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特許7421896排気ガス成分のための触媒の貯蔵部の充填を触媒の劣化に応じて制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】排気ガス成分のための触媒の貯蔵部の充填を触媒の劣化に応じて制御する方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 11/00 20060101AFI20240118BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20240118BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240118BHJP
   F02D 41/14 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
F01N11/00
F02D45/00 345
F02D45/00 372
F01N3/24 R
F02D41/14
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019182664
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2020076402
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】10 2018 216 980.2
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ノップ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・ワグネ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・フェイ
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102016222418(DE,A1)
【文献】特開平09-228873(JP,A)
【文献】特開2004-019467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 11/00
F02D 45/00
F01N 3/24
F02D 41/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(10)の排気ガス中の触媒(26)の排気ガス成分貯蔵部の充填の制御を行う方法であって、
他の信号と並んで、触媒(26)の上流側で排気ガス流に突入しており、排気ガス成分の濃度を検出する第1の排気ガスプローブ(32)の信号λin,measが供給される第1の触媒モデル(102)を用いて、排気ガス成分貯蔵部の実際充填レベル
【数1】
が求められ、ラムダ目標値(λin,set)が求められ、あらかじめ決定された目標充填レベル
【数2】
が基本ラムダ目標値(BLSW)に換算され、あらかじめ決定された目標充填レベル
【数3】
からの実際充填レベル
【数4】
のずれが決定され、充填レベル制御(124)によってラムダ目標値‐補正値として処理され、
基本ラムダ目標値とラムダ目標値‐補正値(LSKW)との合計が求められ、この合計が、内燃機関(10)の少なくとも1つの燃焼室(20)への燃料計量に影響を及ぼす補正値を求めるために使用される方法において、
触媒の劣化状態を決定し、該劣化状態に第1の触媒モデルのモデルパラメータのセットを割り当て、モデルパラメータの基準値から補間することによって個々のモデルパラメータを決定し、同じ構成の触媒の少なくとも2つの異なる劣化状態についての基準値をあらかじめ決定し、
同じ構成の触媒の少なくとも2つの異なる劣化状態についてあらかじめ決定された基準値が、酸素貯蔵能であり、
排気ガス質量流量と触媒温度とによって定められた、異なる運転点のための酸素貯蔵能を決定し、制御器の特性マップに記憶し、
これらの特性マップまたは他の特性マップに、モデルパラメータの関連する基準値(MPalt,MPneu)も記憶されており、
現在の酸素貯蔵能(OSCakt)を、車載診断によりあらかじめ決定された間隔をおいて繰り返し決定することを特徴とする方法。
【請求項2】
内燃機関(10)の排気ガス中の触媒(26)の排気ガス成分貯蔵部の充填の制御を行う方法であって、
他の信号と並んで、触媒(26)の上流側で排気ガス流に突入しており、排気ガス成分の濃度を検出する第1の排気ガスプローブ(32)の信号λ in,meas が供給される第1の触媒モデル(102)を用いて、排気ガス成分貯蔵部の実際充填レベル
【数5】
が求められ、ラムダ目標値(λ in,set )が求められ、あらかじめ決定された目標充填レベル
【数6】
が基本ラムダ目標値(BLSW)に換算され、あらかじめ決定された目標充填レベル
【数7】
からの実際充填レベル
【数8】
のずれが決定され、充填レベル制御(124)によってラムダ目標値‐補正値として処理され、
基本ラムダ目標値とラムダ目標値‐補正値(LSKW)との合計が求められ、この合計が、内燃機関(10)の少なくとも1つの燃焼室(20)への燃料計量に影響を及ぼす補正値を求めるために使用される方法において、
触媒の劣化状態を決定し、該劣化状態に第1の触媒モデルのモデルパラメータのセットを割り当て、モデルパラメータの基準値から補間することによって個々のモデルパラメータを決定し、同じ構成の触媒の少なくとも2つの異なる劣化状態についての基準値をあらかじめ決定し、
