(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】溶着された基材を製造するための方法、プロセス、及び装置
(51)【国際特許分類】
D02G 3/40 20060101AFI20240118BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20240118BHJP
A41D 31/04 20190101ALI20240118BHJP
D03D 15/587 20210101ALI20240118BHJP
D04B 1/14 20060101ALI20240118BHJP
D04B 21/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
D02G3/40
A41D31/00 502B
A41D31/00 502C
A41D31/04 B
D03D15/587
D04B1/14
D04B21/00 B
(21)【出願番号】P 2018550407
(86)(22)【出願日】2017-03-27
(86)【国際出願番号】 US2017024351
(87)【国際公開番号】W WO2017165891
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-03-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-15
(32)【優先日】2016-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518334912
【氏名又は名称】ナチュラル ファイバー ウェルディング インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ハベルハールス、ルーク、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】アンシュトゥツ、エロン、ケネス
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ジョンラック
(72)【発明者】
【氏名】タング、ジリアング
(72)【発明者】
【氏名】モルター、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ナル、スペンサー、ジェーコブ
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】久保 克彦
【審判官】八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第8202379(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 3/40 , A41D 31/00 502, A41D 31/04 , D03D 15/587 , D04B 1/14 , D04B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系の溶着された編織糸基材の製造方法であって
a.少なくとも2種の繊維をその中に有するセルロース系編織糸基材を提供する工程;
b.前記セルロース系編織糸基材にプロセス溶媒を適用してプロセス湿潤基材を作製する工程であって、前記プロセス溶媒は、前記セルロース系編織糸基材中のセルロースポリマーを膨潤及び可動化する能力があり、前記プロセス溶媒は、極性プロトン性溶媒とイオン液体との混合物であり、かつ前記プロセス溶媒の前記セルロース系編織糸基材に対する質量比は4:1以下である、工程;
c.少なくとも前記2種の繊維が互いに溶着されるように、少なくとも、前記プロセス溶媒が前記プロセス湿潤基材と相互作用する温度及び特定の持続時間を制御する工程であって、前記特定の持続時間は30秒以下であり、これにより前記少なくとも2種の繊維は互いに溶着される、工程;及び、
d.前記プロセス溶媒の少なくとも一部を前記プロセス湿潤基材から除去する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記セルロース系編織糸基材に前記プロセス溶媒が適用された後、前記基材が非直線的に移動するものとして更に定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロセス溶媒は、3-エチル-1-メチルイミダゾリウム酢酸塩を含むものとして更に定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記極性プロトン性溶媒は、水として更に定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プロセス溶媒は、80℃~120℃の温度で前記基材に適用されるものとして更に定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プロセス溶媒の少なくとも前記一部を前記プロセス湿潤基材から除去する前記工程は、再構成溶媒を介して実施されて再構成湿潤基材を製造するものとして更に定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プロセス溶媒の少なくとも前記一部を前記プロセス湿潤基材から除去する前記工程の後に、前記再構成湿潤基材を乾燥する工程を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プロセス溶媒を適用する前記工程は、インジェクタを介して実施されるものとして更に定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも前記プロセス溶媒が前記プロセス湿潤基材と相互作用する前記温度及び前記特定の持続時間を制御する前記工程の間の前記温度は、前記プロセス溶媒を適用する前記工程中の前記プロセス溶媒の最初の温度よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記プロセス溶媒は、ジメチルスルホキシドを含むものとして更に定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
編織糸を改良する方法であって、
a.セルロース系編織糸基材を提供する工程;
b.前記セルロース系編織糸基材にプロセス溶媒を適用してプロセス湿潤基材を製造する工程であって、前記プロセス溶媒は、極性プロトン性溶媒とイオン液体との混合物である、工程;
c.少なくとも、前記プロセス溶媒が前記プロセス湿潤基材と相互作用する温度及び特定の持続時間を制御する工程であって、前記特定の持続時間は30秒以下である、工程;及び、
d.前記プロセス溶媒の少なくとも一部を前記プロセス湿潤基材から除去して、前記セルロース系編織糸基材の少なくとも第1の繊維をその第2の繊維に溶着する工程
を含む、方法。
【請求項12】
前記溶着された基材のテナシティは、前記セルロース系基材の対応する機械的強度の10%よりも大きい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶着された基材の直径は、前記セルロース系基材の直径よりも少なくとも25%小さい、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記溶着された基材のテナシティは、前記セルロース系編織糸基材のテナシティよりも少なくとも20%大きい、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記溶着された基材のテナシティは、前記セルロース系編織糸基材のテナシティよりも少なくとも30%大きく、前記溶着された編織糸基材は、少なくとも2.0%の破断前伸びを有するものとして更に定義される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
セルロース系の溶着された編織糸基材の製造方法であって、
a.複数の繊維をその中に有するセルロース系編織糸基材を提供する工程;
b.前記セルロース系編織糸基材にプロセス溶媒を適用してプロセス湿潤基材を作製する工程であって、前記プロセス溶媒は、極性プロトン性溶媒とイオン液体との混合物であって、1mol未満の前記プロトン性溶媒対1.00molの前記イオン液体というモル比を有する混合物である、工程;
c.前記プロセス溶媒が前記基材と相互作用する度合を、前記方法の粘性抵抗を調節することによって制御する工程であって、前記粘性抵抗は、少なくとも、前記プロセス溶媒の粘度と前記セルロース系編織糸基材又は前記プロセス湿潤基材に適用された機械的力との積である、工程;
d.前記複数のうちの少なくとも前記2種の繊維が互いに溶着されるように、少なくとも、前記プロセス溶媒が前記プロセス湿潤基材と相互作用する温度及び前記特定の持続時間を制御する工程であって、前記特定の持続時間は30秒以下である、工程;及び、
e.前記プロセス溶媒の少なくとも一部を前記プロセス湿潤基材から除去する工程
を含む、方法。
【請求項17】
前記プロセス溶媒を前記基材に適用する前記工程は、インジェクタを用いるものとして更に定義される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記基材は、綿からなる原糸基材として更に定義される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記プロセス溶媒は、ジメチルスルホキシドを含むものとして更に定義される、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記プロセス溶媒は、ジメチルスルホキシドを含むものとして更に定義される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年3月25日に出願された米国特許仮出願第62/313,291号、及び2016年7月22日に出願された同第62/365,752号、及び2017年1月16日に出願された同第62/446,646号の優先権を主張するものであり、これらの開示は全て、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、繊維複合材の製造方法及び当該繊維複合材から製造され得る製品に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリスチレンのような合成ポリマーは、通常、ジクロロメタン等の溶媒を用いて溶着される。イオン液体(例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩)は、天然繊維バイオポリマー(例えば、セルロース及び絹)を、誘導体化することなく溶解できる。天然繊維溶着は、バイオポリマー繊維が、従来のプラスチック溶着と概ね類似した方法で融合されるプロセスである。
【0004】
参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第8,202,379号(特許文献1)に開示されているように、構造的及び化学的改質のための天然繊維の部分的溶解に使用できるプロセス溶媒の1種は、イオン液体系(IL系)溶媒である。この特許は、卓上装置及び材料を用いて開発された基本原理を開示する。ただし、この特許は特に、複合材料を商業規模で製造するためのプロセス及び装置は開示していない。
【0005】
成形型に注いで所望の2次元形状を作製する、天然繊維バイオポリマー溶液の例が存在する。この場合、バイオポリマーは完全に溶解され、その結果、元の構造は破壊されて、バイオポリマーは変性される。対照的に、繊維溶着では、繊維内部(各個別繊維のコア)を、故意に未変性状態のまま残す。これは、バイオポリマーで構成される最終構造が、元々の材料の特性の一部を保持することから、絹、セルロース、キチン、キトサン、その他の多糖類及びこれらの組み合わせ等のバイオポリマーから強靭な材料を製造するのに有利である。
【0006】
バイオポリマー溶液を使用する従来方法は、溶液に溶解できるポリマーの量に物理的限度があるという点でも不利である。例えば、10質量%の綿(セルロース)と90質量%のイオン液体溶媒の溶液は、高温でも粘稠で取扱いが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第8,202,379号
【文献】米国特許第8,382,926号
【文献】米国特許第7,671,178号
【文献】米国特許第6,048,388号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
溶着実施前に、繊維束を操作して所望の形状にすることができる繊維溶着プロセスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
繊維溶着プロセスは、溶着実施前に、繊維束を操作して所望の形状にすることができる。天然繊維の使用及び取扱いは、しばしば、溶液系技術では不可能な最終生成物のエンジニアリングに対する制御を可能にする。
【0010】
添付図面は、本明細書に組み込まれ、その一部を形成するものであり、実施形態を例証し、その記述と共に方法及びシステムの原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】溶着された基材(溶着基材)を製造するためのプロセスの種々の態様の概略図である。
【
図2】溶着基材を製造するための別のプロセスの種々の態様の概略図である。
【
図2A】溶着プロセスと共に使用できるプロセス溶媒回収ゾーンの1種の概略図である。
【
図3】繊維-マトリックス複合材内への固体材料の追加及び物理的捕捉のためのプロセスを、
図3A~3Eと表記された
図3のサブプロセス又は構成要素と共に示す。機能材料は、溶着前に繊維マトリックス中に予備分散されている。
【
図4】繊維-マトリックス複合材内への固体材料の追加及び物理的捕捉のためのプロセスを、IL系溶媒中に(予備)分散された材料を用いて、
図4A~4Dと表記された
図4のサブプロセス又は構成要素と共に示す。
【
図5】繊維-マトリックス複合材内への固体材料の追加及び物理的捕捉のためのプロセスを、追加の可溶化されたポリマーと共にIL系溶媒中に(予備)分散された材料を用いて、
図5A~5Dと表記された
図5のサブプロセス又は構成要素と共に示す。
【
図6A】プロセス溶媒適用ゾーンの1つの構成の側面断面図である。
【
図6B】プロセス溶媒適用ゾーンの別の構成の透視図である。
【
図6C】プロセス溶媒適用ゾーンの別の構成の透視図である。
【
図6D】種々の溶着プロセスと共に使用できる装置の側面図である。
【
図6E】プレートが互いに対して異なる位置にある、
図6Dの装置の側面図である。
【
図6F】種々の溶着プロセスと共に使用できる装置の側面図であり、当該装置は、互いに隣接して位置付けされた複数の1D基材と共に使用するように構成できる。
【
図7A】
図7Cに示す溶着基材を製造するために使用できる溶着プロセスの概略図である。
【
図7B】30/1リング紡績綿糸(30/1 ring-spun cotton yarn)を含む未加工1D基材の走査電子顕微鏡画像である。
【
図7C】
図7Bに示す未加工基材を、イオン液体を含むプロセス溶媒を用いて別の溶着プロセスで加工して溶着基材を製造した後の、当該基材の走査電子顕微鏡画像である。
【
図7D】代表的な原糸基材サンプル及び
図7Cの代表的な溶着糸(welded yarn)基材サンプルの両方について、応力(g)と伸び率の関係を示すグラフであり、上側の曲線が溶着糸基材、下側の曲線が原糸である。
【
図8A】
図8Cに示す溶着基材の製造に使用できる溶着プロセスの概略図である。
【
図8B】30/1リング紡績綿糸を含む未加工1D基材の走査電子顕微鏡画像である。
【
図8C】
図8Bに示す未加工基材を、イオン液体を含むプロセス溶媒を用いて別の溶着プロセスで加工して、溶着基材を製造した後の、当該基材の走査電子顕微鏡画像である。
【
図8D】代表的な原糸基材サンプル及び
図8Cの代表的な溶着糸基材サンプルの両方について、応力(g)と伸び率の関係を示すグラフであり、上側の曲線が溶着糸基材、下側の曲線が原糸である。
【
図9A】
図9C~
図9Eに示す溶着基材を製造するために構成され得る溶着プロセスの透視図である。
【
図9B】30/1リング紡績綿糸を含む原料1D基材の走査電子顕微鏡画像である。
【
図9C】
図9Bに示す未加工基材を、イオン液体を含むプロセス溶媒を用いて溶着プロセスで加工した後の、当該基材の走査電子顕微鏡画像であり、溶着基材は軽く溶着されている。
【
図9D】
図9Bに示す未加工基材を、イオン液体を含むプロセス溶媒を用いて溶着プロセスで加工した後の、当該基材の走査電子顕微鏡画像であり、溶着基材は中程度に溶着されている。
【
図9E】
図9Bに示す未加工基材を、イオン液体を含むプロセス溶媒を用いて溶着プロセスで加工した後の、当該基材の走査電子顕微鏡画像であり、溶着基材はしっかりと溶着されている。
【
図9F】
図9Dに示す溶着基材から製造された布地の画像である。
【
図9G】代表的な原糸基材サンプル及び
図9C及び
図9Kの代表的な溶着糸基材サンプルの両方について、応力(g)と伸び率の関係を示すグラフであり、上側の曲線が溶着糸基材、下側の曲線が原糸である。
【
図9H】左側は、
図9Bに示す未加工基材から製造した布地の画像、右側は、
図9Dに示す溶着基材から製造した布地の画像である。
【
図9I】シェル溶着基材とみなすことができる溶着基材の画像である。
【
図9J】シェル溶着基材とみなすことができる溶着基材の画像である。
【
図9K】
図9Bに示す未加工基材を、イオン液体を含むプロセス溶媒を用いて溶着プロセスで加工した後の走査電子顕微鏡画像であり、溶着基材は軽く溶着されている。
【
図9L】
図9Bに示す未加工基材を、イオン液体を含むプロセス溶媒を用いて溶着プロセスで加工した後の走査電子顕微鏡画像であり、溶着基材は中程度に溶着されている。
【
図9M】
図9Bに示す未加工基材を、イオン液体を含むプロセス溶媒を用いて溶着プロセスで加工した後の走査電子顕微鏡画像であり、溶着基材はしっかりと溶着されている。
【
図10B】30/1リング紡績綿糸を含む未加工1D基材の走査電子顕微鏡画像である。
【
図10C】
図10Bに示す未加工基材を、水酸化物を含むプロセス溶媒を用いて溶着プロセスで加工した後の、当該基材の走査電子顕微鏡画像であり、溶着基材は軽く溶着されている。
【
図10D】
図10Bに示す未加工基材を、水酸化物を含むプロセス溶媒を用いて溶着プロセスで加工した後の、当該基材の走査電子顕微鏡画像であり、溶着基材は中程度に溶着されている。
【
図10E】
図10Bに示す未加工基材を、水酸化物を含むプロセス溶媒を用いて溶着プロセスで加工した後の、当該基材の走査電子顕微鏡画像であり、溶着基材はしっかりと溶着されている。
【
図10G】代表的な原糸基材サンプル及び
図10Cの代表的な溶着糸基材サンプルの両方について、応力(g)と伸び率の関係を示すグラフであり、上側の曲線が溶着糸基材、下側の曲線が原糸である。
【
図11A】変調(modulated)繊維溶着プロセスの種々の態様を示す概略図である。
【
図11B】変調繊維溶着プロセスの他の態様を示す概略図である。
【
図11C】変調繊維溶着プロセスの他の態様を示す概略図である。
【
図11D】変調繊維溶着プロセスの他の態様を示す概略図である。
【
図11E】変調溶着プロセスにより製造された溶着基材の画像であり、図の右側部分は軽く溶着されており、図の右側部分はしっかりと溶着されている。
【
図11F】変調溶着基材から製造された布地の別の画像で、布地がヘザー効果を示している。
【
図12A】デニムを含む未加工2D基材の走査電子顕微鏡画像である。
【
図12B】
図12Aに示す未加工基材を、しっかりと溶着された溶着基材に加工した後の、当該基材の走査電子顕微鏡画像である。
【
図12C】編布を含む未加工2D基材の走査電子顕微鏡画像である。
【
図12D】
図12Cに示す未加工基材を、中程度に溶着された溶着基材に加工した後の、当該基材の走査電子顕微鏡画像である。
【
図12E】ジャージーニット綿織物を含む未加工2D基材の走査電子顕微鏡画像である。
【
図12F】
図12Eに示す未加工基材を、軽く溶着された溶着基材に加工した後の、当該基材の走査電子顕微鏡画像である。
【
図12G】ジャージーニット綿織物を含む未加工2D基材の拡大走査電子顕微鏡画像である。
【
図12H】
図12Eに示す未加工基材を、軽く溶着された溶着基材に加工した後の、当該基材の走査電子顕微鏡画像である。
【
図13】約20℃で、再構成溶媒を有する溶着プロセスを用いて製造した溶着糸基材の走査電子顕微鏡画像である。
【
図14A】約22℃で、再構成溶媒を有する溶着プロセスを用いて製造した溶着糸基材の走査電子顕微鏡画像である。
【
図14B】約40℃で、再構成溶媒を有する溶着プロセスを用いて製造した別の溶着糸基材の走査電子顕微鏡画像である。
【
図15A】原綿糸(プロットA)及びイオン液体に完全に溶解した原綿糸基材から再構成した綿糸のX線回折データである。
【
図15B】
図15AのプロットAと同じ原綿糸基材から製造した3種類の異なる溶着糸基材のX線回折データである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の方法及び装置を開示する前に、方法及び装置は、特定の方法、特定の構成要素、又は特定の実施に限定されないことが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態/態様の説明のみを目的としており、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0013】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「1つの」(「a」、「an」及び「the」)は、別段の明確な指示がない限り、複数の参照物を包含する。本明細書で、範囲は、「おおよそ(約)」1つの特定の値から、及び/又は「おおよそ(約)」別の特定の値まで、として表記される場合がある。このような範囲が表記されている場合、別の実施形態は、その1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値まで、を含む。同様に、値が概数として表記されている場合、前に「約」を使用することで、その特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。範囲のそれぞれの端点は、他の端点との関係において、及び他の端点から独立して、のいずれでも重要であることは、更に理解されるであろう。
【0014】
「任意選択の」又は「任意選択的に」は、その後に記載される事象又は状況が起こっても起こらなくてもよいこと、並びに当該記載が、上記事象又は状況が起こる場合及び起こらない場合を包含することを意味する。
【0015】
「態様」は、方法、装置、及び/又はこれらの構成要素を参照するとき、態様として参照された限定、機能、構成要素等が必要であることを意味するのではなく、それが特定の例示的開示の一部であり、以下の請求項にそのように示されない限り、方法、装置、及び/又はこれらの構成要素の範囲を限定するものではない。
【0016】
本明細書の記載及び特許請求の範囲を通して、「含む」(comprise)という語及び当該語の変形(例えば、「含んでいる」(comprising)及び「含む」(comprises))は、「含むがそれらに限定しない」ことを意味し、例えば、他の構成要素、整数又は工程を除外することを意図するものではない。「例示的な」は「~の一例」を意味し、好ましい又は理想的な実施形態の指示を伝達することを意図するものではない。「~等の」(such as)は、制限的な意味で使用されるのではなく、説明の目的で使用される。
【0017】
開示されるのは、開示される方法及び装置を実施するために使用できる構成要素である。これら及びその他の構成要素は、本明細書に開示されており、これらの構成要素の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループ等が開示されるとき、それぞれの多様な別個の及び集合的な組み合わせ及びこれらの並べ替えの具体的な参照が明示的に開示されていない場合があるが、全ての方法及び装置について、それぞれが明確に想到され、本明細書に記載されていることは理解される。これは、開示される方法の工程を含むがこれらに限定されない、本明細書の全ての態様に適用される。したがって、実施できる種々の追加工程がある場合、これらの追加工程のそれぞれを、開示される方法の任意の特定の実施形態又は実施形態の組み合わせで実施できることは理解される。
【0018】
本発明の方法及び装置は、以下の好ましい態様の詳細な説明及びそこに含まれる実施例、並びに図及びその前後の説明を参照することによって、より容易に理解される場合がある。構成の一般論及び/又は対応する構成要素、態様、特徴、機能、方法、及び/又は構造材料等を参照している場合、これらの用語に相当する用語を互換可能に使用できる。
【0019】
本開示は、その適用が以下の説明に記載された又は図に例証された構成要素の詳細な構造及び構成に限定されないことは、理解されるべきである。本開示は、他の実施形態が可能であり、様々なやり方で実践又は実施することができる。デバイス又は要素の向きを参照して本明細書で使用される術語及び用語(例えば、「前方」「後方」「上」「下」「頂部」「底部」等の用語)は、記載を単純にするために使用しているにすぎず、単独で、参照されたデバイス又は要素が特定の向きでなければならないことを指示又は暗示するものではないことも理解されるべきである。更に、「第1」、「第2」、及び「第3」等の用語は、本明細書及び添付の特許請求の範囲で説明のために使用され、相対的な重要性又は有意性を指示又は暗示することを意図するものではない。
【0020】
1.定義
【0021】
本開示全体を通して、プロセスの特定の構成要素、装置、及び/又は本開示と共に使用できるその他の構成要素を記述するために種々の用語が使用され得る。明瞭化のため、これらの用語のいくつかの定義をこの後に示す。しかし、かかる構成要素を記載するために使用するとき、これらの用語及びその定義は、後続の特許請求の範囲にそのように示されない限り、範囲を限定することを意味するものではなく、本開示の1つ以上の態様の例示を意味する。更に、任意の用語及び/又はその定義の包含は、以下の請求項にそのように示されない限り、本明細書に開示されるいかなる特定のプロセス又は装置においても構成要素の明示を要求することを意味するものではない。
【0022】
A.基材材料
【0023】
「基材」は、本明細書で使用するとき、1つの純粋な生体材料(例えば、綿糸等)、複数の生体材料(例えば、絹繊維と混合されたリグノセルロース繊維)、又は既知量の生体材料を含有する材料のいずれかを含み得る。一態様において、基材は、水素結合によって結合された少なくとも1つのバイオポリマー構成要素(例えば、セルロース)を含有する天然材料を含有し得る。いくつかの態様において、用語「基材」は、ポリエステル、ナイロン等の合成材料を指す可能性があるが、用語「基材」が合成材料を指す場合は、通常、全体を通して明確に注記されるであろう。融合又は溶着プロセスは、基材の少なくとも1つの構成要素の変性を限定するやり方で実施されてもよい。例えば、リグノセルロース繊維の変性を制限するため、限られた量のプロセス溶媒を、中程度の温度及び圧力で、制御された時間にわたって添加してもよい。
【0024】
「セルロースベースの基材」としては、綿、パルプ、及び/若しくはその他の精製セルロース繊維並びに/又は粒子等が挙げられる。
【0025】
「リグノセルロースベースの基材」としては、木材、麻、トウモロコシ茎葉、豆藁、草等が挙げられる。
【0026】
「その他の糖ベースのバイオポリマー基材」としては、キチン、キトサン等が挙げられる。
【0027】
「タンパク質ベースの基材」としては、ケラチン(例えば、羊毛、蹄、角、爪)、絹、コラーゲン、エラスチン、組織等が挙げられる。
【0028】
「未加工基材」は、本明細書で使用するとき、いかなる溶着プロセスも施されていない任意の基材を含む。
【0029】
B.基材フォーマットの種類
【0030】
基材フォーマットは、様々な市販製品又はカスタマイズした製品とすることができる。「ルーズ」な1次元(1D)、2次元(2D)、及び/又は3次元(3D)基材は、全て、本開示による種々のプロセスへの使用が可能である。完成した溶着基材又は複合材は、1D、2D、及び/又は3Dそれぞれに成形されてもよい。以下の定義は、基材及び溶着基材(更に下の定義による)のいずれにも適用される。
【0031】
「ルーズ」は、溶着プロセスに、ルーズな(緩んだ)、及び/又は、比較的もつれてないフォーマットで供給される任意の天然繊維及び/若しくは粒子又は天然繊維及び/若しくは粒子の混合物(例えば、ルーズな綿と木材繊維及び/又は粒子との混合物)を含み得る。
