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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】血合い除去用集塵装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/28 20060101AFI20240118BHJP
   B26D 7/18 20060101ALI20240118BHJP
   A23L 17/00 20160101ALN20240118BHJP
【FI】
B26D3/28 630J
B26D7/18 E
A23L17/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021138159
(22)【出願日】2021-08-26
(65)【公開番号】P2023032182
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000114732
【氏名又は名称】ヤマキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121773
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 正
(72)【発明者】
【氏名】村上 哲也
(72)【発明者】
【氏名】永田 秀範
(72)【発明者】
【氏名】清家 誠也
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-181658(JP,A)
【文献】特開2010-246495(JP,A)
【文献】特開2008-188714(JP,A)
【文献】特開2006-88252(JP,A)
【文献】特開2005-111614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/28
B26D 7/18
A23L 17/00
A22C 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚節保持具に保持されている魚節の血合いを加工除去する際に発生する削り粉を回収する血合い除去用集塵装置において、
固定カバーと、前記固定カバーと一体の内部空間を構成するように隣接して、且つ、前記固定カバーに対してスライド可能に設置された可動カバーと、を有する、前記血合いを除去する加工位置を覆う集塵カバーと、
前記集塵カバー内の前記削り粉を回収する回収装置と、を備え、
前記可動カバーは、前記集塵カバーの前記内部空間を密閉する密閉位置と、前記集塵カバーの外から前記内部空間に前記魚節保持具の出し入れが可能となる開放位置との間でスライド自在に設置されていることを特徴とする血合い除去用集塵装置。
【請求項2】
前記可動カバーは、前記魚節保持具と密着する保持具密着開口を備え、前記密閉位置において前記保持具密着開口が前記魚節保持具に密着し、前記開放位置において前記保持具密着開口が前記魚節保持具から離れるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の血合い除去用集塵装置。
【請求項3】
前記回収装置は、前記集塵カバーに接続された吸引ホースを有し、前記内部空間内の空気を吸引することで前記削り粉を回収する吸引装置を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の血合い除去用集塵装置。
【請求項4】
前記回収装置は、前記集塵カバーに設置されたエアーノズルを有し、前記内部空間に圧縮エアーを供給する送風装置をさらに備えることを特徴とする請求項3記載の血合い除去用集塵装置。
【請求項5】
前記送風装置は、前記吸引ホースの前記集塵カバーとの接続部分の近くに設置され、前記吸引ホース内に前記圧縮エアーを送り込む前記エアーノズルを備えることを特徴とする請求項4記載の血合い除去用集塵装置。
【請求項6】
魚節の血合いを取り除く血合い除去装置において、
切削工具により前記魚節の前記血合いを含む所定の領域を取り除く加工部と、
前記魚節を保持する魚節保持具を有し、前記魚節保持具に保持された前記魚節を前記加工部に順次間欠搬送する間欠搬送部と、
前記加工部により前記血合いを除去する際に発生する削り粉を回収する集塵装置と、を備え、
前記集塵装置は、固定カバーと、前記固定カバーと一体の内部空間を構成するように隣接して、且つ、前記固定カバーに対してスライド可能に設置された可動カバーと、を有する、前記血合いを除去する加工位置を覆う集塵カバーと、
前記集塵カバー内の前記削り粉を回収する回収装置と、を備え、
