(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】容器用蓋材および包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 77/20 20060101AFI20240118BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240118BHJP
B32B 15/085 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B65D77/20 M
B65D65/40 D
B32B15/085 A
(21)【出願番号】P 2018240977
(22)【出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】羽野 隆之
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-150444(JP,A)
【文献】特開2003-221055(JP,A)
【文献】特開2017-178428(JP,A)
【文献】特開2017-095142(JP,A)
【文献】特開2013-107676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00-79/02
B65D 65/00-65/46
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が充填された容器と、前記容器の開口を覆うように前記容器の開口縁部に熱封緘された容器用蓋材とを備えている包装体であって、
前記容器用蓋材が、アルミニウム箔層と、前記容器用蓋材の最内層となされるホットメルト樹脂層およびポリオレフィン樹脂からなる接着介在層を含む2以上の樹脂層によって構成された熱封緘層と、前記アルミニウム箔層と前記熱封緘層との間に介在されている強化樹脂層と、前記アルミニウム箔層における前記熱封緘層と反対側の面に積層されている保護樹脂層とを備えている積層体からなり、
前記ホットメルト樹脂層が、少なくとも一種のポリオレフィン樹脂:5~50質量%、エチレン酢酸ビニル共重合体:10~30質量%、融点が
75~115℃であるワックス:25~55質量%、軟化点が120~160℃である粘着付与剤:15~30質量%を含有しており、
前記接着介在層が10~40μmの厚みを有しており、
前記強化樹脂層が、ポリエステル樹脂よりなる単層または複層のフィルムによって構成されかつ5~20μmの厚みを有するものであって、前記アルミニウム箔層における前記熱封緘層側の面に接着剤層を介して積層されており、
また、前記容器用蓋材は、周縁部分が前記容器の開口縁部の上面に熱封緘されている平坦な頂壁部と、前記頂壁部の周縁部分から下方にのびかつ高さの一部が前記容器の開口縁部の外側面に熱封緘されているスカート部とを備えている、包装体。
【請求項2】
前記ホットメルト樹脂層の融点が70~85℃である、請求項1記載の
包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内容物として飲料や食品等が充填された容器の開口縁部に熱封緘されて内容物を密封包装するために用いられる容器用蓋材、および、同蓋材を容器と共に使用して飲料、食品等の内容物を密封包装してなる包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば清涼飲料、乳飲料、野菜ジュース、スムージー、スープ等の飲料やゼリー、プリン、ヨーグルト等の半固形食品を充填包装するための容器として、熱可塑性樹脂製のカップやパウチが一般に用いられている。
特にカップは、食器としての機能も持ち合わせているため、多くの食品用容器に利用されている。カップよりなる食品用容器の場合、内容物を充填した後に、同容器の開口縁部に蓋材を熱封緘することによって封止を行う。蓋材の最内層を構成する熱封緘層には、シール部からの内容物の漏出の発生を防止するため、比較的シール性の高い熱接着性樹脂が用いられている。
このような熱接着性樹脂としては、価格や取扱容易性からホットメルト接着剤が多く用いられており、ホットメルト接着剤について種々の提案がなされている。