【0032】
「1D」としては、撚っていない単糸及び撚糸の両方の編織糸(yarn)及び縫糸(thread)が挙げられる。
【0033】
「2D」としては、紙基材(例えば、ボール紙代替品、包装紙等)、板基材(例えば、ハードボード代替品、合板、OSB、MDF、規格材等)が挙げられる。
【0034】
「3D」としては、自動車部品、構造建築構成要素(例えば、押出成形された梁、根太、壁等)、家具部品、玩具、電子機器ケース及び/又は構成要素等が挙げられる。
【0035】
一般的に、得られる溶着基材又は複合材料は、かなりの量の天然材料(例えば、生命体及び/又は酵素から生産された材料)を含む場合があり、この天然材料は、糊、樹脂、及び/又はその他の接着剤ではなく、天然材料のバイオポリマーを融合又は溶着することによって結合されていてもよい。
【0036】
C.プロセス溶媒系
【0037】
「プロセス溶媒」としては、基材の分子間力(例えば、水素結合)を破壊する能力のある材料が挙げられ、かつ基材中の少なくとも1つのバイオポリマー構成要素を膨潤、可動化、及び/若しくは溶解できるか、及び/又は他の方法で、バイオポリマー構成要素同士を結合し得る力を破壊する材料が挙げられる。
【0038】
「純プロセス溶媒」としては、追加の添加剤を含まないプロセス溶媒が包含され、イオン液体、3-エチル-1-メチルイミジゾリウム酢酸塩、3-ブチル-1-メチルイミジゾリウム塩化物、及びその他の現在知られているか又は後に開発された、基材の分子間力を破壊する役割を果たす類似の塩が挙げられる。
【0039】
「深共晶プロセス溶媒」としては、1種以上の化合物を1つの混合物形態に組込んで、当該混合物を構成する構成要素の1つ以上よりも低い融点を有する共晶を与えるイオン溶媒が挙げられ、更には、他のイオン液体及び/又は分子種と混合された純イオン液体プロセス溶媒が挙げられる。
【0040】
「混合有機プロセス溶媒」としては、極性プロトン性溶媒(例えば、メタノール)及び/又は極性非プロトン性溶媒(例えば、アセトニトリル)と混合されたイオン液体(例えば、3-エチル-1-メチルイミジゾリウム酢酸塩)、及びN-メチルモルホリンN-オキシド(NMMO)としても知られる4-メチルモルホリン4-オキシド)が挙げられる。
【0041】
「混合無機プロセス溶媒」としては、塩水溶液(例えば、LiOH及び/又はNAOHの水溶液で、尿素又その他の分子添加剤、水性塩化グアニジン、LiClのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)溶液等と混合されていてもよい)が挙げられる。
【0042】
一態様では、プロセス溶媒は、比較的少量(例えば、10質量%未満)の完全に可溶化された天然ポリマー(例えば、セルロース)等の追加の機能性材料を含有してもよいが、選択された合成ポリマー(例えば、メタ-アラミド)、並びに他の機能性材料も含有してもよい。
【0043】
D.機能性材料
【0044】
「機能性材料」としては、天然又は合成無機材料(例えば、磁性又は導電性材料、磁性微粒子、触媒等)、天然又は合成有機材料(例えば、炭素、染料(蛍光及びリン光を含むがこれらに限定されない)、酵素、触媒、ポリマー等)、及び/又は特徴、機能、及び/又は有益性を基材に加え得るデバイス(例えば、RFIDタグ、MEMSデバイス、集積回路)が挙げられる。さらに、機能性材料は、基材及び/又はプロセス溶媒中に配置されてもよい。
【0045】
E.プロセス湿潤基材
【0046】
「プロセス湿潤基材」は、基材の全部又は一部に適用されたプロセス溶媒で湿潤された、任意の組み合わせのフォーマット及び種類の基材を指すことができる。したがって、プロセス湿潤基材は、いくらかの部分的に溶解され、可動化された天然ポリマーを含有し得る。
【0047】
F.再構成溶媒系
【0048】
「再構成溶媒」としては、非ゼロ蒸気圧(ゼロではない蒸気圧)を有し、かつプロセス溶媒系由来のイオンとの混合物を形成することができ得る液体が挙げられる。一態様では、再構成溶媒系の1つの特徴は、そのままでは天然基材を溶解することができないことである。一般に、再構成溶媒は、プロセス溶媒イオンを基材から分離及び除去するために使用できる。つまり、一態様では、再構成溶媒は、プロセス溶媒をプロセス湿潤基材から除去する。その際に、プロセス湿潤基材を、下記のように再構成湿潤基材に変換することができる。
【0049】
再構成溶媒としては、極性プロトン性溶媒(例えば、水、アルコール等)及び/又は極性非プロトン性溶媒(例えば、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が挙げられる。再構成溶媒は、分子成分の混合物でもよく、イオン性成分を含んでもよい。一態様では、再構成溶媒は、基材内での機能性材料の分布を制御するのに有用となり得る。再構成溶媒は、プロセス溶媒系における分子添加剤と化学的に類似しているか又は実質的に化学的に同一であるように構成されてもよい。
【0050】
一態様では、(純粋な)再構成溶媒をイオン性成分と混合して、プロセス溶媒を形成してもよい。再構成溶媒は、プロセス溶媒系における分子添加剤と化学的に類似しているか又は実質的に化学的に同一であるように構成されてもよい。例えば、アセトニトリルは、純粋なときにはセルロースを溶解することができない、非ゼロ蒸気圧を有する極性非プロトン性分子液体である。アセトニトリルは、十分な量の3-エチル-1-メチルイミジゾリウム酢酸塩と混合して、水素結合を破壊できる溶液を形成してもよく、アセトニトリルを再構成溶媒として使用してもよい。したがって、適切なイオンを十分な濃度(イオン強度)で含有する混合物は、プロセス溶媒として機能できる。本開示内で、天然基材のポリマーを溶解又は可動化するのに十分なイオン強度を含有しない3-エチル-1-メチルイミジゾリウム酢酸塩の任意のアセトニトリル中混合物は、再構成溶媒とみなされる。
【0051】
G.再構成湿潤基材
【0052】
「再構成湿潤基材」は、プロセス湿潤基材の全部又は一部に適用された再構成溶媒で湿潤された、任意の組み合わせのフォーマット及び種類のプロセス湿潤基材を指すことができる。一般に、再構成湿潤基材は、部分的に溶解され、可動化された天然ポリマーを含有せず、これは、再構成溶媒の適用によりプロセス溶媒が除去されるためだと考えられる。
【0053】
H.乾燥ガス系
【0054】
「乾燥ガス」は、室温及び大気圧で気体である材料を含んでもよいが、超臨界流体であってもよい。一態様では、乾燥ガスは、プロセス湿潤基材及び/又は再構成湿潤基材の両方に由来する非ゼロ蒸気圧成分(例えば、再構成溶媒の全部又は一部)との混合及びその運搬ができる。乾燥ガスは、純粋な気体(例えば、窒素、アルゴン等)でもよく、気体の混合物(例えば、空気)でもよい。
【0055】
I.溶着基材
【0056】
「溶着基材」(溶着された基材)は、1つ以上の個別の繊維及び/又は粒子が、当該繊維及び/又は粒子のいずれかに由来するバイオポリマーに作用するプロセス溶媒によって、及び/又は基材内の別の天然材料への作用によって、融合又は溶着されている少なくとも1つの天然基材を含む、完成複合材を指して使用され得る。一般に、溶着基材は、「完成複合材」及び/又は「繊維-マトリックス複合材」を含み得る。具体的には、「繊維-マトリックス複合材」は、溶着基材の繊維及びマトリックスのいずれとしても作用する天然基材を有する溶着基材を指して使用され得る。
【0057】
J.溶着
【0058】
「溶着」は、本明細書で使用するとき、ポリマーの密接な分子間会合による材料の結合及び/又は融合を指して使用され得る。
【0059】
2.一般的な溶着プロセス
【0060】
本開示は、繊維状及び/又は粒子状基材を含有するバイオポリマーを、溶着基材(その一例は複合材料である)に変換するための種々のプロセス及び/又は装置を提供し、更に、溶着基材から製造され得る種々の製品も開示する。概して、繊維状及び/又は粒子状基材を含有するバイオポリマーを溶着基材に変換するためのプロセス工程及び/又はプロセス工程の組み合わせは、本明細書において「溶着プロセス」と呼ばれることがあり、以下の請求項にそのように示されない限り、制限はない。プロセスの一態様において、プロセス溶媒は、天然材料を含有する1つ以上の基材に適用されてもよい。一態様において、プロセス溶媒は、天然材料を含有する基材の少なくとも1つの構成要素内で1つ以上の分子間力(分子間力は、水素結合を含み得るがこれに限定されない)を破壊し得る。
【0061】
プロセス溶媒の一部の除去(以下に更に詳述する再構成溶媒と共に実施されてもよい)を行うと、基材中の繊維及び/又は粒子は、融合又は溶着され、溶着された基材が得られる場合がある。試験により、溶着された基材は、(加工される前の)元の基材と比べて増強された物理的特性(例えば、増強された引張強度)を有し得ることが明らかにされた。溶着基材は、溶着プロセス自体に選択されたパラメータにより、又は基材を溶着基材に変換する溶着プロセスの実施前又は実施中に、基材に機能性材料を含めることにより、増強された化学的特性(例えば、疎水性)又はその他の特徴/機能も有し得る。
【0062】
本明細書に開示される種々のプロセス及び/又は装置は、当該プロセス及び/又は装置が、任意の数のプロセス溶媒及び/又は基材(学術又は特許文献で、天然材料のバイオポリマーを完全に溶解できることが既知であるか又は後に開発されたプロセス溶媒及び/又は基材を含む)を使用するように構成できるように一般化されている場合がある。本開示の一態様では、溶着プロセスは、バイオポリマー含有基材が処理プロセスにおいて完全には溶解されないように構成されてもよい。別の態様では、種々の組成及び形状の強靭な複合材料を、糊及び/又は樹脂を用いることなく(バイオポリマー含有基材を完全には溶解しないように構成されたプロセスでも)製造できる。
【0063】
一般に、溶着プロセス及び/又は装置は、プロセス溶媒の量、温度、圧力、天然材料をプロセス溶媒に曝す時間、及び/又はその他のパラメータを慎重にかつ意図的に制御するように構成されてもよく、以下の請求項にそのように示されない限り、制限はない。加えて、プロセス溶媒、再構成溶媒、及び/又は乾燥ガスを、再使用のために効率的にリサイクルできる手段が、商業化のために最適化され得る。したがって、本明細書に開示されるのは、従来技術からは自明ではない新規概念及び特徴の集まりである。天然材料は一般的に豊富で安価であり、持続的に製造できることを考慮すると、本明細書に開示されるプロセス及び装置は、年間何兆ドルもの価値の材料を製造する、変形可能で持続可能な手段の原型となり得る。この技術は、人類が、石油及び石油含有材料等の限りある資源による制限を受けずに前進することを可能にする。一態様では、本開示は、この結果を、従来技術で開示されていない基材、プロセス溶媒、及び/又は再構成と共に使用するように構成された新規かつ非自明的なプロセス及び/又は装置を使用して達成することができ、これは種々の新規かつ非自明的な最終生成物を生じる可能性がある。
【0064】
A.基材供給ゾーン
【0065】
ここで図を参照すると、複数の図を通して参照番号が同一の又は対応する部品を示すように、
図1は、溶着基材を製造するように構成された1つの溶着プロセスの種々の態様を示す概略図を提供する。この一般的な溶着プロセスは、少なくとも特定の基材、特性のプロセス溶媒系、製造しようとする特定の溶着基材、利用する機能性材料、及び/又はこれらの組み合わせに基づいて変更及び/又は最適化されてもよい。
図1に概略的に示された溶着プロセスは、限定することを意味するものではなく、以下の請求項にそのように示されない限り、例示のみを目的とする。溶着基材を製造するための溶着プロセスのある態様の更なる詳細(例えば、特定の装置、プロセスパラメータ、プロセス溶媒系等)は、以下に更に提供され、すぐ下の溶着プロセスの実施例は、広範な基材、プロセス溶媒系、再構成溶媒系、溶着基材、機能性材料、基材フォーマット、溶着基材フォーマット、及び/又はこれらの組み合わせに適用され得る本開示の1つの態様を強調する包括的枠組みを提供することを意図する。
【0066】
一般的に、溶着プロセスは、基材供給ゾーン1が溶着プロセス部分を備え、当該部分で、基材フォーマットが、溶着プロセス及び/又は関連する装置に制御可能に供給(導入)され得るように構成されてもよい。基材供給ゾーン1は、特定の基材材料又は基材材料の組み合わせから特定の基材フォーマットを作製するための装置を含み得る。あるいは、基材供給は、予め作られた基材フォーマットのロールを送達するように構成されてもよい。基材は、基材供給ゾーン1を通して押したり引いたりされてもよい。基材は、動力付きコンベアシステムに載ってもよい。基材は、押出型のスクリューによって基材供給ゾーン1を通して供給されてもよい。したがって、本開示の範囲は、以下の請求項にそのように示されない限り、基材が基材供給ゾーン1で移動するか否か及び/若しくはどのように移動するか、並びに/又は基材が静止した状態で、溶着プロセスの装置及び/若しくはその他の構成要素が基材に対して移動するか否かによって限定されない。
【0067】
基材は、基材供給ゾーン1内の基材に添加され得る機能性材料を含有してもよい。装置及び計装を使用して、少なくとも基材供給ゾーン1内の材料の温度、圧力、組成、及び/又は供給速度を監視及び制御してもよい。一般的に、基材又は複数の基材が、基材供給ゾーン1からプロセス溶媒適用ゾーン2へ移動してもよい。
【0068】
ある特定の1D基材(例えば、編織糸及び/又は類似の基材)に使用するように構成された本開示による溶着プロセスの一態様において、基材が溶着プロセスに入る前に基材に応力を適用する装置を包含することは有利となり得る。繊維溶着プロセスに入る前に基材に所定の応力を適用することによって、基材の弱い部分が破損され露出する場合がある。装置は、結び目を作って連続基材を再構築するメカニズムを有するように構成されてもよい。最終的に、そのように構成された溶着プロセスは、ダウンタイムを制限するように、基材の弱い部分を場所を見つけて修復することができる。この装置は、溶着プロセス実施のずっと前に特定の基材を改善する独立型の機械であってもよい。あるいは、この装置は、基材供給ゾーン1に直接組み込むことができる。
【0069】
B.プロセス溶媒適用
【0070】
プロセス溶媒適用ゾーン2では、基材がプロセス溶媒適用ゾーン2を通過する際に、1種以上のプロセス溶媒を、浸漬、吸上げ、塗装、インクジェット印刷、噴霧等によって、又はこれらの任意の組み合わせによって、基材に適用してもよい。プロセス溶媒は、機能性材料及び/又は分子添加剤を含んでもよく、これらのいずれについても以下に更に詳述する。
【0071】
一態様では、プロセス溶媒適用ゾーン2は、機能性材料を、プロセス溶媒とは別に基材に添加する追加装置を用いて構成されてもよい。装置及び計装を使用して、少なくともプロセス溶媒適用中のプロセス溶媒、基材、及び/又は大気の温度及び/又は圧力を監視及び制御してもよい。適用されるプロセス溶媒の組成、量、及び/又は速度を監視及び制御する装置及び計器を使用してもよい。プロセス溶媒は、プロセス溶媒適用方法に応じて、特定の場所に適用しても、基材全体に適用してもよい。
【0072】
押出を用いて溶着基材を製造するための溶着プロセスの態様では、プロセス溶媒適用ゾーン2の最後にダイを用いてもよい。そのように構成された溶着プロセスは、基材がプロセス溶媒適用ゾーン2を通過するときにプロセス溶媒が適用されたルーズな基材から、1D、2D、又は3D形状を形成する装置も含んでもよい。一般的に、溶媒適用ゾーン2の最適構成は、少なくとも、基材フォーマット、プロセス溶媒及び/若しくはプロセス溶媒系の選択、並びにプロセス溶媒を適用するために使用される装置に応じて変動し得る。これらのパラメータは、所望の量の粘性抵抗を達成するように構成されてもよい。「粘性抵抗」は、本明細書で使用するとき、プロセス溶媒及び/又はプロセス溶媒系粘度と、プロセス溶媒及び/又はプロセス溶媒系を基材に適用する機械的な力(例えば、圧力、摩擦、剪断等)との間のバランスを意味する。後で更に詳述するように、一部の事例では、最適な粘性抵抗は、終止一貫した特性を有する溶着基材が得られるように構成され、他の事例では、最適な粘性抵抗は、変調された溶着基材が得られるように構成される。
【0073】
ある特定の1D基材(例えば、編織糸及び/又は類似の基材)に使用するように構成された本開示による溶着プロセスの一態様において、基材にプロセス溶媒を適切に適用し(それによって粘性抵抗を作用させ)、溶着基材の所望の特性を生じるように設計できる、適切なサイズの針様オリフィスを用いることは有利となり得る。プロセス溶媒は、基材がオリフィス内を移動している間に、同時にデバイス内に制御可能に計量されてもよい。少なくともプロセス溶媒の温度、流量及び流動特性、並びに/又は基材供給速度を監視及び/又は制御して、完成した溶着基材に所望の特性を付与してもよい。以下で
図6A~
図6Cに関して更に詳述するように、オリフィスのサイズ、形状及び構成(例えば、直径、長さ、勾配等)は、プロセス溶媒が基材に適用されたときの基材への応力を制限又は追加するように設計されてもよい。この設計の検討は、細糸又はコーミングによる短繊維除去が行われていない編織糸にとって特に重要となり得る。
【0074】
プロセス溶媒適用ゾーン2の具体的な構成は、少なくともプロセス溶媒及び/又はプロセス溶媒系に使用される具体的な化学に応じて変動し得る。例えば、一部のプロセス溶媒及び/又はプロセス溶媒系は、バイオポリマーを比較的低い温度で膨潤及び可動化するのに有効であり(すなわち、約-5℃以下のLiOH-尿素)、他のもの(すなわち、イオン液体、NMMO等)は比較的高温で有効である。NMMOは90℃を超える温度を必要とする場合があるが、いくつかのイオン液体は50℃超で有効となる。更に、多数のプロセス溶媒及び/又はプロセス溶媒系は、温度と相関する場合があり、そのため、プロセス溶媒適用ゾーン2の種々の態様(又は溶着プロセスの他の態様)の最適な構成は、プロセス溶媒適用ゾーン2の温度、プロセス溶媒自体、及び/又はプロセス溶媒系に依存し得る。すなわち、特定のプロセス溶媒及び/又はプロセス溶媒系が低温で有効であり、当該低温で比較的粘稠でもあるとき、プロセス溶媒及び/又はプロセス溶媒系を基材に適用するために使用される装置は、上記の温度及び粘度に適応するように設計されなければならない。所与のプロセス溶媒及び/又はプロセス溶媒系の有効温度範囲内で、当該範囲内の温度、プロセス溶媒及び/又はプロセス溶媒系の化学(例えば、共溶媒の添加及び/又は比率等)、プロセス溶媒適用ゾーン2に関連する装置の構成等の更なる改良を実施して、溶着プロセスの残りの工程に望ましい特性を有する湿潤基材が得られるようにプロセス溶媒を基材に適切に適用する、適量の粘性抵抗を得てもよい。ただし、プロセス溶媒適用ゾーン2内の具体的な操作温度は、以下の請求項にそのように示されない限り、本開示の範囲を何ら限定するものではない。
【0075】
C.プロセス温度/圧力ゾーン
【0076】
プロセス溶媒を基材に適用すると、湿潤基材は、少なくとも制御された温度、圧力、及び/又は雰囲気(組成)で、制御された時間の量にわたって、溶着プロセスゾーンに入り得る。装置及び計装を使用して、少なくとも基材供給ゾーン1内のプロセス湿潤基材の温度、圧力、組成、及び/又は供給速度を監視、変調、及び/又は制御してもよい。具体的には、温度は、チラー、対流式オーブン、マイクロ波、赤外線、又は任意の数のその他の好適な方法又は装置を使用することによって制御及び/又は変調されてもよい。
【0077】
一態様では、プロセス溶媒適用ゾーン2は、プロセス温度/圧力ゾーン2から分離している。しかし、本開示の別の態様では、溶着プロセスは、上記の2つのゾーン2、3が、1つの隣接するセグメントになるように構成されてもよい。例えば、基材が、特定の時間にわたって、制御温度及び圧力下でプロセス溶媒浴に浸漬され、通過するように構成された溶着プロセスは、プロセス溶媒適用ゾーン2とプロセス温度/圧力ゾーン3とを組み合わせることになる。一般的に、プロセス溶媒適用ゾーン2及びプロセス温度/圧力ゾーン3は、合わせて、溶着ゾーンとみなすことができる。
【0078】
押出が実施される本開示による溶着プロセスの態様では、プロセス温度/圧力ゾーン3の中又は終端部に、ダイが含まれてもよい。本開示による溶着プロセスの他の態様は、プロセス溶媒が適用され、かつプロセス温度/圧力ゾーン3を通過したルーズな基材から、1D、2D、又は3D形状を形成する装置も含んでもよい。
【0079】
D.プロセス溶媒回収ゾーン
【0080】
プロセス溶媒は、プロセス溶媒回収ゾーン4内で基材から分離されてもよい。一態様では、プロセス溶媒は、蒸気圧がほとんど又は全くない塩を含有してもよい。プロセス溶媒(当該プロセス溶媒の少なくとも一部はイオンを含み得る)を基材から除去するため、再構成溶媒を導入してもよい。再構成溶媒をプロセス湿潤基材に塗布すると、プロセス溶媒は、基材から出て再構成溶媒中へと移動する場合がある。必須ではないが、一部の態様では、再構成溶媒が基材の動きと対向する方向に流れてもよく、その結果、プロセス溶媒の回収に必要な再構成溶媒はごく少量で、ごくわずかな時間、空間、及びエネルギー(該当する場合)を用いる。
【0081】
本開示により構成された溶着プロセスの一態様では、プロセス溶媒回収ゾーン4は、浴、一連の浴、又は再構成溶媒がプロセス湿潤基材と対向又は横断する方向に流れる一連のセグメントであってもよい。装置及び計装を使用して、少なくともプロセス溶媒回収ゾーン4内の再構成溶媒の温度、圧力、組成、及び/又は流量を監視及び制御してもよい。このゾーン4を出ると、基材は再構成溶媒で湿潤されてもよい。
【0082】
一態様では、イオン液体プロセス溶媒を有するプロセス溶媒系を、分子添加剤と組み合わせて構成すること、及び再構成溶媒を、分子添加剤と化学的に類似若しくは化学的に同一であるように構成することが最適な場合がある。イオン液体を含むプロセス溶媒の場合、比較的低沸点であるが比較的高い蒸気圧を有する分子添加剤を選択することが有用となり得る。更に、かかる分子添加剤は、一般的に、極性非プロトン性であることが有用となる場合があり(極性プロトン性溶媒は一般的に、イオン液体からの分離がより困難であり、かつイオン液体含有溶媒系の効力を低下させる傾向もあるため)、その例としては、アセトニトリル、アセトン、及び酢酸エチル等が挙げられるが、以下の請求項に示されない限り、これらに限定されない。水酸化物(例えば、LiOH)水溶液を含むプロセス溶媒の場合、極性プロトン性である水を含む再構成溶媒を選択することが有利となり得る。再構成溶媒と化学的に類似又は化学的に同一の分子添加剤を用いて溶着プロセスを構成することは、少なくともプロセス溶媒回収ゾーン4、溶媒捕集ゾーン7、及び溶媒リサイクル8に必要な装置及び/又はエネルギー及び/又は時間を簡素化する可能性があることから、溶着プロセスの経済性に有益となり得る。更に、再構成溶媒及び/又はプロセス溶媒回収ゾーン4の温度を上げると、再構成に必要な時間が大幅に短縮される可能性があり、その結果、溶着プロセス及び関連装置の全長が縮小される可能性があり、それが次には基材張力の複雑さ及び/又は変動の低減並びに体積圧密制御能力(以下により詳細に説明する)につながる。
【0083】
あるいは、溶着プロセスは、特定の特質を有する溶着基材を生成する再構成溶媒の組成及び温度で構成されてもよい。例えば、以下により詳細に記載するように、EMIm OAc及び水を含む再構成溶媒を含むプロセス溶媒を用いる1つの溶着プロセスにおいて、水の温度は、溶着糸基材の特質に影響し得る。
【0084】
E.乾燥ゾーン
【0085】
再構成溶媒は、乾燥ゾーン5内で基材から分離されてもよい。すなわち、再構成湿潤基材は、乾燥ゾーン5で完成(乾燥)した溶着基材に変換されてもよい。必須ではないが、一態様において、乾燥ガスは、再構成湿潤基材の動きと対向する方向に流れてもよく、その結果、ごくわずかな時間、空間、及び/又はエネルギー(該当する場合)を用いる再構成溶媒の除去により、再構成湿潤基材の乾燥に必要な乾燥ガスはごく少量となり得る。装置及び計装を使用して、少なくとも乾燥ゾーン5内のガスの温度、圧力、組成、及び/又は流量を監視及び制御してもよい。
【0086】
乾燥ゾーン5は、乾燥工程の間に、基材、プロセス湿潤基材、再構成された基材、及び/又は溶着基材において「制御された体積圧密」が観察されるように構成されてもよい。「制御された体積圧密」とは、本明細書で使用するとき、完成した溶着基材が、乾燥及び/又は再構成時に体積収縮し、かつ/又は特定の形状に合致する特定の方式を意味する。例えば、編織糸のような1次元基材では、制御された体積圧密は、編織糸の直径が縮小されたとき及び/又は編織糸の長さが短縮されたときのいずれかに起こり得る。
【0087】
制御された体積圧密は、乾燥プロセスの間に、少なくとも再構成湿潤基材を適切に制約することによって、1又は複数の方向/次元に限定することができる。更に、使用するプロセス及び/又は再構成溶媒の量及び種類、プロセス及び/又は再構成溶媒の適用方法(粘性抵抗の程度及び種類等を含む)は、再構成湿潤基材が乾燥時に収縮しようとする度合に影響し得る。例えば、1D基材(例えば、編織糸、縫糸)において、制御された体積圧密は、溶着プロセス(特にプロセス溶媒回収ゾーン4、乾燥ゾーン5、及び/又は溶着基材捕集ゾーン6)のうちの1つ以上の工程の間に基材に適切な量の張力がかかるように、乾燥ゾーン5を構成することによって、直径の縮小のみに制限される。同様に、2次元のシート型基材の例では、溶着プロセス(特にプロセス溶媒回収ゾーン4、乾燥ゾーン5、及び/又は溶着基材捕集ゾーン6)のうちの1つ以上の工程における基材の適切な張力及びピン止めは、制御された体積圧密を、基材厚さのみに影響し、基材の面積(長さ及び/又は幅)は変更しないように制約することができる。あるいは、シート型基材は、1つ以上の次元の方向において制御された体積減少を可能にし得る。
【0088】
制御された体積圧密は、乾燥ゾーン5で、基材が収縮する方向性を制御するため、又は完成した溶着基材を特定の形状又は形態に物理的に合致させるために、再構成湿潤基材の乾燥時に当該基材を保持する専用の装置によって、促進及び/又は制限することができる。例えば、ボール紙代用品型製品を、ロールの長さ又は幅方向に収縮することを防ぐが、材料が厚さ方向に収縮することは許容する、一連のローラーがある。別の例は、再構成湿潤基材をその上にプレスして、特定の3D形状をとり、乾燥時にその形状を保持することができる成形型である。
【0089】
本開示による溶着プロセスの一態様では、乾燥ゾーン5は、再構成湿潤基材が、気圧未満の圧力を受けることができ、比較的少量の乾燥ガスに曝露され得るように構成されてもよい。かかる構成において、再構成湿潤基材は、凍結乾燥されてもよい。この種の乾燥は、再構成溶媒が昇華したときに起こる収縮の量を防止又は最少化するのに有利となり得る。
【0090】
用いられる再構成溶媒が無害(例えば、水)である本開示による溶着プロセスの一態様では、乾燥ゾーン5を省略して、再構成湿潤基材が直接捕集へと進んでもよい。例えば、編織糸として構成された再構成湿潤基材は、捕集リールに巻き取られ、捕集後及び/又は捕集中に空気乾燥されてもよい。
【0091】
F.溶着基材捕集ゾーン
【0092】
溶着基材捕集ゾーン6は、溶着プロセスのうちの溶着基材(例えば、完成複合材)が捕集される部分であってもよい。本開示のいくつかの態様では、溶着基材捕集ゾーン6は、材料のロール(例えば、編織糸のコイル、ボール紙代用品等)として構成されてもよい。溶着基材捕集ゾーン6は、例えば、複合材押出品として構成された溶着基材からシート切断及び/又は成形する鋸又は打ち抜きスタンプを用いてもよい。一態様では、完成複合材の束を包装するために自動スタッキング装置を使用してもよい。更に、巻かれて包装された1D溶着基材の例では、巻取り及び包装の方法は、溶着プロセスの粘性抵抗に影響する1つ以上の変数に作用するように構成されてもよい。
【0093】
ある特定の1D基材(例えば、編織糸及び/又は類似の基材)に使用するように構成された本開示による溶着プロセスの一態様において、プロセス溶媒適用ゾーン2の直後又はプロセス温度/圧力ゾーンの直後のいずれかに、溶着基材を円筒又は管様構造の上にコイル状に巻く装置を用いることが有利となり得る。当該装置を使用して、基材がプロセス溶媒回収ゾーン4に入る前に、1次元基材から3次元の管様構造を製造することができる。その際、基材は新たな管様形状に合致してもよい。そのような装置は、以下の請求項にそのように示されない限り制限なく、機能性材料(例えば、編織糸に埋め込まれた触媒)を含有する編織糸基材から機能性複合材料を製造するように少なくとも部分的に構成された溶着プロセスを用いたときに、特に有用となり得ることが想到される。
【0094】