モデルパラメータが、還元性排気ガス成分(例えばCO,HC)の貯蔵、放出および変換を記述する反応方程式の反応定数であり、および/またはモデルパラメータが、酸化性排気ガス成分の貯蔵、放出および変換を記述する反応方程式の反応定数である方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
排気ガス構成要素が酸素であり、第1の制御回路(22,32,128,130,132)で、第1の排気ガスプローブ(32)の信号(λin,meas)をラムダ実測値として処理し、第2の制御回路(22,32,100,122,124,126,128,132,22)でラムダ目標値(λin,set)を求め、
あらかじめ決定された目標充填レベル
【数9】
を、第1の触媒モデル(102)とは逆の第2の触媒モデル(104)によってラムダ制御の基本ラムダ目標値に換算し、
これと並行して、充填レベル制御ずれを、第1の触媒モデル(100)によってモデル化された充填レベル
【数10】
と、フィルタ処理された目標充填レベル
【数11】
の値とのずれとして求め、この充填レベル制御のずれを、ラムダ目標値‐補正値を求める充填レベル制御アルゴリズム(124)に供給し、
このラムダ目標値‐補正値を、逆の第2の触媒モデル(104)によって計算した基本ラムダ目標値に加算し、このようにして計算された合計がラムダ目標値(λin,set)を形成する方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法において、
第1の触媒モデル(102)を、第1の触媒モデル(102)に加えて出力ラムダモデル(106)を有する経路モデル(100)の構成要素とする方法。
【請求項5】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法において、
第1の触媒モデル(102)が、入力排出モデル(108)ならびに充填レベル‐および排出モデル(110)を有し、入力排出モデル(108)と充填レベル‐および排出モデル(110)とについて個別にモデルパラメータの割当てを行う方法。
【請求項6】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法において、
モデルパラメータのセットのモデルパラメータを補間によって決定する方法。
【請求項7】
請求項に記載の方法において、
排気ガス質量流量および触媒温度のために決定された現在の酸素貯蔵能(OSCakt)について、酸素貯蔵能およびモデルパラメータの基準値を決定し、この排気ガス質量流量、この触媒温度、および関連する現在の酸素貯蔵能OSCaktについて、関連する現在のモデルパラメータ(MPakt)の値を補間によって決定する方法。
【請求項8】
請求項に記載の方法において、
所望の正確なモデル化を保証するために、変化する触媒温度および/または排気ガス質量流量に適合されることが望ましいそれぞれのモデルパラメータMPについて適合を行う方法。
【請求項9】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法において、
触媒の劣化に応じて触媒の酸素の目標充填レベルを設定する方法。
【請求項10】
制御器(16)であって、
該制御器(16)が、
内燃機関(10)の排気ガス中に配置された触媒(26)の排気ガス成分貯蔵部の充填を制御するように構成されており、
触媒(26)の上流側で排気ガス流に突入しており、排気ガス成分の濃度を検出する第1の排気ガスプローブ(32)の信号(λin,meas)が他の信号と並んで供給される第1の触媒モデル(102)を用いて、排気ガス成分貯蔵部の実際充填レベル
【数12】
を決定するように構成されており、
制御器(16)が、ラムダ目標値(λin,set)を求め、あらかじめ決定された目標充填レベル
【数13】
を基本ラムダ目標値(BLSW)に換算し、この場合にあらかじめ決定された目標充填レベル
【数14】
からの実際充填レベル
【数15】
のずれを決定し、充填レベル制御(124)によってラムダ目標値‐補正値として処理し、基本ラムダ目標値とラムダ目標値‐補正値との合計を求め、補正値を求めるために前記合計を使用し、これにより内燃機関(10)の少なくとも1つの燃焼室(20)への燃料計量に影響を及ぼすように構成されている制御器(16)において、
制御器(16)が、触媒の劣化状態を決定し、該劣化状態に第1の触媒モデルのモデルパラメータのセットを割り当て、この場合にモデルパラメータの基準値から補間することによって個々のモデルパラメータを決定するように構成されており、同じ構成の触媒の少なくとも2つの異なる劣化状態についての基準値があらかじめ決定されており、
同じ構成の触媒の少なくとも2つの異なる劣化状態についてあらかじめ決定された基準値が、酸素貯蔵能であり、
制御器(16)が、排気ガス質量流量と触媒温度とによって定められた、異なる運転点のための酸素貯蔵能を決定し、制御器の特性マップに記憶し、
これらの特性マップまたは他の特性マップに、モデルパラメータの関連する基準値(MPalt,MPneu)も記憶されており、
制御器(16)が、現在の酸素貯蔵能(OSCakt)を、車載診断によりあらかじめ決定された間隔をおいて繰り返し決定することを特徴とする制御器(16)。
【請求項11】
制御器(16)であって、
該制御器(16)が、
内燃機関(10)の排気ガス中に配置された触媒(26)の排気ガス成分貯蔵部の充填を制御するように構成されており、
