(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】揚水エネルギー貯蔵システム及び方法
(51)【国際特許分類】
F03B 13/06 20060101AFI20240118BHJP
F03B 3/10 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
F03B13/06
F03B3/10
(21)【出願番号】P 2021506081
(86)(22)【出願日】2019-04-13
(86)【国際出願番号】 IB2019053055
(87)【国際公開番号】W WO2019202456
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-12-27
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520404861
【氏名又は名称】マゼラン アンド バレンツ, エス.エル.
【氏名又は名称原語表記】MAGELLAN & BARENTS, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(72)【発明者】
【氏名】ブスタマンテ シリアコ ピー
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/159278(WO,A1)
【文献】特開2000-352371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/00-13/26;17/00-17/06
H02J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度流体を含むように構成された第1の貯水池であって、前記第1の貯水池の底部に配置された第1の貯水池フローポートを含む、第1の貯水池と、
前記高密度流体より低い密度を有する低密度流体を含むように構成された第2の貯水池であって、前記第2の貯水池の底部に配置された第2の貯水池フローポートを含む、第2の貯水池と、
空洞タンク標高に配置された空洞タンクであって、前記第1の貯水池の第1の標高が前記空洞タンクの前記空洞タンク標高より高く、前記空洞タンクが上部空洞タンクポート及び下部空洞タンクポートと共に構成され、前記上部空洞タンクポートが前記下部空洞タンクポートの上方に配置されている、空洞タンクと、
第1のタービンユニットフローポート及び第2のタービンユニットフローポートを含み、前記第2のタービンユニットフローポートが前記第2の貯水池フローポートに接続されている、タービンユニットと、
導水路と
を備えた揚水貯蔵システムであって、
前記導水路は、
前記第1の貯水池フローポート及び前記下部空洞タンクポートに接続された第1の部分導水路であって、前記第1の部分導水路の最も低い
ポートが前記空洞タンクの下方にある、第1の部分導水路、並びに
前記上部空洞タンクポート及び前記第1のタービンユニットフローポートに接続された第2の部分導水路を含み、
発電モードにおいて、前記高密度流体が前記導水路を通って前記空洞タンクに向かってこれを通って前記第2の貯水池に向かうように構成されることで、タービンを通って前記第2の貯水池内へ前記低密度流体を流し込み、前記低密度流体が前記タービンユニットを第1の方向に回転させて発電し、
再充填モードにおいて、前記タービンユニットが前記第2の貯水池から前記導水路を通って前記第1の貯水池に向かって前記低密度流体を圧送し、前記高密度流体を前記第1の貯水池内へ押し戻し、
前記低密度流体及び高密度流体は、前記高密度流体が前記タービンユニットを通過することを防止するように構成されている、
前記揚水貯蔵システム。
【請求項2】
第1の貯水池の第1の標高が第2の貯水池の第2の標高より高い、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
第1の貯水池の第1の標高及び第2の貯水池の第2の標高がほぼ同じ高度にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
第1及び第2の貯水池が円筒状大気タンクを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
高圧空洞タンクが球状高圧空洞タンクを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
高密度流体が粒子を備えたスラリーを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
スラリーが金属酸化物粒子を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
スラリーが50~85%の粒子を含み、
