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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】面材
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20240118BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20240118BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240118BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240118BHJP
   E04C 2/04 20060101ALI20240118BHJP
   E04C 2/30 20060101ALI20240118BHJP
   E04F 13/18 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
E04F13/08 E
B32B3/30
B32B27/00 E
B32B27/18 Z
E04C2/04 E
E04C2/30 J
E04F13/08 A
E04F13/18 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019150081
(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公開番号】P2021031876
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】吉田 理人
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-048546(JP,A)
【文献】特開2018-177844(JP,A)
【文献】特開2002-046199(JP,A)
【文献】特開2000-135471(JP,A)
【文献】特開2017-100435(JP,A)
【文献】特開2010-168442(JP,A)
【文献】特開2005-255781(JP,A)
【文献】特開平11-974(JP,A)
【文献】特開2019-166811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00- 13/30
E04C 2/04
E04C 2/30
B32B 1/00- 43/00
B05D 1/00- 7/26
C09D 1/00- 10/00
C09D 101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
模様層と、当該模様層の表面を覆う透明層とを有する面材であって、
上記模様層は、凹凸模様を有し、さらに透湿性を有し、
連続した面を形成してなる第1模様層と、
上記第1模様層の表面を部分的に覆う、凸状の第2模様層とを有し、
上記第1模様層及び上記第2模様層は、それぞれ、無機質粒子を含む組成物によって形成されてなり、
上記第2模様層における無機質粒子の粒度は、上記第1模様層における無機質粒子の粒度よりも小さく、
上記透明層は、ガラス転移温度が30~80℃であり、反応性官能基を有する樹脂、当該反応性官能基と反応可能な架橋剤、及び界面活性剤を含む透明層用組成物によって形成されてなり、
上記反応性官能基を有する樹脂は、カルボキシル基を有する樹脂を含み、上記架橋剤は、カルボジイミド基を有する架橋剤を含み、
上記透明層用組成物によって形成される被膜の水に対する接触角が60~110°であることを特徴とする面材。
【請求項2】
各模様層における無機質粒子の粒度Pが下記式で表わされる場合、
第1模様層における無機質粒子の粒度P1と、
第2模様層における無機質粒子の粒度P2が、
P1>P2を満たすことを特徴とする請求項1記載の面材。
<式>P=(当該模様層における粒径150μm以上の無機質粒子の重量)/(当該模様層における無機質粒子の総重量)
【請求項3】
上記第2模様層の平均厚みが3mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の面材。
【請求項4】
上記界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれる1種または2種以上であり、分子内にシリコン及び/またはフッ素を有する化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の面材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な面材に関する。本発明面材は、建築物、土木構造物等の表面被覆に適用することができ、具体的には建築物壁面の模様仕上げ等に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
建築物壁面等においては、景観上の観点から美観性が求められている。近年、このような観点から、例えば天然の石、土、植物等をイメージした模様仕上げが注目されている。
【0003】
このような模様仕上げに用いる材料として、例えば、特許文献1には、基材の上に、凹凸形状の塗料層を設けてなる表装材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-259516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のような材料によれば、筋状、帯状等の立体的な凹凸模様を表出することが可能である。但し、このような材料で十分な立体感を得るには、凸部の厚みをある程度大きくし、凹凸による高低差を設ける必要がある。また、このような材料で凹凸模様を設けても、経時的な汚染により凹凸模様の立体感が減殺されるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、厚みの小さな凸部によって十分な立体感を表出することができ、その立体感を長期にわたり保持することができる面材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、特定の模様層を備えた面材に想到し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の面材は、下記の特徴を有するものである。
1. 模様層と、当該模様層の表面を覆う透明層とを有する面材であって、
上記模様層は、凹凸模様を有し、さらに透湿性を有し、
連続した面を形成してなる第1模様層と、
上記第1模様層の表面を部分的に覆う、凸状の第2模様層とを有し、