触媒(26)の上流側で排気ガス流に突入しており、排気ガス成分の濃度を検出する第1の排気ガスプローブ(32)の信号(λ in,meas )が他の信号と並んで供給される第1の触媒モデル(102)を用いて、排気ガス成分貯蔵部の実際充填レベル
【数16】
を決定するように構成されており、
制御器(16)が、ラムダ目標値(λ in,set )を求め、あらかじめ決定された目標充填レベル
【数17】
を基本ラムダ目標値(BLSW)に換算し、この場合にあらかじめ決定された目標充填レベル
【数18】
からの実際充填レベル
【数19】
のずれを決定し、充填レベル制御(124)によってラムダ目標値‐補正値として処理し、基本ラムダ目標値とラムダ目標値‐補正値との合計を求め、補正値を求めるために前記合計を使用し、これにより内燃機関(10)の少なくとも1つの燃焼室(20)への燃料計量に影響を及ぼすように構成されている制御器(16)において、
制御器(16)が、触媒の劣化状態を決定し、該劣化状態に第1の触媒モデルのモデルパラメータのセットを割り当て、この場合にモデルパラメータの基準値から補間することによって個々のモデルパラメータを決定するように構成されており、同じ構成の触媒の少なくとも2つの異なる劣化状態についての基準値があらかじめ決定されており、
モデルパラメータが、還元性排気ガス成分(例えばCO,HC)の貯蔵、放出および変換を記述する反応方程式の反応定数であり、および/またはモデルパラメータが、酸化性排気ガス成分の貯蔵、放出および変換を記述する反応方程式の反応定数であることを特徴とする制御器(16)。
【請求項12】
請求項10または11に記載の制御器(16)において、
請求項からまでのいずれか1項に記載の方法のプロセスを制御するように構成されている制御器(16)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の、内燃機関の排気ガス中の触媒の排気ガス成分貯蔵部の充填を制御する方法に関する。装置の態様において、本発明は、装置の独立請求項の前提部分に記載の制御器に関する。
【背景技術】
【0002】
このような方法およびこのような制御器は、それぞれドイツ特許出願公開第102016222418号明細書により公知である。公知の方法および制御ユニットでは、内燃機関の排気ガス中の触媒の排気ガス成分の充填制御が行われ、この場合、触媒の上流側で排気ガス流に突入しており、排気ガス成分の濃度を検出する第1の排気ガスプローブの信号が他の信号と並んで供給される第1の触媒モデルを用いて、排気ガス成分貯蔵部の実際充填レベルが決定される。この場合、ラムダ目標値が求められ、あらかじめ決定された目標充填レベルが基本ラムダ目標値に換算され、あらかじめ決定された目標充填レベルからの実際充填レベルのずれが決定され、充填レベル制御によってラムダ目標値‐補正値として処理される。基本ラムダ目標値とラムダ目標値‐補正値との合計が求められ、この合計は、内燃機関の少なくとも1つの燃焼室への燃料計量に影響を及ぼす補正値を求めるために使用される。
【0003】
ガソリンエンジンにおける空気‐燃料混合物の不完全燃焼時には、窒素(N)、二酸化炭素(CO)および水(HO)に加えて、種々の燃焼生成物が放出され、そのうちの炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)および窒素酸化物(NO)は法的に制限されている。自動車の現行の排気ガス限界値は、現在の技術水準によれば、触媒の排気ガス後処理のみで満たすことができる。三元触媒を使用することによって、前述の有害物質成分を変換することができる。HC、COおよびNOにおいて同時に高い変換率は、三元触媒において、化学量論的な運転点(ラムダ=1)の周辺の狭いラムダ範囲、いわゆる「変換ウィンドウ」においてしか達成されない。
【0004】
変換ウィンドウ内で三元触媒を作動するために、今日のエンジン制御システムでは、一般に、三元触媒の前後に配置されたラムダプローブの信号に基づいたラムダ制御が使用される。内燃機関の燃料/空気比の組成の尺度であり、したがって三元触媒の前方の排気ガス中の酸素濃度の尺度でもある空気比λを制御するために、三元触媒の前方の排気ガスの酸素含有量が、そこに配置された前方の排気ガスプローブを用いて測定される。この測定値に応じて、制御部は、フィードフォワード制御機能によって、基本値としてあらかじめ設定された燃料量または噴射パルス幅を補正する。フィードフォワード制御の一部として、噴射される燃料量の基本値は、例えば内燃機関の回転速度および負荷に応じてあらかじめ設定される。さらに正確な制御のために、三元触媒の下流側の排気ガスの酸素濃度が、別の排気ガスプローブによって付加的に検出される。この後方の排気ガスプローブの信号はマスタ制御に使用され、マスタ制御は、排気ガスプローブの信号に基づいた三元触媒の前方におけるラムダ制御に重畳される。三元触媒の後方に配置される排気ガスプローブとしては、一般に、ラムダ=1で極めて急峻な特性線を有し、したがって、ラムダ=1を極めて正確に示すことができるジャンプ型ラムダプローブが使用される(自動車ハンドブック、第23版、524ページ)。
【0005】
一般にラムダ=1からのわずかなずれしか補正せず、比較的緩慢に設計されているマスタ制御に加えて、現在のエンジン制御システムには、通常、ラムダ=1からの大きいずれが生じた後に、ラムダ‐フィードフォワード制御の形で変換ウィンドウに再び迅速に到達するように作用する機能が設けられており、これは、例えば、三元触媒に酸素が装填されているオーバーランカットオフを伴うフェーズ後には重要である。これは、NO変換に影響を及ぼす。
【0006】
