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特許7421868シート成形容器用積層シート、シート成形容器および包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】シート成形容器用積層シート、シート成形容器および包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20240118BHJP
   B65D 75/32 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D75/32
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019073661
(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公開番号】P2020172270
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】池内 昌尋
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-030407(JP,A)
【文献】特表2009-511298(JP,A)
【文献】特開2015-077978(JP,A)
【文献】国際公開第2017/131155(WO,A1)
【文献】特表2009-544492(JP,A)
【文献】特表2008-509832(JP,A)
【文献】特開2014-229526(JP,A)
【文献】特開2017-178406(JP,A)
【文献】実開昭61-059558(JP,U)
【文献】特開2017-154459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B65D 75/32
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷間成形により内面側が凹となるように形成された内容物収容部を有している1対のシート成形容器の内面どうしを熱封緘するとともに、1対のシート成形容器の内容物収容部によって形成される収容空間に内容物を収容してなる包装体であって、
1対のシート成形容器が、それぞれ、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムよりなる基材層と、金属箔よりなりかつ基材層におけるシート成形容器の内側となる面に積層されているバリア層と、バリア層における基材層と反対側の面に積層されているシーラント層と、基材層におけるシート成形容器の外側となる面に積層されているマットコート層と、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムよりなりかつバリア層とシーラント層との間に介在されている成形時破れ防止用強化層とを備えているート成形容器用積層シートを冷間成形してなり、
1対のシート成形容器は、内容物収容部の周縁に平坦部を有しており、1対のシート成形容器の平坦部の内面どうしが熱封緘されることにより熱封緘部が形成されており、熱封緘部には、1対のシート成形容器の所定部分を切除して内容物注出口を形成するための切り取り線が形成されている、包装体
【請求項2】
冷間成形により内面側が凹となるように形成された内容物収容部を有しているシート成形容器の内面にシート状の蓋材を熱封緘するとともに、シート成形容器の内容物収容部とこれを覆う蓋材部分とによって形成される収容空間に内容物を収容してなる包装体であって、
シート成形容器が、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムよりなる基材層と、金属箔よりなりかつ基材層におけるシート成形容器の内側となる面に積層されているバリア層と、バリア層における基材層と反対側の面に積層されているシーラント層と、基材層におけるシート成形容器の外側となる面に積層されているマットコート層と、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムよりなりかつバリア層とシーラント層との間に介在されている成形時破れ防止用強化層とを備えているシート成形容器用積層シートを冷間成形してなり、
シート成形容器は、内容物収容部の周縁に平坦部を有しており、シート成形容器の平坦部および蓋材の内面どうしが熱封緘されることにより熱封緘部が形成されており、熱封緘部には、シート成形容器および蓋材の所定部分を切除して内容物注出口を形成するための切り取り線が形成されている、包装体
【請求項3】
基材層が、両面のうち少なくともシート成形容器の外側となる面にコロナ処理が施された2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムよりなる、請求項1または2記載の包装体
【請求項4】
シート成形容器用積層シートが、さらに、基材層とバリア層との間に部分的または全面的に介在されている印刷層を備えている、請求項1~3のいずれか1つに記載の包装体
【請求項5】