例えば下記の特許文献1には、230℃、21.18Nにおけるメルトフローレートが1~50g/10分の範囲のオレフィン系ポリマー(A):5~45質量%、融点が70℃以上、150℃以下、25℃で100gの荷重を5秒間かけたときの針進入度が0.2~9であるワックス(B):5~30質量%、および融点が40℃以上、70℃未満、100℃におけるセイボルトユニバーサル粘度が0.5~8秒であるワックス(C):35~75質量%を含み(但し、前記(A)~(C)の合計を100質量%とする)、前記ワックス(B)の融点と前記ワックス(C)の融点との差が20℃以上であり、前記ワックス(B)と前記ワックス(C)との合計が55~95質量%である、熱溶融性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、食品や飲料を内容物とする包装体は、一般に冷蔵庫内等の低温下で保存されるため、低温下でのシール性が求められることは当然であるが、常温下で内容物を充填密封した後に加熱して加工する場合や、また、内容物が発酵食品である場合もある。
このような場合、密閉された包装体の内部において、温度変化あるいは発酵食品からのガスの発生によって内圧が変化し、それによってシール後退、すなわちシール部の剥離が進行し、ひいては内容物が漏出することがあった。
しかしながら、従来の容器用蓋材の場合、包装体の内圧の変化によるシール後退を確実に防止することが困難であった。
【0005】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、包装体の内圧の変化によるシール後退を確実に防止することができる容器用蓋材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0007】
1)内容物が充填された容器の開口を覆うように前記容器の開口縁部に熱封緘される容器用蓋材であって、
アルミニウム箔層と、前記容器用蓋材の最内層となされるホットメルト樹脂層を含む2以上の樹脂層によって構成された熱封緘層とを備えている積層体からなり、
前記ホットメルト樹脂層が、エチレン酢酸ビニル共重合体:10~30質量%、融点が55~115℃であるワックス:25~55質量%、軟化点が120~160℃である粘着付与剤:15~30質量%を含有している、容器用蓋材。
【0008】
2)前記ホットメルト樹脂層の融点が70~85℃である、前記1)の容器用蓋材。
【0009】
3)前記積層体が、前記アルミニウム箔層と前記熱封緘層との間に介在されている強化樹脂層と、前記アルミニウム箔層における前記熱封緘層と反対側の面に積層されている保護樹脂層とを備えている、前記1)または2)の容器用蓋材。
【0010】
4)前記熱封緘層を構成している前記2以上の樹脂層が、ポリオレフィン樹脂からなる接着介在層を含んでいる、前記1)~3)のいずれか1つの容器用蓋材。
【0011】
5)内容物が充填された容器と、前記容器の開口を覆うように前記容器の開口縁部に熱封緘された前記1)~4)のいずれか1つの容器用蓋材とを備えている、包装体。
【0012】
6)前記容器用蓋材が、周縁部分が前記容器の開口縁部の上面に熱封緘されている平坦な頂壁部と、前記頂壁部の周縁部分から下方にのびかつ高さの一部が前記容器の開口縁部の外側面に熱封緘されているスカート部とを備えている、前記5)の包装体。
【0013】
ここで、前記ワックスの融点および前記ホットメルト樹脂層の融点は、示差走査熱量計(DSC)により10℃/分の条件で測定したものをいう。
また、前記粘着付与剤の軟化点は、JIS K6863(1994)の規定に準拠して測定したものをいう。
【発明の効果】
【0014】
前記1)の容器用蓋材によれば、ホットメルト樹脂層として前記組成を有するものを使用しているので、同蓋材を内容物が充填された容器の開口縁部に熱封緘することにより形成された包装体の内圧が、熱封緘の直後から容器の変形等により変化した場合でも、シール後退が発生し難い。
【0015】
前記2)の容器用蓋材によれば、ホットメルト樹脂層の融点が70~85℃であるため、シール温度が低温でもシール性がよく、さらに熱封緘の直後に容器の変形等により包装体の内圧が上昇した場合でも、シール後退が発生し難い。
【0016】
前記3)の容器用蓋材によれば、強化樹脂層および保護樹脂層の存在によって強度が向上するので、包装体の内圧や外圧に変化が生じた場合でも、蓋材が破れて内容物が漏出し難くなる。
【0017】
前記4)の容器用蓋材によれば、熱封緘層がポリオレフィン樹脂からなる接着介在層を含むことで、一般的に用いられるポリスチレン樹脂などの樹脂からなる容器や、紙やアルミニウム箔と樹脂層との積層体を成形してなる容器とのシール性が良くなるため、包装体の内圧が上昇した場合でも、シール後退が発生し難い。
【0018】
前記5)の包装体によれば、熱封緘の直後に容器の変形等によりその内圧が変化した場合でも、容器用蓋材にシール後退が発生し難いので、シール後退に起因する内容物の漏出を確実に防止することができる。
