IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社武蔵野ホールディングスの特許一覧

<>
  • 特許-冷凍食品、および冷凍食品の製造方法 図1
  • 特許-冷凍食品、および冷凍食品の製造方法 図2
  • 特許-冷凍食品、および冷凍食品の製造方法 図3
  • 特許-冷凍食品、および冷凍食品の製造方法 図4
  • 特許-冷凍食品、および冷凍食品の製造方法 図5
  • 特許-冷凍食品、および冷凍食品の製造方法 図6
  • 特許-冷凍食品、および冷凍食品の製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】冷凍食品、および冷凍食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/36 20060101AFI20240118BHJP
   A23L 3/365 20060101ALI20240118BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20240118BHJP
   A23L 23/10 20160101ALI20240118BHJP
   A23L 7/113 20160101ALN20240118BHJP
【FI】
A23L3/36 A
A23L3/365 A
A23L3/365 Z
A23L27/00 D
A23L23/10
A23L7/113
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023121936
(22)【出願日】2023-07-26
【審査請求日】2023-08-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513129209
【氏名又は名称】株式会社武蔵野ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100206689
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】安田 信行
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼治 麻理奈
(72)【発明者】
【氏名】江尻 磐夫
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-139579(JP,A)
【文献】特開2020-043819(JP,A)
【文献】特開2008-011841(JP,A)
【文献】特開2022-052858(JP,A)
【文献】特開平05-260908(JP,A)
【文献】特開2014-031935(JP,A)
【文献】特開2021-145571(JP,A)
【文献】登録実用新案第3201919(JP,U)
【文献】特開平10-127260(JP,A)
【文献】特開平08-242823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00 - 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍された第1の調味液と、前記第1の調味液と組成の異なる、冷凍された第2の調味液と、を有する冷凍食品であり、
前記冷凍された第1の調味液と前記冷凍された第2の調味液とは、解凍した際にそのまま混ざり合うように、同一の包装容器内に同封され、
前記第2の調味液は、氷片の形態で存在しており、
前記第1の調味液および前記第2の調味液は、糖類、食塩、旨味成分、または食酢を含有しており、
前記第2の調味液は、糖類を0質量%よりも多く、かつ、10質量%以下で含有し、および/または、食塩を0質量%よりも多く、かつ、3質量%以下で含有する、冷凍食品。
【請求項2】
前記第2の調味液の氷片は、糖類を含有したフレーク状の氷片であって、最大面の面積が30~500mmである、請求項1に記載の冷凍食品。
【請求項3】
前記第2の調味液の氷片は、食塩、旨味成分、または食酢を含有した氷片であって、平均粒径が0mmよりも大きく、3mm以下である、請求項1に記載の冷凍食品。
【請求項4】
前記冷凍された第1の調味液および前記冷凍された第2の調味液は、融解後に混ざり合うことで、スープを構成する、請求項1に記載の冷凍食品。
【請求項5】
前記第2の調味液の氷片は、旨味成分を0質量%よりも多く、かつ、10質量%未満で含有する、請求項1に記載の冷凍食品。
【請求項6】
前記第2の調味液の氷片は、食酢を0質量%よりも多く、かつ、15質量%以下で含有する、請求項1に記載の冷凍食品。
【請求項7】
前記第2の調味液の氷片は、糖類および食塩を含有し、
糖類に対して、食塩の濃度が低い、請求項1に記載の冷凍食品。
【請求項8】
前記第2の調味液の氷片は、糖類を0質量%よりも多く、かつ、5質量%以下で含有するとともに、食塩を0質量%よりも多く、かつ、1質量%以下で含有する、請求項に記載の冷凍食品。
【請求項9】
冷凍された第1の調味液と、前記第1の調味液と組成の異なる、冷凍された第2の調味液とを含有する冷凍食品の製造方法であって、
前記第1の調味液および前記第2の調味液を、糖類、食塩、旨味成分、または食酢を含有するように調製し、
前記第2の調味液を、前記冷凍された第1の調味液と前記冷凍された第2の調味液とが融解し混ざり合うことで喫食時のスープが構成されるように、前記第1の調味液の成分に応じて調製するとともに、前記第2の調味液を、糖類を0質量%よりも多く、かつ、10質量%以下で含有し、および/または、食塩を0質量%よりも多く、かつ、3質量%以下で含有するように調製し、
調製した前記第2の調味液を、氷片の形態で製造し、