前記可動カバーは、前記集塵カバーの前記内部空間を密閉する密閉位置と、前記集塵カバーの外から前記内部空間に前記魚節保持具の出し入れが可能となる開放位置との間でスライド自在に設置されていることを特徴とする血合い除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚節の血合い除去用の集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
魚肉の血合いは、色が赤黒く、味にクセもあるため、食品としては取り除かれる場合もある。生の魚肉や冷凍魚肉に関しては、刃物により血合い部分を除去する血合い除去装置が提供されており、例えば、下記特許文献1,2に開示されている。
【0003】
鰹節等の魚節に関しても、血合い部分を除いた魚節の需要がある。魚節の血合い部分の除去に関しては、従来、作業者が魚節を手に持って回転する刃物に血合い部分を当てて削るという手作業で行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-58号公報
【文献】特開平4-330244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、魚節の血合いを除去する手作業は、危険を伴う作業であり、処理効率も低いため、魚節の血合いを自動的に除去する血合い除去装置の提供が望まれている。
【0006】
このような血合い除去装置が実現された場合、加工装置により血合いを自動的に除去する加工位置では、血合い等の削り粉や欠片が発生する。この血合い等の削り粉や欠片は、出汁に用いたりするなど再利用可能であるため、回収することが望まれる。
【0007】
また、加工部で発生する削り粉の細かな粉塵が、血合い除去装置の加工部以外の他の撮影部や搬送部等に拡散すると、装置の隙間に入り込んだりして、加工部以外の装置のスムーズな駆動に悪影響を与えるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、魚節の血合いを加工部により除去する際に、加工位置で発生する血合いの削り粉を効率良く回収することのできる血合い除去用集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係る血合い除去用集塵装置は、魚節保持具に保持されている魚節の血合いを加工除去する際に発生する削り粉を回収する血合い除去用集塵装置において、固定カバーと、前記固定カバーと一体の内部空間を構成するように隣接して、且つ、前記固定カバーに対してスライド可能に設置された可動カバーと、を有する、前記血合いを除去する加工位置を覆う集塵カバーと、前記集塵カバー内の前記削り粉を回収する回収装置と、を備え、前記可動カバーは、前記集塵カバーの前記内部空間を密閉する密閉位置と、前記集塵カバーの外から前記内部空間に前記魚節保持具の出し入れが可能となる開放位置との間でスライド自在に設置されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る血合い除去装置は、魚節の血合いを取り除く血合い除去装置において、切削工具により前記魚節の前記血合いを含む所定の領域を取り除く加工部と、前記魚節を保持する魚節保持具を有し、前記魚節保持具に保持された前記魚節を前記加工部に順次間欠搬送する間欠搬送部と、前記加工部により前記血合いを除去する際に発生する削り粉を回収する集塵装置と、を備え、前記集塵装置は、固定カバーと、前記固定カバーと一体の内部空間を構成するように隣接して、且つ、前記固定カバーに対してスライド可能に設置された可動カバーと、を有する、前記血合いを除去する加工位置を覆う集塵カバーと、前記集塵カバー内の前記削り粉を回収する回収装置と、を備え、前記可動カバーは、前記集塵カバーの前記内部空間を密閉する密閉位置と、前記集塵カバーの外から前記内部空間に前記魚節保持具の出し入れが可能となる開放位置との間でスライド自在に設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る血合い除去用集塵装置によれば、血合いを除去する加工位置を密閉可能に覆う集塵カバーの可動カバーをスライドさせて内部空間を開閉することで、集塵カバー内に順次魚節を供給し、集塵カバー内の削り粉を回収装置により回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態に係る血合い除去装置の斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る血合い除去装置の斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る血合い除去装置の平面