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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/88 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
E04B2/88
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019174749
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021050549
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】工藤 智勇
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-202051(JP,A)
【文献】特開2005-113513(JP,A)
【文献】特開平09-221863(JP,A)
【文献】特開2004-137731(JP,A)
【文献】特開2001-164668(JP,A)
【文献】実開平06-085812(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/04
E04B 1/18
E04B 1/24
E04B 1/26
E04B 1/34
E04B 2/56-2/70
E04B 2/88-2/96
E04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱及び梁を有する架構と、
前記架構の周囲を取り囲む外周壁と、を備え、
前記外周壁が、外壁部と、該外壁部に連設されるサッシ部とで構成された建物であって、
前記外周壁の内面に沿って外周梁が設けられた外周梁設置領域と、前記外周壁の内面に沿って外周梁が設けられていない外周梁非設置領域と有し、
前記サッシ部は、前記外周梁非設置領域に配置されており、
前記サッシ部の延在方向に対して直交する複数の直交梁が、前記サッシ部と前記外壁部の境界位置に設けられている建物。
【請求項2】
柱及び梁を有する架構と、
前記架構の周囲を取り囲む外周壁と、を備え、
前記外周壁が、外壁部と、該外壁部に連設されるサッシ部とで構成された建物であって、
前記外周壁の内面に沿って外周梁が設けられた外周梁設置領域と、前記外周壁の内面に沿って外周梁が設けられていない外周梁非設置領域と有し、
前記サッシ部は、前記外周梁非設置領域に配置されており、
前記サッシ部の延在方向に対して直交する複数の直交梁が、前記外壁部における前記サッシ部の近傍に設けられている建物。
【請求項3】
前記複数の直交梁の少なくとも1つは、前記サッシ部から所定距離後退した位置に配置された梁から持ち出された片持ち梁であり、
前記サッシ部に隣接する前記外周梁は、前記片持ち梁の先端部で支持されている、請求項1又は2に記載の建物。
【請求項4】
前記複数の直交梁の少なくとも1つは、前記サッシ部と前記外壁部との境界位置に配置されるとともに、その先端部が支柱によって支持されている、請求項1又は2に記載の建物。
【請求項5】
前記複数の直交梁の少なくとも1つは、その先端部が前記外周梁によって支持されている、請求項1又は2に記載の建物。
【請求項6】
前記複数の直交梁の間に、該複数の直交梁の相対的な変位を抑制するための拘束部材が設けられている、請求項~5の何れか一項に記載の建物。
【請求項7】
前記拘束部材は扁平な板材からなり、前記直交梁の上端部に水平に取り付けられている、請求項6に記載の建物。
【請求項8】
前記拘束部材は、前記直交梁の上端部に水平に取り付けられている扁平な板材と、前記直交梁の上面で支持されているコンクリート系の床材と、を含む、請求項6に記載の建物。
【請求項9】
前記複数の直交梁の少なくとも1つは、前記サッシ部と前記外壁部との境界位置に配置され、
前記サッシ部と前記外壁部との境界位置に配置された直交梁は、下フランジを有し、
前記サッシ部と前記外壁部との境界位置に配置された直交梁は、少なくとも先端部近傍において、他の前記直交梁に対向する側の下フランジが切り欠かれている、請求項2に記載の建物。
【請求項10】
前記複数の直交梁の少なくとも1つは、前記サッシ部と前記外壁部との境界位置に配置され、
前記サッシ部の側方の端縁部に配置された直交梁の先端部近傍において下端側が切り欠かれている、請求項2に記載の建物。
【請求項11】
前記サッシ部は、同一外周壁面で隣接する複数のサッシを有し、
隣接する2つの前記サッシの当接部に対応する位置に中間直交梁が配置されており、
前記中間直交梁の先端部近傍において、下端側が切り欠かれている、請求項1又は2に記載の建物。
【請求項12】
前記サッシ部は、所定階とその上階に同一幅で形成されており、
前記サッシ部を構成するサッシが、所定階から前記外周梁非設置領域を跨いで上階まで配置され、
前記外周梁非設置領域の近傍に、前記複数の直交梁に架設される床が存在しない吹抜け部が形成されている、請求項1~11の何れか一項に記載の建物。
【請求項13】
前記サッシ部の上端の高さは、該サッシ部に隣接する前記外壁部の上端の高さと略等しい、請求項1~12の何れか一項に記載の建物。
【請求項14】
前記サッシ部が最上階に設置されており、且つ、屋上階の屋根形式は陸屋根であり、
前記サッシ部の上方には壁が存在せず、前記サッシ部の直上に水切り部材が設置されている、請求項13に記載の建物。
【請求項15】
屋上階の床を構成する床パネルが、該屋上階の梁間に落とし込まれるように設置されている、請求項14に記載の建物。
【請求項16】
前記サッシ部は、サッシ及び当該サッシの上方に設けられたシャッターボックスを有し、
該シャッターボックスの上端は、前記外周梁の下端よりも上方に位置する、請求項1~15の何れか一項に記載の建物。
【請求項17】
前記サッシ部は、所定階とその上階に同一幅で形成されており、
該サッシ部を構成する上階のサッシは、該サッシの延在方向に対して直交する直交梁の先端部または分断された前記外周梁の端縁部によって支持されている、請求項1~16の何れか一項に記載の建物。
【請求項18】
所定階に設けられた前記サッシ部と、その上階に設けられた前記外壁部とを有し、