前記冷凍された第1の調味液と前記冷凍された第2の調味液とを、解凍した際にそのまま混ざり合うように、同一の包装容器内に同封する、冷凍食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍食品、および冷凍食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子レンジによる解凍・加熱時間を短縮するとともに、食品全体を均一に解凍・加熱することができる冷凍食品が希求されていた。このような課題を解決するために、出願人は、冷凍された固形食材を含む第1層と、冷凍により複数の氷片として形成された固形食材の調味液を含む第2層と、を有することを特徴とする冷凍食品を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-52858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子レンジによる解凍・加熱時間をより短縮するためには、特許文献1に記載の冷凍食品のように氷片全体での表面積を大きくすることが好ましい。
しかし、氷の成分によっては氷が硬く削りにくく、米粒あるいは砂粒程度の大きさの粒状になり氷片全体の表面積を十分に大きくすることができない場合や、また削った氷片が氷を削る際の刃や回収用のベルトコンベアなどに付着してしまい作業効率が低下してしまう場合、作業者が食材や氷片を容器内にトッピングする作業において、作業室が10℃程度の温度である場合に、氷片が溶け出してしまう場合もあった。そのため、電子レンジによる解凍・加熱時間を短縮できることに加えて、削りやすい、付着性が低い、あるいは、製造工程において溶けにくい氷片が求められている。
【0005】
本発明は、電子レンジによる解凍・加熱時間を短縮することができ、食品全体を均一に解凍・加熱することができる冷凍食品および冷凍食品の製造方法を提供することを目的とする。
また、水やスープを凍らせただけの氷片と比べて、削りやすく、氷を削るための刃などへの付着性が低く、あるいは、氷片を容器に投入する際においても溶けにくい性質を有する氷片を有する冷凍食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の(1)ないし(9)の冷凍食品を要旨とする。
(1)冷凍された第1の調味液と、前記第1の調味液と組成の異なる、冷凍された第2の調味液と、を有する冷凍食品であり、前記第2の調味液は、氷片の形態で存在しており、前記第1の調味液および前記第2の調味液は、糖類、食塩、アミノ酸、または酢を含有しており、前記第2の調味液は、糖類を0質量%よりも多く、かつ、10質量%以下で含有し、および/または、食塩を0質量%よりも多く、かつ、3質量%以下で含有する、冷凍食品。
(2)前記第2の調味液の氷片は、糖類を含有したフレーク状の氷片であって、最大面の面積が30~500mmである、上記(1)に記載の冷凍食品。
(3)前記第2の調味液の氷片は、食塩、旨味成分、または食酢を含有した氷片であって、平均粒径が0mmよりも大きく、3mm以下である、上記(1)記載の冷凍食品。
(4)前記冷凍された第1の調味液および前記冷凍された第2の調味液は、融解後に混ざり合うことで、スープを構成する、上記(1)に記載の冷凍食品。
)前記第2の調味液の氷片は、旨味成分を0質量%よりも多く、かつ、10質量%未満で含有する、上記(1)に記載の冷凍食品。
)前記第2の調味液の氷片は、食酢を0質量%よりも多く、かつ、15質量%以下で含有する、上記(1)に記載の冷凍食品。
)前記第2の調味液の氷片は、糖類および食塩を含有し、糖類に対して、食塩の濃度が低い、上記(1)に記載の冷凍食品。
)前記第2の調味液の氷片は、糖類を0質量%よりも多く、かつ、5質量%以下で含有するとともに、食塩を0質量%よりも多く、かつ、1質量%以下で含有する、上記()に記載の冷凍食品。
【0007】
また、本発明は、以下の()の冷凍食品の製造方法を要旨とする。
)冷凍された第1の調味液と、前記第1の調味液と組成の異なる、冷凍された第2の調味液と、を含有する冷凍食品の製造方法であって、前記第1の調味液および前記第2の調味液を、糖類、食塩、旨味成分、または食酢を含有するように調製するとともに、前記第2の調味液を、前記冷凍された第1の調味液と前記冷凍された第2の調味液とが融解し混ざり合うことで喫食時のスープが構成されるように、前記第1の調味液の成分に応じて調製するとともに、前記第2の調味液を、糖類を0質量%よりも多く、かつ、10質量%以下で含有し、および/または、食塩を0質量%よりも多く、かつ、3質量%以下で含有するように調製し、調製した前記第2の調味液を、氷片の形態で製造し、前記冷凍された第1の調味液と前記冷凍された第2の調味液とを、解凍した際にそのまま混ざり合うように、同一の包装容器内に同封する、冷凍食品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、氷片が糖類、食塩、旨味成分、または食酢を含有するため、氷片を、水のみを凍らせた氷を削った粒状の氷片と比べて、薄く平たいフレーク状、あるいは、細かいパウダー状とすることができ、氷片全体での表面積を高めることができるため、電子レンジによる解凍・加熱時間を短縮するとともに、食品全体を均一に解凍・加熱することができる冷凍食品および冷凍食品の製造方法を提供することができる。
また、本発明では、氷片が含有する糖類、食塩、旨味成分、または、食酢の濃度を一定範囲とすることで、水やスープを凍らせただけの氷片と比べて、削りやすい、氷を削るための刃やコンベアへの付着性が低い、あるいは、製造工程においても溶けにくい性質を有する氷片を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る冷凍食品の断面図である。
