(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ギヤ切削加工装置
(51)【国際特許分類】
B23F 9/08 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
B23F9/08
(21)【出願番号】P 2023094696
(22)【出願日】2023-06-08
【審査請求日】2023-10-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502246997
【氏名又は名称】北井産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【氏名又は名称】原田 貴史
(74)【代理人】
【識別番号】100225347
【氏名又は名称】鬼澤 正徳
(72)【発明者】
【氏名】北井 正之
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特表平7-501276(JP,A)
【文献】特開2020-44594(JP,A)
【文献】特開2004-181621(JP,A)
【文献】米国特許第3974595(US,A)
【文献】中国特許出願公開第107876905(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0135139(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/00-23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを第1仮想線を中心として回転可能に支持するワーク支持部と、前記ワークを切削加工する切削工具を第2仮想線を中心として回転可能に支持する切削工具支持部と、を有するギヤ切削加工装置であって、
前記ワーク支持部を、第3仮想線を中心とする円周方向に作動可能に支持し、かつ、前記第3仮想線を中心とする円周方向の所定位置で停止させる第1可動部と、
前記切削工具支持部を、前記第2仮想線と交差する第4仮想線を中心として作動及び停止可能に支持する第2可動部と、
前記切削工具支持部を鉛直方向に作動させる作動機構と、
を有し、
前記第3仮想線及び前記第4仮想線が水平に配置され、前記作動機構を前記鉛直方向の真上から見た平面内で、前記第2仮想線と前記第3仮想線とが平行に配置され、かつ、前記第1仮想線の延長上に前記第4仮想線が配置され、前記第1仮想線と前記第3仮想線とが90度の角度で交差して配置され、かつ、前記第2仮想線と前記第4仮想線とが90度の角度で交差して配置されている、ギヤ切削加工装置。
【請求項2】
請求項1記載のギヤ切削加工装置であって、
前記第1可動部は、前記第3仮想線に対して垂直な平面内で、前記ワークとしてのスパイラルベベルギヤのピッチ円錐に沿った第5仮想線と、前記切削工具の移動軌跡を示す第6仮想線とが平行になる位置で、前記第3仮想線を中心とする円周方向の前記所定位置で前記ワーク支持部を固定できる、ギヤ切削加工装置。
【請求項3】
請求項1記載のギヤ切削加工装置であって、
前記第3仮想線に対して垂直な平面内で、前記第1仮想線と前記第3仮想線とが交差されていない、ギヤ切削加工装置。
【請求項4】
請求項1記載のギヤ切削加工装置であって、
前記第1可動部を前記第4仮想線に沿った方向に作動させる水平作動機構が、更に設けられている、ギヤ切削加工装置。
【請求項5】
請求項1記載のギヤ切削加工装置であって、
前記第2可動部は、前記第4仮想線に対して垂直な平面内で、前記切削工具支持部を前記第4仮想線を中心として作動及び停止可能に支持する、ギヤ切削加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワークを切削加工してギヤを製造する、ギヤ切削加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを切削加工してギヤを製造する歯切り盤の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたCNC加工装置は、スパイラルベベルギヤ又はハイポイド・ギヤのCNC加工装置であって、ワークギヤを回転自在に支持するワークギヤ・スピンドルと、ワークギヤを加工するツールを回転自在に支持するツール・スピンドルと、ワークギヤ・スピンドル及びツール・スピンドルを、異なる最大3方向に相対的に移動させる移動手段と、を有する。
【0003】