基材層および成形時破れ防止用強化層が、それぞれ、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムよりなる、請求項1~のいずれか1つに記載の包装体
【請求項6】
マットコート層が2以上の層よりなり、これら2以上の層のうち最外層を除いた少なくとも1つの層に固体微粒子が含まれている、請求項1~のいずれか1つに記載の包装体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば薬品、化粧品、食品等を内容物として密封包装する際に用いられるシート成形容器、同シート成形容器の材料として用いられる積層シート、および同シート成形容器を用いて薬品等の内容物を密封包装してなる包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば医薬品の液剤を分包したり、化粧水、乳液等の化粧品や、オイル、ドレッシング等の調味料などを少量ずつ包装したりするための容器として、シート成形容器が知られている。
シート成形容器は、所定の層構造を有する積層シートを冷間成形(張出し成形、絞り成形等)することにより形成されたものであって、内面側が凹となるように形成された内容物収容部を有している。上記の積層シートとしては、例えば、基材層と、アルミニウム箔よりなりかつ基材層におけるシート成形容器の内側となる面に積層されているバリア層と、バリア層における基材層と反対側の面に積層されているシーラント層とを備えたものが用いられる(下記特許文献1,2参照)。
そして、1対のシート成形容器の内面どうしを熱封緘するとともに、1対のシート成形容器の内容物収容部によって形成される収容空間に内容物を収容することにより、包装体が形成される。また、シート成形容器の内面にシート状の蓋材を熱封緘するとともに、シート成形容器の内容物収容部とこれを覆う蓋材部分とによって形成される収容空間に内容物を収容することにより、包装体が形成される場合もある。後者の包装体には、プレススルーパック(PTP)等のブリスター包装体も含まれる。
包装体から内容物を取り出す場合、例えば、熱封緘されて一体化された1対のシート成形容器、または熱封緘されて一体化されたシート成形容器および蓋材を、これらの所要箇所に形成された切り取り線に沿って部分的に切除することにより、収容空間に通じる注出口を形成して開封し、注出口から内容物を注出させるようになっている。
【0003】
しかしながら、従来のシート成形容器を用いた包装体の場合、シート成形容器の表面に水分や皮脂等が付着すると滑りやすくなって開封操作に支障が出ることがあった。
また、包装体の開封後に注出口から注出された内容物の一部がシート成形容器の表面に付着すると、残りの内容物を絞り出す際に手指が滑って完全に絞り出せなくなることがあった。
【0004】
ここで、シート成形容器の表面の滑りを防止する手段として、例えば下記の特許文献3には、PTPシートを構成する容器フィルムおよびカバーフィルムにローレット加工を施して表面に多数の凹凸を形成することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-5138号公報
【文献】特開2014-221673号公報
【文献】特許第6152080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献3に記載のようにPTPシートにローレット加工を施すと、それによってピンホールの発生、印字の抜け、シール性の低下等を引き起こすおそれがあった。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、開封等の際に手指が滑り難い上、ピンホール、印字抜け、シール性の低下等を生じさせるおそれのないシート成形容器用積層シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0009】
1)冷間成形により内面側が凹となるように形成された内容物収容部を有しているシート成形容器の材料として用いられる積層シートであって、
基材層と、金属箔よりなりかつ基材層におけるシート成形容器の内側となる面に積層されているバリア層と、バリア層における基材層と反対側の面に積層されているシーラント層と、基材層におけるシート成形容器の外側となる面に積層されているマットコート層とを備えている、シート成形容器用積層シート。
【0010】
2)基材層が、両面のうち少なくともシート成形容器の外側となる面にコロナ処理が施された熱可塑性樹脂フィルムよりなる、上記1)のシート成形容器用積層シート。
【0011】
3)さらに、基材層とバリア層との間に部分的または全面的に介在されている印刷層を備えている、上記1)または2)のシート成形容器用積層シート。
【0012】
4)さらに、バリア層とシーラント層との間に介在されている成形時破れ防止用強化層を備えている、上記1)~3)のいずれか1つのシート成形容器用積層シート。
【0013】
5)マットコート層が2以上の層よりなり、これら2以上の層のうち最外層を除いた少なくとも1つの層に固体微粒子が含まれている、上記1)~4)のいずれか1つのシート成形容器用積層シート。
【0014】
6)冷間成形により内面側が凹となるように形成された内容物収容部を有しているシート成形容器であって、