図2】本実施形態に係る冷凍食品1の製造方法を示すフローチャートである。
図3】実施例1における砂糖、食塩、ラード、みりん、グルエースまたは食酢を含有する氷片の一例を示す画像例である。
図4】実施例1における氷片の「削りやすさ」、「付着しにくさ」および「溶けにくさ」の評価結果を示す表である。
図5】実施例1における砂糖、食塩、ラード、みりん、グルエースまたは食酢を含有する氷片の解凍開始時間および完全融解時間の一例を示すグラフである。
図6】実施例2における砂糖および食塩を含有する氷片の一例を示す画像例である。
図7】実施例3における砂糖および食塩を含有する氷片の解凍開始時間および完全融解時間の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図を参照して、本発明に係る冷凍食品の実施形態について説明する。以下においては、本発明に係る冷凍食品を、冷凍ラーメンを例示して説明するが、本発明に係る冷凍食品は、解凍した場合にスープを含む食品であれば冷凍ラーメンに限定されず、たとえば、うどんやそば、スープパスタなどの麺類、みそ汁やミネストローネなどのスープ類、鍋類、カレー、レモネードやフラッペなどのフローズンドリンク、ぜんざいなどの液状成分の多い菓子類などにも適用することができる。
【0011】
図1は、本実施形態に係る冷凍食品の断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る冷凍食品1は、容器2に収容されており、下から冷凍調味液10と、冷凍した麺20および具材30と、氷片40とを有する。なお、以下においては、冷凍調味液10と、麺20および具材30と、氷片40とをまとめて食品3とも称す。
【0012】
容器2は、食品3を収容する椀状の容器本体21と、容器本体21の上部を被覆する容器蓋22とを有する。容器本体21および容器蓋22の材質は、油や水を透過させない耐熱性素材で、電子レンジの使用が可能な素材であれば特に限定されず、たとえば、ポリプロピレン、発泡ポリプロピレン、ポリスチレン、発泡ポリスチレン、合成樹脂フィルムなどで構成することができる。
【0013】
冷凍された麺20は、麺を茹で調理をした後に冷凍したものであり、たとえば、うどん、そば、そうめん、中華麺、パスタ、ビーフン、春雨などであるが、その他の麺類としてもよい。具材30も、特に限定されず、一例として、肉、魚、卵焼き、野菜、薬味などが挙げられる。
【0014】
冷凍調味液10は、解凍された場合に、融解した氷片40と混ざり合い、冷凍食品1のスープを構成するものであり、かえしとも呼ばれる。別の観点からは、冷凍調味液10はかえしとしての役割を果たす第1の調味液と呼ぶことができ、氷片40は、だしとしての役割を果たす第2の調味液と呼ぶことができる。冷凍調味液10には、糖類、食塩、アミノ酸などの旨味成分、脂質、食酢など、一般的な調味液に含まれる成分を含有することができ、これらの成分が解凍時のスープよりも濃縮された状態で含有されている。また、後述するように、本実施形態に係る冷凍調味液10は、氷片40に含まれる成分に合わせて、調味液の成分の調整が行われる。
【0015】
氷片40は、氷を刃で削って製造したものであり、水のみを凍らせた氷の氷片、または、冷凍食品1のスープそのものを凍らせた氷の氷片ではなく、少なくても糖類、食塩、旨味成分または食酢を含有する第2の調味液の氷片であることを特徴とする。なお、氷片40が含有する糖類は、特に限定されず、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、マンノース、リボース、アラビノース、キシロースなどの単糖類や、ショ糖、乳糖、麦芽糖、ラフィノース、スタキオースなどの少糖類が例示される。また、氷片40が含有する旨味成分も、特に限定されず、グルタミン酸、アラニン、グリシンなどのアミノ酸またはそれらの塩、または、イノシン酸、グアニル酸などの核酸またはそれらの塩が例示される。さらに、氷片40は、2種類以上の糖類、あるいは、2種類以上の旨味成分を含有する構成とすることもできる。加えて、氷片40は、糖類、食塩、旨味成分および食酢のうち2種類以上の成分を含有する構成とすることもできる。さらに、氷片40は、みりんなどの糖類を含む調味料、あるいは、料理酒、醤油、味噌などの食塩を含む調味料を含有する構成とすることもできる。また、氷片40は、糖類、食塩、旨味成分または食酢を含有するものであれば、それ以外の成分を含有する構成とすることもできる。たとえば、氷片40は、ラードなどの油脂を含有する構成とすることもできる。
【0016】
ここで、氷片40は、電子レンジなどを用いて冷凍食品1を解凍した場合に溶融し、同じく溶融した冷凍調味液10と混ざり合い、冷凍食品1のスープを構成する。そのため、氷片40は、電子レンジによる解凍・加熱時間を短縮することができるとともに、食品全体を均一に解凍・加熱することができることが好ましい。この点、本実施形態に係る氷片40は、糖類を含有する場合には、水のみを凍らせた粒状の氷片と比べて、氷片40を薄く平たいフレーク状の形状(フレークアイス)とすることができ、氷片40の全体の表面積を大きくすることができるため、電子レンジによる解凍・加熱時間を短縮することができるとともに、食品全体を均一に解凍・加熱することが可能となる。これは、単に水だけの氷を削った氷片では、水分子間の結合が強いため、氷を削った際に、氷片が粒状の形状となってしまうことに対して、糖類を含有する氷では、水分子間に糖類が入り込み水分子間の結合を弱くすることができるため、氷片40を、薄く平たいフレーク状に削ることができるためと考えられる。ここで、薄く平たいフレーク状とは、最も表面積が大きい面の短辺および長辺よりも、厚みが小さいことをいう。