また、特許文献1に記載されたCNC加工装置は、ワークギヤ・スピンドル又はツール・スピンドルが、加工される全てのベベルギヤについて、基準軸線に対して固定された調整不能の傾斜角をもって傾斜しており、かつ旋回手段により、基準軸線を中心にして連続的に旋回されるべく適合されている。さらに、特許文献1に記載されたCNC加工装置は、他方のスピンドルが、その軸線及び基準軸線により基準面を画定し、加工される個々のベベルギヤについて、基準面に直交する回転軸線を中心にして角度位置が調整可能であって、しかも加工中に、その角度位置を変更することがない。さらに、特許文献1に記載されたCNC加工装置は、ワークギヤとツールとの間に所定の転動運動が実現されるように、傾斜角及び角度位置が設定され、傾斜角は、6軸装置でベベルギヤを加工する際のマシンルートアングルの回動範囲の最大値であるΔΓmax と同じ角度となるように設定されている。なお、ワークを切削加工してギヤを製造するギヤ切削加工装置の一例は、特許文献2にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4381780号公報
【文献】特許第5040208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、特許文献1及び特許文献2に記載されている加工装置は、ストレートベベルギヤ、スパイラルベベルギヤ、スパーギヤ、ヘリカルギヤ、ウォームホイール、ウォーム等の複数種類のギヤを製造することについて記載されておらず、その点で改善の余地があった。
【0006】
本開示の目的は、ストレートベベルギヤ、スパイラルベベルギヤ、スパーギヤ、ヘリカルギヤ、ウォームホイール、ウォーム等の複数種類のギヤを製造することができるギヤ切削加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、ワークを第1仮想線を中心として回転可能に支持するワーク支持部と、前記ワークを切削加工する切削工具を第2仮想線を中心として回転可能に支持する切削工具支持部と、を有するギヤ切削加工装置であって、前記ワーク支持部を、第3仮想線を中心とする円周方向に作動可能に支持し、かつ、前記第3仮想線を中心とする円周方向の所定位置で停止させる第1可動部と、前記切削工具支持部を、前記第2仮想線と交差する第4仮想線を中心として作動及び停止可能に支持する第2可動部と、前記切削工具支持部を鉛直方向に作動させる作動機構と、を有し、前記第3仮想線及び前記第4仮想線が水平に配置され、前記作動機構を前記鉛直方向の真上から見た平面内で、前記第2仮想線と前記第3仮想線とが平行に配置され、かつ、前記第1仮想線の延長上に前記第4仮想線が配置され、前記第1仮想線と前記第3仮想線とが90度の角度で交差して配置され、かつ、前記第2仮想線と前記第4仮想線とが90度の角度で交差して配置されている、ギヤ切削加工装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示のギヤ切削加工装置によれば、ストレートベベルギヤ、スパイラルベベルギヤ、スパーギヤ、ヘリカルギヤ、ウォームホイール、ウォーム等の複数種類のギヤを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ギヤ切削加工装置の一例であるCNC縦型ホブ盤で製造できるスパイラルベベルギヤの模式図である。
【
図2】CNC縦型ホブ盤でワークを切削する切削工具の一例であるカッターの部分的な側面図である。
【
図3B】ワークを切削する切削工具の他の例であるホブの正面図である。
【
図4A】CNC縦型ホブ盤の全体構成を示す模式的な正面図である。
【
図4B】CNC縦型ホブ盤の全体構成を示す模式的な正面図である。
【
図4C】CNC縦型ホブ盤の全体構成を示す模式的な平面図である。
【
図4D】CNC縦型ホブ盤の制御系統を示すブロック図である。
【
図5】CNC縦型ホブ盤による加工例1を示す概念図である。
【
図6】CNC縦型ホブ盤による加工例2を示す概念図である。
【
図7】CNC縦型ホブ盤による加工例3を示す概念図である。
【
図8】CNC縦型ホブ盤による加工例4を示す概念図である。
【
図9】CNC縦型ホブ盤による加工例5を示す概念図である。
【
図10】CNC縦型ホブ盤による加工例6を示す概念図である。
【
図11】CNC縦型ホブ盤による加工例7を示す概念図である。
【
