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  • 特許-聴診器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】聴診器
(51)【国際特許分類】
   A61B 7/02 20060101AFI20240118BHJP
   A61B 7/04 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61B7/02 F
A61B7/04 J
A61B7/04 P
A61B7/04 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023101969
(22)【出願日】2023-06-21
【審査請求日】2023-06-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】322012675
【氏名又は名称】メディジェンス合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】道海 秀則
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111700637(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1957110(KR,B1)
【文献】国際公開第2006/123407(WO,A1)
【文献】特開2014-150825(JP,A)
【文献】特表2019-532704(JP,A)
【文献】特開2021-074338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 7/00-7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤフラムが接着または圧着されたリムと、
マイクを内部に備えた集音部と、
を備えた聴診器であって、
前記集音部は前記リムに挿入可能であり、
前記集音部と前記リムとの接続部をシールするシール部材をさらに備え、
前記集音部または前記リムにスイッチとして圧電素子を備え、
前記圧電素子を予備動作させ、加温するモードを備えた聴診器。
【請求項2】
前記リムのダイヤフラム側の面に設けられた感圧センサと、
前記感圧センサが検知した圧力に応じて、低音優位の心音モードと中高音優位の呼吸音モードとを切替える音声処理デバイスと、
を更に備えた請求項1に記載の聴診器。
【請求項3】
前記感圧センサが一定時間以上圧力を感じなければスリープモードに移行する請求項2に記載の聴診器。
【請求項4】
前記感圧センサが一定時間以上圧力を感じつづければスリープモードに移行する請求項2に記載の聴診器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴診器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、滅菌可能な聴診器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3163594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、集音器と再生器とを分離しただけであり、従来型の聴診器を使うことができなかった。
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明にかかる聴診器は、
ダイヤフラムが接着または圧着されたリムと、
集音部と、
を備えた聴診器であって、
前記集音部は前記リムに挿入可能であり、
前記集音部と前記リムとの接続部をシールするシール部材をさらに備え、
前記集音部または前記リムにスイッチとして圧電素子を備え、
前記圧電素子を予備動作させ、加温するモードを備えた聴診器である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、殺菌や滅菌を行うことのできる聴診器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る聴診器の構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る聴診器の構成を示す組み立て図である。
図3】第2実施形態に係る聴診器の構成を示す図である。
図4】第2実施形態に係る聴診器の処理の流れを示すフローチャートである。
図5】第3実施形態に係る聴診器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0009】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての聴診器100について、図1を用いて説明する。図1は、聴診器100の断面図である。図1に示すように、聴診器100は、チェストピースとして少なくともリム101と集音部102とを備えており、通常、さらにバイノーラル104を備えている。リム101には、ダイヤフラム111が接着または圧着されている。集音部102はリム101に挿入可能であり、集音部102とリム101との接続箇所をシールするシール部材103を備えている。
【0010】