【0019】
前記6)の包装体によれば、容器用蓋材における蓋本体部の熱封緘層の溶融した樹脂の一部が容器の開口縁部の外側面に回り込み、それによってスカート部の高さの一部も容器の開口縁部に熱封緘されてシール面積が増えるため、シール後退が発生しても密閉性が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明の実施形態に係る容器用蓋材を構成する積層体の層構造を示す部分拡大断面図である。
【
図2】同積層体から形成された容器用蓋材を示すものであって、(a)は一部を切り欠いた正面図、(b)は平面図である。
【
図3】同容器用蓋材を使用した包装体を示す垂直断面図である。
【
図4】実施例のクリープ試験の方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態を、
図1~
図3を参照して説明する。
【0022】
図1は、この発明による容器用蓋材(3)を構成する積層体(シート)(30)の層構造を示すものである。
図示の積層体(30)は、アルミニウム箔層(31)と、熱封緘層(32)と、アルミニウム箔層(31)と熱封緘層(32)との間に介在されている強化樹脂層(33)と、アルミニウム箔層(31)における熱封緘層(32)と反対側の面に積層されている保護樹脂層(34)とを備えている。
【0023】
アルミニウム箔層(31)は、蓋材(3)にガス、水分、光等に対するバリア性を付与するバリア層として機能するものである。
アルミニウム箔層(31)を構成するアルミニウム箔としては、加工性や汎用性を考慮して、JIS H4160(2006)に規定されたA1N30、A8021、A8079等の軟質材(O材)が好適に用いられる。
アルミニウム箔層(31)の厚みは、成形性やピンホール発生率等を考慮すると、5~40μm程度となされるのが好ましい。
アルミニウム箔層(31)の両面には、化成処理皮膜よりなる下地層(図示略)が形成されているのが好ましい。このような下地層があれば、アルミニウム箔層(31)と強化樹脂層(33)および保護樹脂層(34)との接着性が向上し、また、アルミニウム箔層(31)の耐食性が向上する。
具体的には、例えば、脱脂処理を行ったアルミニウム箔層(31)の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施して、皮膜を形成する。
前記化成処理によりアルミニウム箔層(31)の表面に形成される皮膜、すなわち、下地層は、クロム付着量(片面当たり)を0.1mg/m2~50mg/m2とするのが好ましく、特に、2mg/m2~20mg/m2とするのが好ましい。
【0024】
熱封緘層(32)は、容器用蓋材(3)を容器(2)の開口縁部(21)に熱封緘するためのものである。この実施形態において、熱封緘層(32)は、2つの樹脂層(321)(322)よりなり、その一方は容器用蓋材(3)の最内層を構成するホットメルト樹脂層(321)であり、他方はポリオレフィン樹脂からなる接着介在層(322)である。
【0025】
ホットメルト樹脂層(321)としては、少なくとも一種のポリオレフィン樹脂5~50質量%、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA):10~30質量%、融点が55~115℃であるワックス:25~55質量%、軟化点が120~160℃である粘着付与剤:15~30質量%を含有しているものが用いられる。このような組成を有するホットメルト樹脂層(321)を使用すれば、後述するように、容器用蓋材(3)を容器(2)と共に使用して得られた包装体(1)の内圧が変化した場合でも、シール後退が発生し難いという効果が得られる。
ポリオレフィン樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン等の単独重合体、エチレンとプロピレン、1-ブテン等のオレフィンとの共重合体などが挙げられる。
ワックスとしては、例えばパラフィンワックス、モンタンワックス、エチレンワックス、プロピレンワックス、ポリエチレン・ポリプロピレン共重合物にスチレンがグラフトした変性ワックスなどが挙げられる。
粘着付与剤(タッキファイヤー)としては、ロジン、不均化ロジンなどのロジン類、ロジン類とグリコール、グリセリンおよびペンタエリスリトールなどの多価アルコールとのエステル、テルペン、スチレンなどを構成モノマーとする炭化水素樹脂などが挙げられる。