なお、氷片40は、薄く平たいフレーク状の形状であれば特に限定されないが、一例として、平面の面積が30mm以上、50mm以上、100mm以上、または、300mm以上、かつ、500mm以下、400mm以下、300mm以下であり、厚みが3mm以下、または2mm以下、あるいは1mm以下である形状が例示される。また、別の観点からは、フレーク状とは、氷片の平面の面積と厚みとの比(平面の面積/厚み)が30以上、100以上、300以上となる形状を例示することもできる。なお、氷片40のフレーク状の形状は、直尺やマイクロメーターなどの測定機器を用いて直接測ることができる。また、氷片40は、全てがフレーク状の形状でなくてもよく、一部(たとえば氷片全体の10%以上、あるいは50%以上)がフレーク状の形状を有している構成とすることもできる。これにより、氷片40は、ふわふわとした状態の形状となり、氷片40の全体の表面積を大きくすることができるため、氷片40を、短時間で溶融することができ、また、食品全体を均一に解凍・加熱することが可能となる。
【0017】
また、氷片40は、糖類に加えて、あるいは、糖類に代えて、食塩、旨味成分、および/または、食酢を含有する構成とすることもできる。氷片40が食塩、旨味成分、および/または、食酢を含有する場合、氷片40を、細かいパウダー状の形状とすることができ、この場合も、氷片40の全体の表面積を大きくすることができる。すなわち、食塩、旨味成分、および/または、食酢を含有する氷を削った場合、単に水だけの氷を削った氷片と比べて、粒の大きさが小さくなるため、氷片40の全体の表面積を大きくすることができ、氷片40を短時間で溶融させることができ、また、食品全体を均一に解凍・加熱することが可能となる。ここで、パウダー状の形状とは、フレーク状の形状と異なり、外縁が実質的に球体(楕円体を含む)といえる形状のことをいう。なお、食塩を含む氷片40は、平均粒径が0mmよりも大きい、0.1mm以上、または0.5mm以上、かつ、3mm以下、2mm以下、あるいは1mm以下である構成が例示される。なお、氷片40のパウダー状の形状も、直尺やマイクロメーターなどの測定機器を用いて直接測ることができる。また、氷片40は、全てがパウダー状の形状でなくてもよく、一部(たとえば氷片全体の10%以上、あるいは50%以上)がパウダー状の形状を有している構成とすることもできる。
【0018】
このように、本実施形態に係る氷片40は、少なくても糖類、食塩、旨味成分または食酢を含有する構成とすることで、薄く平たいフレーク状の形状、あるいは、パウダー状の形状とすることができ、単に水だけの氷を削った粒状の氷片と比べて、氷片40全体の表面積を大きし、短時間で溶融させることができ、その結果、食品全体を均一に解凍・加熱することが可能となる。
【0019】
また、本実施形態に係る氷片40は、以下の問題を解決することが可能となる。すなわち、氷片40は、糖類、食塩、旨味成分または食酢を含有する氷を刃で削ることで製造され、製造した氷片40は、ベルトコンベアなどの搬送装置を用いて回収される。ここで、氷片40が含む成分の種類やその濃度によっては、氷が硬く氷を削る効率が低下してしまう、あるいは、氷片40が、氷を削るための刃やベルトコンベアに付着してしまい作業効率が低下してしまうという問題が生じることがわかった。また、製造した氷片40は、たとえば、作業者により、10℃程度の室温の作業室で盛り付けられる場合があり、氷片40が含む成分の種類やその濃度によっては、このような室温において、氷片40が短い時間で溶け始めてしまうという問題があることがわかった。
【0020】
そこで、発明者は、鋭意研究を行い、電子レンジによる解凍・加熱時間を短縮することができることに加えて、上記の問題を解決できる氷片40、言い換えると、削りやすい、刃やベルトコンベアに付着しにくい、あるいは、10℃程度の温度において溶けにくい、氷片40を創作した。以下においては、氷片40の性質のうち、氷を削りやすい性質を「削りやすさ」、刃などに付着しにくい性質を「付着しにくさ」、10℃程度の室温で溶けにくい性質を「溶けにくさ」として説明する。
【0021】
上記問題を解決するために、本実施形態に係る氷片40は、糖類を含有する場合には、糖類を15質量%未満、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下の濃度で含有する。なお、氷片40は、糖類を0質量%よりも高い濃度で含有し、たとえば、糖類を0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、もしくは、3.0質量%以上の濃度で含有する構成が例示される。氷片40は、糖類を一定の濃度で含有することで、後述する実施例で説明するように、氷片40に、「削りやすさ」、「付着しにくさ」および「溶けにくさ」という性質を付与することができる。
【0022】
また、氷片40は、食塩を含有する場合には、食塩を5質量%未満、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下の濃度で含有する。また、氷片40は、食塩を0質量%よりも高い濃度で含有し、たとえば、食塩を0.1質量%以上、0.3質量%以上、もしくは0.5質量%以上の濃度で含有する構成が例示される。氷片40は、食塩を一定の濃度で含有することで、後述する実施例で説明するように、氷片40に、「削りやすさ」、「付着しにくさ」および「溶けにくさ」という性質を付与することができる。
【0023】