粒子のサイズが数ミクロンから数百ミクロンの範囲である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
スラリーが、マグネタイトスラリーを形成するマグネタイト粒子を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
低密度流体が水を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
高密度流体が、低密度流体の少なくとも3倍大きな密度を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
第2の貯水池の第2の貯水池標高が、空洞タンク標高とほぼ同じ高度に配置されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
第2の貯水池の第2の貯水池標高が、空洞タンク標高より高い高度に配置されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
タービンユニットが、タービン及びポンプを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
揚水貯蔵システムから発電するための方法であって、
高密度流体を含む第1の貯水池と、低密度流体を含む第2の貯水池と、前記第1の貯水池の第1の貯水池標高の下方、かつ前記第2の貯水池の第2の貯水池標高の下方にある空洞タンク標高に配置された空洞タンクと、前記第2の貯水池に近接して接続されたタービンユニットと、前記システム内との流体連通を提供する導水路と、を提供するステップと、
ここで、前記導水路は、前記第1の貯水池を前記空洞タンクの下部と接続する第1の導水路部分と、前記空洞タンクの上部を前記タービンユニット及び前記第2の貯水池と接続する第2の導水路部分とを含み、
発電モードにおいて、前記第1の貯水池から前記導水路を通って前記第2の貯水池に向かって前記高密度流体を流すことにより、前記第2の貯水池内へ前記低密度流体を流し込み、これが前記
タービンユニットのタービンを第1の方向に回転させて発電するステップと、
再充填モードにおいて、前記タービンユニットによって、前記導水路を通って前記第1の貯水池に向かって前記低密度流体を圧送することにより、前記高密度流体を前記第1の貯水池内へ押し戻して前記揚水貯蔵システムを再充填するステップと、
を含み、
前記低密度流体及び高密度流体が前記揚水貯蔵システムを循環するとき、前記高密度流体が、前記タービンユニットを通過することを回避するように構成されている、
前記方法。
【請求項16】
高密度流体が、低密度流体より少なくとも3倍大きな密度を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第1の貯水池の第1の貯水池標高が、第2の貯水池の第2の貯水池標高より高い、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
第1の貯水池の第1の貯水池標高が、第2の貯水池の第2の貯水池標高とほぼ同じ高度にある、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
第2の貯水池の第2の貯水池標高が、空洞タンク標高とほぼ同じ高度に配置されている、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
第2の貯水池の第2の貯水池標高が、空洞タンク標高より高い高度に配置されている、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年4月16日に出願された米国仮出願第62/657,941号、2018年5月16日に出願された米国仮出願第62/672,566号、2018年6月5日に出願された米国仮出願第62/680,597号、及び2018年10月19日に出願された米国仮出願第62/747,678号の利益を主張するものであり、これらの出願を、参照によりその全体をすべての目的のために本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、揚水エネルギー貯蔵システム及び方法に関する。特に、本開示は、高密度流体又は高密度流体と水などの低密度流体との組み合わせを用いて出力を増加させる揚水エネルギー貯蔵システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
太陽、風及び水から用いられるものなど再生可能エネルギーは、環境への影響が最小であるため、発電するための評判のよいエネルギー形態である。例えば、再生可能エネルギーは、CO2排出など、環境を汚染しない。再生可能エネルギーは利点を有するが、欠点もある。例えば、再生可能エネルギーは自然に大きく依存し、これはよく言っても頼りにならず、信頼できない。太陽光発電には太陽光が要求され、これは雲によって影響される可能性があり、風力は風に依拠するが、風は現れては消える可能性があり、水力は水に依拠するが、水は限られた数の水路に依拠し、多数の課題を有する。再生可能エネルギーのこれらの非信頼性又は非一貫性は、需要と供給における不均衡の一因となる。このような不均衡により、エネルギー価格における大幅な変動が引き起こされる。
