実施形態における成分測定用のストリップ10の構成例を示す図である。
この図1に示すように、ストリップ10は、短冊形状の基材シート13の片側表面であって当該基材シート13の一端近傍に、第1試薬を保持する第1試験紙(第1試薬パッド)11と第2試薬を保持する第2試験紙(第2試薬パッド)12が隣接して設けられた構造を有する。本実施形態では、第1試験紙11と第2試験紙12とは、基材シート13上に、下から第2試験紙12、第1試験紙11の順に重ねて設けられている。
【0039】
基材シート13は、例えばポリエステルにより構成することができる。
第1試験紙11の本体および第2試験紙12の本体となるパッド本体は、吸湿性シート(吸湿性小片シート)により構成することができる。吸湿性シートとしては、例えばセルロース、セルロースナノファイバー(CNF)やガラス繊維などからなる濾紙や多孔性膜などが用いられる。
【0040】
次に、ストリップ10の製造工程例について、図2を参照しながら説明する。
図2に示す製造工程は、[A]第1試験紙11の作製工程(第1工程)、[B]第2試験紙12の作製工程(第2工程)、および[C]第1試験紙11および第2試験紙12の設置工程(第3工程)を含む。
【0041】
[A]第1試験紙11の作製工程
第1試験紙11は、以下の工程を経て作製される。
まず、吸湿性小片シートからなる試験紙本体11aを、第1試薬容器21aに保持された第1試薬21の溶液中に浸漬させることにより、当該試験紙本体11aに第1試薬21の溶液を含浸させる(含浸工程)。なお、この含浸工程においては、試験紙本体11aに第1試薬21の溶液を滴下して、試験紙本体11aに第1試薬21の溶液を含浸させてもよい。
次に、第1試薬21の溶液が含浸された試験紙11bを乾燥させ、溶媒21bを除去する(乾燥工程)。ここで、乾燥方式としては、例えば加熱乾燥方式を採用することができる。なお、乾燥は常温で行ってもよい。また、乾燥方式は上記に限定されるものではなく、例えば、凍結乾燥や真空乾燥、ドライエアを吹き付ける送風乾燥などを採用することもできる。
このように、含浸工程と乾燥工程とを経て、第1試薬21が保持された第1試験紙11が作製される。
【0042】
[B]第2試験紙12の製造工程
第2試験紙12は、以下の工程を経て作製される。
まず、吸湿性小片シートからなる試験紙本体12aを、第2試薬容器22aに保持された第2試薬22の溶液中に浸漬させることにより、当該試験紙本体12aに第2試薬22の溶液を含浸させる(含浸工程)。なお、この含浸工程においては、試験紙本体12aに第2試薬22の溶液を滴下して、試験紙本体12aに第2試薬22の溶液を含浸させてもよい。
次に、第2試薬22の溶液が含浸された試験紙12bを乾燥させ、溶媒22bを除去する(乾燥工程)。ここで、乾燥方式としては、例えば加熱乾燥方式を採用することができる。なお、乾燥は常温で行ってもよい。また、乾燥方式は上記に限定されるものではなく、例えば、凍結乾燥や真空乾燥、ドライエアを吹き付ける送風乾燥などを採用することもできる。
このように、含浸工程と乾燥工程とを経て、第2試薬22が保持された第2試験紙12が作製される。
【0043】
[C]設置工程
工程[A]において得られた第1試験紙11と、工程[B]において得られた第2試験紙12とを基材シート13の片面側に隣接して設置する。具体的には、基材シート13の片側表面であって当該基材シート13の一端近傍に、下から第2試験紙12、第1試験紙11の順に積層されるように設置する。
第1試験紙11、第2試験紙12は、例えば、接着剤により基材シート13に固定される。接着剤としては、液体試料31と第1試薬21との反応や、液体試料31と第1試薬21との化学反応物と第2試薬22との反応に影響を及ぼさないものであればよく、種類は問わない。
【0044】
例えば、液体試料31が水耕栽培用の養液である場合、測定対象となる成分は、カリウム(K)、リン(P)、アンモニウム(NH)、硝酸塩(NO)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、鉄(Fe)などとすることができる。