三元触媒の酸素貯蔵能のために、三元触媒の前方にリッチまたはリーンラムダが設定された後に、三元触媒の後方にまだ数秒間にわたってラムダ=1が存在することができる。酸素を一時的に貯蔵する三元触媒のこの特性は、三元触媒の前方におけるλ=1からの短時間のずれを補償するために利用される。より長い時間にわたって三元触媒の前方で1に等しくないラムダが生じている場合には、ラムダ>1(酸素過剰)で酸素充填レベルが酸素貯蔵能を超えるとすぐに、または三元触媒にラムダ<1でもはや酸素が貯蔵されなくなるとすぐに、同じラムダが三元触媒の後方にも設定される。この時点で、三元触媒の後方のジャンプ型ラムダプローブも変換ウィンドウを離れていることを示す。しかしながら、この時点までは三元触媒の後方のラムダプローブの信号は、切迫した故障を示唆せず、したがって、この信号に基づいたマスタ制御の応答はしばしば遅すぎ、故障の前に早期に燃料計量による対応ができない。その結果、テールパイプの排出量が増大する。したがって、現在の制御コンセプトは、三元触媒の後方のジャンプ型ラムダプローブの電圧に基づいて、変換ウィンドウを離れたことを遅れてようやく検出するという欠点を有する。
【0007】
三元触媒の後方のラムダプローブの信号に基づいて三元触媒を制御する代替案は、三元触媒の平均的な酸素充填レベルを制御することである。この平均的な充填レベルは測定可能ではないが、しかしながら、冒頭で述べたドイツ特許出願公開第102016222418号明細書に記載の計算によってモデル化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】ドイツ特許出願公開第102016222418号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明は、請求項1および装置の独立請求項に記載の特徴によって、この従来技術とは異なる。本発明では、触媒の劣化状態が決定され、劣化状態に第1の触媒モデルのモデルパラメータのセットが割り当てられる。個々のモデルパラメータは、モデルパラメータの基準値から補間することによって決定され、この場合、同じ構成の触媒の少なくとも2つの異なる劣化状態についての基準値があらかじめ決定されている。
【0010】
三元触媒の前方に配置された排気ガスプローブの信号に基づいて三元触媒の充填レベルを制御することは、三元触媒の後方に配置された排気ガスプローブの信号に基づいたマスタ制御の場合よりも早期に、触媒ウィンドウを離れるときが差し迫っていることを検出できるという利点を有する。有利な結果として、空気-燃料混合気を早期に適切に補正することによって、触媒浄化ウィンドウを離れることに対抗措置をとることができる。本発明は、この状況において、触媒容積内に貯蔵された酸素量の改善された制御を可能にし、このような制御によって、変換ウィンドウを離れることが早期に検出され、防止され、この制御は、同時に、動的障害に対して、既存の制御概念よりもバランスのとれた充填レベル保持能力を有する。本発明による形式のモデル化された充填レベルの補正と、触媒の劣化状態へのモデルパラメータの適合とによって、モデルベに基づいた制御のロバスト性を改善することができる。これにより、エミッションを低減することができる。三元触媒のためのコストをより低く抑えてより厳しい規制要件を満たすことができる。触媒の劣化状態に依存するモデルパラメータの値を使用することによって、第1の触媒モデルの精度が改善される。特に、内燃機関の負荷および/または回転速度の変化に伴って発生するような動的プロセスが、より良好にモデル化される。モデル化の改善により、酸素充填レベルの制御の改善がもたらされる。
【0011】
好ましい構成は、第1の制御回路において、触媒の上流側に配置された第1の排気ガスプローブの信号としてラムダ実測値を処理するラムダ制御が行われ、ラムダ目標値が第2の制御回路において決定され、あらかじめ決定された目標充填レベルが、第1の触媒モデルとは逆の第2の触媒モデルによってラムダ制御の基本ラムダ目標値に換算され、これと並行して、充填レベル制御ずれが、第1の触媒モデルによってモデル化された充填レベルと、フィルタ処理された充填レベル目標値とのずれとして求められ、この充填レベル制御のずれは、ラムダ目標値‐補正値を求める充填レベル制御アルゴリズムに供給され、このラムダ目標値‐補正値は、逆の第2の触媒モデルによって計算された基本ラムダ目標値に加算され、このようにして計算された合計がラムダ目標値を形成する。
【0012】
好ましくは、第1の触媒モデルは、第1の触媒モデルに加えて出力ラムダモデルを有する経路モデルの構成要素であることが好ましい。
【0013】
この場合、経路モデルは、計算された出力変数が現実の物体の出力変数にできるだけ正確に対応するように、経路モデルによって再現された現実の物体にも作用する入力変数を出力変数に結び付けるアルゴリズムを意味すると理解される。実際の物体は、考慮した例では入力変数と出力変数との間にある物理的な経路全体である。出力ラムダモデルを用いて、後方の排気ガスプローブの信号が計算によりモデル化される。
【0014】
第1の触媒モデルは、入力排出モデル、充填レベルモデル、排出モデルを有し、入力排出モデルと充填および排出モデルとについて個別にモデルパラメータの割当てを行うことが好ましい。
【0015】
別の好ましい実施形態は、モデルパラメータのセットのモデルパラメータが補間によって決定されることを特徴とする。
【0016】
同じ構成の触媒の少なくとも2つの異なる劣化状態についてあらかじめ設定された基準値は、酸素貯蔵能であることも好ましい。
【0017】