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る集塵カバーの斜視図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る可動カバーの斜視図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る集塵カバーの斜視図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る固定カバーの斜視図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る魚節固定保持具の斜視図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る集塵カバーの正面図である。
図10図10は、本発明の実施形態に係る集塵カバーの側面図である。
図11図11は、本発明の実施形態に係る集塵カバーの側面図である。
図12図12は、図11のC-C線断面図である。
図13図13は、図10のB-B線断面図である。
図14図14は、図9のA-A線断面図である。
図15図15は、本実施形態に係る可動カバーのスライドを説明するための図である。
図16図16は、本発明の実施形態に係る魚肉の分割状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、まず、本実施形態に係る集塵装置(集塵部)80を備えた血合い除去装置1の全体構成について説明する。血合い除去装置1は、魚節である鰹節Xの血合い面から血合いYの存在する領域を推測して自動で除去加工する装置である。なお、図2及び図3では、加工部40の構成を示すために、集塵装置80を除いた血合い除去装置1の構成を示している。
【0014】
ここで、鰹節Xは、図16の魚肉の長手方向に垂直な鉛直断面図に示すように、カツオの魚体を中骨で左右に2分割すると共に、魚体の大きなものは身割りをし、全体として4分割された魚体であり、背側である上方の魚体が雄節、腹側である下方の魚体が雌節と呼ばれる。
【0015】
血合いYの位置する血合い領域は、雄節と雌節との分割面、すなわち、上下分割面を挟んで雄節側及び雌節側に拡がっており、本実施形態では、この血合いYが現れる上下分割面を血合い面と称し、血合い除去装置1は、この血合い面から血合いYを除去する。
【0016】
まず、血合い除去装置1は、筐体2と、回転テーブル10と、供給部20と、撮影部30と、加工部40と、取出部50と、集塵装置80と、血合い除去装置1の全体の駆動制御を行う制御部70とを備える。制御部70の制御処理は、制御部70内の記憶装置に記録されている各種プログラムを制御部70の演算装置が実行することで実現される。
【0017】
血合い除去装置1は、4つのエリア(供給エリアA、撮影エリアB、加工エリアC、取出エリアD)を備えている。供給エリアAは、供給部20が鰹節Xを魚節仮置き部5から回転テーブル10上に供給する領域、撮影エリアBは、撮影部30が鰹節Xの血合いYの現れる血合い面を撮影する領域である。また、加工エリアCは、加工部40が、鰹節Xの血合いYを除去する領域、取出エリアDは、取出部50が鰹節Xを回転テーブル10の外に取り出す領域である。
【0018】
供給部20、撮影部30、加工部40及び取出部50は、回転テーブル10を囲むように、反時計回りに90°毎に順次筐体2に固定設置されており、回転テーブル10の上面に魚節固定保持具11により保持されて位置する鰹節Xに対して、各種処理を施す。そして、集塵装置80は、加工エリアCに設置されており、加工部40において、切削除去された血合いYの削り粉や欠片の回収を行う。
【0019】
筐体2は、供給部20が回転テーブル10上に供給する鰹節Xを仮置きしておく魚節仮置き部5を備える。回転テーブル10は、水平に設置された円板形状のテーブルであり、図示しない駆動装置により中心鉛直軸回りに回転自在である。回転テーブル10は、円周方向に90°毎に4つの領域に分割されており、各領域には、鰹節Xを所定の姿勢で固定保持する魚節固定保持具11がそれぞれ1つずつ設置されている。
【0020】
血合い除去処理時には、回転テーブル10は、供給エリアAにおいて外部から供給されて回転テーブル10上に保持する鰹節Xを、順次、撮影エリアB、加工エリアC、取出エリアDに間欠搬送して供給する。
【0021】
本実施形態では、インデックス方式で順次搬送しており、間欠搬送部として機能する回転テーブル10は、15秒程度の停止と反時計回りに90°の回転を繰り返すことで、供給エリアAにおいて魚節固定保持具11に固定保持された鰹節Xが、撮影エリアB、加工エリアC、取出エリアDに順次間欠搬送される。
【0022】