上記第1模様層及び上記第2模様層は、それぞれ、無機質粒子を含む組成物によって形成されてなり、
上記第2模様層における無機質粒子の粒度は、上記第1模様層における無機質粒子の粒度よりも小さく、
上記透明層は、ガラス転移温度が30~80℃であり、反応性官能基を有する樹脂、当該反応性官能基と反応可能な架橋剤、及び界面活性剤を含む透明層用組成物によって形成されてなり、
上記反応性官能基を有する樹脂は、カルボキシル基を有する樹脂を含み、上記架橋剤は、カルボジイミド基を有する架橋剤を含み、
上記透明層用組成物によって形成される被膜の水に対する接触角が60~110°であることを特徴とする面材。
2.各模様層における無機質粒子の粒度Pが下記式で表わされる場合、
第1模様層における無機質粒子の粒度P1と、
第2模様層における無機質粒子の粒度P2が、
P1>P2を満たすことを特徴とする1.記載の面材。
<式>P=(当該模様層における粒径150μm以上の無機質粒子の重量)/(当該模様層における無機質粒子の総重量)
3.上記第2模様層の平均厚みが3mm以下であることを特徴とする1.または2.に記載の面材。
4.上記界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれる1種または2種以上であり、分子内にシリコン及び/またはフッ素を有する化合物を含むことを特徴とする1.に記載の面材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、凹凸模様を有する面材の凸部の厚みを比較的小さく設定しても、十分な立体感を表出することができる。本発明では、筋状、島状等の凹凸模様を表現することもできる。さらに、本発明によれば、このような凹凸模様の立体感を長期にわたり保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明面材の一例を示す平面模式図である。
図2】本発明面材の一例を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0011】
1:第1模様層
2:第2模様層
A:模様領域A
B:模様領域B
3:透明層
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0013】
本発明面材は、模様層と、当該模様層の表面を覆う透明層とを有する面材であって、当該模様層は、凹凸模様を有し、連続した面を形成してなる第1模様層と、第1模様層の表面を部分的に覆う、凸状の第2模様層とを有する。そして、これら第1模様層、第2模様層、及び透明層が、それぞれ特定の条件を満たすものである。
【0014】
図1は、本発明面材の一例を示す平面模式図であり、本発明面材を表側(正面)から見た状態を示している。図2は、本発明面材の一例を示す断面模式図である。
【0015】
図1及び2に示すように、本発明面材は、第1模様層と第2模様層とを有しており、第1模様層が、連続した面を形成し、その第1模様層の表面を部分的に覆うように、非連続的に凸状の第2模様層が形成されている。すなわち、第1模様層が凹部(模様領域A)、第2模様層が凸部(模様領域B)を形成することにより、面材の表面に凹凸模様が付与されている。模様領域Aは、第1模様層が視認される領域であり、模様領域Bは、第2模様層が視認される領域である。
【0016】
第1模様層及び第2模様層は、それぞれ、無機質粒子を含む組成物によって形成されてなる。このような模様層は、例えば、無機質粒子、及び樹脂を含む組成物(第1模様層用組成物、第2模様層用組成物等)を硬化させることより形成できる。これにより、無機質粒子が樹脂によって固定化され、無機質粒子にもとづく色調を呈する模様層が得られる。
【0017】
また、このような模様層は、その表面ないし内部における微細な孔(無機質粒子どうしの間隙)等によって透湿性を示すこともできる。模様層の透湿度(JIS Z0208による透湿度)は、好ましくは40~1200g/m・24h(より好ましくは70~800g/m・24h、さらに好ましくは100~600g/m・24h)である。なお、本発明において「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
【0018】
無機質粒子としては、その母体の材質が無機質であれば、天然品、人工品のいずれも使用することができる。この無機質粒子としては、少なくとも着色無機質粒子を含む態様が好適である。このような着色無機質粒子としては、特に、光透過率が3%未満の不透明なものが好適であり、光透過率が2%以下のものがより好適である。このような着色無機質粒子として、具体的には、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、砂岩、粘板岩、玄武岩、斑れい岩、閃緑岩、安山岩、石灰岩及びこれらの粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、金属粒等が挙げられる。また、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂、及びこれらの粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ等を、上記条件を満たすように着色したもの等も使用できる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0019】
上記光透過率とは、濁度計による全光線透過率の値である。この測定では、無機質粒子の試料を内厚5mmの透明ガラス製セル中に充填し、次いで徐々に水を充填した後、セル中の気泡を振動によって取り除いたものを用いる。
【0020】
各模様層は、上記着色無機質粒子に加えて、透明性無機質粒子を含む形態とすることもできる。このような透明性無機質粒子の使用は、美観性向上の点で好適である。透明性無機質粒子としては、光透過率が3%以上(より好ましくは3~50%、さらに好ましくは10~30%)であるものが好適である。透明性無機質粒子としては、例えば、シリカ、寒水石、長石、珪石等及びこれらの粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ等が挙げられ、上記光透過率を満たすものであれば、無色、有色のいずれのタイプも使用できる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0021】
無機質粒子としては、その粒径が5mm以下(より好ましくは16μm~2mm、さらに好ましくは20μm~850μm)のものを含む態様が好適である。このような範囲内で、粒径、色調等が異なる種々の無機質粒子を組み合せて使用することができる。なお、無機質粒子の粒径は、JIS Z8801-1:2000に規定される金属製網ふるいを用いたふるい分けによって測定される。