さらに好ましくは、排気ガス質量流量と触媒温度とによって定められた、異なる運転点のための酸素貯蔵能が決定され、制御器の特性マップに記憶されている。
【0018】
別の好ましい構成は、これらの特性マップまたは他の特性マップに、モデルパラメータの関連する基準値も記憶されていることにより優れている。
【0019】
現在の酸素貯蔵能OSCaktが、車載診断によりあらかじめ決定された間隔をおいて繰り返し決定されることも好ましい。
【0020】
さらに好ましくは、排気ガス質量流量および触媒温度について決定された現在の酸素貯蔵能OSCaktに対して、酸素貯蔵能およびモデルパラメータの基準値が決定され、この排気ガス質量流量、この触媒温度、および関連する現在の酸素貯蔵能OSCaktについて、関連する現在のモデルパラメータMPaktの値が補間によって決定される。
【0021】
別の好ましい構成は、所望の正確なモデル化を保証するために、変化する触媒温度および/または排気ガス質量流量に適合されることが望ましいそれぞれのモデルパラメータMPについて適合を行うことにより優れている。
【0022】
モデルパラメータが、還元性排気ガス成分の貯蔵、放出および変換を記述する反応方程式の反応定数であること、および/またはモデルパラメータが、酸化性排気ガス成分の貯蔵、放出および変換を記述する反応方程式の反応定数であることも好ましい。
【0023】
触媒の酸素の目標充填レベルの設定が、触媒の劣化に応じて行われることはさらに好ましい。
【0024】
制御器の構成に関して、好ましくは、この方法のいずれか1つの好ましい構成により方法のプロセスを制御するように構成されている。
【0025】
さらなる利点が、以下の説明および添付の図面から明らかである。
【0026】
上述した特徴および以下にさらに説明する特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれに示した組み合わせだけでなく、他の組み合わせで使用することもできるし、または単独で使用することができることを理解されたい。
【0027】
本発明の実施形態を図面に示し、以下の説明に詳細に説明する。この場合、異なる図面の同じ符号は、それぞれ同じか、または少なくとも機能的に比較可能な要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の技術範囲として排気ガスシステムを備える内燃機関を示す概略図である。
図2】経路モデルの機能ブロックを示す概略図である。
図3】補間によるモデルパラメータセットの個々のモデルパラメータの決定を示す概略図である。
図4】触媒26の現在決定されている劣化状態に対する個々のモデルパラメータの決定および割当てを示す概略図である。
図5】本発明による方法の実施形態の機能ブロックを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では三元触媒の例を用いて、貯蔵されるべき排気ガス成分として酸素について本発明を説明する。しかしながら、本発明は、窒素酸化物および炭化水素などの他の種類の触媒および排気ガス成分にも適用可能である。以下では、簡略化のために三元触媒を有する排気ガスシステムに基づいている。本発明は、複数の触媒を有する排気ガスシステムにも適用可能である。この場合、以下に説明する前方および後方のゾーンは、いくつかの触媒に延在しいているか、もしくは異なる触媒中に設けられていてもよい。
【0030】
図1は、空気供給システム12と、排気ガスシステム14と、制御ユニット16とを有する内燃機関10を示す。空気供給システム12は、空気質量計18と、空気質量計18の下流側に配置された絞り弁ユニット19の絞り弁とを備える。空気供給システム12を介して内燃機関10に流入する空気は、内燃機関10の燃焼室20内でガソリンと混合され、このガソリンは、噴射弁22を介して燃焼室20内に直接に噴射される。得られた燃焼室充填物は、点火装置24、例えば点火プラグよって点火され、燃焼される。回転角センサ25は、内燃機関10のシャフトの回転角を検出し、これにより、制御器16が、シャフトの所定の角度位置で点火をトリガすることを可能にする。燃焼により生じる排気ガスは、排気ガスシステム14を通って排出される。
【0031】
排気ガスシステム14は触媒26を備えている。触媒26は、例えば、周知のように、3つの排気ガス成分である窒素酸化物、炭化水素および一酸化炭素を3つの反応経路で変換し、酸素を貯蔵する作用を有する三元触媒である。図示の例では、三元触媒26は、第1のゾーン26.1および第2のゾーン26.2を有する。両方のゾーンには排気ガス28が貫流する。前方の第1のゾーン26.1は、三元触媒26の前方範囲にわたって流れ方向に延在する。後方の第2のゾーン26.2は、三元触媒26の後方範囲にわたって第1のゾーン26.1の下流側に延在する。もちろん、前方ゾーン26.1の前方および後方ゾーン26.2の後方、ならびに2つのゾーンの間にさらなるゾーンがあってもよく、このゾーンのためにも同様に必要に応じてそれぞれの充填レベルがモデル化される。
【0032】
三元触媒26の上流側には、排気ガス28にさらされる前方の排気プローブ32が三元触媒26の直前に配置されている。三元触媒26の下流側には、同様に排気ガス28にさらされる後方の排気ガスプローブ34が三元触媒26の直後に配置されている。前方の排気ガスプローブ32は、好ましくは、広範囲の空気周波数にわたって空気比λの測定を可能にする広帯域ラムダプローブである。後方の排気ガスプローブ34は、好ましくは、いわゆる「ジャンプラムダプローブ」である。この排気プローブ34の信号は急激に変化するので、空気比λ=1を特に正確に測定することができる。Bosch,Automotive Handbook, 23rd Edition,page524を参照されたい。