ここで、魚節固定保持具11は、中央に水平に延在する凹溝であるV溝12aが形成された固定本体12と、V溝12a内に収容された鰹節Xを両側から挟み込んで保持する挟持支柱15とを備えている。魚節固定保持具11の挟持支柱15は、V溝12aの両側に3つずつ、合計6本の3組が設置されている。
【0023】
挟持支柱15は、V溝12aの長手方向に垂直な水平横方向において、突出位置と退出位置との間で進退自在に構成されている。挟持支柱15は、固定本体12内に設置された駆動装置であるモータにより進退自在に駆動される。
【0024】
固定本体12のV溝12aは、長手方向の一方の端部(閉端12b)が閉じているのに対して、他方の端部が開放端12cとなっている。固定本体12の閉端12bには、後述するエアーノズル92aが設置され、開放端12cは、後述する可動カバー85のV溝接続部881と連結される。
【0025】
また、固定本体12の上面には、V溝12aの周りを囲んでパッキン13が設置されている(図8参照)。なお、図8(A)は、鰹節Xを固定していない状態の魚節固定保持具11の斜視図、図8(B)は、鰹節Xを固定している状態の魚節固定保持具11の斜視図である。
【0026】
供給エリアAに位置する供給部20は、魚節移載装置21を備える。魚節移載装置21は、血合いYが現れる血合い面(分割面)が上方を向く姿勢で鰹節Xを節挟持部材25に保持させた状態で、魚節仮置き部5から供給エリアAに位置する魚節固定保持具11へと鰹節Xを移送レール部22により順次移載する。供給された鰹節Xは、魚節固定保持具11により、同じく血合い面が水平且つ上方を向いた姿勢で固定保持される。
【0027】
撮影エリアBに位置する撮影部30は、鰹節Xを撮影するための撮像装置31を備える。撮像装置31は、撮影エリアBに位置する魚節固定保持具11に保持された鰹節Xの血合い面を上方から高解像度で撮影する。撮像装置31の撮影画像は、血合い領域を算出するために、制御部70により画像認識される。
【0028】
加工エリアCに位置する加工部40は、多関節ロボット41と、多関節ロボット41により移動されるワークスピンドル42とを備え、撮影部30での撮影画像に基づき算出された血合い領域に基づき、所定の軌跡で切削工具であるワークスピンドル42を動かすことで、鰹節Xの所定の領域を切削により除去する。加工エリアCに位置する集塵装置(集塵部)80については、後述する。
【0029】
取出エリアDに位置する取出部50は、魚節移載装置51と、搬送コンベア59とを備える。魚節移載装置51は、加工エリアCにおいて加工処理された、回転テーブル10上の魚節固定保持具11に固定された鰹節Xを搬送コンベア59上に順次移載する装置である。
【0030】
魚節移載装置51は、上述した供給部20の魚節移載装置21と同じ構成である。搬送コンベア59は、魚節移載装置51により移載された鰹節Xをベルトコンベアにより順次血合い除去装置1の外へと搬送する。
【0031】
続いて、加工エリアCに設置されている集塵装置80の構成について説明する。集塵装置80は、加工部40により切削された血合い等の削り粉や欠片を収集する。集塵装置80は、集塵カバー81と、回収装置90とを備える。
【0032】
集塵カバー81は、加工エリアCに設置された加工部40(多関節ロボット41及びワークスピンドル42)と、回転テーブル10上の魚節固定保持具11により挟持された鰹節Xの加工部分とを覆って、加工時の削り粉等が外に漏れないように密閉空間とするためのカバーである。
【0033】
集塵カバー81は、固定カバー82と、可動カバー85と、可動カバー85を駆動するためのカバー駆動部89とを備える。固定カバー82と可動カバー85とは、隣接して横に並んで設置されており、両カバー82,85の内部空間は一体に繋がっている。カバー駆動部89は、固定カバー82に対して、可動カバー85を垂直方向に上昇させたり、下降させたりして、スライド駆動する。
【0034】
ここで、加工エリアCにおける加工の際には、回転テーブル10が回転することで、魚節固定保持具11に保持された鰹節Xが順次加工エリアCに運ばれ、加工後には、魚節固定保持具11に保持されたまま加工済みの鰹節Xが順次加工エリアCの外へと運ばれる。
【0035】
よって、魚節固定保持具11及び鰹節Xを加工エリアC内に入れたり、外に出したりする際には、集塵カバー81により密閉された内部空間を開放する必要がある。本実施形態では、集塵カバー81を、固定された固定カバー82と、固定カバー82に対して垂直方向にスライド自在に設置した可動カバー85とに分割し、集塵カバー81内に魚節固定保持具11及び鰹節Xを出し入れする際には、可動カバー85のみを移動させることで、集塵カバー81の内部空間を開閉するように構成している。
【0036】