前記上階に設けられた外壁部は、前記所定階の前記外周梁の上端位置と略同一の高さまたは所定階の外周梁の上端位置よりも高い位置に設けられた帳壁支持部材によって支持されている、請求項1~17の何れか一項に記載の建物。
【請求項19】
柱及び梁を有する架構と、
前記架構の周囲を取り囲む外周壁と、を備え、
前記外周壁が、外壁部と、該外壁部に連設されるサッシ部とで構成された建物であって、
前記外周壁の内面に沿って外周梁が設けられた外周梁設置領域と、前記外周壁の内面に沿って外周梁が設けられていない外周梁非設置領域と有し、
前記サッシ部は、前記外周梁非設置領域に配置されており、
前記サッシ部は、前記外周壁の出隅部を構成する2面に亘って設置されており、
前記サッシ部の上端側は、前記出隅部において、前記架構から前記出隅部に向かって持ち出された片持ち梁にて支持されており、
該片持ち梁の先端部の下端が切り欠かれている建物。
【請求項20】
柱及び梁を有する架構と、
前記架構の周囲を取り囲む外周壁と、を備え、
前記外周壁が、外壁部と、該外壁部に連設されるサッシ部とで構成された建物であって、
前記外周壁の内面に沿って外周梁が設けられた外周梁設置領域と、前記外周壁の内面に沿って外周梁が設けられていない外周梁非設置領域と有し、
前記サッシ部は、前記外周梁非設置領域に配置されており、
前記サッシ部は、サッシ及び当該サッシの上方に設けられたシャッターボックスを有し、
該シャッターボックスの上端は、前記外周梁の下端よりも上方に位置する建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周壁にサッシ部を備える建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柱及び梁による架構と、架構の周囲を取り囲む外周壁と、を備え、外周壁が、外壁部と、当該外壁部に連設されるサッシ部とで構成された建物が知られている。
【0003】
上記建物では、各階の床面の外周部に沿って外周梁が設けられている。この外周梁は、床の支持、並びに、外周壁を構成するサッシや帳壁の固定、及びその荷重の支持等に用いられている。
【0004】
ここで、サッシが上階の外周梁に重ならないようにするため、サッシの上端位置は、外周梁の下端位置よりも低く設定される。そして、サッシの上方の外周梁に対応した位置には、外周梁を覆うように短尺の壁板が設けられる(例えば、特許文献1参照)。また、天井面は上階の梁の下端位置さよりも低く且つサッシのガラス面の上端位置(サッシの上枠の下端位置)よりも高く設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-164668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、採光量や換気量を確保して屋内環境を向上させる為には、サッシの上端位置を極力高く設定するのが好ましいところ、上記の通り上階の外周梁によって制約を受ける。特に、鉄骨造の建物の場合には、サッシや帳壁を取付けるためのアングル材等の取付け金物が梁の下端に取り付けられることもあり、より制約を受ける。
【0007】
さらに、外周壁を構成する帳壁や荷重を支持する構造体としての床が、ALC(軽量気泡コンクリート)パネルやPC(プレキャストコンクリート)パネルのように比較的重量が大きな材料で構成される場合は、それらを支持する外周壁の梁成を大きくせざるを得ず、帳壁の梁への取付け方法もより強固なものとする(帳壁取付け用の金物等を大型化する)必要があるため、サッシの上端位置がさらに制限されるという問題がある。
【0008】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するものあって、外周壁の一部を構成するサッシの上端位置の制約が少なく、屋内環境を向上させやすい建物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の建物は、柱及び梁を有する架構と、
前記架構の周囲を取り囲む外周壁と、を備え、
前記外周壁が、外壁部と、該外壁部に連設されるサッシ部とで構成された建物であって、
前記外周壁の内面に沿って外周梁が設けられた外周梁設置領域と、前記外周壁の内面に沿って外周梁が設けられていない外周梁非設置領域と有し、
前記サッシ部は、前記外周梁非設置領域に配置されていることを特徴とするものである。
【0010】
なお、本発明の建物にあっては、前記サッシ部の延在方向に対して直交する複数の直交梁が、前記サッシ部と前記外壁部の境界位置または前記外壁部における前記サッシ部の近傍に設けられていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の建物にあっては、前記複数の直交梁の少なくとも1つは、前記サッシ部から所定距離後退した位置に配置された梁から持ち出された片持ち梁であり、
前記サッシ部に隣接する前記外周梁は、前記片持ち梁の先端部で支持されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の建物にあっては、前記複数の直交梁の少なくとも1つは、前記サッシ部と前記外壁部との境界位置に配置されるとともに、その先端部が支柱によって支持されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の建物にあっては、前記複数の直交梁の少なくとも1つは、その先端部が前記外周梁によって支持されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の建物にあっては、前記複数の直交梁の間に、該複数の直交梁の相対的な変位を抑制するための拘束部材が設けられていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の建物にあっては、前記拘束部材は扁平な板材からなり、前記直交梁の上端部に水平に取り付けられていることが好ましい。
【0016】
また、本発明の建物にあっては、前記拘束部材は、前記直交梁の上端部に水平に取り付けられている扁平な板材と、前記直交梁の上面で支持されているコンクリート系の床材と、を含むことが好ましい。
【0017】
また、本発明の建物にあっては、前記複数の直交梁の少なくとも1つは、前記サッシ部と前記外壁部との境界位置に配置され、
前記サッシ部と前記外壁部との境界位置に配置された直交梁は、下フランジを有し、