また、ホットメルト樹脂層(321)は、融点が70~85℃であるのが好ましく、それによって、例えば熱封緘の直後に容器の変形等により包装体(1)の内圧が上昇した場合でも、シール後退が発生し難くなる。
ホットメルト樹脂層(321)は、例えば、グラビアロールを用いて調合した上記組成のホットメルト樹脂を、好ましくは12~16g/m2の目付量で接着介在層(322)の表面に塗工した後、乾燥硬化させることによって形成される。
【0026】
接着介在層(322)は、ホットメルト樹脂層(321)の層厚を均一化させるための下地として積層させる層であり、さらに熱封緘時には接着層としての機能も持たせるために、ホットメルト樹脂層(321)の融点と近い融点を持つ樹脂、例えばポリエチレン樹脂(PE)やその化合物のようなポリオレフィン樹脂によって構成されているのが好ましい。
接着介在層(322)の厚みは、ホットメルト樹脂層(321)の層厚を均一化するため、10~40μmであるのが好ましい。
【0027】
なお、熱封緘層(32)は、例えば上記ホットメルト樹脂層(321)のさらに外側に疎水性粒子を含む樹脂層などを積層することで3以上の樹脂層で構成されていてもよい。
【0028】
強化樹脂層(33)は、アルミニウム箔層(31)と熱封緘層(32)との間に介在されて、容器用蓋材(3)の強度、特に、包装体(1)の内圧や外圧の変化に対する強度を高めるものである。
強化樹脂層(33)は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等のポリエステル樹脂よりなる単層または複数層のフィルムによって構成され、アルミニウム箔層(31)の表面にウレタン樹脂系接着剤等よりなる接着剤層(図示略)を介してドライラミネートされる。
強化樹脂層(33)の厚みは、強度とスカート部(3b)の形状を維持するためのデッドホールド性を考慮し、5~20μmであるのが好ましい。
【0029】
保護樹脂層(34)は、容器用蓋材(3)の最外層を構成するものであって、同蓋材(3)を加飾・保護する機能を担うものである。
保護樹脂層(34)は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等のポリエステル樹脂フィルム、6ナイロン(PA6)、6,6ナイロン(PA66)等のポリアミド樹脂フィルム、二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(OPP)等の延伸ポリオレフィン樹脂フィルム等よりなる単層または複数層のフィルムや硝化綿、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる塗工膜であることが好ましい。
保護樹脂層(34)の厚みは、デッドホールド性とアルミニウム箔層(31)の耐腐食性を考慮し、2~25μmであるのが好ましい。
また、図示は省略したが、保護樹脂層(34)とアルミニウム箔層(31)との間に、印刷層が全面的または部分的に介在されていてもよい。
【0030】
図2は、上記積層体(30)から形成された容器用蓋材(3)を示すものである。
容器用蓋材(3)は、容器(2)の上方開口を被覆しうる形状および大きさを有する平坦な頂壁部(3a)と、頂壁部(3a)の周縁部分から下方にのびているスカート部(3b)とを備えている。
図示の容器用蓋材(3)では、頂壁部(3a)が円板状となされている。スカート部(3b)は、容器(2)の開口縁部(21)の外側面を覆うように垂下状に設けられている。
この容器用蓋材(3)は、上記積層体(30)を所定の形状および大きさにカットするとともに、プレス成形することによって形成することができる。スカート部(3b)には、縦方向にのびる多数のひだ(3c)が周方向に間隔をおいて形成されている。
【0031】
図3は、容器(2)と上記の容器用蓋材(3)とを使用して、飲料や食料等よりなる内容物(C)を密封包装してなる包装体(1)を示したものである。
容器(2)は、上方に開口したカップ状のものであって、例えば、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂成形品よりなる。なお、容器(2)の形状や材質は、上記に限定されるものではない。
包装体(1)は、内容物(C)が充填された容器(2)の開口縁部(21)に、容器用蓋材(3)が熱封緘されることにより形成されている。
より具体的に言うと、容器用蓋材(3)における頂壁部(3a)の周縁部分のホットメルト樹脂層(321)が、容器(2)の開口縁部(21)の上面に熱封緘されているとともに、容器用蓋材(3)におけるスカート部(3b)の上端側部分のホットメルト樹脂層(321)が、容器(2)の開口縁部(21)の外側面に熱封緘されている。