【0004】
従来の揚水エネルギーは、上部貯水池から下部貯水池へ導水路を通って下へ流れる水に依拠している。水は次いでタービンを回転させて発電し、これがグリッドへ送られる。上部貯水池を再充填するため、水が導水路に汲み上げられる。揚水エネルギー貯蔵は、タービンに加えて、システムを再充填するポンプを有するため、制御性及び信頼性を提供する。これにより、従来の再生可能エネルギー源に固有の需要と供給の不均衡が安定する。さらに、従来の水力エネルギーシステム及び揚水貯蔵にとって重要な考慮事項は、貯水池によって必要とされる設置面積である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、高出力で小さな設置面積の揚水エネルギー貯蔵システム及び方法を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態は概して、非従来型の揚水貯蔵システム及び揚水貯蔵システムの適用に関する。このシステムは、従来の揚水力エネルギーシステムより小さな設置面積及び高いエネルギー密度を有する。このシステムは、高密度流体を用い、上部及び下部貯水池が同じ標高にあり得る異なる構成を可能にする。下部貯水池より高く、例えば、地下鉱山の上方の表面に、水圧ポンプ及びタービンを配置することができる。
【0007】
特に、一実施形態が、第1の貯水池と、第1の貯水池の下方に配置された第2の貯水池と、を含む揚水貯蔵システムに関する。このシステムはまた、タービンユニットを含む。タービンユニットは、第1のタービンユニットフローポート及び第2のタービンユニットフローポートを含む。第1及び第2の貯水池と流体連通している導水路が設けられている。導水路は、第1の貯水池及び第1のタービンユニットフローポートに接続された第1の部分と、第2の貯水池及び第2のタービンユニットフローポートに接続された第2の部分と、を含む。タービンユニットは、第2の貯水池に近接して配置されている。スラリーがシステムを循環する。スラリーは、水より大きな密度を有する高密度流体である。スラリーは、タービンを通って第1のすなわち順方向に第1の貯水池から第2の貯水池へ流れてタービンユニットにエネルギーを生じさせる。再充填モードにおいて、スラリーは、タービンユニットを通って第2のすなわち逆方向に第2の貯水池から第1の貯水池へ流れてシステムを再充填する。高密度スラリーにより、水を用いるシステムと比較して、システムの出力が増加する。
【0008】
本明細書に開示される実施形態のこれら及び他の利点及び特徴が、以下の説明及び添付の図面を参照することを通して明らかになるであろう。さらに、本明細書に記載の様々な実施形態の特徴は、相互に排他的ではなく、様々な組み合わせ及び置換において存在することができるということが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面において、同様の参照文字は概して、異なる図全体を通して同じ部分を指す。また、図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに様々な実施形態の原理を説明することに概して重点が置かれている。以下の説明において、以下を参照して本開示の様々な実施形態を説明する。
【
図1】揚水貯蔵システムの例示的な一実施形態の簡略図を示す。
【
図2】揚水貯蔵システムの代替の例示的な一実施形態の簡略図を示す。
【
図3】揚水貯蔵システムの他の代替の例示的な一実施形態の簡略図を示す。
【
図4a-4d】揚水貯蔵システムの代替の例示的な実施形態の簡略図を示す。
【
図5】タービン及びポンプ構成の例示的な一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載の実施形態は概して、揚水エネルギー貯蔵システムに関する。本揚水エネルギー貯蔵システムは、従来の揚水エネルギー貯蔵システムより高い体積当たりのエネルギー出力を生成する。いくつかの実施形態において、この揚水エネルギーシステムは、従来の揚水エネルギー貯蔵システムとは異なり、平坦な土地又は地形にさえ実装することができる。
【0011】