前記サッシ部と前記外壁部との境界位置に配置された直交梁は、少なくとも先端部近傍において、他の前記直交梁に対向する側の下フランジが切り欠かれていることが好ましい。
【0018】
また、本発明の建物にあっては、前記複数の直交梁の少なくとも1つは、前記サッシ部と前記外壁部との境界位置に配置され、
前記サッシ部の側方の端縁部に配置された直交梁の先端部近傍において下端側が切り欠かれていることが好ましい。
【0019】
また、本発明の建物にあっては、前記サッシ部は、同一外周壁面で隣接する複数のサッシを有し、
隣接する2つの前記サッシの当接部に対応する位置に中間直交梁が配置されており、
前記中間直交梁の先端部近傍において、下端側が切り欠かれていることが好ましい。
【0020】
また、本発明の建物にあっては、前記サッシ部は、所定階とその上階に同一幅で形成されており、
前記サッシ部を構成するサッシが、所定階から前記外周梁非設置領域を跨いで上階まで配置され、
前記外周梁非設置領域の近傍に、前記複数の直交梁に架設される床が存在しない吹抜け部が形成されていることが好ましい。
【0021】
また、本発明の建物にあっては、前記サッシ部の上端の高さは、該サッシ部に隣接する前記外壁部の上端の高さと略等しいことが好ましい。
【0022】
また、本発明の建物にあっては、前記サッシ部が最上階に設置されており、且つ、屋上階の屋根形式は陸屋根であり、
前記サッシ部の上方には壁が存在せず、前記サッシ部の直上に水切り部材が設置されていることが好ましい。
【0023】
また、本発明の建物にあっては、屋上階の床を構成する床パネルが、該屋上階の梁間に落とし込まれるように設置されていることが好ましい。
【0024】
また、本発明の建物にあっては、前記サッシ部は、サッシ及び当該サッシの上方に設けられたシャッターボックスを有し、
該シャッターボックスの上端は、前記外周梁の下端よりも上方に位置することが好ましい。
【0025】
また、本発明の建物にあっては、前記サッシ部は、所定階とその上階に同一幅で形成されており、
該サッシ部を構成する上階のサッシは、該サッシの延在方向に対して直交する直交梁の先端部または分断された前記外周梁の端縁部によって支持されていることが好ましい。
【0026】
また、本発明の建物にあっては、所定階に設けられた前記サッシ部と、その上階に設けられた前記外壁部とを有し、
前記上階に設けられた外壁部は、前記所定階の前記外周梁の上端位置と略同一の高さまたは所定階の外周梁の上端位置よりも高い位置に設けられた帳壁支持部材によって支持されていることが好ましい。
【0027】
また、本発明の建物にあっては、前記サッシ部は、前記外周壁の出隅部を構成する2面に亘って設置されており、
前記サッシ部の上端側は、前記出隅部において、前記架構から前記出隅部に向かって持ち出された片持ち梁にて支持されており、
該片持ち梁の先端部の下端が切り欠かれていることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、外周壁の一部を構成するサッシの上端位置の制約が少なく、屋内環境を向上させやすい建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態(第1実施形態)としての建物の一部を示す立面図である。
図2】平面視における1階の外周壁と2階の架構(柱、梁)及び床を構成する床パネルの配置を示す図である。
図3】平面視における2階の外周壁と屋上階の架構(柱、梁)及び床を構成する床(屋根)パネルの配置を示す図である。
図4図3のA-A線(サッシ部位置)における断面図である。
図5図3のB-B線(外壁部位置)における断面図である。
図6図3のC-C線における断面図である。
図7図4の部分拡大図である。
図8図1の建物におけるサッシ支持部材を示す図である。
図9図8のサッシ支持部材を単独で示す斜視図である。
図10】2本の直交梁を連結する拘束部材の一例を示す斜視図である。
図11】本発明の第2実施形態としての建物において、平面視における1階の外周壁と2階の架構(柱、梁)及び床を構成する床パネルの配置を示す図である。
図12図11のD-D線(サッシ部位置)における断面図である。
図13】本発明の第3実施形態としての建物において、平面視における1階の外周壁と2階の架構(柱、梁)及び床を構成する床パネルの配置を示す図である。
図14】本発明の第4実施形態としての建物において、平面視における1階の外周壁と2階の架構(柱、梁)及び床を構成する床パネルの配置を示す図である。
図15】本発明の第5実施形態としての建物において、平面視における1階の外周壁と2階の架構(柱、梁)及び床を構成する床パネルの配置を示す図である。
図16】本発明の第6実施形態としての建物におけるサッシ支持部材を示す図である。
図17】本発明の第7実施形態としての建物において、平面視における1階の外周壁と2階の架構(柱、梁)及び床を構成する床パネルの配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としての建物Jの一部を示す立面図である。図2は、平面視における1階の外周壁20とその上階である2階の架構10(柱11、梁12)及び床40を構成する床パネル40aの配置を示す図である。図3は、平面視における2階の外周壁20とその上階である屋上階の架構10(柱11、梁12)及び床を構成する床(屋根)パネル40aの配置を示す図である。図4は、図3のA-A線(サッシ部位置)における断面図である。図5は、図3のB-B線(外壁部位置)における断面図である。図6は、図3のC-C線における断面図である。図7は、図4の部分拡大図である。
【0032】
(基本構成)
図1に示す建物Jは、構造種別が鉄骨造、構造形式がラーメン構造の2階建ての専用住宅であり、鉄筋コンクリート構造の布基礎等の基礎1と、鉄骨の柱(通し柱)11及び梁12で構成される架構10を有する。また、屋根形式は陸屋根である。床(屋根)40を構成する床パネル40a及び外周壁20のうち外壁部21を構成する壁パネル21aは、ALC(軽量気泡コンクリート)パネルで構成されている。
【0033】