【0045】
例えば、液体試料31が水耕栽培用の養液であって、当該養液中のカリウムを測定する場合は、第1試験紙11が保持する第1試薬21としては、ジピクリルアミンナトリウム(Dipicrylamine Sodium Salt)および水酸化ナトリウム(sodium hydroxide:NaOH)が用いられる。また、第2試験紙12が保持する第2試薬22としては、トリクロロ酢酸(Trichloroacetic Acid:CClCOOH)などの不揮発性の酸が用いられる。
なお、ここでいう「不揮発性の酸」とは、沸点が100℃以上である酸を意味する。
【0046】
酸試薬の中には揮発性のものもあるが、第2試薬22として揮発性の酸試薬を用いた場合、図2に示す第2試験紙12の作製工程(工程[B])における乾燥工程において、溶媒22b以外に第2試薬22自体が揮発してしまう。その結果、第2試験紙12にて保持される第2試薬22の量が減少、もしくは無くなってしまう。
そのため、本実施形態では、第2試薬22として酸試薬を用いる場合は、不揮発性の酸を用いる。なお、第1試薬21についても、同様の理由により、不揮発性の試薬を用いることが好ましい。
【0047】
不揮発性の酸の例としては、上記のトリクロロ酢酸の他に、ホウ酸、メタケイ酸、リン酸、硫酸、チオ硫酸、過塩素酸、塩素酸、クロム酸、二クロム酸、ヒ酸、亜ヒ酸、臭素酸、ヨウ素酸、ヘキサクロリド白金(IV)酸、テトラクロリド(III)酸などが挙げられる。
ここで、安全性やコスト、取り扱い安さ(室温では粉末)などを考慮すると、トリクロロ酢酸、ホウ酸、メタケイ酸、リン酸、チオ硫酸、臭素酸、ヨウ素酸を用いることが好ましい。
また、液体試料31が水耕栽培用の養液である場合は、養液分析に影響しない(養液中の成分と重複しない)ように、トリクロロ酢酸、メタケイ酸、チオ硫酸、臭素酸、ヨウ素酸が好適である。
このように、第2試薬22としては、酸性度を調整するpH調整剤を用いることができる。
【0048】
また、例えば、液体試料31が水耕栽培用の養液であって、当該養液中のリンを測定する場合は、第1試験紙11が保持する第1試薬21としては、七モリブデン酸六アンモニウム(英語化学名: Ammonium molybdate tetrahydrate :(NHMo24・4HO)およびトリクロロ酢酸が用いられる。また、第2試験紙12が保持する第2試薬22としては、塩化スズ(II)(STANNOUS CHLORIDE:SnCl)、硫酸ヒドラジン、アスコルビン酸、テトラメチルベンジジン、ヒドロキノン、亜硫酸ナトリウムなどの還元剤が用いられる。
【0049】
また、例えば、液体試料31が水耕栽培用の養液であって、当該養液中のアンモニアを測定する場合は、第1試験紙11が保持する第1試薬21としては、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(Sodium dichloroisocyanurate:CClNaO)やトリクロロイソシアヌル酸(Trichloroisocyanuric acid:CCl)などの酸化剤である塩素化試薬が用いられる。また、第2試験紙12が保持する第2試薬22としては、サリチル酸ナトリウム(Sodium salicylate:CNaO)、フェノール(Phenol:COH)、ナフトール(Naphthol:C10O)が用いられる。
【0050】
なお、第1試薬21および第2試薬22は、測定対象となる成分に応じて適宜選択することができる。例えば、測定対象の成分がカリウムである場合、第2試薬22として酸試薬を用いる場合について説明したが、測定対象となる成分によっては、アルカリ試薬を用いてもよい。
【0051】
以下、本実施形態におけるストリップ10を用いた成分測定方法について説明する。
[第1工程]
図1に示すストリップ10を準備する。
[第2工程]