ある特定の1D基材(例えば、編織糸及び/又は類似の基材)に使用するように構成された本開示による溶着プロセスの別の態様において、プロセス溶媒適用ゾーン2の直後又はプロセス温度/圧力ゾーン3の直後のいずれかに、基材を製編又は製織することができる装置を用いることが有利となり得る。装置は、基材がプロセス溶媒回収ゾーン4に入る前に、基材から布地構造を製造するように構成されてもよい。かかる装置は、溶着プロセスが、他の製造手段では達成できない特異な特性を有する2D布地を製造し得るように構成されてもよい。
【0095】
ある特定の1D基材(例えば、編織糸及び/又は類似の基材)に使用するように構成された本開示による溶着プロセスの更に別の態様において、編織糸のコイル状パッケージを製造できる装置(例えば、トラバースカム)を用いることが有利となり得る。かかる装置は、溶着基材を巻いて、後で絡まることなく巻き出すことができるコイル様パッケージにするように構成されてもよい。
【0096】
G.溶媒捕集ゾーン
【0097】
上記のように、プロセス溶媒は、プロセス溶媒回収ゾーン4内で、再構成溶媒によってプロセス湿潤基材から洗い流されてもよい。したがって、再構成溶媒は、プロセス溶媒の種々の部分(例えば、イオン及び/又は任意の分子構成要素等)と混合されてもよい。この混合物(又は比較的純粋なプロセス溶媒又は再構成溶媒)は、溶媒捕集ゾーン7内の適切な点で捕集されてもよい。一態様において、捕集点は、プロセス湿潤基材の導入点付近に配置されてもよい。プロセス湿潤基材中のプロセス溶媒構成要素の濃度が最も低いのは、再構成溶媒中のプロセス溶媒構成要素の濃度が最も低い点であることから、かかる構成は、プロセス湿潤基材に対して向流の再構成溶媒を利用する構成にとって特に有用となり得る。この構成は、プロセス及び再構成溶媒の分離及びリサイクルを容易にするだけでなく、再構成溶媒の使用量を削減し得る。
【0098】
溶媒捕集ゾーン7では、種々の装置及び計装を使用して、再構成溶媒、プロセス湿潤基材、及び/又は再構成湿潤基材の少なくとも温度、圧力、組成、及び流量を監視及び制御してもよい。
【0099】
H.溶媒リサイクル
【0100】
一態様では、本開示による溶着プロセスは、混合された溶媒(例えば、部分再構成溶媒及び部分プロセス溶媒)を回収するように構成されてもよく、比較的純粋なプロセス溶媒、及び/又は比較的純粋な再構成溶媒は回収され、リサイクルされてもよい。再構成溶媒及びプロセス溶媒の分離、精製、及び/又はリサイクルには、様々な装置及び/又は方法を使用してもよい。任意の既知の又は後に開発された方法及び/又は装置を使用して、再構成溶媒及びプロセス溶媒を分離してもよく、かかる分離に最適な装置は、少なくとも上記2種の溶媒の化学組成に依存するであろう。したがって、本開示の範囲は、再構成溶媒及びプロセス溶媒の分離に使用される特定の装置及び/又は方法によって何ら限定されるものではなく、かかる装置及び/又は方法としては、共溶媒及び/又はイオン液体の単蒸留(例えば、米国特許第8,382,926号(特許文献2)に記載されている方法)、分別蒸留、膜を使用した分離(例えば、浸透気化及び電気化学的クロスフロー分離)、及び超臨界CO2相等が挙げられるがこれらに限定されない。再構成溶媒及びプロセス溶媒を十分に分離した後、それぞれの溶媒を、プロセス内の適切なゾーンへとリサイクルしてもよい。
【0101】
I.混合ガス捕集
【0102】
上記のように、再構成湿潤基材に絡む再構成溶媒は、乾燥ゾーン5で当該基材から除去されてもよい。一態様では、再構成溶媒ガスの一部をその中に有するキャリア乾燥ガスを含む混合ガス又は再構成溶媒ガスのいずれかが、乾燥ゾーン5から回収されてもよい。装置及び/又は計装を使用して、少なくとも回収ガスの温度、圧力、組成、及び/又は流量を監視及び制御してもよい。
【0103】
J.混合ガスリサイクル
【0104】
ガスは、回収されると、キャリア乾燥ガス、再構成溶媒のいずれか又は両方を分離及びリサイクルする装置に送られてもよい。一態様において、この装置は、一段又は多段凝縮器の技術であってもよい。分離及びリサイクルは、ガス透過膜及びその他の技術も含んでもよく、以下の請求項にそのように示されない限り制限されない。キャリアガスは、その選択に応じて、大気中に排出されても乾燥ゾーン5に戻されてもよい。再構成溶媒は、その選択に応じて、廃棄されても、プロセス溶媒回収ゾーン4にリサイクルされてもよい。
【0105】
一般的に、上記の態様にしたがって構成された溶着プロセスは、基材を含有する天然繊維及び/又は粒子を、基材供給ゾーン1、プロセス溶媒適用ゾーン2、プロセス温度/圧力ゾーン3、プロセス溶媒回収ゾーン4、乾燥ゾーン5、及び溶着基材捕集ゾーン6を使用する連続及び/又はバッチ式溶着プロセスにおいて、完成した溶着基材に変換するように構成されてもよい。いくつかの態様では、基材を基準としたプロセス溶媒の量、組成、時間、温度、及び圧力を監視及び制御することがきわめて重要となり得る。
【0106】
【0107】
図1を参照すると、基材は、任意の好適な方法及び/又は装置(例えば、押し込み、引抜き、搬送システム、スクリュー押出システム等)によって制御された速度で移動してもよい。一態様では、基材は、基材供給ゾーン1、プロセス溶媒適用ゾーン2、プロセス温度/圧力ゾーン3、プロセス溶媒回収ゾーン4、乾燥ゾーン5、及び/又は溶着基材捕集ゾーン6を連続的に通過してもよい。しかし、基材が1つのゾーン1、2、3、4、5、6から別のゾーンへと進む具体的な順序は溶着プロセスごとに異なっていてもよく、本開示による溶着プロセスのいくつかの態様で上述したように、基材は、乾燥ゾーン5へ移動する前に、溶着基材捕集ゾーン6を通過してもよい。加えて、一部の態様では、溶媒及び/若しくはその他の溶着プロセス構成要素並びに/又は装置が移動している間、基材は比較的静止したままでもよい。本開示により構成された溶着プロセスの任意の点で、自動化、計装、及び/又は装置を用いて、溶着プロセス及び/又はその装置の1つ以上の構成要素の監視、制御、報告、操作、及び/又はその他の方法での相互作用を行うことができる。かかる自動化、計装、及び/又は装置としては、基材、プロセス湿潤基材、再構成された基材、及び/又は完成した溶着基材に加えられる力(例えば、張力)を監視及び制御し得るものが挙げられるが、(以下の請求項に示されない限り)これらに限定するものではない。一般的に、溶着プロセスに用いられる種々のプロセスパラメータ及び装置は、所望のプロセス溶媒適用に対する粘性抵抗の量を制御するように構成されてもよい。溶着プロセスに用いられる種々のプロセスパラメータ及び装置は、制御された体積圧密を実施して、所望の特質、形状因子等を有する溶着基材が得られるように構成されてもよい。
【0108】
図1を更に参照すると、図に描かれている溶着プロセスの態様において、プロセス溶媒ループは、プロセス溶媒適用ゾーン2、プロセス温度/圧力ゾーン3、プロセス溶媒回収ゾーン4、溶媒捕集ゾーン7、及び溶媒リサイクル8として定義でき、その後、プロセス溶媒は再度プロセス溶媒適用ゾーン2へと移動してもよい。
【0109】
図1に示す溶着プロセスの別の態様では、再構成溶媒ループは、1つは液体状態の再構成溶媒のループで、もう1つはガス状態の再構成溶媒のループである、2つの別々のループとして定義されてもよい。液体再構成溶媒ループは、回収ゾーン4、溶媒捕集ゾーン7、及び溶媒リサイクル8を含んでもよく、その後、再構成溶媒は再度プロセス溶媒回収ゾーン4へと移動してもよい。ガス状再構成溶媒ループは、プロセス溶媒回収ゾーン4、乾燥ゾーン5、混合ガス捕集9、及び混合ガスリサイクル10を含んでもよく、その後、再構成溶媒は再度プロセス溶媒回収ゾーン4へと移動してもよい。ガス状気体再構成溶媒ループの態様では、再構成溶媒の一部が、再構成湿潤基材によって乾燥ゾーン5に運ばれてもよい。
【0110】
キャリアガスが使用される本開示による溶着プロセスでは、キャリアガスは、乾燥ゾーン5、混合ガス捕集9、及び混合ガスリサイクル10を含むループ内でリサイクルされてもよく、その後、乾燥ガスは再度乾燥ゾーン5へと移動してもよい。
【0111】
商業化のため、プロセス溶媒、再構成溶媒、キャリアガス、及び/又はその他の溶着プロセス構成要素のリサイクルはきわめて重要となり得る。更に、プロセス溶媒、再構成溶媒、キャリアガス、及び/又はその他の溶着プロセス構成要素のいずれのループも、バッファタンク、貯蔵容器等を含んでもよく、以下の請求項に示されない限り制限はない。以下に更に詳述するように、基材、プロセス溶媒、再構成溶媒、乾燥ガス、及び/又は所望の完成溶着基材の具体的な選択は、少なくとも、最適な溶着プロセス工程、その順序、溶着プロセスパラメータ、及び/又はそれに使用する装置に大きく影響し得る。
【0112】
上記説明を考慮すれば、本開示による溶着プロセスは、別個の処理工程に分離されてもよいことは明らかであろう。例えば、1つの溶着プロセスは、基材供給ゾーン1、プロセス溶媒適用ゾーン2、プロセス温度/圧力ゾーン3、及び溶着基材捕集ゾーン6の順序で構成され、続いて、プロセス湿潤基材をしばらく貯蔵又はエージングし、その後、プロセス溶媒回収ゾーン4及び/又は乾燥ゾーン5の機能を果たしてもよい。この場合も、いくつかの態様では、1つ以上の処理工程を省略してもよい(例えば、水を再構成溶媒として使用するときの乾燥ゾーン5)。更に、本開示による溶着プロセスのいくつかの態様では、いくつかの処理工程が同時に行われてもよく、又は以下の詳述するように、処理工程の終端部が自然に別の処理工程の開始部へ流れてもよい。
【0113】
ここで
図2を参照すると、溶着基材を製造するように構成できる別の溶着プロセスの種々の態様を示す概略図を与えている。図示されている溶着プロセスは、
図1に示されたものと類似しているが、
図2では、プロセス温度/圧力ゾーン3及びプロセス溶媒回収ゾーン4が、別個の溶着プロセス工程を構成するのではなく、合わせて1つの連続する溶着プロセス工程となっていてもよい。したがって、
図2に示された溶着プロセスは、2つの混合ガス回収ゾーン9を用いてもよく、溶媒捕集ゾーン7は主にプロセス溶媒を捕集し、溶媒リサイクルは主にプロセス溶媒に適応されてもよい(プロセス溶媒と再構成溶媒の混合物とは反対に)。かかる構成は、装置の単純化及び/又は圧密化に関連するいくつかの利点をもたらし得ると想到される。本開示による種々の溶着プロセスでは、プロセス溶媒回収ゾーン4は、
図2Aに概略的に示すように、再構成溶媒及びプロセス湿潤基材が対向して移動するように構成されてもよい。
【0114】
図2にしたがって構成された溶着プロセスの態様では、溶着プロセスは、再構成溶媒がプロセス溶媒の構成要素(例えば、3-エチル-1-メチルイミジゾリウム酢酸塩とアセトニトリルとの混合物を含むプロセス溶媒、及びアセトニトリルの再構成溶媒)である使用法に適応されてもよい。かかる構成では、以下にその利点のいくつかを詳述するが、揮発性アセトニトリルの一部を、溶着プロセスの任意の点でプロセス溶媒から捕獲及び分離することができ、当該プロセス溶媒は、制御された低圧力環境、キャリアガス、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない任意の好適な方法及び/又は装置を介して存在し、以下の請求項に指示のない限り制限はない。一般的に、十分な濃度の3-エチル-1-メチルイミジゾリウム酢酸塩は、いくつかの基材において分子間力を破壊し得る(例えば、セルロース中の水素結合)。したがって、プロセス温度/圧力ゾーン3とプロセス溶媒回収ゾーン4との組み合わせは、3-エチル-1-メチルイミジゾリウム酢酸塩のアセトニトリルに対するモル比が基材中の分子間力の破壊という所望の特性を引き起こすのに適している任意の場所で、一般的な溶着プロセスゾーンを構成し得る。この一般的な溶着プロセスゾーンは、適切な流量、温度、圧力、その他の溶着プロセスパラメータ等が正しく設計及び/又は制御されていれば、再構成及びリサイクルゾーンの全部又は一部をも構成し得る。
【0115】
図2を更に参照すると、基材は、この場合も、以下の請求項に示されない限り制限なく、任意の好適な方法及び/又は装置(例えば、押し込み、引抜き、搬送システム、スクリュー押出システム等)を使用して、制御された速度で溶着プロセス内を移動してもよい。一態様では、基材は、基材供給ゾーン1、プロセス溶媒適用ゾーン2、プロセス温度/圧力ゾーン3とプロセス溶媒回収ゾーン4の組み合わせ、乾燥ゾーン5、及び/又は溶着基材捕集ゾーン6を連続的に通過してもよい。しかし、基材が1つのゾーン1、2、3、4、5、6から別のゾーンへと進む具体的な順序は溶着プロセスごとに異なっていてもよく、本開示による溶着プロセスのいくつかの態様で上述したように、基材は、乾燥ゾーン5へ移動する前に、溶着基材捕集ゾーン6を通過してもよい。加えて、一部の態様では、溶媒及び/若しくはその他の溶着プロセス構成要素並びに/又は装置が移動している間、基材は比較的静止したままでもよい。本開示により構成された溶着プロセスの任意の点で、自動化、計装、及び/又は装置を用いて、溶着プロセス及び/又はその装置の1つ以上の構成要素の監視、制御、報告、操作、及び/又はその他の方法での相互作用を行うことができる。かかる自動化、計装、及び/又は装置としては、基材、プロセス湿潤基材、再構成された基材、及び/又は完成した溶着基材に加えられる力(例えば、張力)を監視及び制御し得るものが挙げられるが、(以下の請求項に示されない限り)これらに限定するものではない。
【0116】
図2を更に参照すると、図に描かれている溶着プロセスの態様において、プロセス溶媒ループは、プロセス溶媒適用ゾーン2、プロセス温度/圧力ゾーン3とプロセス溶媒回収ゾーン4との組み合わせ、(プロセス)溶媒捕集ゾーン7として定義でき、その後、プロセス溶媒は再度プロセス溶媒適用ゾーン2へと移動してもよい。
【0117】
図2に示す溶着プロセスの別の態様では、再構成溶媒ループは、1つは液体状態の再構成溶媒のループで、もう1つはガス状態のプロセス溶媒のループである2つの別々のループとして定義されてもよい。液体再構成溶媒ループは、プロセス温度/圧力ゾーン3とプロセス溶媒回収ゾーン4との組み合わせ、及び1つ以上の混合ガス捕集ゾーンを含んでもよく、その後、再構成溶媒は再度プロセス温度/圧力ゾーン3とプロセス溶媒回収ゾーン4との組み合わせへと移動してもよい。ガス状再構成溶媒ループは、乾燥ゾーン5、少なくとも1つの混合ガス捕集9、及び混合ガスリサイクル10を含んでもよく、その後、再構成溶媒は再度プロセス温度/圧力ゾーン3とプロセス溶媒回収ゾーン4との組み合わせへと移動してもよい。ガス状気体再構成溶媒ループの態様では、再構成溶媒の一部が、再構成湿潤基材によって乾燥ゾーン5に運ばれてもよい。
【0118】
キャリアガスを使用する本開示による溶着プロセスでは、キャリアガスは、乾燥ゾーン5、少なくとも1つの混合ガス捕集8、及び混合ガスリサイクル10を含むループ内でリサイクルされてもよく、その後、乾燥ガスは再度乾燥ゾーン5へと移動してもよい。
【0119】
図2に示す溶着プロセスの態様では、溶着プロセスは、キャリア揮発分捕獲ループも含んでもよく、当該ループは、プロセス温度/圧力ゾーン3とプロセス溶媒回収ゾーン4との組み合わせ、少なくとも1つの混合ガス捕集8、及び混合ガスリサイクル10を含んでもよい。再構成溶媒がプロセス溶媒中に存在し得る本開示による溶着プロセスの態様では、溶着プロセスは1つよりも多くのキャリアガスループを含んでもよい。例えば、プロセス溶媒が3-エチル-1-メチルイミジゾリウム酢酸塩とアセトニトリルとの混合物として構成された場合、アセトニトリルは再構成溶媒の役割を果たすことができる。
【0120】
いくつかの溶着プロセスでは、1つ以上の電気制御弁、駆動輪、及び/又は基材ガイド(例えば、新しいルーズな端部又は破断した編織糸の端部を、人間の介入がほとんど又はまったくなく、溶着プロセスの装置に(再)糸掛けする糸ガイド)を含むことが有利となり得ると想到される。そのように構成された溶着プロセスは、そのように構成されていない溶着プロセスと比較して、溶着プロセスのダウンタイムの量及び溶着プロセスに必要な人間の接触の量の両方を削減し得ると想到される。
【0121】
一態様では、プロセス溶媒回収ゾーン4は、再構成溶媒がプロセス湿潤基材に導入される間にプロセス湿潤基材が捕集され得るように構成されてもよい。例えば、編織糸及び/又は縫糸を基材として使用するように構成された溶着プロセスでは、巻取り機構をプロセス温度/圧力ゾーン3の終端部に配置することができる。一態様では、巻取り機構は、再構成溶媒がプロセス湿潤基材に導入されるように(例えば、噴霧によって)含まれてもよく、プロセス湿潤基材は連続的に洗浄されて再構成湿潤基材に変換されてもよい。かかる構成は、基材がプロセス溶媒回収ゾーン4から乾燥ゾーン5へと連続的に流れる必要がない点で、溶着プロセス全体の大幅な簡素化につながる可能性がある。代わりに、再構成は、バッチプロセスとして起こる可能性がより大きく、基材の特定の部分(例えば、編織糸を巻いて、連続する、もつれていない実体にした、編織糸の円筒又はボール)を製造及び再構成できる。ある点で、再構成湿潤されたパッケージを二次再構成プロセスに移送すること及び/又は乾燥ゾーンに送って再構成溶媒を除去することが可能である。
【0122】
別の態様では、溶着プロセスは、基材がプロセス温度/圧力ゾーン3~プロセス溶媒回収ゾーン4~乾燥ゾーン5と連続的に移動できる連続プロセスとして構成される。かかる構成では、基材に張力が加わる場合があり、時として破損を引き起こすことがあり、これは溶着プロセスの効率にとって非常に問題となり得る。したがって、溶着プロセスは、ローラー、滑車、並びに/又は溶着プロセスを通る基材の動きを補佐し、破損を低減及び/若しくは排除するその他の好適な方法及び/又は装置を用いて構成されてもよい。
【0123】
追加的に及び/又は代替的に、溶着プロセスは、基材が溶着プロセスの全部又は一部で受ける張力の量を低減するように構成されてもよい。かかる構成では、基材は、個別の管を通る(これは高額で、再糸掛け(rethreading)がより困難にもなり得る)のではなく、再構成溶媒がプロセス湿潤基材に適用され得る(例えば、以下に更に詳述するアプリケータを介して)、特定の空間内を移動してもよい。かかる構成は、任意の基材フォーマットと共に使用してもよく、かかる構成は、単独又は互いに隣接して配置された複数の別個の基材を含むシート状の構成のいずれかの1D基材(例えば、編織糸及び/又は縫糸)、及び/又は2D基材(例えば、布地及び/又は織物)にも特に有用となり得ると想到される。そのように構成されたプロセス溶媒回収ゾーン4は、基材への摩擦及び/又は不要な張力の蓄積を軽減及び/又は排除し、これは溶着プロセスの基材処理量を増大し得る。
【0124】
4.溶媒適用ゾーン:装置/方法
【0125】
プロセス溶媒適用に関連する粘性抵抗の概念の種々の態様を
図6Aに示す。この図はプロセス溶媒適用ゾーン2に使用され得る装置の断面図を与える。天然繊維基材は、単位断面及び/又は単位面積当たりの繊維密度が異なる場合がある。基材の単位質量当たりの基材に適用されるプロセス溶媒の質量比が十分に制御されるように、基材へのプロセス溶媒適用を変調することができる。これは、基材の相違を適切なセンサで積極的に監視すること、及びこのデータを用いてプロセス溶媒ポンプの速度及び/若しくはプロセス溶媒適用ゾーンを通る基材の速度及び/又はプロセス溶媒組成を制御することによって実現できる。あるいは、プロセス溶媒適用を制御するために、適切な搾力(squeezing force)及び/又は剪断をプロセス湿潤基材に適用する粘性抵抗の点を作ることが可能である。粘性抵抗の設計は、プロセス溶媒を適切にプールできる小さい体積を含んでよい。その際、プロセス溶媒は、プロセス溶媒の基材に対する質量比が、安定した値を保つか又は所望の許容範囲内で変調されるかのいずれかとなるように適用することができる。(変調された繊維溶着プロセスは、以下により詳細に記載する)。
【0126】
溶着プロセスの一態様(以下の請求項にそのように示されない限り制限されることなく、変調又は非変調のいずれか)では、溶着プロセスは、インジェクタを介してプロセス溶媒を適用するように構成されてもよい。インジェクタの1つの構成では、インジェクタは、2つの入口及び1つの出口を有する細管を備えてもよい。編織糸(又はその他の1D基材)を含む基材は、1つの入口から入ってもよく、プロセス溶媒はもう1つの入口に流れ込んでもよい。プロセス湿潤基材(プロセス溶媒が適用された編織糸)は、出口から出てもよい。インジェクタは、機能性材料、追加のプロセス溶媒、及び/又はその他の構成要素を添加するための追加の入口を含んでもよい。本明細書で上述したように、プロセス湿潤基材(例えば、プロセス溶媒が適用された編織糸、縫糸、布地、及び/又は織物)は、プロセス溶媒適用ゾーン2の後、プロセス温度/圧力ゾーン3へと進んでもよい。
【0127】
図6Aに示すように、インジェクタ60は、1D又は2D基材(例えば、それぞれ、編織糸又は布地)のいずれかに使用するように構成されてもよい。インジェクタは、基材入口61及び反対側の基材出口64を含んでもよい。インジェクタ60は、制御された量のプロセス溶媒を1つ以上の基材(当該基材は、布地、織物、編織糸、縫糸等を含んでもよい)に送達するように構成されてもよく、一般的には、プロセス溶媒を基材周辺及び基材内に適切に分配するように更に構成されてもよい。例えば、非変調溶着プロセスでは、プロセス溶媒を所与の基材全体に均一に分布させることが望ましい場合があるのに対し、変調された溶着プロセスでは、所与の基材におけるプロセス溶媒の分布に変化をつけることが望ましい場合がある。
【0128】
そのように構成されたインジェクタ60の一例は、T字形の断面を有するシェルを備えてもよく、その際1D又は2D基材は、インジェクタに入り、比較的真っ直ぐな経路を通って出てもよい。プロセス溶媒は、二次的入口を通って圧送されてもよく、当該入口は基材の入口に対して概ね垂直な経路にあってもよい。かかる構成のインジェクタ60を
図6Aに示す。
【0129】
図6Aに示すように、インジェクタ60は、未加工基材(編織糸、縫糸、布地、織物等)が供給され得る基材入口61を備えてもよい。インジェクタ60は、基材入口61の一部と流体連通するプロセス溶媒入口62も含んでもよい。したがって、プロセス溶媒は、プロセス溶媒入口62を通ってインジェクタ60に流れ込み、適用界面63に隣接する基材に絡んでもよい。インジェクタ60のこの部分は、上記のように、プロセス溶媒適用ゾーン2を構成してもよい。
【0130】
1D基材に使用するように構成されたとき、インジェクタ60の基材入口61から基材出口64までの部分は、管様に構成されてもよい。2D基材に使用するように構成されたとき、インジェクタ60の上記部分は、間隔を空けた2枚のプレートとして構成されてもよい(以下に更に詳述する
図6Cに示す装置と類似している)。基材及び/又はプロセス湿潤基材は、2枚のプレート82、84の間の空間に配置されてもよく、少なくとも1つのプレート82、84は少なくとも1つのプロセス溶媒入口63を有して形成されてもよい。
【0131】
基材出口64は、一般的に基材入口61の反対側にあるインジェクタ60の部分と係合してもよい。インジェクタ60の1つの構成において、基材出口64は、
図6Aに示すように、非直線状でもよい。非直線状の基材出口64は、プロセス湿潤基材の外面と物理的に接触して、プロセス溶媒を基材の所望の部分へと方向づけるように構成されてもよく、この物理的接触は、少なくとも1つ以上の変曲点で達成されてもよく、これは剪断力及び/又は圧縮力を基材にもたらし得る。加えて、非直線状の基材出口64は、プロセス湿潤基材の外面と物理的に接触するように構成されてもよい。この物理的接触は、所与の溶着プロセスの所望の粘性抵抗を達成する一態様となり得る。物理的接触は、プロセス湿潤基材の外面に更に平滑性を加え、得られる溶着基材の短い毛/繊維を排除及び/又は削減するように構成されてもよい。プロセス湿潤基材との物理的接触は、プロセス溶媒から基材及び/又はプロセス湿潤基材への熱伝達も改善する場合があり、この熱伝達は、必要な処理時間(例えば、溶着時間)を短縮し、それによって溶着チャンバの長さの短縮及び所与の溶着プロセスに関連する装置に必要なスペースの削減がなされる可能性がある。基材及び/又はプロセス湿潤基材との物理的接触は、(1、2、及び/又は3次元で変曲点を作るための)多数の設計を検討することによって、達成されてもよく、その例としては、限定するものではないが、基材入口61、適用界面63、及び/又は基材出口64の寸法(例えば、直径、幅等)及び/又は湾曲を変えること、及び/又はこれらの組み合わせ、別の構造を基材及び/又はプロセス湿潤基材に隣接して配置すること(例えば、ワイパー、バッフル、ローラー、可撓性オリフィス等)等が挙げられ、以下の請求項にそのように示されない限り制限されない。
【0132】
あるいは、インジェクタは、Y字形であるように構成されてもよく、及び/又は1つ以上のインジェクタが、プロセス溶媒、機能性材料、及び/又はその他の構成要素を、特定の場所で、特定の条件下で、溶着プロセスの1つ以上の点において加えるための複数段階に構成されてもよい。
【0133】
一態様において、インジェクタは、編織糸受取部と共に使用されてもよく、その際インジェクタ及び編織糸受取部はいずれも、レールシステム及び/又はインジェクタ及び編織糸受取部を一方向に沿って選択的に配置できるその他の好適な方法及び/又は装置上を滑動するように構成されてもよい。1つ以上のインジェクタ及び/又は編織糸受取部を少なくとも1つの方向に選択的に操作できるように(例えば、レールシステムの長さ方向に沿って滑動できるようにすることで)構成された溶着プロセスは、かかる選択的操作のない溶着プロセスと比べて、編織糸及び/又は縫糸を溶着プロセスの任意の点(特に、プロセス温度/圧力ゾーン3で)に再度通すために必要な時間及び/又は資源を削減する可能性があり、同時に、(より)高密度の溶着プロセスを比較的小さい空間内で多重化することを可能にし得る。
【0134】
例えば、同時に処理される「n」本の編織糸で構成される溶着プロセスでは、外側の糸にしか容易にアクセスできない。このため、個々の編織糸が切れた場合に、再糸掛けが困難となり得る。取り外し可能な、軌道搭載型インジェクタを、基材供給ゾーン1、プロセス溶媒適用ゾーン2、及び/又はプロセス温度/圧力ゾーン3の開始部分に有することによって、(人又は自動化装置は)インジェクタを容易に外し、それを、溶着プロセスに配置された基材のグループの終端部に動かして、再糸掛けすることができる。一部の用途では、インジェクタをクラムシェル(2枚貝)型に構成すると有利となり得るが、以下の請求項にそのように示されない限り制限されることなく、管のアセンブリであることもできると想到される。すなわち、インジェクタは、少なくとも2つの材料が編織糸又は編織糸のグループを包囲する「クラムシェル」形状に設計することができる。これは、最初に溶着プロセス機械に編織糸を装填するのを容易にし、編織糸の複数の端部に適切な粘性抵抗を同時にもたらすシステムの設計にも適する。任意の特定のインジェクタが除去されると、他のインジェクタが既存の空隙を閉じる位置まで滑り落ち、溶着プロセス用装置の1つの縁部に位置する新たな空隙を形成する。任意の所与のプロセスゾーンの端部又はその付近に配置された一連の受取ユニットは、連携して作動し、それに応じて移動する場合もあり、その結果個々の編織糸は、それぞれの新たな位置へと移動する。
【0135】
受取ユニットの最適構成は、溶着プロセスの態様ごとに変動する場合があり、少なくとも基材のサイズ、使用するプロセス溶媒、及び/又は使用する基材の種類によって変わり得る。一態様において、受取ユニットは、編織糸をプロセス溶媒回収ゾーン4及び/又は乾燥ゾーン5へ方向付ける単純な滑車又は編織糸ガイドを含んでもよい。別の態様では、受取ユニットは、プロセス溶媒適用ゾーン2、プロセス温度/圧力ゾーン3、プロセス溶媒回収ゾーン4、及び/又は乾燥ゾーン5の構成等、溶着プロセスがどのように構成されているかに応じて、かなり複雑(すなわち、巻取機構)になり得る。
【0136】
プロセス溶媒適用に関係する粘性抵抗の概念を例証する別の装置を
図6Bに示す。装置は、トレイ70として構成されてもよく、
図6Bに示すように1D及び2Dの両方の基材を使用するように構成されてもよい。表示のとおり、トレイ70は、トレイ70の表面に形成された1つ以上の基材溝72と共に構成されてもよい。トレイ70は、プロセス溶媒を複数の基材(
図6Bに示す1D基材)に同時に適用できるような、複数の溝72を有してもよい。
【0137】
図6Bに示す溝72は直線的でもよいが、トレイ70の他の態様では、溝は、
図6Aに示すインジェクタ60及び
図6Cに示すプレートと相関的に非直線的であってもよい。すなわち、トレイ70及びその溝72は、トレイ70及び/又は溝の一部が基材の一部と物理的に接触するように構成されてもよい(物理的接触は、粘性抵抗を最適化するための検討事項となり得る)。物理的接触は、(変曲点、剪断力、圧縮等を1、2、及び/又は3次元で生じるための)多数の設計上の検討によって達成されてもよく、その例としては、限定するものではないが、溝72の深さ、溝72の断面形状、溝72の幅、溝72の湾曲及び/又はこれらの組み合わせを変えること、及び/又は別の構造を基材及び/又はプロセス湿潤基材に隣接して配置すること(例えば、ワイパー、バッフル、ローラー、可撓性オリフィス等)等が挙げられ、以下の請求項にそのように示されない限り制限はない。