図1は、揚水エネルギー貯蔵システム100の一実施形態の簡略図を示す。図示のように、この揚水エネルギーシステムは、導水路130によって接続された上部貯水池110及び下部貯水池120を含む。一実施形態において、上部貯水池は下部貯水池の上方に配置されている。2つの貯水池の標高又は高さの違いは、ヘッドと呼ばれることがある。導水路は、上部貯水池ポート112及び下部貯水池ポート121に接続されている。導水路は、パイプ、チャネル又は他のタイプの導管とすることができ、これにより、上部及び下部貯水池ポートを介して上部貯水池と下部貯水池との間の流体連通が提供される。一実施形態において、下部貯水池ポートに近接してタービンユニット140が配置されている。タービンユニットは可逆性タービンである。例えば、タービンは、第1の方向に回転すると発電機、第2の方向に回転するとポンプとして機能するフランシスタービンである。他のタイプのタービン又はタービンユニット構成もまた有用であり得る。例えば、タービンユニットは、別個の発電するためのタービン及びシステムを再充填するためのポンプを含むことができる。別個のタービン及びポンプを設けることは、高圧用途に特に有用であり得る。例えば、フランシスタービンは70バールでのみ動作することができる。別個のタービン及びポンプ構成を用いると、70バールを超えて動作することができる。
【0012】
動作中、上部貯水池に含まれる流体は、重力によって導水路を通って下部貯水池へ流れる。これは、システムの放出状態と呼ぶことができる。流体が導水路を通って下部貯水池へ流入するにつれて、これはフランシスタービンを第1の方向に回転させて発電する。電気は伝送線によって伝送することができる。例えば、エネルギー需要のあるときには、流体が上部貯水池から下部貯水池へ流されて発電する。タービンは第2の方向に回転し、下部貯水池における流体を上部貯水池に向かって汲み上げることができる。あるいは、ポンプを用いて上部貯水池に向かって流体を汲み上げる。これは、システムの充填状態又は再充填状態と呼ぶことができる。システムは、エネルギー需要が低いとき、又は上部貯水池が空又はほぼ空のときに再充填することができる。
【0013】
一実施形態において、このシステムは閉システムである。閉システムにおいて、貯水池は封鎖されている。例えば、貯水池は、閉ループを形成する流体タンクである。下部貯水池は高圧貯水池と呼ぶことができる一方、上部貯水池は、下部貯水池に対して低圧貯水池と呼ぶことができる。一実施形態において、上部貯水池は円筒状大気タンクとすることができる一方、下部貯水池は高圧球状タンクである。タンクの他の構成も有用であり得る。貯水池は、これを流体で満たすための注入ポートを含むことができる。タンクは、ほぼ同じ容量を有するように構成することができる。
【0014】
システムは、所望の量の発電をするための、及びシステムを再充填する必要があるときの所望のパラメータで設計することができる。例えば、導水路のサイズによって決定される流体の流量、上部貯水池と下部貯水池との間の高さによって決定されるヘッド、及び貯水池の容積は、システムの出力及び再充填時間を決定するように構成することができる。流量及びヘッドにより出力が決定され、貯水池の容積により再充填間の時間が決定される。
【0015】
一実施形態において、揚水貯蔵システムの流体は高密度流体である。高密度流体は、水より大きな密度を有する。例えば、高密度流体は、3x以上の密度を有することができ、xは水の密度である。一実施形態において、高密度流体はスラリー混合物である。様々なタイプのスラリー混合物を使用することができる。スラリー混合物は、例えば、水などの低密度流体と混合された金属酸化物粒子を含むことができる。他のタイプの粒子及び低密度流体も有用であり得る。スラリーにおける粒子の体積は、約50%以上とすることができる。例えば、粒子のパーセンテージは約50~85%とすることができる。他の実施形態において、粒子のパーセンテージは50~75%とすることができる。粒子の体積が高くなるほど、スラリーの密度は高くなる。すべてのパーセンテージは体積パーセンテージである。他のパーセンテージも有用であり得る。
【0016】
一実施形態において、スラリーの粒子は、タービンの損傷を回避するようにサブミクロンのサイズである。残りの組成について、これは水などの低密度流体を含む。一実施形態において、スラリーが合体することを防止して流れを改善するため、少量の界面活性剤を加えることができる。例えば、約1%未満の界面活性剤を加えることができる。いくつかの場合において、不凍剤を加えてスラリーの凍結を防止することができる。不凍剤の濃度は、スラリーが凍結することを防止するのに十分とすべきである。
【0017】
一実施形態において、高密度流体は、マグネタイトスラリー混合物である。マグネタイトスラリー混合物は、3~4トン/m3の密度を達成することができ、これは水の密度の3倍より多い。議論したように、他のタイプのスラリー混合物も高密度流体として使用することができる。密度はミネラル含有量及び組成に依存し得る。
【0018】