上記1)~5)のいずれか1つのシート成形容器用積層シートを冷間成形してなる、シート成形容器。
【0015】
7)冷間成形により内面側が凹となるように形成された内容物収容部を有している1対のシート成形容器の内面どうしを熱封緘するとともに、1対のシート成形容器の内容物収容部によって形成される収容空間に内容物を収容してなる包装体であって、
1対のシート成形容器が、上記6)のシート成形容器よりなる、包装体。
【0016】
8)冷間成形により内面側が凹となるように形成された内容物収容部を有しているシート成形容器の内面にシート状の蓋材を熱封緘するとともに、シート成形容器の内容物収容部とこれを覆う蓋材部分とによって形成される収容空間に内容物を収容してなる包装体であって、
シート成形容器が、上記6)のシート成形容器よりなる、包装体。
【発明の効果】
【0017】
上記1)のシート成形容器用積層シートによれば、同積層シートを冷間成形してなるシート成形容器の表面がマットコート層によって構成されるので、表面に水分や皮脂等が付着したとしても、マットコート層表面の凹凸から余分な水分等が逃げて膜が形成され難くなることから、開封等の際に手指が滑り難くなり、しかも、ローレット加工を施した場合のようにピンホールの発生、印字の抜け、シール性の低下等を引き起こすおそれもない。
【0018】
上記2)のシート成形容器用積層シートによれば、基材層に対するマットコート層の接着性が向上するので、マットコート層が剥がれ難くなり、滑り止め効果が持続されやすくなる。
また、基材層を構成する熱可塑性樹脂フィルムの両面のうちシート成形容器の内側となる面にもコロナ処理が施されていれば、同面に印刷を施すことにより良好な印刷層を形成することができる。
【0019】
上記3)のシート成形容器用積層シートによれば、マットコート層によって光の反射が抑えられて視認性が向上させられた印刷層により、シート成形容器の意匠性が高められる。
【0020】
上記4)のシート成形容器用積層シートによれば、成形時破れ防止用強化層によって、成形時に特に内容物収容部のコーナー部、エッジ部などの応力が集中する部分の破れなどを防止することができる。
【0021】
上記5)のシート成形容器用積層シートによれば、マットコート層の最外層によって、これよりも内側の層に含まれた固体微粒子の脱落が抑制されるため、滑り止め効果が長期に渡って持続される。
【0022】
上記6)のシート成形容器によれば、その表面に水分や皮脂等が付着したとしても、積層シートのマットコート層表面の凹凸から余分な水分等が逃げて膜が形成され難くなるので、開封等の際に手指が滑り難くなり、しかも、ローレット加工を施した場合のようにピンホールの発生、印字の抜け、シール性の低下等を引き起こすおそれもない。
【0023】
上記7)の包装体によれば、1対のシート成形容器の表面が積層シートのマットコート層によって構成されているので、同表面に水分や皮脂等が付着したとしても、表面の凹凸から余分な水分等が逃げて膜が形成され難くなることから、開封等の際に手指が滑り難くなり、しかも、ローレット加工を施した場合のようにピンホールの発生、印字の抜け、シール性の低下等を引き起こすおそれもない。
【0024】
上記8)の包装体によれば、シート成形容器の表面が積層シートのマットコート層によって構成されているので、同表面に水分や皮脂等が付着したとしても、表面の凹凸から余分な水分等が逃げて膜が形成され難くなることから、開封等の際に手指が滑り難くなり、しかも、ローレット加工を施した場合のようにピンホールの発生、印字の抜け、シール性の低下等を引き起こすおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明の実施形態に係るシート成形容器用積層シートの第1の態様を示す部分拡大断面図である。
図2】この発明の実施形態に係るシート成形容器用積層シートの第2の態様を示す部分拡大断面図である。
図3】同積層シートを冷間成形してなる1対のシート成形容器を分離して示す斜視図である。
図4】同1対のシート成形容器を用いて内容物を密封包装してなる包装体を示すものであって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のb-b線に沿う横断面図である。
図5】同積層シートを冷間成形してなるシート成形容器と蓋材とを分離して示す斜視図である。
図6】同シート成形容器および蓋材を用いて内容物を密封包装してなる包装体を示すものであって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のb-b線に沿う横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施形態を、図1図6を参照して説明する。
【0027】
図1は、この発明によるシート成形容器用積層シート、より詳細には、冷間成形により内面側が凹となるように形成された内容物収容部(21)を有しているシート成形容器(2)(図2図6参照)の材料として用いられる積層シート(20)の第1の態様の層構造を示したものである。