【0022】
無機質粒子を固定化する樹脂は、その被膜が透明性を有するものが好適である。このような樹脂の形態としては、例えば、溶剤可溶型樹脂、非水分散型樹脂、無溶剤型樹脂、水分散型樹脂、水溶性樹脂等が挙げられる。樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等、あるいはこれらの複合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。このような樹脂は、架橋反応を生じる性質を有するものであってもよい。
【0023】
模様層(第1模様層及び第2模様層)における樹脂としては、アクリルシリコン樹脂を含むものが好適である。模様層におけるアクリルシリコン樹脂の使用は、耐久性、透湿性等の向上化の点で有利である。アクリルシリコン樹脂としては、例えば、
(1)(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び反応性シリル基含有モノマーを含むモノマー群を共重合して得られる合成樹脂、
(2)(メタ)アクリル酸アルキルエステル、並びに、反応性シリル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、及びカルボキシル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種以上のモノマーを含むモノマー群を共重合した樹脂に、シリコン化合物を付加させて得られる合成樹脂、
(3)アクリル樹脂中の官能基と、該官能基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤とを反応させて得られる合成樹脂、
(4)アクリル樹脂中の官能基と、該官能基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤とを反応させ、さらにシリコン化合物を付加させて得られる合成樹脂、
等が挙げられる。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとを併せて(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。モノマーとは、重合性不飽和二重結合を有する化合物である。アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー群を重合して得られる合成樹脂である。
【0024】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸t-ペンチル、(メタ)アクリル酸1-エチルプロピル、(メタ)アクリル酸2-メチルブチル、(メタ)アクリル酸3-メチルブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルブチル、(メタ)アクリル酸2-メチルペンチル、(メタ)アクリル酸4-メチルペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0025】
反応性シリル基は、珪素原子に、例えばアルコキシル基、水酸基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン等から選ばれる1種以上が結合したものである。この中でも、珪素原子にアルコキシル基が結合したアルコキシシリル基、珪素原子に水酸基が結合したシラノール基から選ばれる1種以上が好適である。
【0026】
上記(1)、(2)における反応性シリル基含有モノマーは、反応性シリル基と重合性二重結合を含有する化合物であり、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ-n-ブトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルプロピルビニルエーテル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0027】
上記(2)における水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0028】
上記(2)におけるカルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0029】
上記(2)、(4)におけるシリコン化合物としては、反応性シリル基を一分子中に1個以上有するもの(重合性二重結合を有するものを除く)が用いられ、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能アルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン等の3官能アルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等の2官能アルコキシシラン類;テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン等のクロロシラン類;テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン等のアセトキシシラン類等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、シリコン化合物として、シロキサン化合物を使用することもできる。シロキサン化合物としては、例えば、環状シロキサン化合物、直鎖状シロキサン化合物、分岐状シロキサン化合物等、及びこれらの誘導体が挙げられる。このうち環状シロキサン化合物としては、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0030】
上記(3)、(4)における官能基の組み合わせとしては、例えば、水酸基とイソシアネート基、アミノ基とイソシアネート基、カルボキシル基とエポキシ基、アミノ基とエポキシ基、アルコキシシリル基どうし等が挙げられる。シランカップリング剤は、例えば、一分子中に、少なくとも1個以上の反応性シリル基とそのほかの置換基を有する化合物であり、具体的には、β-(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、イソシアネート官能性シラン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0031】