可動カバー85は、集塵カバー81の内部空間を密閉する密閉位置(本実施形態では下降位置)と、集塵カバー81の内部空間を開放する開放位置(本実施形態では上昇位置)との間でスライド自在に設置されている。
【0037】
集塵カバー81内の内部空間を開閉する際に、集塵カバー81全体ではなく、比較的小さくて軽量の可動カバー85のみを上下動させて開閉することで、装置全体の小型化や作業効率の向上を実現することができる。
【0038】
固定カバー82は、多関節ロボット41の根元側の部分を覆う縦長の略直方体の箱であり、4つの側面のうち血合い除去装置1の外側に面する2つの側面には、外から内部を視認できると共に内部に外からアクセスできるように、透明で開閉自在の開閉窓83がそれぞれに設置されている。固定カバー82の可動カバー85側の側面には、下方に凸の略三角形を含む略五角形の固定側連通開口82aが形成されている(図7参照)。
【0039】
固定カバー82の内側の底には、下に凸の四角錐形状の収集部84が左右にそれぞれ設置されている。固定カバー82内の欠片や削り粉は重力等で下方に落下し、収集部84内に集まって収容される。なお、収集部84の上端入口には、大きな欠片が侵入して後述する吸引ホース98内に詰まったりしないように、大きな欠片の侵入を防ぐ網84aが設置されている。
【0040】
可動カバー85は、鰹節Xが加工される加工位置の周囲を覆う略直方体形状の箱であり、その高さは固定カバー82の高さの略半分程度である。可動カバー85の4つの側面のうち、血合い除去装置1の外側に面する1つの側面には、外から内部を視認できると共に内部に外からアクセスできるように、透明で開閉自在の開閉窓86が設置されている。
【0041】
図5に示すように、可動カバー85の固定カバー82側の側面には、下方に凸の略三角形を有する略五角形の可動側連通開口85aが形成されている。固定カバー82の内部空間と可動カバー85の内部空間は、連通開口82a,85aを介して一つの内部空間として繋がっており、可動カバー85が上下動しても連通開口82a,85aの重畳部分を介して一つの内部空間として繋がったままである。
【0042】
本実施形態では、固定側連通開口82aの高さ方向のサイズを可動側連通開口85aの高さ方向のサイズよりも長くし、可動カバー85が上下方向のスライド上端及びスライド下端に位置する場合であっても、常に小さな可動側連通開口85aの全体が大きな固定側連通開口82aと重畳し、この重畳部分を介して可動カバー85の内部空間と固定カバー82の内部空間とが一体に繋がるように構成している。
【0043】
固定側連通開口82aの垂直方向のサイズは、可動側連通開口85aの垂直方向のサイズよりも、少なくとも可動カバー85の上下方向のスライド長以上に大きくする必要があり、本実施形態では、略スライド長の分だけ大きくしている。
【0044】
一方、固定カバー82よりも垂直方向のサイズの小さい可動カバー85が上下動すると、固定側連通開口82aの領域のうち、可動カバー85に重畳しない部分が生じ、この場合には、固定側連通開口82aが集塵カバー81の外に向けて開口し、固定側連通開口82aを介して内部空間が開放されてしまう。
【0045】
これに対して、本実施形態では、図5に示すように、可動カバー85の固定カバー82側の側面に、可動側連通開口85aの上方及び下方に突出する隙間用拡張側壁板87を設置し、可動カバー85が下降した際には、上方隙間用拡張側壁板87aが固定側連通開口82aの上部を塞ぎ、可動カバー85が上昇した際には、下方隙間用拡張側壁板87bが固定側連通開口82aの下部を塞ぐように構成することで、集塵カバー81の内部空間が固定側連通開口82aを介して外に開放されるのを防止している。
【0046】
なお、隙間用拡張側壁板87は、固定カバー82の内側に位置しており、可動カバー85と隙間用拡張側壁板87とにより、固定カバー82の可動カバー85側の側壁が挟まれている。これにより、可動カバー85が上下動しても、固定カバー82と可動カバー85との連結部分を密閉することができる。
【0047】
可動カバー85の下端には、下降時に魚節固定保持具11の上端面と密着して加工部分を密閉するための保持具密着開口88が形成されている。保持具密着開口88の下端面が密着する魚節固定保持具11の上端面には、密閉するためにパッキン13がV溝12aの周りを囲んで設置されている。
【0048】
また、可動カバー85の下端の保持具密着開口88の水平方向の隣には、保持具密着開口88よりも一段下方に突出して位置し、魚節固定保持具11との密着時にV溝12aと一体になって内部空間として繋がるV溝形状のV溝接続部881が設置されている。
【0049】