図示の積層シート(20)は、基材層(201)と、金属箔よりなりかつ基材層(201)におけるシート成形容器(2)の内側となる面に積層されているバリア層(202)と、バリア層(202)における基材層(201)と反対側の面に積層されているシーラント層(203)と、基材層(202)におけるシート成形容器(2)の外側となる面に積層されているマットコート層(204)と、基材層(201)とバリア層(202)との間に全面的に介在されている印刷層(205)と、バリア層(202)とシーラント層(203)との間に介在されている成形時破れ防止用強化層(206)とを備えている。
【0028】
基材層(201)は、単層または複層の熱可塑性樹脂フィルム、好ましくは2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムによって構成されている。同フィルムの具体例としては、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)、2軸延伸ポリブチレンテレフタレート樹脂フィルム(PBT)、2軸延伸ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム(PEN)などの2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムや、2軸延伸6ナイロン樹脂フィルム(PA6)、2軸延伸66ナイロン樹脂フィルム(PA66)などの2軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムや、2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(OPP)などの2軸延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムが挙げられる。なお、熱封止により内容物を収納することを考慮し、基材層(201)を構成する樹脂は、シーラント層(203)を構成する樹脂に対し10℃以上融点が高いものを選択することが好ましく、さらに20℃以上融点が高いものがより好ましい。
基材層(201)を構成する熱可塑性樹脂フィルムには、その両面のうち少なくともシート成形容器(2)の外側となる面に、コロナ処理が施されているのが好ましい。これにより、基材層(201)に対するマットコート層(204)の接着性が向上するので、マットコート層(204)が剥がれ難くなり、滑り止め効果が持続されやすくなる。また、基材層(201)を構成する熱可塑性樹脂フィルムの両面のうちシート成形容器(2)の内側となる面にもコロナ処理が施されていれば、同面に印刷を施すことにより良好な印刷層(205)を形成することができる。
基材層(201)の厚さは、10~40μmであるのが好ましい。基材層(201)の厚さが10μm未満であると、外圧、特に突起物などの接触による破れの発生する可能性が高くなる。一方、基材層(201)の厚さが40μmを越えると、成形性の悪化やコスト増に影響を与える。
【0029】
バリア層(202)は、シート成形容器(2)にガス、水分、光等に対するバリア性を付与するためのものである。
バリア層(202)を構成する金属箔としては、例えばアルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼(SUS)箔(いずれも、その合金箔を含む。)などが挙げられる。但し、加工性や汎用性を考えると、JIS H4160(2006)に規定されたA8021、A8079、A1N30等よりなるアルミニウム箔の軟質材(O材)が好適に用いられる。
バリア層(202)の厚さは、成形性やピンホール、さらに熱やロール張力による歪の発生しやすさ発生率等を考慮すると、10~80μmとなされるのが好ましい。
【0030】
バリア層(202)を構成する金属箔の両面には、化成処理皮膜よりなる下地層(図示略)が形成されているのが好ましい。このような下地層があれば、バリア層(202)と基材層(202)および成形時破れ防止用強化層(206)との接着性が向上する。
具体的には、例えば、脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施して、皮膜を形成する。
上記化成処理により金属箔の表面に形成される皮膜、すなわち下地層は、クロム付着量(片面当たり)を0.1mg/m~50mg/mとするのが好ましく、特に、2mg/m~20mg/mとするのが好ましい。
【0031】
シーラント層(203)は、シート成形容器(2)の内面を構成するとともに、1対のシート成形容器(2)の内面どうしを熱封緘する(図3,4参照)、または、シート成形容器(2)の内面を蓋材(3)に熱封緘する(図5,6参照)機能を奏するものである。
シーラント層(203)は、単層または複層の熱可塑性樹脂フィルム、好ましくは未延伸の熱可塑性樹脂フィルムによって構成されている。同フィルムの具体例としては、未延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(CPP)、ポリエチレン樹脂フィルム(PE)、低密度ポリエチレン樹脂フィルム(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂フィルム(LLDPE)、高密度ポリエチレン樹脂フィルム(HDPE)、またはこれらの複層フィルムや、非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ナイロン樹脂(Ny)等を含有するシーラントフィルムが挙げられる。