建物Jは、工業化住宅であって、使用する部材の寸法や納まりが予め規格化(標準化)されており、所定の平面モジュール(基準寸法、例えば305mm)を有する。直交する2方向に平面モジュールの整数倍の間隔を有する複数の「通り」が設定され、柱11は、その中心が通りの交点に位置するように設定され、梁12(大梁)は、その幅方向の中心が通り芯に一致するように設定される。その他の梁12(小梁等)も梁12同士の幅方向の中心間の寸法が平面モジュールの整数倍となるように設定される。
【0034】
また、床(屋根)40を構成する床パネル40a、外壁部21を構成する壁パネル21a、外周壁20の他の構成要素であるサッシ部22の平面的な基本寸法も平面モジュールに対応したものである。
【0035】
架構10は、主架構部10aと片持ち架構部10bとで構成されている。主架構部10aは、通りの交点上に立設された柱11、同一の通り上で隣り合う2つの柱11の間に架設された梁12(大梁12a)、柱11と梁12(大梁12a)との間に架設された梁12(大梁12b)、対向する2つの大梁12aまたは12bの間に架設された梁12(小梁12c、後述する梁出し片持ち梁13bの先端側の垂れ下がりを防止する為に、梁出し片持ち梁13b基端側に連続するように設けられる控え梁12d)等によって構成される。
【0036】
片持ち架構部10bは、主架構部10aの外側において、主架構部10aを構成する柱11から持ち出された柱出し片持ち梁13a、大梁12aまたは12bから持ち出された梁出し片持ち梁13b、片持ち梁13aまたは13bの先端(鼻先)側に架設された鼻先梁14、対向する2つの梁(大梁12aまたは12b、片持ち梁13aまたは13b、鼻先梁14等)に架設された小梁12c等によって構成される。
【0037】
柱11の本体部分は、角形鋼管で構成されており、全ての柱11が同一の外形寸法を有する。梁12(12a~12d)、片持ち梁13、及び鼻先梁14(の本体部分)は、H形鋼で構成されており、全て(「梁」とつくもの全て)が同一の梁成と幅寸法を有する。
【0038】
柱11と梁12(大梁12a)との接合部及び柱11と柱出し片持ち梁13aとの接合部は、梁12の端部に設けられたエンドプレート(接合片)を柱の側面の所定位置に当接してボルト孔どうしの位置を合わせ、両者を高力ボルトにて締結することによって剛接合されている。
【0039】
梁12(大梁12a等)と梁12(小梁等)との接合部は、一方の梁12のウェブに対し他方の梁12の端部に設けられたエンドプレートを当接してボルト孔どうしの位置を合わせ、両者を普通ボルトにて締結することによってピン接合されている。
【0040】
梁出し片持ち梁13b及び控え梁12dは、両者の間に介在する梁12(大梁12a)のウェブを、それぞれの梁12の端部に設けられたエンドプレートで挟み、三者を同一のボルトにて締結することにより梁出し片持ち梁13bの先端部の垂れ下がりが生じないように接合されている。
【0041】
1階の床40を構成する床パネル40aは、布基礎1または対向する布基礎1間に架設された鉄骨基礎梁1aの上面で(少なくとも)短辺2辺が支持されるように架設されている。2階の床40を構成する床パネル40aは、2階の梁12の上面で(少なくとも)短辺2辺が支持されるように架設されている。
【0042】
屋上階の床(陸屋根)40を構成する床(屋根)パネル40aは、屋上階の梁12のウェブに取り付けられた床受け金物にて短辺2辺が支持されるように架設されている。床受け金物は梁12の上フランジよりも低い位置で床(屋根)パネル40aを支持しており、床(屋根)パネル40aは梁12の内側に落とし込まれた状態となっている。これにより、屋根面の高さが梁12の上面で床(屋根)パネル40aを支持する場合に比べて抑えられている。
【0043】
1階の床及び2階の床を構成する床パネル40aの長さ寸法は、平面モジュールの整数倍(床パネル40aを支持する2つの梁12の中心間の寸法、例えば、610mm(最小)~1830mm(最大))から目地モルタルの充填の為に15mmから20mm程度短く設定されている。また幅寸法は、平面モジュールの1倍または2倍(例えば305mmまたは610mm)である。一方、屋上階の床(陸屋根)を構成する床(屋根)パネル40aの長さ寸法及び幅寸法は、屋上階の梁12を避けた寸法に設定されている。
【0044】
外周壁20は各階の床面の外周部に沿って設けられている。外周壁20は、外壁部21と、外壁部21に連設されるサッシ部22とで構成されている。外壁部21を構成するALCパネルの基本的な幅寸法は平面モジュールの整数倍(例えば1倍または2倍、すなわち305mmまたは610mm)に設定されている。
【0045】
なお、出隅部には断面L字状の専用壁パネルが使用されている。サッシ部22を構成するサッシ23の幅寸法は、平面モジュールの整数倍(例えば2倍または3倍、すなわち610mmまたは915mm)に設定されている。
【0046】
各階の床面の外周部には、各階の外周壁20の内面に沿って上階の外周梁12Aが設けられた外周梁設置領域31と、各階の外周壁20の内面に沿って上階の外周梁12Aが設けられていない外周梁非設置領域32とが設定されている。
【0047】
サッシ部22は、片持ち架構部10bの鼻先部分に設定されており、サッシ部22の両側方の端縁部に対応する位置(平面モジュール芯上)には、一対の直交梁12B(柱出し片持ち梁13a、梁出し片持ち梁13b)が設置されており、一対の直交梁12Bの間には外周梁12A(鼻先梁14)が排除された外周梁非設置領域32が設定されている。柱出し片持ち梁13a、梁出し片持ち梁13bの、主架構部10aを構成する大梁12aからの持ち出し寸法は、平面モジュールの整数倍(例えば、平面モジュールの6倍である1830mm)とされている。
【0048】
外周梁非設置領域32の設定により分断された外周梁12A(鼻先梁14)の端部は、一対の直交梁12B(柱出し片持ち梁13a、梁出し片持ち梁13b)の先端で支持され、安定架構が維持されている。一対の直交梁12Bの間の床を構成する床パネル40aは、短辺2辺が一対の直交梁12Bで支持されている。
【0049】
一対の直交梁12Bの間であって先端部(外周梁位置)から面モジュールの整数倍(例えば、平面モジュールの2倍である610mm)だけ後退した位置には、当該部位の床パネル40aとともに剛床を形成して片持ち架構部10bの床面のせん断補強をする為の補強梁12Cが架設されている。補強梁12Cの設置により、外周梁非設置領域32が設定されることで構造的に分断された片持ち架構部10bの一体化がなされる。