【0138】
1つの構成において、1D基材の間隔は、
図6Cに更に例示するように、多数の基材が2次元平面又は「シート」内で本質的に一緒に移動する点まで削減できる。別の構成では、溝72の幅は、概して2次元の布地及び/又は織物のシートが、溝72を通ってトレイ70に対して移動できるように選択されてもよい。
【0139】
一般的に、プロセス溶媒は、基材が溝72に沿って移動すると、プロセス溶媒が当該基材に適用されてプロセス湿潤基材を形成するように、各溝72及び/又はその一部に連続的に供給されてもよい。溝72にはプロセス溶媒が溢れてもよく(この構成では、溝72は、プロセス溶媒浴に似た機能を果たし得る)、かつ/又はプロセス溶媒は溝72の先端に隣接する基材に適用され、その後基材が溝の後端に向って移動するときに基材の外面部分に沿って適切に拭き取られてもよい。溶着プロセスの1つの構成では、トレイ70は、プロセス溶媒への重力を用いるために水平に対して角度をつけてもよく、最適な角度は、少なくとも、トレイ70に対する基材の移動の速度及び方向に依存し得る。
【0140】
各溝72の最適な構成は、溶着プロセスの適用ごとに変動すると予想され、したがって、以下の請求項にそのように示されない限り、本開示の範囲を何ら限定するものではない。各基材の平均直径以上の距離で横方向に間隔を空けた複数の1D基材を構成する場合、溝72の幅は、その深さとほぼ同じであってもよく、各寸法は、基材の平均直径よりも約10%大きくてもよいことが想到される。
【0141】
各溝72の最適な断面形状も、溶着プロセスごとに変動し得る。例えば、一部の用途では、溝72(又は少なくともその底部分)の断面形状は、基材(又は少なくともその一部)の断面形状とほぼ同じ及び/又は一致することが最適となり得る。例えば、1Dの編織糸又は縫糸を含む基材に使用するために構成される場合、溝72は、U字形の断面で構成されてもよい。2Dの布地又は織物を含む基材に使用するために構成される場合、溝72は、幅がその深さよりもはるかに大きく(例えば、10倍、20倍等)構成されてもよい。ただし、溝72の特定の断面形状、深さ、幅、構成等は、以下の請求項にそのように示されない限り、本開示の範囲を何ら限定するものではない。
【0142】
2Dシートに近い複数の1D基材(縫糸及び/又は編織糸を含み得る)に使用するために構成されたプロセス溶媒適用ゾーン2の構成を
図6Cに示す。プロセス溶媒適用ゾーン2は、少なくとも1つの次元において少なくとも3点の物理的接触(すなわち、変曲点)を生じるように、相当する屈曲を有する第1のプレート82及び第2のプレート84を用いてもよい。その他の構成では、プレート82、84を異なる構成として、1つ以上の寸法(次元)において、より多い又は少ない変曲点を作ってもよく、その際変曲点は、基材及び/又はプロセス湿潤基材に、より多くの抵抗又はより少ない抵抗を加えるように構成されてもよい。物理的接触は、(1、2、及び/又は3次元で変曲点を作るための)多数の設計上の検討によって達成されてもよく、その例としては、限定するものではないが、プレート82、84間の距離、プレート82、84のいずれかの湾曲を変えること、一方のプレート82、84の曲面の凹部が他方のプレート82、84の曲面の凸部と対応するか否か、及び/若しくはこれらの組み合わせ、並びに/又は別の構造を基材及び/又はプロセス湿潤基材に隣接して配置すること(例えば、ワイパー、バッフル、ローラー、可撓性オリフィス等)等が挙げられ、以下の請求項にそのように示されない限り制限はない。
【0143】
別の構成では、粘性抵抗は、少なくとも、1つ以上の構造上の構成要素の相対的位置に基づいて変動し得る。例えば、具体的に
図6D、
図6E、及び
図6Fを参照すると、プレートは、その内縁が調節可能な量で重なり合うように構成されてもよい。
図6Eに示すように、内縁の重なりがより大きい場合、対応するプレート間に配置された基材は、プレートに対する移動への物理的抵抗がより大きくなる可能性がある。
図6Eに示すように、内縁の重なりがより小さい場合、対応するプレート間に配置された基材は、プレートに対する移動への物理的抵抗がより小さくなる可能性がある。互いに隣接して配置された複数の1D基材に使用するために構成された溶着プロセスに適用された調節可能な重なりを図に示す。プレートの相対的位置が調節可能であることにより、所与の装置に使用する複数のプロセス溶媒及び/又は溶着プロセスに用いる所与の装置を、異なる特質を有する溶着基材を製造するように構成することができる。
【0144】
粘性抵抗の概念並びに
図6A及び
図6Bに関して上に記載したように、
図6C、
図6D、及び
図6Eにおけるプレート82、84は、プロセス溶媒適用を制御するように構成されてもよい。
図6A~
図6Eに示す設計は、以下の請求項にそのように示されない限り何ら限定することを意味するものではなく、プロセス溶媒を基材に適切に適用して、並びに/又は基材及び/若しくはプロセス湿潤基材と適切に相互作用して、溶着基材に所望の特質を達成するために、任意の好適な構造及び/又は方法を使用してもよい。すなわち、適切な量の粘性抵抗は、任意の数の構造(当該構造は、所望のプロセス溶媒適用効果を達成するための予め設定された公差まで移動できる)又は方法によって達成することができ、その例としては、ローラー、形状化された縁部、平滑面、変曲点の数及び/又は向き、相対的移動に対する抵抗、温度変動等が挙げられるが、以下の請求項に他の指示がない限り、これらに限定されない。
【0145】
溶着プロセスの別の構成(変調又は非変調のいずれかであり、以下の請求項にそのように示されない限り制限はない)では、溶着プロセスは、アプリケータを用いてプロセス溶媒を適用するように構成されてもよい。アプリケータの1つの構成では、適用は、インクジェットプリンタ、スクリーン印刷技術、スプレーガン、ノズル、浸漬タンク、又は傾斜トレイ、及び/又はこれらの組み合わせで使用されるものと相関関係にあってもよく(その一部は少なくとも
図6A~
図6Fに示され、上に詳述されている)、以下の請求項にそのように示されない限り制限はない。溶着プロセスは、基材(例えば、編織糸、縫糸、布地、及び/又は織物)がアプリケータに対して正しく配置されているときに、アプリケータがプロセス溶媒を基材へと方向付け、それによってプロセス湿潤基材を作製するように構成されてもよいと想到される。かかる溶着プロセスは、プロセス溶媒及び/又は機能性材料が、多次元パターンに適用され得るように構成されてもよく、これは溶着プロセスを使用して織物及び/又は布地にパターンをエンボス加工するのに有用となり得る。かかるパターンは、変調された溶着プロセス(以下に更に詳述する)を構成してもよく、その際変調は、少なくとも、基材へのプロセス溶媒適用の結果である。本明細書で上述したように、プロセス湿潤基材(例えば、プロセス溶媒が適用された編織糸、縫糸、布地、及び/又は織物)は、プロセス溶媒適用ゾーン2の後、プロセス温度/圧力ゾーン3へと進んでもよい。
【0146】
図11A~
図11Dを参照すると、インジェクタ又はアプリケータを使用した変調溶着プロセスの構成において、変調溶着プロセスは、少なくとも、個別プロセス溶媒構成要素の少なくともポンプ流量を制御することによって、リアルタイムでプロセス溶媒の組成を変動させることができる。変調溶着プロセスは、少なくとも、プロセス溶媒構成要素のポンプ流量を制御することによって及び/又は少なくともプロセス溶媒適用ゾーン2を通る基材の可変速度によって、プロセス溶媒の基材に対する比(体積基準又は質量基準のいずれか)を変動させることができるように構成されてもよい。かかる変調溶着プロセスの概略図を、2D基材用は
図11Bに示し、1D基材用は
図11Dに示し、その全てについて、以下に更に詳述する。
【0147】
ここで
図11A(2D基材)及び11C(1D基材)を参照すると、変調溶着プロセスは、任意の好適な方法及び/又は装置によって温度を変調できるように構成されてもよく、その例としては、限定するものではないが、マイクロ波加熱、対流、伝導、放射、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられ、以下の請求項にそのように示されない限り制限されない。変調溶着プロセスは、基材及び/又はプロセス湿潤基材が受ける圧力、張力、粘性抵抗等の変調が可能となるように構成されてもよい。変調溶着プロセスの種々のパラメータ(上記の条件を含むがこれらに限定されない)の変調の総合的作用により、特異な染料及び/又は着色パターン並びに特異な感触及び/又は仕上げを示す溶着糸を含む溶着基材を製造することができる。
【0148】
逆に、上記のように、溶着プロセスは、種々のプロセスパラメータ(例えば、プロセス溶媒組成、プロセス溶媒の基材に対する質量比、温度、圧力、張力等)を変調することなく、溶着プロセスが非常に一貫して作動するように構成することによって、終始一貫した特徴(例えば、着色、サイズ、形状、感触、仕上げ等)を有する溶着基材が得られるように構成されてもよい。
【0149】
互いに隣接して配置された複数の1D基材から溶着基材(例えば、隣接して配置された複数の編織糸を含むシート状構造)を大量生産するために構成された溶着プロセスの一態様では、編織糸の複数の端部をシートとして移動させることができ、これは一部の溶着プロセスの規模の経済を改善し得る。本明細書に開示されたものと同じ2D基材(例えば、布地、紙基材、織物、及び/又は複合材マット基材)用に構成された溶着プロセスに関する概念及び原則は、互いに隣接して配置された複数の1D基材に適用され得る。
【0150】
例で説明すると、複数の1D基材をシート様の構成に溶着するように構成された溶着プロセスは、2D基材(例えば、布地及び/又は織物)を溶着するように構成された溶着プロセスと類似し得るが、1D基材用溶着プロセスは、いくつかの重要な差異を有し得ると想到される。かかる差異としては、限定するものではないが、1つの基材がそれ自体及び/又は別の基材(例えば、個別の編織糸)と絡まる可能性を低減及び/又は排除するための適応(例えば、編織糸ガイド)が挙げられ、プロセス溶媒適用には、個別の編織糸用又は編織糸のグループ用のいずれかのインジェクタを使用し得る。あるいは、溶着プロセスは、プロセス溶媒が、噴霧、含浸、吸上げ、浸漬、及び/又はその他の方法でプロセス溶媒を制御された速度でシート様構成に導入されることによって、シート様構成の1D基材に直接適用される場合に、インジェクタを必要としないように構成されてもよい。したがって、本開示によると、種々の装置及び/又は方法は、大量生産規模の高度に多重化された溶着プロセスが得られるように構成されてもよい。
【0151】
A.低水分基材
【0152】
セルロース(すなわち、綿、亜麻布、再生セルロース等)及びリグノセルロース(すなわち、工業用大麻、アガーベ等)繊維は、十分な(5~10質量%)水分を含有することが知られている。水分レベルは、例えば、綿では、拾遺温度及び相対湿度に応じて概ね6~9%で変動し得る。加えて、3-エチル-1-メチルイミダゾリウム酢酸塩(「EMIm OAc」)、3-ブチル-1-メチルイミジゾリウム塩化物(「BMIm Cl」)、及び1,5-ジアザ-ビシクロ[4.3.0]ノン-5-エニウム酢酸塩(「DBNH OAc」)等のIL系溶媒は、合成中及び/又は周囲からの吸収により、水で汚染されていることが多い。更に、アセトニトリル(ACN)のような、プロセス溶媒への分子成分添加剤も含水性である。一般的に、水の存在は、純粋なイオン液体及び分子成分添加剤を有するIL系溶媒のバイオポリマー基材溶解に対する有効性に悪影響を与える。ただし、最小で数ポイント(質量%)の水をこれらの溶液から除去することは困難及び/又は資源集約的である場合がある。イオン液体及びIL系溶媒のコストは、その純度、特に、水分含有量と直接相関し得る。したがって、溶着プロセスは、溶着基材の性能を改良するため並びにかかる溶着プロセスの全体的な経済性を改良するために、低水分基材を利用するように構成されてもよい。
【0153】
低水分基材材料は、イオン液体及びIL系プロセス溶媒を使用する溶着プロセスに有用であることに加え、プロセス溶媒としてN-メチルモルホリンN-オキシド(NMMO)を使用する繊維溶着プロセスにも有用となり得る。一般的に、4~17質量%が水であるNMMO溶液は、セルロース溶解の能力があり、リヨセル型プロセスに使用できる。十分な乾燥バイオポリマー含有基材材料を使用することは、上限(約17質量%)の含水量のプロセス溶媒を用いて溶着プロセスを構成してもよく、なおも効率的かつ経済的に所望の溶着基材を製造することを意味する。感湿性であるイオン液体(例えば、3-ブチル-1-メチルイミジゾリウム塩化物(「BMIm」)Cl、3-エチル-1-メチルイミダゾリウム酢酸塩(「EMIm OAc」)、1,5-ジアザ-ビシクロ[4.3.0]ノン-5-エニウム酢酸塩(「DBNH OAc」)等)を含むプロセス溶媒を使用するために構成された溶着プロセスでは、基材中の水分量が、溶着が起こる速度に影響し、したがって、関連するプロセスパラメータ及び装置設計に影響する可能性がある。上に開示されたいくつかのイオン液体よりも感湿性が低いプロセス溶媒(例えば、NMMO、LiOH-尿素等)を使用するために構成された溶着プロセスでは、比較的乾燥した基材の利点が低減及び/又は排除される。
【0154】
したがって、実験は、溶着前に低水分状態(<5質量%)まで人工的に乾燥したバイオポリマー基材を使用するように構成された溶着プロセスの驚くべき結果を示している。低水分基材は、溶着プロセスの速度を上げると同時に、溶着基材の品質(すなわち、強度、浮遊繊維(stray fiber)の欠如等)を改良する。更により意外なことに、水は、低水分バイオポリマー基材の強力な乾燥特性によってイオン液体及びIL系プロセス溶媒から除去される。一態様において、水は、非水性媒体(例えば、ACN)によって再構成されたイオン液体及びIL系プロセス溶媒から除去されてもよい。事実、低水分基材は、プロセス溶媒及び再構成溶媒の水のいずれも、それが繊維溶着プロセス内を連続的にリサイクルされる間に精製する。
【0155】
低水分基材材料は、例えば、感湿性イオン液体を含むプロセス溶媒を利用する溶着プロセスに導入する前に、十分に乾燥した(及び場合により、温暖な、例えば約40~80℃)の雰囲気で、制御された時間にわたり、材料をプレコンディショニングすることによって得てもよい。バイオポリマー含有基材を、溶着プロセスの前及び実施中に、制御された環境下に保つことは重要となり得る。更に、バイオポリマー基材内の空間の特定の領域に意図的に水を導入することは、その場所での溶着を遅延する効果がある場合があり、溶着プロセスを変調する別の方法も可能になる場合がある。その方法を数種類、以下に記載する。
【0156】
一般的に、人工的に乾燥した基材(例えば、基材供給ゾーン1への導入の前に乾燥された基材及び/又は基材供給ゾーン1の全部又は一部で乾燥された基材)を利用するように構成された溶着プロセスは、溶着プロセス及び/又はそれによって製造された溶着基材の経済性を改良する驚くべき新たな相乗効果をもたらすことが、実験で明らかになっている。例えば、綿基材を水分5質量%未満まで乾燥することで、BMIm Cl+ACN溶液(又はその他の感湿性プロセス溶媒系)を使用したときの溶着の一貫性及び/又は制御を劇的に改良できる。更に、乾燥綿基材を連続使用した場合及びプロセス溶媒を複数回リサイクルした場合、装置が外部の水(例えば、大気中の水)から適切に封止されている限り、プロセス溶媒(例えば、BMIm Cl+ACN)及び再構成溶媒(例えば、ACN)の両方の水分が低下し得ることが実験で明らかにされている。乾燥綿基材の乾燥特性は、含水量が低下するにつれて大きくなる。換言すれば、水分3質量%の綿は、水分4質量%の綿よりも乾燥作用が大きい。
【0157】
5.商業規模で製造された溶着基材の特性
【0158】
上の記載は、本開示による溶着プロセスを用いて製造され得る種々の新規材料(当該材料は一般的に、1D溶着基材及び2D溶着基材と呼ばれる)の特性を開示する。以下の特性は、以下の材料が大量に(例えば、商業規模で)製造された場合に、当該材料にのみ存在することから、従来技術に照らして、新規かつ非自明的である。当該材料特性は、織物の製造コスト削減並びに天然基材(例えば、綿)含有織物の新規利用を可能にし得る。
【0159】
石油系材料(例えば、ポリエステル等)は、フィラメント型編織糸及びステープルファイバー編織糸の両方を製造するように構成できることは周知である。本明細書で使用するとき、「ステープルファイバー編織糸」という用語は、比較的短い、別個の長さを有する繊維(ステープルファイバー)から紡糸した編織糸を意味する。ただし、本明細書に開示するプロセス及び装置以前には、天然ステープルファイバーから誘導されたフィラメント型編織糸であって、天然ステープルファイバー(及び、結果的に、当該ファイバーから誘導されたフィラメント型編織糸)が当該ステープルファイバーの元々の特性、構造等をある程度保持するものは存在しなかった。本明細書に開示されるプロセス及び装置は、レーヨン、モダール、テンセル(登録商標)等に関する全ての先行教示との差別化が可能であり、人工ステープルファイバーは、セルロースの完全溶解及び/又は誘導体化から製造され、その後押出加工される(完全溶解は、NMMO、イオン液体系のシステム等を用いて達成され得る)。レーヨン、モダール、テンセル(登録商標)等の場合、セルロース性前駆体は完全に溶解及び変性されて、ステープルファイバーの元となったセルロース源(例えば、ブナ木パルプ、竹パルプ、綿繊維等)を判断することは事実上不可能である。対照的に、本開示に従って製造された溶着基材は、以下に更に詳述するように、基材中のステープルファイバーのいくつかの特性、特徴等を維持する。これらの本来の特質、特徴等の維持において、本発明の方法及び装置は、従来技術と比べて、使用する溶着基材の単位当たりのプロセス溶媒が相対的に少量であり、更には従来は合成及び/又は石油系のフィラメント型編織糸に付随していた新たな機能(例えば、水分低下、強度増大等)を可能にする。これらの新規溶着基材及びその機能は、次には、従来技術では不可能であった新たな布地全体への適用を可能にする。溶着基材がこれらの機能をどの程度発揮するかは、少なくとも、溶着基材の製造に使用した溶着プロセスの構成に依存する。
【0160】
本開示の溶着プロセスを用いて製造され得る1D溶着基材に含まれるのは、撚っていない「単糸」及び撚糸(編織糸及び縫糸)並びに「溶着糸基材」である。上記の特質及び例は、溶着糸基材に帰属され得るが、本開示の範囲は、以下の請求項に示されない限り、そのように限定されず、用語「1D溶着基材」はそのように限定されない。
【0161】
一般的に、溶着糸基材は、少なくとも次の点で従来の原糸基材相当品と区別される:(1)編織糸を構成する個別の繊維の間の空きスペースの量:溶着糸基材は、従来の未加工基材相当品よりもかなり高密度で、単位長さ当たりのバイオポリマー基材の重量が等しい従来の編織糸よりも約20%~200%小さい平均直径を有する;及び(2)溶着糸基材は、一般的に、その表面にルーズ繊維があったとしても多くはなく、したがって剥離しない(その表面のルーズ繊維の量及び特徴は、溶着プロセスの間に操作され得る)。溶着基材及び対応する天然繊維基材の具体的な経験的データを以下に詳細に説明する。
【0162】
一般的に、ルーズ繊維が溶着糸基材の表面に存在するとき、ルーズ繊維の少なくとも一部は溶着糸基材に溶着される。つまり、繊維は、実際には溶着糸基材から分離するほどルーズではなく、溶着糸基材の中央部で溶着繊維のコアに固定されている。これは、プロセス溶媒が、溶着プロセス中に基材編織糸の中心に移行する傾向がある場合に起こり得る。ただし、溶着プロセスは、少なくともプロセス溶媒の組成を変えることによって編織糸基材のコア又は外側部分のいずれかにおける溶着を制限若しくは促進するように、及び/又は複数のプロセス溶媒組成を異なる時間に添加するように、構成されてもよい。
【0163】
上記の2つの特質は、単独で及び/又は組み合わせで、多数の理由から望ましい/有利となり得る。例えば、剥離しない編織糸は、ルーズ繊維(リント)量が削減及び/又は排除され、編機に問題を生じないことから、スパンデックス(ライクラ(Lycra)又はエラスタンとしても知られる)又はその他の合成繊維と、より効率的に製編できる。リント及び剥離は、織物の欠陥の原因となり、リント蓄積により清掃及び/又は修理が必要な装置のダウンタイムを生じることから、織物産業で既知の問題である。静電気による付着は、ルーズ繊維が自然に合成繊維に固着する原因となり、問題である。溶着糸基材は、剥離を排除及び/又は緩和することから、これらの問題を大幅に軽減する。溶着糸基材及びスパンデックス(又はライクラ等)から製造された布地及び/又は織物は、活動着(例えば、シャツ、パンツ、靴等)及び/又は肌着(例えば、下着、ブラジャー等)として有用となる場合があり、以下の請求項にそのように示されない限り制限されない。
【0164】
溶着糸基材は、従来の未加工基材相当品(単位長さ当たり並びに単位直径当たりの重量がほぼ同じもの)よりも強力となるように製造されてもよい。溶着糸基材により、織物材料(例えば、デニム)の製造中に「スラッシング」(又は「サイジング」)(たて糸糊付)する必要がなくなる可能性がある。編織糸サイジングは、製織プロセスで処理するのに十分な強度を与えるために、サイズ剤(例えば、デンプン)を編織糸に適用する(ほとんどの場合は製織の前に)プロセスである。織物の製造時に、サイズ剤を洗い流さなければならない。編織糸のスラッシングは、費用を追加するだけでなく、資源(例えば、水)集約的でもある。サイズ剤を除去すると編織糸は元々の(より低い)強度に戻るという点で、スラッシングは永久的でもない。対照的に、溶着プロセスは、生成する溶着糸基材が従来の編織糸と比較して強化され、スラッシングが不要となるように構成でき、その結果費用及び資源を節約すると同時に、より永久的な強度改良を与える。
【0165】
布目曲がり(スキュー)は、たて糸及びよこ糸が真っ直ぐではあるが、互いに正しい角度になっていない布地の状態である。これは、従来の編織糸が製造中に撚られ、そのため解撚する(ほどく)ためのバイアスがかかるという事実に起因する。溶着糸基材は、個別の繊維が融合/溶着され得ることから、溶着糸基材から製造された布地は溶着プロセス後に解撚(ほどける)ことがないという特質を有し得ることから、従来の未加工基材相当品から製造された布地よりも布目曲がりがはるかに少ないという特質を有し得る。
【0166】
溶着糸基材は、低撚編織糸、繊維長がより短い編織糸、及び/又は低品質繊維から製造された編織糸(例えば、異なるデニールの繊維)を、より価値のある、より強い溶着糸基材へと変換し得る。例えば、従来の編織糸では、撚係数は、強度と大いに相関する。単位長さ当たりの撚りが多いほど、より多くの費用がかかる。本開示の溶着プロセスで基材として使用される低撚編織糸は、個別の繊維を融合するように溶着プロセスが構成されることから、従来の編織糸基材よりもはるかに強い溶着糸基材が得られる場合がある。
【0167】
溶着糸基材は、コーミングされていない編織糸を、より価値のある、より強い溶着糸基材へと変換できる。従来の編織糸では、コーミングプロセスはスライバから短繊維を除去して、より高強度の編織糸を、製造チェーンの更に下方で生成する。コーミングは機械及びエネルギー集約的であり、編織糸の製造にコストを追加する。短繊維及び長繊維を融合して強度を増強するように溶着プロセスを構成し得ることから、コーミングされていないスライバを含む基材から製造された編織糸基材は、従来の編織糸基材よりもはるかに強い溶着糸基材を生成できる。溶着プロセスは、より強い編織糸を大幅なコスト削減で製造するように構成されてもよい。
【0168】
溶着糸基材から製造した織物は、その形状を保持する特性を有してもよく、従来の編織糸から製造された布地ほど収縮する傾向及び/又は性向を有さない。溶着プロセスは、従来の編織糸と比較してその表面のルーズ繊維が大幅に少ない(ほとんど~全くない)溶着糸基材を生成するように構成されてもよいことから、織物は、従来の編織糸から製造されたものよりもはるかに低い充填係数を有する溶着糸基材から、単一フィラメント合成編織糸(例えば、ポリエステル)で実施される方法と類似の方法で、製造できる。
【0169】
ここで
図12A及び
図12Bを参照すると、未加工デニム2D基材、及び得られた溶着2D基材(
図12Aの未加工基材を出発物質として使用)のSEM画像がそれぞれ示されており、未加工基材と比べて、溶着基材では隣接繊維との係合が大きくなっていることが、容易に目視観察できる。隣接繊維間の係合の増大は、未加工基材に存在しない種々の特質を溶着基材にもたらし、その例としては、より高い剛性、より少ない吸湿、及び/又は乾燥速度の上昇が挙げられるがこれらに限定されない。
【0170】
ここで
図12C及び
図12Dを参照すると、未加工ニット2D基材、及び得られた溶着2D基材(
図12Cの未加工基材を出発物質として使用)のSEM画像がそれぞれ示されており、未加工基材と比べて、溶着基材では隣接繊維との係合が大きくなっていることが、容易に目視観察できる。隣接繊維間の係合の増大は、未加工基材に存在しない種々の特質を溶着基材にもたらし、その例としては、より高い剛性、より少ない吸湿、及び/又は乾燥速度の上昇が挙げられるがこれらに限定されない。
【0171】
2D基材に作用するように構成された溶着プロセス(例えば、
図12B又は
図12Dに示すものと類似の溶着基材を製造するために構成された溶着プロセス)において、可溶化されたポリマーを(基材及び/又はプロセス溶媒に)添加すること及び/又はプロセス温度/圧力ゾーン3においてプロセス湿潤基材への圧力を増やすことは、複数の層状及び/又は積層複合材の製造において層間接着の増大を促進し得る。一般的に、基材が溶着される度合(例えば、高、中、低)は、得られる溶着基材の可撓性に影響し得る。
【0172】
破裂強度の増大に加え、
図12B及び
図12Dに示すような布地は、マーチンデールピリング試験(Martindale Pill Test)を用いて試験したときに布地のスコアの大幅な上昇を示し得る。例えば、この試験のスコアが1.5又は2となる原糸基材を含む布地は、その布地に溶着プロセスを施した場合、当該基材への適切な溶着の中程度の量であっても、スコアが5に上がる。
【0173】
溶着糸基材は、従来の編織糸、具体的には従来の綿糸と比較して、卓越した水分吸上げ及び吸収特性を有し得る。したがって、溶着糸基材は、従来の編織糸よりも素早く乾燥し、それによって、関連する費用及び資源の削減をもたらす。収縮の傾向及び/又は性向がより小さいことと合わせて、溶着糸基材を含む布地は、水分管理と収縮しないことの組み合わせが重要な特質となる活動着(例えば、スポーツウエア)、肌着(例えば、ランジェリー)等における有用性がかなり大きくなり得る。
【0174】
溶着糸基材から製造された織物は、従来の編織糸から製造された織物と比べて、その重量に対する強度がはるかに高くなるように構成できる。所与の重量の編織糸に対する溶着糸基材の平均直径は、従来の編織糸の平均直径よりも小さい可能性があることから、溶着糸基材を用いて製造された織物の破裂強度は、大幅に増大することが観察される。
【0175】
加えて、溶着糸基材から製造された織物は、織物の「手触り」(hand)(例えば、感触、質感)及び仕上げにおいて幅広い変形及び制御可能な結果が可能となるように構成できる。これは、溶着プロセスが、基材にコーティングを追加し、及び/又は基材へのプロセス溶媒浸透の深さを調節するように構成できるためである。例えば、溶着プロセスの一態様において、溶着プロセスは、編織糸基材をフィルムとしての可溶化セルロースでコーティングするように構成することができ、これは、得られる溶着糸基材の外面の平滑性を、従来の未加工基材相当品と比較して、大きく変える可能性がある。
【0176】
本開示の溶着プロセスを用いて製造できる2D溶着基材の例としては、溶着基材ボール紙、溶着基材紙型材料、及び/又は溶着基材紙代替材料が挙げられる。上記の特質及び例は、溶着基材紙代替材料に帰属され得るが、本開示の範囲はそのように限定されず、用語「2D溶着基材」は、以下の請求項に示されない限りそのように限定されない。一般的に、2D溶着基材の材料及び/又はその特質は、紙型材料及び建築材料の製造コスト削減を可能し、更に、従来材料と比較してこれらの材料の新たな用途を可能にする。
【0177】