シーラント層(203)の厚さは、20~80μmであるのが好ましい。シーラント層(203)の厚さが20μm未満であると、夾雑物などの影響を受けやすく、シール不良が発生する確率が上がる。一方、シーラント層(203)の厚さが80μmを越えると、成形性の悪化やコスト増に影響を与える。
【0032】
マットコート層(204)は、シート成形容器(2)の外面を構成するものであって、同外面に滑り止め機能を付与する役割を果たしている。また、このマットコート層(204)により、印字性や成形性の向上、ブロッキングの抑制といった効果も奏される。図1に示す態様の積層シート(20)では、マットコート層(204)は単層である。
マットコート層(204)は、接着剤としての樹脂成分および凹凸を形成するための固体微粒子を含むコート剤を基材層(201)の表面にグラビアロール等によって塗工した後、乾燥させることによって形成されている。
上記の樹脂成分としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、フェノキシ樹脂のうち少なくとも1種の樹脂が用いられる。
固体微粒子には、十分な凹凸構造を形成し、粒子の脱落が起きにくくすることを考慮し、平均粒径0.1~60μmの無機微粒子または有機微粒子が用いられる。無機微粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、タルク、硫酸バリウムなどの微粒子が挙げられる。有機微粒子としては、アクリル酸エステル系化合物、ポリスチレン系化合物、エポキシ系樹脂、ポリアミド系化合物や、これらの架橋物よりなる微粒子が挙げられる。固体微粒子の含有量は十分な凹凸構造を形成し、粒子の脱落が起きにくくすることを考慮し、マットコート層(204)の全構成成分に対して0.1~60質量%であるのが好ましい。固体微粒子は、無色のものが好ましいが、印刷層を設けない場合等には、例えばカーボブラック等のような有色のものであっても良い。
また、マットコート層(204)には滑剤が含まれていてもよく、それによって積層シート(20)の成形性が向上する。滑剤としては、例えば飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族系ビスアミド等が挙げられる。
マットコート層(204)は、基材層(201)の表面全体に形成されているのが好ましい。マットコート層(204)が部分的に形成されない場所があると、その部分が光沢調となるため、その下に印刷層(205)がなくても、付近の印刷層(205)の視認性に影響が出るおそれがあるからである。
【0033】
印刷層(205)は、基材層(201)を構成する熱可塑性樹脂フィルムの表面(バリア層(202)側の面)に、グラビア印刷等によって図柄や文字等を印刷することにより形成されている。図1に示す態様の積層シート(20)では、印刷層(205)が、基材層(201)とバリア層(202)との間に全面的に介在されている。
【0034】
成形時破れ防止用強化層(206)は、成形時に特に内容物収容部のコーナー部、エッジ部などの応力が集中する部分を強化できるため、応力集中によって積層シート(20)に発生するピンホールや破れ、バリア層(201)を構成する金属箔の破れなどを防止することができる。
成形時破れ防止用強化層(206)は、基材層(201)と同様の熱可塑性樹脂フィルムによって構成されている。また、成形時破れ防止用強化層(206)の厚さも、基材層(201)と同様に10~40μmとなされているのが好ましい。なお、成形時破れ防止用強化層(206)は、例えば成形深さが浅い容器など、成形応力が少なく破れないものである場合には、省略しても構わない。
【0035】
基材層(201)とバリア層(202)、バリア層(202)と成形時破れ防止用強化層(206)、成形時破れ防止用強化層(206)とシーラント層(203)は、それぞれ接着剤層(図示略)を介してドライラミネートされている。接着剤層は、例えばウレタン系2液硬化型接着剤等によって構成されている。
【0036】
図2は、この発明によるシート成形容器用積層シートの第2の態様の層構造を示したものである。この積層シート(20X)は、以下の点を除いて、図1に示す第1の態様の積層シート(20)と同一である。
【0037】
すなわち、図2に示す積層シート(20X)では、マットコート層(204)が、基材層(201)におけるシート成形容器(1A)の外側となる面に積層されかつ固体微粒子が含まれている第1の層(204a)と、第1の層(204a)の外面に積層されて積層シート(20X)の最外層を構成しかつ固体微粒子が含まれていない第2の層(204b)とよりなる2層構造を有している。以上の構成によれば、第1の層(204a)に含まれる固体微粒子が脱落するのが、第2の層(204b)によって阻止されるので、マットコート層(204)による滑り止め効果が長期にわたって持続する。なお、マットコート層(204)は、3以上の層で構成されてもよく、その場合、少なくとも最外層には固体微粒子が含まれないようになされる。