上記(1)~(4)においては、上記以外の成分、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;アクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル系モノマー;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸含有ビニルモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン等の塩素含有モノマー;エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル等のアルキレングリコールモノアリルエーテル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;エチレン、プロピレン、イソブチレン等を使用することができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。この他、エチレン性不飽和二重結合含有紫外線吸収剤、エチレン性不飽和二重結合含有光安定剤等を用いることもできる。
【0032】
模様層(第1模様層及び第2模様層)における樹脂のガラス転移温度(以下「Tg」ともいう)は、後述の透明層に含まれる樹脂のガラス転移温度よりも低いことが望ましい。本発明では、このような樹脂の使用により、汚染防止性等の物性を確保しつつ、面材の可とう性等を高めることができる。模様層に含まれる樹脂のガラス転移温度は、好ましくは-30~30℃、より好ましくは-25~25℃である。なお、樹脂のガラス転移温度は、Foxの計算式により求められる値である。
【0033】
上記樹脂の比率は、固形分換算で、無機質粒子の合計量100重量部に対し、好ましくは1~100重量部、より好ましくは2~50重量部、さらに好ましくは3~30重量部、特に好ましくは4~20重量部、最も好ましくは5~19重量部である。このような比率であれば、無機質粒子の連接(凝集)による美観を活かした意匠性が付与されやすく、可とう性、透湿性等の点でも好適である。
【0034】
各模様層を形成する組成物は、本発明の効果を著しく損なわない限り、必要に応じ、上記以外の成分(添加剤等)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、可塑剤、防藻剤、抗菌剤、消臭剤、吸着剤、難燃剤、増粘剤、消泡剤、架橋剤、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、蓄光顔料、蛍光顔料、骨材、繊維、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒等が挙げられる。
【0035】
本発明において、第2模様層における無機質粒子は、第1模様層における無機質粒子よりも、粒度が小である。本発明面材は、このような態様であることにより、薄膜の凸部によって十分な立体感を表出することができる。このような効果が奏される理由は明らかではないが、第2模様層の光拡散性、発色性等の特性によって、第2模様層の凸部の厚みが比較的薄い(凹凸の高低差が小さい)場合であっても、第1模様層とのコントラストが十分に付与されること等が寄与しているものと考えられる。さらに、このような態様の本発明面材は、非連続である第2模様層に対し、連続した第1模様層を相対的に柔軟にすることができ、面材の可とう性向上等の点でも有利である。
【0036】
ここで「粒度が小さい」とは、小さい粒径の粒子が相対的に多く存在する状態を示す。各模様層における無機質粒子の粒度は、「粒径150μm以上の無機質粒子の重量」を「無機質粒子の総重量」で除した値「P」(以下単に「P」または「P値」ともいう)、すなわち下記式にて表すことができる。
<式>P=(当該模様層における粒径150μm以上の無機質粒子の重量)/(当該模様層における無機質粒子の総重量)
【0037】
本発明では、第2模様層におけるP値(以下「P」ともいう)が、第1模様層におけるP値(以下「P」ともいう)よりも小であり、P>Pを満たす。
【0038】
本発明では、立体感付与等の点から、P-Pが0.1以上(P-P≧0.1)であることが好ましく、P-Pが0.2以上(P-P≧0.2)であることがより好ましい。P-Pの上限は、特に限定されないが、全体的な調和感、自然感等の点から、0.9以下(P-P≦0.9)であることが好ましく、0.7以下(P-P≦0.7)であることがより好ましい。
【0039】
また、Pは、好ましくは0.3~1.0、より好ましくは0.5~0.95、さらに好ましくは0.6~0.9である。Pは、好ましくは0~0.7、より好ましくは0.05~0.6、さらに好ましくは0.1~0.55である。P、Pがこのような条件を満たすことにより、十分な立体感等を付与しつつ、全体的な調和感、自然感等を得ることができ、いっそう好適である。
【0040】
第1模様層の平均厚みは、好ましくは0.3~6mm、より好ましくは0.5~5mmである。この第1模様層の平均厚みは、無作為に選定した第1模様層の10箇所の平均を算出した値である。第1模様層は、平坦(厚みが一様)であってもよいし、本発明の効果を著しく阻害しない限り、凹凸を有する(箇所により厚みが異なる)ものであってもよい。
【0041】
第2模様層の平均厚みは、好ましくは3mm以下、より好ましくは0.05~2mm、さらに好ましくは0.1~1.5mm、特に好ましくは0.2~1mmである。本発明では、第2模様層の平均厚み(すなわち、第1模様層との高低差)が比較的小さい場合であっても、十分な立体感等を得ることができる。これにより、面材の薄膜化、軽量化等を図ることができ、耐擦傷性、耐汚染性、汚れ除去性等の点でも有利な効果を得ることができる。なお、第2模様層の平均厚みは、第2模様層の底部から凸部頂点までの厚みの平均(無作為に選定した10箇所の平均)を算出した値である。
【0042】
本発明において、第1模様層と第2模様層の色調は、同色であってもよく、異色であってもよい。各模様層の色調は、それぞれの模様層を構成する無機質粒子の色調によって、調整・設定することができる。第1模様層と第2模様層の色調が異色である場合は、コントラストがより明瞭化し、立体感向上等の点で好適であり、この場合、各模様層間の色差は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上である。なお、本発明において、各模様層の色調は、色彩色差計で測定したL、a、b値(無作為に選定した10点の平均)で表される。色差は、各部位のL、a、b値から算出される△E値である。
【0043】