【0033】
図示の実施形態では、排気ガス28にさらされる温度センサ36が、排気ガス28と熱的に接触した状態で三元触媒26に配置されており、三元触媒26の温度を検出する。
【0034】
制御器16は、空気質量計18、回転角センサ25、前方の排気プローブ32、後方の排気プローブ34および温度センサ36の信号を処理し、これらの信号に基づいて絞り弁の角度位置を調整し、点火装置24による点火をトリガし、噴射弁22によって燃料を噴射するための制御信号を生成する。代替的また付加的に、制御器16は、図示のアクチュエータを制御する、異なる、もしくは他のセンサの信号、または、例えば、アクセルペダル位置を検出する運転者要求発生器40の信号などの異なる、もしくは他のアクチュエータを制御するための信号も処理する。燃料供給を遮断するシフト操作は、例えばアクセルペダルを解放することによってトリガされる。これらの機能および以下でさらに説明する機能は、内燃機関10の運転時に制御器16で実行されエンジン制御プログラム16.1によって実施される。
【0035】
本出願では、経路モデル100、触媒モデル102、逆の触媒モデル104(図5参照)、および出力ラムダムモデル106が使用される。
【0036】
図2は、経路モデル100の機能ブロック図を示す。経路モデル100は、触媒モデル102および出力ラムダムモデル106からなる。触媒モデル102は、入力エミッションモデル108と、充填レベルおよび出力エミッションモデル110とを含む。さらに、触媒モデル102は、触媒26の平均的な充填レベル
【数1】
を計算するためのアルゴリズム112を有する。モデルはそれぞれ、制御器16で実施されるアルゴリズムであり、計算モデルによって模倣された実際の物体にも影響を及ぼす入力変数を、計算された出力変数が実際の物体の出力変数にできるだけ正確に対応するように出力変数に関連付ける。
【0037】
入力エミッションモデル108は、入力変数として、三元触媒26の前方に配置された排気ガスプローブ32の信号λin,measを、次の充填レベルモデル110に必要な入力変数win,modに変換するように構成されている。例えば、入力エミッションモデル108を用いて、三元触媒26の前方でラムダをO、CO、HおよびHCの濃度に換算することが有利である。
【0038】
入力エミッションモデル108によって計算された変数win,modおよび必要に応じて付加的な入力変数(例えば排気ガス温度または触媒温度、排気ガス質量流量、および三元触媒26の現在の最大酸素貯蔵能力)を用いて、充填レベルおよび出力エミッションモデル110において三元触媒26の充填レベルθmodおよび個々の排気ガス成分の濃度λout,modが三元触媒26の出力部でモデル化される。
【0039】
充填および排出プロセスをより現実的に再現できるように、三元触媒26は、好ましくは、アルゴリズムによって、排気ガス28の流れ方向に互いに前後に配置された複数のゾーンまたは部分容積26.1,26.2に概念的に分割され、反応速度論を用いて、これらのゾーン26.1,26.2のそれぞれについて個々の排気ガス成分の濃度を決定する。これらの濃度をそれぞれ個々のゾーン26.1,26.2の充填レベルに換算し、好ましくは、現在の最大酸素貯蔵能力に規格化された酸素充填レベルに換算することができる。
【0040】
個々の、または全てのゾーン26.1,26.2の充填レベルは、三元触媒26の状態を反映する全充填レベルに対して適切な重み付けによって述べることができる。例えば、最も単純な場合には、全てのゾーン26.1,26.2の充填レベルは全て等しく重み付けし、したがって、平均的な充填レベルを決定することができる。三元触媒26の後方の現在の排気ガス組成のためには、三元触媒26の出力部における比較的小さいゾーン26.2の充填レベルが重要であるが、三元触媒26の出力部におけるこの小さいゾーン26.2の充填レベルの変化のためには、その前方のゾーン26.1の充填レベルおよび充填レベルの変化が重要であることを、適切な重み付けによって考慮することもできる。簡単にするために、以下では平均的な酸素充填レベルを仮定する。
【0041】
出力ラムダムモデル106のアルゴリズムは、触媒モデル102によって触媒26の出力部における個々の排気ガス成分の濃度wout,modを計算し、この濃度を、経路モデル100の適合のために、触媒26の後方に配置された排気ガスプローブ34の信号λout,measと比較することができる信号λout,modに変換する。好ましくは、ラムダは三元触媒26の後方でモデル化される。
【0042】
したがって、経路モデル100は、一方では、触媒26が確実に触媒ウィンドウ内に配置される目標充填レベルに調整されるように触媒26の少なくとも1つの平均的な充填レベル
【数2】
をモデル化する役割を果たす。他方では、経路モデル100は、触媒26の後方に配置された排気ガスプローブ34のモデル化された信号λout,modを供給する。後方の排気ガスプローブ34のこのモデル化された信号λout,modが、経路モデル100の適合のためにどのように有利に使用されるかを、以下に詳細に説明する。
【0043】
ブロック200において、触媒26の現在の劣化状態が決定され、ブロック202において、触媒26の現在の劣化状態に第1の触媒モデル102のモデルパラメータのセットが割り当てられる。図示の実施形態では、モデルパラメータの割当ては、第1の触媒モデル102のそれぞれのサブモデル108,110について個別に行われる。