第1の層(204a)は、図1に示す第1の態様の積層シート(20)における単層のマットコート層(204)とほぼ同一の構成を有する。但し、第1の層(204a)には、滑剤を含有しなくてもよい。
第2の層(204b)は、樹脂成分としてフッ素含有樹脂等を含有するコート剤を、第1の層(204a)の外面にグラビアロール等によって塗工した後、乾燥させて形成することができる。上記のフッ素含有樹脂としては、例えば、テトラフルオロオレフィンとカルボン酸ビニルエステルの共重合体、テトラフルオロオレフィンとアルキルビニルエーテルの共重合体、クロロトリフルオロオレフィンとカルボン酸ビニルエステルの共重合体が挙げられる。また、第2の層(204b)には、第1の態様の積層シート(20)における単層のマットコート層(204)と同様に、滑剤が含まれていてもよく、それによって積層シート(20X)の成形性が向上する。第2の層(204b)の厚さは、固体微粒子の脱落防止維持と凹凸形成の維持を考慮し、0.2~2μmであるのが好ましい。
【0038】
また、図2の積層シート(20X)の場合、印刷層(205)が、基材層(201)とバリア層(202)との間において、シート成形容器(2)の内容物収容部(21)を構成する部分のみに形成されている。
【0039】
図3は、上述した積層シート(20)(20X)を冷間成形してなる1対のシート成形容器(2)を示したものである。また、図4は、これら1対のシート成形容器(2)を用いて薬品等の内容物を密封包装してなる包装体(1A)を示したものである。
【0040】
各シート成形容器(2)は、積層シート(20)(20X)を冷間成形(張出し成形、絞り成形等)することにより形成されたものであって、その周縁部を除いた部分に、内面側に凹となるように内容物収容部(21)が形成されている。各シート成形容器(2)のうち内容物収容部(21)以外の部分は、平坦状となされている。
内容物収容部(21)は、平面よりみて略長方形をしたドーム状の主体部分(211)と、主体部分(211)の一端縁(図4の右端縁)の幅中央部から主体部分(211)の長さ方向に沿って延長状にのびた低い畝状の注出口形成部分(212)とを有している。
なお、シート成形容器の全体形状や、同容器に形成される内容物収容部の形状・配置・個数等については、図示のものには限定されず、適宜変更可能である。
【0041】
図4の包装体(1A)は、1対のシート成形容器(2)の内面どうしを熱封緘するとともに、1対のシート成形容器(2)の内容物収容部(21)によって形成される収容空間に内容物(図示略)を収容してなるものである。
より具体的には、例えば1対のシート成形容器(2)の内面どうしを、両シート成形容器(2)の縁部の所定箇所に開口した内容物充填口が形成されるように一部(例えば注出口形成部分(212)の周囲の右端部分)を残して熱封緘し、内容物充填口から両シート成形容器(2)の内容物収容部(21)によって形成された収容空間に内容物を充填した後、両シート成形容器(2)の内面の残った一部どうしを熱封緘して、内容物充填口を封止することにより、密封状態の包装体(1A)となされる。
シート成形容器(2)の内面どうしの熱封緘は、通常、熱板溶着によって行われるが、超音波溶着や高周波溶着等であってもよい。
また、包装体(1A)には、熱封緘されて一体化された1対のシート成形容器(2)の平坦部のうち内容物収容部(21)の注出口形成部分(212)の長さ中間を横断する右端寄りの箇所に、切り取り線(11)が形成されている。
【0042】
包装体(1A)から内容物を取り出す場合、一体化された1対のシート成形容器(2)の平坦部のうち切り取り線(11)よりも右側部分を、切り取り線(11)に沿って手で引き裂いて切除すると、内容物が収容されている収容空間に通じる注出口が形成されて開封されるので、この注出口から内容物を注出させればよい。
上記の包装体(1A)では、1対のシート成形容器(2)の表面が積層シート(20)のマットコート層(204)によって構成されているため、同表面に水分や皮脂等が付着したとしても、表面の凹凸から余分な水分等が逃げて膜が形成され難くなることから、開封の際に手指が滑り難くなり、開封操作を支障なく行うことができる。また、包装体(1A)の開封後に注出口から注出された内容物の一部がシート成形容器(2)の表面に付着した場合でも、残りの内容物を絞り出す際に手指が滑らないので、絞り出しを良好に行うことができる。
【0043】
図5は、上述した積層シート(20)(20X)を冷間成形してなるシート成形容器(2)と、これと組み合わせて用いられる蓋材(3)とを示したものである。また、図6は、図5のシート成形容器(2)および蓋材(3)を用いて薬品等の内容物を密封包装してなる包装体(1B)を示したものである。
【0044】
シート成形容器(2)は、図3および図4に示したものと実質的に同一である。
【0045】
蓋材(3)は、シート成形容器(2)の外径輪郭とほぼ同形同大にカットされた積層シートよりなる。
詳しい図示は省略したが、蓋材(3)を構成する積層シートは、例えば、マットコート層(204)を除いた上記シート成形容器用積層シート(20)(20X)と同一の層構造のものや、樹脂コートされた金属箔などの樹脂-金属ラミネートシートを用いることができ、それによって内容物を遮光、密封することができるため長期保存を行うことができる。また、上記シート成形容器用積層シート(20)(20X)と同様に、蓋材(3)の最外層にマットコート層を形成することで、蓋材(3)側にも滑り防止効果や印字性向上の効果が期待できる。