図12】CNC縦型ホブ盤による加工例8を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ギヤ切削加工装置の実施形態を、図面を参照して説明する。ギヤ切削加工装置の一例であるCNC縦型ホブ盤は、回転される切削工具によりワークを切削加工して、ストレートベベルギヤ、スパイラルベベルギヤ、スパーギヤ、ヘリカルギヤ、ウォームホイール、ウォーム等の複数種類のギヤを製造することができる装置である。回転される切削工具は、ワークに対して縦方向、つまり、鉛直方向に沿って移動される。CNC縦型ホブ盤の実施形態を説明するための図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
(CNC縦型ホブ盤による製造対象のギヤの一例)
図1には、CNC(Computerized Numerical Control:コンピュータ数値制御)縦型ホブ盤で製造可能な複数種類のギヤのうちの一例であるスパイラルベベルギヤ10が示されている。スパイラルベベルギヤ10は、金属材料製である。金属材料は、機械構造用合金鋼、例えば、クロム鋼(SCr)、クロムモリブデン鋼(SCM)、ニッケルクロム鋼(SNC)等を含む。製品状態のスパイラルべべルギヤ10は、例えば、車両の動力伝達装置の部品として用いられ、仮想線A1を中心として回転される。スパイラルベベルギヤ10は、回転方向に沿って配置される複数の歯を有する。スパイラルベベルギヤ10の各歯の歯すじ11は、ピッチ円錐上で曲線となり、かつ、歯すじ11は、ねじれ角β1を有する。
【0012】
図1には、便宜上、右ねじれのスパイラルベベルギヤ10が示されている。製造対象の一例であるスパイラルベベルギヤ10のピッチ円は、上端面12から下端面13に近づくことに伴い相対的に大きくなっている。ピッチ円錐角δ1は、仮想線A1と、スパイラルベベルギヤ10のピッチ円錐を示す仮想線B1との間の鋭角側の角度である。ねじれ角β1は、仮想線A1と、仮想線B2との間の鋭角側の角度である。仮想線B2は、歯すじ11を示す曲線の接線であり、かつ、点Q1を通る直線である。そして、仮想線A1と仮想線B1とが、点Q1で交差する。
【0013】
(切削工具の説明)
図2及び
図3Aには、切削工具としてのカッター14の一例が示されている。カッター14は、ワークを切削加工して製品としての歯車、例えば、スパイラルベベルギヤ10を得るための特殊カッターである。カッター14は、円筒形状のボス部15と、ボス部15の外周面に設けられた切刃16と、を有する。切刃16は、ボス部15の外周面から突出され、かつ、ボス部15の円周方向に所定間隔をおいて複数設けられている。カッター14の回転中心が仮想線C1で示され、仮想線C1に対して直角な仮想線E1が示されている。スパイラルベベルギヤ10を製造するカッター14の場合、切刃16は、仮想線C1を中心とする回転方向で所定角度θ3以下の範囲内に設けられている。所定角度θ3は、例えば、180度である。カッター14の歯すじは、仮想線E1に対してねじれており、カッター14の歯すじに沿った仮想線D1が示されている。カッター14の歯すじが仮想線E1に対してねじれる向きは、右ねじれと左ねじれとがある。カッター14は、仮想線E1と仮想線D1との間に進み角(ねじれ角)γ1を有する。進み角γ1は、仮想線E1と、仮想線D1との間に形成される鋭角側の角度である。
【0014】
(ホブ盤の説明)
図4A、
図4B及び
図4Cには、CNC縦型ホブ盤60の一例が示されている。CNC縦型ホブ盤60は、ワーク支持機構20、ワーク駆動機構21、切削工具支持機構40及び切削工具駆動機構41を有する。ワーク支持機構20は、ワークW1を支持する機構である。ワーク支持機構20は、コレットスピンドル22、ギヤケース23、支持プレート24、旋回台25、及びテーブル26を有する。コレットスピンドル22は、ギヤケース23により、仮想線F2を中心として回転可能に支持されている。ギヤケース23は、支持プレート24に固定されている。
【0015】
支持プレート24は、旋回台25に対し仮想線F2を中心とする円周方向に作動でき、かつ、円周方向の所定位置で停止及び固定できる。作業者は、支持プレート24を旋回台25に対して仮想線F2を中心とする所定角度の範囲内で作動させ、かつ、支持プレート24を旋回台25に対し所定位置で固定することができる。支持プレート24を旋回台25に対し所定位置で固定する作業は、例えば、ボルト、ナットの締め付け等により行われる。支持プレート24が旋回台25に対して仮想線F2を中心として作動されると、コレットスピンドル22は、仮想線F2を中心として公転される。支持プレート24を旋回台25に対し固定する位置は、製造対象であるスパイラルベベルギヤ10のピッチ円錐角δ1に応じて決定される。仮想線F2は、水平方向に沿って配置されている。また、
図2のように、旋回台25に対する支持プレート24の停止位置に関わりなく、仮想線F2に対して垂直な平面内において、仮想線F1と仮想線F2とは交差していない。