【0044】
図3は、モデルパラメータのセットの単一のモデルパラメータが補間によってどのように決定されるかを示す。横軸には、触媒26の酸素貯蔵能力OSCの値が記入されている。OSCneuは、比較的新しい状態における触媒26(または同様の構成の触媒)の酸素貯蔵能であり、OSCaltは、比較的古い状態におけるこのような触媒の酸素貯蔵能である。OSCaktは触媒26の現在の酸素貯蔵能である。
【0045】
酸素貯蔵能は、触媒の劣化状態の尺度である。酸素貯蔵能は、いずれの場合も、第2の排気ガスプローブ34が反応するまで、酸素が失われた触媒に酸素を充填することによって決定される。制御ユニット16では排気ガス質量流量およびその酸素濃度がわかっているので、充填に必要な酸素過剰量を有する排気ガス質量流量の積分によって、取り込む酸素量を決定することができる。この量が酸素貯蔵能に相当する。同様に、酸素貯蔵能は、酸素が充填された触媒から出発して、酸素が欠乏している排気ガス質量流量に関連付けて決定することもできる。
【0046】
酸素貯蔵能OSCneuおよびOSCaltは、例えば、制御器のデータ入力時に、同じタイプの内燃機関の制御ユニット16を代表してベンチテストによって決定され、これらの制御ユニット16に採用される。
【0047】
これらの値は、排気ガス質量流量と触媒温度とによって定められる種々の運転点について決定され、制御器の対応する特性マップに記憶される。これらの特性マップまたは他の特性マップにはモデルパラメータの対応する基準値MPalt,MPneuも格納されている。縦軸には、触媒モデル102のモデルパラメータMPの値が記入されている。これにより、排気ガス質量流量および触媒温度の互いに異なる値について、必要に応じて触媒モデル102の酸素貯蔵能およびモデルパラメータの基準値の異なる対がもたらされる。
【0048】
現在の酸素貯蔵能OSCaktは、このような内燃機関の後の運転時に、車載診断により所定の間隔をおいて繰り返し決定される。排気ガス質量流量および触媒温度について決定された現在の酸素貯蔵能OSCaktに対して、酸素貯蔵能およびモデルパラメータの基準値の対によってこの排気ガス質量流量およびこの触媒温度のために定められる点が決定される。これらの点および関連する現在の酸素貯蔵能OSCaktから、モデルパラメータMPaktの関連する現在の値が補間によって得られる。
(MPakt-MPalt)/(OSCakt-OSCalt)=(MPneu-MPalt)/(OSCneu-OSCalt)
【0049】
図4は、触媒26の現在決定されている劣化状態OSCaktに対する個々のモデルパラメータMPの決定および割当てを示す。ブロック200は、触媒26の現在の酸素貯蔵能のOSCaktの値の決定を表す。ブロック202は、サブブロック204,206,208,210および212を有する。ブロック204は、基準値OSCneuが排気ガス質量流量および触媒温度の関数として記憶される特性マップを表す。ブロック206は、基準値OSCaltが排気ガス質量流量および触媒温度の関数として記憶される特性マップを表す。
【0050】
ブロック208は、モデルパラメータMPの基準値MPneuが排気ガス質量流量および触媒温度の関数として記憶される特性マップを表す。ブロック210は、モデルパラメータMPの基準値MPaltが排気ガス質量流量および触媒温度の関数として記憶される特性マップを表す。
【0051】
ブロック212は、図3を参照して説明した補間を表し、補間された制御パラメータは、現在の酸素貯蔵能OSCaktに関連するモデルパラメータMPaktとして触媒モデル102に引き渡される。
【0052】
モデルパラメータMPについて説明したこの方法は、好ましくは、所望の正確なモデル化を保証するために、変化する触媒温度および/または排気ガス質量流量に適合されることが望ましいそれぞれの制御パラメータMPについて実施される。
【0053】
このような制御パラメータの例は、還元性排気ガス成分(例えばCO、HC)の貯蔵、放出および変換ならびに酸化性排気ガス成分(例えば酸素)の貯蔵、放出および変換を記述する反応方程式の反応定数(係数)である。エミッションを最適化するためには、さらに好ましくは、制御回路のパラメータおよび制御回路の適合のパラメータも触媒の劣化状態に適合される。これは、例えば、触媒の劣化に応じて触媒の酸素の目標充填レベルを設定することによって行われる。
【0054】
図5は、本発明による方法の例示的な実施形態の機能ブロック図を、機能ブロックに作用するか、または機能ブロックによって影響を受ける装置要素と共に示す。
【0055】
詳細には、図5は、出力ラムダムモデル106によってモデル化された後方の排気ガスプローブ34の信号λout,modが、後方の排気ガスプローブ34の実際の出力信号λout,measとどのように比較されるかを示す。このために、2つの信号λout,modおよびλout,measは適合ブロック114に供給される。適合ブロック114は、2つの信号λout,modおよびλout,measを互いに比較する。例えば、三元触媒26の後方に配置されたジャンプ型ラムダプローブは排気ガスプローブ34として、いつ三元触媒26が酸素で完全に満たされたのか、または酸素が完全に空になったのかを明確に示す。これは、リーン相またはリッチ相の後に、モデル化された酸素充填レベルと実際の酸素充填レベルとを一致させるか、もしくはモデル化された出力ラムダλout,modと、三元触媒26の後方で測定されたラムダλout,measとを一致させ、異なっている場合には経路モデル100を適合させるために利用することができる。適合は、例えば、適合ブロック114が、経路モデル100のアルゴリズムのパラメータを、点線で示した適合経路116にわたって、三元触媒26から流出する排気ガスについてモデル化されたラムダ値λout,modが、三元触媒26で測定されたラムダ値λout,measに対応するまで、連続的に変更することによって行われる。