一般的に、溶着基材紙代替材料は、少なくとも、かなりの量の(例えば、10質量%又は体積%を超える)リグノセルロース材料を含有し得るという事実により、従来の未加工基材相当品と区別できる。逆に、従来のボール紙及びその他の紙材料は、リグノセルロース材料をほとんど又はまったく含まない精製セルロースパルプを含有する。本開示による溶着プロセスは、かなりの量のリグノセルロース材料を含有する溶着基材紙代替材料を製造するように構成されてもよい。リグノセルロース材料は、低コスト充填剤及び/又は強化(補強)剤のいずれとしても機能し得る。これらの溶着基材紙代替材料は、紙及びボール紙産業内での差別化(これは現時点では見られない)を可能にし得る。例えば、コーヒーカップ、ピザ、及びその他の食品配達/包装用の箱の低コストサーマルスリーブ、船積み用途用の箱、衣類ハンガー等である。これらの溶着基材紙代替材料は、パルプ化(例えば、クラフトパルプ化)のコストが排除される点で改革的となり得る。2次元及び/又は3次元溶着基材は、より強い及び/又はより軽い材料を提供することによって、紙及び/又はボール紙を利用する用途、例えば、おむつ、ボール紙代替品、紙代替品等で、以下の請求項にそのように示されない限り制限されず、有用となり得る。
【0178】
溶着基材の卓越した特質を、その未加工基材相当品と比較して検証及び定量化するために使用されている標準的な織物/布地試験の一部としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:(1)AATCC 135(洗濯試験-布地);(2)AATCC 150(洗濯試験-衣類);(3)ASTM D2256(単糸試験);(4)ASTM D3512(ピリング試験-ランダムタンブル法);及び(5)ASTM D4970(マーチンデールピリング試験)。このリストは全てを網羅するものではなく、その他の試験が本明細書で述べられる場合がある。したがって、以下の請求項に示されない限り、本開示の範囲は、特定の未加工基材又は溶着基材に関する特定の試験及び/又は定量的データに限定されるものではない。
【0179】
6.種々の溶着プロセスの特定の態様及び得られる溶着基材の特性
【0180】
本開示に従って種々の方法及び装置を使用して製造された溶着基材のデータを以下に示す。ただし、以下に開示される特定の実施例(例えば、種々の溶着基材の製造に使用されたプロセスパラメータ、その溶着基材の特質、次元、構成等)のいずれも、以下の請求項に示されない限り、本開示の範囲を限定することを意味するものではなく、例示を目的とするものである。
【0181】
溶着基材を製造する1つのプロセスは、EMIm OAc及びACNを含むプロセス溶媒を使用し、原糸の30/1リング紡績綿糸(「30単糸」、tex=19.69(重量)編織糸)を含む基材に適用するように構成されてもよい。かかる基材の走査電子顕微鏡(SEM)画像を
図7Bに示し、得られる溶着基材のSEM画像を
図7Cに示す。表1.1は、
図7Cの溶着基材の製造に使用した主なプロセスパラメータの一部を示す。この構成では、プロセス溶媒適用は、基材を長さ33インチの管を通して引っ張ることによって達成され、その際この管はプロセス溶媒で満たされていた。したがって、かかる構成は、別個のプロセス溶媒適用ゾーン2を生じない。管の端部で、可撓性オリフィス(例えば、スキージ)は、プロセス湿潤基材と物理的に接触して、プロセス溶媒の一部をプロセス湿潤基材の外面から除去するように、及びプロセス溶媒を基材に対して正しく分配させるように、設計された。
【0182】
溶着プロセスの概略図を
図7Aに示す。当該溶着プロセスは、
図7Cに示す溶着基材を製造するように構成できる。
図7Aに示す溶着プロセスは、本明細書で
図1、
図2、及び
図6A~6Eについて述べた、粘性抵抗、プロセス溶媒適用、プロセス湿潤基材との物理的接触に関する種々の原理及び概念に従って構成されてもよい。簡略のため、プロセス溶媒回収ゾーン4、溶媒捕集ゾーン7、溶媒リサイクル8、混合ガス捕集9、及び混合ガスリサイクルゾーン10に関するこの溶着プロセスの態様は省略する。粘性抵抗は、プロセス溶媒組成、温度、スキージオリフィスの可撓性及びサイズ等の共最適化(co-optimization)によって達成した。溶着基材の体積制御された圧密化は、プロセス溶着基材及び/又は再構成湿潤基材にその乾燥ゾーンでの乾燥中に加わる線形張力を制御することによって、及び制御された張力条件下で溶着基材を巻き取る捕集方法によって、編織糸直径縮小のみに限定された。ただし、2D又は3D基材の場合、溶着基材の体積制御された圧密化は、他の次元におけるプロセス湿潤基材、再構成湿潤基材等への張力を限定する場合があり、これは、少なくとも第1の線形張力、第2の線形張力、及び/又は第3の線形張力を制御することを必要とする場合がある。
【0183】
【0184】
表1.1は、
図7Aに示した溶着プロセスを使用した、
図7Cに示す溶着基材の製造に用いた主なプロセスパラメータの一部を示す。表1.1において、「溶着ゾーン時間」は、基材がプロセス溶媒適用ゾーン2及びプロセス温度/圧力ゾーン3に置かれた時間の長さを指すことに注意されたい。この時間は、従来技術と比較して、溶着時間がほぼ1桁短縮されたことを表す。当然ながら、サンプルが数分~数時間処理されることが明らかにされているプロセスは多数存在する。ただし、従来技術は、このような短時間で所望の効果を達成できる部分的可溶化型のプロセスを開示していない。この溶着時間の大幅な削減は、プロセス溶媒の化学と所望の効果が得られるように開発されたハードウェア及び制御システムを共最適化することによってのみ可能であった。すなわち、適切な粘性抵抗及び制御された体積圧密を達成するように化学とハードウェアとを組み合わせることによって、完成した溶着糸基材に驚くべき新たな効果が達成される。代表的な原糸基材サンプル及び代表的な溶着糸基材の両方について、応力(g)を伸び率に対してプロットしたグラフを
図7Dに示す。上側の曲線が溶着糸基材、下側の曲線が原糸である。
【0185】
さらに表1.1を参照すると、「引張り速度」は、基材が溶着プロセス内を移動する線形速度(これは粘性抵抗に影響する)を指し、「溶媒比」は、プロセス溶媒の基材に対する質量比を指す。
【0186】
表1.2は、
図7Cに示す溶着基材の種々の特性値を与える(溶着糸基材の約20の固有の試料で実施した)。特性値は、インストロン社製の機械的特性試験機を用い、ASTM D2256を近似した引張試験モードで操作して収集した。表1.2で使用されるとき、破壊強度は、溶着基材の平均絶対力をグラム単位で表す。正規化破壊強度は、グラムをセンチニュートンに変換して原糸基材の重量(このサンプルの場合、19.69tex)で正規化した値である。伸び率(%)は、破壊が起こった変位をゲージ長さで除算して100を乗じた値である。
【0187】
【0188】
溶着基材を製造する別のプロセスは、EMIm OAc及びACNを含むプロセス溶媒を使用して、原糸の30/1リング紡績綿糸を含む基材に適用するように構成されてもよい。かかる溶着プロセスの概略図を
図8Aに示す。
図8Aに示す溶着プロセスは、本明細書で
図1、
図2、及び
図6A~6Eについて述べた、粘性抵抗、プロセス溶媒適用、プロセス湿潤基材との物理的接触等に関する種々の原理及び概念に従って構成されてもよい。簡略のため、プロセス溶媒回収ゾーン4、溶媒捕集ゾーン7、溶媒リサイクル8、混合ガス捕集9、及び混合ガスリサイクルゾーン10に関する本溶着プロセスの態様は省略する。この例では、溶着プロセスに使用するための装置の態様は、基材編織糸を含む基材がプロセス内を移動できる速度を増大するために特に構成された。具体的には、
図6Aで記載したデバイスに似たインジェクタ60デバイスを使用して、プロセス溶媒適用2をプロセス温度/圧力ゾーン3から分離することによる。
【0189】
表2.1は、
図8Aに示した溶着プロセスを使用した、
図8Cに示す溶着基材の製造に用いた主なプロセスパラメータの一部を示す。表2.1の各列見出しのプロセスパラメータは、上で表1.1に関して記載したものと同じである。この溶着プロセスでは、所望の量の粘性抵抗を共最適化し、プロセス溶媒の有効性増大を促進するため、プロセス溶媒適用ゾーン2及びプロセス温度/圧力ゾーン3の温度を、異なる値に保った。更に、定量ポンプを用いてプロセス溶媒適用を達成すること及びプロセス溶媒適用ゾーン2の主要点での粘性抵抗を適用することによって、編織糸基材への摩擦力(例えば、剪断)を制限し、より大きな張力制御を達成することができた。これは、編織糸基材直径の体積制御された縮小を更に促進する効果があった。全体的な設計は、以前の例よりも速い総処理速度を可能とし、それは表1.1と表2.1との比較から明らかである。
【0190】
図8Aの溶着プロセスに使用できる30/1リング紡績綿糸の原糸を含む基材の走査電子顕微鏡(SEM)画像を
図8Bに示す。得られる溶着基材のSEM画像を
図8Cに示す。表2.1は、
図8Cの溶着基材の製造に使用した主なプロセスパラメータの一部を示す。
【0191】
【0192】
表2.2は、表2.1に記載のパラメータを用いて製造された
図8Cに示す溶着基材の種々の特質を示す。特質は、溶着糸基材の約20の特異な試料で実施した平均であり、この特質は、インストロン社製の機械的特性試験機を用い、ASTM D2256を近似した引張試験モードで操作して収集した。表2.2の各列見出しの機械的特性は、上で表1.2に関して記載したものと同じである。代表的な原糸基材サンプル及び代表的な溶着糸基材サンプルの両方について、応力(g)を伸び率に対してプロットしたグラフを
図8Dに示す。上側の曲線が溶着糸基材、下側の曲線が原糸である。
【0193】
【0194】
溶着基材を製造する別のプロセスは、原糸の30/1リング紡績綿糸又は10/1オープンエンド紡績綿糸を含む基材に適用するためのEMIm OAc及びACNを含むプロセス溶媒を使用するように構成されてもよい。かかるプロセスは、
図8Aに概略的に示すプロセスに類似していてもよい。表3.1は、10/1オープンエンド紡績綿糸を含む基材から溶着基材を製造するために使用された主要プロセスパラメータの一部を示し、表3.2は、溶着プロセスを表3.1に示すパラメータで用いた溶着基材及び未加工基材の種々の特質を示す。当然ながら、これらのデータは、溶着プロセスにより達成され得る溶着基材の特質を例示するものであり、以下の請求項にそのように示されない限り、溶着できる編織糸基材の種類及び/又は溶着基材の特質を限定することを意味しない。
【0195】
溶着基材を製造する別のプロセスは、EMIm OAc及びACNを含むプロセス溶媒を使用して、原糸を含む基材に適用するように構成されてもよい。かかる溶着プロセスを実施するために構成され得る種々の装置の透視図を
図9Aに示す。
図9Aに示す溶着プロセス及びその装置は、本明細書で
図1、
図2、及び
図6A~6Eについて述べた、粘性抵抗、プロセス溶媒適用、プロセス湿潤基材との物理的接触等に関する種々の原理及び概念に従って構成されてもよい。簡略のため、プロセス溶媒回収ゾーン4、溶媒捕集ゾーン7、溶媒リサイクル8、混合ガス捕集9、及び混合ガスリサイクルゾーン10に関する本溶着プロセスの態様は省略する。
【0196】
図9Aの溶着プロセス及び装置に使用され得る基材の走査電子顕微鏡(SEM)画像を
図9Bに示し、得られた溶着基材のSEM画像を
図9Cに示す。表3.1は、
図9Aに示す溶着プロセス及び装置を用いて
図9Kに示す溶着基材(これは軽く溶着されているという点で
図9Cに示す溶着基材に類似している)を製造した際に、溶着基材の製造に用いた主なプロセスパラメータの一部を示す。表3.1の各列見出しのプロセスパラメータは、上で表1.1に関して記載したものと同じである。
【0197】
この溶着プロセスは、編織糸基材の複数の端部を同時に移動させるように構成されてもよいこと、及びプロセス溶媒流量、温度、基材供給速度、基材張力等、事実上全ての重量なプロセスパラメータが調節され得ることに注意されたい。具体的には、この溶着プロセス及び装置は、特定の製品向けに設計された特定の溶着基材に関して、粘性抵抗及び制御された体積圧密の共最適化を可能にし得る。溶着糸基材のいくつかを、
図9C~
図9E及び
図9I~
図9Mに示す。
【0198】
【0199】
表3.2は、表3.1に記載のパラメータを用いて製造された
図9Kに示す溶着基材の種々の特質を示す。特質は、溶着糸基材の約20の特異な試料で実施した平均であり、この特質は、インストロン社製の機械的特性試験機を用い、ASTM D2256を近似した引張試験モードで操作して収集した。表3.2の各列見出しの機械的特性は、上で表1.2に関して記載したものと同じである。代表的な原糸基材サンプル及び代表的な溶着糸基材サンプル(例えば、軽く溶着されている
図9C及び
図9Kに示す溶着基材)の両方について、応力(g)を伸び率に対してプロットしたグラフを
図9Gに示す。上側の曲線が溶着糸基材、下側の曲線が原糸である。
【0200】
【0201】
表4.1は、
図9Aに示す溶着プロセス及び装置を用いて
図9Lに示す溶着基材(これは中程度に溶着されているという点で
図9Dに示す溶着基材に類似している)を製造した際に、溶着基材の製造に用いた主なプロセスパラメータの一部を示す。表4.1の各列見出しのプロセスパラメータは、上で表1.1に関して記載したものと同じである。
【0202】
この溶着プロセスは、編織糸基材の複数の端部を同時に移動させるように構成されてもよいこと、及びプロセス溶媒流量、温度、基材供給速度、基材張力等、事実上全ての重量なプロセスパラメータが調節され得ることに注意されたい。具体的には、この溶着プロセス及び装置は、特定の製品向けに設計された特定の溶着基材に関して、粘性抵抗及び制御された体積圧密の共最適化を可能にし得る。
【0203】
【0204】
表4.2は、表4.1に記載のパラメータを用いて製造された
図9Lに示す溶着基材の種々の特質を示す。特質は、溶着糸基材の約20の特異な試料で実施した平均であり、この特質は、インストロン社製の機械的特性試験機を用い、ASTM D2256を近似した引張試験モードで操作して収集した。表4.2の各列見出しの機械的特性は、上で表1.2に関して記載したものと同じである。
【0205】
【0206】
表5.1は、
図9Aに示す溶着プロセス及び装置を用いて
図9Mに示す溶着基材(これはしっかりと溶着されているという点で
図9Eに示す溶着基材に類似している)を製造した際に、溶着基材の製造に使用した主なプロセスパラメータの一部を示す。表5.1の各列見出しのプロセスパラメータは、上で表1.1に関して記載したものと同じである。
【0207】
この溶着プロセスは、編織糸基材の複数の端部を同時に移動させるように構成されてもよいこと、及びプロセス溶媒流量、温度、基材供給速度、基材張力等、事実上全ての重量なプロセスパラメータが調節され得ることに注意されたい。具体的には、この溶着プロセス及び装置は、特定の製品向けに設計された特定の溶着基材に関して、粘性抵抗及び制御された体積圧密の共最適化を可能にし得る。
【0208】
【0209】
表5.2は、表5.1に記載のパラメータを用いて製造された
図9Mに示す溶着基材の種々の特質を示す。特質は、溶着糸基材の約20の特異な試料で実施した平均であり、この特質は、インストロン社製の機械的特性試験機を用い、ASTM D2256を近似した引張試験モードで操作して収集した。表5.2の各列見出しの機械的特性は、上で表1.2に関して記載したものと同じである。
【0210】
【0211】
基材が溶着される度合の進行を
図9C~
図9Eに示す。この全てで、溶着基材は、プロセスパラメータを変えることによって、
図9Aに示すプロセス及び装置を用いて製造できる。具体的には、SEMデータは、綿糸上のルーズな毛が徐々に排除されていること、並びに
図9Cの軽く溶着されている基材、
図9Dの中程度に溶着されている基材、及び
図9Eのしっかりと溶着されている基材について、制御された体積圧密の度合が異なることを示す。これらの溶着基材は全て、30/1綿原糸を含む基材を用いて製造された。「軽く」「中程度に」及び「しっかりと」という用語は、本明細書又は以下の請求項に他の指示がない限り、いかなる意味でも限定を意味するものではなく、相対的な、定性的態様を意味する。
【0212】
軽く溶着されている基材(この溶着基材
図9C又は
図9Kに示す溶着基材と類似し得る)から製造された試験布地を
図9Fに示す。溶着基材から製編又は製織された布地の絶対的特質は、変動する可能性があり、少なくともプロセスパラメータ及び当該布地を含む溶着基材に実施される溶着の度合を介して操作できる。表6.1は、
図9Aに示す溶着プロセス及び装置を用いて
図9Fに示す布に使用する溶着基材を製造した際に、溶着基材の製造に用いた主なプロセスパラメータの一部を示す。表6.1の各列見出しのプロセスパラメータは、上で表1.1に関して記載したものと同じである。
【0213】
【0214】
表6.2は、
図9C及び
図9K(30/1リング紡績編織原糸基材)のもの等の軽く溶着した基材の3つの別個のサンプルを含む布地及び原糸基材を使用して製造した対応する布地の種々の特質を示す。破裂強度は、ASTM D3786を用いて測定した。「破裂強度」という列見出しは、ポンド毎平方インチ単位の絶対的な破裂強度を指し、「破裂強度改良」という列見出しは、原糸基材(対照)を含む布地と比較したときの溶着糸基材を含む布地の改良率を指す。
【0215】
【0216】
破裂強度の増大に加え、
図9Fに示すような布地は、マーチンデールピリング試験(ASTM D4970)を用いて試験したときに布地のスコアの大幅な上昇を示し得る。例えば、この試験のスコアが1.5又は2となる原糸基材を含む布地は、同じ原糸基材を溶着プロセスで処理した場合、中程度に溶着された場合でも、スコアが5に上がる。
【0217】
基材が溶着される度合の別の進行を
図9K~
図9Mに示す。この全てで、溶着基材は、各溶着基材を製造する溶着プロセスに関連する表について上に記載したように、プロセスパラメータを変えることによって、
図9Aに示すプロセス及び装置を用いて製造できる。具体的には、SEMデータは、綿糸上のルーズな毛が徐々に排除されていること、並びに
図9Kの軽く溶着された基材、
図9Lの中程度に溶着された基材、及び
図9Mのしっかりと溶着された基材について、制御された体積圧密の度合が異なることを示す。これらの溶着基材は全て、30/1綿原糸を含む基材を用いて製造された。
図9K~
図9M並びに
図9I及び
図9Jに示す編織糸のいくつかの機械的特性を表7.1に示し、同じ機械的特性の原糸基材との比較を与える。表7.1において、「テナシティ」は、重量正規化した強度の尺度を指し、一般的に編織糸及び繊維産業で使用されている。
【0218】
【0219】
一般的に、溶着基材では、その未加工基材相当品と比較して、強度の増大が観察される。上記のように、
図9Fに示す布地は、原糸基材から製造された類似の対照編布地の破裂強度よりも約30%大きい破裂強度を有する。未加工基材相当品と比較して、乾燥時間削減(洗濯後の)、耐摩耗性の増大、及び染色の鮮やかさ向上等のその他の改良も観察される。これについては以下に更に詳述する。これらの特質が観察される絶対的度合は、少なくともプロセスパラメータ(例えば、溶着プロセスの度合及び品質)によって制御できる。溶着プロセスの度合及び品質は、更には、少なくともプロセス溶媒適用及び粘性抵抗の共最適化並びに溶着プロセスのさまざまな段階で起こる制御された体積圧密と相関し得る。
【0220】
図9Gを再度参照すると、未加工基材及び溶着基材の両方に適用された線形張力(g単位)に対する伸び率の比較を示し、溶着基材は卓越した機械的特性を示す。
図9Cに示す溶着基材は、「コア溶着された」基材とみなすことができ、ここで「コア溶着された」という用語は、プロセス溶媒適用及び溶着作用の基材への浸透が、基材直径全体に比較的均一である溶着基材を指す。
【0221】
図9I及び
図9Jに示す溶着基材は、「シェル溶着された」基材とみなすことができ、ここで「シェル溶着された」という用語は、基材の外面に優先的に溶着された(すなわち、溶着されたシェルを形成する)溶着基材を指す。
図9Jの中央の溶着基材の中心部分にはっきりと見えるように、溶着されたシェルは、微溶着/非溶着コアと区別される。
【0222】
このシェル溶着基材は、30/1リング紡績綿糸の原糸を含む基材から、
図9Aに示す溶着プロセス及び装置を用いて製造できる。表8.1は、
図9Aに示す溶着プロセス及び装置を用いて
図9I及び
図9Jに示す溶着基材を製造した際に、シェル溶着基材の製造に用いた主なプロセスパラメータの一部を示す。表8.1の各列見出しのプロセスパラメータは、上で表1.1に関して記載したものと同じである。
【0223】
この溶着プロセスは、編織糸基材の複数の端部を同時に移動させるように構成されてもよいこと、及びプロセス溶媒流量、温度、基材供給速度、基材張力等、事実上全ての重量なプロセスパラメータが調節され得ることに注意されたい。具体的には、この溶着プロセス及び装置は、特定の製品向けに設計された特定の溶着基材に関して、粘性抵抗及び制御された体積圧密の共最適化を可能にし得る。
【0224】
【0225】
表8.2は、表8.1に記載のパラメータを用いて製造された
図9I及び
図9Jに示す溶着基材の種々の特性値を示す。特性値は、溶着糸基材の約20の固有の試料で実施した平均である。特性値は、インストロン社製の機械的特性試験機を用い、ASTM D2256を近似した引張試験モードで操作して収集した。表8.2の各列見出しの機械的特性は、上で表1.2に関して記載したものと同じである。
【0226】
【0227】
種々のプロセスパラメータ(例えば、プロセス溶媒と基材の比、温度、圧力等、及び得られるプロセス溶媒の有効性)及び粘性抵抗を最適化することによって、基材の外面からその内面までの次元において基材が溶着される深さを制御することが可能である。すなわち、溶着プロセスは、基材の外側領域を優先的に溶着し、基材コアはその外面と同程度には溶着されないように、構成されてもよい。これは、多くの場合は未加工基材の伸び特性を保持しながら、未加工基材と比べて強度を増大する効果を有し、したがって、強靭性の増大(破断までのエネルギーの増大)を生じる。コア溶着基材及びシェル溶着基材はいずれも、未加工基材相当品と比較して、より速い乾燥、より大きい耐摩耗性、より大きい耐ピリング性、より鮮やかな色等の、良好な特性を示し得る。
【0228】
約50%の原(未加工)綿糸基材及び50%の中程度に溶着された編織糸基材で構成される1枚の布地の写真を
図9Hに示す。図の左側は原綿糸を示し、図の右側は溶着された綿基材を示す。この布地片にポット染色加工を施したところ、溶着糸基材から製編された布地側に、より強く、豊かで、深く、鮮やかな色が示された。少なくとも共最適化されたプロセス溶媒適用方法、粘性抵抗、及び溶媒効率により、溶着糸基材及び得られる布地の方が、毛が少ない。更に、溶着プロセスの溶着、再構成、及び乾燥工程に関連する制御された体積削減は、表面積及び溶着糸基材内の空きスペースを削減するように構成されてもよい。これは、光が散乱し得る界面の数を減少する。これらの効果が組み合わさった結果、最終的に、染料着色剤を溶着基材を通して見ることがより可能となり、溶着基材は未加工基材よりも透明になる。
【0229】
毛が相対的に少ないこと及び繊維溶着基材内の空きスペースの削減は、繊維溶着基材を乾燥するために必要な時間を、驚くほど、かつ劇的に削減する役割も果たす。ここでも、基材表面に毛がないこと及び制御された体積圧密による溶着基材内の空きスペースの削減は、バルク水が溶着基材内で一体化できる程度を制限するように構成されてもよい。この理由により、溶着基材は、多くの場合、未加工基材の2倍超速く(必要なエネルギーは半分で)乾燥される。最後に、原綿の水保持力の低下に有用なコーティング及び表面改質化学と同じものが、繊維溶着された綿基材ではより一層有効であることが観察される。絹、亜麻布、及びその他の天然基材でも同様の結果が観察される。
【0230】
溶着基材を製造する別のプロセスは、水酸化リチウム及び尿素を含むプロセス溶媒を使用して、30/1リング紡績綿原糸を含む基材に適用するように構成されてもよい。かかる溶着プロセスを実施するために構成され得る種々の装置の透視図を
図10Aに示す。
図10Aに示す溶着プロセス及びその装置は、本明細書で
図1、
図2、及び
図6A~
図6Fについて述べた、粘性抵抗、プロセス溶媒適用、プロセス湿潤基材との物理的接触等に関する種々の原理及び概念に従って構成されてもよい。この構成において、基材(例えば、
図10Aに示す具体的な構成における編織糸)は、
図6Bに示すように、溝付きトレイを通して複数回引き出される。トレイを通過するごとに、追加のプロセス溶媒が基材に与えられる。基材の溶着経路全体は、温度制御された環境内(-17℃~-12℃で運転される一構成)に含まれてもよい。溶着糸基材は、一般的に、14分の低温溶着時間の後に、最適強度に達し得る。この時間の後、プロセス湿潤基材は、再構成ゾーンへと移動し得る。簡略のため、プロセス溶媒回収ゾーン4、溶媒捕集ゾーン7、溶媒リサイクル8、混合ガス捕集9、及び混合ガスリサイクルゾーン10に関するこの溶着プロセスの態様は省略する。
【0231】
図10Aの溶着プロセス及び装置に使用され得る基材の走査電子顕微鏡(SEM)画像を
図10Bに示し、得られた溶着基材のSEM画像を
図10Eに示す。表9.1は、
図10Aに示す溶着プロセス及び装置を使用した
図10Eに示す溶着基材の製造に用いた主なプロセスパラメータの一部を示す。表8.1の各列見出しのプロセスパラメータは、上で表1.1に関して記載したものと同じである。この溶着プロセスは、編織糸基材の複数の端部を同時に移動させるように構成されてもよく、プロセス溶媒流量、温度、基材供給速度、基材張力等、事実上全ての重量なプロセスパラメータが調節され得る。具体的には、この溶着プロセス及び装置は、特定の製品向けに設計された特定の溶着基材に関して、粘性抵抗及び制御された体積圧密の共最適化を可能にし得る。溶着糸基材のいくつかを、
図10B~
図10Fに示す。
【0232】
LiOH及び尿素を含むプロセス溶媒を使用するように構成されたその他の溶着プロセスにおいて、プロセス溶媒の基材に対する質量比は、表9.1に示す値よりも小さい場合がある。例えば、ある溶着プロセスでは、この比は0.5:1でもよく、別の溶着プロセスでは1:1でもよく、別の溶着プロセスでは2:1でもよく、更に別の溶着プロセスでは3:1でもよく(当該溶着プロセス及びそれによって製造される溶着基材は、以下に少なくとも表10.1に関して詳細に論じる)、別の溶着プロセスでは4:1でもよく、更に別の溶着プロセスでは5:1でもよい。更に、この比は、4.5:1のような、整数以外の値であってもよい。したがって、以下の請求項に示されない限り、本開示の範囲は、この比の特定の値に限定されるものではない。
【0233】
【0234】
表9.2は、
図10Aの溶着プロセス及び装置、
図10Bに示す未加工基材、及び表9.1に記載のパラメータを用いて製造された溶着基材の種々の特性値を示す。特性値は、溶着糸基材の約20の固有の試料で実施した平均である。特性値は、インストロン社製の機械的特性試験機を用い、ASTM D2256を近似した引張試験モードで操作して収集した。表9.2の各列見出しの機械的特性は、上で表1.2に関して記載したものと同じである。代表的な原糸基材サンプル及び代表的な溶着糸基材の両方について、応力(g)の伸び率に対するグラフを
図10Gに示す。上側の曲線が溶着糸基材、下側の曲線が原糸である。
【0235】
【0236】
基材が溶着される度合の進行を
図10C~
図10Eに示す。この全てで、溶着基材は、プロセスパラメータを変えることによって、
図10Aに示すプロセス及び装置を用いて製造できる。
図10Aに示すプロセス及び装置に使用されるプロセス溶媒の化学は、
図9Aに示すプロセス及び装置と比較して、根本的に異なる場合があり、種々の工学的考慮が関与し得る。すなわち、溶着プロセス全体が、
図7A、
図8A、及び
図9Aに示す溶着プロセス及び関連装置について上に記載されたものと同様の原理及び設計概念に従って運転されてもよい。
【0237】
更に、
図1及び
図2に関して記載された原理及び概念は、包括的プロセス設計の理解に関係する。
図9C~
図9Eに関して上に記載した方法と同様にして、
図10Aに示す溶着プロセス及び関連装置は、溶着の度合を制御できるように構成されてもよい。種々の溶着パラメータを用いたときの、綿糸基材の向上した毛の削減及び制御された体積圧密の進行を、10C~10Eに示す。これらの溶着基材は全て、30/1綿原糸を含む基材を用いて製造された。SEMデータは、綿糸上のルーズな毛が徐々に排除されていること、並びに
図10Cの軽く溶着された基材、
図10Dの中程度に溶着された基材、及び
図10Eのしっかりと溶着された基材について、制御された体積圧密の度合が異なることを示す。ここでも、溶着基材から製編又は製織された溶着布地の絶対的特質は、変動する可能性があり、少なくともプロセスパラメータを介して操作できる。
【0238】
種々のプロセスパラメータ(例えば、有効性及び粘度のためのプロセス溶媒組成、プロセスゾーンの適切な粘性抵抗、温度、及び時間の調節によって、乾燥ゾーンの通過速度等)を適切に共最適化することで、溶着プロセスを制御して、
図9C~