ここで、集塵カバー81内に設置されている多関節ロボット41は、関節等の構成部品の隙間に削り粉が入り込まないように、先端のワークスピンドル42との接続部分から先端を除いて、図示しないロボット用カバーで覆われている。
【0050】
カバー駆動部89は、可動カバー85を吊り下げて支持する吊下鉛直軸891と、可動カバー85が上下動する際のガイドとなるスライドガイド892及びガイド板894と、吊下鉛直軸891を上下動させるための駆動モータ895とを備えている。
【0051】
吊下鉛直軸891の下端は、可動カバー85の上面に固定されており、駆動モータ895の駆動により吊下鉛直軸891が垂直方向にスライドすると、可動カバー85も一体となって上下方向にスライドする。
【0052】
回収装置90は、空気の循環により集塵カバー81の内部空間から欠片や削り粉を回収する装置であり、送風装置91と、吸引装置95とを備えている。
【0053】
送風装置91は、図示しないコンプレッサーから圧縮エアーを供給する装置であり、圧縮エアーを噴出して供給するエアーノズル92と、エアーノズル92にコンプレッサーから圧縮エアーを供給する図示しないエアーホースとを備えている。
【0054】
本実施形態では、合計18個(15個)のエアーノズル92が設置されており、魚節固定保持具11にそれぞれ1個ずつ、合計4個のエアーノズル92aが設置され、固定カバー82に合計7個のエアーノズル92bが設置され、可動カバー85に合計7個のエアーノズル92cが設置されている(図6図8図12図15等参照)。
【0055】
魚節固定保持具11に設置されるエアーノズル92aは、魚節固定保持具11のV溝12aの開放端12cと反対側の閉じた閉端12bに設置されており、切削加工時にV溝12a内に落下した欠片や削り粉を開放端12cに向けてエアー圧送する(図8参照)。
【0056】
開放端12cから外に放出された欠片や削り粉は、可動カバー85のV溝接続部881を通って固定カバー82内へと移動し、固定カバー82では、エアーノズル92bによるエアー圧送や重力により落下して収集部84内に収容される。
【0057】
固定カバー82に設置されるエアーノズル92bは、固定カバー82の内部空間の天井部の両側にそれぞれ1つずつ合計2個設置されており、固定カバー82内の内部空間を漂っている削り粉を中央に向かう斜め下方に向けてエアー圧送する。
【0058】
また、固定カバー82の開閉窓83の内側の中央付近に、1個のエアーノズル92bが設置されており、下方に向けてエアー圧送する。また、固定カバー82の下部四隅にそれぞれ1つずつ、合計4個のエアーノズル92bが設置されており、下方の収集部84に向けてエアー圧送する。
【0059】
可動カバー85に設置されるエアーノズル92cは、可動カバー85の内部空間の天井部の四隅にそれぞれ1つずつ合計4個設置されており、可動カバー85内の内部空間を漂っている削り粉を中央に向かう斜め下方に向けてエアー圧送する。
【0060】
また、可動カバー85においては、保持具密着開口88近傍の側面下部に水平に列んで3つのエアーノズル92cが設置されている。これら3つのエアーノズル92cは、上述した魚節固定保持具11に設置されているエアーズノズル92aと同じ方向を向いており、魚節固定保持具11の上方付近において、固定カバー82に向かう水平方向にエアー圧送を行う。
【0061】
吸引装置95は、固定カバー82内の空気を吸引することで、固定カバー内の血合い等の削り粉や欠片を吸引回収する装置であり、集塵機96と、回収タンク97と、吸引ホース98とを備えている。集塵機96は、負圧を発生させることによる吸引機能を備えており、内部に主として削り粉を収集する図示しない回収袋が設置されている。
【0062】
回収タンク97は、血合いの削り粉と欠片の双方を回収し、内部に図示しない回収袋を備えている。吸引ホース98は、4本設置されており、固定カバー82の天井部分と集塵機96とを繋ぐ吸引ホース98は、固定カバー82内の空間に漂う削り粉を直接集塵機96へと送る流路となる。
【0063】
固定カバー82の底に設置されている2つの収集部84と回収タンク97とをそれぞれ繋ぐ2本の吸引ホース98は、収集部84に収容されている欠片と削り粉を回収タンク97に送る流路となる。
【0064】
なお、収集部84内に収容されている欠片と削り粉は、密閉されている回収タンク97を介した集塵機96の吸引機能により回収タンク97へと吸引されると共に、固定カバー82の下部に設置されているエアーノズル92bのエアー圧送により回収タンク97へと送られる。
【0065】
回収タンク97と集塵機96とを繋ぐ吸引ホース98は、集塵機84内の負圧を回収タンク97に伝えるために機能し、回収タンク97内で空中に漂っている削り粉の一部は集塵機96へと送られる。
【0066】