図3(a)に示すように、サンプル容器31aに保持された液体試料31中にストリップ10を浸漬し、ストリップ10に液体試料31を接触させる。このとき、第1試験紙11の少なくとも一部と、第2試験紙12の少なくとも一部は、必ず液体試料31中に浸漬されるようにする。なお、第1試験紙および第2試験紙12は、すべて液体試料31中に浸漬される方が好ましい。
なお、この第2工程においては、図3(b)に示すように、図1に示すストリップ10を第1試験紙11および第2試験紙12が上面側に位置するように配置し、ピペット等を用いて液体試料31を第1試験紙11および第2試験紙12部分に滴下するようにしてもよい。具体的には、図1に示すストリップ10の場合、最表面側の試験紙である第1試験紙11に液体試料31を滴下する。
【0052】
[第3工程]
積層された第1試験紙11および第2試験紙12にて、液体試料31と第1試薬21と第2試薬22とを混合させて化学反応を発生させ、呈色反応を発生させる。
具体的には、まず液体試料31と第1試薬21との化学反応(第1反応)を発生させ、次に、この化学反応(第1反応)により生成された化学反応物と第2試薬22との化学反応(第2反応)を発生させる。この化学反応(第2反応)により生成される反応生成物は、液体試料31中の成分の濃度に応じて、所定の色を呈する。
このように、ストリップ10に設けられた試験紙に液体試料31を接触させる一工程(第2工程)を経るだけで、液体試料31、第1試薬21および第2試薬22を混合させ、呈色反応を発生させることができる。
【0053】
ここで、呈色反応の一例として、測定対象が養液中のカリウムである場合について説明する。
この場合、上述したように、第1試薬21としてはジピクリルアミンナトリウム、第2試薬22としてはトリクロロ酢酸が用いられる。
ここで、ジピクリルアミンナトリウム自体は赤色の試薬であり、カリウムと反応して生成される反応物も赤色である。つまり、ジピクリルアミンナトリウムとカリウムとが反応しただけでは、色の変化はない。しかしながら、そこに第2試薬22であるトリクロロ酢酸が混合されると、色の変化が現れる。具体的には、赤色から黄色~橙色に変化する。このとき、ジピクリルアミンナトリウムとカリウムとの反応の度合に応じて、変化後の色が決定される。
例えば、養液中にカリウムが存在しない場合には、ジピクリルアミンナトリウムとトリクロロ酢酸を混合させた結果、赤色から黄色に変化する。一方、養液中にカリウムが存在する場合には、トリクロロ酢酸を混合させることで赤色から橙色に変化する。そして、その橙色の濃淡は、カリウムとジピクリルアミンナトリウムとの反応度合、つまり、カリウムの濃度に応じて決まる。
【0054】
[STEP4]
STEP3の後、図4に示すように、ストリップ10を成分測定装置100にセットする。成分測定装置100は、ストリップ10を保持する保持部101と、保持部101に保持されたストリップ10に対する光学測定を行い、液体試料31中の濃度を測定する測定部102と、を備える。測定部102は、光学測定器を備える。光学測定器としては、RGBカメラや分光測色計を用いることができる。測定部102は、光学測定器によりストリップ10の第1試験紙11にて呈色された呈色領域の色を測定し、比色法により液体試料31の濃度を測定する。
STEP3において呈色反応が発生された場合、その呈色領域は第1試験紙11に現れる。そのため、ストリップ10は、第1試験紙11および第2試験紙12が上面側に位置するように保持部101に保持され、測定部102は、第1試験紙11側から呈色領域の色を測定する。
なお、呈色領域の色を比色する場合には、目視により呈色領域を観測し、例えば比色表などを参照して液体試料31中の成分濃度を推定してもよい。
【0055】
以上説明したように、本実施形態における成分測定方法は、ストリップ10を準備する第1工程と、ストリップ10に液体試料31を接触させる第2工程と、液体試料31と、第1試験紙11が保持する第1試薬21と、第2試験紙12が保持する第2試薬22とを混合させて呈色反応を発生させる第3工程と、呈色反応が発生した呈色領域の色を比色する第4工程と、を含む。ここで、上記第2工程における「接触」とは、ストリップ10を液体試料31に浸漬させる動作と、ストリップ10に液体試料31を滴下する動作との少なくとも一方を含む。