【0016】
旋回台25は、テーブル26に取り付けられており、テーブル26は、水平方向、
図4Cにおいて左右方向に作動及びできるように構成されている。
図4Dのように、テーブル26を作動及び停止させるテーブル駆動機構70が設けられている。テーブル駆動機構70は、電動サーボモータ71及びボールねじ機構等を有し、テーブル駆動機構70は、テーブル26を水平方向に作動させ、かつ、所定位置で停止させる。
【0017】
ワーク駆動機構21は、ワークW1を回転及び停止させる機構である。ワーク駆動機構21は、
図4Aのように、第1ギヤ27、回転軸91に固定された第2ギヤ28、回転軸91に固定された雄連結された第1ベベルギヤ(図示せず)、回転軸31に固定されて第1ベベルギヤと噛み合う第2ベベルギヤ(図示せず)、回転軸31に固定された第3ギヤ29、第4ギヤ30、及び電動サーボモータ32を有する。回転軸91は、仮想線F2を中心として回転される。第1ギヤ27は、コレットスピンドル22に固定されている。第2ギヤ28は、第1ギヤ27に噛み合わされている。第2ギヤ28は回転軸31に連結され、第3ギヤ29は回転軸31に取り付けられている。第3ギヤ29は第4ギヤ30に噛み合わされている。第4ギヤ30は、電動サーボモータ32により回転及び停止される。コレットスピンドル22は、ワークW1が取り付け及び取り外しされるアタッチメントである。
【0018】
電動サーボモータ32の回転力が第4ギヤ30、回転軸31、回転軸28、第3ギヤ29、第2ギヤ28を介してコレットスピンドル22に伝達されると、コレットスピンドル22は、仮想線F1を中心として回転される。ワーク駆動機構21により、ワークW1の回転方向が切り替えられ、かつ、ワークW1の回転速度が制御される。
【0019】
(切削工具支持機構及び切削工具駆動機構)
図4Cには、切削工具支持機構40及び切削工具駆動機構41が示されている。切削工具支持機構40は、切削工具を支持する機構である。切削工具支持機構40は、アーバ42、ホルダ46、アーバ支持部43、支持テーブル44、昇降台45を有する。アーバ42は、回転軸であり、作業者は、カッター14をアーバ42に取り付け及び取り外しできる。ホルダ46及びアーバ支持部43は、支持テーブル44に取り付けられており、ホルダ46及びアーバ支持部43は、アーバ42を仮想線C1を中心として回転可能に支持する。
【0020】
支持テーブル44は、昇降台45に取り付けられており、昇降台45はガイドレール47に取り付けられている。支持テーブル44は、昇降台45により仮想線G1を中心として作動及び停止でき、かつ、停止位置に固定できる構成を有する。仮想線G1は、例えば、水平方向に沿って配置されている。
【0021】
作業者は、カッター14でワークW1を切削加工する前の段階において、手作業により支持テーブル44を仮想線G1を中心として作動させ、かつ、支持テーブル44を所定位置で停止させた後、支持テーブル44を固定する作業を行う。支持テーブル44を固定する作業は、例えば、ボルト、ナットを締め付けることである。支持テーブル44の停止位置は、製造対象であるスパイラルベベルギヤ10のねじれ角β1、及びカッター14の進み角γ1に基づいて決定される。さらに、昇降台45は、ガイドレール47により鉛直方向に作動、つまり、上昇及び下降できるように支持されている。さらに、昇降台45を上昇、下降及び停止させるテーブル昇降機構72が設けられている。テーブル昇降機構72は、例えば、電動サーボモータ73及びボールねじ機構を有する。
【0022】
切削工具駆動機構41は、切削工具を駆動させる機構である。切削工具駆動機構41は、アーバ42、歯車伝動装置、及び
図4Dに示す電動スピンドルモータ48を有する。電動スピンドルモータ48は、支持テーブル44により支持されている。電動スピンドルモータ48は、回転方向を切り替えできる。電動スピンドルモータ48の回転力が、歯車伝動装置を経由してアーバ42に伝達されると、アーバ42及びカッター14が正回転または逆回転される。切削工具駆動機構41により、カッター14の回転方向が切り替えられ、かつ、カッター14の回転速度が制御される。支持テーブル44が仮想線G1を中心として回転及び停止されると、アーバ42、アーバ支持部43は、仮想線G1に対して垂直な平面内で仮想線G1を中心として回転及び停止される。このように、CNC縦型ホブ盤60は、カッター14を鉛直方向に上昇及び下降させることができる。CNC縦型ホブ盤60は、カッター14の回転速度、カッター14の上昇速度及び下降速度、ワークW1の回転速度、等を制御部が数値制御する、NCホブ盤である。
【0023】
さらに、