以上、集塵装置80の構成について説明したが、続いて、集塵装置80の動作について説明する。可動カバー85が下降して魚節固定保持具11と密着することで集塵カバー81内を密閉した状態で加工部40により血合い除去加工を行った後、まず、回転テーブル10を回転させて次の鰹節Xを加工位置へと搬送するため、可動カバー85を上昇させる。
【0067】
図4図6図9図14は、可動カバー85が密閉位置に下降した密閉状態を示しており、図15は、可動カバー85が開放位置に上昇した開放状態を示している。開放状態では、可動カバー85と魚節固定保持具11とが離れているため、魚節固定保持具11の移動が可能となる。
【0068】
なお、図15に示すように、可動カバー85が上昇した状態では、可動カバー85の可動側連通開口85aは、固定カバー82の固定側連通開口82aの上側部分と重畳し、固定側連通開口82aの下側部分に可動側連通開口85aと重畳しない部分が生じるが、この重畳しない部分は可動カバー85の下方隙間用拡張側壁板87bにより塞がれるため、固定側連通開口82aが開放されることはない。
【0069】
集塵カバー81が開放された状態で回転テーブル10が回転し、新しい鰹節Xが加工位置に搬送されると、可動カバー85が下降する。可動カバー85が下降すると、保持具密着開口88が加工エリアCに位置する魚節固定保持具11の上面と密着し、再度、集塵カバー81内が密閉される。
【0070】
このとき、可動カバー85が下降することで、固定カバー82の固定側連通開口82aの上側部分に可動側連通開口85aと重畳しない部分が生じるが、この重畳しない部分は可動カバー85の上方隙間用拡張側壁板87aにより塞がれるため、固定側連通開口82aが開放されることはない(図9等参照)。
【0071】
このとき、可動カバー85が下降して集塵カバー81内が密閉されると同時に、回収装置90の駆動が開始され、送風装置91によるエアー圧送と、吸引装置95による吸引が開始される。
【0072】
その後、加工部40による血合いYの切削除去加工が行われ、このときに発生する血合い等の欠片と削り粉は、エアーノズル92により固定カバー82内へと圧送され、固定カバー82の底の収集部84又は天井部分から吸引ホース98を介して、集塵機96及び回収タンク97へと送られて回収される。
【0073】
加工部40による血合い除去が終了すると、回収装置90の駆動が停止され、その後、可動カバー85が上昇し、集塵カバー81が開放されて、次の鰹節Xの搬送処理へと進む。
【0074】
以上、本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態によれば、集塵カバー81により、加工部40による加工位置を覆って密閉することができ、回収装置90により、血合い除去で発生する血合い等の削り粉や欠片を効率的に回収することができる。
【0075】
また、本実施形態では、集塵カバー81により加工位置を密閉するので、血合い除去で発生する血合い等の削り粉が周囲に拡散し、他の装置のスムーズな稼働に悪影響を与えるのを防止することができる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、集塵装置を構成する各部材のサイズや形状、個数等は適宜変更可能である。
【0077】
また、上記実施形態では、鰹節の血合い除去用の集塵装置について説明したが、鯖節等の鰹節以外の魚節にも本発明に係る集塵装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 血合い除去装置
2 筐体
5 魚節仮置き部
10 回転テーブル
11 魚節固定保持具
12 固定本体
12a V溝
12b 閉端
12c 開放端
13 パッキン
15 挟持支柱
20 供給部
21 魚節移載装置
22 移送レール部
25 節挟持部材
30 撮影部
31 撮像装置
40 加工部
41 多関節ロボット
42 ワークスピンドル
50 取出部
51 魚節移載装置
59 搬送コンベア
70 制御部
80 集塵装置(集塵部)
81 集塵カバー
82 固定カバー
82a 固定側連通開口
83 開閉窓
84 収集部
84a 網
85 可動カバー
85a 可動側連通開口
86 開閉窓
87 隙間用拡張側壁板
88 保持具密着開口
881 V溝接続部
89 カバー駆動部
891 吊下鉛直軸
892 スライドガイド
894 ガイド板
895 駆動モータ
90 回収装置
91 送風装置
92 エアーノズル
95 吸引装置
96 集塵機
97 回収タンク
98 吸引ホース
A 供給エリア
B 撮影エリア
C 加工エリア
D 取出エリア
X 鰹節
Y 血合い
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16