【0056】
このように、本実施形態では、第1試薬21を保持する第1試験紙11と、第2試薬22を保持する第2試験紙12とが片側表面に設けられたストリップ10を液体試料31中の成分の測定に用いる。そのため、ストリップ10に液体試料31を接触させる一工程を経るだけで、まず液体試料31と第1試薬21との第1反応を発生させ、次に、第1反応により生成される反応物と第2試薬22との第2反応を発生させることができる。そして、第2反応の結果を呈色反応の結果として得ることができる。
【0057】
例えば、測定対象が養液中のリンである場合、上述したように、第1試薬21としてはモリブデン酸アンモニウム、第2試薬22としては塩化スズが用いられる。この第1試薬21に含まれるモリブデン酸アンモニウムは、リンと反応する前に塩化スズと混合されると先に還元されてしまうため、モリブデン酸アンモニウムと塩化スズとは、予め混合させておくことはできない。
本実施形態におけるストリップ10は、液体試料31を接触させる前は、第1試験紙11と第2試験紙12とによって、第1試薬21と第2試薬22とがそれぞれ混合されないように保持されており、ストリップ10に液体試料31を接触させることで初めて各試料21、22と液体試料31とが混合されるように構成されている。そのため、適切に呈色反応を発生させることができる。
【0058】
このように、本実施形態では、呈色反応を発生させるための試薬として、予め混合させておくことができない第1試薬21と第2試薬22とが必要である場合であっても、図1に示すようなストリップ10を用いることで、ストリップ10に液体試料31を1回接触させるだけで適切に呈色反応を発生させることができ、上述した図10に示すストリップ10´を用いた測定方法と比較して、短時間で測定を行うことができる。
また、第1試薬21および第2試薬22は、それぞれ試験紙に保持されているので、両試薬の取り扱い(例えば、外部への漏出防止)や廃棄の手間、両試薬を保持する容器が不要となる。よって、試薬管理が容易となる。
【0059】
ここで、本実施形態における成分測定に用いるストリップ10は、具体的には、第1試薬21を保持する第1試験紙11と、第2試薬22を保持する第2試験紙12とが、基材シート13上に隣接して設けられた構成を有する。つまり、ストリップ10は、液体試料31を接触させた場合に、液体試料31と、第1試薬21と、第2試薬22とが混合されて呈色反応が発生するように配置された第1試験紙11と第2試験紙12とを備える。
第1試験紙11と第2試験紙12とは、基材シート13上に重ねて設けることができる。このように、第1試験紙11と第2試験紙12とを接触させて配置することで、液体試料31が接触された場合に、液体試料31と第1試薬21と第2試薬22とが混合されやすい。
【0060】
また、第1試験紙11と第2試験紙12とは、基材シート13上に、第2試験紙12、第1試験紙11の順に重ねて設けることができる。液体試料31が接触されて呈色反応が発生された場合、その呈色領域は第1試験紙11に現れる。そのため、第1試験紙11と第2試験紙12とを、基材シート13上に第1試験紙11が最表面となるように重ねて設けることで、呈色領域の色を比色しやすくなる。
なお、基材シート13が透明材料からなる場合には、基材シート13上に、第1試験紙11、第2試験紙12の順に重ねて設けてもよい。この場合、基材シート13の裏面側(試験紙11、12が設けられていない面側)から呈色領域の色を比色することができる。
【0061】
ここで、ストリップ10の製造方法は、第1試薬21を保持する第1試験紙11を作製する第1工程と、第2試薬22を保持する第2試験紙12を作製する第2工程と、第1試験紙11と第2試験紙12とを基材シート13上に隣接して設置する第3工程と、を含む。そして、上記の第1試験紙11を作製する工程、および第2試験紙12を作製する工程は、試験紙本体に試薬溶液を含浸させる工程と、試薬溶液を含浸させた試験紙を乾燥させる工程と、を含む。