高密度流体を使用することによって、よりコンパクトな揚水エネルギー貯蔵システムを達成することができる。所与の貯水池又はタンク容量について、エネルギー貯蔵容量は流体の密度に比例する。例えば、高密度流体が3xの密度を有する場合、システムのエネルギー貯蔵容量は、水が用いられるときの3倍になる。これは、質量流量が水の約3倍より多くなるためである。あるいは、システムは、より少ない体積の流体及び/又は上部貯水池と下部貯水池との間のより少ない高さの差を用いて、同じ量のエネルギー出力を生成することができる。この結果、コストが低くなるとともに、出力要件を満たすシステムを設計する際の柔軟性が増す。
【0019】
高密度流体の使用で議論したように、利点はより高い出力である。高密度流体の使用は、高密度流体を扱うように導水路及びポンプを変更することによって、既存の揚水貯蔵システムに容易に後付けし、これによって出力を増加させることができる。さらに、水力貯蔵システムの既存の設計を、高密度流体を扱う高効率の水力貯蔵システム用のモデルとして機能するように変更することができる。所与の出力要件について、必要とされる体積が少なくなり、導水路が小さくなり、及び/又は貯水池間の標高又は高さが減少するため、建設するコストが削減されるであろう。
【0020】
図2は、揚水エネルギー貯蔵システム200の他の一実施形態の簡略図を示す。このシステムは、
図1に記載のものと同様の構成要素を含むことができる。このような構成要素は、説明又は詳細に説明しないことがある。
【0021】
一実施形態において、このシステムは、上部貯水池210及び下部貯水池220を備えた閉システムである。これらの貯水池は、導水路230によって流体連通可能に接続されている。図示のように、このシステムは、第1及び第2の流体251及び255を利用する二流体システムとして構成されている。一実施形態において、第1の流体は高密度流体であり、第2の流体は、第1の流体と比較して低密度流体である。例えば、高密度流体は、水より大きな密度を有する。高密度流体は、3.0x以上の密度を有することになり、xは水の密度である。高密度流体用の他の密度も有用であり得る。高密度流体は、マグネタイトスラリー混合物などのスラリー混合物とすることができる。他のタイプのスラリー混合物又は高密度流体もまた有用であり得る。第2の流体について、一実施形態において、これは水である。例えば、高密度流体は、低密度流体より3倍の密度である。流体間に異なる密度差を提供することも有用であり得る。差が大きくなるほど、システムは効率的になる。他のタイプの低密度流体も有用であり得る。
【0022】
導水路230は、両端で第1及び第2の貯水池に連通可能に接続された第1及び第2の部分230a及び230bと、導水路の第1及び第2の部分の第2の端部に接続された空洞貯水池270と、を含む。一実施形態において、空洞貯水池は高圧空洞タンクである。高圧空洞タンクは、システムの過負荷圧力に耐えるべきである。一実施形態において、高圧空洞タンクは、システムの過負荷圧力とほぼ同じ圧力に耐える。空洞タンクは球状高圧空洞タンクとすることができる。他のタイプの高圧空洞タンクも有用であり得る。
【0023】
一実施形態において、空洞タンクは、第2のすなわち下部貯水池の近くに、しかし過負荷圧力がスラリーカラムによって加えられるものに確実に近くなるようにいくらかの水平距離で配置されている。導水路の第1の部分に接続された空洞タンクの第1の空洞タンクポート271が空洞タンクの底部に配置される一方、導水路の第2の部分に接続された空洞タンクの第2の空洞タンクポート272が空洞タンクの頂部に配置されている。タービンユニット240が、下部貯水池ポートに近接して配置されている。タービンはフランシスタービンとすることができる。あるいは、タービンユニットは、ペルトンタービンなどの別個のタービン及びポンプを含むことができる。他のタイプのタービン又はタービンユニットの構成も有用であり得る。
【0024】
一実施形態において、空洞タンクにおける圧力は、高密度流体のカラムによって生じさせられる。下部貯水池は大気タンクとすることができる。例えば、下部貯水池は円筒状大気タンクとすることができる。上部貯水池について、これも大気タンクとすることができる。
【0025】
動作中、上部貯水池に含まれる高密度流体は、重力によって導水路を通って空洞タンクへ流れる。スラリーのカラムによる空洞タンクにおける圧力は、下部貯水池に含まれる低密度流体のカラムのものよりはるかに高いため、低密度流体は上向きに、次いで上方のタービンのインジェクタを通って流れることになる。例えば、インジェクタポートは、水がタービン内へ供給される入口である。密度の著しい違いにより、高密度流体は空洞タンクの底部に残る一方、低密度流体は空洞タンクにおいて高密度流体の上方に配置される。さらに、第1及び第2の空洞タンクポートの構成は、第1及び第2の流体の混合を防止するように構成されている。高密度流体が重力によって第1のすなわち高部貯水池から流出し続けるにつれて、これにより低密度流体が上方に押し上げられて第2のすなわち下部貯水池内へ戻り、タービンを回転させて発電する。これは、システムの放出又は発電状態と呼ぶことができる。対照的に、再充填状態において、低密度流体(例えば、水)は、空洞貯水池内へ送り込まれ、高密度流体を上部貯水池内へ押し戻す。空洞タンクは、低密度流体を下部貯水池内へ押し戻す高密度流体によって生成される圧力を収容するように構成されるべきである。