同様に、氷片40は、グルタミン酸ナトリウムなどの旨味成分を含有する場合には、旨味成分を好ましくは10質量%未満、より好ましくは5質量%以下の濃度で含有する。また、氷片40は、旨味成分を0質量%よりも高い濃度で含有し、たとえば、旨味成分を0.1質量%以上、1.0質量%以上、もしくは、3.0質量%以上の濃度で含有する構成が例示される。さらに、氷片40は、食酢を含有する場合には、食酢を15質量以下の濃度で含有する。また、氷片40は、食酢を0質量%よりも高い濃度で含有し、たとえば、食酢を0.1質量%以上、1.0質量%以上、3.0質量%以上、もしくは5.0質量%以上の濃度で含有する。氷片40は、旨味成分または食酢を一定の濃度で含有することで、後述する実施例で説明するように、氷片40の「削りやすさ」、「付着しにくさ」および「溶けにくさ」という性質を向上することができる。
【0024】
次に、本実施形態に係る冷凍食品1の製造方法について説明する。図2は、本実施形態に係る冷凍食品1の製造方法を示すフローチャートである。図2に示すように、まず、ステップS101では、茹でた麺20の冷凍が行われる。また、ステップS102では、具材30の調理が行われる。さらに、ステップS103では、氷片40の製造が行われる。
【0025】
ここで、ステップS103の氷片40の製造について説明する。具体的には、まず、作業者により、氷片40を製造するための調味用スープの製造が行われる。この調味用スープは、解凍時に、同じく解凍した冷凍調味液10と混ざり合うことで冷凍食品1のスープ(たとえば、味噌ラーメンのスープなど)を構成するものであり、少なくとも糖類、食塩、旨味成分、および/または食酢が含有される。また、この調味用スープにおいて、糖類を含有させる場合には、糖類は0質量%よりも多く、かつ、10質量%以下で含有することが好ましい。同様に、この調味用スープにおいて、食塩を含有させる場合には、食塩は0質量%よりも多く、かつ、3質量%以下で含有することが好ましく、旨味成分を含有させる場合には、旨味成分は0質量%よりも多く、かつ、10質量%以下で含有することが好ましく、食酢を含有させる場合には、食酢は0質量%よりも多く、かつ、15質量%以下で含有することが好ましい。さらに、糖類と食塩とを含有させる場合には、糖類は0質量%よりも多くかつ5質量%以下で含有するとともに、食塩は0質量%よりも多くかつ1質量%以下で含有することが好ましい。そして、調合した調味用スープを冷凍し、専用の刃で削り、氷片40が製造される。なお、製造された氷片40は、ベルトコンベアにより回収される。
【0026】
ステップS104では、冷凍調味液10の製造が行われる。具体的には、作業者は、まず、冷凍調味液10を凍らす前の調味液を製造する。ここで、冷凍調味液10は、解凍時に氷片40と混ざり合い冷凍食品1のスープを構成するものであり、本実施形態では、氷片40に糖類、食塩、旨味成分、および/または食酢を含有するため、冷凍調味液10を冷凍する前の調味液では、糖類、食塩、旨味成分、および/または食酢が、最終的にスープに含まれる糖類、食塩、旨味成分、および/または食酢から、氷片40に含まれる糖類、食塩、旨味成分、および/または食酢を差し引いた濃度に調整される。
【0027】
そして、ステップS105では、容器本体21に、まず、冷凍調味液10が配置され、その上に麺20および具材30が配置され、最後に氷片40がトッピングされて、容器蓋22が付けられる。なお、本実施形態では、10℃程度のトッピング室において、上記トッピングが行われる。そして、ステップS106では、容器2ごと、冷凍食品1の凍結が行われ、冷凍食品1が製造されることとなる。
【実施例
【0028】
次に、本発明の実施例について説明する。本実施例では、糖類、食塩、ラード、旨味成分(グルタミン酸ナトリウム)、食酢を氷片40に添加した場合の、氷片40の「削りやすさ」、「付着しにくさ」および「溶けにくさ」を検証した。
【0029】
(実施例1)
実施例1では、水のみ、砂糖、食塩、ラード、みりん、グルエース(登録商標、グルタミン酸ナトリウムの商品名)、食酢を添加した氷片40の「削りやすさ」、「付着しにくさ」および「溶けにくさ」について検証した。図3は、実施例1において、水、砂糖、食塩、ラード、みりん、グルエース、食酢を添加した氷片を撮像した画像である。また、図4は、実施例1の(A)~(S)に示す氷片の「削りやすさ」、「付着しにくさ」および「溶けにくさ」の評価結果を示した表である。具体的に、図3および図4に示すように、実施例1では、(A)~(S)に示す氷片を、以下の成分および濃度で添加して製造した。
(A)水のみの氷片
(B)砂糖を5質量%の濃度で添加した氷片
(C)砂糖を10質量%の濃度で添加した氷片
(D)砂糖を15質量%の濃度で添加した氷片
(E)食塩を1質量%の濃度で添加した氷片
(F)食塩を3質量%の濃度で添加した氷片
(G)食塩を5質量%の濃度で添加した氷片
(H)ラードを0.1質量%の濃度で添加した氷片
(I)ラードを0.3質量%の濃度で添加した氷片
(J)ラードを0.5質量%の濃度で添加した氷片
(K)みりんを5質量%の濃度で添加した氷片
(L)みりんを10質量%の濃度で添加した氷片
(M)みりんを15質量%の濃度で添加した氷片
(N)グルエースを1質量%の濃度で添加した氷片
(O)グルエースを3質量%の濃度で添加した氷片
(P)グルエースを5質量%の濃度で添加した氷片
(Q)食酢を5質量%の濃度で添加した氷片
(R)食酢を10質量%の濃度で添加した氷片
(S)食酢を15質量%の濃度で添加した氷片
なお、実施例1では、各成分を上記濃度で調整した水溶液を、かき氷用のプラスチック容器約180mLに入れて、急速冷凍装置(3Dブラスター(登録商標))を用いて-40℃で1時間冷凍して氷を製造し、製造した氷を市販のかき氷機(ドウシシャ製、電動ふわふわとろ雪かき氷器)を用いて削り、氷片を製造した。また、使用したかき氷機は、刃の角度は一定のまま刃の高さを調整可能となっており、実施例1では、調整可能な範囲で最も「細かい」となるようにダイヤル調整して、氷片の厚みが2~4mmとなるように氷を削った。
【0030】