各模様層は、それぞれ、並置混色による色調を呈することが望ましい。並置混色とは、観察者が一定距離以上離れて色を見た場合に、並置させた複数の色が個々に識別されずに混じり合って見えることである。本発明では、顔料、染料等を用いた混色ではなく、2種(2色)以上の無機質粒子による並置混色を採用することで、自然感等を高めることができる。
【0044】
本発明では、例えば、筋状、島状等の各種凹凸模様を形成することができる。各模様領域の形状、配置、数、大きさ、幅、高低差、厚み、面積、色調、光沢度等は、所望の模様に応じて適宜設定すればよい。図1及び2では、模様領域Bによって筋状の模様が形成されている。本発明では、例えば、岩石や木材等の模様を表現することもできる。
【0045】
本発明面材は、本発明の効果が奏される限り、第1模様層、第2模様層以外の模様層を有するものであってもよい。例えば、第1及び/または第2模様層の表面に非連続の模様層(例えば、第1及び/または第2模様層とは色調が異なるもの等)を設けたり、あるいは、第1模様層の裏面側に任意色の模様層を設けたりすることができる。
【0046】
本発明面材は、図2に示すように透明層を有する。このような透明層は、模様層の表面全体を覆うように設けられる。
【0047】
本発明における透明層は、ガラス転移温度が30~80℃である樹脂を含み、被膜の水に対する接触角が60~110°である組成物(以下「透明層用組成物」ともいう)によって形成できる。このような組成物によって形成される透明層は、模様層の美観性を活かすとともに、汚染防止性等の向上化に寄与するものである。本発明では、このような透明層を設けることにより、凹凸模様の立体感を長期にわたり保持することができる。模様層が透湿性を有する場合は、その透湿性を維持しつつ、模様層の微細な孔への汚染物質のしみ込みを抑制し、汚染防止性を高めることもできる。
【0048】
透明層用組成物は、ガラス転移温度が30~80℃(好ましくは35~75℃、より好ましくは40~70℃)である樹脂を含む。Tgが上記下限値以上であることにより、汚染防止性を高めることができる。また、Tgが上記上限値以下であることにより、汚染防止性を高めつつ、透明層の割れ等を防止することができ、模様層の美観性を長期にわたり保つことが可能となる。
【0049】
そして、透明層用組成物は、水に対する接触角が60~110°(好ましくは70~105°、より好ましくは75~100°)である被膜を形成するものである。この接触角が、上記下限値以上であることにより、汚染物質のしみ込みを抑制し、汚染防止性を高めることができる。接触角が上記上限値以下であることにより、降雨等による筋状汚染を抑制することができる。なお、接触角は、透明層用組成物によって形成された被膜の表面に水滴を滴下したとき、その水滴と被膜表面とのなす角度のことであり、接触角計により測定される値である。
【0050】
透明層用組成物における樹脂としては、その被膜が透明性を有するものが使用できる。このような樹脂の形態としては、例えば、溶剤可溶型樹脂、非水分散型樹脂、無溶剤型樹脂、水分散型樹脂、水溶性樹脂等が挙げられ、この中でも水分散型樹脂(樹脂エマルション)が好適である。樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂等、あるいはこれらの複合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0051】
透明層用組成物は、上述のような樹脂に加え、架橋剤を含むことが望ましい。このような態様では、反応性官能基を有する樹脂と、当該反応性官能基と反応可能な架橋剤を含む透明層用組成物を使用することができる。この場合、樹脂と架橋剤との反応によって、3次元架橋構造を有する被膜が形成され、汚染防止性、透湿性等の物性を高めることが可能となる。架橋剤としては、水分散型樹脂に適用できるものが好ましく、例えば、水溶性架橋剤、水分散型架橋剤、自己乳化型架橋剤等が好適である。
【0052】
反応性官能基を有する樹脂としては、例えば、カルボキシル基、カルボジイミド基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、水酸基、イソシアネート基、カルボニル基、ヒドラジド基、エポキシ基、アミノ基、及びアルコキシシリル基等から選ばれる1種以上の反応性官能基を有するものが使用できる。架橋剤としては、このような樹脂の反応性官能基と反応可能なものを組み合わせて使用すればよい。反応性官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボキシル基とアジリジン基、水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基、アルコキシシリル基どうし等の組み合わせが挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0053】
透明層用組成物における樹脂がカルボキシル基を有する場合、架橋剤としては、例えば、カルボジイミド基、エポキシ基、オキサゾリン基等から選ばれる1種以上の反応性官能基を有する化合物が使用できる。このうち、カルボジイミド基を有する架橋剤としては、例えば、特開平10-60272号公報、特開平10-316930号公報、特開平11-60667号公報、特開2000-7642号公報、特開2000-119539号公報、特開2000-319351号公報、特開2013-112755号公報、特開2016-196612号公報、特開2016-196613号公報、WO2017/6950号公報等に記載のもの等が挙げられる。エポキシ基を有する架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリヒドロキシアルカンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。オキサゾリン基を有する架橋剤としては、例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等の重合性オキサゾリン化合物を、当該化合物と共重合可能な単量体と共重合した樹脂等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0054】
透明層用組成物における樹脂がカルボニル基を有する場合、架橋剤としては、例えば、ヒドラジド基を有する化合物等が使用できる。ヒドラジド基を有する架橋剤としては、例えば、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0055】