【0026】
一実施形態において、このシステムは、高密度流体がタービンユニットと接触しないように構成されている。これにより、高密度流体を扱うようにシステムを構成することが有利に回避される。例えば、高密度流体の粒子サイズは、タービンの損傷を回避するようにサブミクロン領域にする必要がない。スラリーの粒子サイズは、約数ミクロンから数百ミクロンとすることができる。スラリーの粒子サイズは、スラリーにおける粒子のより高い体積パーセントを促進して導水路内を流れるように不均一な分布を有するべきである。
【0027】
図3は、
図2の揚水エネルギー貯蔵システムの一用途を示す。
図3のシステムは、
図2のシステムと共通の要素を含む。共通の要素は、説明又は詳細に説明しないことがある。例示的に、このシステムは、例えば、山305に位置する鉱山に実装されている。鉱山は炭鉱であり得る。他のタイプの鉱山も有用であり得る。地中301深くに坑道が存在するため、鉱山にシステムを実装することには利点があり、これによって建設コストが削減される。
【0028】
このシステムは、山の頂上近くに配置された上部貯水池210を含み、例えば、鉱山内の山のふもとに配置された下部貯水池220との間に標高差を生み出す。貯水池の他の場所も有用であり得る。場所は、地形及び/又はトンネル及び坑道などの既存の構造を利用することができる。このシステムは既存の鉱山に埋め込まれているが、岩塩ドーム又は地層など、自然の地形を利用する他の場所にシステムを実装することも有用であり得る。
【0029】
上部貯水池は、下部貯水池と導水路230を介して流体連通するように構成されている。下部貯水池の下方の導水路内には空洞タンク270が配置されている。導水路は、第1及び第2の導水路部分230a及び230bを含む。第1の導水路部分は、上部貯水池ポート及び空洞タンクの底部に配置された第1の空洞タンクポートに接続され、第2の導水路部分は、下部貯水池ポート及び空洞タンクの頂部に配置された第2の空洞タンクポートに接続されている。図示のように、第1の導水路は、第1及び第2の第1の導水路サブセクション230a1及び230a2を含む。第1の導水路サブセクションは地上に配置されて上部貯水池に接続され、第2の導水路サブセクションは地下に配置されて空洞タンクに接続されている。
【0030】
換言すれば、空洞タンクは地下に配置されている。一実施形態において、下部貯水池に近接してタービンユニット240が配置されている。例えば、これは導水路と下部貯水池ポートとの間に配置されている。一実施形態において、タービンユニットは、タービン354及びポンプ356を含む。タービンは、例えば、ペルトンタービンである。他のタイプのタービンも有用であり得る。タービンは、例えば、システムの高圧に耐えることができる。
【0031】
上部貯水池には高密度流体251が含まれている。下部貯水池には低密度流体255が配置されている。システム300の動作は、
図2のシステム200のものと同様である。例えば、下部貯水池内へ流入する低密度流体が、タービンを第1の方向に回転させ、発電する。システムを再充填するため、ポンプは低密度流体を第2の方向に空洞タンクまで送り込み、高密度流体を上部貯水池内へ逆流させる。
【0032】
地下に高圧空洞タンクを設けることは、これは地盤圧力を利用し、これによって流体によって引き起こされる圧力に対抗することができるので有利である。これにより、下部貯水池の建設コストが削減される。加えて、山岳地形により、上部貯水池に自然な標高が提供される。上部貯水池が上昇する高さは、出力要件に基づいて構成することができる。例えば、出力要件が満たされれば、上部貯水池及び導水路の建設に関連するコストを削減するように低い標高が有用であり得る。
【0033】
図4a~
図4dは、揚水貯蔵システムの様々な代替の実施形態を示す。これらのシステムは、
図1~
図3のシステムと同様の構成要素を含む。共通の要素は、説明又は詳細に説明しないことがある。これらのシステムは、平坦な地形に有利に実装することができる。例えば、第1及び第2の貯水池410及び420は、ほぼ同じ高度に配置することができる。これらの実施形態は、平坦な土地上又は深海に浮かべる実施に特に有利であり得る。これは、上部貯水池と下部貯水池との間に異なる高さ又は高度が要求される従来の揚水貯蔵システムとは対照的である。
【0034】
図4aを参照すると、揚水貯蔵システム400aの一実施形態が示されている。このシステムは、第1及び第2の貯水池410及び420を含む。一実施形態において、これらの貯水池は、ほぼ同じ高度又は高さに配置されている。例えば、これらの貯水池は平地に、又は水用途の場合、船又はオフショアリグに配置されている。これらの貯水池を異なる高さに設けることも有用であり得る。好ましくは、高密度貯水池は、低密度貯水池の上方に配置されている。これらの貯水池は、導水路430によって流体連通している。図示のように、導水路はU形状導水路である。他の形状の導水路も有用であり得る。導水路の長さは、数百メートルから数キロメートルの長さとすることができる。