まず、氷片の「削りやすさ」について説明する。「削りやすさ」とは、氷が柔らかいなどの理由で、かき氷器において刃を最も細かい氷片を削る設定とした場合でも削れるかを示す指標であり、図4に示す表においては、(A)に示す水のみの氷片を基準として、基準よりもかなり削りやすい場合に「◎」、基準よりも削りやすい場合に「〇」、基準と同程度であるもしくは凝固点降下により氷片として成り立ちにくかった場合に「△」、凝固点降下により氷片として成り立たなかった場合に「×」と評価した。なお、「削りやすさ」が削りやすい氷のほうが、削りにくい氷と比べて、効率的に氷片を製造することができることとなる。図4に示すように、(B)に示す砂糖を5質量%添加した場合、および、(L),(M)に示すみりんを10質量%または15質量%添加した場合には、比較的柔らかい氷となり、氷を容易に削ることができた。また、(B)、(L),(M)では、氷片を薄く平たいフレーク状に削ることができた。また、(C)に示す砂糖を10質量%添加した場合、(E)に示す食塩を1質量%添加した場合、(K)に示すみりんを5質量%添加した場合、(N)に示すグルエースを10質量%以下で添加した場合、および、(Q)~(S)に示す食酢を15質量%以下で添加した場合も、(A)に示す水のみの氷と比べて、氷は削りやすかった。一方で、(D)に示す砂糖を15質量%添加した場合、(F)に示す食塩を3質量%添加した場合は、凝固点降下により氷片として成り立ちにくくなり、また、(G)に示す食塩を5質量%添加した場合には、凝固点降下により氷片として成り立たなかった。なお、(H)~(I)に示すラードを添加した氷では、ラードと水とが分離してしまい、ラードが削りやすさに影響せずに、水と同様の削りやすさとなった。
【0031】
このように、砂糖(みりんを含む)や食塩では、濃度によって氷の削りやすさが変化し、濃度が高いほど氷が削りやすい傾向があることがわかった。特に、(B)に示す砂糖を5質量%添加した場合、および、(L),(M)に示すみりんを10質量%または15質量%添加した場合では、比較的柔らかい氷となり、氷をフレーク状に容易に削ることができた。また、(C)に示す砂糖を10質量%添加した場合、(E)に示す食塩を1質量%添加した場合も、氷を削りやすいことがわかった。また、グルエースなどのグルタミン酸ナトリウムや食酢を添加した場合も、水のみの氷と比べて、氷は削りやすくなることがわかった。ただし、凝固点降下により一部が凍らずに溶けた状態が観察されたため、氷片として成り立つ濃度内に調整する必要がある。
【0032】
また、(A)~(S)に示す氷片を削った場合の、刃などへの「付着しにくさ」について、氷片の形状を目視で確認することで評価した。氷片の金属への付着は、氷片と金属とに静電相互作用が働くことが主な要因となり、粒状またはパウダー状の氷片では、フレーク状の形状の氷片と比べて、1つ1つの氷片が小さい(氷片の静電力が自重を上回りやすい)一方、複数の氷片が金属に隙間なく接することなるため、静電相互作用の影響を受けて付着しやすくなる。そのため、水のみの氷を削った米粒または砂粒の大きさの粒状の形状よりも、薄く平たいフレーク状の形状の氷片の方が、金属に付着しにくくなると評価できる。そこで、水のみの氷片を基準とし、氷片の形状が基準よりもかなりフレーク状の形状である場合に「◎」、基準よりもフレーク状の形状である場合に「○」、水と同程度の粒状やそれより細かいパウダー状の氷片な場合に「△」、凝固点降下により氷片として成り立たないものを「×」として評価した。
【0033】
その結果、(B)および(C)に示す砂糖を5質量%または10質量%の濃度で添加した氷では、氷が柔らかくなり、薄く平たいフレーク状に削ることができ、「付着しにくさ」は「◎」との評価となった。また、(E)および(F)に示す食塩を1質量%または3質量%の濃度で添加した氷では、基準(水のみを凍らせた氷片)より細かいパウダー状の氷片となったため、「付着しにくさ」は「△」との評価となった。さらに、(D)に示す砂糖を15質量%の濃度で添加した氷、並びに、(G)に示す食塩を5質量%で添加した氷では、凝固点降下により氷片として成り立たなかったため、「付着しにくさ」は「×」との評価となった。なお、(H)~(J)に示すラードでは、濃度に係わらず、氷片は基準と同程度の粒状となったため、「付着しにくさ」は「△」の評価となった。また、(K)に示すみりんを5質量%の濃度で添加した氷では、基準と比べて、氷片がフレーク状になったことから、「付着しにくさ」は「〇」との評価となった。また、(L)に示すみりんを10質量%の濃度で添加した氷、および(M)に示すみりんを15質量%の濃度で添加した氷では、基準と比べて、氷片の形状がかなりフレーク状となり、「付着しにくさ」は「◎」との評価となった。さらに、(N)~(P)に示すグルエースを5質量%以下の濃度で添加した氷、および、(J)~(L)に示す食酢を15質量%以下の濃度で添加した氷については、基準より細かいパウダー状の氷片となったため、「付着しにくさ」は「△」との評価となった。
【0034】
このように、(A)~(S)に示す氷片のうち、水のみの(A)に示す氷片、および、ラードを添加した(H)~(J)に示す氷片では、ジャリジャリとした米粒大または砂粒大の粒状の氷片が得られた。一方で、砂糖を添加した(B)~(D)に示す氷片、および、(K)~(M)に示すみりんに示す氷片では、薄く平たいフレーク状の氷片が得られた。また、食塩を添加した(E)~(G)に示す氷片、(N)~(P)に示すグルエースを添加した氷片、および、(Q)~(S)に示す食酢を添加した氷片では、細かいパウダー状の氷片が得られた。