さらに、集音部102に連結するチューブ141を備えたバイノーラル104と、集音部102の突出管121とチューブ141との接続箇所をシールするシール部材105とが設けられている。シール部材105は、熱融着性または熱収縮性のある素材で構成されている。シール部材105は、径の異なる2つの円筒が連結された形状である。一端の円筒はチューブ141の径よりも1mmほど径大に構成され、他端の円筒は突出管121の径よりも1mmほど径大に構成されている。リム101は、ダイヤフラム111の代わりに整流ひだが設けられたセラミック製の薄板を備えてもよい。その場合、空気が整流され、効率よく集音できると考えられる。
【0011】
図2は、聴診器100の各部品について説明するための外観図である。リム101は、内壁にネジが切られた円筒形状である。集音部102は、外周面にネジが切られた接続部122を備えており、接続部122をリム101に螺合させ、接着して一体化させることができる構成となっている。シール部材103はドーナツ形状であり、シール部材103の開口部131に突出管121を通しつつ、接続部122の上面に取り付け、リム101と接続部122との境界部分に加熱圧着固定させる。これによりリム101と集音部102との接続箇所から水やアルコールなどが聴診器100内部に侵入することを防止できる。なお、ここでは一例として集音部102をリム101に螺合する構成について示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、リム101に設けられた開口部に集音部102を挿嵌する構成でもよい。
【0012】
突出管121は、溶接により集音部102と一体となっている。ここでは突出管121が集音部102の側面から延設しているデザインとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、集音部102の上面から延設されてもよい。
【0013】
突出管121→シール部材105→バイノーラル104の順に組み付ける。つまりまず、シール部材105の小径側端部に突出管121を挿入し、その後、シール部材105の大径側端部にチューブ141を挿入して、ドライヤーなどでこの3つを熱融着させる。これにより、集音部102とバイノーラル104との間のシーリングが完全になり、滅菌、殺菌しても集音部102とバイノーラル104との接続箇所から水やアルコールなどが聴診器100内部に侵入することを防止できる。
【0014】
なお、突出管121とチューブ141とを接続した後、その接続箇所を覆うようにシール部材105を加熱圧着固定させてもよい。なお、加熱圧着や熱融着に限定されるものではなく、接着剤で接着してもよい。
【0015】
また、リム101を交換する際には、カッターでシール部材103に切れ目を入れてから、リム101を回転させる。また、バイノーラル104の交換時には、バイノーラル104と突出管121の接続部において、シール部材105に切れ目を入れて外す。
【0016】
以上のように構成することにより聴診器全体(チェストピースおよびチェストピースの接続部)を防水仕様にすることができ、聴診対象に触れる部分を水洗できるようになる。またエタノールへの耐性を実現でき繰り返し滅菌消毒を行うことも可能となる。
【0017】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係る聴診器について、図3および図4を用いて説明する。図3は、本実施形態に係る聴診器の構成を説明するための図である。本実施形態に係る聴診器は、上記第1実施形態と比べると、集音部302は内部にマイク321を備えており、バイノーラルの代わりに音声処理デバイス304が電気的に接続されている点で異なる。その他の構成および動作は、第1実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0018】
例えば集音部302の内部にコンデンサマイクを設けてもよい。コンデンサマイクは、低音を良く拾うため、心音をはっきり聞き取ることができる。
【0019】
音声処理デバイス304は、スピーカーを有してもよいし、Bluetooth(登録商標)などの無線技術でイヤホンに音声を送信する構成でもよい。またインターネット通信を介して音声やデータをサーバにアップロードしてもよい。マイク321からの出力に基づいて心拍数を算出して表示してもよい。ここでは、バイノーラルの代わりに音声処理デバイス304が接続されているが、これに限定されるものではない。例えば、無線通信機能を有する音声処理デバイス304をマイク321のそば(チェストピース内部)に設け、集音部302には従来型のバイノーラルを接続して直接心音や呼吸音を聞くこともできる構成でもよい(アナログデジタルハイブリッド)。
【0020】
また、リム301の外周面には、圧電素子や感圧センサなどで構成されたスイッチ312が設けられている。スイッチ312により、音声処理デバイス304は、心音モード(低音優位)と呼吸音モード(中高音優位)との間で切替えが行われる。スイッチ312を押すごとに心音モード(低音優位)と呼吸音モード(中高音優位)との間で切替えが行われてもよいし、スイッチ312を強く押している間だけ呼吸音モードに切り替わる構成でもよい。さらにスイッチ312を長押しすることにより、マイク321および音声処理デバイス304のオンオフが行われてもよい。その他、スイッチ312を連続して押すことにより音声処理デバイス304から出力される音声の音量を増大または減少させてもよい。
【0021】