【0035】
第1の貯水池は、高密度流体451用のコンテナとして機能し、第2の貯水池は、低密度流体455を収容するように機能する。低密度流体に対して高密度流体の密度が高いため、重力により、高密度流体が下向きに流され、低密度流体が第2の貯水池内へ押し上げられる。これにより、第2の貯水池ポートに近接して配置されたタービンユニット440が回転して発電する。例えば、タービンユニットは、フランシスタービンポンプなどの複合タービンポンプを含む。このシステムは、タービンユニットにその回転を第2の方向へ反転させることによって再充填される。タービンの方向を反転させることにより、水が下向きに、第1の貯水池に向かって圧送される。これにより、高密度流体が第1の貯水池内へ戻され、システムが再充填される。他の実施形態において、タービンユニットは、ペルトンタービンなどの別個のタービン及びポンプを含むことができる。他のタイプのタービン又はタービンユニットの構成も有用であり得る。
【0036】
一実施形態において、第1のすなわち高密度及び第2のすなわち低密度の流体の体積は、放出又は充填状態において、高密度流体がタービンに接触しないように構成されている。このような構成により、高密度流体を扱うようにポンプを構成する必要性が有利に回避される。またこれにより、スラリーにおけるより大きな粒子の使用が可能になり、有利にコストが削減される。
【0037】
図4bは、揚水貯蔵システム400bの他の一実施形態を示す。
図4bのシステムは、
図4aに記載のものと同様である。共通の要素は、説明又は詳細に説明しないことがある。
【0038】
このシステムは、ほぼ同じ高度又は高さに配置された第1及び第2の貯水池410及び420を含む。これらの貯水池を異なる高さに設けることも有用であり得る。これらの貯水池は、導水路430によって流体連通している。図示のように、導水路はU形状導水路である。他の形状の導水路も有用であり得る。一実施形態において、導水路は、第1及び第2の部分430a及び430bに分割され、
図2~
図3に記載のもののような空洞貯水池又はタンク470によって分離されている。空洞貯水池は、例えば、球状高圧空洞貯水池である。上部及び下部貯水池は円筒状大気貯水池とすることができる。貯水池の他の構成も有用であり得る。
【0039】
空洞貯水池を設けることにより、システムの流体容量が有利に増加する。図示のように、空洞タンクは、第1の導水路部分と第2の導水路部分との間の第2の貯水池の下方に配置されている。例えば、第1の貯水池に接続された第1の導水路部分が、空洞タンクの底部に配置された第1の空洞タンクポートに接続され、第2の導水路部分が、第2の貯水池及び空洞タンクの頂部に配置された第2の空洞タンクポートに接続されている。この構成により、高密度及び低密度流体が混合するリスクも軽減される。システムの動作は、空洞タンクのために容量が増加することを除き、
図4aに記載のものと同様である。
【0040】
図4cは、揚水貯蔵システム400cの他の一実施形態を示す。
図4cのシステムは、
図4a~
図4bに記載のものと同様である。共通の要素は、説明又は詳細に説明しないことがある。
【0041】
このシステムは、ほぼ同じ高度又は高さに配置された第1及び第2の貯水池410及び420を含む。これらの貯水池を異なる高さに設けることも有用であり得る。これらの貯水池は、導水路430によって流体連通している。図示のように、導水路はU形状導水路である。他の形状の導水路も有用であり得る。一実施形態において、第1の流体451と第2の流体455との間の導水路において流体セパレータ480が配置されている。流体セパレータは、例えば、両流体間の密度の高耐摩耗性プラスチックで形成することができる。例えば、セパレータは高密度流体に浮く一方、低密度流体に沈む。流体セパレータは、導水路内で摺動可能であるように構成され、高密度及び低密度流体の分離を維持する。セパレータを設けることにより、高密度流体における小さな粒子が誤ってタービンユニットへ運ばれることが確実になくなるようにする。流体セパレータの使用は、
図2~
図3に記載の実施形態にも適用することができる。このシステムは、流体セパレータがタービン440に到達しないように構成されている。システムの動作は、
図4a~
図4bに記載のものと同様である。
【0042】
図4dは、揚水貯蔵システム400dの他の一実施形態を示す。
図4dのシステムは、
図4a~
図4cに記載のものと同様である。共通の要素は、説明又は詳細に説明しないことがある。
【0043】