図9Eに詳細に示すように、類似の効果を達成できることは明らかである。これらのデータは、粘性抵抗の概念及び制御された体積圧密を用いてプロセスを共最適化することによって達成できる驚くべき効果の一部を示す。別の言い方をすれば、これらのデータは、共最適化されたハードウェア、ソフトウェア、及び化学は、所望の結果を達成することができ、この独創性に富んだ研究で実証された強力な新たな教示であることを示す。
【0239】
ジャージーニット綿を含む未加工2D基材のSEM画像を
図12Eに示し、その拡大画像を
図12Gに示す。軽く溶着した後の同じ布地のSEM画像を
図12Fに示し、その拡大画像を
図12Hに示す。表10.1は、
図12F及び
図12Hに示す溶着2D基材の製造に用いた主なプロセスパラメータの一部を示す。この溶着プロセスは、プロセス溶媒流量、温度、基材供給速度、基材張力等の事実上全ての重量なプロセスパラメータが調節できるように構成されてもよい。具体例では、溶着プロセスをバッチプロセスとして実施し、その際プロセス溶媒を未加工基材に均一に適用し、基材上で7分間作用させた。具体例では、より長い又は短い溶着ゾーン時間を用いて製造して類似の結果が得られており、より長い溶着ゾーン時間は、概してより高い溶着度に対応し、より短い溶着ゾーン時間は、概してより低い溶着度に対応している。水を、再構成溶媒として使用した。プロセス溶媒適用2、プロセス圧力/温度ゾーン3、及びプロセス溶媒回収ゾーン4、及び乾燥ゾーン5の間に、基材は、制御された体積圧密の制約があり、個別の編織糸は互いに強く接着しなかった。結果として、溶着2D基材は、未加工基材の比較的柔らかな手触りと可撓性を保持するが、未加工基材と比べて卓越した破裂強度(約20%大きい)及びマーチンデールピリング試験スコア(1.5又は2から少なくとも4に上昇)を示す。
【0240】
【0241】
プロセス溶媒の化学が複数あることは、機能性材料及び添加剤を溶着基材に添加する際、並びに所望の特質を示す溶着基材を製造するための特定の溶着プロセスを構成する際に、大きな柔軟性を与えることに注意することは重要である。イオン液体系溶媒(例えば、
図9Aに示す溶着プロセス及び装置)は、例えば、特に、使用するカチオンがイミダゾリウム系の場合、わずかに酸性になる傾向がある。他方、アルカリ金属尿素型のプロセス溶媒(例えば、
図10Aに示す溶着プロセス及び装置)は塩基性である。プロセス溶媒の選択は、多くの場合、特定の添加剤を有するプロセス溶媒の適性に基づいて記載され、以下に更に詳述するように、機能性材料は繊維溶着プロセスによって捕捉されることから、留意すべき重要な新たな教示である。
【0242】
7.機能性材料
【0243】
上記のように、本開示による溶着プロセスの一態様では、基材は、その後の基材及び/又はその特性の物理的又は化学的操作を目的としてプロセス溶媒に曝露されてもよい。プロセス溶媒は、基材の分子間結合を少なくとも部分的に破壊し、基材を改質のため開裂及び可動化(溶媒和)し得る。溶着プロセスによる機能性材料組み込みに関する上記の例示及び記載は、天然繊維を含む基材を取り上げているが、本開示の範囲は、以下の請求項に指示のない限り、そのように限定されるものではない。
【0244】
上記のように、1つ以上の機能性材料、化学品、及び/又は構成要素を、1D、2D、及び3D基材及び/又は溶着基材のための溶着基材内に統合してもよい。一般的に、機能性材料の組込は、バイオポリマーの完全変性(これは他の方法では基材の性能特性(物理的及び化学的特性)に有害になると考えられる)を起こすことなく新規機能(例えば、磁性、導電性)を付与し得ると想到される。
【0245】
一般的に、溶着基材への機能性材料の最適な統合は、粘性抵抗(主にプロセス溶媒適用ゾーン2及び/又はプロセス温度/圧力ゾーン3に関連し得る)の最適化及び/又は体積制御された圧密の調節を必要とする場合があると想到され、このいずれも、上に詳述されている。例えば、機能性材料が溶着基材の表面積全体に均一に分布されることが望ましい場合、粘性抵抗は、そこに配置された機能性材料を有するプロセス溶媒の基材全体への均一な分布を促進するように構成されてもよい。機能性材料が溶着基材上の特定の場所で濃縮されることが望ましい場合、粘性抵抗は、かかるプロセス溶媒の不均一分布を促進するように構成されてもよい。したがって、機能性材料を溶着基材に統合するように構成された溶着プロセスは、上記の、及び/又は以下に更に詳述する、概念、実施例、方法、及び/又は装置に従って最適化されてもよい。
【0246】
本開示による溶着プロセスの一態様において、基材(セルロース、キチン、キトサン、コラーゲン、ヘミセルロース、リグニン、絹、その他の水素結合によって保持されるバイオポリマー構成要素及び/又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない)は、基材の分子間力を破壊できる適切なプロセス溶媒によって膨潤されてもよく、更に、炭素粉末、磁性微粒子、及び染料等の化学品又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない機能性材料が、プロセス溶媒の適用の前、同時、又は後に導入されてもよい。本開示による溶着プロセスの一態様では、繊維状バイオポリマー基材、機能性材料、及びプロセス溶媒(これはイオン系液体又は「有機電解質」でもよいが、以下の請求項に指示のない限り、そのように限定されるものではない)を、制御された温度(レーザー使用又はその他の指向性エネルギー加熱等)、並びに特定の雰囲気及び圧力条件の下で相互作用させてもよい。予め定められた長さの時間の後、プロセス溶媒を除去してもよい。乾燥すると、得られる機能性材料は、基材に結合されてもよく、当初の基材材料の特性と比較して追加の機能特性を溶着基材にもたらしてもよい。
【0247】
繊維状材料への機能性材料の良好かつ永久的な統合は、本開示による溶着プロセスによって可能となり得る。機能性材料は、プロセス溶媒と共に導入されてもよく、及び/又は溶着前に基材と係合されてもよい。一般的に、溶着プロセスの一態様において、天然繊維は、中に機能性材料が配置され得るエンベロープに繋がれ、溶着プロセスの間に空きスペースの全部又は一部が取り除かれると、機能性材料が捕捉され得る。例えば、溶着プロセスの一態様において、溶着プロセスは、マイクロRFIDチップのように、編織糸の中央にデバイスを埋め込むように構成されてもよい。別のプロセスでは、機能性材料は、基材結合剤として作用する材料の中に配置される。例えば、溶着プロセスは、基材の繊維が、溶着プロセスの間に、溶解された基材結合剤でコーティングされ得るように構成されてもよい。
【0248】
溶着プロセスの一態様では、プロセス溶媒は、天然基材中のバイオポリマーに対して活性であり、かつ、機能性材料との適合性もある。一態様において、機能性材料は、基材材料と統合された別の生体材料を含んでもよく、かかる構成の一例は、セルロース中の抗菌材料として、又は創傷包帯に血液凝固剤として、溶解されたキチンを使用するものである。上記から、以下の請求項に示されない限り、本開示の範囲は、特定の基材、プロセス溶媒、溶着プロセスにおいて機能性材料が導入される点、並びに/又は機能性材料を導入する方法及び/若しくはビヒクル、機能性材料が溶着基材に保持される方法、及び/又は機能性材料の種類によって限定されないことは明らかなはずである。
【0249】
基材への溶媒及び/又は機能性材料の浸透の深さ並びに基材繊維が互いに溶着する度合は、少なくとも、溶媒の量、温度、圧力、繊維の間隔、機能性材料の形態及び/又は粒径(例えば、分子、ポリマー、RFIDチップ等)、滞留時間、その他の溶着プロセス工程、基材の特性(例えば、含水量及び/又はグラジエント)再構成方法、及び/又はこれらの組み合わせによって制御され得る。ある長さの時間の後、プロセス溶媒を、上記のように(例えば、水、再構成溶媒等と共に)除去して、機能性材料が組み込まれた(捕捉された)溶着基材を生成してもよく、これは共有結合によって保持されてもよい。ポリマー移動に加えて、化学的誘導体化も、このプロセスの間に実施されてもよい。
【0250】
本開示による溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、基材の材料密度及び表面積と比較して、材料密度を増大し(例えば、繊維間の空間の全部又は一部を取り除く)、繊維の束を含む完成した溶着基材の表面積を低減すると同時に、溶着基材内に機能性材料を捕捉するように構成できる。一般的に、溶着プロセスが所与の基材内の空きスペース量に影響する度合は、少なくとも、溶媒及び/又は機能性材料の浸透の深さに関して上に記載したものと同じ変数を用いて操作することができ、当該変数としては、溶媒の量、温度、圧力、繊維の間隔、機能性材料の形態及び/又は粒径(例えば、分子、ポリマー、RFIDチップ等)、滞留時間、その他の溶着プロセス工程、基材の特性(例えば、含水量及び/又はグラジエント)再構成方法、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。別の態様では、溶着プロセスは、所与の基材の空きスペースが取り除かれる特定の領域を制御するように構成されてもよく、これについて以下に更に詳述する。ここでも、機能性材料は、基材(溶着前に)に、プロセス溶媒と共に、及び/又はプロセス溶媒が除去される前の任意の時点で、直接添加されてもよい。
【0251】
本開示による溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、多次元印刷技術の概念に似た概念を使用して、基材の物理的及び化学的特性の変更の空間的制御が可能となるように構成されてもよい。例えば、インクジェットプリンタに類似したデバイスで、又は基材の選択部分を指向性エネルギービーム(例えば、赤外レーザー又は当該技術分野で既知のその他の手段)で加熱することによってプロセス溶液を基材に添加し、選択部分の溶着を活性化することによる。かかる溶着プロセスは、変調溶着プロセスに関する
図11A~
図11Eについて、以下に更に詳述する。
【0252】
溶着プロセスの一態様では、溶着プロセス中に基材が改質される度合を制限するため、基材の量に対するプロセス溶媒の量は、比較的低く保たれてもよい。上記のように、プロセス溶媒は、第2の溶媒系(例えば、再構成溶媒)によって、プロセス溶媒が十分に揮発性である場合には蒸発によって、又は任意のその他の好適な方法及び/又は装置によって、のいずれかで除去されてもよく、以下の請求項にそのように示されない限り、制限されない。溶着プロセスは、プロセス湿潤基材を真空下に置くこと及び/又は熱処理することによって、プロセス溶媒の蒸発速度を上げるように構成されてもよい。
【0253】
溶着プロセスは、溶着プロセスの前に別々に観察した場合には溶着基材を構成する個別の基材及び/又は構成要素に観察されない機能(例えば、物理的及び/又は化学的特性)を示す「天然繊維機能性複合材」又は「繊維-マトリックス複合材」を構成し得る溶着基材を製造するように構成されてもよい。
【0254】
溶着プロセスは、以下に更に詳述するように、イオン液体系溶媒(「IL系溶媒」)を含むプロセス溶媒を使用することによって、機能性材料を含有する繊維-マトリックス複合材を含む溶着基材を製造するように構成されてもよい。プロセス溶媒中の1つ以上の分子添加剤は、膨潤剤及び可動化剤としてのプロセス溶媒の有効性を増大する、及び/又はプロセス溶媒と機能性材料の1つ以上との相互作用を増強する、及び/又はプロセス溶媒及び/又は機能性材料の天然繊維基材への取込みを増強する可能性がある。IL系プロセス溶媒は、一般的に、再構成溶媒によって溶着基材(繊維-マトリックス複合材を構成し得る)から除去され、これは一般的にプロセス湿潤基材を再構成溶媒ですすぐ/洗浄することを含み、当該再構成溶媒は、過剰な分子溶媒を含んでもよい。乾燥(昇華、蒸発(エバポレーション)、沸騰蒸発、又はその他の再構成溶媒除去方法によって、又は任意のその他の好適な方法及び/又は装置によって達成されてもよく、以下の請求項にそのように示されない限り、制限されない)すると、溶着基材は、完成した、そして関連する新規物理的及び化学的特徴を有する、機能性材料繊維-マトリックス複合材を構成し得る。
【0255】
基材は天然繊維を含んでもよく、天然繊維はセルロース、リグノセルロース、タンパク質及び/又はこれらの組み合わせを含んでもよい。セルロースは、綿、精製セルロース(クラフトパルプ等)、微結晶セルロース等を含んでもよい。溶着プロセスの一態様では、溶着プロセス及びそれに関連する装置は、綿の形態のセルロース又はそれらの組み合わせを含む基材に使用するように構成されてもよい。リグノセルロースを含む基材としては、亜麻、工業用大麻、及びこれらの組み合わせからの靭皮繊維が挙げられる。タンパク質を含む基材としては、絹、ケラチン等が挙げられる。一般的に、「天然繊維」という用語は、本明細書で基材に関係するとき、生物及び/又は酵素によって生産される任意の高アスペクト比の繊維含有天然材料を含むことを意味する。一般的に、「繊維」という用語の使用は、材料の巨視的(大スケールの)観点への注目を示す。天然繊維のその他の例としては、亜麻、絹、羊毛等が挙げられるがこれらに限定されない。本開示により製造され得る溶着基材の一態様では、天然繊維は、一般的に、繊維-マトリックス複合材の繊維構成要素を強化し得る。したがって、天然繊維は、不織マット、編織糸、及び/又は織物等のフォーマットに使用され得る。
【0256】
天然繊維は、典型的には、主にバイオポリマーを含み、一般的には天然繊維とみなされないバイオポリマー含有材料が存在する。例えば、カニ殻は、主にキチンであり、N-アセチルグルコサミンモノマー(グルコースの誘導体)を含むバイオポリマーであるが、一般的に繊維状とは呼ばれない。同様に、コラーゲン及びエラスチンは、一般的に繊維状とみなされない多くの組織内で構造的支持を提供するタンパク質バイオポリマーの例である。
【0257】
植物によって生産される天然繊維は、一般的に異なるバイオポリマー(セルロース、ヘミセルロース、及び/又はリグニン)の混合物である。セルロース及びヘミセルロースは、糖であるモノマー単位を有する。リグニンは、架橋されたフェノール系モノマーを有する。架橋により、リグニンは一般的にIL系溶媒によって可溶化(例えば、膨潤又は可動化)することはできない。ただし、かなりの量のリグニンを含有する天然繊維は、複合材において構造的支持繊維として機能する。更に、かなりの量のリグニンを含有する天然繊維基材は、IL系ではないプロセス溶媒を用いて膨潤又は可動化されてもよい。
【0258】
動物が生産する天然繊維は、多くの場合、タンパク質バイオポリマーを含む。タンパク質のモノマー単位は、アミノ酸である。例えば、絹を形成する多数の特異な絹フィブロインタンパク質が存在する。羊毛、角、及び羽毛は、ケラチンとして分類される構造タンパク質を主に含む。天然繊維としては、セルロース、リグノルロース、タンパク質及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。一般的に、「天然繊維」としては、セルロース、キチン、キトサン、コラーゲン、ヘミセルロース、リグニン、絹、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられるが、以下の請求項にそのように示されない限り限定されない。
【0259】
本開示の溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、天然繊維及び機能性材料を含む基材を組み合わせて、連続する繊維-マトリックス複合材である溶着基材に変換するように構成されてもよい。溶着プロセスの1つの目的は、天然繊維及び機能性材料を含む基材を組み合わせて、天然繊維機能性複合材を構成する溶着基材(本明細書で「連続する繊維-マトリックス複合材」又は単に「繊維-マトリックス複合材」とも呼ばれる)に変換することであってもよい。典型的には、機能性材料は、繊維-マトリックス複合材のマトリックス部分内に捕捉される。溶着プロセスは、天然繊維が溶着基材繊維-マトリックス複合材の繊維部分の大部分を構成し、典型的には本質的強化剤として機能するように構成されてもよい。
【0260】
A.イオン液体系プロセス溶媒溶着プロセス
【0261】
上記のように、溶着プロセスは、イオン液体を含むプロセス溶媒を使用するように構成されてもよい。本明細書で使用するとき、「イオン液体」という用語は、比較的純粋なイオン液体(例えば、本明細書で上に定義した「純粋なプロセス溶媒」)を指して使用され、「イオン液体系溶媒」(「IL系溶媒」)は一般的に、アニオン及びカチオンを両方含む液体を指し、分子(例えば、水、アルコール、アセトニトリル等)種等であってもよく、(溶媒媒混合物は)高分子基材を可溶化、可動化、膨潤、及び/又は安定化できる場合がある。イオン液体は、不揮発性、不燃性で、高い熱安定性を有し、比較的安価に製造でき、環境に優しいことから魅力的な溶媒であり、加工方法全体における制御と柔軟性をより大きくするために使用できる。
【0262】
米国特許第7,671,178号(特許文献3)は、本開示による種々の溶着プロセスに使用できる好適なイオン液体溶媒の例を含む。1つの溶着プロセスでは、溶着プロセスは、約200℃、150℃又は100℃未満の融点を有するイオン液体溶媒を使用するように構成されてもよい。1つの溶着プロセスでは、溶着プロセスは、イミダゾリウム系カチオンをアセタート及び/又は塩化物アニオンと共に含むイオン液体溶媒を使用するように構成されてもよい。溶着プロセスの別の態様では、アニオンは、アセタート、ホルマート、塩化物、臭化物等のカオトロピックアニオンを、単独で、又はこれらの組み合わせで含んでもよい。
【0263】
溶着プロセスの別の態様では、溶着プロセスは、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(EtOAc)、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の極性非プロトン性溶媒を分子添加剤として含み得るIL系溶媒を使用するように構成されてもよい。より一般的には、IL系プロセス溶媒系のための分子添加剤は、比較的低い沸点(例えば、大気圧で80℃未満)及び比較的高い蒸気圧を有する極性非プロトン性溶媒であってもよい。一態様では、IL系溶媒は、イオン液体1molにつき約0.25mol~約4molの極性非プロトン性溶媒であってもよい。別の態様では、極性非プロトン性溶媒は、全極性非プロトン性溶媒がイオン液体1molにつき約0.25mol~約2molの範囲で、IL系溶媒に添加されてもよい。極性プロトン性溶媒(例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール)は、典型的には、1molのIL系溶媒に対して1mol未満の全極性プロトン性溶媒の範囲で存在する。別の態様では、IL系溶媒は、イオン液体1molに対して約0.25~約2molの極性非プロトン性溶媒を含んでもよい。
【0264】
プロセス溶媒としてのIL系溶媒に使用するように構成された溶着プロセスの一態様では、添加されるIL系プロセス溶媒の量は、1質量部の基材に対し約0.25~約4質量部であってもよい。
【0265】
一態様において、溶着プロセスは、1種以上の極性プロトン性溶媒を含むIL系溶媒を使用するように構成されてもよく、極性プロトン性溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール及び/又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。一態様では、約1mol未満の極性プロトン性溶媒を、最大で約1molのイオン液体と組み合わせてもよい。溶着プロセスは、1種以上の極性非プロトン性溶媒(これはプロセス溶媒系への分子添加剤を構成し得る)を含むIL系溶媒を使用するように構成されてもよく、極性非プロトン性溶媒としては、アセトニトリル、アセトン、及び酢酸エチルが挙げられるがこれらに限定されない。分子添加剤をIL系プロセス溶媒に添加する理由としては、膨潤及び可動化剤としてのプロセス溶媒の有効性の調節、及び/又はプロセス溶媒と能性材料との相互作用の増強、及び/又はプロセス溶媒及び機能性材料の基材への導入の強化が挙げられる。かかる分子添加剤としては、ILの有効性並びにプロセス溶媒のレオロジー特性の両方を調節できる低沸点溶媒が挙げられるがこれらに限定されない。すなわち、分子添加剤及びその相対量は、少なくとも所望の粘性抵抗及び制御された体積圧密が得られるように選択されてもよい。
【0266】
一般的に、分子構成要素単独では、関連するバイオポリマー材料の大部分にとって非溶媒である。溶着プロセスの一態様では、バイオポリマー又は合成ポリマー材料の部分的溶解は、最大で約4molの分子構成要素に対して約1molのイオン液体(イオン)が存在するという適切な濃度である場合に限られ得る。分子構成要素は、イオン液体イオンが基材中のポリマーを可溶化、可動化、及び/又は膨潤する能力全体を低下させるか、又はIL系プロセス溶媒の全体的有効性を増大する場合があり、これは、少なくとも、分子構成要素の水素結合供与及び受入能力に依存する。
【0267】
バイオポリマー基材中に存在するポリマー並びに多数の合成ポリマー基材中のポリマーは、一般的に、分子間力及び分子内水素結合によってまとまり、分子レベルで組織化される。分子構成要素がIL系プロセス溶媒の有効性を低下させる場合、これらの分子構成要素は、溶着プロセスの速度を下げること、及び/又は純粋なイオン液体を使用する他の方法では不可能な特殊な空間及び時間的制御を可能にすることに有用となり得る。溶着プロセスの一態様では、分子構成要素がIL系プロセス溶媒有効性を増大する場合、これらの分子構成要素は、溶着プロセスの速度を上げること、及び/又は、純粋なイオン液体を用いる場合には不可能な特殊な空間及び時間的制御を可能にすることに有用となり得る。加えて、別の態様では、分子構成要素は、溶着プロセスの全体的コスト、特にプロセス溶媒に関連するコストを大幅に低下し得る。アセトニトリルは、例えば、3-エチル-1-メチルイミダゾリウム酢酸塩よりも低コストである。したがって、所与の基材の溶着プロセスの操作を可能にすることに加え、アセトニトリルは、単位使用体積(又は質量)当たりのプロセス溶媒のコストも低減し得る。
【0268】
比較的大量のIL系プロセス溶媒が、主に天然繊維で構成される基材(参考のため、「大量」とは、本明細書で使用するとき、基材1質量部につき約10質量部を超えるプロセス溶媒を意味する)に、十分な時間及び好適な温度で導入されるとき、基材中のバイオポリマーは完全に溶解され得る。本発明の議論において、完全溶解とは、基材内の天然の構造、特徴、及び/又は特性を保全するために必要となり得る分子間力の破壊(例えば、溶媒の作用による水素結合の破壊)及び/又は分子内力の破壊を示す。一般的に言えば、本開示による多くの溶着プロセスについて、大部分のバイオポリマーの完全溶解を伴わないように溶着プロセスを構成することは有利になると想到される。具体的には、完全溶解は、多くの場合、具現化された天然バイオポリマー構造を不可逆的に変性することによって天然繊維補強材を劣化させる。ただし、バイオポリマーを機能性材料として使用する場合のような、溶着プロセスのある態様では、バイオポリマー材料を完全溶解することが有利となり得る。そのように構成された溶着プロセスでは、使用される完全溶解ポリマー(機能性材料)の量は、典型的には使用されるIL系プロセス溶媒の質量に対して1質量%未満であってもよい。比較的少量のIL系プロセス溶媒が天然繊維に添加されることを考慮すると、任意の完全溶解したバイオポリマー材料は、得られる溶着基材の微量構成要素となり得る。
【0269】
本来の構造が失われると、天然材料は、未変性状態における物理的及び化学的特性を失う可能性がある。したがって、溶着プロセスは、天然繊維を含む基材に対して添加されるIL系プロセス溶媒の量を制限するように構成されてもよい。基材に導入されるプロセス溶媒の量を制限することは、次には、バイオポリマーがその本来の構造から変性される程度を制限する場合があり、したがって、基材本来の機能及び/又は特徴(例えば、強度)を保全し得る。
【0270】
驚くべきことに、本開示による溶着プロセスは、機能的構造を備える溶着基材の製造を促進し、機能性材料を添加した繊維状縫糸、織物材料、繊維状マット、及び/又はこれらの組み合わせの制御された融合/溶着により製造され得る。溶着基材の物理的及び化学的特性は、少なくとも、適用されるIL系プロセス溶媒の量、IL系プロセス溶媒への曝露持続時間、温度、処理中に適用される温度及び圧力、及び/又はこれらの組み合わせの厳密な制御によって再現可能に操作され得る。1種以上の基材及び/又は機能性材料を溶着して、プロセス変数の適切な制御により積層構造を形成してもよい。これらの基材及び/又は機能性材料の表面は、好ましくは、基材及び/又は機能性材料の一部を未変性状態で残しながら、変性されてもよい。表面改質としては、材料表面化学の直接的な操作、又は所望の物理的又は化学的特性を付与するための追加の機能性材料の組込による間接的な操作が挙げられるがこれらに限定されない。機能性材料としては、1種以上の基材との適合性がある薬剤及び染料分子、ナノ材料、磁性微粒子等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0271】
機能性材料は、IL系溶媒に懸濁されるか、溶解されるか又はこれらの組み合わせであってもよい。機能性材料としては、導電性炭素、活性炭等が挙げられるがこれらに限定されず、以下の請求項にそのように示されない限り制限はない。活性炭としては、木炭、グラフェン、ナノチューブ等が挙げられるがこれらに限定されず、以下の請求項にそのように示されない限り制限はない。一態様において、溶着プロセスは、NdFeB、SmCo、酸化鉄等の磁性材料を含み得る機能性材料に使用するように構成されてもよく、以下の請求項にそのように示されない限り制限はない。
【0272】
本明細書に開示される溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、量子ドット及び/又はその他のナノ材料を含み得る機能性材料に使用するように構成されてもよい。溶着プロセスの別の構成では、機能性材料は、粘土等であるがこれに限定されない鉱物沈殿を含んでもよい。溶着プロセスの更に別の構成では、機能性材料は染料を含んでもよく、染料としては、限定するものではないが、UV-可視光吸収染料、蛍光染料、リン光染料等が挙げられ、以下の請求項にそのように示されない限り制限はない。本開示による溶着プロセスの更に別の構成では、溶着プロセスは、医薬品、選択された合成ポリマー(例えば、Nomex(登録商標)としても知られるメタアラミド)、量子ドット、炭素の種々の同素体(例えば、ナノチューブ、活性炭、グラフェン及びグラフェン様材料)を含む機能性材料に使用するように構成されてもよく、更に天然材料(例えば、カニ殻、角等)及び天然材料の誘導体(例えば、キトサン、微結晶セルロース、ゴム)、及び/又はこれらの組み合わせも含んでもよく、以下の請求項にそのように示されない限り制限はない。
【0273】
一態様では、溶着プロセスは、ポリマーを含む機能性材料に使用するように構成されてもよい。かかる構成では、架橋ポリマーではないポリマーを選択することが、所望の機能特性の達成に有利となり得ると想到される。ただし、以下の請求項に示されない限り、本開示の範囲は、そのように限定されない。溶着プロセスのかかる構成の1つでは、ポリマーは、天然ポリマー又はタンパク質、セルロースデンプン、絹、ケラチン等を含んでもよい。溶着プロセスの一態様では、機能性材料を構成するポリマーは、IL系プロセス溶媒の約1質量%未満であってもよい。加えて、種々の天然材料を機能性材料として使用してもよい。
【0274】
上記のように、溶着プロセスは、1種以上の機能性材が基材の天然繊維と共に予め分散されるように構成されてもよく、当該基材は、不織マット及び紙、編織糸、織布等の形態であってもよく、以下の請求項にそのように示されない限り制限はない。あるいは、機能性材料は、IL系プロセス溶媒を天然繊維基材に適用する前に、IL系プロセス溶媒内に溶解及び/又は懸濁してもよい。天然繊維基材中のバイオポリマーを膨潤及び可動化すると、機能性材料は、生成した溶着基材のマトリックス内に捕捉される場合があり、これが繊維-マトリックス複合材を構成し得る。
【0275】
種々のプロセスパラメータの最適値は、溶着プロセスごとに変動すると予想され、少なくとも、溶着基材の所望の特性、選択される基材、プロセス溶媒、機能性材料、基材がプロセス溶媒適用ゾーン2及び/又はプロセス温度/圧力ゾーン3にある時間、及び/又はこれらの組み合わせに依存する。1つの溶着プロセスでは、プロセス溶媒の最適温度(及びその結果として、プロセス温度/圧力ゾーン3の温度)は、約0℃~約100℃となり得ると想到される。
【0276】