図4Dに示す制御盤74が設けられている。制御盤74は、CNC縦型ホブ盤60を制御するためのものである。制御盤74は、操作部75、制御回路76及び記憶回路77を有する。操作部75は作業者により操作される。操作部75は、タッチパネル、スイッチ、モニタ等を有し、作業者は操作部75を操作することにより、製造対象であるスパイラルベベルギヤ10の諸元、電動サーボモータ32の回転速度、電動スピンドルモータ48の回転速度、等を設定できる。スパイラルベベルギヤ10の諸元は、例えば、歯数、歯底円の直径、全歯たけ、歯幅、ピッチ円直径、ピッチ円錐角δ1、ねじれ角β1、等を含む。
【0024】
制御回路76は、操作部75から入力される信号、及び記憶回路77に記憶されているデータ、プログラム等に基づいて、電動サーボモータ32,71,73の回転方向、回転速度、回転及び停止、電動スピンドルモータ48の回転方向、回転速度、回転及び停止を、それぞれ数値制御により自動化することができる。記憶回路77には、制御回路76が実行する制御に用いられるデータ、プログラム等が記憶されている。
【0025】
CNC縦型ホブ盤60のレイアウトを説明する。仮想線F2,G1は、水平に配置される。
図4Cのように、CNC縦型ホブ盤60を鉛直方向の真上から見た平面内で、仮想線C1と仮想線F2とが平行に配置され、かつ、仮想線F1の延長上に仮想線G1が配置され、仮想線F1と仮想線F2とが90度の角度で交差して配置され、かつ、仮想線C1と仮想線G1とが90度の角度で交差して配置されている。
図4Aのように、CNC縦型ホブ盤60を正面から見ると、仮想線F1及び仮想線G1が同一平面上に位置する。
【0026】
(スパイラルベベルギヤの製造例)
スパイラルベベルギヤ10の製造例、つまり、加工例は、次の通りである。
図4Aのように、ワークW1を取り付けたコレットスピンドル22が回転され、かつ、カッター14が回転される。そして、カッター14が上昇または下降されることにより、ワークW1が切削加工されてスパイラルベベルギヤ10が製造される。カッター14が上昇してワークW1を切削する工法は、クライムと呼ばれる。カッター14が下降してワークW1を切削する工法は、コンベンショナルと呼ばれる。何れの工法でワークW1を切削加工する場合も、カッター14は、
図4Aにおいて時計回りに回転され、ワークW1を切削加工して生じる切粉は下へ落下する。
【0027】
本開示のCNC縦型ホブ盤60でスパイラルベベルギヤ10を製造する場合、
図4A及び
図4Bのように、仮想線F2に対して垂直な平面内で、スパイラルベベルギヤ10のピッチ円錐に相当する仮想線B1と、カッター14の移動軌跡(動作軌跡)を示す仮想線H1とが平行になる位置で、支持プレート24が旋回台25に対し位置決めされ、かつ、支持プレート24が旋回台25に対し固定される。つまり、仮想線F1が仮想線H1に対して傾斜されている状態で、カッター14がワークW1を切削加工する。また、カッター14の移動軌跡は、例えば、カッター14が、上昇または下降する場合における仮想線C1の移動軌跡を意味する。
【0028】
そして、カッター14を回転させ、かつ、ワークW1を回転させることにより、カッター14でワークWを切削加工する工程が開始されると、カッター14が1回転される毎に、ワークW1の回転方向に間隔をおいて所定長さの歯が「1個(1条)」ずつ形成される。さらに、ワークW1の1回転が完了する毎に、カッター14を仮想線H1に沿った方向に所定量移動させる制御が行われる。
【0029】
ここで、カッター14が1回転する間に、ワークW1が“1/歯数”回転され、かつ、ねじれ角β1に相当する補正回転量が、ワークW1の回転量に与えられるように、カッター14の回転速度及びワークW1の回転速度が、制御盤74により数値制御される。このため、ワークW1の歯すじ11のねじれ方向に応じて、カッター14が1回転する間に、ワークW1が“1/歯数”回転を超えて回転する場合と、カッター14が1回転する間に、ワークW1が“1/歯数”回転未満で回転する場合と、が生じる。なお、スパイラルベベルギヤ10の加工中、テーブル26は停止されている。そして、スパイラルベベルギヤ10の加工完了後、テーブル26が水平方向に作動、例えば、
図4Aにおいて右側へ作動される。なお、
図4Aと
図4Bとでは、仮想線F1と仮想線H1との間に形成される鋭角側の角度が異なる。
【0030】
[加工例1]
図5は、右ねじれのカッター14によりワークW1を切削加工して、右ねじれのスパイラルベベルギヤ10を製造する例を示す概念図である。なお、
図5は、仮想線G1に対して垂直な平面を想定したものであり、仮想線G1は、水平方向の直線である。
図5には、仮想線C1と仮想線G1と仮想線F1と、