透明層用組成物における樹脂としては、汚染防止性、耐久性、透湿性等の点から、アクリルシリコン樹脂を含むものが好適である。アクリルシリコン樹脂としては、例えば、模様層で述べた(1)~(4)と同様のものが使用できる。透明層用組成物は、このようなアクリルシリコン樹脂に加え、架橋剤を含む態様とすることもできる。この場合、樹脂としては、反応性官能基を有するアクリルシリコン樹脂を使用し、架橋剤としては、当該反応性官能基と反応可能な架橋剤を使用すればよい。好適な反応性官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボニル基とヒドラジド基等の組み合わせが挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0056】
本発明における透明層用組成物は、界面活性剤を含むことができる。このような態様では、汚染防止性、透湿性等を、よりいっそう高めることができる。その作用機構は以下に限定されるものではないが、模様層の微細な孔が、透明層用組成物によって充填されやすくなり、汚染物質のしみ込み抑制に有効にはたらくこと、そして、このように充填された微細な孔では、界面活性剤の適度な親水性によって透湿性が付与されること、等が寄与しているものと推定される。
【0057】
このような界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部とを併せ持つ構造を有する化合物等を用いることができ、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。このような界面活性剤としては、例えば、分子内にシリコン及び/またはフッ素を有する化合物等を使用することもできる。
【0058】
界面活性剤の比率は、透明層用組成物に含まれる樹脂の樹脂固形分100重量部に対し、固形分換算で好ましくは0.01~3重量部、より好ましくは0.02~2重量部である。このような比率であれば、汚染防止性、透湿性等を十分に高めることができる。
【0059】
透明層用組成物は、上述の成分の他に、例えば、艶消し剤、着色顔料、光輝性顔料、蓄光顔料、蛍光顔料、骨材、繊維、可塑剤、造膜助剤、防藻剤、抗菌剤、消臭剤、吸着剤、難燃剤、増粘剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、触媒、溶剤、水等を含むものであってもよい。透明層用組成物が着色顔料を含む場合は、着色透明層が形成できる。光触媒酸化チタン、コロイダルシリカ等については、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で使用するよう留意する必要があり、これらを使用しない態様も好適である。
【0060】
透明層の単位面積当たりの重量(固形分換算)は、好ましくは5~200g/m、より好ましくは10~100g/mである。透明層の単位面積当たりの重量は、各模様領域で異なっていてもよい。このような条件で透明層を設けることにより、模様層による表面凹凸を活かしつつ、汚染防止性、耐候性、耐久性等を高めることができる。
【0061】
本発明面材は、補強材を有するものであってもよい。このような補強材は、例えば、第1模様層の内部及び/または裏面に設けることができる。補強材としては、例えば、織布、不織布、セラミックペーパー、合成紙、メッシュ、クロス、石膏ボード、合板、スレート板、金属板等が挙げられる。この他、例えば、無機質粒子、樹脂等を含む組成物の層を補強材として第1模様層の裏面に設けることもできる。補強材は、上記2種以上の材料からなるものでもよい。このような補強材は、1種または2種以上で使用できる。このような補強材を用いることにより、面材の強度、可とう性等を高めることができる。
【0062】
本発明面材の製造方法は特に限定されず、種々の方法を採用することができる。一例として、型枠を用いた方法が挙げられる。この方法では、まず所望の模様に対応した凹凸を形成した型枠を用意する。そして、この型枠内に、第2模様層用組成物、第1模様層用組成物を順に充填または塗付し、硬化後に脱型すればよい。各組成物の充填または塗付においては、公知の器具、例えば、スプレー、ローラー、鏝、レシプロ、コーター等が使用できる。透明層は、例えば、脱型後の模様層表面に透明層用組成物を塗装する方法、あるいは、型枠内に、透明層用組成物、第2模様層用組成物、第1模様層用組成物を順に充填または塗付し、硬化後に脱型する方法等を採用することができる。補強材を導入する場合は、例えば、第1模様層用組成物の硬化前に、第1模様層内部に補強材を埋め込んだり、第1模様層裏面に補強材を積層したりすればよい。
【0063】
以上の方法で得られた面材は、型枠内面の凹凸が反転し、第1模様層用組成物による模様領域Aが凹部、第2模様層用組成物による模様領域Bが凸部を形成し、立体感等を備えた美観性を発揮することができる。
【0064】
また、本発明面材は、上述の方法の他、例えば、第1模様層用組成物を用いて第1模様層(模様領域A)を形成後、その表面の一部に、第2模様層用組成物を凸状に塗付して第2模様層(模様領域B)を形成し、次いで模様層全体に透明層用組成物を塗装する方法等によって製造することもできる。
【0065】
本発明面材は、透湿性を示すこともできる。本発明面材の透湿度(JIS Z0208による透湿度)は、好ましくは40g/m・24h以上、より好ましくは70g/m・24h以上、さらに好ましくは100g/m・24h以上であり、透湿度の上限は、好ましくは1000g/m・24h以下、より好ましくは600g/m・24h以下、さらに好ましくは400g/m・24h以下である。透湿度がこのような範囲内であれば、面材の裏面側(基材側)で生じた水蒸気等を表面側(外側)に排出することができ、面材自身の膨れ、&#21085;れ等を抑制することもできる。
【0066】
本発明面材は、建築物壁面等を装飾する材料として使用できる。本発明面材を壁面等に固定する際には、例えば、接着材、接着テープ、釘、ネジ、ボルト、レール等を使用すればよい。建築物壁面等を構成する基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、石膏ボード、パーライト板、合板、煉瓦、プラスチック板、金属板、ガラス、磁器タイル等が挙げられる。これら基材は、その表面に、既に被膜(既存被膜、下塗被膜等)が形成されたものや、壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。
【実施例
【0067】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0068】
模様層用組成物として、以下のものを用意した。
【0069】
(模様層用組成物a)