溶着プロセスは、IL系プロセス溶媒と基材とを、約1秒~約1時間、又は基材がIL系プロセス溶媒で少なくとも1.5%飽和、2%~5%飽和、少なくとも10%飽和されるまで、組み合わせる工程を含むように構成されてもよい。かかる溶着プロセスは、機能性材料が、IL系プロセス溶媒が基材と組み合わせられるのと同時に、又はその後に、基材と混合されるように構成されてもよい。
【0277】
IL系プロセス溶媒及び機能性材料への十分な曝露の後、IL系プロセス溶媒の一部は、続いて、プロセス湿潤基材から除去されてもよい。一態様において、溶着プロセスは、IL系プロセス溶媒の一部が、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(EtOAc)、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)ですすぐことによって、又は具体的な溶着プロセスに好適な任意のその他の方法及び/又は装置によって、除去されるように構成されてもよく、以下の請求項にそのように示されない限り制限はない。
【0278】
一態様では、溶着プロセスは、バイオポリマー又は合成ポリマーのいずれかをIL系プロセス溶媒で部分的に溶解することによって、天然繊維状基材の中に機能性材料を捕捉するように構成されてもよい。溶着プロセスの1つの構成では、溶着プロセスは、カチオン及びアニオンを含有し、150℃未満の融点を有するIL系プロセス溶媒を使用するように構成されてもよく、IL系プロセス溶媒は、上記のように分子構成要素を含んでもよい。ただし、以下の請求項に示されない限り、本開示の範囲は、そのように限定されない。溶着プロセスは、基材の天然繊維と機能性材料との間にイオン結合を形成するように構成されてもよい。
【0279】
本開示にしたがって構成された溶着プロセスの一態様では、1種以上の機能性材料は、繊維状基材の部分的溶解のためにIL系プロセス溶媒を導入する前に繊維状基材に組み込まれてもよい。別の態様では、機能性材料は、繊維状基材の部分的溶解のためにIL系溶媒内に分散されてもよい。別の態様では、1種以上の機能性材料は、IL系溶媒内に分散されてもよい。溶着プロセスの更に別の態様では、溶着プロセスは、天然繊維基材及び/又は機能性材料の部分的溶解を活性化するために熱を使用するように構成されてもよい。溶着プロセスの別の態様では、部分的に溶解される機能性材料は、バイオポリマー及び/又は合成ポリマーであってもよい。
【0280】
溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、天然繊維基材、IL系溶媒、及び機能性材料を使用することによって天然繊維の機能性複合材を製造するように構成されてもよい。最初に、天然繊維基材をIL系プロセス溶媒と混合してもよく、この混合は、天然繊維が適切に膨潤されるまで継続してもよい。次に、機能性材料を、膨潤した天然繊維基材及びIL系プロセス溶媒混合物に添加してもよい。溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、圧力及び温度を、ある時間にわたって混合物に適用するように構成されてもよい。次に、少なくとも上記圧力及びIL系プロセス溶媒の少なくとも一部を除去することで、天然繊維機能性複合材として、1、2、又は3次元で構成された、完成した溶着基材が得られてもよい。
【0281】
溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、基材1質量部につき4質量部未満のプロセス溶媒を使用するように構成されてもよく、この質量比は、基材の天然繊維の外鞘のみで水素結合を破壊するのに十分となり得る。水素結合が破壊され、天然構造が変性される度合は、少なくとも、プロセス溶媒組成、並びに天然繊維基材がIL系プロセス溶媒に曝露される時間の長さ、温度、及び圧力条件に依存し得る。
【0282】
バイオポリマーの膨潤及び可動化が起こる程度は、定性的に評価でき、また場合によっては、少なくともX線回折、赤外分光法、共焦点蛍光顕微鏡法、走査型電子顕微鏡、及びその他の分析方法によって定量的に評価できる。溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、少なくとも
図15A及び
図15Bに関して以下に更に詳述するようにして起こる、セルロースIからIIへの変換の量を制限するために、特定の変数を制御するように構成されてもよい。この変換は、溶着基材における繊維-マトリックス複合材の生成を実証する限り、重要となる可能性があり、その複合材において、天然繊維はその本来の構造の一部を維持し、ひいてはそれに対応する本来の化学的及び物理的特性を維持し得る。基材繊維の膨潤は、典型的には、長さ方向よりも幅方向に沿って観察され、溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、天然繊維直径を約5%、10%、又は更には25%を超えて増大するように構成されてもよい。
【0283】
天然繊維を含む基材における最も外側のバイオポリマーの可動化は、一般的に、本開示による溶着プロセスの特徴とみなすことができる。可動化されたポリマーは、生成する溶着基材中の繊維-マトリックス複合材のマトリックス内に機能性材料を挿入及び捕捉できるように膨潤されてもよい。IL系プロセス溶媒の主な作用機序は、水素結合の破壊によってバイオポリマーを膨潤及び可動化することであると考えられることから、比較的大量のリグニン(概ね10%を超えるリグニン)を含有する天然繊維基材は、一般的にIL系プロセス溶媒での膨潤及び可動化に適さない。これらのリグノセルロース天然繊維(例えば、木材繊維)は、比較的不活性な繊維補強材として組み込むことができるが、概ね10%を超えるリグニンを含有するリグノセルロース繊維は、セルロース又はヘミセルロースマトリックスには多くを提供しない。これは、少なくとも部分的には、他の方法ではIL系プロセス溶媒によって膨潤及び可動化されると思われるセルロース及びヘミセルロースバイオポリマーが、架橋されたリグニンバイオポリマー内に本質的に固定されるためである。本明細書で使用するとき、「可動化された」という用語は、基材繊維コア内の材料を未変性状態のまま残しながら、機能性材料が基材繊維の外面から移動して、隣接する基材繊維からの機能性材料と同化する作用を包含する。バイオポリマーの膨潤及び可動化並びに機能性材料の捕捉を行うと、IL系プロセス溶媒は、一般的に、新たに生成した繊維-マトリックス複合材溶着基材から除去されてリサイクルされる。
【0284】
本明細書で使用するとき、「再構成」という用語は、プロセス湿潤基材からプロセス溶媒がすすぎ/洗い流されるプロセスを指して使用される。これは、典型的には、過剰な分子溶媒(例えば、水、アセトニトリル、メタノール)を、プロセス湿潤基材の周囲及び中に流すことによって、又はプロセス湿潤基材を分子溶媒の浴に浸漬することによって、達成される。再構成溶媒の選択は、基材に含まれるバイオポリマーの種類、並びにプロセス溶媒の組成及びプロセス溶媒を再使用のために回収及び精製することの容易さ等の要因に依存する。
【0285】
プロセス溶媒の除去後、再構成溶媒は、典型的には除去される。これは、典型的には、昇華、蒸発、又は沸騰の任意の組み合わせによって達成され得る。天然繊維基材、機能性材料の選択、及び溶着プロセスの全部又は一部で基材が物理的に制約されるか否かに応じて、基材は、大幅な寸法(次元)変化を起こす場合がある。例えば、編織糸の直径は、個別の天然繊維間の空きスペースが溶着基材中の連続する繊維-マトリックス複合材に統合されることから、最大で2分の1に縮小し得る。
【0286】
溶着プロセスの態様では、溶着プロセスは、天然繊維を含む基材中の天然繊維の一部が、直径において約2%~約6%膨潤するように構成されてもよい。より具体的には、溶着プロセスの一態様では、かかる天然繊維の一部は、直径において約3%を超えて膨潤され得る。
【0287】
溶着プロセスの一態様では、混合物は、約90質量%の天然繊維基材及び機能性材料並びに約10質量%のIL系プロセス溶媒であってもよい。あるいは、基材及び/又は基材と機能性材料の混合物に添加されるIL系プロセス溶媒の量は、天然繊維1質量部に対して約0.25質量部~約4質量部のプロセス溶媒であってもよい。
【0288】
溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、プロセス温度/圧力ゾーン3の圧力がほぼ真空となり得るように構成されてもよい。あるいは、溶着プロセスは、プロセス温度/圧力ゾーン3の圧力が約1気圧であるように構成されてもよい。更に別の構成では、プロセス温度/圧力ゾーン3の圧力は、約1気圧~約10気圧であってもよい。上記のように、基材がプロセス溶媒に曝露される温度及び/又は時間も制御されてもよい。
【0289】
溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、複数の天然繊維を含む基材を提供する工程、IL系プロセス溶媒を提供する工程、及び少なくとも1つの機能性材料を提供する工程を含んでもよい。そのように構成された溶着プロセスは、基材、IL系プロセス溶媒及び機能性材料を、天然繊維機能性複合材を構成する溶着基材を製造する化学反応を起こす所定の順序で混合する工程を含んでもよく、この天然繊維機能性複合材においては、機能性材料が天然繊維に浸透しており、複数の天然繊維及び機能性材料の両方が共有結合してもよい。溶着プロセスの一態様では、少なくとも、化学反応の温度、圧力及び時間が制御されてもよい。溶着プロセスは、プロセス溶媒の一部を除去するように構成されてもよく、特定の用途では、プロセス溶媒の大部分、又は実質的に全部のプロセス溶媒を除去することが有利となり得ると想到される。
【0290】
溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、所定のプロセスの順序により、天然繊維基材がプロセス溶媒と混合され、天然繊維基材が膨潤を達成した後に、機能性材料が導入されるように構成されてもよい。かかる溶着プロセスの一態様では、IL系プロセス溶媒を分子溶媒構成要素で希釈してもよく、その際バイオポリマー又は合成ポリマー材料の部分的溶解プロセスは、分子溶媒構成要素の除去後に開始する(当該除去は、以下の請求項にそのように示されない限り制限されない任意の好適な方法及び/又は装置で実施されてもよく、例としては蒸発又は蒸留が挙げられるがこれらに限定されない)。
【0291】
ある溶着プロセスでは、炭素-綿-プロセス溶媒混合物を使用して、プロセス溶媒を含む溶液に綿布地が曝露されたときに、炭素を綿布地に結合する薄いコーティングの炭素/綿結合を有する溶着基材を作製してもよい。
【0292】
溶着プロセスの一態様では、プロセス溶媒及び天然繊維基材をブレンドして、機能性材料(例えば、導電性炭素)が天然繊維基材の中に移動すること及び/又は炭素機能性材料の薄いコーティングを綿等の天然繊維基材上に形成することを可能にする表面張力特性を生じ得る。以下の実施例は、機能化が達成される溶着基材及び/又は溶着プロセスを説明する。以下の実施例は、限定的な意味で読まれることを意図するものではなく、むしろ、本明細書に開示する、より広い概念及び溶着プロセスの例証として読まれることを意図する。
【0293】
B.機能性材料捕捉
【0294】
以下の実施例は、1種以上の機能性材料が、天然繊維状材料を含む基材に捕捉され、機能性材料が基材に組み込まれた後でIL系プロセス溶媒を導入され得る溶着プロセスを詳述する。ここでも、以下の実施例は、以下の請求項にそのように示されない限り、本開示の範囲を何ら限定するものではない。本発明の一実施形態では、捕捉は、イオン液体系溶媒を導入する前に、機能性材料を繊維状基材に組み込むことを伴う。
【0295】
図3は、繊維-マトリックス複合材内への固体材料の追加及び物理的捕捉のためのプロセスを、
図3A~3Eと表記された
図3のサブプロセス又は構成要素と共に例証する。
図3Aに示すように、天然繊維基材10は、ある量の空きスペースを含んでもよい。
図3Bに示すように、分配された機能性材料20は、天然繊維基材10に組み込まれてもよい。IL系プロセス溶媒30が(プロセス湿潤基材を形成するため)天然繊維基材10及び機能性材料20に導入された後の時点を、
図3Cに示す。その後、制御された圧力、温度、及び時間を用いて、分散及び結合された機能性材料21を有する膨潤天然繊維基材11(
図3Dに示す)を作製してもよい。
【0296】
溶着プロセスの一態様では、IL系プロセス溶媒30の全部又は一部を、その後、結合された機能性材料21及び膨潤天然繊維基材11から除去して、複数の天然繊維基材10の機能特性及び複数の機能性材料20の機能特性を維持すると同時に、捕捉された機能性材料22を有する、溶着繊維40を生成する。特記のない限り、溶着繊維40、42に関して本明細書に記載されるいかなる特質、特徴及び/又は特性も、溶着繊維40、42を含む布地、織物、及び/又はその他の物品へと拡大できる。
【0297】
溶着プロセスの一態様では、溶着繊維40は、共有結合した機能性材料21と膨潤天然繊維基材11との組み合わせであってもよい。溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、走査型電子顕微鏡データで観察されるように、生成する溶着基材が、捕捉された磁性(NdFeB)微粒子で機能化された綿布を含むように構成されてもよい。溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、布材料を含む天然繊維基材10内に乾燥粉末として組み込まれ得る消磁された微粒子を含む機能性材料20用に構成されてもよい。驚くべきことに、溶着プロセスは、天然繊維基材10のバイオポリマー内に粒子を捕捉し得、これにより磁性粒子が溶着繊維40内に強く保持されることが観察され、激しく洗濯しても除去されない。溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、上記の手順と類似の手順により、類似の利点が得られるように、並びに/又は編織糸及び不織、繊維状マット天然繊維基材10(綿及び絹編織糸マトリックスを含む)を生成するように、構成されてもよい。
【0298】
上述のように、直前の実施例に記載の溶着プロセスは、機能性材料又は天然繊維基材10をIL系プロセス溶媒に曝露する前に、ナノ材料機能性材料20の懸濁液がバイオポリマー天然繊維基材10に添加されるように構成されてもよい。少なくとも機能性材料20(これは量子ドットを含み得る)の表面化学に応じて、水性又は有機(例えば、トルエン)等の異なる分子溶液を、単独で又はIL系プロセス溶媒30と共に使用してもよい。ナノ材料機能性材料20の表面化学(すなわち、疎水性/親水性)は、天然繊維基材10と共に、生成する溶着繊維40内でのナノ材料機能性材料20の最終的な位置及び分散に強く影響し得る。
【0299】
表面化学は、天然繊維基材10及び機能性材料20がIL系プロセス溶媒と自己集合して、複合材料内に機能の微細加工を作るための戦略として使用されてもよい。例えば、溶着プロセスの一態様では、量子ドットは、サイズ依存性の特性を有する半導体材料を含んでもよい。表面は、以下の請求項にそのように示されない限り制限なく、医薬、センシング、及び情報戦略用途で使用するための異なる化学的環境に適合するように機能化することができる。
【0300】
C.プロセス溶媒/機能性材料混合物からの機能性材料捕捉
【0301】
図4は、繊維-マトリックス複合材内への固体材料の追加及び物理的捕捉のためのプロセスを、IL系溶媒中に(予備)分散された材料を用いて、
図4A~4Dと表記された
図4のサブプロセス又は構成要素と共に示す。
図4Aに、最初の天然繊維基材10が、分散された機能性材料20をその中に有するIL系プロセス溶媒30と共に、プロセス溶媒/機能性材料混合物32を作製することを示す。
図4Aに示すように、天然繊維12の導入前に、機能性材料20は、IL系プロセス溶媒30内に予め配置されて、プロセス溶媒/機能性材料混合物32を形成し得る。
【0302】
次いで、天然繊維基材10及びプロセス溶媒/機能性材料混合物32を、
図4Bに示すように組み合わせて(プロセス湿潤基材を生成して)もよい。少なくとも、制御された圧力、温度、及び/又は時間を使用して、
図4Cに示すように、プロセス溶媒/機能性材料混合物32内に膨潤天然繊維基材112を形成してもよい。溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、
図2Dに示すように、その後、IL系プロセス溶媒30の全部又は一部を膨潤天然繊維基材112から除去して、複数の天然繊維基材10の機能特性及び複数の機能性材料20の機能特性を維持すると同時に、捕捉された機能性材料22を有する、溶着繊維42を生成するように構成されてもよい。
【0303】
溶着プロセスの一態様では、溶着繊維42は、共有結合した機能性材料20と膨潤天然繊維基材112との組み合わせであってもよい。溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、生成する溶着基材が、コットンペーパー(繊維状マット)を含む天然繊維基材10の中に捕捉された分子染料を含む機能性材料20を含むように構成されてもよく、機能性材料20は、天然繊維基材10への適用の前に、(プロセス溶媒/機能性材料混合物32を形成するため)IL系プロセス溶媒30に分散されてもよい。溶着プロセスの間、バイオポリマー(例えば、コットンペーパーを含む天然繊維基材10中のセルロース等)は膨潤されて、染料を含む機能性材料20は、ポリマーマトリックス内に物理的に拡散され、共有結合によって捕捉される可能性がある。溶着プロセスの後、染料は、明らかにポリマーマトリックス内に捕捉された状態を保ち得る。
【0304】
溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、特定の情報及び/又は化学的機能を、生成する溶着繊維40、42の中の天然繊維基材10に制御可能に融合し得るように構成されてもよい。かかる溶着繊維40、42は、少なくとも、紙幣の偽造防止、衣類の染色(染色堅牢度)、薬剤送達デバイス、及びその他の関連技術への応用の可能性がある。溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、天然繊維基材10への組み込みのためにIL系プロセス溶媒30に分散することができる分子又はイオン性種を含み得る機能性材料20に使用するように構成されてもよい。
【0305】
一般的に、機能性材料20を添加する目的は、用途特異的となり得る。例えば、セルロースと共有結合する結合化学を有する染料は、比較的高額となり得る。溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、溶着繊維40、42内で特殊な結合化学を有さない低コストの代替染料を捕捉するように構成されてもよい。かつて膨潤及び可動化されたバイオポリマー(例えば、膨潤天然繊維基材11、112)であったものの内部に捕捉された1種以上の染料を含む機能性材料20は、容易に洗い流されず、少なくとも織物及び/又はバーコード化/情報記憶用途に適用可能となり得る。その他の態様では、導電性機能性材料20を、エネルギー貯蔵用途のために溶着繊維40、42内に捕捉できる。磁性材料を含む機能性材料20の捕捉は、織物ベースのアクチュエータに関連し得る。医薬品及び/又は量子ドットを含む機能性材料20の捕捉は、医学用途に関連し得る。粘土を含む機能性材料20の捕捉は、難燃性強化と関係がある。機能性材料20としてのバイオポリマーキチンの添加は、その既知の抗菌特性による用途を見出し得る。手短に言えば、可能性のある用途の数はきわめて大きい。機能性材料20としては、電子、分光、熱伝導性、磁性、抗菌及び/又は抗微生物特性を有する有機及び/又は無機材料(例えば、キチン、キトサン、銀ナノ粒子等)、及び/又はこれらの組み合わせに作用するのに適切な粘土、全ての炭素同素体、NdFeB、二酸化チタン、これらの組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、以下の請求項に示されない限り、本開示の範囲は、特定の機能性材料20及び/又は生成する溶着基材及び/又は溶着繊維40、42の特定の応用に何ら限定されるものではない。
【0306】
溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、関連する機能性材料20を確実に捕捉するために特殊な共有結合化学を必要とせず、むしろ、機能性材料20が溶着繊維40、42内に物理的に捕捉され得るように構成されてもよい。溶着プロセスの一態様では、機能性材料20は、情報コード化又は堅牢性染料の作製のため、より一般的には、デバイス機能を統合するための、高い空間的制御にて組み込まれてもよい。多次元印刷及び製造技術は、単一の材料又は物体の中に多くの種類の機能を層化することを可能にする。
【0307】
D.プロセス溶媒/機能性材料/ポリマー混合物からの機能性材料捕捉
【0308】
図5A~
図5Dに種々のサブプロセス及び構成要素を更に示した
図5からわかるように、一態様では、溶着プロセスは、IL系プロセス溶媒及び追加の可溶化ポリマーも含有する溶媒の混合物に機能性材料20を導入することによって、機能性材料20を天然繊維基材10に組み込むように構成されてもよい。
【0309】
図5Aに示すように、かかるプロセスは、天然繊維基材10及び機能性材料20と混合したIL系プロセス溶媒30から始まってもよく、機能性材料20は、IL系プロセス溶媒30中に分散されてプロセス溶媒/機能性材料混合物32を構成する。ポリマー53は、ポリマー53がプロセス溶媒機能性材料混合物32に溶解及び/又は懸濁されるように、プロセス溶媒/機能性材料混合物32に含まれてもよい。
【0310】
天然繊維基材10への適用の前にポリマー53と混合されたプロセス溶媒/機能性材料混合物32を
図5Aに示す。
図5Bに示すように、ポリマー53をその中に有するプロセス溶媒/機能性材料混合物32を、その後、天然繊維基材10に導入して、プロセス湿潤基材を形成してもよい。溶着プロセスは、制御された圧力、温度、及び時間により、
図5Cに示すように、組み合わされたプロセス溶媒/機能性材料混合物32、ポリマー53、及び天然繊維基材10内に膨潤天然繊維基材11、112を形成するように構成されてもよい。
【0311】
溶着プロセスの一態様では、IL系プロセス溶媒30の全部又は一部を、その後、プロセス湿潤基材(これは、結合された機能性材料21及び膨潤天然繊維基材11、112を含んでもよい)から除去して、
図5Dに示すように、複数の天然繊維基材10の機能特性及び複数の機能性材料20の機能特性を維持すると同時に、捕捉された機能性材料22及びポリマー53を有する、溶着繊維40を生成する。
【0312】
溶着プロセスの一態様では、溶着繊維40は、共有結合した機能性材料21、ポリマー53、及び膨潤天然繊維基材11の組み合わせであってもよい。ポリマーは、バイオポリマー及び/又は合成ポリマーを含んでもよい。特定のポリマー53に使用するように構成された溶着プロセスでは、追加ポリマーは、結合剤(例えば、膠)並びに溶液粘度を変えるためのレオロジー変性剤の両方として作用してもよい。更に、かかる溶着プロセスは、溶着基材内の機能性材料20の最終的な位置に対する更なる空間的制御を可能にし得る。溶着プロセスの一態様では、溶着プロセスは、炭素材料を含む機能性材料20に使用するように構成されてもよく、天然繊維基材10は、溶着繊維40、42を生成する綿糸を含んでもよく、当該繊維は、試験により、織布において高エネルギー密度スーパーキャパシタ用電極としての使用に好適であることが実証されている。これは、可撓性でウェアラブルなエネルギー貯蔵デバイスを提供するように適応できる。
【0313】
溶着プロセスは、有機材料(例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン等)又は無機材料(銀ナノ粒子、ステンレス鋼、ニッケル、金属及び金属酸化物でコーティングされた繊維等)のような1種以上の導電性添加剤を含む機能性材料20を用いて、溶着繊維40、42を製造するように構成されてもよい。かかる溶着繊維40、42は、導電性の増強を示す場合があり、適切な電解質(例えば、ゲル、ポリマー電解質等のいずれか)と組み合わせたときには、これらの溶着繊維40、42(及び/又はそれから製造された布地及び/又は織物)は、電気化学反応及び/又は容量型エネルギー貯蔵が可能な場合がある。
【0314】
溶着プロセスは、容量型添加剤(例えば、MnO2等)を含む機能性材料20を用いて溶着繊維40、42を製造するように構成されてもよい。かかる溶着繊維40、42は、ゲル又はポリマー20のいずれかの電解質を含む適切な電解質と組み合わせたときに、エネルギー貯蔵特性の増強を示す。
【0315】
溶着プロセスは、光活性添加剤(例えば、TiO2等)を含む機能性材料20を用いて溶着繊維40、42を製造するように構成されてもよい。かかる溶着繊維40、42は、自己洗浄性(例えば、TiO2のようなワイドギャップ半導体の場合)及び/又は耐紫外線特性の増強を示し得る。
【0316】
本明細書の溶着プロセスにより製造された溶着繊維40、42のその他の用途としては、偽造防止から薬剤送達用途にまで及ぶ技術が挙げられるが、これらに限定されない。更に、上記の機能性材料の列挙は、排他的及び/又は限定的であることを意味するものではなく、以下の請求項にそのように示されない限り制限なく、その他の機能性材料を使用してもよい。
【0317】
8.変調溶着プロセス
【0318】
本明細書で上に記載したように、溶着プロセスは、多種多様な溶着基材の仕上げ(例えば、編織糸の仕上げ)を従来基材(繊維溶着されていない)から製造できるように構成されてもよく、当該基材は、溶着プロセスの特定の構成において編織糸及び/又は織物基材を含んでもよい。例えば、溶着プロセスは、制御された可変速度及び/又は変調された速度でポンプ輸送されたプロセス溶媒の使用によって、及び/又は基材(例えば、編織糸、縫糸、布地、及び/又は織物)を溶着プロセス中に可変速度で移動させることによって、及び/又はプロセス溶媒組成を変えることによって、及び/又はプロセス溶媒適用ゾーン2、プロセス温度/圧力ゾーン3、プロセス溶媒回収ゾーン4の温度及び/又は圧力を変えることによって、張力(例えば、基材、プロセス湿潤基材等の)を変えることによって、及び/又はこれらの組み合わせにより、変調溶着プロセスとして構成されてもよい。
【0319】
一態様では、溶着プロセスは、溶着プロセスが基材内の繊維の制御可能な量を溶着状態に変換し得るように、繊維を含む基材に対するプロセス溶媒の比を特異的かつ厳密に制御できるように構成されてもよい。プロセス溶媒の基材に対する比は、少なくとも、具体的なプロセス溶媒及び基材の特性に応じて最適化されてもよい。例えば、極性非プロトン性添加剤(例えば、アセトニトリル)と混合したイオン液体(例えば、3-エチル-1-メチルイミジゾリウム酢酸塩、3-ブチル-1-メチルイミジゾリウム塩化物等)等のプロセス溶媒混合物を使用するように構成された溶着プロセスでは、1質量部の基材に1質量部のプロセス溶媒添加~1質量部の基材に4質量部のプロセス溶媒添加、という範囲のプロセス溶媒比を使用してもよい。溶着プロセスの別の態様は、冷アルカリ(水酸化ナトリウム及び/又は水酸化リチウム)を尿素溶液と共に含むプロセス溶媒を使用してもよく、プロセス溶媒の比率は、1質量部の基材に対して2質量部のプロセス溶媒~1量部の基材に対して10質量部を超えるプロセス溶媒、という範囲であってもよい。表11.1は、溶着システムを、イオン液体を含むプロセス溶媒及び水酸化物水溶液を含むプロセス溶媒を使用した溶着糸の製造に問題なく使用できたプロセスパラメータの例である。パラメータを表11に示すが、当該パラメータは、以下の請求項にそのように示されない限り、本開示の範囲を限定するものではない。
【0320】
水酸化物及び尿素の水溶液を含むプロセス溶媒を使用する1つの溶着プロセスでは、水酸化物は、NaOH及び/又はLiOHを含んでもよい。溶着プロセスでは、水酸化物は、4~15重量%のLiOH及び8~30%の尿素を含んでもよい。特定の用途では、プロセス溶媒を、6~12重量%のLiOH及び10~25%の尿素を含むように構成することが有利となり得る。更に別の用途では、プロセス溶媒を、8~10重量%のLiOH及び12~16%の尿素を含むように構成することが有利となり得る。
【0321】
【0322】
表11.1に明記した温度範囲に関して、温度は、プロセス溶媒系の具体的な組成に対して最適化してもよいことに注意されたい。更に、プロセス溶媒系の温度及び組成は、基材上の所望の量及び位置での溶着を実施するために、少なくとも溶媒適用ゾーン2ハードウェア及び/又はプロセス制御ソフトウェア及び/又は装置と共最適化されてもよい。すなわち、一貫した溶着基材特性又は変調された基材特性のいずれかを提供する繊維溶着である。これは、溶媒適用中並びにプロセス温度/圧力ゾーン3に必要に応じて粘性抵抗を適用することによっても達成され得る。