【0050】
図10の斜視図に示すように、一対の直交梁12Bの先端部には、両者を連結し両者の相対的な変位を抑制する拘束部材50が架設されている。拘束部材50は扁平な板材からなり、1階のサッシ23及び2階のサッシ23との干渉が最も少ない一対の直交梁12Bの上端位置(上フランジ)に水平となるようにボルト接合等により結合されている。本実施形態での拘束部材50は、一対の直交梁12Bの先端部どうしが離間することを拘束する「開き止め」として機能させる為、引張力に対抗可能な断面を有している。なお、一対の直交梁12Bの先端部どうしの間隔が狭まることを抑制する機能は、隣接する他の床パネル40aに挟まれた一対の直交梁12B間の床パネル40aが担っており、この場合、床パネル40aも拘束部材としての機能を有する。
【0051】
各階の外壁部21は、上階の外周梁設置領域31に対応して設置されており、各階のサッシ部22は上階の外周梁非設置領域32に対応して設置されている。
【0052】
1階の外壁部21を構成する壁パネル21aは、布基礎1の上面に取り付けられた帳壁支持部材にて支持されるとともに下端側における出方向の位置決めがなされ、2階の梁の下面に取り付けられた定規部材にて上端側における出方向の位置決めがなされている。また、2階の外壁部21を構成する壁パネル21aは、2階梁の上面に取り付けられた帳壁支持部材にて支持されるとともに屋上階の梁の下面に取り付けられた定規部材にて上端側における出方向の位置決めがなされている。壁パネル21aは、非耐力壁(帳壁)であり、地震等により架構10に層間変形が発生した際には、揺動するように取り付けられている。
【0053】
1階の外壁部21を構成する壁パネル21aは、布基礎1の上端位置近傍から2階梁の上端位置近傍まで達している。また、2階の外壁部21を構成する壁パネル21aは、2階梁の上端位置近傍から屋上階の梁上端位置近傍まで達している。
【0054】
1階のサッシ部22及び2階のサッシ部22は、同一の幅寸法且つ同一の位置に連続的に設置されている。また、各階のサッシ部22は単一のサッシ23で構成されており、各階の外壁部21を構成する壁パネル21aと略同一の高さ寸法を有しており(下端の高さ位置と上端の高さ位置が略一致しており)、1階のサッシ23の下方、1階のサッシと2階のサッシ23の間、及び2階のサッシ23の上方には短尺の壁パネルが存在しない。
【0055】
サッシ部22を構成するサッシ23は、一対のサッシ支持部材60を介して取付けられている。サッシ23は、例えばガラス面23aを構成する矩形板状のガラスと、ガラスを取り囲んで支持するサッシ枠23bとを備える。
【0056】
図8は、建物Jにおけるサッシ支持部材60を示す図である。図9は、サッシ支持部材60を単独で示す斜視図である。サッシ支持部材60は、鉛直方向に延在する一対の縦フレーム61と、各縦フレーム61に固定された掛止板62とを有している。縦フレーム61は、例えば断面がL字状の鋼材とすることができる。また、掛止板62は、縦フレーム61に溶接等により固定された、矩形の平板状の鋼材とすることができる。各縦フレーム61には、複数の掛止板62が縦フレーム61の延在方向に沿って所定の間隔を空けて設けられている。
【0057】
1階のサッシ部22において、一対のサッシ支持部材60は、下端が布基礎1の上面で支持されるとともにアンカーボルトにて固定され、上端が2階の直交梁12Bの先端部のウェブ面に当接されてボルト固定される。また、2階のサッシ部22において、一対のサッシ支持部材60は、下端が2階の直交梁12Bの先端部の上面で支持されるともにボルトにて固定され、上端が屋上階の直交梁12Bの先端部のウェブ面に当接されてボルト固定される。なお、直交梁12Bが負け、外周梁12Aが勝つ場合、サッシ支持部材60は、直交梁12Bの先端部ではなく、外周梁12Aの端縁部に固定される。
【0058】
サッシ部22を構成するサッシ23は、例えば、四隅にボルトの軸部等で構成される被掛止部(図示省略)が設けられ、上記サッシ支持部材60の掛止部63に掛止される。サッシ支持部材60の掛止部63は縦長の長孔状または上方が開いた切欠き状(U字状)であり、サッシ23の下側の被掛止部を掛止する際にはU字状の掛止部63aが用いられ、上側の被掛止部を掛止する際には、長孔状の掛止部63bが用いられる。
【0059】
サッシ23の、一対の縦フレーム61への取付け作業は以下の手順で行われる。
1.楊重装置等で吊り上げたサッシ23を設置位置まで移動後に徐々に降下させる。
2.サッシ23の下部側を建物側に引き寄せ、下側の被掛止部をU字状の掛止部63aに掛止し、ボルトにて仮止めする。
3.サッシ23の上部側を建物側に引き寄せ(寝た状態のサッシ23を起こし)、上側の被掛止部を長孔状の掛止部63bに掛止し、ボルトにて仮止めする。
4.サッシ23の位置を調整後、ボルトを本締めする。
【0060】
本実施形態のように各階のサッシ部22が単一のサッシ23で構成される場合、サッシ23の取付けには、最下部のU字状の掛止部63aのみを有する掛止板62と最上部の長孔状の掛止部63bのみを有する掛止板62とが使用される。一方、各階のサッシ部22が複数のサッシ23の組み合わせで構成される場合は、2つのサッシ23の連接部に設けられたU字状の掛止部63a及び長孔状の掛止部63bを有する掛止板62も使用される。
【0061】
サッシ部22が面する居室の天井(天井面18)は、サッシ部22近傍において斜めに折り上げられ、その後カーテンボックス状に再度折り上げられて、サッシ23の内装上端に達するように構成されている。
【0062】
サッシ部22の側方の端縁部に対応する位置に配置された直交梁12Bは、先端部近傍において、他方の直交梁12Bに対向する側の下フランジ15の一部が切り欠かれ、サッシ部22の内装上端位置を直交梁12Bの下端位置よりも高くした際の内装仕上げと直交梁12Bとの干渉が抑制され、直交梁12Bのサッシ部22の内装幅(サッシ部22の部分における内装が仕上がった状態での室内側の有効幅)が大きく確保されている。なお、片持ち梁である直交梁12Bは先端部側には大きな荷重が作用せず、下フランジ15の一部が切り欠かかれることによる断面性能の低下の影響は少ない。また、直交梁12Bの下フランジ15の一部が切り欠かれることにより、直交梁12Bと縦フレーム61との干渉の回避もなされている。