【0046】
図6の包装体(1B)は、シート成形容器(2)の内面に蓋材(3)を熱封緘するとともに、シート成形容器(2)の内容物収容部(21)とこれを覆う蓋材(3)部分とによって形成される収容空間に内容物(図示略)を収容してなるものである。
より具体的には、例えばシート成形容器(2)内面と蓋材(3)内面とを、シート成形容器(2)および蓋材(3)の縁部の所定箇所に開口した内容物充填口が形成されるように一部(例えば注出口形成部分(212)の周囲の右端部分)を残して熱封緘し、内容物充填口からシート成形容器(2)の内容物収容部(21)とこれを覆う蓋材(3)部分とによって形成された収容空間に内容物を充填した後、シート成形容器(2)内面および蓋材(3)内面の残った一部どうしを熱封緘して、内容物充填口を封止することにより、密封状態の包装体(1B)となされる。
シート成形容器(2)内面と蓋材(3)内面との熱封緘は、通常、熱板溶着によって行われるが、超音波溶着や高周波溶着等であってもよい。
また、包装体(1B)には、熱封緘されて一体化されたシート成形容器(2)の平坦部および蓋材(3)のうち内容物収容部(21)の注出口形成部分(212)の長さ中間を横断する右端寄りの箇所に、切り取り線(11)が形成されている。
【0047】
包装体(1B)から内容物を取り出す場合、一体化されたシート成形容器(2)の平坦部および蓋材(3)のうち切り取り線(11)よりも右側部分を、切り取り線(11)に沿って手で引き裂いて切除すると、内容物が収容されている収容空間に通じる注出口が形成されて開封されるので、この注出口から内容物を注出させればよい。
上記の包装体(1B)では、シート成形容器(2)の表面が積層シート(20)のマットコート層(204)によって構成されているため、同表面に水分や皮脂等が付着したとしても、表面の凹凸から余分な水分等が逃げて膜が形成され難くなることから、開封の際に手指が滑り難くなり、開封操作を支障なく行うことができる。また、包装体(1B)の開封後に注出口から注出された内容物の一部がシート成形容器(2)の表面に付着した場合でも、残りの内容物を絞り出す際に手指が滑らないので、絞り出しを良好に行うことができる。
【実施例
【0048】
次に、この発明の実施例について説明する。
【0049】
[積層シートの作製]
1)バリア層として、JIS H4160(2006)に規定されたA8021-Oよりなる厚さ20μmのアルミニウム箔を用意した。そして、このアルミニウム箔の両面に、ポリアクリル酸、三価クロム化合物、水およびアルコールからなる化成処理液を塗布し、180℃で乾燥を行って、クロム付着量が片面当り10mg/mとなるように化成処理を施して、下地層を形成した。
2)上記アルミニウム箔の一方の面に、基材層として、厚さ16μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)を、厚さ2μmのウレタン系2液硬化型接着剤層を介してドライラミネートした。
3)上記アルミニウム箔の他方の面に、成形時破れ防止用強化層として、厚さ16μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)を、厚さ2μmのウレタン系2液硬化型接着剤層を介してドライラミネートした。
4)成形時破れ防止用強化層を構成する上記2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)の表面に、シーラント層として、厚さ30μmの非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂を含有するシーラントフィルムを、厚さ2μmのウレタン系2液硬化型接着剤層を介してドライラミネートした。
5)基材層を構成する上記2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)の表面に、マットコート層として、グラビラロールにより以下の組成を有するコート液を塗工して乾燥させることにより、厚さ5μmの塗膜を形成した。上記コート液は、フェノキシ樹脂およびウレタン樹脂を質量比1:0.8で混合したものを主剤とし、トリレンジイソシアネート(TDI)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を質量比1:1で混合したものを硬化剤とし、主剤100質量部に対して硬化剤15質量部を配合してなる樹脂成分に、固体微粒子として平均粒径2μmのシリカ20質量部を加え、さらに滑剤としてエチレンビスエルカ酸アミド1000ppmを加えたものを、トルエンで希釈することによって調製したものである。
6)そして、上記積層物を40℃下で10日間エージングすることにより、実施例1の積層シートを得た。
【0050】