図4Aに示す仮想線H1とが交差する位置が、交点J1で示されている。交点J1は、仮想線C1方向でカッター14の中心に位置する。傾斜角度θ1は、仮想線C1と仮想線H2との間に形成される鋭角側の角度である。仮想線H2は、水平方向に沿った直線である。カッター14は、仮想線C1を中心として第1方向R1で回転される。また、ワークW1は、仮想線F1を中心として第2方向U2で回転される。ここで、傾斜角度θ1は、
θ1=β1-γ1
に設定される。
【0031】
ここで、ワークW1の切削加工を開始する前の段階において、カッター14及びワークWが停止している状態で、仮想線C1が水平であり、かつ、ホルダ46が交点J1の右側に位置している状態を第1基準位置として想定する。作業者は、支持テーブル44を第1基準位置から、仮想線G1を中心として反時計回りに傾斜角度θ1動作させて停止させた後、支持テーブル44を固定している。
【0032】
[加工例2]
図6は、左ねじれのカッター14を使用して、右ねじれのスパイラルベベルギヤ10を製造する例を示す概念図である。カッター14は、仮想線C1を中心として第1方向R1で回転される。また、ワークW1は、仮想線F1を中心として第1方向U1で回転される。ここで、傾斜角度θ1は、
θ1=β1+γ1
に設定される。
【0033】
作業者は、ワークW1の切削加工を開始する前に、カッター14及びワークWが停止している状態において、支持テーブル44を第1基準位置から、仮想線G1を中心として反時計回りに傾斜角度θ1動作させて停止させた後、支持テーブル44を固定している。
【0034】
[加工例3]
図7は、左ねじれのカッター14を使用して、左ねじれのスパイラルベベルギヤ10を製造する例を示す概念図である。カッター14は、仮想線C1を中心として第1方向R1で回転される。また、ワークW1は、仮想線F1を中心として第1方向U1で回転される。ここで、傾斜角度θ1は、
θ1=β1-γ1
に設定される。作業者は、ワークW1の切削加工を開始する前に、カッター14及びワークWが停止している状態において、作業者は、支持テーブル44を第1基準位置から、仮想線G1を中心として時計回りに傾斜角度θ1動作させて停止させた後、支持テーブル44を固定している。
【0035】
[加工例4]
図8は、左ねじれのカッター14を使用して、左ねじれのスパイラルベベルギヤ10を製造する例を示す概念図である。カッター14は、仮想線C1を中心として第2方向R2で回転される。また、ワークW1は、仮想線F1を中心として第1方向U1で回転される。ここで、傾斜角度θ1は、
θ1=β1-γ1
に設定される。
【0036】
作業者は、ワークW1の切削加工を開始する前に、カッター14及びワークWが停止している状態において、仮想線C1が水平であり、かつ、ホルダ46が交点J1の左側に位置している状態を第2基準位置として想定する。作業者は、支持テーブル44を第2基準位置から、仮想線G1を中心として時計回りに傾斜角度θ1動作させて停止させた後、支持テーブル44を固定している。
【0037】
[加工例5]
図9は、右ねじれのカッター14を使用して、左ねじれのスパイラルベベルギヤ10を製造する例を示す概念図である。カッター14は、仮想線C1を中心として第1方向R1で回転される。また、ワークW1は、仮想線F1を中心として第2方向U2で回転される。ここで、傾斜角度θ1は、
θ1=β1+γ1
に設定される。
【0038】
作業者は、ワークW1の切削加工を開始する前に、カッター14及びワークWが停止している状態において、作業者は、支持テーブル44を第1基準位置から、仮想線G1を中心として時計回りに傾斜角度θ1動作させて停止させた後、支持テーブル44を固定している。
【0039】
[加工例6]
図10は、右ねじれのカッター14を使用して、左ねじれのスパイラルベベルギヤ10を製造する例を示す概念図である。カッター14は、仮想線C1を中心として第2方向R2で回転される。また、ワークW1は、仮想線F1を中心として第2方向U2で回転される。ここで、傾斜角度θ1は、
θ1=β1+γ1
に設定される。
【0040】
作業者は、ワークW1の切削加工を開始する前に、カッター14及びワークWが停止している状態において、作業者は、支持テーブル44を第2基準位置から、仮想線G1を中心として時計回りに傾斜角度θ1動作させて停止させた後、支持テーブル44を固定している。
【0041】
(他のギヤの製造例)
【0042】
[加工例7]