このことから、砂糖、食塩、みりん、グルタミン酸ナトリウムなどの旨味成分、食酢を添加した場合には、水のみの(A)に示す氷片、または、ラードを添加した(H)~(J)に示す氷片と比べて、氷片全体の表面積を大きくすることができ、これにより、氷片を、電子レンジを用いて短時間で溶融させることができ、また、食品全体を均一に解凍・加熱することができるが、氷片が粒状で、かつ、小さいため、刃などへの「付着しにくさ」は低い評価となった。
さらに、(B)および(C)に示す砂糖を5質量%または10質量%の濃度で添加した氷片、および、(E)および(F)に示すみりんを10質量%または15質量%の濃度で添加した氷片では、氷が柔らかくなり、薄く平たいフレーク状に削ることができ、「付着しにくい」氷片ができることが分かった。
ただし、(D)に示す砂糖を15質量%の濃度で添加した氷片、および、(G)に示す食塩を5質量%の濃度で添加した氷片では、一部が凍らずに溶けた状態が観察されたため、砂糖を添加する場合は15質量%未満の濃度とすることが好ましく、食塩を添加させる場合には5質量%未満の濃度とすることが好ましいことが分かった。
【0035】
次に、(A)~(S)に示す氷片の、製造工程での「溶けにくさ」について検証した。すなわち、製造工程においては、作業者が作業する環境(たとえば10℃程度の温度環境)で、作業者により、冷凍食品1の容器2に、冷凍調味液10、冷凍した麺20、具材30、氷片40が順にトッピングされる場合がある。そのため、このような環境において、氷片40が溶けにくいことが好ましい。本実施例1では、(A)~(S)に示す氷片を、約108mLのプラスチック容器に満杯に入れ、10℃の温度下で静置した場合の、融解を開始するまでの融解開始時間、および完全に融解するまでの完全融解時間を測定した。図5は、実施例1における(A)~(S)の氷片の融解開始時間および完全融解時間を示すグラフである。また、図5に示す例では、既存の冷凍食品である味噌ラーメンのスープ(Brix4.9、塩分0.2%)を比較例として例示するとともに、上記味噌ラーメンのスープを基準として「溶けにくさ」、すなわち、融解開始時間および完全融解時間を評価した。なお、以下においては、味噌ラーメンのスープでの融解開始時間および完全融解時間を、それぞれ、融解開始時間および完全融解時間の基準として説明する。
【0036】
図5に示すように、砂糖を添加した(B)~(D)の氷片では、濃度が高くなるほど融解開始時間が短くなり、また、砂糖の濃度が5質量%の(B)では、砂糖の濃度が10質量%および15質量%の(C)および(D)と比べて、完全融解時間が1時間以上長くなった。このことから、砂糖の濃度は低いほど融解開始時間は長くなり、砂糖の濃度を5質量%以下とすることで、基準に対して、完全融解時間も長くすることができることが分かった。さらに、食塩を添加した(E)~(G)の氷片でも、濃度が低くなるほど、融解開始時間および完全融解時間が長くなり、基準よりも溶け始める時間を長くするためには、食塩濃度は3質量%以下とすることが好ましく、1質量%以下とすることがより好ましいことが分かった。なお、(H)~(J)のラードについては、濃度にかかわらず、凍らせた味噌ラーメンのスープの氷片と比べて、融解開始時間および完全融解時間は長くなった。また、(K)~(M)のみりんを添加した氷片では、基準と比べて、融解開始時間が長くなり、また、(K)および(L)に示すみりんが10質量%以下である氷片では、完全融解時間も基準と比べて短くなった。また、(N)および(O)に示すグルエースを5質量%以下の濃度で添加した氷片、並びに、(Q)~(S)に示す食酢を15質量%以下の濃度で添加した氷片でも、基準と比べて、融解開始時間が長くなり、さらに(Q)~(S)に示す食酢を15質量%以下の濃度で添加した氷片では、完全融解時間も基準と比べて長くなった。
【0037】
このように、砂糖および食塩については、濃度が高くなるほど「溶けにくさ」が低下してしまう(溶けやすくなってしまう)ことが分かった。これは、凝固点降下に起因する現象であると考えられる。また、砂糖と食塩とを比べた場合、食塩の方が「溶けにくさ」が低下してしまうことが分かった。これは、砂糖に比べて、食塩では、イオン化して水に溶けやすいことに加えて、凝固点降下がモル濃度と相関するところ、食塩は分子量が小さくモル濃度が高くなり、その分、凝固点降下が生じるためと考えられる。このように、氷片40が含有する砂糖および食塩の濃度は、高くなり過ぎてしまうと、氷片の「付着しにくさ」(凝固点降下により凍らないため)および「溶けにくさ」という性質にとってマイナスとなるため、一定値以下に制限することが好ましい。具体的には、実施例1の結果から、氷片40は、糖類を15質量%未満、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下の濃度で含有させることが好ましく、食塩を5質量%未満、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下の濃度で含有させることが好ましいことが分かった。また、砂糖と食塩とを混合する場合には、食塩に比べて、砂糖は比較的高い濃度であっても「付着しにくさ」および「溶けにくさ」は良好なため、砂糖に対して食塩の濃度は低くすることが好ましく、食塩の濃度を低くしたまま、砂糖の濃度を調整することが望ましい。なお、食塩と砂糖とを混合した実施例(実施例2)については後述する。
また、みりんについては15質量%以下の濃度とすることで、旨味成分については10質量%未満の濃度とすることで、食酢については15質量%以下の濃度とすることで、基準(味噌ラーメンのスープ(Brix4.9、塩分0.2%))よりも、氷片40の「付着しにくさ」および「溶けにくさ」(特に、融解開始時間に基づく「溶けにくさ」)を向上させることができることがわかった。
【0038】
(実施例2)