5X)実施例1の積層シートの作製工程のうち上記1)~4)の工程を行った後、基材層を構成する上記2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)の表面に、マットコート層の内側の層として、グラビラロールにより以下の組成を有するコート液を塗工して乾燥させることにより、厚さ5μmの塗膜を形成した。上記コート液は、フェノキシ樹脂およびウレタン樹脂を質量比1:0.8で混合したものを主剤とし、トリレンジイソシアネート(TDI)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を質量比1:1で混合したものを硬化剤とし、主剤100質量部に対して硬化剤15質量部を配合してなる樹脂成分に、固体微粒子として平均粒径2μmのシリカ20質量部を加えたものを、トルエンで希釈することによって調製したものである。
5Y)次いで、マットコート層の内側の層を構成する上記塗膜の表面に、マットコート層の外側の層として、グラビラロールにより以下の組成を有するコート液を塗工して乾燥させることにより、厚さ2μmの塗膜を形成した。上記コート液は、テトラフルオロエチレンとビニルアセテートの共重合体からなる2液硬化型樹脂組成物を主剤とし、トリレンジイソシアネート(TDI)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を質量比1:1で混合したものを硬化剤とし、主剤100質量部に対して硬化剤18質量部を配合してなる樹脂成分をトルエンで希釈することによって調整したものである。
6)そして、上記積層物を40℃下で10日間エージングすることにより、実施例2の積層シートを得た。
【0051】
実施例1の積層シートの作製工程のうち上記1)~4)および6)の工程を行うことにより、マットコート層を有しない積層シートを作製し、これを比較例1とした。
【0052】
[シート成形容器の作製]
実施例1,2および比較例1の各積層シートを所定寸法にカットして、これを張出し成形機の雌型および押さえ型により200kgfの圧力でクランプした。
この状態で、張出し成形機の雄型を所要方向に駆動させることにより、各積層シートに対してシーラント層側から張出し成形を行い、図3および図4に示す形状を有するシート成形容器を複数ずつ作製した。
シート成形容器に形成された内容物収容部の寸法は、ドーム状の主体部分を、幅12mm、長さ40mm、最大深さ3mmとし、畝状の注出口形成部分を、幅4mm、長さ15mm、最大深さ1mmとした。
【0053】
[包装体サンプルの作製]
実施例1,2および比較例1の各積層シートを張出し成形してなる2つのシート成形容器を、これらの内面どうしが重なるように配置しておいてから、注出口形成部分の周囲の部分を残して、熱板を用いて加熱温度200℃、加圧力200kgf、加熱加圧時間2秒の条件で熱封緘を行った。
上記の通り部分的に熱封緘されることにより両シート成形容器における内容物収容部の注出口形成部分どうしの間に形成された注入口から、両シート成形容器における内容物収容部の主体部分によって形成された収容空間に、内容物として1mlの水を注入した。
その後、2つのシート成形容器の内面どうしの重合部のうち残りの部分を、上記と同じ条件で熱封緘して注入口を封止した。
次に、内容物収容部がほぼ中央に位置するように、熱封緘された2つのシート成形容器を幅20mm、長さ60mmの長方形にカットした。
最後に、熱封緘された2つのシート成形容器の平坦部のうち内容物収容部の注出口形成部分の長さ中間を横断する箇所に、注出口形成部分から約2mmの位置まで切り取り線(ノッチ)を形成した。
こうして実施例1,2および比較例1の積層シートから形成したシート成形容器を使用した包装体サンプルを得た。
【0054】
[包装体の開封性の検証]
実施例1,2および比較例1の積層シートによる包装体サンプルについて、10人のテスターによる開封テストを実施し、開封し易さを検証した。
開封テストは、各包装体サンプルの表面に霧吹きを使って3回ずつ水をスプレーした状態で、テスターが、包装体サンプルにおける切り取り線の両側部分を両手の指で持ち、切り取り線に沿って引き裂くことにより開封を行い、その際の開封のし易さを開けやすいものを高得点として、5段階に分けて評価することにより行った。評価結果を以下の表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1から明らかなように、10人全員のテスターが、実施例1,2の包装体サンプルは比較例1の包装体サンプルに比べて開けやすいと評価した。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明は、例えば薬品、化粧品、食品等を内容物として密封包装する際に用いられるシート成形容器、同シート成形容器の材料として用いられる積層シート、および同シート成形容器を用いて薬品等の内容物を密封包装してなる包装体として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0058】
(1A)(1B):包装体
(2):シート成形容器
(20)(20X):シート成形容器用積層シート
(201):基材層
(202):バリア層
(203):シーラント層
(204):マットコート層
(204a):マットコート層の第1の層
(204b):マットコート層の第2の層
(205):印刷層
(206):成形時破れ防止用強化層
(21):内容物収容部
(3):蓋材
図1
図2
図3
図4
図5
図6