着色無機質粒子の混合物(茶色珪砂と赤褐色珪砂の混合物、粒径32~600μm、光透過率1%未満)80重量部、透明性無機質粒子(寒水石;粒径106~425μm、光透過率16%)20重量部、樹脂1(アクリルシリコン樹脂エマルション、Tg0℃、固形分50重量%)30重量部、及び添加剤(増粘剤、消泡剤等)を混合して、茶色系の模様層用組成物aを得た。この模様層用組成物aのP値は0.76である。
【0070】
(模様層用組成物b)
着色無機質粒子の混合物(黄色珪砂と淡褐色珪砂の混合物、粒径32~425μm、光透過率1%未満)80重量部、透明性無機質粒子(寒水石;粒径32~300μm、光透過率16%)20重量部、樹脂1(同上)30重量部、及び添加剤(増粘剤、消泡剤等)を混合して、黄色系の模様層用組成物bを得た。この模様層用組成物bのP値は0.38である。
【0071】
(模様層用組成物c)
上記模様層用組成物bにおいて、着色無機質粒子の粒度を調整し、P値が0.46である黄色系の模様層用組成物cを用意した。
【0072】
(模様層用組成物d)
上記模様層用組成物bにおいて、着色無機質粒子の粒度を調整し、P値が0.25である黄色系の模様層用組成物dを用意した。
【0073】
(模様層用組成物e)
上記模様層用組成物bにおいて、着色無機質粒子の粒度を調整し、P値が0.78である黄色系の模様層用組成物eを用意した。
【0074】
(模様層用組成物f)
着色無機質粒子の混合物(茶色珪砂と赤褐色珪砂の混合物、粒径32~600μm、光透過率1%未満)80重量部、透明性無機質粒子(寒水石;粒径106~425μm、光透過率16%)20重量部、樹脂2(アクリルシリコン樹脂エマルション、Tg38℃、固形分50重量%)30重量部、及び添加剤(増粘剤、消泡剤等)を混合して、茶色系の模様層用組成物fを得た。この模様層用組成物fのP値は0.76である。
【0075】
(模様層用組成物g)
着色無機質粒子の混合物(黄色珪砂と淡褐色珪砂の混合物、粒径32~425μm、光透過率1%未満)80重量部、透明性無機質粒子(寒水石;粒径32~300μm、光透過率16%)20重量部、樹脂2(同上)30重量部、及び添加剤(増粘剤、消泡剤等)を混合して、黄色系の模様層用組成物gを得た。この模様層用組成物gのP値は0.38である。
【0076】
透明層用組成物として、以下のものを用意した。
【0077】
(透明層用組成物1)
樹脂3(カルボキシル基含有アクリルシリコン樹脂エマルション、Tg66℃、固形分50重量%)200重量部、造膜助剤18重量部、水20重量部、界面活性剤(含フッ素両性界面活性剤、固形分30重量%)0.2重量部、その他添加剤(紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤等)4重量部を常法により均一に混合して、透明層用組成物1を得た。この透明層用組成物1の水に対する接触角は82°であった。なお、水に対する接触角は、透明層用組成物をアルミニウム板の上に150μmの厚みで塗付け、気温23℃、相対湿度50%の雰囲気下(以下「標準状態」ともいう)にて14日間乾燥養生して得られた試験体について、接触角計を用いて測定した値である(以下同様)。
【0078】
(透明層用組成物2)
樹脂3(同上)200重量部、造膜助剤18重量部、水20重量部、架橋剤(カルボジイミド基含有架橋剤、固形分40重量%)10重量部、その他添加剤(紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤等)4重量部を常法により均一に混合して、透明層用組成物2を得た。この透明層用組成物2の水に対する接触角は84°であった。
【0079】
(透明層用組成物3)
樹脂3(同上)200重量部、造膜助剤18重量部、水20重量部、界面活性剤(同上)0.2重量部、架橋剤(同上)10重量部、その他添加剤(紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤等)4重量部を常法により均一に混合して、透明層用組成物3を得た。この透明層用組成物3の水に対する接触角は81°であった。
【0080】
(透明層用組成物4)
樹脂4(カルボキシル基含有アクリルシリコン樹脂エマルション、Tg57℃、固形分50重量%)200重量部、造膜助剤18重量部、水20重量部、界面活性剤(同上)0.2重量部、架橋剤(同上)10重量部、その他添加剤(紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤等)4重量部を常法により均一に混合して、透明層用組成物4を得た。この透明層用組成物4の水に対する接触角は82°であった。
【0081】
(透明層用組成物5)
樹脂5(カルボキシル基含有アクリルシリコン樹脂エマルション、Tg48℃、固形分50重量%)200重量部、造膜助剤18重量部、水20重量部、界面活性剤(同上)0.2重量部、架橋剤(同上)10重量部、その他添加剤(紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤等)4重量部を常法により均一に混合して、透明層用組成物5を得た。この透明層用組成物5の水に対する接触角は84°であった。
【0082】
(透明層用組成物6)
樹脂6(アクリル樹脂エマルション、Tg28℃、固形分50重量%)200重量部、造膜助剤18重量部、水20重量部、その他添加剤(紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤等)4重量部を常法により均一に混合して、透明層用組成物6を得た。この透明層用組成物6の水に対する接触角は86°であった。
【0083】
(透明層用組成物7)
樹脂7(コロイダルシリカ複合エマルション、固形分40重量%)250重量部、造膜助剤18重量部、界面活性剤(同上)4重量部、その他添加剤(紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤等)4重量部を常法により均一に混合して、透明層用組成物7を得た。この透明層用組成物7の水に対する接触角は38°であった。
【0084】
(透明層用組成物8)
樹脂8(アクリル樹脂エマルション、Tg48℃、固形分50重量%)200重量部、撥水剤(ジメチルシロキサン化合物、固形分50重量%)50重量部、造膜助剤18重量部、水20重量部、その他添加剤(紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤等)4重量部を常法により均一に混合して、透明層用組成物8を得た。この透明層用組成物8の水に対する接触角は116°であった。
【0085】
(実施例1)