このシステムは、ほぼ同じ高度又は高さに配置された第1及び第2の貯水池410及び420を含む。これらの貯水池を異なる高さに設けることも有用であり得る。これらの貯水池は、導水路430によって流体連通している。図示のように、導水路はU形状導水路である。
図4bと同様、導水路は、第1及び第2の部分430a及び430bに分割され、
図2~
図3に記載のもののような空洞貯水池470によって分離されている。また、
図4cと同様、導水路に流体セパレータ480を設けて、高密度及び低密度流体の分離を確実にする。一実施形態において、空洞タンクは、流体セパレータが空洞タンクを通過して導水路の第1又は第2の部分に達することができることを確実にする流体セパレータケージ475と共に構成されている。例えば、ケージは、ケージの外側への流体の流れを可能にしながら流体セパレータ用のガイドとして、及び分離を維持するように機能する。ケージは、垂直バーのセット又は横方向の開口を備えた有孔パイプとすることができる。ケージは、流体セパレータが空洞貯水池の上方及び下方を流れることを可能にするように構成されている。システムの動作は、
図4a~
図4cに記載のものと同様である。さらに、流体セパレータは、
図2~
図3に記載のシステム内にも構成することができるということが理解される。
【0044】
図5は、タービンユニット240の一実施形態を示す。図示のように、タービンユニットは、別個のタービン554及びポンプ556を含む。例えば、タービンユニットは、導水路230に接続された別個の流路又はパイプを含む。図示のように、タービンユニットは、ポンプ経路546及びタービン経路542を含む。例えば、
図2~
図3及び
図4a~
図4dに記載したような用途において、導水路の上端は、低密度流体を含む第2のすなわち下部貯水池に接続される一方、導水路の下端は、直接又は空洞タンク経由で間接的に、高密度流体を含む第1のすなわち上部貯水池に接続されている。例えば、導水路の上端はタービン出口561である一方、導水路の下端はタービン入口562である。議論したように、システムは、高密度流体がタービンユニットと接触しないように構成されている。例えば、低密度流体のみがタービンユニットを流れる。
【0045】
発電モードにおいて、水などの低密度流体は、上向き矢印によって示すように、タービン経路を通って下部貯水池に向かって上向きに押し出される。これにより、タービンが第1の方向に回転し、発電する。再充填モードにおいて、低密度流体は、下向き矢印によって示すように、ポンプによってポンプ経路を通って上部貯水池に向かって下向きに圧送される。これにより、高密度流体が上部貯水池内へ押し戻され、システムが再充填される。
【0046】
説明したように、システムに高密度流体を用いることにより、出力が向上する。例えば、
図4b及び
図4dに記載のシステムなど、同じ標高の第1及び第2の大気タンク及び下方の高圧空洞タンクを伴う、平坦な地形において、高密度流体及び水などの低密度流体を備えた二流体システムを使用するシステムの場合、底部空洞タンクでの圧力は、高密度流体のカラムによって加えられるもの=c*H*d1であり、タービン入口での圧力は、cHd1-cHd2=cH(d1-d2)であり、
Hは、第1の(高密度流体)貯水池と加圧空洞タンクとの間の標高の差であり、
d1は、高密度流体の密度であり、
d2は、低密度流体の密度であり、
cは定数である。
システムによって生じさせられる電力Pは、流量Q及びタービン入口での圧力に比例し、P=k*Q*cH(d1-d2)として定義することができ、kは定数である。高密度流体の密度が低密度流体の3倍である場合、二流体システムを用いることにより、出力が約2倍増加する。説明したように、システムに高密度流体を用いることにより、出力が向上する。
【0047】
図2及び
図3に記載のシステムなど、異なる標高の第1及び第2の大気タンク及び下方の高圧空洞タンクを含む、高密度流体及び水などの低密度流体を使用する場合、底部加圧空洞タンクでの圧力はcHd1である一方、タービン入口での圧力はcHd1-chd2であり、hは空洞タンクと第2の(低密度流体)貯水池との間の標高の差である。システムによって生じさせられる電力は、P=k*Q*(cHd1-chd2)として定義することができる。Hがhよりはるかに大きければ、高密度流体のみを用いて水はタービンを通過させるだけの場合とほぼ同じくらい多くの電力が得られる。
【0048】
本開示の発明の概念は、その精神又は本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態で実現することができる。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載の発明を限定するのではなく、すべての点において例示的であると見なされるべきである。本発明の範囲はしたがって、前述の説明によってではなく、添付の請求項によって示され、請求項の意味及び同等の範囲内にあるすべての変更がその中に包含されることが意図されている。