【0062】
このように、第1試験紙11や第2試験紙12を作製する工程は、乾燥工程を含む。そのため、揮発性の試薬を用いると、ストリップの製造過程で試薬が揮発してしまい、試験紙に定着されない。
そこで、本実施形態では、第1試薬21、第2試薬22として、不揮発性の試薬を用いる。例えば、第2試薬22として酸試薬を用いる場合には、不揮発性の酸を用いる。これにより、適切に第2試薬22を試験紙に定着させることができ、第1試薬21を保持する第1試験紙11とともにストリップ10に保持させることができる。
【0063】
以上のように、本実施形態では、短時間かつ簡便に液体試料中の成分の測定が可能であり、かつ、試薬溶液の管理を不要とすることができる。
【0064】
(変形例)
上記実施形態においては、図1に示す構成を有するストリップ10を液体試料31の成分測定に用いる場合について説明した。しかしながら、成分測定用ストリップは、上記の構成に限定されるものではなく、図3(a)や図3(b)に示す液体試料31の接触工程において、液体試料31が第1試験紙11の少なくとも一部および第2試験紙12の少なくとも一部に必ず吸収されて、呈色反応が発生可能な構成であればよい。
【0065】
例えば、図5に示すストリップ10Aのように、短冊形状の基材シート13の片側表面であって当該基材シート13の一端近傍に、第1試験紙11と第2試験紙12とを並べて配置した構造であってもよい。この場合、図5に示すように、第1試験紙11と第2試験紙12とは、互いに接触して基材シート13の同一面上に並べて配置することができる。なお、特に図示しないが、第1試験紙11と第2試験紙12との間には僅かな隙間が形成されていてもよい。
図5に示すように、第1試験紙11および第2試験紙12が基材シート13の同一面上に並べて配置されている場合で、図3(b)に示すように液体試料31を滴下する場合には、第1試験紙11および第2試験紙12の双方に液体試料31が接触するように、当該液体試料を滴下する。
【0066】
さらに、図6に示すストリップ10Bのように、短冊形状の基材シート13の片側表面であって当該基材シート13の一端近傍に、複数の第1試験紙11と第2試験紙12とを隣接させて配置した構成であってもよい。この場合、図6に示すように、複数の第1試験紙11の間に第2試験紙12を挟むようにしてもよい。ここで、複数の第1試験紙11は、同じ第1試薬を保持していてもよいし、各々相違する第1試薬を保持していてもよい。
測定対象の成分が複数存在する場合で、成分測定に用いる第1試薬が異なり、第2試薬が同じである場合には、各々相違する第1試薬を保持する複数の第1試験紙11と、共通の1つの第2試験紙12とが設けられたストリップ10Bを用いることで、1つのストリップで複数の成分を測定することが可能となる。
なお、この場合にも、第1試験紙11と第2試験紙12との間には僅かな隙間が形成されていてもよい。
【0067】
また、共通の第2試験紙12を利用した構成は、上記の図6に示す構成に限定されるものではない。
例えば、図7に示すストリップ10Cのように、1つの第2試験紙12の上に複数の第1試験紙11を重ねて配置するようにしてもよい。この場合、3つ以上の第1試験紙11を1つの第2試験紙12の上に配置することもできる。また、図8に示すストリップ10Dのように、1つの第1試験紙11を第2試験紙12の上に重ねて配置し、もう1つの第1試験紙11を第2試験紙12の隣に並べて配置するようにしてもよい。この場合、隣り合う第1試験紙11と第2試験紙12との間には僅かな隙間が形成されていてもよい。
なお、図6図8においては、2つの第1試験紙11を用いる例を示していが、3つ以上の第1試験紙11と共通の1つの第2試験紙12とを用いることもできる。
【符号の説明】
【0068】
10…成分測定用ストリップ、11…第1試薬パッド、12…第2試薬パッド、21…第1試薬、22…第2試薬、31…液体試料、100…成分測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13