スイッチ312は、ここではリム301の外周面としたが、ダイヤフラム311側の面に設けられてもよい。その場合、感圧センサとすれば、聴診器300を軽く患者に押し付ければ心音モードとなり、強く押し付ければ呼吸音モードとなるような切り替えが可能となる。
【0022】
スイッチ312を、集音部302の上面322に設けてもよいし、集音部302の側面323に設けてもよい。
【0023】
また、スイッチ312が一定時間以上圧力を感じなければ音声処理デバイス304がスリープモードに移行する制御が行われてもよい。スイッチ312が一定時間(例えば10分)以上圧力を感じつづければスリープモードに移行してもよい。つまり、医師によるスイッチ312の長押しによりスリープモードへの移行が可能となる。例えば、聴診器300を机の上に放置した際、自重又は何らかの要因でスイッチ312がオンのままになることが考えられる。その場合、一定時間の経過を検出してスリープモードに移行してもよい。さらには、ダイヤフラム311の内部に設けられたスイッチ312としての圧電素子を予備動作させ、加温するモードを備えてもよい。患者に対して冷たさを感じさせることを防止できる。
【0024】
図4は、本実施の形態にかかる聴診器の制御手順について説明するフローチャートである。ステップS401において、スイッチ312の圧力を検知するまで待機する。スイッチの圧力を検知すると、医師や看護師が聴診器を握ったと判断し、ステップS403に進む。ステップS403では、スイッチ312で検知した圧力が所定値Xより大きいか判定し、所定X以上であれば心音モードと判定し、所定値X以下であれば呼吸音モードと判定して、音声処理デバイス304をそれぞれのモードで動作させる。つまりハイパスフィルタリングするかローパスフィルタリングするかを切り替える。
【0025】
次にステップS409に進み、圧力を所定値Xよりも小さい所定値Yと比較し、所定値Yより小さければステップS411に進む。ステップS411では、医師や看護師が聴診器を放した状態であると判断し、その状態で所定時間(例えば1分)経過するとステップS413に進みスリープモードとなる。
【0026】
以上、本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えてモード切替が可能になるという効果が得られる。
【0027】
なお、スイッチ312を操作することにより、電源のオンオフ、ミュート機能のオンオフ、録音の開始と停止、インターネット通信のオンオフ、オンライン診療システムや解析システムへの接続のオンオフをできる聴診器であってもよい。さらにはスイッチ312の操作により、サーバへの心音データアップロード、心音データの数値化、グラフ化および解析、音声処理デバイス304の表示内容の切り替えや、上述の加温機能のオンオフを行ってもよい。
【0028】
スイッチ312の操作により、ダイヤフラム内部に設けたPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒーター、セラミックヒーター、またはシリコンゴムヒーターなどの加熱デバイスを駆動させることにより、水洗後や消毒後に、ダイヤフラムやチェストピースなどを加温し、速く乾燥させることができる。圧電素子としてのスイッチ312を起動させて発熱させてもよい。
【0029】
防水機能があるため、連続使用により万一聴診器が熱を持った状態になっても、冷水に浸けることで素早く冷却することができ、診療や研究を滞りなく進行することが可能となる。
【0030】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態に係る聴診器について、図5を用いて説明する。図5は、本実施形態に係る聴診器の構成を説明するための図である。本実施形態に係る聴診器は、上記第2実施形態と比べると、リム501の外周面およびダイヤフラム側の面に少なくとも計3つのスイッチを備えている点で異なる。その他の構成および動作は、第1実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0031】
リムの外周面に設けられたスイッチ512、513は、ユーザの2本の指の接触を検知して、両方がアクティブになったときにマイク321および音声処理デバイス304を起動してもよい。また、リム501のダイヤフラム111側の面に設けられたスイッチ(感圧センサ)515,516により、心音モードおよび呼吸音モードの切り替えを行ってもよい。さらには、リム501のダイヤフラム111側の面に光センサや温度センサを設けて、血中酸素濃度や体温を検出してもよい。
【0032】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0033】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるサーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。
【要約】
【課題】殺菌や滅菌を行うことのできる聴診器を提供すること。
【解決手段】殺菌や滅菌を行うことのできるように、ダイヤフラムが接着または圧着されたリムと、集音部と、を備えた聴診器であって、集音部はリムに挿入可能であり、集音部とリムとの接続部をシールする第1シール部材、をさらに備え、防水機能を備えた聴診器を提供する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5