型枠として、複数の筋状の凹凸を有する方形の型枠を用意した。この型枠を内面が上を向くように置き、型枠内面の凹部に模様層用組成物bを充填し、次いで全体に模様層用組成物aを充填し、硬化後に脱型した。次いで、その表面に透明層用組成物1を塗付して透明層(単位面積当たりの重量40g/m)を設けることにより、面材1を得た。この面材1は、模様層用組成物aが第1模様層(凹部)、模様層用組成物bが非連続で筋状の第2模様層(凸部)を形成し、第1模様層の平均厚みは2mm、第2模様層の平均厚みは0.5mm、第1模様層と第2模様層との色差は15であった。
【0086】
(実施例2)
実施例1の透明層用組成物1を透明層用組成物2に替え、それ以外は実施例1と同様の方法で面材2を得た。この面材2は、模様層用組成物aが第1模様層(凹部)、模様層用組成物bが非連続で筋状の第2模様層(凸部)を形成し、第1模様層の平均厚みは2mm、第2模様層の平均厚みは0.5mm、第1模様層と第2模様層との色差は15であった。
【0087】
(実施例3)
実施例1の透明層用組成物1を透明層用組成物3に替え、それ以外は実施例1と同様の方法で面材3を得た。この面材3は、模様層用組成物aが第1模様層(凹部)、模様層用組成物bが非連続で筋状の第2模様層(凸部)を形成し、第1模様層の平均厚みは2mm、第2模様層の平均厚みは0.5mm、第1模様層と第2模様層との色差は15であった。
【0088】
(実施例4)
実施例1の透明層用組成物1を透明層用組成物4に替え、それ以外は実施例1と同様の方法で面材4を得た。この面材4は、模様層用組成物aが第1模様層(凹部)、模様層用組成物bが非連続で筋状の第2模様層(凸部)を形成し、第1模様層の平均厚みは2mm、第2模様層の平均厚みは0.5mm、第1模様層と第2模様層との色差は15であった。
【0089】
(実施例5)
実施例1の透明層用組成物1を透明層用組成物5に替え、それ以外は実施例1と同様の方法で面材5を得た。この面材5は、模様層用組成物aが第1模様層(凹部)、模様層用組成物bが非連続で筋状の第2模様層(凸部)を形成し、第1模様層の平均厚みは2mm、第2模様層の平均厚みは0.5mm、第1模様層と第2模様層との色差は15であった。
【0090】
(実施例6)
上記実施例1と同じ型枠を用意し、型枠内面の凹部に模様層用組成物cを充填し、次いで全体に模様層用組成物aを充填し、硬化後に脱型した。次いで、その表面に透明層用組成物3を塗付して透明層(単位面積当たりの重量40g/m)を設けることにより、面材6を得た。この面材6は、模様層用組成物aが第1模様層(凹部)、模様層用組成物cが非連続で筋状の第2模様層(凸部)を形成し、第1模様層の平均厚みは2mm、第2模様層の平均厚みは0.5mm、第1模様層と第2模様層との色差は14あった。
【0091】
(実施例7)
上記実施例1と同じ型枠を用意し、型枠内面の凹部に模様層用組成物dを充填し、次いで全体に模様層用組成物aを充填し、硬化後に脱型した。次いで、その表面に透明層用組成物3を塗付して透明層(単位面積当たりの重量40g/m)を設けることにより、面材6を得た。この面材6は、模様層用組成物aが第1模様層(凹部)、模様層用組成物dが非連続で筋状の第2模様層(凸部)を形成し、第1模様層の平均厚みは2mm、第2模様層の平均厚みは0.5mm、第1模様層と第2模様層との色差は20であった。
【0092】
(実施例8)
上記実施例1と同じ型枠を用意し、型枠内面の凹部に模様層用組成物gを充填し、次いで全体に模様層用組成物fを充填し、硬化後に脱型した。次いで、その表面に透明層用組成物3を塗付して透明層(単位面積当たりの重量40g/m)を設けることにより、面材8を得た。この面材8は、模様層用組成物fが第1模様層(凹部)、模様層用組成物gが非連続で筋状の第2模様層(凸部)を形成し、第1模様層の平均厚みは2mm、第2模様層の平均厚みは0.5mm、第1模様層と第2模様層との色差は18であった。
【0093】
(比較例1)
実施例1の透明層用組成物1を透明層用組成物6に替え、それ以外は実施例1と同様の方法で面材9を得た。この面材9は、模様層用組成物aが第1模様層(凹部)、模様層用組成物bが非連続で筋状の第2模様層(凸部)を形成し、第1模様層の平均厚みは2mm、第2模様層の平均厚みは0.5mm、第1模様層と第2模様層との色差は15であった。
【0094】
(比較例2)
実施例1の透明層用組成物1を透明層用組成物7に替え、それ以外は実施例1と同様の方法で面材10を得た。この面材10は、模様層用組成物aが第1模様層(凹部)、模様層用組成物bが非連続で筋状の第2模様層(凸部)を形成し、第1模様層の平均厚みは2mm、第2模様層の平均厚みは0.5mm、第1模様層と第2模様層との色差は15であった。
【0095】
(比較例3)
実施例1の透明層用組成物1を透明層用組成物8に替え、それ以外は実施例1と同様の方法で面材11を得た。この面材11は、模様層用組成物aが第1模様層(凹部)、模様層用組成物bが非連続で筋状の第2模様層(凸部)を形成し、第1模様層の平均厚みは2mm、第2模様層の平均厚みは0.5mm、第1模様層と第2模様層との色差は15であった。
【0096】
(比較例4)
上記実施例1と同じ型枠を用意し、型枠内面の凹部に模様層用組成物eを充填し、次いで全体に模様層用組成物aを充填し、硬化後に脱型した。次いで、その表面に透明層用組成物3を塗付して透明層(単位面積当たりの重量40g/m)を設けることにより、面材12を得た。この面材12は、模様層用組成物aが第1模様層(凹部)、模様層用組成物eが非連続で筋状の第2模様層(凸部)を形成し、第1模様層の平均厚みは2mm、第2模様層の平均厚みは0.5mm、第1模様層と第2模様層との色差は18であった。
【0097】
(試験1)
上記方法によって得られた各面材について、表面の外観を観察し、優れた立体感を有し、全体的な調和感、自然感にも優れるものを「A」、立体感に欠けるものを「C」とする3段階(優;A>B>C;劣)で評価した。試験結果を表1に示す。
【0098】
(試験2)
上記方法によって得られた各面材について、JIS Z0208による透湿度を測定した。試験結果を表1に示す。
【0099】
(試験3)
実施例1~8及び比較例1~3の各面材(面材1~11)について、6か月間屋外曝露を行い、面材表面の外観変化を観察し、汚れの程度が軽微であったものを「A」とする4段階(優;A>B>C>D;劣)で評価した。試験結果を表1に示す。
【0100】
(試験4)
実施例1~8の面材(面材1~8)を、直径150mmの円柱に巻きつけた後、その表面のひび割れの発生状況を確認した。評価は、ひび割れ発生が認められなかったものを「A」とする4段階(優;A>B>C>D;劣)で評価した。試験結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
図1
図2