【0056】
これにより、経路モデル100に取り込まれる測定変数またはモデル変数の不正確さが補償される。モデル化された値λout,modが測定されたラムダ値λout,measに対応するという状況から、経路モデル100もしくは第1の触媒モデル102によってモデル化された充填レベル
【数3】
が、車載手段によっては測定できない三元触媒26の充填状態に対応すると推論することができる。さらに、第1の触媒モデル102のアルゴリズムから数学的変換によって生じる第1の触媒モデル102とは逆の第2の触媒モデル104も、モデル化された経路の挙動を正確に記述すると推論することができる。
【0057】
このことは、本発明において、逆の第2の触媒モデル104を用いて基本ラムダ目標値を計算するために利用される。このために、逆の第2の触媒モデル104には、随意のフィルタリング120によってフィルタ処理された目標充填レベル
【数4】
の値が入力変数として供給される。フィルタリング120は、制御経路が全体として追従することができる、逆の第2の触媒モデル104の入力変数の変更のみを許可する目的で行われる。制御器16のメモリ118から、まだフィルタ処理されていない目標値
【数5】
が読み出される。このために、メモリ118は、好ましくは、内燃機関10の現在の運転パラメータによってアドレス指定される。運転パラメータは、例えば、回転速度センサ25によって検出された回転速度、および空気質量計18によって検出された内燃機関10の負荷であるが、必ずしもこれらでなくてもよい。
【0058】
フィルタ処理された目標充填レベル
【数6】
の値は、逆の第2の触媒モデル104を用いて基本ラムダ目標値BLSWに処理される。この処理と並行して、リンク122では、充填レベル制御ずれFSRAが、経路モデル100もしくは第1の触媒モデル102によってモデル化された充填レベル
【数7】
と、フィルタ処理された目標充填レベル
【数8】
の値とのずれとして形成される。この充填レベル制御ずれFSRAは、ラムダ目標値‐補正値LSKWを形成する充填レベル制御アルゴリズム124に供給される。このラムダ目標値‐補正値LSKWは、リンク126において、逆の経路モデル104によって計算された基本ラムダ目標値BLSWに加算される。
【0059】
好ましい実施形態では、このように形成された合計は、従来のラムダ制御の目標値λin,setとして用いられる。このラムダ目標値λin,setから、第1の排気ガスプローブ32によって供給されたラムダ実際値λin,setがリンク128において差し引かれる。このようにして形成された制御ずれRAは、従来の制御アルゴリズム130によって操作量SGに変換され、この操作量SGは、リンク132において、例えば、内燃機関10の運転パラメータの関数としてあらかじめ設定されている噴射パルス幅tiajの基本値BWに乗法により関連付けられる。基本値BWは、制御器16のメモリ134に記憶される。運転パラメータは、この場合にも好ましくは内燃機関10の負荷および回転速度であるが、必ずしもこれらでなくてもよい。積から求められる噴射パルス幅tiajにより、燃料が噴射弁22を介して内燃機関10の燃焼室20内に噴射される。
【0060】
従来のラムダ制御は、このようにして触媒26の酸素充填レベルの制御に重畳される。この場合、経路モデル100、もしくは第1の触媒モデル102を用いてモデル化された平均的な酸素の充填レベル
【数9】
は、例えば、リーンおよびリッチによる破損の可能性を最小限に抑え、これにより、最小限のエミッションをもたらす目標値
【数10】
に調整される。この場合、基本ラムダ目標値BLSWは、反転された第2の経路モデル104によって形成されるので、充填レベル制御の制御ずれは、モデル化された平均的な充填レベル
【数11】
が、あらかじめフィルタ処理された目標充填レベル
【数12】
と同一である場合にはゼロに等しくなる。充填レベル制御アルゴリズム124は、このような場合以外にしか介入しない。充填レベル制御のフィードフォワード制御として作用する基本ラムダ目標値の形成は、第1の触媒モデル102の反転された第2の触媒モデル104として実現されているので、このフィードフォワード制御は、第1の触媒モデル102の適合と同様に、三元触媒26の後方に配置された第2の排気ガスプローブ34の信号λin,measに基づいて適合される。これは、図3において、反転された経路モデル104に通じる適合経路116の分岐によって示されている。
【0061】
排気ガスシステム26、排気ガスプローブ32,34、空気室量計18、回転角センサ25および噴射弁22を除いて、図5に示した全ての要素は、本発明による制御器16の構成要素である。この場合、メモリ118,134を除いて、図3の他の全ての要素は制御器16に記憶されており、制御器16で実行されるエンジン制御プログラム16.1の構成要素である。
【0062】
要素22,32,128,130,132は、ラムダ制御が行われる第1の制御回路を形成し、ラムダ実測値として第1の排ガスプローブ32の信号λin,measが処理される。第1の制御回路のラムダ目標値λin,setは、要素22,32,100,122,124,126,128,132を有する第2の制御回路で形成される。
図1
図2
図3
図4
図5