【0063】
上記直交梁12Bの切り欠きは、下フランジ15の一部に限らず、その先端側(サッシ部22側)において下端部全体が切り欠かかれていてもよい。なお、切り欠きの形状は、例えば側面視でテーパー状であってもよいし、クランク(階段)状であってもよい。
【0064】
サッシ部22は、サッシ23及びサッシ23の上方にシャッターボックスを有する構成としてもよく、その場合、シャッターボックスの上端は、外周梁12Aの下端よりも上方に位置することが好ましい。このような構成により、シャッターボックス付のサッシであってもサッシ23の内装の上端をより高い位置に配置することができる。
【0065】
屋上(陸屋根)面の外周部に沿って屋上(陸屋根)面に降り落ちた雨水を堰止める為の突出部が設けられており、突出部及び2階外周壁の上端面は水切り部材41によって覆い隠されている。前述した通り、床(屋根)パネル40aが梁の内側に落とし込まれているので、外周壁上端と突出部上端との高低差は極めて小さく、その結果水切り部材41を薄くシャープな形状とすることが可能とされている。これらの構成により、建物Jでは図1に示すように、1階外周壁20の下端から2階外周壁20の上端まで、サッシ23が上下方向に連続的に設置され、外壁部21が完全に2つに分割された新奇な意匠が実現されている。
【0066】
上記のように、本実施形態の建物Jにあっては、外周壁20の内面に沿って外周梁12Aが設けられていない外周梁非設置領域32に、サッシ部22が配置されている。このような構成により、サッシ部22を設ける外周梁非設置領域32において天井面18を高く設定することができる。これにより、サッシ部22を構成するサッシ23の上端位置が外周梁12Aによる制約を受けなくなり、必要とされる位置にサッシ23を設けることができる。その結果、屋内環境を向上させることができる。つまり、例えば図3に示すように、サッシ23の上端(サッシ枠23bの上縁部)の位置を外周梁12A(二点鎖線で示す)の下端位置よりも高く設定することで採光上有利となり、サッシ23が開閉可能な場合は、換気や排煙上も有利となる。一方、外周梁設置領域31に外壁部21を設けることで、外周壁20の内面に沿って、外周梁12Aに壁パネル21a等を安定して支持あるいは固定することができる。
【0067】
また、隣接家屋の火災の際に、サッシ23近傍に外周梁12Aが存在しないので、サッシ23近傍の外周梁12Aが火炎に曝されることで火炎に曝されていない領域までが影響を受ける(例えば、外周梁12Aの支持力が低下し外壁(帳壁)の位置がずれたり脱落したりする)ことが防止でき、類焼時の被害を低減することができる。
【0068】
また、サッシ部22の両側の側方の端縁部またはサッシ部22に隣接する外壁部21の内面側に、サッシ部22の延在方向に対して直交する複数の直交梁12Bが設けられている。このような構成により、外周梁12Aを設けない外周梁非設置領域32においても、床パネル40a等の床材を安定した状態で支持することができる。また、直交梁12Bの先端部にてサッシ23を支持あるいは固定することができ、外周梁12Aを設けない外周梁非設置領域32においても、サッシ23を安定した状態で支持することができる。
【0069】
一対の直交梁12Bの一方が、サッシ部22から所定距離だけ後退した位置に配置された梁(大梁12a)から持ち出された片持ち梁であり、サッシ部22に隣接する外周梁12Aの先端部は、当該片持ち梁である直交梁12Bの先端部で支持されている。このような構成により、架構を安定させるために外周梁12Aの下方に支柱等を設置する必要がなく、その結果、支柱等との位置関係を考慮せずに外周壁20を構成する外壁部21、サッシ部22、及び断熱材等の配置を決定することができる。
【0070】
上記複数の直交梁12Bの間に、当該複数の直交梁12Bの相対的な変位を抑制するための拘束部材50が設けられている。このような構成により、当該直交梁12Bの先端部側の変位に起因するサッシ部22への負荷も軽減することができ、サッシ部22を構成するサッシ23の変形を抑制することができる。特に、直交梁12Bが片持ち梁である場合、外周梁12Aが連続的に存在しないことで互いに連結されない直交梁12Bの先端部側の相対的な変位差が生じ易く、拘束部材50の設置が有効である。例えば、後述する第5実施形態における、柱出し片持ち梁13aである直交梁12Bのように、先端部に他の梁が接合されず単独で設置されるケースで顕著な効果を奏する。
【0071】
拘束部材50は、扁平な板材からなり、複数の直交梁12Bの上端部に水平に取り付けられている。このような構成により、サッシ部22を構成するサッシ23、断熱材42等の設置に影響を与えにくくすることができる。更に、扁平な板材からなる拘束部材50が一対の直交梁12Bの先端部どうしが離間することを拘束する拘束部材として機能することに加え、直交梁12Aの上面で支持されている床パネル40aが一対の直交梁12Bの先端部どうしの間隔が狭まることを抑制する拘束部材として機能するので、直交梁12Bの先端部側の相対的な変位差を、より合理的、効果的に抑制することができる。
【0072】
サッシ部22と外壁部21との境界位置に配置された直交梁12Bが下フランジ15を有し、先端部近傍において、他方の直交梁12Bに対向する側の下フランジ15の一部が切り欠かれている。このような構成により、サッシ部22の内装上端位置を直交梁12Bの下端位置よりも高くした際の内装仕上げと直交梁12Bとの干渉が防止でき、サッシ部22の内装幅を大きく確保することができる。また、直交梁12Bの下フランジ15の一部が切り欠かれることにより、直交梁12Bと縦フレーム61との干渉を回避することができる。
【0073】
サッシ部22と外壁部21との境界位置に配置された直交梁12Bの先端部近傍において、下端側が切り欠かれていてもよい。このような構成によっても、サッシ部22の内装上端位置を直交梁12Bの下端位置よりも高くした際の内装仕上げと直交梁12Bとの干渉が防止でき、サッシ部22の内装幅を大きく確保することができる。
【0074】
サッシ部22の上端の高さは、サッシ部22に隣接する外壁部21の上端の高さと略等しい。このような構成により、サッシ部22の上方に、丈の小さい壁パネル21a等からなる壁材が不要となり、防水性能を損なう虞のある部材の継ぎ目を減少させて防水性能を向上させることができる。