図11は、右ねじれのホブ14Aを使用して、スパーギヤ61を製造する例を示す概念図である。スパーギヤ61の歯すじは、仮想線C1と平行である。ホブ14Aは、仮想線C1を中心として第1方向R1で回転される。また、ワークW2は、仮想線F1を中心として第2方向U2で回転される。ホブ14AによりワークW2が切削加工されて、スパーギヤ61が製造される。ワークW2を切削加工する場合、
図11に示す仮想線F1が鉛直方向に沿う状態で、
図4Aに示す支持プレート24が位置決めされ、かつ、固定される。つまり、仮想線C1に対して垂直な平面内において、仮想線F1と仮想線H1とが平行に配置される。
【0043】
また、傾斜角度θ1は、
θ1=-γ1
に設定される。作業者は、ワークW2の加工を開始する前に、ホブ14A及びワークW2が停止している状態において、作業者は、支持テーブル44を第1基準位置から、仮想線G1を中心として時計回りに傾斜角度θ1動作させて停止させた後、支持テーブル44を固定している。
【0044】
[加工例8]
図12は、左ねじれのカッター14を使用して、スパーギヤ61を製造する例を示す概念図である。ホブ14Aは、仮想線C1を中心として第1方向R1で回転される。また、ワークW2は、仮想線F1を中心として第1方向U1で回転される。ホブ14AによりワークW2が切削加工されて、スパーギヤ61が製造される。ここで、傾斜角度θ1は、
θ1=γ1
に設定される。
【0045】
作業者は、ワークW2の加工を開始する前に、ホブ14A及びワークW2が停止している状態において、作業者は、支持テーブル44を第1基準位置から、仮想線G1を中心として反時計回りに傾斜角度θ1動作させて停止させた後、支持テーブル44を固定している。
【0046】
なお、加工例7及び加工例8は、スパーギヤ61に代えて、ストレートベベルギヤを製造することもできる。また、切削工具の形状及び構造、例えば、仮想線を中心として切刃が設けられる所定角度の範囲、アーバの中心である仮想線に沿った方向で切刃が設けられる列の数は、製造するギヤの種類に応じて異なる。このため、加工例7及び加工例8において、切削工具の進み角γ1が“0度”以上であっても、傾斜角度θ1の設定に加味しない場合もある。
【0047】
(本開示の効果)
CNC縦型ホブ盤60によりワークW1を切削加工してスパイラルベベルギヤ10を製造する場合、カッター14の回転中心を示す仮想線C1に対して垂直な平面内において、スパイラルベベルギヤ10のピッチ円錐に相当する仮想線B1と、カッター14の仮想線H1とが平行となる状態で、カッター14によりワークW1を切削加工する。
【0048】
また、作業者が、支持テーブル44を仮想線G1を中心として作動させ、かつ、任意の位置で停止及び固定させることにより、右ねじれ及び左ねじれのスパイラルベベルギヤ10を製造でき、かつ、任意のねじれ角β1を有するスパイラルベベルギヤ10を製造できる。したがって、製造対象であるスパイラルベベルギヤ10のねじれ角β1を、20度以上、または、20度未満の何れにも任意に設定できる。さらに、作業者が、支持プレート24を仮想線F2を中心として作動させ、かつ、任意の位置で停止及び固定することにより、任意のピッチ円錐角δ1を有するスパイラルベベルギヤ10を製造できる。
【0049】
さらに、作業者が、支持プレート24を仮想線F2を中心として作動させ、かつ、任意の位置で停止及び固定することにより、仮想線F1と仮想線H1とを平行に位置させること、及び仮想線F1を仮想線H1に対して傾斜させること、の何れをも満足できる。したがって、CNC縦型ホブ盤60は、スパイラルベベルギヤ10及び、歯すじが仮想線C1と平行なスパーギヤ61の両方を製造できる。また、仮想線C1を第1基準位置または第2基準位置で停止させ、カッター14によりワークW1を切削加工すると、歯すじが直線であるストレートベベルギヤ、ウォームを製造することもできる。
【0050】
また、
図4A及び
図4Bのそれぞれに示すCNC縦型ホブ盤60において、支持プレート24を旋回台25に対し固定する位置を調整し、仮想線H1と仮想線F1とを平行に位置させ、かつ、切削工具としてホブを使用すると、複数種類のギヤ、例えば、スパーギヤ、ヘリカルギヤ、ウォームホイールを製造することができる。
図3B及び
図3Cには、ホブ14Aの一例が示されている。ホブ14Aは、円筒形状のボス部15と、ボス部15の外周面に設けられた複数の切刃16と、を有する。複数の切刃16は、ボス部15の全周に亘って所定間隔で、かつ、螺旋状に設けられている。ホブ14Aは、切刃16のねじれ方向が異なる右ねじれ及び左ねじれがある。
【0051】
このように、CNC縦型ホブ盤60は、複数種類のギヤを製造できる。支持プレート24を仮想線F2を中心とする作動方向に位置決め及び固定し、かつ、旋回台25を仮想線G1に沿った方向の所定位置で固定することにより、複数種類のギヤ、例えば、スパーギヤ、ヘリカルギヤ、ストレートベベルギヤ、スパイラルベベルギヤを製造できる。