熱封緘の方法としては、容器用蓋材(3)のホットメルト樹脂層(321)および容器(2)の開口縁部(21)を熱板等によって熱溶着するものの他、超音波溶着や高周波溶着であってもよい。
【実施例】
【0032】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、この発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
[積層体の作製]
JIS H4160(2006)に規定されたA1N30-Oよりなる厚さ25μmのアルミニウム箔の片面に、強化樹脂層として厚さ9μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)を、ウレタン樹脂接着剤(層厚2μm)を介してドライラミネートした。
次いで、上記ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)の表面に、接着介在層としてポリエチレン樹脂(PE)を層厚20μmとなるように押出機によって熱ラミネートした。
そして、以下の表1の実施例1~4および比較例1~8の欄に示すようなポリオレフィン樹脂の量(質量%)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)の量(質量%)、ワックスの融点・量(質量%)、粘着付与剤の軟化点・量(質量%)、および融点を有しているホットメルト樹脂を用意し、各ホットメルト樹脂を、グラビアロールを用いて14g/m2の目付量でポリエチレン樹脂層(PE)の表面に塗工した。
最後に、上記アルミニウム箔の他面に、保護樹脂層としてニトロセルロース(硝化綿)を層厚5μmとなるように塗工した。
こうして、実施例1~4および比較例1~8の積層体を作製した。
また、ポリエチレン樹脂層(PE)を形成せず、それ以外は実施例4と同じ要領で積層体を作製し、これを比較例9とした。
【0034】
【0035】
[クリープ試験]
密封状態の包装体における内圧の変化が容器と蓋材とのシール部分に及ぼす影響について検証するため、同シール部分に一定応力をかけた時に時間の経過とともに起こる変形を以下のクリープ試験によって確認した。
図4を参照して、まず、上記実施例1~4および比較例1~9の各積層体を、幅15mm×長さ50mmの短冊状にカットして蓋材側試験体(A)を作製した。
また、容器側試験体(B)として、厚さ1mmのポリスチレン樹脂シートを幅15mm×長さ50mmの短冊状にカットしたものを用意した。
そして、蓋材側試験体(A)と容器側試験体(B)とを、これらの一端部(A1)(B1)どうしが長さ10mmずつ重なるように直列状に配置して、両試験体(A)(B)の重なった一端部(A1)(B1)どうしを、熱板を用いて、シール温度140℃、シール圧力0.3MPa、シール時間1秒の条件で熱融着した。
次に、容器側試験体(B)の他端部をチャック(D)によって保持固定しておいてから、45℃の環境下で、蓋材側試験体(A)の他端部に45gfの荷重(P)をかけ、両試験体(A)(B)のシール部分(A1)(B1)が剥離するまでの時間を計測した。なお、最大計測時間を60分とした。
結果は、上記表1のクリープ試験結果の欄に示す通りであって、「◎」は60分剥離しなかったもの、「○」は50分以上60分未満剥離しなかったもの、「×」は50分未満で剥離したものを指している。
表1の結果から明らかなように、実施例1~4では剥離までの時間が十分に長くなっており、これはシール部の変形量が少ないことを示している。従って、実施例1~4の積層体よりなる蓋材を用いた包装体によれば、内圧の変化に対してもシール後退が生じ難く、ひいてはシール部からの内容物の漏出が生じ難いと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、内容物として飲料や食品等が充填された容器の開口縁部に熱封緘されて内容物を密封包装するために用いられる容器用蓋材、および、同蓋材を使用して飲料、食品等の内容物を密封包装してなる包装体として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0037】
(1):包装体
(2):容器
(21):開口縁部
(3):容器用蓋材
(3a):頂壁部
(3b):スカート部
(30):積層体
(31):アルミニウム箔層
(32):熱封緘層
(321):ホットメルト樹脂層
(322):接着介在層
(33):強化樹脂層
(34):保護樹脂層
(C):内容物