【0075】
サッシ部22が最上階(2階)に設置され、屋上階の屋根形式は陸屋根であり、当該サッシ部22の上方には壁パネルが存在せず、サッシ部22の直上に水切り部材41が設置されている。このような構成により、サッシ部22の上方に壁等が不要となり、防水性能を損なう虞のある部材の継ぎ目を減少させて防水性能を向上させることができる。
【0076】
サッシ部22が最上階(2階)に設置され、屋上階の床を構成する床パネル40aが、屋上階に設けられた梁12と梁12の間に落とし込まれるように設置されている。このような構成により、屋根面の高さが梁の上面で床(屋根)パネル40aを支持する場合に比べて抑えられている。また、外周壁上端と突出部上端との高低差が極めて小さくなるため、水切り部材41を薄くシャープな形状とすることが可能となる。
【0077】
サッシ部22は、サッシ23及びサッシ23の上方に設けられたシャッターボックスを有し、シャッターボックスの上端は、外周梁12Aの下端よりも上方に位置する。このような構成により、シャッターボックス付のサッシであってもサッシ23の内装の上端位置をより高い位置とすることができる。
【0078】
また、サッシ部22は、1階と2階にそれぞれ同一幅で形成され、2階のサッシ部22を構成するサッシ23は、その下端部側が当該サッシ23の延在方向に対して直交する直交梁12Bの先端部または分断された外周梁12Aの端縁部によって支持されている。このような構成により、上階のサッシ23の下方(直下)に外周梁12Aを設けることなく、上階のサッシ23を安定して支持することができる。
【0079】
<第2実施形態>
図11は、本発明の第2実施形態を示している。図12は、図11におけるD-D断面を示している。本実施形態では、2階の床における外周梁非設置領域32に隣接する床パネル40aが取り除かれて吹抜け部19が形成されている。また、サッシ部22には、1階のサッシ部22の下端から1階のサッシ部22の中間位置までのサッシと1階のサッシ部22の中間位置から2階の外周梁非設置領域32を跨ぎ2階のサッシ部22の上端まで達するサッシ23とが組み合わされて設置されている。なお、2階の拘束部材は省略されている。
【0080】
このように、サッシ部22が所定階とその上階に同一幅で形成され、且つ、外周梁非設置領域32に隣接して、一対の直交梁12Bに架設される床が存在しない吹抜け部19が形成された構成とすることで、外周梁非設置領域32を跨ぐようにサッシを設置することができ、サッシ部22に設置するサッシ23の大きさや配置の自由度が大幅に向上する。また、一般のサッシに比べより広い採光面積を有し且つより高い位置から採光が得られるサッシ23からの光を、吹抜け部19を介して、下階の居室に到達させることができ、屋内環境をより向上させることができる。
【0081】
<第3実施形態>
図13は、本発明の第3実施形態を示している。外周梁非設置領域32は、片持ち架構部10bの鼻先であって主架構部10aに隣接する位置に設定されている。一方の直交梁12Bは、片持ち架構部10bに設けられた梁出し片持ち梁13bである。他方の直交梁12Bは、主架構部10aを構成する大梁12aである。一方の直交梁12B側(片持ち架構部10b側)の外周梁12Aは、鼻先梁14である。他方の直交梁12B側(主架構部10a側)の外周梁12Aは、主架構部10aを構成する大梁12aである。
【0082】
なお、第3実施形態以降では、1階にサッシ部22が設けられており、その際の1階の外周壁と2階の架構(柱、梁)及び床パネル40aの配置を例示しているが、上階にも適用できる。
【0083】
<第4実施形態>
図14は、本発明の第4実施形態を示している。外周梁非設置領域32は、片持ち架構部10bの鼻先に設定されている。一方の直交梁12Bは、一端が主架構部10aを構成する大梁12aで支持され、他端が一方の直交梁12Bの先端部の下方に立設された支柱17で支持されている。他方の直交梁12Bは、梁出し片持ち梁13bであって、外壁部21におけるサッシ部22の近傍(サッシ部22と外壁部21の境界位置から305mm外壁側の位置)に設置されている。
【0084】
一方の直交梁12B側の外周梁12Aは、一端が一方の直交梁12Bで支持され、他端が柱出し片持ち梁13aで支持された鼻先梁14である。他方の直交梁12B側の外周梁12Aは、サッシ部22側が梁出し片持ち梁13b(直交梁12B)から305mm持ち出された片持ち状の鼻先梁14である。
【0085】
複数の直交梁12Bの少なくとも1つは、サッシ部22と外壁部21との境界位置に配置されるとともに、その先端部が支柱17によって支持されている。このような構成により、梁出し片持ち梁13b及びこれを補強する控え梁を用いることなく、安定した架構を構築することができる。なお、支柱17は、直交梁12Bからの鉛直荷重を下方の架構10に伝達し得るもの(圧縮力のみが負担できるもの)であればよく、控え梁を増設するよりも低コストである。
【0086】
<第5実施形態>
図15は、本発明の第5実施形態を示している。外周梁非設置領域32は、2辺が主架構部10aに接する片持ち架構部10bの鼻先に設定されている。サッシ部22には、同一外周壁面において3つのサッシ23が連設されている。直交梁12Bは、サッシ部22と外壁部21との境界位置、及び隣り合うサッシ23の連接部に設置されている。
【0087】
サッシ部22と外壁部21との境界位置に設置された直交梁12Bのうち、一方の直交梁12Bは、一端が主架構部10aを構成する大梁12aで支持され、他端が主架構部10aを構成する柱11から持ち出された柱出し片持ち梁13aの先端部で支持されている。また、他方の直交梁12Bは、主架構部10aを構成する他の柱11から持ち出された柱出し片持ち梁13aである。隣り合うサッシ23の連接部に設置された2本の直交梁12B(中間直交梁)は、いずれも梁出し片持ち梁13bであり、先端部近傍において下端側が切り欠かれている。サッシ部22に連続する外周梁12Aは、いずれも柱出し片持ち梁13aで構成されている。
【0088】
複数の直交梁12Bにおける少なくとも1つは、その先端部が、外周梁12A(柱出し片持ち梁13a)の端縁部によって支持されている。このような構成により、梁出し片持ち梁13bとそれ補強する控え梁、支柱等を設置することなく直交梁を設置することができる。なお、直交梁12Bの先端部を支持する外周梁12Aとしては、複数の片持ち梁によって支持され、直交梁12B方向に持ち出された持出し形式の鼻先梁を用いることも可能である。