【0323】
表11.1に示し、本明細書で上に記載のように、プロセス溶媒系は、IL液体及び分子添加剤の混合物として構成されてもよい。IL液体の分子添加剤に対するモル比は溶着プロセスごとに変動する場合があり、その基材への適用中にプロセス溶媒系の最適温度に影響し得る。例えば、1molのACNに対して1molのBMIm Clを含むプロセス溶媒系を利用するよう構成された溶着プロセスにおいて、温度が120℃を超えて上昇すると(この場合、溶着速度が最適となり得る)、ACNの蒸気圧は(安全衛生に関して)制御が困難な処理条件を生じ得る。この制約の結果、溶着温度は、より低い温度(例えば、105℃)に設定されるが、かかる温度ではより長い持続時間(>30秒)を必要とする。対照的に、EMIm OAcを含むプロセス溶媒系を使用するように構成された溶着プロセスでは、プロセス溶媒の有効性がBMIm Clよりも高いことから、最適温度は80℃~100℃であり、したがってこの温度範囲でのEMIm OAcの溶着時間は5~15秒の範囲となり得る。したがって、少なくともプロセス溶媒適用ゾーン2、プロセス温度/圧力ゾーン3、及び溶着プロセスのその他の工程の最適温度は、その用途ごとに変動する場合があり、ゆえに、以下の請求項にそのように示されない限り、本開示の範囲を何ら限定するものではない。
【0324】
ここで表9.1、表10.1、及び表11.1(いずれも、水酸化物水溶液を含むプロセス溶媒を使用するように構成された溶着プロセスの主なプロセスパラメータを提供する)を参照すると、プロセス溶媒の基材に対する最適な比率(質量又は重量比)は、少なくとも基材フォーマットの種類に基づいて変動し得る。例えば、2D基材に使用するように構成された溶着プロセスは、比が0.5~7であってもよく、一部の溶着プロセスは約3.7の比で最適に構成される。1D基材に使用するように構成された溶着プロセスは、比が4~17であってもよく、一部の溶着プロセスは約10の比で最適に構成される。比が約10以上、具体的には17の場合、プロセス湿潤基材がプロセス溶媒で飽和を超えた状態を生じ、それによって、基材及び/又はプロセス湿潤基材に吸収されない余分な溶媒が、プロセス湿潤基材の外側に存在することが観察された。ただし、IL系プロセス溶媒又は水酸化物水溶液のプロセス溶媒を使用する溶着プロセスに関する特定の比は、以下の請求項にそのように示されない限り、本開示の範囲を何ら限定するものではない。
【0325】
【0326】
表11.2に示すプロセス溶媒の値及び組成に関して、追加の機能性材料添加剤は、溶着の空間的変調及び特異な制御された体積圧密を可能にすることに注意されたい。溶解セルロース等の機能性材料を適切なハードウェア及び制御を用いて溶着プロセスに添加することで、少なくとも
図9I及び
図9Jに関して上に詳述したように、シェル溶着糸に驚くべき作用を及ぼし得る。つまり、溶着の量は、基材断面(すなわち、
図9I及び9Jの具体例では、編織糸直径)によって制御されてもよく、未加工基材の対照サンプルと比較して、強靭性及び伸びの両方が改善された溶着基材(すなわち、この具体例では溶着糸基材)が製造され得る。
【0327】
表11.1に記載の種々の値と共に、再構成溶媒の種類及びその温度も、再構成湿潤基材が乾燥されたときに、制御された体積圧密に対して驚くべき影響を及ぼし得ることにも注意されたい。18/1リング紡績綿糸を含む未加工1D基材のSEM画像を
図13に示す。1つの溶着基材を
図14Aに示し、別の溶着基材を
図14Bに示し、いずれも
図13に示す基材から製造した。
図14A及び
図14Bに示す溶着基材はいずれも、
図9Aに示す溶着プロセス及び装置を用いて製造した。
【0328】
【0329】
表12.1は、
図13に示す未加工基材の種々の特質を示す。特性値は、溶着糸基材の約20の固有の試料で実施した平均である。特性値は、インストロン社製の機械的特性試験機を用い、ASTM D2256を近似した引張試験モードで操作して収集した。表12.1の各列見出しの機械的特性は、上で表1.2に関して記載したものと同じである。
【0330】
表13.1は、
図14Aに示す溶着基材及び
図14Bに示す溶着基材の両方の製造に用いた主なプロセスパラメータの一部を示す。表13.1の各列見出しのプロセスパラメータは、上で表1.1に関して記載したものと同じである。
【0331】
【0332】
表13.2は、表13.1に記載のパラメータを用いて製造された
図14Aに示す溶着基材の種々の特質を示す。特性値は、溶着糸基材の約20の固有の試料で実施した平均である。特性値は、インストロン社製の機械的特性試験機を用い、ASTM D2256を近似した引張試験モードで操作して収集した。表13.2の各列見出しの機械的特性は、上で表1.2に関して記載したものと同じである。
【0333】
【0334】
表13.3は、表13.1に記載のパラメータを用いて製造された
図14Bに示す溶着基材の種々の特質を示す。特性値は、溶着糸基材の約20の固有の試料で実施した平均である。特性値は、インストロン社製の機械的特性試験機を用い、ASTM D2256を近似した引張試験モードで操作して収集した。表13.3の各列見出しの機械的特性は、上で表1.2に関して記載したものと同じである。
【0335】
【0336】
図14Aを
図14Bと比較すると、体積制御された圧密を操作して、どのように特定の特質の溶着糸基材が得られるかが明らかである。具体的には、
図14Aと
図14Bの対比は、方法、再構成溶媒の組成、及び/又はプロセス溶媒回収ゾーン4(及び/又は溶着プロセスのその他の工程)の構成が、溶着糸基材の制御された体積圧密にいかに影響し、その結果、溶着基材の機械的特性及び/又はその他の重要な特質に影響し得るかを示す。かかる特質の1つは、編織糸及びそれから製造して得られる布地の「手触り」(すなわち、人が触ったときの感じ方)である。
【0337】
具体的には、
図14Aに示す溶着糸基材及び
図14Bに示す溶着糸基材はいずれも、再構成溶媒が水を含む溶着プロセスを用いて製造された。ただし、
図14Aの着編織糸基材では、水の温度は22℃であり、
図14Bでは、40℃であった。
図14Aと
図14Bの対比から明らかなように、
図14A(より冷たい再構成溶媒)に示す溶着基材の製造に使用した溶着プロセスで得られる溶着基材は、
図14B(より温かい再構成溶媒)に示す溶着基材と比べて、大幅に柔らかい手触りを有する。40℃を超える再構成溶媒を有する溶着プロセスを用いて製造された同様の溶着糸基材で製造した布地は、室温で再構成溶媒を有する溶着プロセスを用いて製造された溶着糸基材から製造した布地と大きく異なる手触り特性を有し得る。したがって、プロセス溶媒回収ゾーン4の構成(例えば、再構成方法)及びその条件は、重要な新規パラメータである。
【0338】
更に
図14A及び
図14Bを参照すると、これらは同じ溶着プロセスから製造したが、再構成溶媒の温度が異なっており、溶着糸基材の制御された体積圧密において再構成の温度が重要な役割を果たすことが明らかである。ここでも、
図14A及び
図14Bの溶着糸基材の一部の機械的特性を、それぞれ表13.2及び表13.3に示す。いずれの溶着糸基材も、原糸基材と比べて機械的特性の大幅な改良(例えば、原糸基材と比べて15~23%の改良)を示すが、高温で再構成溶媒処理した
図14B(表13.3も参照)に示す溶着糸基材は、直径がわずかに大きく、表面に、より多くのルーズ繊維/毛を有した。
図14Bの溶着糸基材は、
図14Bに示す基材よりもわずかに繊維状であるが、
図14Bの繊維の量は、
図13に示す対応する原糸基材の量よりも少ないことがわかる。更に、
図14Bの溶着糸基材上の繊維は、リントとしての溶着糸基材からの分離に耐えるように溶着糸基材に固着されている。溶着プロセスを通して、溶着糸基材の表面又はその近くにおける改質された繊維/毛は、溶着糸基材から製編又は製織された布地の手触りに影響する重要な特質となり得る。
【0339】
一般的に、直前に記載の範囲内の特定の値の溶媒比は、比が変動せず一定に保たれ、そして温度等のその他の重要な変数も溶着プロセスの間一定に保たれる限り、その比を使用して、編織糸を含む基材に対して非常に一貫した溶着糸を製造することができる。その際、溶着プロセスは、溶着糸の長さ方向に一定量の溶着繊維を有し得るような一定量の溶着を示す溶着基材を生成するように構成されてもよい。
【0340】
動的なプロセス溶媒比(本明細書では、基材の質量に対するプロセス溶媒の質量の比と定義される)、プロセス溶媒の組成、圧力及びプロセス溶媒を適用する方法の適切な制御により、新たな効果が得られる。例えば、適切な動的制御を溶着プロセスに使用することで、ヘザー及び/又はスペース染色(多色効果)の外観をもつ溶着基材を生成でき、このとき編織糸又は織物を含む溶着基材は、溶着プロセスの動的制御の結果であり得る、さまざまな程度の着色を有し得る。ヘザー及び/又はスペース染色効果の生成は、これらの織物製造工程が溶着プロセス後に達成される場合は、染色及び仕上げ時にのみ明らかになり得る。
【0341】
ただし、変調溶着プロセスは、ヘザー又はスペース染色効果を生むことに限定されず、可変直径を有する(可変長及び/又は直径の基材の必要なしに、異なる編織糸重量を有する)「エンボス加工された」編織糸や、まだそれを表現する技術用語が織物産業に存在しないような、任意の数のその他の特異な効果を製造するようにも構成できる。効果が観察される程度は、それが作用する編織糸又は織物基材とも相関し得る。例えば、編織糸を含む基材の製造に使用された紡績プロセスの種類(例えば、リング紡績、オープンエンド紡績、ボルテックス紡績等)は、互いに異なる溶着条件(例えば、異なるプロセス溶媒比及び/又は適用方法)を必要とする場合がある。
【0342】
A.変調溶着プロセスと非変調溶着プロセスの比較
【0343】
ここで変調溶着プロセスの1つの代表例を記載し、非変調溶着プロセス(上記のような)と比較する。ただし、上記の例示は、いかなる限定も意味するものではなく、したがってその特定のパラメータは、以下の請求項にそのように示されない限り、本開示の範囲を限定するものではない。
【0344】
非変調溶着プロセスでは、溶着プロセスは、30/1リング紡績糸を含む基材用に構成されてもよく、当該基材は、溶着プロセスを一貫して操作することによって、一貫した着色、一貫した感触及び仕上げ、並びに一貫した量の目に見える外部繊維「毛」を有するきわめて一貫した溶着基材に変換され得る。例えば、安定なプロセス溶媒対基材の質量比、溶着プロセス全体を通して定常的な編織糸移動速度、一貫した温度及び圧力等を使用するように溶着プロセスを構成することによって、この溶着基材は、本明細書で上に記載した溶着基材の全部又は一部も示す可能性がある。
【0345】
あるいは、所望であれば、変調溶着プロセスのいくつかのパラメータを劇的に変えることによって、変調溶着プロセスを、30/1リング紡績糸を含む基材を、多色ヘザー又はスペース染色の外観を有する編織糸を含む溶着基材に変換するように構成してもよい。溶着プロセスは、商品の30/1リング紡績糸(これは大量生産された概ね均一な製品である)を含む基材を、多数の最終用途及び応用のための固有の外観、感触、及び/又は仕上げを有する溶着糸を含む溶着基材に変換するように自動化できることから、これは意外かつ非常に有用な結果である。相関する変調溶着プロセスでは、溶着プロセスは、より重い(Ne18編織糸が挙げられるがこれに限定されない)及び軽い(Ne40編織糸が挙げられるがこれに限定されない)商品並びに特殊な編織糸を含む基材に使用するように構成されてもよく、以下の請求項にそのように示されない限り限定されない。
【0346】
更に、変調溶着プロセスは、編織糸を含む基材のみに特化した効果及び仕上げを生じるための構成に限定されない。例えば、水酸化リチウム及び/又はナトリウムと尿素の水溶液のような混合無機溶媒が挙げられるがこれらに限定されないプロセス溶媒の適用は、編織糸を含む基材、更には従来材料(例えば、溶着プロセスを通っていない編織糸)又は溶着基材(例えば、溶着糸)のいずれかから製造された織物全体を含む基材にも適用できる。
【0347】
溶着プロセスを使用した布地の処理は、布地又は衣類の局所的な領域(1つ又は複数)に対して実施できる。例えば、プロセス溶媒のインクジェット及び/又はスクリーン印刷に使用されるプロセスのようなプロセスは、2D及び/又は3D基材に領域特異的な溶着プロセスを達成するのに非常に有用な方法となり得る。あるいは、溶着プロセスは、材料又は衣類の全体と比べて比較的均一な特性の2D及び/又は3D溶着基材を製造するように構成されてもよい。
【0348】
溶着プロセスが、その種々のパラメータが適切に制御されて(例えば、限られた溶着時間、比較的低いプロセス溶媒比等)構成及び使用されるとき、当該溶着プロセスは、織物内の編織糸接合部に過度の溶着を行うことなく、製織及び製編される布の強度及びピリング特性が、対応する従来の未加工基材と比較して改善される溶着基材を生成し得る。あるいは、異なる構成(例えば、より長い溶着時間、より高いプロセス溶媒比等)の溶着プロセスは、製織及び製編材料中に溶着及び/又は部分的に溶着された溶着糸接合部を有する製織及び製編材料を含み、より剛直な及び/又はより頑丈な材料を提供する溶着基材を生成し得る。1D基材(例えば、編織糸、縫糸)と比べて、2D及び/又は3D基材(例えば、布地、織物)に溶着プロセスを用いることの利点は、大量の材料が同時に処理されることである。ただし、上記のように、編織糸及び/又は縫糸を含む基材を製織及び/又は製編前に溶着することで、多数の製造及び性能面での相乗効果が得られる場合がある。所与の溶着プロセスを、特定の基材にいつどのように適用するかという選択は、目指す結果の種類/溶着基材の最終使用用途に大きく依存し、したがって、以下の請求項にそのように示されない限り、本開示の範囲を何ら限定するものではない。
【0349】
上記の可能性に加えて、1D(例えば、編織糸及び/又は縫糸)、2D、及び/又は3D基材(例えば、2D及び/又は3D基材に該当する布地及び/又は織物)及び/又は基材の構成要素(例えば、2D及び/又は3D基材の個別の編織糸又は縫糸)の断面を円形以外の形状にするように、又は円形の断面形状を有する溶着基材を形成するように、溶着プロセスを構成することが可能である。可能な形状としては、限定するものではないが、平楕円又はリボン様形状が挙げられる。これは、プロセス溶媒適用ゾーン2、プロセス温度/圧力ゾーン3、プロセス溶媒回収ゾーン4、乾燥ゾーン5、及び/又はこれらの組み合わせ内に配置された適切な形状のダイ及び/又はローラーを利用するように溶着プロセスを構成することによって達成され得る。
【0350】
基材として使用される従来の編織糸は、通常、溶着後に概ね円形の断面形状を示す溶着基材を生成する。一般的に、これは、繊維が溶着/融合されたときに、毛細管力がプロセス溶媒を編織糸のコアに向って吸い上げることから、位置エネルギーが最小化され得るためである。溶着プロセスは、プロセス湿潤基材を操作するための少なくとも特異な成形方法及び/又は装置を用いることによって、及び/又は再構成湿潤基材を、その乾燥時に成形することによって、非円形の断面を有する溶着糸基材が得られるように構成されてもよい。
【0351】
B.空間的に制御された加熱及び/又は空間的に制御されたプロセス溶媒適用を用いた変調及び非変調溶着プロセス
【0352】
基材への化学物質の添加の空間的制御(例えば、イオン液体のインクジェット印刷)は、米国特許第6,048,388号(特許文献4)等に既に開示されている。溶着プロセスの空間的制御は、少なくとも、基材内の選択領域を熱活性化する(上に詳述したように、得られる溶着基材の任意の特性及び/又は特質を操作するために)ことによっても、直接制御でき、ここで溶着プロセスは、空間的に制御された加熱を使用する変調溶着プロセスとして構成されてもよい。IL系溶媒は、典型的には、室温(約20℃)、分のオーダーの時間枠では、はっきり認識できるほど天然繊維基材10を溶着(改質)しない。典型的には、溶着プロセスを活性化及び/又はスピードアップするために、熱の適用が有利となり得る。これは、基材全体を、約40℃を超える温度で少なくとも数秒加熱することを含む。
【0353】
変調溶着プロセスとして構成され得る溶着プロセスの概略図を、2D基材を利用し得る
図11Aに示す。
図11Aに示す変調溶着プロセスは、赤外(レーザー)光を用いて、プロセス溶媒が事前に適用された基材の特定の場所を加熱するように構成されてもよい。指向性エネルギービームからの熱は、基材の特定の場所において溶着プロセスを活性化する可能性があり、溶着プロセスの1つの構成において、セルロースI(天然綿基材)からセルロースII(溶着後の綿基材)への変換及び制御された体積圧密(すなわち、作用を受けていない領域で基材の厚さが低減する場合がある)によって明らかである。
【0354】
図10Bと
図11Eの比較により明らかなように、基材の表面に対する変化は目視検査で明らかであり、この変化は、指向性エネルギー源による曝露の結果である。更に、エネルギー源の出力を制御する(出力を十分に低く保つ)ことによって、基材(この例では、セルロース)は削磨されなかった。溶着プロセスは、以下の請求項にそのように示されない限り制限なく、空間的に制御された加熱を達成するための任意の好適な波長の電磁エネルギーを使用して構成されてもよく、その例としては、可視光線、マイクロ波、紫外線、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0355】
ここで
図11A及び
図11Bの両方を参照すると、2D基材に適用される変調溶着プロセスの概略図が示されており、
図11Aは、空間的に制御された加熱を示し、
図11Bは、空間的に制御されたプロセス溶媒適用を示す。ここでも、
図11Aは、基材、プロセス湿潤基材、及び/又はプロセス溶媒への指向性エネルギービームによる加熱を示している。プロセス溶媒の量及び/又は組成は、基材の特定の場所で又は広く全体にわたって変調されてもよい。
図11Bを参照すると、プロセス溶媒の量及び/又はその組成は、特定の場所で変調されてもよく、その後、プロセス湿潤基材の大きな領域が、広エネルギー源によって加熱されてもよい。いずれの変調溶着プロセスも、再構成及び乾燥後に、基材の体積制御された圧密を生じ得る。
【0356】
ここで
図11C及び
図11Dの両方を参照すると、1D基材に適用される変調溶着プロセスの概略図が示されており、
図11Cは、空間的に制御された加熱を示し、
図11Dは、空間的に制御されたプロセス溶媒適用を示す。
図11Aに示すように、熱は、パルスエネルギー源により、基材、プロセス湿潤基材、及び/又はプロセス溶媒に加えられてもよい。プロセス溶媒の量及び/又は組成は、基材の特定の場所で又は広く全体にわたって変調されてもよい。
図11Dを参照すると、プロセス溶媒の量及び/又はその組成は、特定の場所で変調されてもよく、その後、プロセス湿潤基材の大きな領域が、広エネルギー源及び/又はパルスエネルギー源によって加熱されてもよい。いずれの溶着プロセスも、所望の効果を達成するために、プロセス溶媒有効性及びレオロジー、並びに関連する粘性抵抗を、慎重に制御するように構成されてもよい。
【0357】
プロセス溶媒の流量が変調された(例えば、
図11Dと同様の方法でパルス状にされた)変調溶着プロセスによって製造された変調溶着糸基材の画像を、
図11Eに示す。所望の粘性抵抗を達成するように変調溶着プロセスを構成すると(この例では、プロセス湿潤基材と物理的に接触させて、プロセス溶媒を最初の接触点から広げることによって実施した)、溶着基材の長さ方向に沿って軽く溶着した部分としっかりと溶着した部分とが交互に生じる。
図11Eでは、図の右側部分は軽く溶着されており、図の右側部分はしっかりと溶着されている。
【0358】
変調溶着プロセスで処理された溶着基材から製造した布地の画像を、
図11Fに示す。
図11Fの布地の製造に使用された溶着基材は、
図9Aに示す、本明細書で上述した溶着プロセス及び装置により製造され得る。変調溶着プロセスは、プロセス溶媒ポンプ速度及び粘性抵抗を変調することによって達成された。溶着プロセスの適切な制御により、様々な度合の制御された体積圧密及び特定の度合の溶着が達成された。最終的な結果として、溶着糸基材における毛及び空きスペースの量が変調された。
【0359】
変調溶着糸基材を布地に製編し、染料した後、色の深度は、溶着の度合によって変動することが見出された。この結果、
図11Fから明らかなように、驚くべき「スペース染色」又は「ヘザー」効果が得られた。典型的には、ファッション産業において、この効果を得るには、複数の編織糸を1枚の布地に製編することを必要とする。変調繊維溶着は、より短い乾燥時間及び増強された水分管理という先述の利益だけでなく、この場合、様々なファッション用途で興味が持たれる特異な、しかし制御可能な色変調も加える。変調溶着効果を、所定の編み目長さ及び/又は織布の充填度(tightness factor)と組み合わせることで、布地の色及び質感が更に増強される。この新たな結果は、任意の数の従来製品及び機能性製品に用途を見出す可能性がある。
【0360】
上に簡単に述べたように、溶着プロセスは、セルロースII結晶に変換されるセルロースI結晶の量を制御するように構成されてもよい。ここで
図15Aを参照すると、原綿糸基材(プロットA)及び過剰なイオン液体プロセス溶媒に完全に溶解し、その後再構成した綿糸(プロットB)のX線回折データ(XRD)を図示している。本明細書で使用するとき、プロットBは、原糸基材全体が変性され、未変性バイオポリマーの構造が完全に変更されていることから、以下の請求項に特記のない限り、「溶着基材」又は「溶着糸基材」又は本開示に従って製造された任意のその他の基材を表さない。プロットAでは、未変性の綿セルロースポリマーは、セルロースI状態にはっきりと示されている。プロットBでは、セルロースIIの明らかに少ない結晶性の特徴がある。これは、完全に溶解されて、その未変性構造が完全に破壊された綿を表す。
【0361】
表14.1は、3種の別々の溶着基材の製造に用いた主なプロセスパラメータの一部を示し、ここで、最初の2行のプロセスパラメータは、
図9Aに示す溶着プロセス及び装置に用いられてもよく、3行目の溶着プロセス及び装置は、
図10Aに示す溶着プロセス及び装置に用いられてもよい。表6.1の各列見出しのプロセスパラメータは、上で表1.1に関して記載したものと同じである。
【0362】
【0363】
ここで
図15Bを参照すると、表14.1に示すプロセスパラメータを用いて製造された3種の溶着糸基材のXRDデータのプロットが与えられており、プロットAは表14.1の1行目に対応し、プロットBは2行目に対応し、プロットCは表14.1の最後の行に対応する。
図15A及び
図15Bを比較対照すると、それぞれ表14.1のプロセスパラメータを用いて
図9A及び
図10Aの溶着プロセス及び装置で製造した溶着糸基材は、綿の未変性セルロースI構造を有し、それと同時に、溶着糸基材は制御可能に改質されて、増強された特性及び/又は特質を示すことは明白である。未変性セルロースI構造の保全は、本明細書で上に詳述したように、様々なプロセス溶媒系及び様々な装置を用いて達成され得る。
【0364】
本明細書に記載及び開示された溶着プロセスは、天然繊維を含む基材を使用するように構成されてもよいが、本開示の範囲、当該プロセスの別個のプロセス工程及び/又はパラメータ、及び/又は当該プロセスに使用するための装置は、そのように限定されるものではなく、任意の有益な及び/又は有利な使用に拡大され、以下の請求項にそのように示されない限り制限されない。
【0365】
特定のプロセスの装置及び/又はその構成要素の構築に使用される材料は、その特定の用途に応じて変動すると予想されるが、ポリマー、合成材料、金属、金属合金、天然材料、及び/又はこれらの組み合わせは、一部の用途で特に有用となり得ると想到される。したがって、上記の要素は、当業者に既知又は後に開発された任意の材料で構成されてもよく、当該材料は、以下の請求項にそのように示されない限り、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本開示の特定の用途に適している。
【0366】
種々のプロセス及び装置の好ましい態様を記載したが、本開示のその他の特徴は、並びに本明細書に例示する実施形態及び/又は態様の多数の修正及び改変は、間違いなく当業者に明らかであり、その全てが、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく実施され得る。したがって、本明細書に図示及び記載された方法及び実施形態は、例示のみを目的とし、本開示の範囲は、以下の請求項にそのように示されない限り、本開示の種々の利益及び/又は特徴を提供するための全てのプロセス、装置、及び/又は構造に拡大される。
【0367】
本開示による溶着プロセス、プロセス工程、その構成要素、そのための装置、及び溶着基材は、好ましい態様及び具体例と関連づけて記載されているが、本明細書の実施形態及び/又は態様は、あらゆる点で制限的ではなく例示的となることを意図するものであることから、本開示の範囲を、記載された特定の実施形態及び/又は態様に限定することを意図するものではない。したがって、本明細書に図示及び記載されたプロセス及び実施形態は、以下の請求項にそのように示されない限り、本開示の範囲を何ら限定するものではない。
【0368】
数枚の図は正確な縮尺で描かれているが、本明細書で与えられるいかなる寸法も例示のみを目的とし、以下の請求項にそのように示されない限り、本開示の範囲を何ら限定するものではない。溶着プロセス、装置及び/又はそのための機器、及び/又はそれによって製造された溶着基材は、本明細書に図示及び記載された特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示による発明的特徴の範囲は、以下の請求項によって画定されることに注意すべきである。当業者は、記載された実施形態からの修正及び変更を、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく実施するであろう。
【0369】
溶着プロセスの種々の特徴、構成要素、機能、利点、態様、構成、プロセス工程、プロセスパラメータ等、プロセス工程、基材、及び/又は溶着基材は、その特徴、構成要素、機能、利点、態様、構成、プロセス工程、プロセスパラメータ等との適合性に応じて、単独で使用しても別のものと組み合わせて使用してもよい。したがって、本発明の変形は、ほぼ無限に存在する。1つの特徴、構成要素、機能、態様、構成、プロセス工程、プロセスパラメータ等の別のものへの修正及び/又は置換は、以下の請求項にそのように示されない限り、本開示の範囲を何ら限定するものではない。
【0370】
本開示は、記載された、文及び/又は図から明らかな、及び/又は本質的に開示された、個別の特徴の1つ以上の全ての代替的組み合わせまで拡大されることは理解される。これらの異なる組み合わせの全てが、本開示及び/又はその構成要素の種々の代替的態様を構成する。本明細書に開示される実施形態は、本明細書に開示される装置、方法、及び/又は構成要素の実施のための既知のベストモードを説明し、その他の当業者がそれを使用することを可能とする。特許請求の範囲は、従来技術によって許容される範囲まで、代替実施形態を含むと解釈されるべきである。
【0371】
特許請求の範囲に他に明記されない限り、本明細書に記載の任意のプロセス又は方法は、その工程が特定の順序で実施されることを要求すると解釈されることを何ら意図するものではない。したがって、方法クレームがその工程が従うべき順序を実際に列挙しないとき、又は特許請求の範囲若しくは記載において、特定の順序に限定されるべきという指定がないとき、いかなる点でも順序を推論することを意図するものではない。このことは、以下のことを含むがこれらに限定されない解釈に関するあらゆる起こり得る非明示の根拠となる:工程の配置又は動作フローに関する論理事項;文法上の構成又は句読法から引き出される明白な意味;明細書に記述された実施形態の数又は種類等。
【符号の説明】
【0372】
(
図1及び
図2)
1 基材供給ゾーン
2 プロセス溶媒適用ゾーン
3 プロセス温度/圧力ゾーン
4 プロセス溶媒回収ゾーン
5 乾燥ゾーン
6 溶着基材捕集ゾーン
7 溶媒捕集ゾーン
8 溶媒リサイクル
9 混合ガス捕集
10 混合ガスリサイクル
(
図3A-xx)
10 天然繊維基材
11 膨潤天然繊維基材
12 溶着基材
20 機能性材料
21 結合された機能性材料
22 捕捉された機能性材料
30 IL系プロセス溶媒
32 プロセス溶媒/機能性材料混合物
40 溶着された繊維
42 溶着された繊維
53 ポリマー
60 インジェクタ
61 基材入口
62 プロセス溶媒入口
63 アプリケーションインターフェース
64 基材出口
70 トレイ
72 基材溝
82 第1プレート
84 第2プレート
112 膨潤天然繊維基材
【図 】