実施例2では、砂糖および食塩を添加した氷片40の、「付着しにくさ」および「溶けにくさ」を検証した。ここで、図6は、実施例2において、砂糖と食塩とをそれぞれ異なる濃度で添加した氷片を撮像した画像である。具体的には、図6に示すように、実施例2では、(A)~(I)に示す氷片を、以下の成分および濃度で添加して製造した。
(A)砂糖5質量%と食塩1質量%とを混合した氷片
(B)砂糖10質量%と食塩1質量%とを混合した氷片
(C)砂糖15質量%と食塩1質量%とを混合した氷片
(D)砂糖5質量%と食塩3質量%とを混合した氷片
(E)砂糖10質量%と食塩3質量%とを混合した氷片
(F)砂糖15質量%と食塩3質量%とを混合した氷片
(G)砂糖5質量%と食塩5質量%とを混合した氷片
(H)砂糖10質量%と食塩5質量%とを混合した氷片
(I)砂糖15質量%と食塩5質量%とを混合した氷片
なお、実施例2でも、実施例1と同様に、各成分を上記濃度で調整した(A)~(I)の水溶液を、かき氷用のプラスチック容器約180mLに入れて、急速冷凍装置(3Dブラスター(登録商標))を用いて-20℃で冷凍して氷を製造し、製造した氷を市販のかき氷機(ドウシシャ製、電動ふわふわとろ雪かき氷器)を用いて削り、氷片を製造した。また、実施例2でも、実施例1と同様に、調整可能な範囲で最も「細かい」となるようにダイヤル調整して、氷片の厚みが2~4mmとなるように氷を削った。
【0039】
図6に示すように、(A)~(F)に示す氷片では、氷片を、薄く平たいフレーク状に削ることができ、水のみの氷片と比べて、「削りやすさ」および「付着しにくさ」が良好となることが分かった。一方で、(G)~(I)に示す食塩を5質量%の濃度で添加した氷片では、氷片の一部が融解してしまい、水のみの氷片と比べて、「削りやすさ」および「付着しにくさ」が悪化してしまうことが分かった。
【0040】
さらに、実施例2の(A)~(I)に示す氷片について、約108mLのプラスチック容器に入れて、10℃の温度下で静置した場合の融解開始時間および完全融解時間を測定した。図7は、実施例2における(A)~(I)の氷片の融解開始時間および完全融解時間を示すグラフである。図7に示すように、(A)~(I)の砂糖および食塩を添加した氷片では、(A)の砂糖5質量%と食塩1質量%とを混合した氷片で、基準(味噌ラーメンのスープ)よりも融解開始時間および完全融解時間は長くなったが、(B)~(I)においては、基準よりも融解開始時間および完全融解時間は短くなった。このように、砂糖と食塩とを混合した氷片では、砂糖だけ、または、食塩だけを添加した氷片と比べて、融解開始時間および完全融解時間は短くなる傾向にあることが分かった。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る冷凍食品1は、氷片40と、冷凍された調味液10とを有し、氷片40は糖類、食塩、旨味成分、または食酢を含有することで、水のみを凍らせた氷から作った比較的大きな粒状(米粒または砂粒状の大きさの粒)の氷片と比べて、氷片40の形状を、薄く平たいフレーク状の形状、または、細かいパウダー状の形状とすることができ、氷片40全体の表面積を大きくすることができるため、電子レンジによる解凍・加熱時間をより短縮することができ、食品全体を均一に解凍・加熱することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る冷凍食品1では、氷片40において、糖類を含有させる場合には、糖類を10質量%以下で含有させ、食塩を含有させる場合には、食塩を3質量%以下で含有させ、旨味成分を含有させる場合には、旨味成分を10質量%以下で含有させ、食酢を含有させる場合には、食酢を15質量%以下で含有させることで、氷片40の「付着しにくさ」および「溶けにくさ」を高めることができ、電子レンジによる解凍・加熱時間をより短縮することができながらも、「付着しにくさ」および「溶けにくさ」を有する氷片40を提供することができる。なお、氷片40は、みりん、調理酒、醤油、味噌などを含むことができ、この場合、みりん、調理酒、醤油、味噌にそれぞれ含まれる糖類や食塩の含有量を求め、氷片40における糖類や食塩の含有量を上記濃度に調整することができる。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0044】
たとえば、上述した実施形態では、糖類、食塩、旨味成分、または食酢のみを添加した氷片40、または、糖類、食塩、旨味成分および食酢のうち2以上を組み合わせて添加した氷片40を含有する冷凍食品1を例示して説明したが、この構成に限定されず、たとえば、糖類、食塩、旨味成分、または食酢のみを添加した第1の氷片40と、第1の氷片40に添加していない糖類、食塩、旨味成分および食酢のうちの1以上を添加した第2の氷片40とを混ぜて(氷片40の状態で混ぜ合わせて、あるいは、2層として)トッピングすることで、冷凍食品1を製造することができる。
また、実施例では、かき氷機を用いてフレーク状の氷片40を製造したが、これとは異なり、製氷機に備え付けられたリーマで割氷し、製氷機に備え付けられたスクレーパーで製氷面から剥落し、粉砕することにより、フレーク状の氷片40を得てもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…冷凍食品
2…容器
21…容器本体
22…容器蓋
3…食品
10…冷凍調味液
20…麺
30…具材
40…氷片
【要約】
【課題】電子レンジによる解凍・加熱時間を短縮することができ、食品全体を均一に解凍・加熱することができる冷凍食品および冷凍食品の製造方法を提供する。
【解決手段】冷凍された第1の調味液と、第2の調味液の氷片と、を有する冷凍食品であり、前記氷片は、糖類、食塩、旨味成分、または食酢を含有する、冷凍食品。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7