【0052】
例えば、スパーギヤまたはストレートベベルギヤの加工は、加工工具を仮想線C1を中心として1回転させる過程で、ワークに1個の歯を成形できるように、加工工具の回転速度と、ワークの回転速度とを同期させる。つまり、外周に10枚の歯のあるスパーギヤまたはストレートベベルギヤを切削加工する場合は、まず、切削工具を1回転させる間に、ワークが36度回転する回転速度でワークを回転させる。また、加工工具が1回転を完了する毎に、ワークを36度回転させ、かつ、加工工具の1回転が完了する毎に、仮想線H1に沿った方向に加工工具を移動させる。上記の工程を繰り返すことにより、1個のスパーギヤまたはストレートベベルギヤの切削加工が完了する。なお、加工工具によりワークを切削加工してウォームホイールを製造する場合、テーブル26及びワークを、水平方向、例えば、
図4Cにおいて左右方向に作動させる工程が行われる。
【0053】
一方、歯数が10個(10条)のヘリカルギヤまたはスパイラルベベルギヤを切削加工する場合、加工工具が1回転する間にワークが1回転するワークの回転速度に対し、ワークが1回転に対し、ワークの回転角度が36度を超える角度、または、ワークの回転角度が36度未満、となるように、ワークの回転速度を制御して、加工工具によりワークを切削加工する。さらに、加工工具の1回転が完了する毎に、加工工具を仮想線H1に沿った方向に移動させる工程を繰り返すことで、全周に亘って歯数が10個あり、かつ、各歯が右ねじれ、または、左ねじれであるヘリカルギヤまたはスパイラルベベルギヤを加工することができる。加工工具を仮想線H1に沿った方向に移動させる量は、製造しようとするギヤの歯幅に応じて決定される。
【0054】
本実施形態で説明した事項の技術的意味の一例は、次の通りである。CNC縦型ホブ盤60は、ギヤ切削加工装置の一例である。仮想線F1は、第1仮想線の一例である。仮想線C1は、第2仮想線の一例である。仮想線F2は、第3仮想線の一例である。仮想線G1は、第4仮想線の一例である。仮想線B1は、第5仮想線の一例である。仮想線H1は、第6仮想線の一例である。コレットスピンドル22は、ワーク支持部の一例である。カッター14及びホブ14Aは、切削工具の一例である。アーバ42は、切削工具支持部の一例である。支持プレート24及び旋回台25は、第1可動部の一例である。支持テーブル44は、第2可動部の一例である。昇降台45及びガイドレール47は、作動機構の一例である。テーブル駆動機構70は、水平作動機構の一例である。
図4Cは、“作動機構を鉛直方向の真上から見た平面”の一例である。
図4A及び
図4Bは、“第3仮想線に対して垂直な平面”の一例である。
図5-
図12のそれぞれは、“第4仮想線に対して垂直な平面”の一例である。
【0055】
本実施形態は、図面を用いて開示されたものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本実施形態において、ギヤの諸元は任意に設定できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本実施形態は、ワークを切削加工して複数種類のギヤを製造するギヤ切削加工装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
14…カッター、14A…ホブ、22…コレットスピンドル、24…支持プレート、25…旋回台、42…アーバ、44…支持テーブル、45…昇降台、47…ガイドレール、60…CNC縦型ホブ盤、70…テーブル駆動機構、B1,C1,F1,F2,G1…仮想線、H1…移動軌跡
【要約】
【課題】複数種類のギヤを製造できるCNC縦型ホブ盤を提供する。
【解決手段】ワークを支持するコレットスピンドル22と、ワークを切削加工するカッター14を支持するアーバ42と、を有するCNC縦型ホブ盤60であって、コレットスピンドル22を仮想線F2を中心として作動可能に支持し、かつ、仮想線F2を中心とする円周方向の所定位置で停止させる支持プレート24と、カッター14を、仮想線C1と交差する仮想線G1を中心として作動可能に支持する支持テーブル44と、アーバ42を鉛直方向に作動させる昇降台45と、を有し、仮想線F2及び仮想線G1が水平に配置され、昇降台45を鉛直方向の真上から見た平面内で、仮想線C1と仮想線F2とが平行に配置され、かつ、仮想線F1の延長上に仮想線G1が配置され、仮想線F1と仮想線F2とが90度で交差され、かつ、仮想線C1と仮想線G1とが90度で交差されている。
【選択図】
図4C