【0089】
また、隣り合う2つのサッシ23の連接部(2つのサッシ23の当接部に対応する位置)に設置された中間直交梁は先端部近傍において下端側が切り欠かれている。このような構成により、サッシ部22を構成する隣接する2つのサッシ23の間に直交梁12B(中間直交梁)が存在する場合であっても、中間直交梁の先端部側の下端位置が高いので、サッシ部22近傍で天井面18を、サッシ部22の幅の範囲内において連続的に高く折り上げることができる。
【0090】
<第6実施形態>
図16は、本発明の第6実施形態を示している。1階にサッシ部22が設けられており、2階における1階のサッシ部22に対応する位置には外壁部21とされている。分断された2つの外周梁の間には、逆T字状の断面を有する帳壁支持部材51が架け渡されており、1階のサッシ部22に対応する位置の2階の外壁部21の下端は、帳壁支持部材51を用いて支持されるとともに、所定位置に位置決めがなされている。
【0091】
このような構成により、外周梁が存在しない外周梁非設置領域32位置に外壁部21が設けられていても、外壁部21を構成する壁パネル21aを安定して支持することができる。なお、帳壁支持部材51は拘束部材50としても機能させることができる。
【0092】
<第7実施形態>
図17は、本発明の第7実施形態を示している。隅角部が欠落した主架構部10aと、当該隅角部の欠落を埋めるように構成された片持ち架構部10bを有する。サッシ部22は、片持ち架構部10bの2面に亘って設置されている。
【0093】
片持ち架構部10bは、主架構部10aの入隅部から外周壁の出隅部方向に延びるコーナー部片持ち梁16によって形成されている。コーナー部片持ち梁16は、本体部16aと、本体部16aの中間位置から両方向に延びる一対のアーム部16bとを備える。
【0094】
片持ち架構部10bは、コーナー部片持ち梁16の本体部16aの基端部側を主架構部10aの入隅部(入隅部を構成する2つの梁のウェブ)に当接しボルト接合するとともに、一対のアーム部16bを、主架構を構成する梁のウェブに当接してボルト接合することによって、安定架構とされている。
【0095】
コーナー部片持ち梁16(の本体部16a)は、その先端部近傍において下端側が切り欠かれている。主架構部10aを構成する2つの柱とコーナー部片持ち梁16の先端部との間には拘束部材が架設されている。このような構成により、出隅部を構成する2面に亘ってサッシ部22が設置された場合であっても、コーナー部片持ち梁16の先端部側の下端位置が高いので、サッシ部22近傍において天井面18を2方向に亘って連続的に高く折り上げることができる。
【0096】
本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲で記載された内容を逸脱しない範囲で、様々な構成により実現することが可能である。住宅は、平屋でもよく3階建て以上であってもよい。直交梁は2本以上であれば何本であってもよい。直交梁12Bとして、例えば、溝形鋼(断面コ字形状)、リップ付溝形鋼(断面C形状)等を用いることができる。
【0097】
また、構造種別は木造であってもよく、構造形式はピンブレース構造であってもよいし、梁勝ち工法であってもよい。
【0098】
また、壁パネル21a及び床パネル40aとして、例えば、PC(プレキャストコンクリート)パネル、押出成型セメント板などの、コンクリート系パネル(壁材、床材)を用いることができる。
【0099】
また、サッシ部22を構成する各サッシ23は、例えば開閉不可能なFIX形式の窓、上下左右の何れかの縁部に設けたヒンジを支点に回動させることで開閉可能な窓、あるいは、上下または左右にスライドさせることにより開閉可能な窓等とすることができる。
【0100】
また、サッシ部22は、複数のサッシ23あるいは短尺の壁パネルを上下方向に連設して構成されていてもよい。また、所定階のサッシ部22の上方または下方に外壁部21が形成されていてもよい。
【0101】
また、サッシ部22は、複数のサッシ23を用いて、所定の外周壁面の全面(一方の出隅部から他方の出隅部まで)に亘るように形成されてもよい。
【0102】
また、サッシ部22を構成するサッシ23の支持方法は特に限定されず、上階の梁12(外周梁12A、直交梁12Bを含む)や床を構成する床パネル40a等から吊り下げる形態でもよい。
【0103】
また、拘束部材50は、隣接する2本の直交梁12Bにおける一方の直交梁12Bの先端部と、他方の直交梁12Bの中間部とを連結してもよいし、複数の直交梁12Bの中間部同士を連結してもよい。なお、複数の直交梁12Bに架設された床パネル40aを各直交梁12Bに緊結(固定)して、拘束部材として用いてもよい。
【0104】
また、拘束部材50は、サッシ23等との干渉等の問題が生じない範囲内で形状を変更して(例えば断面をL字状とする等)、2本の直交梁12B間の上下方向の相対的変位を抑制するようにしてもよい。
【0105】
また、外壁部21が、上下に短尺の壁パネルを備えた従来の納まりのサッシを含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0106】
J:建物
1:基礎(布基礎)
1a:鉄骨基礎梁
10:架構
10a:主架構部
10b:片持ち架構部
11:柱
12:梁
12A:外周梁
12B:直交梁
12C:補強梁
12a:大梁
12b:大梁
12c:小梁
12d:控え梁
13:片持ち梁
13a:柱出し片持ち梁
13b:梁出し片持ち梁
14:鼻先梁
15:下フランジ
16:コーナー部片持ち梁
16a:本体部
16b:アーム部
17:支柱
18:天井面
19:吹抜け部
20:外周壁
21:外壁部
21a:壁パネル
22:サッシ部
23:サッシ
23a:ガラス面
23b:サッシ枠
31:外周梁設置領域
32:外周梁非設置領域
40:床
40a床パネル
41:水切り部材
42:断熱材
50:拘束部材
51:帳壁支持部材
60:サッシ支持部材
61:縦フレーム
62:掛止板
63:掛止部
図1
図2
図3
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